説明

皮膚に直接貼る体液吸収シート

【課題】 皮膚に直接貼って、例えば、多量に、および/または広範囲に体液を分泌・排出する箇所由来の体液を吸収できる優れた体液吸収性と装着性を有する体液吸収シートを提供する。
【解決手段】 皮膚に貼り付けて体液を吸収する体液吸収シート10であって、吸水性を有する体液吸収層11と、体液吸収層11の少なくとも1つの皮膚接触面側に設けられた粘着剤層12とを備えた体液吸収シート10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汗や経血等の体液を吸収する体液吸収シートに関し、より詳しくは、皮膚に直接貼ることができる体液吸収シートに関する。
【背景技術】
【0002】
人の脇は汗をかきやすい部分なので、衣服の脇部分には、汗ジミ等が付きやすい。この汗ジミ等を防止するために、これまでに衣服に貼る汗取りパッドが知られている。しかし、このような汗取りパッドでは、デザインが異なる全ての衣服に対応できないため、デザインによっては衣服の動きに耐えられずにヨレやズレが生じたり、脇部から汗取りパッドまでの距離が遠いため全ての汗を汗取りパッドに吸収させることができず、汗ジミを確実に防止することができなかった。これを解決するものとして、肌に直接貼り付けて汗を吸収する汗取りパッドがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この汗取りパッド100は、図9に示すように、シート基材106と、シート基材106の全面に設けられた粘着層104と、粘着層104の中心位置に設けられた吸水パッド101と、吸水パッド101の周縁部に設けられた漏れ止め108とを備えている。粘着層104は、吸水パッド101の周縁からはみ出しており、このはみ出し部分により露出部102が構成されている。この汗取りパッド100は、露出部102を皮膚に貼り付けて、吸水パッド101を脇下に密着させて使用することで、衣服のデザインの違いから生じるヨレやズレ、衣服の汗ジミなどの問題を解決することができた。

【特許文献1】特開2004−68236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この汗取りパッド100では、吸水パッド101をシート基材106で覆って肌に接着させるための、吸水パッド101の周縁からはみ出した露出部102、および吸水パッド101側の汗を粘着層104側に漏らさないための漏れ止め108が必要となる。
【0005】
したがって、(1)露出部102、すなわち、汗腺上に装着される粘着層104の接触面積が大きく、かつ漏れ止め108が設けられているために、粘着層104側でかいた汗は、その大部分は吸水パッド101側には流れず、皮膚と粘着層104との間に存在することになるので、例えば、脇部など発汗量の多い箇所や広範囲に汗をかく背中や臀部などに適用すると、使用中に粘着層104の粘着力が低下して汗取りパッド100が脱落するという問題があった。
【0006】
また、(2)露出部102により吸水パッド101の大きさに対する汗取りパッド100全体としての貼り付け面積が大きく、かつ露出部102は間隙を有さない(遊びがない)ので、汗取りパッド100を適用できる箇所が限られる、装着者に違和感を与える、関節の激しい動きに満足に追随することができずヨレやズレを生じる等の問題があった。
【0007】
さらに、(3)汗取りパッド100の貼り付け面積を小さくすると、それに応じて吸水パッド101も小さくしなければならないので、汗の吸収量が限定されるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、皮膚に直接貼って、例えば、多量に、および/または広範囲に体液を分泌・排出する箇所由来の体液を吸収できる優れた体液吸収性と装着性を有する体液吸収シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、皮膚に貼り付けて体液を吸収する体液吸収シートであって、吸水性を有する体液吸収層と、前記体液吸収層の少なくとも1つの皮膚接触面側に設けられた粘着剤層とを備えた体液吸収シートにより達成される。
【0010】
また、前記粘着剤層は、前記体液吸収層の皮膚接触面側の少なくとも一部が露出するように設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記粘着剤層は、ドット状に配置された複数の粘着部を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記粘着剤層は、HLB型二重相アクリル粘着剤からなることが好ましい。
