説明

百日咳に対する単一用量ワクチンとしての生弱毒化ボルデテラ株

少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株が提供される。弱毒化変異型ボルデテラ株は、ボルデテラ感染の治療または予防のための免疫原性組成物またはワクチンに使用することが可能である。ワクチンまたは免疫原性組成物の製造のための弱毒化ボルデテラ株の使用、ならびに、ボルデテラによる哺乳類を感染から防御する方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む、変異型ボルデテラ(Bordetella)株に関する。弱毒化変異型ボルデテラ株は、ボルデテラ感染の治療または予防のための免疫原性組成物またはワクチンに使用することが可能である。ワクチンまたは免疫原性組成物の製造のための弱毒化ボルデテラ株の使用、ならびにボルデテラによる感染症から哺乳類を防御する方法もまた、本発明の一部を構成する。
【背景技術】
【0002】
百日咳は、未だなお世界中の死の主要な原因の1つであり、その発生率はワクチンの普及率が高い国々でさえ増加している。感染の可能性は全ての年齢層にあるが、乳児は若すぎるために現在使用可能なワクチンで防御できないため、乳児は最も深刻である。
【0003】
百日咳(whooping coughまたはpertussis)は、20世紀後半に有効なワクチンが導入される以前は高い死亡率をもたらす重篤な幼児期の疾病である。これらのワクチンの成功は、この疾病が本質的に制御可能であるという考えを生み出したが、まだなお年間に世界で200,000から400,000人が百日咳に関連して死亡しており、この疾病はまだ感染性の病原体による死亡の原因のなかで6番目に位置している[1]。発展途上国において最も流行しているものの、この疾病はまた、アメリカを含む先進国において再び発生しており[2,3]、アメリカでは、発生率は過去2年にわって5倍に増大している[4]。予想外なことに、百日咳の疫学はワクチンの普及率が高い国々において変化しており、そのような国々では、青年および成人の百日咳の症例の頻度がますます増大している[5]。これは、恐らく、青年期のワクチン仲介免疫の進行性の漸減が原因である。百日咳は、しばしば不規則でそれゆえに診断が困難であるため、一般に成人において命を脅かすものでなく、多くの場合知覚されないままとなる。しかしながら、感染した成人は、非常に若い子供に当該疾病を伝染させる重要な宿主と成る。そのような子供は、若すぎるため十分にワクチン接種することができず、それゆえ高い死亡率を有する重篤な疾病を発症する危険性がある。
【0004】
百日咳のワクチン接種は通常生後2ヶ月から開始され、十分な防御のためには、1から2ヶ月間隔で少なくとも3回の免疫化を必要とする。それゆえ、乳児は、現在使用できるワクチンを使用して、生後6ヶ月より前では十分な防御を受けられない。従って、非常に若いおよび最も脆弱な年齢層における百日咳の発生率を低減するために、早期、恐らく出生時の免疫化が非常に望ましい。しかしながら、ヒトおよび動物モデルにおける莫大な研究から、新生児の免疫系は、未熟すぎて有効にワクチン仲介防御免疫を誘導できないことが示唆された[6,7]。特に、百日咳に対する防御免疫の発生に必須なTh1応答を示す[8]IFN−γ生産は、より成長した子供または成人と比較してヒトの新生児において有意に低減されたことがわかった[9]。このことはまた、有意な量の抗原特異的IFN−γは、百日咳ワクチン、特に無細胞ワクチン(aPV)をワクチン接種した子供において、数ヵ月(≧6ヶ月)後にのみ生産されるという事実に反映される[10]。
【0005】
ボルデテラ・ペルツシス(Bordetella pertussis)の自然な感染は、ワクチン誘導免疫よりも遅く減弱する、強くて持続的な免疫を誘導すると長らく考えられてきた[5,11]。そのうえ、B.ペルツシスの感染は、非常に若い子供(生後1ヶ月)においてでさえ、測定可能な抗原特異的Th1型免疫応答を誘導する[12]。これらの発見は、自然な感染を可能な限り模倣するために経鼻的に適用可能な生ワクチンは、現在使用可能なワクチンに代わる魅力的な代用となる可能性があることを示唆する。
【0006】
当該分野において既知の、ボルデテラ感染を治療するためのワクチン接種組成物が多く存在する。しかしながら、これらの免疫原性組成物は、新生児の治療において、または伝染性のおよび迅速な防御免疫が必要である場合において使用することができない。
【0007】
従って、フランス特許FR0206666は、PTX、DNT、ACおよびTCTから選択される少なくとも2つの毒素を欠損した生ボルデテラ株を開示している。この特許は、強力なプロモーターの添加による内因性ampG遺伝子の過剰発現、およびE.コリ由来のampG遺伝子の11末端アミノ酸の添加を開示している。
【0008】
Mielcarekら(Vaccine、2006;24S2:S2/54−S2−55)は、マウスの免疫化に使用するためのPTX、DTNおよびTCTが弱毒化されたボルデテラ・ペルツシスの株を開示している。この文献は、気管の細胞毒の生産を低減するために、ampG遺伝子を過剰発現しなければならない。しかしながら、更なる評価によって、筆者らは、ampG遺伝子の過剰発現によって気管の細胞毒は増大し当初の考えほど減少しないことを確認した。
【0009】
Mielcarekら(Advance Drug Delivery Review 51 (2001)pgs.55−69)は、生ワクチンが、経口的または経鼻的に投与された場合に全身的および粘膜的応答を誘導できることを開示している。
【0010】
Roduitら(Infection and Immunity(2002 Jul;70(7):3521−8))は、DTP組成物を用いた変異型ボルデテラ株の新生児および乳児へのワクチン接種について記述している。
【0011】
Mattoら(Frontiers of Bioscience 6, e168−e186(2001))は、ボルデテラの内因性ampG遺伝子をE.coliのampG遺伝子に置き換えることを提案しており、このことは、生産されるTCTの量を減少させる。
【0012】
従って、先行技術は、様々なタイプのワクチン接種組成物を開示しているものの、生後6ヶ月前の新生児に防御を提供しうるワクチンまたは免疫原性組成物を提供するという問題に取り組めていない。その上、先行技術は、ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を提供する免疫原またはワクチンを開示していない。先行技術はまた、ボルデテラ感染に対する防御免疫であって、少なくともワクチン接種後の2ヶ月間にわたり増大する防御免疫を提供する免疫原性組成物またはワクチンを開示してない。
【0013】
それゆえ、本発明の目的は、先行技術の欠陥を克服することである。
【0014】
本発明の別の目的は、コロニー形成能および防御免疫誘導能を維持しつつも、病原性を減少させるために、B.ペルツシスまたはB.パラペルツシス(parapertussis)といったボルデテラ株の遺伝的弱毒化を通して、生弱毒化ワクチン候補または免疫原性組成物を製造することである。
【0015】
本発明の別の目的は、現在のaPVによって提供される防御よりも優れた防御を単一の鼻腔内投与後の新生児に誘導するワクチンまたは免疫原性組成物を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、ボルデテラ・パラペルツシス、ならびにaPVのワクチン接種後には見られないボルデテラ・ペルツシスの感染に対する防御を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、新生児においてボルデテラ感染に対する強力な防御免疫を誘導することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、粘膜的および全身的免疫を誘導するワクチンまたは免疫原性組成物を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、生涯の早期において単一用量の経鼻ワクチンとして投与される生弱毒化ボルデテラ・ペルツシス、いわゆるBPZE1を製造することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は、新生児のワクチン接種に使用できるだけでなく、百日咳の流行の場合にあらゆる世代の全ての哺乳類に使用することができるワクチンを提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、迅速な防御免疫および/または少なくともワクチン接種後2ヶ月間にわたり増大する防御免疫を誘導する、ボルデテラ感染に対するワクチンを提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は、相対的に製造コストの低いボルデテラ感染に対する予防または治療を提供することである。
【0023】
これらのおよびその他の目的は、発明の概要、発明の詳細な説明および特許請求の範囲によって証明されるような本願発明によって達成される。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、少なくとも変異型ペルツシス毒素(ptx)遺伝子、欠失型または変異型皮膚壊死性毒素(dnt)遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株を提供する。
【0025】
別の側面において、本発明は、少なくとも変異型ペルツシス毒素(ptx)遺伝子、欠失型または変異型ペルツシス皮膚壊死性毒素(dnt)遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株を含む免疫原性組成物に関する。
【0026】
さらに別の側面において、本発明は、少なくとも変異型ペルツシス毒素(ptx)遺伝子、欠失型または変異型ペルツシス皮膚壊死性毒素(dnt)遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む弱毒化ボルデテラ株を含むワクチンを提供する。
【0027】
