説明

皮膚感作性測定試薬

【課題】化学物質の皮膚感作性を簡便かつ迅速に測定するための手段、および、簡易な分析装置により測定が可能な皮膚感作性測定試薬を提供する。
【解決手段】チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物(N−(2−フェニルアセチル)システインなど)を測定主薬として含む皮膚感作性測定試薬。この有機化合物はそのままの状態、又は溶液状態で、特に好ましくは、波長200〜700nmの領域に吸収極大を有し、そのモル吸光係数が100以上の吸収を有する化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚感作性測定試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、農薬、及び化粧品等の製品に含まれる化学物質はアレルギー反応を引き起こさない物質であることが肝要であり、製品開発に当っては、使用する化学物質の皮膚感作性を確認する必要がある。皮膚感作性の測定として最終的には、Maximization試験、Buehler試験、Local Lymph Node Assay等の動物実験による試験結果が必要となるが、動物実験は煩雑な作業や、多大の時間を必要とする。そのため、開発初期段階等において簡便で迅速な方法で化学物質の皮膚感作性を測定できる手段が求められていた。
煩雑な動物実験を行うことなく、被験物質の皮膚感作性を簡便かつ迅速に検定する方法として、グルタチオンを用いた皮膚感作試験が提案されている(特許文献1,2)。しかし、当該試験で用いることができる検出方法が質量分析に限られるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-14761号公報
【特許文献2】特開2008-139275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、化学物質の皮膚感作性を簡便かつ迅速に測定するための手段を提供することである。また、本発明の目的は、簡易な分析装置により測定が可能な皮膚感作性測定試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、簡易な分析装置の検出に用いられている検出器により検出可能な化合物を皮膚感作性測定試薬として用いることが上記課題の解決手段になりうると考え、鋭意研究の結果、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は以下[1]〜[11]を提供するものである。
【0006】
[1]チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物を測定主薬として含む皮膚感作性測定試薬。
[2]前記有機化合物が芳香族基を有するシステインの誘導体である[1]に記載の試薬。
[3]前記有機化合物がN−(アリールアルキルカルボニル)システインである[1]に記載の試薬。
[4]前記有機化合物がN−(2−フェニルアセチル)システイン又はN−[2−(ナフタレン−1−イル)アセチル]システインである[1]に記載の試薬。
【0007】
[5]粉末形態で提供される[1]〜[4]のいずれか一項に記載の試薬。
[6]前記有機化合物が、有機酸塩類を含む水性緩衝液もしくは水又はこれらと有機溶媒との混合溶媒に溶解した形態で提供される[1]〜[4]のいずれか一項に記載の試薬。
[7]前記有機化合物の濃度が1mM〜500mMである[6]に記載の試薬。
【0008】
[8](1)チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物と被験物質とを反応させること、及び
(2)前記反応による前記有機化合物の量の低下を光学的測定により検出することを含む皮膚感作性の測定方法。
[9](1)チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物と被験物質とを反応させること、及び、
(12)前記反応により生じた化合物を光学的測定により検出することを含む
皮膚感作性の測定方法。
【0009】
[10]前記有機化合物がN−(2−フェニルアセチル)システイン又はN−[2−(ナフタレン−1−イル)アセチル]システインである[8]又は[9]に記載の方法。
[11]前記工程(1)で得られる反応物をクロマトグラフィー処理することを含む[8]〜[10]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、汎用の簡易な分析装置により測定が可能な皮膚感作性測定試薬が提供される。本発明の試薬により化学物質の皮膚感作性を簡便かつ迅速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】N−(2−フェニルアセチル)システイン及びグルタチオンをそれぞれ用いた6つの被検物質の皮膚感作性の測定結果を示すグラフである。
【図2】例2において、N−(2−フェニルアセチル)システインと感作性物質との比率を横軸、反応速度定数を縦軸にして作成したグラフである。