【0013】
また、前記体液吸収層は、天然繊維と合成繊維とを混合して合成繊維の軟化点より10〜50度高い温度で加熱処理することにより得られる集積体からなることが好ましい。

また、上記各体液吸収シートは、前記体液吸収層の面上の少なくとも一部に体液透過性を有する表面層を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記表面層は、前記体液吸収層と前記粘着剤層との間に介在されていることが好ましい。

また、前記各体液吸収シートは、前記体液吸収層の面上の少なくとも一部に体液不透過性を有する防水フィルム層を備えることが好ましい。
【0015】
また、上記各体液吸収シートからなる汗取り用シートが好ましい。
【0016】
また、上記各体液吸収シートからなる脇部の汗取り用シートが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の体液吸収シートによれば、皮膚に直接貼って、例えば、多量に、および/または広範囲に体液を分泌・排出する箇所由来の体液を吸収できる優れた体液吸収性と装着性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る体液吸収シート10の平面図であり、図2は、この体液吸収シート10の側面断面図である。
【0019】
図1および図2に示すように、この体液吸収シート10は、体液を吸収する体液吸収層11および体液吸収層11の皮膚接触面側に設けられた粘着剤層12を備えている。また、粘着剤層12は図示しない剥離紙で覆われており、体液吸収シート10の使用時に剥離紙を剥離することにより粘着剤層12が露出する構成になっている。
【0020】
ここで、本明細書中において「皮膚接触面側」とは、体液吸収シートの使用の際に、該シートと皮膚とが接触する面側のことをいう。例えば、図3に示す本実施形態において、体液吸収シート10の使用の際に、該シート10と皮膚aとが接触する面側とは、少なくとも体液吸収シート10の上方の粘着材層12が備えられている面側をいう。
【0021】
体液吸収層11の形状、大きさおよび厚みは、適宜変更可能であり、円状、楕円状、長方形状、正方形状、瓢箪状、三角形状など、種々の形状にすることができる。
【0022】
体液吸収層11は、吸水性を有するものであれば特に限定されず、例えば、生理用ナプキン、おしめ、汗取りパッド及びおりものシートなどに用いられている吸水性パルプや吸水性ポリマーなどの公知の吸収材や、織物、編物、不織布またはパルプ製品などから構成されている繊維構造物を用いることができる。なかでも、風合いがよく、体液吸収性に優れ、かつ体液吸収層11からの素材の脱落が少ない点から、天然繊維および合成繊維からなる集積体(例えば不織布)を用いることが好ましい。天然繊維としては、コットン、シルク、パルプ、羊毛、麻などがあげられる。このような天然繊維のなかでも、アレルギーなどの接触性皮膚炎が起こりにくく、かぶれにくく、かつ体液吸収性に優れる点から、コットンやパルプなどのセルロース系繊維が好ましい。また、合成繊維としては、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン酢酸ビニル繊維、ウレタン繊維、アクリル繊維などがあげられる。また、レーヨン繊維、アセテート繊維、キュプラ等の半合成繊維、および各種繊維の混紡品、混繊品を使用することもできる。なかでも、ドライ感、風合いおよびヒートシール性の点から、エチレン酢酸ビニル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などの合成繊維またはそれらの複合繊維が好ましい。複合繊維としては、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン複合繊維などがあげられ、弾性復帰機能に優れる点から、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維がより好ましい。さらに、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維として、ポリプロピレン繊維からなる芯の外周をポリエチレンにより包皮したものを用いると、芯のポリプロピレン繊維が使用時に優れた弾性復帰機能を発揮することができる点でさらに好ましい。
【0023】
