説明

皿取り加工装置

【課題】 軽量化するとともに作業性を向上させ、安定した皿取り作業を行える皿取り加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 側方に突出したクランプ部15を有する本体3と、クランプ部15に設けられたクランプ面21から、クランプ面21と直交する加工方向20に出没可能に設けられたピン31と、先端面43がクランプ面21に対向して配置され、本体3に加工方向に移動可能に取り付けられたマイクロストップカウンタ5と、マイクロストップカウンタ5に設けられ、先端面43から加工方向に所定量突出可能で、先端にピン31の先端と嵌合する凹部41を有する皿取り用のカッタ37と、本体3に加工方向に移動可能に取り付けられ、マイクロストップカウンタ5のカッタ37を回動させるドリル7と、マイクロストップカウンタ5を加工方向に作動させる移動手段9と、が備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皿取り加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機および高速車両等の構造体では、リベットによる接合が行なわれている。そのため、接合部にリベット用の孔が加工される。特に、外板に関連する接合では、空力特性を考慮してさらリベットが用いられるため、リベット用の孔には皿取り加工が施されている。
この孔開け作業の大部分は、産業ロボット等で機械化されて実施されているが、機械化が困難な、例えば周縁部等では、例えば、特許文献1に示されるような装置を用いて手作業で行なわれている。
特許文献1に示される装置で皿取り加工を行なう場合には、皿取り用の工具、例えばマイクロストップカウンタを取り付け、工具を外板等のワークに加工されたリベット孔に当て、押付けるようにして作業を行なう。
【0003】
【特許文献1】特開平8−71823号公報(図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に示されるものでは、孔開け作業を行う必要上、孔開け用に必要なトルクを得るために大型のドリルを用いる必要がある。そのため、重量が大きくなって扱い難いという問題があった。
また、加工に際し装置全体をワークに押付ける必要があるので、特に、例えば、上向きの作業の場合には、作業者への負担が増大するという問題があった。
さらに、ワークの剛性が低いと、装置を押付けた際ワークが変形し、かつ、この変形量が作業者あるいは作業箇所によってばらつくため、あるいは、工具がぶれるため、皿取り量が不安定になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、軽量化するとともに作業性を向上させ、安定した皿取り作業を行える皿取り加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる皿取り加工装置は、側方に突出したクランプ部を有する本体と、前記クランプ部に設けられたクランプ面から、該クランプ面と直交する加工方向に出没可能に設けられたピンと、先端面が前記クランプ面に対向して配置され、前記本体に前記加工方向に移動可能に取り付けられたマイクロストップカウンタと、該マイクロストップカウンタに設けられ、前記先端面から前記加工方向に所定量突出可能で、先端に前記ピンの先端と嵌合する凹部を有する皿取り用のカッタと、前記本体に前記加工方向に移動可能に取り付けられ、前記マイクロストップカウンタのカッタを回動させるドリルと、前記マイクロストップカウンタを前記加工方向に作動させる移動手段と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
クランプ部とマイクロストップカウンタとがワークを挟む形に位置させる。クランプ面をワークの一方面に位置させ、ピンを孔に挿入する。この状態で、マイクロストップカウンタをクランプ面に向けて移動させると、ワークはマイクロストップカウンタの先端面とクランプ面とによってクランプされる。この時、カッタの先端部の凹部にピンの先端が嵌合するので、カッタはその根元部で支持されるとともに先端部がピンによって支持されることになる。