【図3】例3において、N−[2−(ナフタレン−1−イル)アセチル]システインと感作性物質との比率を横軸、反応速度定数を縦軸にして作成したグラフである。
【図4】比較例2において、グルタチオンと感作性物質との比率を横軸、反応速度定数を縦軸にして作成したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において皮膚感作性の測定とは皮膚感作性の検定を含む意味であり、また、一定の基準の皮膚感作性の有無の判断、及び皮膚感作性の定量的測定を含む意味である。
【0013】
本発明の皮膚感作性測定試薬は、チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物を含む。本発明の皮膚感作性測定試薬に含まれる有機化合物はそのままの状態、又は溶液状態で、好ましくは、波長190〜2500nmの領域で吸収を示す化合物であり、さらに好ましくは、波長200〜700nmの領域に吸収を示す化合物である。さらに、該波長領域に吸収極大を有する化合物が好ましい。また、本発明の皮膚感作性測定試薬に含まれる有機化合物は、好ましくは、その吸収極大のモル吸光係数(L/mol・cm)が10以上の吸収を有する化合物であり、さらに好ましくは、モル吸光係数が100以上の吸収を有する化合物である。特に好ましくは、波長200〜700nmの領域に吸収極大を有し、そのモル吸光係数が100以上の吸収を有する化合物である。
【0014】
上記の有機化合物としては例えば、システインの誘導体であって、芳香族基を有するものが挙げられる。芳香族基は、フェニル基、ナフチル基などの炭化水素系芳香族基のほか、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基などのヘテロ元素を有するものであってもよい。上記の有機化合物として、さらに具体的には、システインのアミノ基又はカルボキシル基にアミド結合などによりベンゼン環やナフタレン環などのアリール基を結合させた化合物が挙げられる。このうち、N−(アリールアルキルカルボニル)システイン等が特に好ましい。N−(アリールアルキルカルボニル)システインにおいて、アリール基は炭素数6〜16程度であればよい。またアルキルカルボニル基における炭素数は2〜11程度であればよい。カルボニル基に結合するアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基などを挙げることができる。上記の有機化合物としての具体例としては、N−(2−フェニルアセチル)システイン、及びN−[2−(ナフタレン−1−イル)アセチル]システインが挙げられる。
【0015】
上記有機化合物は公知の方法により製造することが可能であり、例えば、N−(2−フェニルアセチル)システインは以下のように合成することができる。
【0016】
【化1】

【0017】
水酸化ナトリウム5.1g、水126gの水溶液にL−シスチン7.3gを添加し、溶解する。溶液を氷水浴にて冷却し、ここへ、フェニルアセチルクロリド10.2gを滴下する。反応混合物を氷水浴下で1時間撹拌し、さらに、室温下1時間撹拌したのち、濃塩酸6mLを添加する。析出した結晶を濾取し、水で洗浄、乾燥し、N,N’−ビス(2−フェニルアセチル)シスチンを得る(9.8g)。
N,N’−ビス(2−フェニルアセチル)シスチン4.8g、亜鉛粉末2.0g、メタノール20mL、水5mLの混合物を30℃に加温し、濃硫酸3.0gを2時間かけて滴下する。反応混合物を30℃で1時間撹拌したのち、濾過により不溶物を濾別し、水60mL、塩化ナトリウム1gを加える。溶液を酢酸エチル80mLで抽出し、有機層を飽和食塩水30mLで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過、濃縮する。得られた残渣を酢酸エチル/ヘキサン=1/1から再結晶し、乾燥後しN−(2−フェニルアセチル)システインを得る(3.1g)。
【0018】
本発明の皮膚感作性測定試薬は、上記の有機化合物のみからなるものであってもよく、測定主薬である上記の有機化合物のほかに1又は2以上の添加剤を含んでいるものであってもよい。添加剤の例としては、pH調整剤、安定化剤、等が挙げられる。また、本発明の皮膚感作性測定試薬は、上記の測定主薬及び必要に応じて上記の添加剤を、水、水性緩衝液、有機溶媒、又はこれらいずれかの混合溶媒等に溶解させたものであってもよい。
本発明の皮膚感作性測定試薬は、溶液、液体状、固体状(粉末、顆粒、凍結乾燥物、錠剤等)のいずれの形態で提供されてもよい。
【0019】
本発明の皮膚感作性測定試薬は、例えば、酢酸アンモニウムなどの有機酸塩類を含む水性緩衝液もしくは水又はこれらと有機溶媒との混合溶媒に溶解した形態で、例えば約0.01μM〜約1M程度、通常約1mM〜約500mM程度の上記有機化合物の濃度として使用すればよい。被験物質は、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンなどの有機溶媒又はこれらの混合溶媒に、例えば約0.01μM〜約1M程度の濃度、通常約1mM〜約500mM程度の濃度となるように溶解すればよい。次いで、本発明の皮膚感作性測定試薬の測定主薬である上記有機化合物と被験物質溶液とを、上記有機化合物と被験物質のモル濃度比が例えば1:100〜20:1となるように混合し反応させればよい。反応は、上記有機化合物と被験物質とを含む溶液を、例えば約4℃〜約60℃程度の温度範囲にて保温しながら、通常約1分〜約2日間程度攪拌又は静置することによって行うことができる。
