説明

皮脂汚れ付着方法および防汚性評価方法

【課題】
衣料に付着する皮脂汚れの付き方を再現するとともに、皮脂汚れを目視で見えるようにすることによって、防汚加工品の皮脂汚れの付きにくさや、洗濯後の皮脂汚れの残留状態を定量的に評価することができる評価方法を提供することができる。
【解決手段】
回転する下部支持台に人工皮脂を一定量塗布した人工皮革を取り付け、上部試料ホルダーにクッション材を介して取り付けた被評価布帛を、一定の押圧荷重をかけ、回転させながら擦りつけることを特徴とする皮脂汚れ付着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚加工品の皮脂汚れの付きにくさや、洗濯後の皮脂汚れの残留状態を定常的に評価するための皮脂汚れ付着方法および防汚性評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服における防汚性評価方法は、JIS L1919に示されている方法の他にも、防汚加工技術の開発と共に多様な方法が提示されている。たとえば、皮脂や食品や機械油などの汚れに対する防汚性評価方法は、液状の牛脂、ダイヤペースト、オレイン酸、B重油などを被評価布帛に滴下する方法が提案されている(特許文献1〜3)。しかしながら、実際に衣服を着用した状態で汚れが付着する場合、食品汚れや機械油汚れは、液状のまま衣服に付着することもあるが、皮脂汚れは、皮脂腺からにじみ出て皮膚表面に広がった皮脂が着用中長時間にわたり衣服が肌に軽く擦りつけられ続けることによって付着するものであるから、液状の汚れ剤を滴下するのは実際の現象とは異なるものである。中でも肌着は、直接肌に接触することによって付着する皮脂汚れや蛋白汚れが主であるが、これらの目に見えにくい無色の汚れに対する適切な評価方法は見当たらなかった。
【0003】
また、泥汚れを多量に塗布したり、芝をすりつぶすと同時に擦りつけたりする方法や、カーボンなどの微細な粉体汚れを撹拌によって擦りつける方法も提案されている(特許文献4〜5)。しかしながら、これらの方法は付着量のコントロールが難しく、データにバラツキが大きくなると言う欠点があった。
【0004】
防汚性評価は、古くは、洗濯時に起こる汚染が主であり、この場合はJIS L0844に示される洗濯堅牢度試験によって評価する方法がとられていた。近年、汚れが付きにくい、もしくは、汚れが付着しても容易に落とすことができる防汚加工製品が市場に大量に供給されてきており、その性能や効果は多様であるが、一部を除き、適切な統一した評価方法が無いのが現状である。
【特許文献1】特開2003−105319号公報
【特許文献2】特開2006−152508号公報
【特許文献3】特開2002−88646号公報
【特許文献4】特開2003−227072号公報
【特許文献5】特開平9−268475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、衣料に付着する皮脂汚れの付き方を再現するとともに、皮脂汚れを目視で見えるようにすることによって、防汚加工品の皮脂汚れの付きにくさや、洗濯後の皮脂汚れの残留状態を定常的に評価することができる評価方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用する。
【0007】
(1)回転する下部支持台と上部試料ホルダーを有する装置を用いて布帛に皮脂汚れを付着させる方法であって、該下部支持台に人工皮脂を一定量塗布した人工皮革を取り付け、該上部試料ホルダーにクッション材を介して被評価布帛を取り付け、その後、該被評価布帛に一定の押圧荷重をかけて、下部支持台を回転させながら該人工皮革に擦りつけることを特徴とする皮脂汚れ付着方法。
【0008】
(2)前記下部支持台を回転速度82〜88回転/分で回転させることを特徴とする上記(1)に記載の皮脂汚れ付着方法。
【0009】
(3)前記下部支持台を、偏心回転させることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【0010】
(4)前記押圧荷重を0.24〜0.25N/cmとし、かつ、被評価布帛と人工皮革の接触面積を13cmとすることを特徴とする上記(1)に記載の皮脂汚れ付着方法。
【0011】
(5)前記人工皮脂が、ワックス、ミリスチン酸・オレイン酸等の不飽和脂肪酸、パルミチン酸・ステアリン酸等の飽和脂肪酸、スクワレン、スクワラン、イソステアリルパルミテート、コレステリルオレエート、マカダミアンナッツ油、コレステロール、グリセリルモノミリステート、ミツロウ、ラノリン、牛脂、馬油およびパーセリン油からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載の皮脂汚れ付着方法。
