説明

皮付おにぎりの製造方法

【課題】従来よりも手が汚れにくく、かつ、食感のよい皮付おにぎりの製造方法を提供する。
【解決手段】凹状の2つのもち米製の皮でおにぎりを包んだ皮付おにぎりの製造方法であって、洗米(S11)、吸水(S12)、脱水(S13)、製粉(S14)、蒸し上げ(S15)、搗き上げ(S16)、延ばし(S17)、裁断(S18)、焼き上げ(S19)を含む作業によってもち米からもち米製の皮を作製する皮作製工程と、もち米製の皮の内側に防水加工を施す作業(S21)、防水加工したもち米製の皮におにぎりを詰める作業(S22)、おにぎりを詰めたもち米製の皮に他のもち米製の皮で蓋をする作業(S23)、を含むおにぎり詰め工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もち米製の皮でおにぎりを包んだ皮付おにぎりの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米を主食とする我が国において、古来から、炊いた米に味をつけたり具を入れたりしてから三角形、俵形あるいは球状などに握って固めて作るおにぎりは、馴染みの深い食べ物である。おにぎりは、作るのが簡単、具材のバリエーションが多い、米を一度加熱しているので保存性が高い、コンパクトで携行性に優れるなど、多くの利点を有しており、現代においても、家庭で多く作られるほか、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの販売店においても多く販売されている。
【0003】
また、おにぎりに関して、これまでに、様々な工夫がなされてきた。例えば、おにぎりを海苔で包むことで、手が汚れにくくなるとともに、味がよくなる。また、特許文献1に開示されているように、コンニャクなどの透明又は半透明を有する無味の食品素材によって薄板状に形成されたシート材でおにぎりを包むことで、海苔で包む場合に比べて、中身の具材が見える、冷凍可能となるというメリットがある。さらに、表面を焼成した焼きおにぎりとすることで、海苔や前記シート材などでおにぎりを包まなくても手が汚れにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−209537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来技術のいずれにおいても、おにぎりを素手で持つと若干ながら手が汚れるという欠点があった。また、形状を保持するためにご飯を圧縮しておにぎりとしているため、硬くて食感がよくないなどの欠点もあった。
【0006】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、従来よりも手が汚れにくく、かつ、食感のよい皮付おにぎりの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、凹状の2つのもち米製の皮でおにぎりを包んだ皮付おにぎりの製造方法であって、洗米、吸水、脱水、製粉、蒸し上げ、搗き上げ、延ばし、裁断、焼き上げを含む作業によってもち米からもち米製の皮を作製する皮作製工程と、もち米製の皮の内側に防水加工を施す作業、防水加工したもち米製の皮におにぎりを詰める作業、おにぎりを詰めたもち米製の皮に他のもち米製の皮で蓋をする作業、を含むおにぎり詰め工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来よりも手が汚れにくく、かつ、食感のよい皮付おにぎりの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】皮付おにぎりの外観図である。
【図2】図1の皮付おにぎりにおけるA−A矢視断面図である。
【図3】皮付おにぎりの製造方法の作業の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る皮付おにぎりの製造方法を実施するための形態(以下、実施形態という。)について、図面を参照して説明する。なお、使用する各装置については公知のものと同様であるので、図示や詳細な説明を省略する。また、本実施形態では、延ばしたもちを裁断したものを「生地」と称し、その生地を焼き上げたものを「皮」(後記する上側の皮2と下側の皮3)と称し、その皮の内部に入れるものを、圧縮の有無や具材の有無などに関係なく「おにぎり」と称する。