【0020】
該反応により、上記有機化合物と被験物質との反応性を調べることによって、被験物質の皮膚感作性を測定することができる。上記の反応性を調べるためには、皮膚感作性測定試薬溶液と被験物質溶液との混合液中における上記有機化合物の残存量および/又は上記有機化合物と被験物質との反応生成物の生成量を分析すればよい。この分析を経時的に行うことにより、上記有機化合物と被験物質との反応速度定数を求め、この値から皮膚感作性を評価することができる。
【0021】
なお、残存量を分析する場合、皮膚感作性測定試薬はチオール基を有しているため、容易に酸化されて上記化合物のジスルフィド体(2量体)になることがある。そのため、上記有機化合物の残存量を定量する際には、必要に応じてジスルフィド体も含めて分析を行い、これらの総計により上記有機化合物の残存量としてもよい。
【0022】
化合物および上記反応により生成した化合物の分析方法としては、特に限定されないが、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)などにより、上記反応により生成した化合物、上記有機化合物及び被験物質を分離して分析する方法が挙げられる。上記HPLC、GC又はTLCに用いることのできるクロマトグラフ手法としては、逆相、順相、イオン交換などを挙げることができる。このようなクロマトグラフ手法に使用可能な市販のカラムやTLCとしては、例えば、LCカラムとしてはCAPCELL-PAK(資生堂製)、L-column ODS(化学品評価研究機構製)、Shodex Asahipak (昭和電工製)などを挙げることができ、TLCプレートではシリカゲル60F254(メルク社製)、Silica Gel Plate (ナカライテスク社製)などを挙げることができる。
【0023】
上記反応により生成した化合物又は残存する上記有機化合物の検出方法は、特に限定されないが、例えば上記HPLC分析で利用することのできる検出器としては、紫外可視検出器、近赤外検出器、蛍光検出器、示差屈折率検出器、電気伝導度検出器、蒸発光散乱検出器などが挙げられる。紫外可視検出器としては、例えば、単波長紫外可視検出器、二波長紫外可視検出器、フォトダイオードアレイ検出器などが挙げることができる。また、このような検出法に使用可能な市販の検出器としては、紫外可視検出器、示差屈折率検出器、電気伝導度検出器の場合、島津製作所製、日立製作所製、ウォーターズ製、資生堂製などの検出器、蒸発光散乱検出器としては島津製作所製などが挙げられる。
【0024】
本発明の皮膚感作性測定試薬を用いた測定方法における検出は、上記に限定されず、例えば、特開2003-14761号公報又は特開2008-139275号公報に記載の方法を参照して、分子量等に基づく、特定の質量のイオン検出により行ってもよい。
【0025】
また、本発明の皮膚感作性測定試薬を用いた方法においては、好ましくは光学的検出方法を用いることができる。好ましくは、上述の紫外可視検出器、近赤外検出器を用いるとよい。
【実施例】
【0026】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
[例1]
被検物質の溶液(32.5mMのアセトン溶液)1400μlと、以下に記載のN−(2−フェニルアセチル)システイン(以下、化合物A)溶液を700μl混合し、25℃で攪拌した。この混合液を1時間後、2時間後、4時間後、24時間後にそれぞれ100μlずつサンプリングして、溶離液Aを900μl添加して混合した後に以下に記載の条件にてHPLCに供した。また、化合物Aの標準溶液を調製後に以下に記載の条件にてHPLCに供した。得られたクロマトグラムから化合物Aを定量して、混合液中における化合物Aの残存量を求めた。
【0028】
[化合物A溶液調製]
化合物A(分子量239.06)を77.7 mg秤量して、アセトン5 mlを加えて溶解し、次に窒素ガス置換した0.2M酢酸アンモニウム水溶液を加えて50 mlに定容した(6.5 mM溶液)。
【0029】
[HPLC測定条件]
装置:LC-20AD(島津製作所製)
カラム:CAPCELL-PAK ODS(3.0×150 mm)
カラム温度:40℃
流速:0.4 ml/min.
検出波長:210 nm
溶離液A:蒸留水/アセトニトリル=98/2(0.1%トリフルオロ酢酸)
溶離液B:アセトニトリル/蒸留水=90/10(0.1%トリフルオロ酢酸)
溶出条件:A/B=70/30
注入量:10μl
分析時間:5分間
【0030】
[比較例1]
化合物Aの代わりにグルタチオン(GSH)を用いて、例1と同様にGSHを定量して、混合液中におけるGSHの残存量を求めた。ただし、GSH 溶液の調製は以下のように行い、測定においてはLC/MS/MSを用いた。測定条件は、以下に示す。
LC条件
装置:LC-20AD(島津製作所製)
カラム:CAPCELL-PAK ODS(3.0×50 mm)
カラム温度:40℃
流速:0.4 ml/min.