そして、ドリルを作動させ、カッタを回転させつつ、ドリルを加工方向に沿ってクランプ面側へ移動させると、カッタはピンに支持された状態でクランプ面側に移動し、孔の他方面側に皿取りを加工することができる。
【0008】
このように、カッタは、その根元部とピンとによって両端が支持されているので、高回転数でもぶれることを阻止することができ、高回転数のドリルを用いることができる。また、孔開け作業を行うことがないので、高トルクを必要としない。このため、ドリルは超小型のものを用いることができるので、装置を軽量化することができる。
また、クランプ部とマイクロストップカウンタとがワークをクランプしているので、本体はワークによって支持されていることになる。このため、皿取り作業時には、基本的には軽量のドリルを移動させるのみとなるので、例えば、上向きに作業する場合でも楽に行なうことができ、作業性を向上させることができる。
さらに、前記したようにカッタは先後の両側で支持され、かつ、ピンに案内されているので、ぶれることを考慮することはない。また、マイクロストップカウンタで予め設定された所定量だけカッタを突出させればよいこともあいまって、常に一定した形状、大きさの皿取りを安定して加工することができる。
【0009】
また、本発明にかかる皿取り装置では、前記クランプ面は、前記加工方向における位置が調整可能に設けられていることを特徴とする。
【0010】
このように、クランプ面は、加工方向における位置が調整可能に設けられているので、クランプ面の位置を調整することによってマイクロストップカウンタおよびドリル側を調整することなく、ワークの厚さ変化に簡単に対応することができる。
【0011】
前記移動手段は、前記本体に取り付けられた第一支点部に回動自在に支持された第一リンクと、前記マイクロストップカウンタに取り付けられた第二支点部に回動自在に支持された第二リンクと、前記第一リンクおよび前記第二リンクを相互に回動自在に接続する連結部と、前記第一支点部と前記第二支点部とを結ぶ支点線に対して交差する方向に前記連結部を移動させる駆動機構とを備え、前記連結部の前記支点線を越える一方への動きは、微小範囲に制限されていることを特徴とする。
【0012】
このように、本体に取り付けられた第一支点部に回動自在に支持された第一リンクと、マイクロストップカウンタに取り付けられた第二支点部に回動自在に支持された第二リンクとが連結部によって相互に回動自在に接続されているので、駆動手段によって連結部を支点線に交差する方向に移動させると、第一支点部と第二支点部との支点距離を変動させることができる。
支点距離が変動すると、本体に取り付けた第一支点に対して第二支点が移動し、それが取り付けられたマイクロストップカウンタが加工方向に移動することとなる。
そして、連結部の一方への動きを制限された位置は、支点線からの解離が微小であるので、支点距離が略最大となる。しかも、一方へは移動が制限されており、かつ、他方へは支点距離が大きくなる方向であるため、少しの外乱では移動しないので、安定し、確固としてワークをクランプするクランプ位置とすることができる。
【0013】
また、本発明にかかる皿取り装置では、前記本体を挟んで両側に、第一把手と第二把手とが設けられていることを特徴とする。
このようにすると、両手を用いて操作できるので、作業性を一層向上させることができる。
【0014】
また、本発明にかかる皿取り装置では、前記第一把手には、前記移動手段が取り付けられ、前記第二把手は前記ドリルを保持していることを特徴とする。
このようにすると、第二把手を片手で保持し、装置を支えた状態で、他方の手で移動手段を操作してクランプ動作を行なうことができ、その後、第一把手を握り装置を支えた状態で、他方の手で第二把手を持って、ドリルを移動させることができるので、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドリルは超小型のものを用いることができるので、装置を軽量化することができる。
また、基本的には軽量のドリルを移動させるのみとなるので、例えば、上向きに作業する場合でも楽に行なうことができ、作業性を向上させることができる。
さらに、カッタは先後の両側で支持され、かつ、ピンに案内されているので、常に一定した形状、大きさの皿取りを安定して加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態にかかる皿取り装置1について、図1〜図6を用いて説明する。