また、集積体は、天然繊維と合成繊維とを重量比で3:7〜7:3の割合で配合したものが好ましい。これにより、ヨレや折れに対する抵抗性および体液吸収性に優れた体液吸収層11とすることができる。さらに、天然繊維と合成繊維とを重量比で4:6〜6:4の割合で配合したものがより好ましい。これにより、体液吸収性に優れ、体液吸収層11からの天然繊維の脱落を防ぐことができ、かつ肌触りがフンワリとして使用感により優れた体液吸収層11とすることができる。
【0024】
また、さらに好ましい集積体は、前記配合比で天然繊維および合成繊維を混合し、合成繊維の軟化点よりも好ましくは10〜50℃高い温度、より好ましくは20〜40℃高い温度で加熱処理することで得られる。たとえば、合成繊維としてポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維を使用した場合は、120〜160℃で加熱処理することが好ましく、130〜150℃で処理することがより好ましい。これにより、合成繊維が適度に溶融して天然繊維と絡み合うので、優れた体液吸収性、フンワリとした肌触りを得ることができ、かつ天然繊維が脱落しない体液吸収層11とすることができる。さらに、合成繊維の太さが1.0デシテックス未満であれば、天然繊維と満足に絡み合うことができずに、体液吸収層11から天然繊維が脱落しやすくなる傾向があり、また5.0デシテックスをこえると、得られる体液吸収層11が硬くなり、ごわつき、装着性の点で劣る傾向がある。したがって、合成繊維の太さは1.0〜5.0デシテックスであることが好ましく、2.0〜3.5デシテックスであることがより好ましい。
【0025】
体液吸収層11を構成する集積体の目付けは、保水量と皮膚への違和感とのバランスを考慮して、20〜150g/mに設定するのが好ましく、40〜120g/mに設定するのがより好ましい。
【0026】
粘着剤層12は、体液吸収層11の皮膚接触面側の少なくとも一部が露出するように設けられているが、体液を体液吸収層11に吸収させることができる限り、皮膚接触面における粘着剤層12の面積比などはとくに限定されない。本実施形態では、粘着剤層12は間隙をあけて設けられた複数の粘着部13からなっている。このように間隙をあけることで、皮膚と粘着部13との間に体液が入り込まず、効率よく体液を体液吸収層11に吸収させることができる点で好ましい。体液吸収層11の皮膚接触面側の露出部分の面積(例えば、粘着部13同士の間隙の面積)の、露出していない面積(例えば、粘着部13の設置面積)に対する比が、0.1未満では、体液を充分に体液吸収層11に吸収させることができずに、体液が皮膚と粘着部13との間に入り込み、使用中に脱落しやすくなる傾向がある。また0.9をこえると、皮膚に接着しにくくなる傾向がある。したがって、この面積比は、0.1〜0.9であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましく、0.4〜0.7であることがさらに好ましい。
【0027】
また、粘着剤層12は、例えばドット状、円環状、三角形状、長方形状、正方形状、棒状、渦巻き状等、種々の形状に配置された、単一又は複数の粘着部13から構成することができ、粘着部13の大きさや形状については特に限定されない。なかでも、本実施形態のように粘着剤層12を複数の粘着部13でドット状に配置することが、体液吸収層11の皮膚接触面側の少なくとも一部が露出するために好ましく、体液吸収層11の皮膚接触面側の一面にわたって均等に分布していることがさらに好ましい。これにより、体液が皮膚と粘着部13との間に入り込みにくくなり、体液吸収層11の側面だけでなく皮膚接触面側など、いずれの方向から流れてくる体液でも体液吸収層11に効率よく吸収させることができる。また、体液が粘着部13との間に入り込みにくくなることで、体液吸収シート10の脱落を効果的に防止することができる。さらに、使用後にストレスをかけることなく皮膚から容易に剥がすことができる。
【0028】
粘着剤層12の材質としては、皮膚に貼ることができるものであればとくに限定されないが、例えば、アクリル系水溶性接着剤等の水溶性の接着剤や、ゴム系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト等の非水溶性接着剤、HLB型二重相アクリル粘着剤(有限会社K&Iメディカルリサーチ製)等があげられる。また、粘着剤層12は、使用後に皮膚に刺激を与えることなく剥がせるものが好ましく、上記各接着剤のなかでも、皮膚に対する追随性に優れ、かつ皮膚への刺激が少ない点からHLB型二重相アクリル粘着剤(有限会社K&Iメディカルリサーチ製)が好ましい。
【0029】