溶離液A:蒸留水/アセトニトリル=98/2(0.1%トリフルオロ酢酸)
溶離液B:アセトニトリル/蒸留水=90/10(0.1%トリフルオロ酢酸)
溶出条件:A/B=70/30
【0031】
MS/MS条件
装置:ABI 3200QTRAP(アプライドバイオシステムズ社製)
Ionization mode:negative(-)
Source/Gas
CUR(curtain gas):20(psi)
CAD(collision gas):5
IS(ionspray voltage):-4000(volts)
GAS1(ion source gas1):70
GAS2(ion source gas2):80
Compound
DP((declustering potential):-40(volts)
EP(entrance potential):-4.5(volts)
CE(collision energy):-26(volts)
CXP(collision cell exit potential):0(volts)
検出:m/z 306.1 → m/z 143.1 (transition)
【0032】
[GSH溶液調製]
グルタチオン(GSH 分子量307.32)を100 mg秤量して、窒素ガス置換した0.2M酢酸アンモニウム水溶液を加えて50 mlに定容した(6.5 mM溶液)。
【0033】
[測定結果]
被験化合物として以下の6化合物を使用して、上記例1および比較例1に従った皮膚感作性の測定を行った。その結果を表1及び図1に示す。
(被験化合物)
BQ:p−ベンゾキノン(皮膚感作性:極めて強度)(分子量108.10)
DNCB:1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(皮膚感作性:極めて強度)(分子量202.55)
CA: 桂皮アルデヒド(皮膚感作性:中程度)(分子量132.16)
CTR: シトラール(皮膚感作性:中程度)(分子量:152.26)
EDM: エチレングリコールジメタクリレート(皮膚感作性:弱)(分子量198.24)
HPM: 2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(皮膚感作性:なし)(分子量144.19)
【0034】
【表1】

【0035】
上記結果において、皮膚感作性は各時間におけるGSH又は化合物Aの残存率(%)が低いほど高いと判断される。
上記の結果、GSHを用いた例と化合物Aを用いた例で得られる結果は、類似していることがわかる。
【0036】
[例2]
上記と同様に調製した被検物質の溶液と、化合物Aの溶液を用い、例1と同様に化合物Aを定量して、混合液中における化合物Aの残存量を求めた(「被検物質/化合物A」=10)。ただし、測定方法は例1と同様とした。
反応した化合物Aの自然対数値を縦軸、反応時間を横軸にしてグラフ作成し、作成したグラフの傾きから反応速度定数を算出した。
さらに、被検物質の溶液の濃度を65mM、130mMに変更した例(それぞれ「被検物質/化合物A」が20および40)で同様に、反応速度定数を算出した。さらに、反応速度定数を縦軸、化合物Aと感作性物質との比率を横軸にしてグラフを作成した。結果を図2に示す。
【0037】
[例3]
化合物Aの代わりにN−[2−(ナフタレン−1−イル)アセチル]システイン(以下、化合物B)を用い、例2と同様の手順で測定および計算を行いグラフを作成した。なお、化合物Bの測定方法は、化合物Aの測定条件に準じたが、測定波長は281nmとした。結果を図3に示す。
【0038】
[比較例2]
化合物Aの代わりにGSHを用い、例2と同様の手順で測定および計算を行いグラフを作成した。ただし、測定においては波長210 nmでの検出の代わりにLC/MS/MSを用いた。LC/MS/MSの条件は比較例1と同様である。結果を図4に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物を測定主薬として含む皮膚感作性測定試薬。
【請求項2】
前記有機化合物が芳香族基を有するシステインの誘導体である請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
前記有機化合物がN−(アリールアルキルカルボニル)システインである請求項1に記載の試薬。
【請求項4】
前記有機化合物がN−(2−フェニルアセチル)システイン又はN−[2−(ナフタレン−1−イル)アセチル]システインである請求項1に記載の試薬。
【請求項5】
粉末形態で提供される請求項1〜4のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項6】
前記有機化合物が、有機酸塩類を含む水性緩衝液もしくは水又はこれらと有機溶媒との混合溶媒に溶解した形態で提供される請求項1〜4のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項7】
前記有機化合物の濃度が1mM〜500mMである請求項6に記載の試薬。
【請求項8】
(1)チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物と被験物質とを反応させること、及び
(2)前記反応による前記有機化合物の量の低下を光学的測定により検出することを含む
皮膚感作性の測定方法。
【請求項9】
(1)チオール基を1個以上有する構造を有する有機化合物であって紫外、可視光又は近赤外域に吸収を有する有機化合物と被験物質とを反応させること、及び、
(12)前記反応により生じた化合物を光学的測定により検出することを含む
皮膚感作性の測定方法。
【請求項10】
前記有機化合物がN−(2−フェニルアセチル)システイン又はN−[2−(ナフタレン−1−イル)アセチル]システインである請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(1)で得られる反応物をクロマトグラフィー処理することを含む請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−59102(P2011−59102A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168054(P2010−168054)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】