また別の側面において、本発明は、ボルデテラ感染の予防のためのワクチンの製造のための、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む弱毒化ボルデテラ株の使用を提供する。
【0028】
また別の側面において、本発明は、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む弱毒化ボルデテラ株の使用であって、前記弱毒化ボルデテラに対する、Th1経路に優先的に向けられる免疫応答の誘導のためのワクチンの製造のための使用を提供する。
【0029】
ボルデテラ・ペルツシスおよびボルデテラ・パラペルツシスの感染によって引き起こされる疾病から哺乳類を防御する方法であって、そのような治療が必要な前記哺乳類に、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株を投与することを含む方法も提供される。
【0030】
ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を提供する方法であって、そのような治療が必要な前記哺乳類に、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株を投与することを含む方法も本発明の一部である。
【0031】
ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を提供する方法であって、そのような治療が必要な哺乳類に、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株、または前記変異型ボルデテラ株を含むワクチンを投与することを含む方法であって、さらにワクチン接種後少なくとも2ヶ月にわたる前記防御免疫の増大を提供する方法は、本発明のさらに別の側面である。
【0032】
呼吸性疾患を治療するための多価ワクチン(multivalent vaccine)(すなわち、種々の病原体により引き起こされる感染症の予防または治療のためのワクチン)の製造のための、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株の使用は、本発明のまた別の側面である。
【0033】
ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を必要とする哺乳類に投与することによる、本発明の弱毒化ボルデテラ株の使用であって、前記防御免疫が、投与後少なくとも2ヶ月間にわたり増大する使用も本発明の一部である。
【0034】
哺乳類におけるボルデテラ感染の治療またはボルデテラ感染に対する防御のための粘膜的応答および全身的応答を提供する方法も、本発明のまた別の側面である。
【発明の詳細な説明】
【0035】
本願で使用される「PTX」という略語は、ADPリボシル化毒素を合成し分泌するペルツシス毒素を意味する。PTXは6つのポリペプチドS1からS5から成り、酵素活性成分はS1と呼ばれる。PTXは34アミノ酸のシグナル配列を有すが、成熟鎖は35から269番目のアミノ酸から成る。PTXは、B.ペルツシスから発現される主要な病原性因子(virulence factor)である。これらの毒素のA成分はADPリボシルトランスフェラーゼ活性を示し、B部分は、毒素を宿主受容体に結合させ、Aを作用部位に移行させることを仲介する(57)。
【0036】
本願で使用される「DNT」という略語は、皮内に注入された場合にマウスおよびその他の実験動物において局所的な病変を誘導する熱不安定性毒素であるペルツシス皮膚壊死性毒素を意味する。低用量で静脈内に注射された場合、マウスにとっては致死的である(58から61)。DNTは、ブタの萎縮性の鼻炎における鼻甲介の萎縮の発生における病原性因子と考えられている(62、63)。
【0037】
本願で使用される「TCT」という略語は、ボルデテラによって合成される病原性因子である気管の細胞毒を意味する。TCTはペプチドグリカン断片であり、インターロイキン−1生成および一酸化窒素合成を誘導する能力を有する。それは、繊毛の静止を引き起こす能力を有し、呼吸器の上皮細胞に対して致死的効力を有する。
【0038】
「哺乳類」という用語は、ヒトを含む、あらゆる哺乳綱の様々な温血脊椎動物であって、皮膚は毛で覆われ、メスは子供を育てるために乳を作り出す乳腺を有していることを特徴とする動物を包含する。
【0039】
「弱毒化」という用語は、免疫応答を刺激しおよび防御免疫を作り出すことができるが、何れの病気ももたらさない、弱められ、毒性の低下したボルデテラ株を意味する。
【0040】
「迅速な防御免疫」の用語は、ボルデテラに対する免疫が、本発明の変異型ボルデテラ株の投与後、短時間で与えられることを意味する。「短時間」とは、ワクチン接種され1週間後にチャレンジ(challenge)されることを意味する。より明確には、現存する病原体特異的末梢性リンパ球、CD8細胞障害性エフェクター(CTLs)およびCD4ヘルパー細胞の急速な増殖がある。CD4ヘルパー細胞は、B細胞の成熟および抗体産生を誘導する。従って、記憶プールをもったリンパ球は、引き続く感染の時に急速に増殖する態勢が整う。
【0041】
「ボルデテラ株」という用語は、ボルデテラ・ペルツシス、ボルデテラ・パラペルツシスおよびボルデテラ・ブロンキセプティカ(bronchiseptica)由来の株を包含する。
【0042】
「ボルデテラ感染」という用語は、以下の3つの株のうち少なくとも1つによって引き起こされる感染症である:ボルデテラ・ペルツシス、ボルデテラ・パラペルツシスおよびボルデテラ・ブロンキセプティカ。
【0043】
「子供」とは、生後6ヶ月から12歳までの人または哺乳類を意味する。
【0044】
「新生児」とは、生後1日から24週後までの人または哺乳類を意味する。
【0045】
本願で使用される「治療」という用語は、疾病の治癒およびその原因の除去に限定されず、対象となる疾病に関係する症状の治癒、緩和、除去もしくは軽減、または宿主体の何れかの障害または機能不全にかかる可能性の防止もしくは減少する意味を特に包含する。
【0046】
「防御」および「予防」という用語は、本願では互換的に使用され、ボルデテラによる感染が妨害されることを意味する。
【0047】
「予防ワクチン」とは、このワクチンが、将来のチャレンジにおけるボルデテラ感染を予防することを意味する。
【0048】
「Th1経路に優先的に向けられる」とは、Th1経路がTh2経路よりも選択されることを意味する。
【0049】
「免疫原性組成物」という用語は、当該組成物が、免疫応答を誘導でき、それゆえに抗原性であることを意味する。「免疫応答」とは、免疫系による何れかの応答を意味する。これらの応答には、抗原に対する応答における生物免疫系の活性の変化を含み、例えば、抗体産生、細胞性免疫の誘導、補体活性化または免疫寛容の発生を含んでよい。
【0050】
より具体的には、本発明は、免疫原性組成物またはワクチンとして使用可能な少なくとも3重(triple)変異型ボルデテラ株を提供する。少なくとも3重変異型ボルデテラ株は、変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含むと理解されるだろう。異種性ampG遺伝子産物は、作られる気管細胞毒の量を大幅に減少させる。
【0051】
本発明は上述の3重変異体だけに限られない。その他の付加的な突然変異を行うことが可能であり、それは、例えば、アデニル酸シクラーゼ(AC)欠損変異体(64)、リポ多糖(LPS)欠損変異体(65)、糸状赤血球凝集素(FHA)(66)およびいずれかのbvg−制御成分(67)である。
【0052】
突然変異される開始菌株は、ボルデテラ・ペルツシス、ボルデテラ・パラペルツシスおよびボルデテラ・ブロンキセプティカを含む何れかのボルデテラ株とすることができる。一側面において、変異型ボルデテラ株を得るために使用される開始菌株は、B.ペルツシスである。
【0053】
変異型ボルデテラ株の構築は、菌株のボルデテラampG遺伝子を異種性ampG遺伝子に取り替えることから始める。何かの異種性ampG遺伝子を本発明に使用することができる。これらは、一世代ごとに培地中に非常にわずかな量のペプチドグリカン断片を放出する全てのグラム陰性菌を含む。グラム陰性菌の例は、エシェリシア・コリ、サルモネラ、腸内細菌科、シュードモナス、モラクセラ、ヘリコバクター、ステノトロフォモナス、レジオネラ等を含むがこれらに限定されない。
【0054】
ボルデテラampG遺伝子を異種性ampG遺伝子に置換することで、得られる株により生産される気管細胞毒(TCT)の量は、1%未満の残留TCT活性である。別の実施態様において、得られる株により発現されるTCT毒素の量は、0.6%から1%の残留TCT活性または0.4%から3%の残留TCT活性または0.3%から5%の残留TCT活性である。
【0055】
PTXは、B.ペルツシス感染症の全身作用の原因となる主要な病原性因子である、ならびに主要な防御抗原のうちの1つである。その特性に起因して、天然のptx遺伝子は変異型バージョンと取り替えられ、それにより、酵素的活性成分S1は酵素的に不活性な毒素をコードするが、ペルツシス毒素の免疫原性の特性は、影響されない。これは、配列位置9のリジン(Lys)をアルギニン(Arg)と取り替えることによって達成することができる。さらに、位置129のグルタミン酸(Glu)は、グリシン(Gly)と取り替えられる。
【0056】
その他の突然変異は、また、米国特許6,713,072(本願に援用される)に記述されるような方法、ならびに検出不可能なレベルに毒素活性を減少させることが可能な何れかの既知のまたはその他の突然変異を使用することが可能である。対立遺伝子の交換は、最初にptxオペロンを削除するために使用され、次に変異型バージョンの挿入のために使用される。
【0057】
最後に、dnt遺伝子は、その後、対立遺伝子の交換を使用して、ボルデテラ株から除去される。全体的な除去の他に、酵素活性は、点変異によって阻害することもできる。DNTはN末端領域の受容体結合ドメインおよびC末端部分の触媒ドメインから構成されるため、Cys−1305をAla−1305に取り替えるdnt遺伝子の点変異は、DNTの酵素活性を抑制する(68)。DNTは、ボルデテラ・ブロンキセプティカの重要な毒素として同定され、わずかな量の注入で致死活性を示す(26)。