【0012】
(6)前記人工皮脂の付着量が0.68〜0.73mg/cmであることを特徴とする上記(1)に記載の皮脂汚れ付着方法。
【0013】
(7)前記人工皮革が、織物または不織物の基布の片面ないし両面にポリウレタンコーティングを施し、さらにその表面にエンボス加工を施したものであることを特徴とする上記(1)に記載の皮脂汚れ付着方法。
【0014】
(8)前記クッション材がポリウレタンフォームからなることを特徴とする上記(1)に記載の皮脂汚れ付着方法。
【0015】
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載の皮脂汚れ付着方法によって皮脂汚れを付着させた被評価布帛を、油溶性染料で染色することを特徴とする防汚性評価方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衣料に付着する皮脂汚れの付き方を再現するとともに、皮脂汚れを目視で見えるようにすることによって、防汚加工品の皮脂汚れの付きにくさや、洗濯後の皮脂汚れの残留状態を定量的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、前記課題、つまり衣料に付着する皮脂汚れの付き方を再現できる皮脂汚れ付着方法、さらには、皮脂汚れを目視で見えるようにすることによって、防汚加工品の皮脂汚れの付きにくさや、洗濯後の皮脂汚れの残留状態を定常的に評価することができる評価方法について鋭意検討した結果、到達したものである。すなわち、本発明者らは、回転する下部支持台と上部試料ホルダーを有する装置を用いて布帛に皮脂汚れを付着させる方法であって、該下部支持台に人工皮脂を一定量塗布した人工皮革を取り付け、該上部試料ホルダーにクッション材を介して被評価布帛を取り付け、その後、該被評価布帛に一定の押圧荷重をかけて、該下部支持台を回転させながら該人工皮革に擦りつけ皮脂汚れの付着方法、さらに、皮脂汚れを付着させた該被評価布帛を油溶性染料で染色する防汚性評価方法によって、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0018】
本発明の皮脂汚れ付着方法における皮脂汚れ付着用装置は、回転する下部支持台と上部試料ホルダーを有する装置であって、下部支持台が回転することが重要である。衣服は、着用時に人が行う動作に伴って肌と擦り合わされる。人は様々な動作を行っており、衣服が肌と擦り合わされる方向も様々である。皮脂汚れは、皮脂腺からにじみ出て皮膚表面に広がった皮脂が、着用中長時間にわたり衣服が肌に擦りつけられ続けることによって付着するものであり、支持台を回転させがら擦りつけることによって実際の皮脂汚れ付着現象を再現することができる。
【0019】
さらに、下部支持台の回転は、偏心回転することが好ましい。偏心のない回転を行う場合、被評価布帛の擦られる方向が一定になってしまい、実着用時に様々な方向へ擦られる状態を再現することができない。偏心回転することによって、被評価布帛の擦られる方向が360度変化し、実際の皮脂汚れ付着現象を再現することができるのである。
【0020】
かかる下部支持台の回転速度は82〜88回転/分であることが好ましく、中でも85回転/分であることがさらに好ましい。82回転/分より少ないと、被評価布帛の任意の一部分が人工皮脂と接触する時間が長くなり、必要以上に人工皮脂が被評価布帛に浸透してしまう。また、88回転より多いと、該接触時間が短くなり十分に人工皮脂が被評価布帛に浸透しないだけでなく、摩擦熱の影響により人工皮脂の粘度が変わってしまうため、付着状態にバラツキが生じる。実際の皮脂汚れ付着現象を再現するには、下部支持台の回転速度は82〜88回転/分であることが好ましく、中でも85回転/分であることがさらに好ましいのである。
【0021】
本発明の皮脂汚れ付着方法では、一定の押圧荷重をかけて被評価布帛を人工皮革に擦りつけることが重要である。押圧荷重が一定でないと、被評価布帛への人工皮脂の付着状態にバラツキが生じる。肌着を実際に着用した時に肌にかかる衣服圧は、軽くて0.2〜0.3N/cm程度であり、このことから一定の押圧荷重としては0.24〜0.25N/cmの範囲内であることが好ましい。また、試料ホルダーと被評価布帛の接触面積は10cm〜30cm程度であるが、13cm〜26cmが好ましい。
【0022】