【0011】
まず、理解を容易にするために、完成した皮付おにぎりについて説明する。図1に示すように、完成した皮付おにぎり1は、上側の皮2と下側の皮3が合わせられ、その内部におにぎりが包まれている。皮付おにぎり1は、円盤型で中央部分が少し膨らんだ形状となっている。また、図2に示すように、皮付おにぎり1において、上側の皮2の内側には防水層21があり、下側の皮3の内側には防水層31があり、上側の皮2と下側の皮3の内部におにぎり(米粒4と具材5(例えば、焼いた紅鮭など)の集合体)が配置されていることがわかる。
【0012】
このような皮付おにぎり1の製造方法は、図3に示すように、皮作製工程と、おにぎり詰め工程と、仕上げ工程と、から構成される。
皮作製工程では、まず、ステップS11において、皮の原材料であるもち米を水洗いする(洗米)。
次に、ステップS12において、洗米後のもち米を、常温程度(約10〜20℃程度)の水に約40分間浸す(吸水)。この吸水の作業の目的は、もち米に水を適度に吸収させることである。したがって、その目的のために、吸水の時間は、季節(季節によってもち米の含水量が異なる。)や水温によって調節すればよい。
【0013】
次に、ステップS13において、吸水後のもち米を、含水量が90g/kg以下(例えば、約85g/kg)になるまで脱水を行う。この脱水の作業では、もち米における水分をほぼ均一に脱水する必要があり、例えば、回転による遠心力などを利用したカゴ型の脱水機により実現することができる。
【0014】
次に、ステップS14において、脱水後のもち米を、胴突製粉機を用いて、120メッシュよりも粗い粒度(例えば、約100メッシュの粒度)で製粉する。なお、100メッシュの粒度とは、1インチ(25.4cm)あたりの目の数が100の格子状の網(金網など)を通過させて得られる粉体の粒度である。また、この製粉の作業では、目標の粒度よりも粗いものと細かいものをそれぞれのふるいで選別して取り除く作業を併せて行う。
【0015】
次に、ステップS15において、製粉したもち米に対して約220cc/kgの水を加えて混ぜた後、蒸し器を用いて、もち米の内部に熱が充分通るまで蒸し上げる。
次に、ステップS16において、蒸し上げ後のもち米を、胴突機を用いて、もちになるまで搗き上げる。
次に、ステップS17において、搗き上げたもち(もち米)を、麺棒を用いて手作業で、2〜3.5mm程度(例えば、約3mm)の厚さに延ばす。なお、この延ばしの作業は、専用の延展機を用いて行ってもよい。
【0016】
次に、ステップS18において、延ばしたもちを、裁断機を用いて、約60mm×約10mmの四角形状に裁断して生地を作製する。
次に、ステップS19において、各生地を、焼成機を用いて140〜180℃の温度(例えば、約160℃)で焼き上げる。なお、焼成機の型が略半球状となっており、生地は焼き上げによって膨張し、略半球状の皮となる。焼き上がった皮が、上側の皮2(蓋の役割をする皮)および下側の皮3(おにぎりが詰められる皮)に相当する。以下、上側の皮2および下側の皮3を単に「皮」とも表記する。
【0017】
続いて、おにぎり詰め工程では、まず、ステップS21において、各皮の内側に防水加工を施す、つまり、上側の皮2に防水層21を形成し、下側の皮3に防水層31を形成する。防水層21と防水層31を形成するために、上側の皮2と下側の皮3の内側に、食用油脂、食用ロウ、食用ワックスのいずれかを塗布する。具体的には、例えば、皮の内側に、シードオイル(種子油)、オリーブオイル、サラダオイル、カルナウバロウ(カルナウバヤシの葉から抽出された油)、ミツロウ(ミツバチから分泌されるロウ)、ラード、牛脂、ショートニングのいずれかを塗布する。
【0018】
また、ラードや牛脂などを塗布した場合は、さらにその上に食用粉末を塗布してもよい。食用粉末を塗布するのは、皮の内側のラードなどがおにぎり側に移って、皮付おにぎり1の皮をはいだときに見た目が悪くなるのを防ぐためである。また、食用粉末によって味や食感が劣化しないことも重要である。それらの目的のため、食用粉末としては、水溶性で高保水性のものを使用するのが好ましい。そのような食用粉末として、例えば、寒天に代表される水溶性食物繊維の粉末や、トレハロース・無水結晶マルトースなどの二糖類などを使用すればよい。