【0058】
変異型ptx遺伝子を挿入してdnt遺伝子を阻害または除去する対立遺伝子の交換の他に、遺伝子の翻訳領域を、遺伝子配列またはプラスミドの挿入によって中断させることができる。この方法もまた本発明において意図される。
【0059】
本発明の3重変異型株は、BPZE1株と呼ばれ、2006年3月9日に番号CNCM I−3585としてフランス、パリの国立培養微生物収集所(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に寄託された。BPZE1に導入される突然変異は、急激な弱毒化をもたらすが、細菌のコロニー形成および残存を可能とする。従って、その他の実施態様において、本発明は、投与される場合に粘膜免疫および全身性免疫を誘導することができるBPZE1を提供する。その他の側面において、BPZE1は鼻腔内に投与される。
【0060】
本発明の変異型ボルデテラ株は、免疫原性組成物に使用できる。そのような免疫原性組成物は、哺乳類において抗体産生応答およびまたは好ましくはT細胞反応の何れかの免疫応答を生じさせるのに有用である。好都合に、T細胞反応は、ボルデテラ感染からまたはその結果から哺乳類を防御するようなものである。
【0061】
本発明の変異型ボルデテラ株は、ワクチンまたは免疫原性組成物において、生きた株として、または化学的に若しくは熱的に死滅させた株として使用することができる。一側面において、生きた株は経鼻投与に使用され、一方、化学的に若しくは熱的に死滅させた株は、全身的または粘膜的投与に使用することができる。
【0062】
免疫原性組成物はさらに、全身または局所投与に使用される場合、医薬的に適した賦形剤または担体および/または媒体を含んでよい。医薬的に許容可能な媒体は、リン酸緩衝生理食塩水、蒸留水、乳剤(例えば油/水乳剤)、さまざまな種類の湿潤剤無菌液等を含むが、これらに限定されない。
【0063】
本発明の免疫原性組成物は、また、アジュバント、すなわち、T細胞に仲介される反応、および、特に本発明の活性成分に対するCD4に仲介されるまたはCD8に仲介される免疫応答を促進または増加させることができる何れかの物質または化合物を含むことができる。ムラミルペプチド、例えばMDP、IL−12、アルミニウムリン酸塩、水酸化アルミニウム、Alumおよび/またはMontanide(登録商標)といったアジュバントが、本発明の免疫原性組成物に使用することができる。
【0064】
化学的にまたは熱的に処理した変異型ボルデテラ株をワクチンまたは免疫原性組成物に使用する場合、アジュバントおよび乳剤が免疫原性組成物に使用されることが、当業者に理解されるだろう。
【0065】
本発明の免疫原性組成物はさらに、例えば核酸、タンパク質、ポリペプチド、ベクターまたは薬剤といった、ボルデテラ感染またはボルデテラ感染の有害な効果に対する予防的な効果を有する少なくとも1つの分子を含む。
【0066】
本発明の免疫原性組成物は、組成物が投与される宿主において、T細胞免疫応答を誘発するために使用される。上述の全ての免疫原性組成物は、異なる経路を通して宿主に注入することができる:皮下(s.c.)、皮内(i.d.)、筋肉内(i.m.)または静脈内(i.v.)注射、経口投与および鼻腔内投与または吸入。
【0067】
皮下注射のために処方する場合、本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、好ましくは、一回の注射において、注射用量あたり10から100μg、より好ましくは20から60μg/用量、特に約50μg/用量のボルデテラ株を含む。
【0068】
鼻腔内投与のために処方する場合、ボルデテラ株は、それを与えられる哺乳類の体重および年齢に依存して、約1×10から1x10細菌の用量で投与される。別の側面において、1x10から5x10の用量が使用できる。
【0069】
本発明の変異型ボルデテラ株は、将来的なボルデテラ感染に対して防御する弱毒化ワクチンとして使用することができる。この点に関して、本発明の利点は、哺乳類に単一用量を投与することができ、および、防御は、少なくとも2ヶ月よりも長い期間、特に6ヶ月よりも長い期間持続しうることである。本発明のワクチンは、新生児に投与することができ、および百日咳の感染から防御する。このことは特に重要なことである。というのは、ボルデテラ・ペルツシス感染症からの致死率は、生後1ヶ月未満の乳児で約1.3%であるためである。
【0070】
そのうえ、本発明のワクチンは、伝染病がある場合の成体の哺乳類または60歳を越えるより年老いた成体に使用することができる。というのは、これらの合併症のリスクは、年長児または健康的な成体よりも恐らく高いためである。
【0071】
ワクチンは、免疫原性組成物の場合と同様に、上述したような生理的賦形剤とともに処方することができる。例えば、医薬的に許容可能な媒体は、リン酸緩衝生理食塩水、蒸留水、油/水乳剤といった乳剤、さまざまな種類の湿潤剤無菌液等を含むが、これらに限定されない。MDPといったムラミルペプチド、IL−12、アルミニウムリン酸塩、水酸化アルミニウム、Alumおよび/またはMontanide(登録商標)といったアジュバントをワクチンに使用することができる。
【0072】
本発明のワクチンは高いタイターのFHAに対する血清IgGを誘導することが可能である。抗原特異性のサイトカインパターンの分析から、本発明の変異型弱毒化ボルデテラ株の投与は、強いTH1反応を助力することが明らかになった。
【0073】
本発明のワクチンは、高レベルのボルデテラ感染からの防御、すなわち90%を超える、特に95%を超える、とりわけ99%を超えるレベルの防御(例9に詳述されるように、感染から7日後に算出)を提供する。BPZE1株を含むワクチンの防御のレベルは、予防接種の後の少なくとも2ヵ月において、非接種の(未処置)マウスと比較して、99.999%超に達する。
【0074】
ワクチンは、皮下(s.c.)、皮内(i.d.)、筋肉内(i.m.)または静脈内(i.v.)注射、経口投与および鼻腔内投与または吸入によって投与することができる。ワクチンの投与は通常単一用量である。あるいは、本発明のワクチンの投与は、同じ菌株、組成物またはワクチンで、もしくは無細胞のワクチンで、または両者の組合せで、最初(初回ワクチン接種)、その後の少なくとも1回のリコール(recall)(続く投与)が為される。
【0075】
一側面において、ワクチンの鼻腔内投与または吸入であって、その投与のタイプは、コストが低くおよび下記の気道において本発明の弱毒化株によるコロニー形成が可能であるワクチンの鼻腔内投与または吸入が達成される:上気道(鼻部および鼻の通路、副鼻腔、およびのどまたは咽頭)および/または呼吸気道(喉頭(voice boxまたはlarynx)、気管、気管支および気管支梢)および/または肺(呼吸細気管支、腺胞管、肺胞嚢および肺胞)。
【0076】
液体溶液、懸濁液、乳剤、リポソーム、クリーム、ゲルまたはそのような多相性の組成物の類似物の形態で、免疫原性組成物またはワクチンの鼻腔内投与は達成される。溶液および懸濁液はドロップとして投与される。溶液は、また、点鼻薬瓶からまたは鼻吸入器からの微細な霧として投与することができる。ゲルは、1回の投与に必要な用量を含む小さなシリンジにて調合される。
【0077】
免疫原性組成物またはワクチンの吸入は、溶液、懸濁液および粉末の形態で達成することができ;これらの製剤は、エアロゾルまたは乾燥粉末吸入器によって投与される。配合粉末は、通気器またはパッファー(puffers)にて投与される。
【0078】
呼吸器疾患を治療するための多価ワクチンの製造のための、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株の使用は、本発明のまた別の側面である。この点に関して、上述の弱毒化変異型ボルデテラ株は、異種抗原を呼吸粘膜へ運ぶための異種性発現プラットフォームとして使用できる。従って、例えばナイセリア、ニューモフィラ(Pneumophila)、エルシニア、シュードモナス、マイコバクテリウム、インフルエンザ等の呼吸病原体は、担体としてBPZE1を使用して感染を予防できる。
【0079】
ボルデテラ感染の治療または予防のためのワクチンの製造のための、本願に記載される生弱毒化変異型ボルデテラ株の使用もまた、本発明に包含される。この点に関して、ワクチンは、B.ペルツシスおよびB.パラペルツシスによる感染症の同時的な治療または予防に使用することができる。
【0080】
ペルツシス伝染病の場合における迅速な防御免疫を提供するワクチンの使用もまた本発明に包含される。
【0081】
予防接種後少なくとも2ヶ月にわたり増加する、迅速な防御免疫を提供するワクチンの使用もまた本発明に包含される。
【0082】
ワクチンまたは免疫原性組成物はまた、キットにて提供される。キットは、ワクチンまたは免疫原性組成物、および免疫化のための説明書を提供する情報パンフレットを含む。
【0083】
本発明はまた、T細胞仲介免疫応答および特にCD4仲介免疫応答またはCD8仲介免疫応答を誘導する方法であって、ヒト以外の哺乳類またはヒト哺乳類において本発明の生弱毒化ボルデテラ株を投与することを含む方法に関する。
【0084】
ボルデテラによる感染によって起こされる疾病から哺乳類を防御する方法であって、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株をそのような治療を必要とする前記哺乳類に投与することを含む方法は、本発明の別の実施態様である。この方法は、ボルデテラ・ペルツシスおよび/またはボルデテラ・パラペルツシスに対する感染症の治療または予防を含む。一側面において、BPZE1株がこの方法に使用される。
【0085】
また、ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を提供する方法であって、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株をそのような治療を必要とする前記哺乳類に投与することを含む方法は本発明に包含される。一側面において、BPZE1株がこの方法に使用される。
【0086】