さらに、実着用テストを繰り返し鋭意検討した結果、試料ホルダーと被評価布帛の接触面積が13cm、85回転/分において回転数5回で人工皮革に擦りつけるのがより好ましい条件であることがわかった。押圧荷重が0.3N/cmより大きい場合や、回転数が5回より多い場合は、実着用テスト結果以上に人工皮脂が付きすぎてしまい適切な評価が困難になるだけでなく、いずれの水準の被評価布帛も同様に同じ程度の付着状態になり、性能差を見分けることができなくなってしまう。
【0023】
上記のような方法に使用できる皮脂汚れ付着用の装置としては、例えば、JIS L1076(1992)に規定されるアピアランス・リテンション形試験機を挙げることができる。
【0024】
本発明の皮脂汚れ付着方法では、人工皮脂を一定量塗布した人工皮革を用いることが重要である。
【0025】
かかる人工皮脂は、ワックス、ミリスチン酸・オレイン酸等の不飽和脂肪酸、パルミチン酸・ステアリン酸等の飽和脂肪酸、スクワレン、スクワラン、イソステアリルパルミテート、コレステリルオレエート、マカダミアンナッツ油、コレステロール、グリセリルモノミリステート、ミツロウ、ラノリン、牛脂、馬油、パーセリン油からなる群から選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。人工皮脂は、実際の皮脂成分をモデルに構成されるものである。実際の皮脂の成分については、個人差もあり、一般的に様々なケースが紹介されているが、基本的にはここであげる成分や、これらに類似した成分を含むものであり、具体的にはオレイン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸及びコレステロールが入っている方が好ましい。
【0026】
また、ここにあげる成分以外のものを含んでもかまわないが、カーボンや粘土など色の付いたものを含まないことが好ましい。もし、カーボンや粘土など色の付いたものが含まれていると、被評価布帛に付着させた人工皮脂分を顕在化させる際に見えにくくなり皮脂分の防汚性評価ができなくなる。
【0027】
人工皮革に対する人工皮脂の付着量は、0.68〜0.73mg/cmであることが好ましい。かかる付着量の好適な範囲は、ポリエステル100%、綿100%、および、ポリエステル/綿混の素材からなる織編物を用い、実際に1日間着用した場合の平均的な汚れ具合を評価して求めたものである。
【0028】
本発明の皮脂汚れ付着方法で用いる人工皮革は、織物または不織物の基布であることが好ましい。かかる人工皮革は、人の肌表面を再現しており、後述するクッション材と共に適度な凹凸と弾力を持って被評価布帛と接触させることにより、皮脂汚れの付着状態が再現できるものである。特に、基布は織物であることが好ましい。基布が不織布である場合、被評価布帛との擦りつけによって、不織布を構成する単繊維がコーティング面から出てきてしまい、場合によっては擦りつけ状態が変化する可能性がある。基布が織物の場合は、基布を構成する単繊維が抜け出しにくく好適である。一方、基布が編物である場合は、被評価布帛と擦り合わせる際に摩擦応力で基布が伸びてしまい、十分な人工皮脂付着量が得られないため適さない。
【0029】
かかる人工皮革は、いわゆる銀付きと呼ばれるものが好ましく、片面ないし両面にポリウレタンコーティングを施してあることがより好ましい。前述したとおり、人の肌表面を再現するにあたり、種々素材を鋭意検討した結果、適度な弾力性と摩擦抵抗を得るためには、ポリウレタンコーティングが最適であることを見出した。ポリウレタンコーティングは、不織布または織物の基布の片面に施されていても、両面に施されていてもよい。特に、両面に施されている場合は、被評価布帛との摩擦により、基布を構成する単繊維がコーティング面から抜け出ることが少なく好適である。
【0030】
さらに、かかる人工皮革は、ポリウレタンコーティングの表面にエンボス加工を施したものであることが好ましい。エンボス加工が施されていないと、被評価布帛との密着度合いが高くなり、擦りつけ時の摩擦抵抗が高くなるため、人工皮脂の付着状態に偏りが生じる。該エンボス加工の柄は、特に限定するものではないが、シワ状の細い溝がランダムに付けられているものであるとより好ましい。
【0031】
なお、下部支持台への人工皮革の取り付け方法については、回転しながらの被評価布帛の擦りつけによってずれたりしない限り、特に限定されない。
【0032】