また、粘着剤層12の粘着強度は実用に耐え得る強度、すなわちタック力としては50gf以上が好ましく、80〜220gfがより好ましく、100〜200gfがさらに好ましい。また、接着剤の剥がれる際の強さであるピール力としては70gf以上が好ましく、80〜250gfがより好ましく、100〜200gfがさらに好ましい。好ましいピール力は、体液吸収シート10に用いる素材を切り出して作成した試験片に粘着剤を塗布し、JIS染色堅ろう度試験用 添付綿白布(かなきん3号)に貼り合わせ、粘着させた後、粘着した面に垂直な方向に前記試験片を引っ張ることによって行う粘着強度測定によって得られる値をもとに判断する。詳細には、試験片(60mm×120mm)を60mm×120mmのJIS染色堅ろう度試験用 綿白布(かなかきん3号)に張り合わせた後、35g/cmの負荷を30秒加え、負荷を取り除き、温度35〜40℃、湿度75%の環境下に1〜2時間放置した後、温度20℃、湿度50%の環境下でさらに30分放置する。さらに、前記試験片の一部をわずかに剥がし、引張試験機(島津製作所製 AGS−H)にて300mm/分の速さで引っ張ったとき(試験片幅60mm、剥離方向120mm)のピール力をもとに判断する。
【0030】
以上のように構成された体液吸収シート10によれば、粘着剤層12によって体液吸収シート10を例えば脇等の皮膚に直接貼り付けることにより、汗等の体液を、体液吸収層11の表面のうち粘着部13が設けられていない部分、例えば、粘着部13同士の間隙、体液吸収層11の側面等を通じて体液吸収層11に吸収することができる。これにより、体液を効率よく体液吸収層11に吸収させることができ、かつ粘着剤層12と皮膚との間に存在する体液の量を少なくすることができるので、体液吸収シート10の使用中の脱落およびヨレやズレを効果的に防止することができる、すなわち体液吸収シート10の優れた体液吸収性および粘着性を維持することができる。とくに脇部などの発汗量が多い箇所、背中や臀部等の面積が広い箇所などでは優れた体液吸収性に加えて、体液吸収シート10が脱落しないようにするために強い粘着力が求められる。したがって、このような場合に特に有効である。
【0031】
また、体液吸収シート10によれば、図4に示すように、脇部の汗を標的とした場合、例えば二の腕と胴等、脇部から汗が流れる箇所であって肌と肌とが接触する部分において、体液吸収シート10を一方側(例えば二の腕側)の肌に貼り付けることにより、一方側に流れる汗だけでなく、接触する他方側(例えば胴側)に流れる汗も吸収することができるので、広範囲にわたって優れた体液吸収性を得ることができる。また、この場合、発汗量が非常に多い脇部であっても、二の腕や胴は発汗量が少ないので、当該箇所に体液吸収シート10を貼り付けて使用すると、流れてくる汗を体液吸収層11の側面で効果的に吸収することができるうえに、体液吸収シート10の汗による脱落を防止できる点で好ましい。さらに、例えば脇部などの関節を避けて、体液吸収シート10を貼り付けるので、関節の動きによって体液吸収シート10がヨレやズレを生じたり、脱落することがなく関節から流れる汗を効率よく吸収することができる。
【0032】
また、この体液吸収シート10によれば、粘着剤層12が体液吸収層11の皮膚接触面側に設けられており、体液吸収層11の皮膚接触面積に対する体液吸収シート10全体としての貼り付け面積を小さくすることができるので、体液吸収量を維持しつつ、貼り付け面積を小さくすることができる。これにより、適用箇所を限ることなく多様な部位に無理なく用いることができるので、優れた装着性を得ることができる。
【0033】
粘着剤層12は、体液吸収層11の少なくとも1つの皮膚接触面側に設けられていればよく、複数面に設けられていてもよい。また、粘着剤層12の数、設置面及び設置面積は、適宜変更可能である。
【0034】
例えば、本実施形態においては、粘着剤層12は、間隔をあけて設けられた複数の粘着部13から構成されていたが、単一の粘着部13から構成されていてもよい。この場合、粘着部13が設置される部分は、体液吸収層11の皮膚接触面側の一部であっても全面であってもよい。ここで、粘着部13が体液吸収層11の皮膚接触面側の全面に設けられている場合でも、前記したように、二の腕など発汗量の少ない箇所に貼り付けることで、体液吸収層11の、粘着剤層12が設けられている皮膚接触面側の反対面側や体液吸収層11の側面等から体液を吸収することができ、優れた体液吸収性及び装着性を得ることができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されない。