そのうえ、本発明の変異型生弱毒化ボルデテラ株は、粘膜免疫、ならびに全身性免疫を誘導する。従って、別の側面において、本発明はまた、粘膜性および全身性免疫を誘導する方法であって、そのような治療を必要とする哺乳類に、本発明の変異型生弱毒化ボルデテラ株を投与することで誘導する方法に関する。一側面において、BPZE1株がこの方法に使用される。
【0087】
ボルデテラ感染の予防および/または治療におけるその役割の他に、本発明の変異型株は、関心対象のRNA(例えばアンチセンスRNA)またはタンパク質をコード化する、少なくとも1つの更なる異種性核酸配列を有するベクターとして使用してよい。これは、変異型株が、異種性ampG遺伝子に加えて少なくとも1つの更なる異種性の核酸配列を有することを意味する。一側面において、この少なくとも1つの更なる異種性の核酸配列によってコードされるタンパク質は、その発現が気道において望まれるタンパク質である。別の側面において、関心あるタンパク質は、免疫応答が望まれる抗原、例えばウィルスの、細菌の、または腫瘍の抗原である。従って、少なくとも1つの更なる異種性核酸配列を有する変異型ボルデテラ株もまたワクチンとして使用してよい。ワクチンまたは免疫原性組成物の投与に対する上記の定義は、また、少なくとも1つの更なる異種性核酸配列を有する変異型ボルデテラ株を含むワクチンに適用される。異種性タンパク質の例は、呼吸路の感染症または呼吸路に関連した疾病を引き起こす病原体の抗原:灰白髄炎、インフルエンザ(オルソミクソウイルス科ファミリー由来のインフルエンザウイルス)または肺炎球菌(例えば肺炎連鎖球菌)由来の抗原である。
【0088】
多くの本発明の実施態様を記述した。にもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変を行ってもよいことが理解されるであろう。
【実施例】
【0089】
材料および方法
例1−ボルデテラ株および増殖条件
本研究で使用されるB.ペルツシス株は、全てB.ペルツシスBPSM[13]に由来し、B.パラペルツシスは、菌株12822のストレプトマイシン耐性誘導体である(N.Guiso博士(パスツール研究所、フランス、パリ)による好意的な提供による)。全てのボルデテラ株は、1%のグリセリン、繊維素を除いた20%のヒツジ血液および100μg/mlのストレプトマイシンを添加したBordet−Gengou(BG)寒天(Difco、ミシガン州デトロイト)で増殖させた。細胞付着アッセイのために、指数関数的に増殖しているB.ペルツシスを、600nmにおいて0.15の光学濃度で、1g/lのヘプタキス(heptakis)(2,6−ジ−o−メチル)β−シクロデキストリン(Sigma)を含み、65μCi/mlのL−[35S]メチオニン プラス L−[35S]システイン(NEN、マサチューセッツ州ボストン)を補充した2.5mlの改変Stainer−Scholte培地[14]に播種し、37℃で24時間増殖させた。その後、細菌を遠心分離によって回収し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、所望の濃度でRPMI1640(Gibco、ニューヨーク州グランドアイランド)に再懸濁した。
【0090】
例2−B.ペルツシスBPZE1の構築
B.ペルツシスBPZE1を構築するために、B.ペルツシスampG遺伝子を、対立遺伝子の交換を使用して、E.コリampGと取り替えた。metと名付けられ、かつB.ペルツシスゲノムの位置49,149から49,990(http://www.sanger.ac.uk/Projects/B_pertussis/)(B.ペルツシスampG遺伝子の上流)に位置するPCR断片を、オリゴヌクレオチドA:5’−TATAAATCGATATTCCTGCTGGTTTCGTTCTC−3’(SEQ ID No:5)およびB:5’−TATAGCTAGCAAGTTGGGAAACGACACCAC−3’(SEQ ID No:6)、ならびにテンプレートとしてのB.ペルツシスBPSM[13]ゲノムDNAを使用して増幅した。この634bpの断片を、Topo PCRII(InVitrogen Life Technology、フローニンゲン、オランダ)に挿入し、その後、ClaI−NheI断片として切り出し、ClaIおよびNheIで消化したpBP23[50](E.コリampG遺伝子を含み、その5’および3’末端にそれぞれ、618bp(B.ペルツシスゲノムの位置50,474から51,092)のおよび379bp(B.ペルツシスゲノムの位置52,581から52,960)のB.ペルツシスDNAが隣接した自殺ベクター)に挿入した。得られたプラスミドを、E.コリSM10[51]に移し、その後BPSMを包含させ、記述されるように[52]、2つの連続した相同組換えを選択した。10個の独立したコロニーを、以下の通りにPCRによってスクリーニングした。コロニーを100μlのHOに懸濁し、95℃で20分間加熱し、15,000xgで5分間遠心した。1μlの上清を、その後、PCRのテンプレートとして使用した。そのとき、E.コリampGの存在を検証するために、オリゴヌクレオチドAおよびC:5’−TAAGAAGCAAAATAAGCCAGGCATT−3’(SEQ ID No:7)を使用し、B.ペルツシスampGがないことを検証するために、オリゴヌクレオチドD:5’−TATACCATGGCGCCGCTGCTGGTGCTGGGC−3’(SEQ ID No:8)およびE:5’−TATATCTAGACGCTGGCCGTAACCTTAGCA−3’(SEQ ID No:9)を使用した。その後、E.コリampGを含み且つB.ペルツシスampGがなくなった菌株のうちの1つを選択し、完全なampGの遺伝子座について配列決定した。その後、この株を更なる設計に使用した。
【0091】
[21]に記述されるように、ptx遺伝子をこの菌株の染色体から除去し、その後、不活性PTXをコードする変異型ptxに置き換えた。pPT−RE[16]由来の変異型ptx遺伝子座を含むEcoRI断片を、pJQ200mp18rpsl[53]のEcroRIサイトに挿入した。得られたプラスミドを、E.コリSM10を介したコンジュゲーション(conjugation)後、相同組換えによってptx遺伝子座においてB.ペルツシス染色体に組み込んだ。得られたB.ペルツシス株の染色体のptx遺伝子座について配列決定し、所望の変異の存在を確認した。PTXのサブユニットS1に特異的なIB7[54]ならびにサブユニットS2およびS3に特異的な11E6[55]のモノクローナル抗体の混合物を使用した免疫ブロットにより、毒素生成を分析した。
【0092】
最後に、テンプレートとしてBPSMゲノムのDNA、ならびに、プライマーとして、dnt上流領域のためのオリゴヌクレオチドF:5’−TATAGAATTCGCTCGGTTCGCTGGTCAAGG−3’(SEQ ID No:10)およびG:5’−TATATCTAGAGCAATGCCGATTCATCTTTA−3’(SEQ ID No:11)ならびにdnt下流領域のためのH:5’−TATATCTAGAGCGGCCTTTATTGCTTTTCC−3’(SEQ ID No:12)およびI:5’−TATAAAGCTTCTCATGCACGCCGGCTTCTC−3’(SEQ ID No:13)を使用したPCRによりdnt隣接領域を増幅して、得られたB.ペルツシス株からdnt遺伝子を削除した。得られた799bpおよび712bp DNA断片を、それぞれEcoRI/XbaIおよびXbaI/HindIIIで消化し、Fast Linkキット(Epicentre Biotechnologies、ウィスコンシン州マディソン)を使用してつないだ。結合した断片をオリゴヌクレオチドFおよびIを使用してPCRによって増幅し、その後、1505bpのPCR断片をpCR2.1−Topo(Invitrogen)に挿入し、得られたプラスミドから再度EcoRI断片を単離し、pJQmp200rpsL18のユニークなEcoRIサイトに挿入した。得られたプラスミドは、E.コリSM10を介したコンジュゲーションによってB.ペルツシスに導入した。プローブとしてdnt上流領域に相当するPCR断片を使用して、PvuII−消化B.ペルツシスのゲノムDNAにおけるサザンブロット分析により、対立遺伝子の交換によるdnt遺伝子の良好な欠失を確認した。プローブは、DIG Easy Hyb標識化キット(Roche、メラン、フランス)を使用して、ジゴキシゲニン(DIG)でラベルした。ハイブリダイズしたバンドのサイズを、Dig−labeled DNA molecular marker III(Roche)の移動距離から決定した。BPZE1と名付けたこの最終的な株のdnt遺伝子座について配列決定した。
【0093】
例3−TCT生産の分析
TCT生成の高感度の定量化のために、対数期まで増殖したB.ペルツシスの培養上清を回収し、固相抽出に供し[15]およびイソチオシアン酸フェニル(PITC,Pierce)で誘導体化した。得られたフェニルチオカルバミル(PTC)誘導体を、C8カラム(Perkin Elmer)を使用した逆相HPLCによって分離し、254nmで検出した。各々のサンプルのB.ペルツシスPTC−TCTの量を、ピーク領域および溶出時間を同様に処理したTCT標準物質と比較することによって測定した。
【0094】
例4−細胞接着アッセイ
B.ペルツシス株の接着特性を分析するため、ヒト肺上皮細胞株A549(ATCC n°CCL−185)およびマウスのマクロファージ細胞株J774(ATCC n°TIB−67)に対するそれらの接着率を、以前の記述[16]の通りに測定した。
【0095】
例5−透過型電子顕微鏡
単一の液滴−ネガティブ染色方法を、以下の改変を加えて以前の記述[17]に従って使用した。約10細菌/mlの懸濁液20μlを、ホルムバール炭素コートニッケルグリッド(form formvard carbon−coated nickel grids)(400 mesh; Electron Microscopy Sciences EMS,ペンシルベニア、ワシントン)に、2分間吸着させた。30秒間の空気乾燥の後、グリッドを20μlの2%リンタングステン酸(pH7; EMS)で2分間染色し、空気乾燥の後、60kボルトおよび高分解能で、透過型電子顕微鏡(Hitachi 7500、日本)で試験した。