図1〜図3は、本実施形態にかかる皿取り装置1の全体概略構成を示す正面図であり、図1は、クランプを解除した状態を、図2は、クランプした状態を、図3はクランプした後、ドリルを移動させている状態を示している。
皿取り装置1には、本体3と、マイクロストップカウンタ5と、ドリル7と、移動手段9と、第一把手11と、第二把手13とが備えられている。
【0017】
本体3は、一端部が略C字形状をし、C字形の下側端部が他端に向けて延設された形状をしている板状体である。本体3のC字形の上側端部には、クランプ部15が突出するように設けられている。
図4は、クランプ部15の周辺を拡大して示す断面図である。図4によって、クランプ部15の構造を説明する。
クランプ部15における本体3は、軸線方向が本体3の延設方向に沿った略円筒形状をしており、その略中心に貫通孔17が形成されている。
貫通孔17には、一端部が拡径された略二段円筒形状をしたクランプ部材19が装着されている。クランプ部材19の拡径部側の端部には、軸線方向(加工方向)20に直交した面であるクランプ面21が形成されている。
【0018】
クランプ部材19の他端側はねじが切られており、本体3に固定されたナット23に螺合されている。クランプ部材19の他端には、キャップ25が取外し可能に固定されている。
クランプ部材19およびキャップ25の軸線中心部分には、中途に拡径部を備えた案内孔27が貫通して設けられている。この案内孔27に中途に拡径された仕切部29を設けたピン31が挿入されている。ピン31は、仕切部29のキャップ25側に位置する案内孔27の拡径部に装着された圧縮ばね33によってクランプ面21側へ押付けられるように攻勢されている。
【0019】
マイクロストップカウンタ5には、略円筒形状をしたカバー35と、カッタ37と、カッタ37と、ドリル7からの駆動力を受けてカッタ37を回動させ、軸線方向へ出没させる図示しない駆動部とが備えられている。
カッタ37の先端部には、案内部39が突起して設けられており、案内部39の先端部には、ピン31の先端部と嵌合する逆円錐形状の凹部41が設けられている(図4参照)。
カバー35の先端面43は、クランプ面21と対向して配置されるように構成されている。
駆動部は、カッタ37の出没量が調整可能で、かつドリル7に対して相対移動が可能に構成されている。
【0020】
マイクロストップカウンタ5は、周囲を覆うように設けられた保持部材45に一体的に保持されている。保持部材45は、本体3に加工方向に延在して設けられた第一ガイドレール47に、それに沿って移動されるように支持されている。
保持部材45の本体側端部には、ガイドピン(第二支点)49が取り付けられている。ガイドピン49は、本体3に加工方向20に長く形成されたガイド孔51に沿って移動できるように構成されている。
【0021】
ドリル7には、駆動機構を内蔵したドリル本体53と、回転力をマイクロストップカウンタ5に伝達するドリル軸55と、図示を省略した圧縮機等の空気源に接続された空気弁57とが備えられている。
空気弁57の側部には、空気弁57を開閉するスイッチ59が備えられている。
ドリル本体53は、第二把手13に保持されている。第二把手13は、本体3に加工方向に延在して設けられた第二ガイドレール61に、それに沿って移動されるように支持されている。
【0022】
第二把手13には、略逆L字形状をしたトリガ63がピン65によって回動可能に取り付けられている。トリガ63の一端は、スイッチ59と係合するように位置されており、第二把手13とトリガ63との間に介装された圧縮ばね67によって、スイッチ59から離隔する方に付勢されている。
第一把手11は、本体3を挟んで第二把手13と反対側に設けられ、本体3に固定されている。
【0023】
次に、移動手段9について説明する。
移動手段9には、本体3に固定して設けられた本体ピン(第一支点)69に一端が回動自在に取り付けられた本体リンク(第一リンク)71と、一端がガイドピン49に回動自在に取り付けられた移動リンク(第二リンク)73と、本体リンク71および移動リンク73の自由端をそれぞれ回動可能に連結する連結ピン(連結点)75と、連結ピン75を本体ピン69およびガイドピン49の軸線中心を結ぶ支点線CLに対して交差する方向に移動させる駆動機構77とが備えられている。