なお、前記した種々の塗布には、はけや専用の機械などを用いればよい。
【0019】
次に、ステップS22において、下側の皮3におにぎり(ご飯と具材)を詰める。その際、下側の皮3が硬いため(詳細は後記)、形状維持のために下側の皮3に詰めるおにぎりを圧縮する必要がなく、食感のためだけにおにぎりの圧縮度を調節することができる。ここでは、例えば、下側の皮3にまず白米(複数の米粒4)を詰め、その上に具材5を載せる。なお、白米は、作業や風味の関係上、冷める前に詰めるのがよい。
【0020】
次に、ステップS23において、おにぎりを詰めた下側の皮3に対して、上側の皮2の皮で蓋をする。
なお、ステップS21〜S23の作業は、専用の機械によって実現してもよいし、あるいは、人手によって実現してもよい。
【0021】
最後に、ステップS31において、おにぎりを詰めた下側の皮3に上側の皮2で蓋をした皮付おにぎり1に対して、バーナー、炭火、ヒーターなどで表面に焦げ目をつける。この作業も、専用の機械によって実現してもよいし、あるいは、人手によって実現してもよい。
【0022】
このようにして、図1、図2に示す皮付おにぎり1が完成する。なお、皮付おにぎり1の全体の厚みは約20mmで直径は約70mmとなる。
【0023】
このように、本実施形態の皮付おにぎり1の製造方法によれば、まず、皮の材料としてもち米を使用したことで、内部に詰めるおにぎりとの相性がよく、おいしい皮付おにぎり1を製造することができる。
また、皮作製工程の脱水の作業(図3のステップS13)において、含水量が90g/kg以下になるまでもち米の脱水を行い、さらに、皮作製工程の製粉の作業(図3のステップS14)において、120メッシュよりも粗い粒度で製粉を行って粉の粒子を粗くすることで、硬めの皮(上側の皮2と下側の皮3)を作ることができる。皮が硬いことで、完成時の皮付おにぎり1の内部のおにぎりが柔らかくても(硬く握られていなくても)、皮付おにぎり1自体の形状を維持するだけの強度を確保できる。つまり、おにぎりを硬めの皮で包むことにより皮付おにぎり1を素手で食べても手が汚れにくくなり、また、皮が硬いことで形状維持のために内部のおにぎりを圧縮する必要がなく食感のためだけにおにぎりの圧縮度を調節することができる。また、皮作製工程の蒸し上げの作業(図3のステップS15)において、製粉したもち米に対する加水量が約220cc/kgと少な目であることも、皮を硬くすることに寄与している。
【0024】
なお、本実施形態の皮と大まかな工程は同様に製造され最中などのお菓子に使用される皮では、脱水後の含水量が100g/kg程度であり、製粉後の粉の粒度は140メッシュ程度であり、製粉したもち米に対する加水量は約250cc/kg程度であり、お菓子風の風味や食感が実現される。
【0025】
また、本実施形態の皮付おにぎり1の製造方法によれば、皮作製工程の延ばしの作業(図3のステップS17)において、後に皮となるもちを2〜3.5mmの厚さに薄く延ばすことで、皮付おにぎり1を食べたときに内部のおにぎりの風味を皮が損なわないで済む。
なお、最中などのお菓子に使用される、後に皮となるもちの厚さは4mm程度である。
【0026】
また、皮作製工程の焼き上げの作業(図3のステップS19)において、皮を140〜180℃の温度で焼き上げることで、皮にもち米本来の風味を与えることができる。つまり、それよりも高い温度で焼くと、皮が狐色となってもち米本来の風味が減少する。
なお、最中などのお菓子に使用される皮は、通常200〜250℃の温度で焼き上げられ、お菓子風の風味や食感となり、皮付おにぎり1の皮には適さない(内部のおにぎりの食感や味の邪魔をする)。
【0027】
また、おにぎり詰め工程の防水加工を施す作業(図3のステップS21)において、もち米製の皮の内側に、食用油脂、食用ロウ、食用ワックスのいずれかを塗布することで、防水加工を適切に実現することができる。この防水加工の一番の目的は、完成した皮付おにぎり1において、内部のおにぎりの水分が上側の皮2や下側の皮3に吸収されて、上側の皮2や下側の皮3が溶解、変形、破断などするのを防ぐことである。また、防水加工が不十分であると、仕上げ工程によって皮付おにぎり1の表面に焦げ目をつけても、サクサクとした食感が短時間(1分程度)で失われてしまう。この防水加工により、皮付おにぎり1の劣化を抑制し、その商品価値の低下を抑制することができる。なお、防水効果の他に、塗布する材料自体の融点や味やその材料費の多寡などを考慮して、防水加工に使用する材料を選択してもよい。