本発明の皮脂汚れ付着方法では、クッション材を介して試料ホルダーに被評価布帛を擦りつけることが重要である。人の肌表面との擦りつけ状態を再現するにあたり、人工皮革と被評価布帛との間に適度な弾力が必要なためである。ポリウレタンフォームの弾力性は、JIS L1096(1999)に記載の条件下における圧縮率45〜55%、圧縮弾性率90%以上であることが好ましい。クッション材を介して被評価布帛を取り付けることで、人工皮脂を被評価布帛に均等に付着させることができるため好ましい。弾力のない状態で擦りつけた場合、人工皮脂の付着状態に偏りが生じるため不適である。クッション材は、被評価布帛を取り付けた状態でやや丸みを帯びる厚みがあることが好ましい。丸みの度合いは、被評価布帛を試料ホルダーに取り付け、荷重をかけて人工皮革に接触した状態で、試料ホルダーと被評価布帛の接触面積が13cmを満足することが好ましい。
【0033】
かかるクッション材は、適度な弾力のあるものであれば特に限定されないが、ポリウレタンフォームからなることが好ましい。特に、前述した適度な厚みを鑑みると、化粧用パフが好適である。ポリウレタンフォームは、直径3.8cmのサイズに裁断し、円周部の角を取りなめらかにしておくことがより好ましい。このように、ポリウレタンフォームを介して被評価布帛を試料ホルダーに取り付けることによって、被評価布帛と試料ホルダーの間にずれが生じず、人工皮脂を均等に被評価布帛に付着させることができる。
【0034】
本発明の防汚性評価方法は、上記皮脂汚れの付着方法によって人工皮脂を付着させた被評価布帛を、油溶性染料で染色することによりその付着状態を評価するものである。油分に溶けることを特徴とする油溶性染料で染色することにより、人工皮脂分が染着し、その付着状態が顕在化する。油溶性染料の種類は、特に限定するものではないが、被評価布帛の素材によっては、油分だけでなく被評価布帛まで染着してしまうことがあるため、被評価布帛の素材が染着しないものを選ぶことが好ましい。被評価布帛に付着した人工皮脂分が多いほど、染着する度合いが大きい。したがって、染着させた被評価布帛について、人工皮脂が付着していない部分に対する人工皮脂が付着した部分の染着度合いを、汚染用グレースケールを用いて判定することにより、防汚加工品の皮脂汚れの付きにくさや、洗濯後の皮脂汚れの残留状態を定量的に評価することができる。
【0035】
被評価布帛は、皮脂汚れが付着する可能性がある布帛であれば、その素材や用途は特に限定するものではない。特に、直接肌に接触する肌着の評価には好適である。ワイシャツなどの襟垢汚れ、袖口汚れに対しては、着色汚れの元であるカーボンなどの固形汚れ、汗などの分泌物が元になる無色のタンパク汚れや皮脂汚れを分けて評価することも可能である。
【実施例】
【0036】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、被評価布帛や処理方法は、これらに限定されるものではない。
【0037】
(皮脂汚れ付着方法)
直径約11cmに裁断した、基布が織物である表裏両面にポリウレタン樹脂からなるエンボスコーティングを施した人工皮革の中央部の直径約7cmの範囲に、26〜28mgの人工皮脂をヘラを使用してできるだけ均等に塗布した。次に、この人工皮革を35℃に調温した乾燥機内で1時間予備乾燥した。JIS L1076(1992)に規定されるアピアランス・リテンション形試験機の摩擦板を取り外し、下部支持台に予備乾燥後の人工皮革を取り付けた。一方、約10cm×10cmに裁断した被評価布帛(以下試験片)を、衣服として着用した場合に肌面になる面を外側にして、該アピアランス・リテンション形試験機の13cmの試料ホルダーに、直径3.8cmに裁断した厚さ8mmのポリウレタンフォームを介して取り付けた。その後、押圧荷重3.23Nで5回回転(回転速度約85回転/分)させ、試験片を人工皮脂を塗布した人工皮革に擦りつけた。
【0038】
(防汚性評価方法)
上記皮脂汚れ付着方法により人工皮脂を付着させた被評価布帛、または、洗濯などの所定の後処理を行った被評価布帛を、下記組成からなる処理液に1分間浸漬して染色した。浸漬後速やかに取り出し流水にて十分に洗浄した。適宜乾燥させた後、人工皮脂を付着させていない部分に対して人工皮脂を付着させた部分の染着度差を変退色判定用グレースケールで判定した。
処理液の組成
Solvent Blue 63(C.I.No.61520) 0.1g
イソプロピルアルコール 400ml
水 600ml
<洗濯>
評価における前処理、洗濯による汚染の除去性評価を行なう場合の洗濯処理は、必要に応じJIS L0217に規定される方法で洗濯を行う。
【0039】
<判定>
皮脂汚れの程度は、人工皮脂を付けていない部分と人工皮脂を付けた部分の染着度差を、JIS染色堅ロウ度用変退色判定用グレースケールで等級判定する。
【0040】
<人工皮脂成分>