【0096】
例6−鼻腔内感染およびワクチン接種
3週齢および8週齢のメスのBalb/Cを、特定の病原体がない条件に維持し、全ての実験はパスツール研究所リール動物研究会議(the Institut Pasteur de Lille animal study board)のガイドラインの下で行った。マウスにおいて、20μlのPBSに入った約4x10細菌を鼻腔内に感染させ、肺のCFUの動力学を以前の記述[18]の通りに測定した。aPV(Tetravac; Aventis−Pasteur, France)によるワクチン接種のために、マウスに、ヒト用量の20%で腹腔内(i.p.)に免疫し、および1ヵ月後同じ用量でブーストをかけた。
【0097】
例7−抗体定量
血清を回収し、抗体のタイターを、以前の記述[18]の通りに酵素結合免疫測定法(ELISA)で推定した。
【0098】
例8−サイトカインアッセイ
個々のマウス由来の脾臓細胞を、免疫化後、異なる時点において、熱死滅B.ペルツシスBPSM(10細胞/ml)、5.0μg/ml PTX(以前の記述[20]の通りにB.ペルツシスBPGR4[19]から精製し、80℃20分間の加熱により不活性化した)、5.0μg糸状赤血球凝集素(FHA、以前の記述[22]の通りにB.ペルツシスBPRA[21]から精製)、5μg/mlコンカナバリンA(Sigma Chemical Co.,ミズーリ、セントルイス)またはコントロールとしての培地のみに応答したin vitroでのサイトカイン生成について試験した。37℃および5%COでの72時間のインキュベーションの後、上清を3重の培養からとり、IFN−γおよびIL−5濃度をイムノアッセイ(BD OptEIA set, Pharmingen)によって測定した。
【0099】
例9−鼻腔内感染およびワクチン接種:1、2、3および4週時でのチャレンジ
小児(3週齢)マウスモデル[29]を、BPZE1によるワクチン接種の効率と、無細胞百日咳ワクチン(aPv)によるワクチン接種の効率との比較のために使用した。メスのBalb/Cマウスに、20μl PBS中の約1x10のBPZE1株を鼻腔内に感染させた。aPv(Tetravac; Aventis−Pasteur,France)によるワクチン接種のために、マウスに対しヒト用量の20%で腹腔内に免疫した。BPZE1またはaPvによるワクチン接種の後の1、2、3または4週後、マウスに対し、病原性のB.ペルツシスBPSM/bctA−lacZ株を鼻腔内にチャレンジした[53]。この株は、10μg/mlのゲンタマイシンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(BGgs)を含むBordet−Gengou寒天プレート上でのBPZE1(ゲンタマイシン感受性)の識別が可能な、BPSM−誘導型ゲンタマイシン耐性株である。対照群は、BPSM/bctA−lacZにチャレンジされた未処置マウスに相当する。チャレンジ感染から1週間後、以前の記述[18]の通りに、肺を無菌的に摘出し、均質化しおよびCFU決定のためのBGgsにプレーティングした。
【0100】
マウスに、BPZE1またはaPvでワクチン接種し、摂取から1、2、3または4週後に病原性B.ペルツシスにチャレンジさせた。肺CFUカウントを、3時間後または7日後に測定した。結果は、グループあたり3から5個体のマウスからの平均(標準誤差)CFUとして表す。防御のレベルは、それぞれのチャレンジ感染について、チャレンジ感染から7日後の、非免疫群のCFUの平均に対するそれぞれの群のCFUの平均パーセンテージとして算出する(表2〜5)。
【0101】
例10−統計分析
結果は、適宜、対応のないT検定(unpaired Student’s t test)およびクラスカル−ワーリス検定、その後のダンのポスト検定(Dunn’s post−test)(GraphPad Prism program)を使用して分析した。差は、P≦0.05で有意であるとみなした。
【0102】
結果
B.ペルツシスBPZE1の構築
3つの病原性因子を一般に標的とした:気管細胞毒(TCT)、ペルツシス毒素(PTX)および皮膚壊死性毒素(DNT)。
【0103】
TCTは、感染した宿主の気管における繊毛細胞の破壊の原因となり[24、25]、このため咳症候群に関係する可能性がある。TCTは、グラム陰性菌の細胞壁におけるペプチドグリカンの分解生成物であり、一般にAmpGトランスポータータンパク質によって細胞質内に取り入れられ、細胞壁の生合成の間に再利用される。B.ペルツシスのAmpGは、ペプチドグリカン分解生成物の内部移行において非効率的である。我々は、従って、B.ペルツシスampG遺伝子をE.コリampGと取り替えた。得られた株は、1%未満の残留TCT活性を示した(図1)。
【0104】
PTXは、B.ペルツシス感染の全身的作用の原因となる主要な病原性因子であり、酵素活性部分、S1と呼ばれる部位および標的細胞の受容体への結合の原因となる部分から成る(26参照)。しかしながら、それはまた主要な防御抗原のうちの1であり、このことから、我々は、天然のptx遺伝子を酵素的に不活性な毒素をコードする変異型バージョンに取り替えることを考えた。これは、S1においてLys−9をArgにおよびGlu−129をGlyに取り替えることで達成された。これらの2つの鍵となる残基は、それぞれ基質結合および触媒に関与する。対立遺伝子の交換は、最初にptxオペロンを削除するために使用し、その後、変異型バージョンを挿入するために使用した。B.ペルツシス培養上清中の関連した毒素類似体の存在を、免疫ブロット分析によって評価した(図2)。
【0105】
最後に、対立遺伝子の交換をdnt遺伝子の除去に使用した(図3)。B.ペルツシスの病原性におけるDNTの役割は確かでないものの、それは、密接に関連する種であるボルデテラ・ブロンキセプティカにおいて重要な毒素として同定され、わずかな量の注入にて致死活性を示す(26参照)。
【0106】
B.ペルツシスBPZE1のin vitroでの特徴づけ
BPZE1において一部の遺伝子の変化は細菌の細胞壁合成に潜在的に影響する可能性があるため、BPZE1のサイズおよび形状並びにin vitroの成長速度を、親株BPSMのそれらと比較した。BPZE1の成長速度は、BPSMのそれと異なることはなく(図4)、および、細菌の形状またはサイズの違いは、BPZE1およびBPSMの間では検出されないことが、電子顕微鏡検査法分析によって証明された(図5)。しかしながら、BPZE1の細胞壁は、一貫してBPSMのそれより幾分薄いようであった。
【0107】
BPZE1において何らかの標的とする毒素が欠如したことまたは変化したことが、B.ペルツシスの接着特性に影響するかどうかを決定するために、BPZE1の接着率を、ヒト肺上皮細胞株A549およびマウスのマクロファージ細胞株J774(これら2つの細胞モデルはしばしばB.ペルツシスの接着の研究に使用される)を使用して、BPSMの接着率と比較した。どちらの細胞株に対しても接着能力の有意な差は、2つの株の間でみられなかった(図6)。
【0108】
B.ペルツシスBPZE1の弱毒化
B.ペルツシスBPZE1に導入した変異が弱毒化をもたらし、さらに当該生物の気道でのコロニー形成を可能としたどうかを決定するために、Balb/Cマウスに鼻腔内にBPZE1またはBPSMを感染させ、時間とともにコロニー形成させた。BPZE1は、コロニー形成し、BPSMと同様の長さの間マウスの肺で残存することが可能だった(図7)。しかしながら、BPSMの感染から7日後に観察された増殖のピークは、一貫して、BPZE1を感染させたマウスでは起こらなかった。個々の毒素遺伝子に変異をもった株で行った研究から、これは、ptx遺伝子座での突然変異に起因することが示された(データ示さず)。肺を組織病理学的な変化および炎症性浸潤について調べた際、BPSMの感染は、細気管支の上皮細胞の強い肥大と関連して、感染から7日後において、強いペリ−ブロンキオバスキュラー(peri−bronchiovascular)浸潤および炎症細胞の動員を誘導することがわかった(図8)。対照的に、そのような変化は、BPZE1感染した動物で観察されず、BPZE1感染したマウスの組織学は、細菌の代わりにPBSを受けたコントロールマウスのそれと類似していた。BPSM−感染は、少なくとも2ヵ月間持続する炎症を誘導した(データ示さず)。これらの結果は、BPZE1に導入された突然変異は、急激な弱毒化をもたらすが、肺において細菌がコロニー形成し残存することを可能とすることを示す。
【0109】
BPZE1による成体マウスの鼻腔内ワクチン接種後のB.ペルツシスチャレンジに対する防御
BPZE1によって提供される防御を評価するために、8週齢のBalb/Cマウスに対するこの株の単一の鼻腔内投与の、野生型チャレンジ株BPSMによる、続くコロニー形成における効果を、1/5ヒト用量のaPVによる2つのi.p.免疫化のそれと比較した。このaPV免疫化プロトコールは、ヒト臨床試験における百日咳ワクチンの有効性に関して最も優れたものとして記述されている[27、28]。チャレンジ感染から7日後における肺の細菌コロニー数の総クリアランスから示されるように、BPZE1の単一の鼻腔内投与およびaPVによる2回のi.p.免疫化は、同レベルの防御を提供した(図9a)。細菌の高い負荷は、ワクチンの代わりに2回のPBS注射を受けたコントロールマウスにおいて見られた。
【0110】
BPZE1による乳児マウスの鼻腔内ワクチン接種後のB.ペルツシスチャレンジに対する防御
新規の百日咳ワクチンの主要な標的は、現在利用できるワクチンで防御されない若い乳児であるため、小児(3週齢)マウスモデル[29]を開発し、BPZE1によるワクチン接種の効率とaPVによるワクチン接種による効率とを比較するために使用した。完全な細菌の除去がチャレンジから1週後の肺において認められたため、BPZE1の単一の経鼻投与は、完全に小児マウスをチャレンジ感染から防御した(図9b)。対照的に細菌の実質的な数は、チャレンジ感染から1週間後においてaPV感染動物において維持された。BPZE1ワクチン接種マウスとaPVワクチン接種マウスとの間の細菌の負荷の差は統計的に有意であり、このことは、小児マウスモデルにおいて、BPZE1による単一の鼻腔内投与が、2回のaPVの全身的投与よりも良好な防御を与えることを意味する。