【0024】
駆動機構77には、操作レバー79と、動作調整リンク81と、クランプ解除レバー83と、が備えられている。
動作調整リンク81は略逆L字形状をしている。動作調整リンク81の長辺と短辺との交点部分は、第一把手11に固定されたブラケット85に取り付けられた固定ピン87に回動自在に支持されている。動作調整リンク81の短辺の先端は、第一把手11に取り付けられた引張ばね89によって引っ張られ、動作調整リンク81は本体3から離隔する方向へ回動するように付勢されている。
【0025】
操作レバー79は、本体3から離れた部分が湾曲し、中間部分より本体3側に位置する部分に突起部があるが、全体としては略直線状をしている。操作レバー79の本体3側は、連結ピン75に回動可能に支持され、突起部は、動作調整リンク81の長辺の先端部と接続ピン80によって相互に回動可能に連結されている。
クランプ解除レバー83は、略直線状に延在しており、本体3側の部分が動作調整リンク81の短辺の先端部と相互に回動可能に連結されている。
【0026】
以上、説明した本実施形態にかかる皿取り加工装置1の皿取り加工動作について説明する。
皿取り加工装置1で皿取り加工を行なう対象としては、例えば、図5に示すように航空機の外板91,93同士を接合する接合部95がある。
接合部93の構造の一例が図6に示されている。接合部95では、外板91,93が重ねられ、また、内側の外板91には内側に骨材97が配置されている場合もある。
この場合、例えば、位置A,B,C,Dにリベット接合用の孔が開けられている。そして、これらの孔に対して、外板93の外側に皿取り加工を行なうことになる。
【0027】
位置Aにおける皿取り加工について説明する。
まず、皿取り加工装置1は、図1のクランプ解除の状態とし、キャップ25を回転させてクランプ面21の位置を、位置Aにおける外板91および外板93(ワークW)の厚さに合わせて調節する。
この状態で、皿取り加工装置1を加工部位に持ち込み、クランプ部15を外板91(ワークW)の内面側に、マイクロストップカウンタ5を外板93(ワークW)の外面側に位置させる。そして、ピン41を孔に挿入する。
【0028】
次いで、第二把手13を一方の手で保持した状態で、他方の手によって操作レバー79自由端側を下方(第一把手11側)に移動させる。そうすると、連結ピン75が上方(第一把手11から離れる方向)に移動しようとする。しかし、連結ピン75は本体リンク71によって移動が制限されているので、結局右方(ドリル7側)へ移動することになる。
連結ピン75が右方に移動すると、本体リンク71と移動リンク73との成す角度が徐々に大きくなり、本体ピン69の軸線中心とガイドピン49の軸線中心との距離(支点距離)が長くなっていく。これに伴い、本体ピン69は、本体3に固定されているので、ガイドピン49はガイド孔51に沿って上方へ移動することになる。
このガイドピン49の移動によってこれを取り付けた保持部材45およびマイクロストップカウンタ5が上方に移動する。
【0029】
この時、連結ピン75の右方への移動に伴って、操作レバー79は全体的に右方へ移動することとなる。これに伴い接続ピン80が移動し、動作調整リンク81は固定ピン87を中心として時計回りに回動する。
この連結ピン75の右方への移動は、動作調整リンク81によって制限される。すなわち、その限界位置は、固定ピン87と連結ピン75との距離が最大になる位置、言い換えると固定ピン87、接続ピン80および連結ピン75の軸線中心が直線を形成する位置である。
【0030】
本実施形態では、この位置は図2に示されるように、連結ピン75の軸線中心位置が、支点線CLよりも距離eだけ右方に位置するように構成されている。すなわち、連結ピン75の支点線CLから右方への動きは、距離eに制限されていることになる。
距離eは、微小に設定されているので、連結ピン75がここまで移動された時、支点距離は略最大となる。この時までに、マイクロストップカウンタ5の先端面43はワークWの外面に当接し、ワークWに押付けられる。これにより、ワークWはクランプ面21と先端面43とによって押付けられ、クランプされることになる。
【0031】
また、この過程の中で、ピン31が、カッタ37の凹部41に嵌合される。