次の2種類の人工皮脂を用いた。
人工皮脂A.
スクワレン 10%
イソステアリルパルミテート 17%
コレステリルオレエート 2%
マカデミアンナッツ油 35%
コレステロール 2%
グリセリルモノミリステート 4%
ミリスチン酸 3%
パルミチン酸 12%
ステアリン酸 3%
オレイン酸 12% (計100%)。
人工皮脂B.
ステアリン酸 14.7%
オレイン酸 14.7%
硬化油 14.7%
オリーブ油 14.7%
セチルアルコール 10%
固形パラフィン 25.2%
コレステロール 6% (計100%)。
【0041】
<被評価布帛>
実施例および比較例には、次の被評価布帛を用いた。
(1)84デシテックス、72フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸からなる目付105g/mの丸編地。
(2)84デシテックス、24フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸と50番手綿糸との長短複合糸からなる目付196g/mの丸編地。
(3)50番手綿糸からなる目付212g/mの丸編地。
(4)84デシテックス、24フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を、経糸、緯糸に使用して製織した目付124g/mの平織物。
(5)84デシテックス、72フィラメントのポリエチレンテレフタレート70%と木綿30%とからなる50番手の混紡糸からなる目付114g/mの平織物。
これらの織編物を、通常の工程で精練、乾燥した後、通常の染色工程において蛍光白色に染色した。
【0042】
<実施例>
実施例1〜8の結果を表1に示す。いずれの場合も、素材や洗濯処理などによる人工皮脂付着状態の差異が認められ、性能差を評価するのに適していることがわかった。
【0043】
実施例1
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛に、所定の方法で人工皮脂Aを擦りつけた時の、人工皮脂付着状態を評価した。
【0044】
実施例2
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛に、所定の方法で人工皮脂Bを擦りつけた時の、人工皮脂付着状態を評価した。
【0045】
実施例3
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛に、所定の方法で人工皮脂Aを擦りつけ、後処理として24時間放置した後家庭洗濯1回後の被評価布帛の人工皮脂付着状態を評価した。
【0046】
実施例4
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛に、所定の方法で人工皮脂Bを擦りつけ、後処理として24時間放置した後家庭洗濯1回後の被評価布帛の人工皮脂付着状態を評価した。
【0047】
実施例5
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛を家庭洗濯20回行ない、所定の方法で人工皮脂Aを擦りつけた時の、人工皮脂付着状態を評価した。
【0048】
実施例6
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛を家庭洗濯20回行ない、所定の方法で人工皮脂Bを擦りつけた時の、人工皮脂付着状態を評価した。
【0049】
実施例7
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛を家庭洗濯20回行ない、所定の方法で人工皮脂Aを擦りつけつけ、後処理として24時間放置した後家庭洗濯1回後の被評価布帛の人工皮脂付着状態を評価した。
【0050】
実施例8
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛を家庭洗濯20回行ない、所定の方法で人工皮脂Bを擦りつけつけ、後処理として24時間放置した後家庭洗濯1回後の被評価布帛の人工皮脂付着状態を評価した。
【0051】
実施例9
実施例1において、押圧荷重3.92Nで5回回転させた以外は同様に、人工皮脂付着状態を評価した結果を表1に示す。人工皮脂の付着量がやや多く、実施例1〜8に比べ水準間の性能差が小さくなったが、評価は可能であった。
【0052】
実施例10
実施例1において、回転速度を100回/分にした以外は同様に、人工皮脂付着状態を評価した結果を表1に示す。人工皮脂の付着量がやや多く、実施例1〜8に比べ水準間の性能差が小さくなったが、評価は可能であった。