【0111】
加えて、aPV免疫動物と比較して、マウスをBPZE1で免疫した場合、投与から3時間後において、チャレンジ株の細菌負荷の強い減少が一貫して観察され(図9c)、このことは、BPZE1によるワクチン接種は、チャレンジ株による感染に対する感受性を減少させることを示す。この効果は、8週齢および幼いマウスの両方で見られた。対照的に、aPVは、コントロールマウスと比較して、感染から3時間後において、細菌数に何の効果も示さなかった。
【0112】
BPZE1による経鼻ワクチン接種後のB.パラペルツシスチャレンジに対する防御
小児、特に免疫化集団において、B.パラペルツシス感染についての関心が増加している[30,31]。B.パラペルツシスは、より穏やかな百日咳様症候群(その頻度はおそらく大部分は低く見積もられている)を引き起こす。さらに、B.パラペルツシス感染症の発病率は、最近数十年にわたって増加しており、それは恐らく、ペルツシスワクチンは、B.パラペルツシスに対しての防御効果が非常にわずかであり、または防御効果がないことが知られるという事実を原因とする[32、33]。対照的に、B.ペルツシスによる感染は、近年、B.パラペルツシス感染から防御することが報告された[34]。BPZE1もまた、小児マウスモデルを用いて、B.パラペルツシスに対する防御について評価された。以前報告されたように、aPVの2回の投与は、B.パラペルツシスに対して全く防御を提供しなかったにも関わらず、BPZE1の単一の鼻腔内投与は、チャレンジから1週間後のワクチン接種マウスの肺における低いB.パラペルツシス数によって測定されるように、強力な防御を提供する(図9d)。
【0113】
BPZE1ワクチン接種により誘導される免疫応答
B.ペルツシス感染症に対する防御免疫の機構はまだ完全に理解されていないものの、B細胞およびIFN−γの両者に対する役割の明確な証拠がマウスにて実証された[28]。BPZE1の1回の経鼻投与量またはaPVの2回のi.p.投与の何れかによるワクチン接種は、FHA、B.ペルツシスの主要な表面抗原[35]に対する血清IgGを高いタイターで誘導し、これはaPVにおいても見られた(図10a)。B.ペルツシスチャレンジの後、B.ペルツシス感染前の最初の応答と比較して、抗FHA IgGタイターの増大から示されるように、陽性の既往症反応がBPZE1およびaPVでワクチン接種した動物において観察された。抗FHA IgG1/IgG2a比率の試験から、BPZE1ワクチン接種後よりも、aPVワクチン接種後(Th2型応答の特徴)にて、これらの比率が高いことが示された(図10b)。抗FHA−IgG1/IgG2aはaPVワクチン接種マウスにおいてチャレンジ後に減少したにも関わらず、B.ペルツシスチャレンジ後のBPZE1ワクチン接種動物よりも、実質的に高いままであった。
【0114】
BPZE1またはaPVワクチン接種によって誘導されるB.ペルツシス抗原特異的サイトカインパターンの分析から、BPZE1投与が、aPVワクチン接種よりも、より強いTh1型応答を支持することが確認された。このことは、FHAもしくはPTによって、またはポリクローナル活性化因子ConAによって刺激された脾細胞により生産されるIL−5に対するIFN−γの比率は、aPVワクチン接種マウスよりも、BPZE1ワクチン接種マウスにおいて有意に高いという事実により明らかとなった(図10c)。
【0115】
時間ごとの(1週間から4週間)BPZE1の防御免疫
下記の表1〜5に示されるように、aPvの投与は、B.ペルツシスに対して限定された防御(1週目において、非接種のマウスと比較して75%の細菌負荷の減少)を提供するにも関わらず、BPZE1の単一の鼻腔内投与は、すでに、ワクチン接種の1週後に行われるB.ペルツシスのチャレンジ感染に対して、高いレベルの防御(97.64%の細菌負荷の減少)を提供する。チャレンジ感染をワクチン接種の2週間後に行った場合、BPZE1によって誘導される防御のレベルは、非ワクチン接種マウスと比較して99.999%を超え、aPvワクチンによって誘導される防御より有意に優れている(非接種マウスと比較して約92%)。従って、B.ペルツシスチャレンジに対するBPZE1のワクチンの有効性は、ワクチン接種の1週間後にすでに有意であり、且つ少なくとも次の2ヵ月にわたって増加している。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0116】
考察
百日咳は、その発生率が広くワクチンが普及した国で増加している、最初の感染症である。この逆説的な状況は、有効性の高いワクチンの広範囲な導入以来観察される、疫学的な変化に最も関連があるようである。プレ−ワクチン接種(pre−vaccination)年代と対照的に、青年期および成人の百日咳の症例は、現在、次第に頻繁が高まっている。一般に、その世代群にとっては生命を脅かされるものではないものの、B.ペルツシスに感染した成人は、若すぎてワクチン接種による防御が行えない非常に若い子供の感染に対する重要な保有者である。それゆえ、早期(おそらく出生時)のワクチン接種が非常に望ましいものの、それは、新生児および乳児の免疫系の未熟さによって阻まれる。しかしながら、天然のB.ペルツシス感染症は、非常に若い頃であっても、乳児における強いTh1反応を誘導することが可能であるという事実[12]は、我々が現在利用できるワクチンの代替物として経鼻投与される生弱毒化B.ペルツシスワクチン株の開発するきっかけとなった。
【0117】
霊長類の実験的な感染症に基づいて、Huangらは、1962年にすでに、百日咳に対する究極的な防御は生B.ペルツシス接種におそらく最も伴うという結論に達している[36]。獣医学において、弱毒化ボルデテラ株は、イヌおよび子ブタにおける気管支敗血症菌病に対するワクチン接種に使用されてきた。生弱毒化ボルデテラ・ブロンキセプティカ株は、経鼻投与の後、イヌにおける犬小屋咳(kennel cough)に対する強い防御を提供することが示された[37]。この防御は、ワクチン接種から48時間後という早い時期に見られた。生弱毒化B.ブロンキセプティカによる鼻腔内ワクチン接種は、2日齢の子ブタにおいて萎縮性鼻炎に対する防御を与えることがわかっており、このことは、生きた弱毒化の形態においてボルデテラワクチンが、動物新生仔にて非常に活性を有することを示している。
【0118】
生ワクチン候補として遺伝的にB.ペルツシスを弱毒化しようとする以前の試みは、かなり限定された成功に終わった。サルモネラワクチン株の良好な弱毒化に使用された戦略に基づいて[39]、Robertsらは、B.ペルツシスのaroA遺伝子を削除した[40]。aroA変異体は、実際、非常に弱毒化されたが、また、鼻腔内にワクチン接種された動物の気道にコロニーを作る能力を失い、高用量の反復投与後にだけ防御免疫を誘導した。我々は、B.ペルツシスの病原性の分子機構の知識を利用し、高度に弱毒化された株BPZE1を開発した。この株は、3つの主要な毒素、PTX、TCTおよびDNTを持たないまたは不活性化された遺伝的変化を含む。aroA変異体と対照的に、この株は、マウス気道にコロニーを作ることができ、単一の鼻腔内投与後に完全な防御を提供することが可能だった。成体マウスの防御は、ヒト用量の1/5のaPVの2回の投与によって誘導されたそれと区別不能であった。重要な違いは、しかしながら、幼いマウスにおいて、BPZE1の単一投与は完全に防御した一方、aPVは部分的な防御を提供するだけだったことであった。若い頃において、現在利用できるワクチンによる乳児における防御を誘導することが困難な状況では、これらの結果は、非常に若い小児(おそらく出生時)にて使用可能な新規のワクチン接種戦略の開発に対する希望を提供する。加えて、BPZE1はB.パラペルツシスを防御した一方、aPVはそうではなかった。従って、BPZE1の使用はまた、乳児におけるB.パラペルツシスが原因となる百日咳の発病率に影響を及ぼすはずである。
【0119】
多くの国々における、第一世代の細胞全体のワクチンを新規のaPVとする近年の置換は、細胞全体のワクチンに認められる全身的な有害反応を有意に減少させたにも関わらず、それは、防御の達成のための反復するワクチン接種の必要性を消さなかった。このことは、重篤な疾病を発病するリスクが最も高い非常に若い子供(<6ヶ月)において、防御を得る可能性を低くする。加えて、aPVの広範な使用は、新規の思いがけない問題を明らかにした。aPVの反復投与は、注射部位において、細胞全体のワクチンで認められなかった広範な膨張を生じさせる可能性がある[41]。症例の約5%において、この膨張は、ほとんど肢全体に関与し、1週を超えて持続する。この膨張の機構はまだ特徴づけできていないにも関わらず、一次免疫法によって誘導される高い抗体レベルに起因するアルサス過敏反応が原因となることが提唱された[42]。しかしながら、それはまた、免疫応答のTh2スキューイング(skewing)に関連する可能性があった。というのは、細胞全体のワクチンと比較して、aPV投与は、ワクチン接種された小児においてより多くのTh2型サイトカインを誘導し[10]およびTh1発達の遅れを起こすためである(Mascartら、準備中)。Th1機能の遅延性の成熟は、遺伝的素因のある個人において、アトピーのリスクと関係していた[33]。2つの機構は、互いに相容れないわけではない。aPVと比較して、BPZE1投与に対する免疫応答はTh2アームにさほど偏らず、および、BPZE1は粘膜投与されるため、膨化反応は起こり得ない。
【0120】