【0028】
また、仕上げ工程の表面に焦げ目をつける作業(図3のステップS31)において、皮付おにぎり1の表面を焦がすことで、風味やサクサクとした食感を得ることができる。なお、この仕上げ工程は必須ではなく、実施の有無を適宜選択することができる。
また、皮付おにぎり1は、外観がハンバーガーなどのファーストフードなどと似ていることで、近代的でお洒落なイメージを消費者に与えることができる。
【0029】
以上で本実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
例えば、おにぎりとしてご飯に混ぜる(挟む、載せるなど)具材5は、紅鮭でなくても、漬物、ゴマ、フキミソ(フキノトウを細かく刻んで味噌とあわせて油で炒めたもの)、細かく刻んだ野沢菜の油いため、小魚などの佃煮、キャラブキ、カリカリ梅(梅の塩漬けを細かく刻んだもの)、イクラの醤油漬け、ニシンの生姜焼き、鮭フレークなど何でもよい。
【0030】
また、おにぎりは、メインが白米でなくても、チャーハン、ドライカレー、おこわ、各種炊き込みご飯(具材は、例えば、栗、たけのこ、松茸、山菜、さつまいも、鯛、鶏肉、しめじ、ぎんなんなど)、そばめし(焼きそばとご飯を鉄板で炒めたソース味の焼飯)など、全体的に味付けされたものであってもよい。
【0031】
また、吸水の時間、皮のサイズ、完成した皮付おにぎり1のサイズなどは一例を示したものであって、これらに限定されるものではない。
また、皮付おにぎり1の形状は、円盤状でなくても、球形、楕円球形、三角形、四角形、その他の多角形、星形など任意の形状でよい。その場合、皮(上側の皮2、下側の皮3)を予めその形状に合わせて作製することは言うまでもない。
【0032】
また、皮付おにぎり1の皮の内部はご飯だけとしてもよい。その場合、皮付おにぎり1と、別に用意した具材とを一緒に食べるなどすればよい。
その他、具体的な構成や方法について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 皮付おにぎり
2 上側の皮
3 下側の皮
4 米粒
5 具材
21,31 防水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状の2つのもち米製の皮でおにぎりを包んだ皮付おにぎりの製造方法であって、
洗米、吸水、脱水、製粉、蒸し上げ、搗き上げ、延ばし、裁断、焼き上げを含む作業によってもち米から前記もち米製の皮を作製する皮作製工程と、
前記もち米製の皮の内側に防水加工を施す作業、前記防水加工したもち米製の皮におにぎりを詰める作業、前記おにぎりを詰めたもち米製の皮に他のもち米製の皮で蓋をする作業、を含むおにぎり詰め工程と、を有する
ことを特徴とする皮付おにぎりの製造方法。
【請求項2】
前記皮作製工程の焼き上げの作業において、前記裁断の作業によって得られた生地を140〜180℃の範囲のいずれかの温度で焼き上げて皮を作製する
ことを特徴とする請求項1に記載の皮付おにぎりの製造方法。
【請求項3】
前記おにぎり詰め工程の防水加工を施す作業において、前記皮作製工程によって得られたもち米製の皮の内側に、食用油脂、食用ロウ、食用ワックスのいずれかを塗布する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の皮付おにぎりの製造方法。
【請求項4】
前記おにぎり詰め工程の防水加工を施す作業において、前記皮の内側に、さらに食用粉末を塗布する
ことを特徴とする請求項3に記載の皮付おにぎりの製造方法。
【請求項5】
前記おにぎり詰め工程の後に、前記皮付おにぎりを加熱することで前記皮の表面に焦げ目をつける作業を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の皮付おにぎりの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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