【0036】
また、図5に示すように、体液吸収シート10は、体液吸収層11の少なくとも一部に設けられた表面層14をさらに備えていてもよい。
【0037】
なお、図5において、図2と同様の構成部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
表面層14は、体液吸収層11を保護し、肌にやわらかく接触する。また、表面層14は、体液透過性を有するものであれば特に限定されず、織物、編物、不織布またはパルプ製品などから構成されたシート状またはフィルム状の繊維構造物を用いることができる。なかでも、風合い(肌触り)や皮膚への刺激性、体液吸収性の点から不織布が好ましい。この繊維構造物を構成する繊維としては、天然繊維および合成繊維があげられ、これらを単独で、または組み合わせて所望の性質を有する繊維構造物として使用することができる。天然繊維および合成繊維としては、体液吸収層11の原料として用いるものと同一の繊維があげられる。これらの繊維構造物は、その形状をとくに限定するものではないが、表面がメッシュ状および/またはエンボス模様になっていると、肌への接触面積が減少し、着用時の密着感が軽減されるという点や汗などの体液の通液性が向上し、少ない体液でも体液吸収層11に到達しやすくなるという点から好ましい。また、エンボス加工は、加工された表面層14の凹部の窪み端部が開口するように行うことが好ましい。前記メッシュ状および/またはエンボス模様としない場合には、肌への摩擦力が軽減し、痒みやかぶれが生じにくくなる点で好ましい。そのような加工等を施すか否かは、使用状況に応じて選択することができる。
【0039】
不織布は、湿式抄紙法、乾式抄紙法、スパンボンド法、メルトブロー法、ラテックス樹脂ボンド法、溶剤ボンド法、スティッチボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法などの方法により製造することができる。なかでもスパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法などの方法が好ましく、これらの方法では風合いがよく、かつ接着剤、溶剤を用いないため、肌への安全性を高くすることができる。
【0040】
また、表面層14に用いられる繊維構造物の目付けは、体液透過性と皮膚への違和感の軽減とのバランスを考慮して、10〜60g/mに設定することが好ましく、20〜50g/mに設定することがより好ましい。
【0041】
表面層14と体液吸収層11とは、たとえば、アクリル系水溶性接着剤等の水溶性の接着剤や、ゴム系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト等の非水溶性接着剤により接着することができる。また、接着剤は、体液吸収シート10の使用中および使用後に貼り合せた面が剥がれることなく接着固定できるものが好ましい。
【0042】
このような体液吸収シート10によれば、表面層14が体液吸収層11の表面に設けられているので、体液吸収層11を保護することができると共に、優れた装着性を得ることができる。また、表面層14により、皮膚を清潔に保つことができる。
【0043】
また、表面層14は、図6に示すように、体液吸収層11と粘着剤層12との間に介在されていてもよい。
【0044】
このような体液吸収シート10によれば、粘着剤層12が設けられた面においても表面層14が肌にやわらかく接触するので、優れた装着性を得ることができる。
【0045】
また、前記効果を奏するためには、表面層14は、体液吸収層11の少なくとも一部に設けられていればよく、複数の部分に設けられていてもよい。また、表面層14の数、設置面及び設置面積は、適宜変更可能である。
【0046】
また、表面層14の繊維構造物は、撥水処理されていることが好ましい。撥水処理は繊維構造物の片面だけに施すことも可能であるが、両面にわたって撥水処理されていることが好ましい。両面撥水処理によれば、表面層14の繊維内部への体液の浸透および体液の横にじみを防ぐことができ、その結果、体液を繊維構造物の細孔を通じて効率よく体液吸収層11に到達させることができる。
【0047】
なお、撥水処理は、シート状の繊維構造物を調製後、該構造物の両面に撥水処理を施す方法によっても、また繊維を予め撥水処理し、その繊維をシート状もしくはフィルム状に調製する方法のいずれを採用してもよい。
【0048】