ワクチンとしての生弱毒化細菌の使用は、それらの生物学的安全性の問題を引き起こす。それ自体、それらは、環境に放出されやすい遺伝子改変生物のための指導およびガイドラインに管理される。これらのガイドラインおよび指導は、傷害性確認および環境リスクアセスメントを含む、満たさなければならない幾つかの目的を記述する[44]。潜在的な病原性は、特に免疫無防備状態の個人(例えば、HIVに感染した個人)において、慎重に考えられる必要がある。B.ペルツシスの天然の生物学は、特にその事について興味深い。HIV感染者におけるペルツシスが時々記述されてきたものの、それはエイズ患者ではかなり珍しい[45]。その遺伝的に弱毒化された形態において、B.ペルツシスは、従って、特に現に多くのワクチンがそうであるように重篤なエイズが除外基準である場合、HIV感染した小児において大きな問題を起こすとは予想されない。B.ペルツシスのコロニー形成は、細菌が肺外に伝播することなく厳密に気道上皮に限られており、これは本来BPZE1ワクチン株の全身菌血症を除外する。にもかかわらず予知できない安全上の問題が起こる場合、ワクチン株は、マクロライド系抗生物質(例えばエリスロマイシン)の使用によって容易に除去でき、本質的に全てのB.ペルツシス分離株はこれに対して非常に感受性が高い。
【0121】
例えば何かの生ワクチンについての更なる懸念は、環境へのワクチン株の潜在的放出およびそのような放出の結果である。B.ペルツシスは厳密にヒト病原体であり、動物ベクターまたは保有体は存在しない。そのうえ、B.ブロンキセプティカと異なり、環境中の野生型B.ペルツシスの生存は非常に限定されている[46]。ペルツシスは、咳をする個人によってのみ広がり、無症候性の保因は存在しないようである[47]。本研究で使用したマウスモデルでは、咳を評価することができない。しかしながら、BPZE1の遺伝子の変化の性質、特にTCTの強い減少およびPTXの遺伝子の不活性化により、この株は咳を誘導しないと期待される。活性PTXは、咳をするラットモデルにおける咳誘導のために必要であることが示されたが、その機構は未知である[48]。にもかかわらず、ワクチン株が非ワクチン接種個人に伝染された場合、これは、最悪の場合、ワクチン適用範囲の増大をもたらす。従って、これらの潜在障害の各々の結果は無視できるとして類別でき、容易におよび迅速に必要に応じて抗生物質の治療によって制御される。
【0122】
BPZE1の使用の利点は、比較的安い生産コスト(発展途上国にとって、それは特に魅力的である)、針が不要であり容易でおよび安全な投与の様式、ならびに全身性免疫に加えて粘膜免疫を誘導するその潜在性を含む。ペルツシスに対する粘膜免疫の役割は、意外にもそれほど言及されていないにもかかわらず、B.ペルツシスが厳密に粘膜の病原体であるという事実は、粘膜の免疫応答は有意に防御に関与するかもしれないことの可能性を高める。どの現在利用できるワクチンも、何かの有意な粘膜反応を誘導しない。
【0123】
ワクチン接種におけるBPZE1の使用のその他の利点は、以下の通りである:
− 免疫の誘導がワクチン接種から1週間後に検出できることによる、BPZE1の単一の鼻腔内の投与の後で得られる迅速な防御免疫応答、
− ワクチン接種後の少なくとも次の2ヵ月にわたる防御免疫の増加、および
− ワクチン接種から2週間後において、99.999%を超える防御のレベルが得られることによる、完全な防御免疫。
【0124】
粘膜のワクチン接種のための生弱毒化B.ペルツシスの使用は、さらにもう一つの利点を提供する。B.ペルツシスは、呼吸粘膜に対する異種抗原の提示のために使用できる(49参照)。異種性の発現プラットフォームとしてのBPZE1の使用は、従って、種々の呼吸病原体に対する多価ワクチンの産生に有益であってよい。しかしながら、本願で抗FHA抗体および抗原特異性IFN−γ生産の両者の高いレベルに示されるように、BPZE1の鼻腔内の送達も、強い全身性免疫応答を誘導するため、それは、また、全身性免疫応答が要求される抗原の生産のために使われてもよい。
【0125】
本発明が様々な好ましい実施態様に関して記述された一方で、様々な改変、置換、省略および変化を、それの範囲から逸脱することなく行ってよいことが当業者は認めるであろう。従って、本発明の範囲は本願の特許請求の範囲に限定されず、それの等価物を含むことが意図される。
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【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、BPSMおよびBPZE1の培養上清に存在するTCTを示す棒グラフであり、それぞれの株について、3つの独立した培養のnM/OD540nm(±標準誤差)の平均として表される。
【図2】図2は、BPSM(レーン1)およびBPZE1(レーン2)の培養上清中のPTX生産の免疫分析である。MrマーカーのサイズはkDaで表され、左の余白に示される。
【図3】図3は、BPSM(レーン1)およびBPZE1(レーン2)における、dnt遺伝子座のサザンブロット分析である。サイズマーカーの長さは、塩基対(bp)で表され、左の余白に示される。
【図4】図4は、液体培養におけるBPSM(黒線)およびBPZE1(破線)の増殖速度を表すグラフである。
【図5】図5は、液体培地で24時間培養したBPSM(左)およびBPZE1(右)の代表的な電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、ヒト肺上皮A549細胞(左)およびマウスマクロファージ様J774細胞(右)に対する、BPSM(黒カラム)およびBPZE1(白カラム)のin vitro接着を示すグラフである。結果は、3回の異なる実験に基づいた、接種材料中に存在する細菌に対する結合した細菌のパーセンテージの平均として表す。
【図7】図7は、10CFUでBPZE1またはBPSMを鼻腔内的に感染させた成体マウスの、BPSM(黒線)およびBPZE1(破線)による肺コロニー形成を表すグラフである。結果は、1群あたり3から4個体のマウスのCFUの平均(±標準誤差)で表され、2つの独立した実験を表す。*は、P=0.004である。
【図8】図8は、PBSを与えられたコントロール(下パネル)と比較した、BPZE1感染(上パネル)またはBPSM感染(中パネル)成体マウス由来の肺の組織学的分析の写真である。感染から1週間後、肺を無菌的に取り出し、ホルムアルデヒドで固定した。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、光学顕微鏡で観察した。
【図9】図9は、(a)成体および(b)乳児のマウスにおけるB.ペルツシスに対する防御、または(d)乳児のマウスにおけるB.パラペルツシスに対する防御を示すグラフである。BPZE1、aPVまたはPBS(未処置)で免疫したマウスをBPSM(aおよびb)またはB.パラペルツシス(d)によるチャレンジに供し、および肺のCFU数値を3時間後(白バー)または7日後(黒バー)に決定した。結果は、1群あたり3−4マウスの平均(±標準誤差)CFUとして表され、2つの独立した実験を表す(bの*はP=0.009であり;dの*はP=0.007である)。(c)BPZE1またはaPVでワクチン接種した成体マウスにおけるBPSMチャレンジから3時間後において、CFUを計測し、コントロールと比較した。3つの異なる実験から得た結果は、同じ実験による非免疫化群におけるCFUの平均との比較による、それぞれのマウスのCFUのパーセンテージとして表される。
【図10】図10は、BPZE1またはaPV免疫化による誘導される免疫応答を表す棒グラフである。(a)および(b)は、BPZE1またはaPV免疫化マウスでのBPSMチャレンジ前(白バー)または1週間後(黒バー)における、コントロールとの比較による、(a)抗FHAIgG(H+L)タイターおよび(b)IgG1/IgG2比である。(c)は、コントロール(グレーバー)との比較による、2ヶ月前にBPZE1(黒バー)またはaPV(白バー)をワクチン接種したマウス由来の、FHA、PTXまたはConA刺激した脾細胞により生産されたIFN−γとIL−5との比である。抗体およびサイトカインは個々のマウスで測定し、結果は、1群あたり4個体のマウスを3重で試験し、その平均値(±標準誤差)で表した。
【図11】図11は、ペルツシス毒素のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)(島活性タンパク質S1)である。最初の34アミノ酸はシグナル配列であり、35から269アミノ酸は成熟鎖(mature chain)である。
【図12】図12は、皮膚壊死性毒素のアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)である。
【図13】図13は、ボルデテラ・ペルツシス由来のAmpGのアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)である。
【図14】図14は、エシェリシア・コリ由来のAmpGのアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも変異型ペルツシス毒素(ptx)遺伝子、欠失型または変異型皮膚壊死性毒素(dnt)遺伝子、および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株。
【請求項2】
ボルデテラ・ペルツシス株である請求項1に記載の変異型ボルデテラ株。
【請求項3】
請求項1または2に記載の変異型ボルデテラ株であって、ボルデテラampG遺伝子がE.コリampG遺伝子に置換されている変異型ボルデテラ株。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株であって、得られる株が5%未満の残留TCT活性を発現する変異型ボルデテラ株。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株であって、得られる株が1%未満の残留TCT活性を発現する変異型ボルデテラ株。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株であって、前記ptx遺伝子の変異が、基質結合に関連する1アミノ酸および/または触媒に関連する1アミノ酸の置換に存する変異型ボルデテラ株。
【請求項7】
ボルデテラ・ペルツシス株である請求項6に記載の変異型ボルデテラ株であって、前記基質結合に関連するアミノ酸の置換がK9Rであり、且つ、前記触媒に関連するアミノ酸の置換がE129Gである変異型ボルデテラ株。
【請求項8】
3重変異株である請求項1から7の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株。
【請求項9】