【0053】
実施例11
実施例1において、擦りつけ回数を15回にした以外は同様に、人工皮脂付着状態を評価した結果を表1に示す。人工皮脂の付着量がやや多く、実施例1〜8に比べ水準間の性能差が小さくなったが、評価は可能であった。
【0054】
実施例12
実施例1において、人工皮脂の付着量が0.85mg/cmである以外は同様に、人工皮脂付着状態を評価した結果を表1に示す。人工皮脂の付着量がやや多く、実施例1〜8に比べ水準間の性能差が小さくなったが、評価は可能であった。
【0055】
<比較例>
比較例1
(1)〜(5)の5種類の被評価布帛に、所定の方法で人工皮脂Aにカーボンを0.01%混入したものを擦りつけた時の、人工皮脂付着状態を評価した結果、カーボン汚れが邪魔になり、人工皮脂付着状態を見ることができなかった。
【0056】
比較例2
実施例1において、クッション材を介しない状態で被評価布帛を試料ホルダーに取り付けた以外は同様に、人工皮脂付着状態を評価した結果、擦りつけた範囲内の付着状態にバラツキが大きく、適切な判定をすることが困難であった。
【0057】
比較例3
実施例1において、油溶性染料を水溶性染料にした以外は同様に、人工皮脂付着状態を評価したが、人工皮脂分が染着せず、付着状態を評価することができなかった。
【0058】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の皮脂汚れ付着方法に使用する装置の一例の主要部模式図。
【符号の説明】
【0060】
1:被評価布帛
2:試料ホルダー
3:クッション材
4:人工皮革
5:下部支持台
6:押圧荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する下部支持台と上部試料ホルダーを有する装置を用いて布帛に皮脂汚れを付着させる方法であって、該下部支持台に人工皮脂を一定量塗布した人工皮革を取り付け、該上部試料ホルダーにクッション材を介して被評価布帛を取り付け、その後、該被評価布帛に一定の押圧荷重をかけて、下部支持台を回転させながら該人工皮革に擦りつけることを特徴とする皮脂汚れ付着方法。
【請求項2】
前記下部支持台を回転速度82〜88回転/分で回転させることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【請求項3】
前記下部支持台を、偏心回転させることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【請求項4】
前記押圧荷重を0.24〜0.25N/cmとし、かつ、被評価布帛と人工皮革の接触面積を13cmとすることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【請求項5】
前記人工皮脂が、ワックス、ミリスチン酸・オレイン酸等の不飽和脂肪酸、パルミチン酸・ステアリン酸等の飽和脂肪酸、スクワレン、スクワラン、イソステアリルパルミテート、コレステリルオレエート、マカダミアンナッツ油、コレステロール、グリセリルモノミリステート、ミツロウ、ラノリン、牛脂、馬油およびパーセリン油からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【請求項6】
前記人工皮脂の付着量が0.68〜0.73mg/cmであることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【請求項7】
前記人工皮革が、織物または不織物の基布の片面ないし両面にポリウレタンコーティングを施し、さらにその表面にエンボス加工を施したものであることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【請求項8】
前記クッション材がポリウレタンフォームからなることを特徴とする請求項1に記載の皮脂汚れ付着方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の皮脂汚れ付着方法によって皮脂汚れを付着させた被評価布帛を、油溶性染料で染色することを特徴とする防汚性評価方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−102767(P2009−102767A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274898(P2007−274898)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】