撥水処理方法は、例えば、シリコンオイル、フッ素樹脂、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの撥水性処理剤またはこれらの成分を含む油剤を用いる方法があげられる。好ましくは、シリコンオイル、フッ素樹脂、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどを含む撥水性処理剤を用いて繊維を加工する方法である。
【0049】
また、図7に示すように、体液吸収シート10は、体液吸収層11の少なくとも一部に設けられた防水フィルム層15をさらに備えていてもよい。
【0050】
なお、図7において、図2と同様の構成部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
防水フィルム層15は、体液吸収層11に吸収された体液の外部への流出を防止するものであり、体液不透過性を有するものであれば特に限定されず、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロン、セロファン、ビニロン、塩化ビニルなどを用いることができる。これらの材質を1軸延伸することで得られるフィルムは、体液の流出を確実に防ぐことができる。防水フィルム層15をこのような材質とすることにより、多量の体液であっても外部に流出することがなく、装着性の点で好ましい。また、これらの材質に炭酸カルシウム粉末などの無機物を混練した後に2軸延伸することで得られるフィルムは、体液は透過させずに水蒸気や空気は透過させる材質とすることができる。防水フィルム層15をこのような材質とすることにより、ムレなどによる不快感を軽減させることができる。防水フィルム層15は、それぞれ、使用状況に応じて使い分けることが好ましい。
【0052】
また、防水フィルム層15の厚みは、吸収した体液を透過させず、かつ装着時に違和感を覚えにくいという点から、10〜50μmに設定することが好ましい。
【0053】
この体液吸収シート10によれば、防水フィルム層15が体液吸収層11の表面に設けられているので、体液吸収層11に吸収された体液の漏れを防ぐことができる。また、これにより、衣類を汚すことがなく、体液吸収シート10を快適に使用することができる。
【0054】
防水フィルム層15の設置面としては、使用状況に応じて適宜変更されるが、重力方向に流れる体液を受けることができる面であることが好ましい。たとえば、脇部に貼り付ける場合などは、体液吸収層11の表面のうち、粘着剤層12が設けられた面と対向する面上であることが好ましい。また、体液吸収シート10を、図4に示すように脇部近くの二の腕や胴側などに貼り付ける場合には、体液吸収層11の側面上であることが好ましい。これにより、体液吸収層11に吸収された体液が重力方向に流れ出るのを防ぐことができる。
【0055】
また、前記効果を奏するためには、防水フィルム層15は、体液吸収層11の少なくとも一部に設けられていればよく、複数の部分に設けられていてもよい。また、防水フィルム層15の数、設置面及び設置面積は、適宜変更可能である。
【0056】
また、表面層14および防水フィルム層15は併用することができる。たとえば、体液吸収層11において、粘着剤層12が設けられた面と対向する面上に表面層14を設け、側面に防水フィルム層15を設けることができる。これにより、たとえば、図4に示すように、特に肌と肌が接触する部分において肌触り、体液吸収性および装着性に優れた体液吸収シート10にすることができる。
【0057】
また、防水フィルム層15は、図8に示すように、体液吸収層11を仕切るように設けられていてもよい。
【0058】
このような体液吸収シート10によれば、体液吸収層11が防水フィルム層15により仕切られているので、体液吸収層11の一方側で吸収した体液が他方側へ浸透するのを防ぐことができる。例えば二の腕と胴等、肌と肌とが接触する部分に体液吸収シート10を用いた場合、一方側(例えば二の腕側)の肌から吸収された体液は、他方側(例えば胴側)の体液吸収層11へ浸透することがないので、より多くの体液を吸収させることができる。
【0059】
また、この体液吸収シート10において、例えば体液吸収層11の側面に表面層14を設けるなど、表面層14を併用することができる。これにより、肌触り、体液吸収性および装着性に優れた体液吸収シート10にすることができる。また、さらなる防水フィルム層を、体液吸収層11の側面に設けることもできる。これにより、体液吸収層11に吸収された体液の漏れを確実に防ぐことができるので、衣類を汚すことがなく、さらに優れた快適性を実現することができる。
【0060】