2006年3月9日に番号I−3585として国立培養微生物収集所(C.N.C.M.)に寄託されたBPZE1株である、請求項8に記載の3重変異型ボルデテラ株。
【請求項10】
弱毒化された請求項1から9の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株を含む免疫原性組成物。
【請求項12】
更に、医薬的に適した賦形剤、媒体および/または担体を含む請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
更にアジュバントを含む請求項11または12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
ボルデテラ感染またはボルデテラ感染の有害な効果に対する予防的な効果を有する分子を更に含む請求項11から13の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記変異型ボルデテラ株がBPZE1である請求項11から14の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
請求項10に記載の弱毒化ボルデテラ株を含むワクチン。
【請求項17】
鼻腔内投与のために処方された請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
請求項16または17に記載のワクチンおよび情報パンフレットを含むキット。
【請求項19】
ボルデテラ種に起因する感染に対するワクチンとしての使用のための請求項10に記載の弱毒化ボルデテラ株。
【請求項20】
ボルデテラ種に起因する感染に対する予防ワクチンとしての使用のための請求項19に記載の弱毒化ボルデテラ株。
【請求項21】
前記ボルデテラ種がB.ペルツシスまたはB.パラペルツシスである、請求項19または20に記載の弱毒化ボルデテラ株。
【請求項22】
前記変異型ボルデテラ株がBPZE1である、請求項10に記載のまたは請求項19から21の何れか1項に記載の弱毒化ボルデテラ株。
【請求項23】
ボルデテラ感染の予防のためのワクチンの製造のための請求項10に記載の弱毒化ボルデテラ株の使用。
【請求項24】
B.ペルツシスおよびB.パラペルツシス感染に対する同時的予防のためのワクチンの製造のための請求項10に記載の弱毒化ボルデテラ感染の使用。
【請求項25】
前記弱毒化ボルデテラに対するTh1経路に優先的に向けられる免疫応答の誘導のためのワクチンの製造のための請求項10に記載の弱毒化ボルデテラ株の使用。
【請求項26】
請求項23から25の何れか1項に記載の弱毒化ボルデテラの使用であって、前記ワクチンが、皮下(s.c.)、皮内(i.d.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、経口または鼻腔内投与によって、注射によって、あるいは、吸入によって投与される使用。
【請求項27】
前記ワクチンが鼻腔内に投与される、請求項23から25の何れか1項に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項28】
前記ワクチンが、ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を必要とする哺乳類に投与される、請求項23から25の何れか1項に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項29】
前記ワクチンが新生児に投与される請求項28に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項30】
前記ワクチンが子供に投与される請求項28に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項31】
前記ワクチンが鼻腔内に投与される、請求項28から30の何れか1項に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項32】
前記ワクチンが単一投与で1回投与される、請求項28から31の何れか1項に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項33】
a)請求項10に記載のまたは請求項19から22の何れか1項に記載の株の投与;および、b)同一の株もしくは無細胞ワクチンまたは両者の組み合わせの何れかによる少なくとも1回のリコールの実行を含む、請求項23から27の何れか1項に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項34】
前記ワクチンが、ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を必要とする哺乳類に投与され、前記防御免疫がワクチン接種後少なくとも2ヶ月にわたり増大する、請求項23に記載の弱毒化ボルデテラの使用。
【請求項35】
呼吸性疾患を治療するための多価ワクチンの製造のための、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株の使用。
【請求項36】
前記変異型ボルデテラ株がBPZE1である請求項23から35の何れか1項に記載の使用。
【請求項37】
ボルデテラ感染に対する防御のレベルが95%を超え、特に99%を超える請求項23から36の何れか1項に記載の使用。
【請求項38】
ボルデテラ感染に対する前記防御のレベルが99.999%超に達する請求項37に記載の使用。
【請求項39】
ボルデテラによる感染に起因する疾病から哺乳類を防御する方法であって、そのような治療が必要な前記哺乳類に、少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株を投与することを含む方法。
【請求項40】
ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を提供する方法であって、そのような治療を必要とする前記哺乳類に少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株を投与することを含む方法。
【請求項41】
請求項39または40に記載の方法であって、前記ボルデテラ感染がボルデテラ・ペルツシスおよびボルデテラ・パラペルツシスに由来する方法。
【請求項42】
前記哺乳類が新生児である請求項39から41の何れか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳類が子供である請求項39から41の何れか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項39から43の何れか1項に記載の方法であって、前記変異型ボルデテラ株が、皮下(s.c.)、皮内(i.d.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、経口または鼻腔内投与され、注射によって投与され、あるいは、吸入によって投与される方法。
【請求項45】
前記変異型ボルデテラ株が鼻腔内投与される請求項39から43の何れか1項に記載の方法。
【請求項46】
哺乳類におけるボルデテラ感染の治療のための粘膜応答および全身的応答を提供する方法であって、そのような治療を必要とする哺乳類に請求項10に記載の弱毒化ボルデテラ株を投与する方法。
【請求項47】
ボルデテラ感染に対する迅速な防御免疫を提供する方法であって、そのような治療を必要とする前記哺乳類に少なくとも変異型ptx遺伝子、欠失型または変異型dnt遺伝子および異種性ampG遺伝子を含む変異型ボルデテラ株を投与することを含み、前記方法は、ワクチン接種後少なくとも2ヶ月にわたる前記防御免疫の増大を更に提供する方法。
【請求項48】
前記変異型ボルデテラ株がBPZE1である請求項39、40または47に記載の方法。
【請求項49】
請求項39から41に記載のまたは請求項47に記載の方法であって、ボルデテラ感染に対する防御のレベルが95%を超え、特に99%を超える方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、ボルデテラ感染に対する前記防御のレベルが99.999%超に達する方法。
【請求項51】
請求項1から10の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株であって、更に、RNAまたはタンパク質をコードする少なくとも1つの異種性核酸配列を含む変異型ボルデテラ株。
【請求項52】
前記少なくとも1つの異種性核酸配列が抗原をコードする請求項51に記載の変異型ボルデテラ株。
【請求項53】
前記少なくとも1つの異種性核酸配列がウイルスのまたは細菌の抗原をコードする請求項52に記載の変異型ボルデテラ株。
【請求項54】
少なくとも1つの異種性抗原を発現するためのベクターとしての、請求項1から10の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株の使用。
【請求項55】
ワクチンとしての使用のための、請求項51から53の何れか1項に記載の変異型ボルデテラ株。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−529338(P2009−529338A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558682(P2008−558682)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001942
【国際公開番号】WO2007/104451
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(591282973)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR DE LILLE
【出願人】(596005872)アンスティテュ・ナシオナル・デゥ・ラ・サンテ・エ・デゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル (8)
【Fターム(参考)】