さらに、体液吸収層11と表面層14との間や体液吸収層11と防水フィルム層15との間に、図示しない消臭剤を介在させることができる。これにより、汗などの体液から発せられる嫌な臭いを軽減させることができる。この場合、体液吸収層11と防水フィルム層15との間に消臭剤を介在させることが好ましい。これにより、装着時における皮膚への直接的な消臭剤の刺激を回避して痒みやかぶれを防止することができる。
【0061】
消臭剤は、たとえば、回転式ボールミル、振動式ボールミル、遊星式ボールミルおよびサンドミルなどの公知の混合機を使用し、ゼオライトなどの消臭成分と、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と、エチレン酢酸ビニルポリマーなどの樹脂パウダーとを混合することで得ることができる。消臭剤の粒径は、消臭効果の点で約5μm以下に設定することが好ましい。また、消臭剤全量に対する消臭成分の配合比は、10〜80%とすることが、消臭効果と工業生産性のバランスから好ましい。
【0062】
また、体液吸収シート10に公知の芳香成分を付加することもできる。これにより、汗などの体液から発せられる嫌な臭いをマスキングすることができる。
【0063】
本発明の体液吸収シートは、汗、経血、おりものなどの体液を吸収することができ、脇部、臀部、背中、首部、額部、膣部などの、体液を分泌・排出する箇所または該箇所の近くに貼って使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る体液吸収シートの平面図である。
【図2】図1に示す体液吸収シートの側面断面図である。
【図3】体液吸収シートと皮膚との接触状態を示す図である。
【図4】体液吸収シートの一使用状態を示す図である。
【図5】他の実施形態に係る体液吸収シートの側面断面図である。
【図6】さらに他の実施形態に係る体液吸収シートの側面断面図である。
【図7】さらに他の実施形態に係る体液吸収シートの側面断面図である。
【図8】さらに他の実施形態に係る体液吸収シートの側面断面図である。
【図9】従来の体液吸収シートの側面断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 体液吸収シート
11 体液吸収層
12 粘着剤層
13 粘着部
14 表面層
15 防水フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に貼り付けて体液を吸収する体液吸収シートであって、
吸水性を有する体液吸収層と、
前記体液吸収層の少なくとも1つの皮膚接触面側に設けられた粘着剤層とを備えた体液吸収シート。
【請求項2】
前記粘着剤層は、前記体液吸収層の皮膚接触面側の少なくとも一部が露出するように設けられている請求項1に記載の体液吸収シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、ドット状に配置された複数の粘着部を備える請求項2に記載の体液吸収シート。
【請求項4】
前記粘着剤層は、HLB型二重相アクリル粘着剤からなる請求項1から3のいずれかに記載の体液吸収シート。
【請求項5】
前記体液吸収層は、天然繊維と合成繊維とを混合して合成繊維の軟化点より10〜50度高い温度で加熱処理することにより得られる集積体からなる請求項1から4のいずれかに記載の体液吸収シート。
【請求項6】
前記体液吸収層の面上の少なくとも一部に体液透過性を有する表面層を備えた請求項1から5のいずれかに記載の体液吸収シート。
【請求項7】
前記表面層は、前記体液吸収層と前記粘着剤層との間に介在されている請求項6に記載の体液吸収シート。
【請求項8】
前記体液吸収層の面上の少なくとも一部に体液不透過性を有する防水フィルム層を備えた請求項1から7のいずれかに記載の体液吸収シート。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の体液吸収シートからなる汗取り用シート。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の体液吸収シートからなる脇部の汗取り用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−92253(P2007−92253A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286105(P2005−286105)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】