この時、ピン31とカッタ37とは軸線中心が略一致し、かつピン31は孔に挿入されているので、マイクロストップカウンタ5の上方への移動時、特に位置をねらわなくても、カッタ37は孔の位置に合致する。そして、ピン31と凹部41とが嵌合されると、カッタ37はマイクロストップカウンタ5の駆動部(根元部)とピン31とによって、軸線方向の両側から支持されることとなる。
このように、カッタ37は、その根元部とピン31とによって両端が支持されているので、高回転数でもぶれることを阻止することができ、高回転数のドリル7を用いることができる。また、孔開け作業を行うことがないので、高トルクを必要としない。このため、ドリル7は超小型のものを用いることができるので、装置を軽量化することができる。
【0032】
このようにして、ワークWがクランプされると、連結ピン75は右方への移動は動作調整リンク81によって制限され、一方、左方(支点線の方向)への移動は、支点距離が大きくなる方向である大きな力が必要となるので、ワークWは確実に、安定してクランプされることとなる。
【0033】
そして、他方の手で、第一把手11を保持し、一方の手で第二把手13をトリガ63とともに握ると、図3のように、トリガ63が圧縮ばね67に抗してピン65を中心として時計回りに回転し、スイッチ59を投入させる。
スイッチ59が投入されると、空気弁57が開いて、図示しない空気源から圧縮空気が供給され、ドリル軸55が回転される。
この状態で、一方の手によって、第二把手13を上方へ移動させると、マイクロストップカウンタ5のカッタ37が回転しつつ上方(ワークW側)へ押し出される。この時、ピン31はカッタ37とともにそれを支持し案内しつつ上方へ移動する。
そして、カッタ37はワークWの外面(下面)に当接し、孔の周りに皿取り加工を行なう。
【0034】
この時、カッタ37の突出量は、マイクロストップカウンタ5の設定で所定量に決められているので、皿取りの深さもそれによって決められることになる。
このように、マイクロストップカウンタ5で予め設定された所定量だけカッタ37は突出させられ、かつ、カッタ37はマイクロストップカウンタ5の駆動部(根元部)とピン31とによって、軸線方向の両側から支持されぶれることがないので、場所や作業者が変っても、常に一定した形状、大きさの皿取りを安定して加工することができる。
【0035】
このように、皿取り作業時には、基本的には軽量のドリルを移動させるのみとなるので、例えば、上向きに作業する場合でも楽に行なうことができ、作業性を向上させることができる。
また、クランプを行なう移動手段9の駆動機構77を第一把手11に取り付け、一方、ドリル7を第二把手13に取り付けているので、両手を有効に活用でき、作業性を一層向上させることができる。
【0036】
皿取り加工が終了すると、トリガ63を放して、空気弁57を閉じ、ドリル軸55の回転を停止させるとともに、第二把手13を下降させ、ドリル7を元の位置に復帰させる。
次いで、ワークWのクランプを解除する。この解除方法について説明する。
前記したクランプ作業中、動作調整リンク81が時計回りに回転するのに伴い、その短辺が上方に移動する。これに伴いクランプ解除レバー83は、図2に示されるように操作レバー79と動作調整リンク81との間に位置させられている。
クランプ解除レバー83の左端(本体3と反対側端)を下方へ移動させると、クランプ解除レバー83の右端(本体3側端)が上方へ移動し、操作レバー79の接続ピン80よりも左方の下面を押上げることになる。
【0037】
操作レバー79の左端が上がると、接続ピン80も上がり、動作調整リンク81が反時計回りに揺動するとともに固定ピン87と連結ピン75との距離が短縮される。すなわち、連結ピン75が左側に移動させられることになる。
連結ピン75が支点線CLを越えて左方に移動すると、本体リンク71と移動リンク73との成す角度が徐々に小さくなり、支点距離が短くなっていく。そうすると、本体ピン69は、本体3に固定されているので、ガイドピン49はガイド孔51に沿って下方へ移動することになる。
このガイドピン49の移動によってこれを取り付けた保持部材45およびマイクロストップカウンタ5が下方に移動し、クランプが解除される。
これで、位置Aにおける皿取り加工が終了する。
【0038】
次いで、例えば、位置Bにおける皿取り加工を行なうこととすると、位置Bでは、外板91,93に加えて骨材97が重なっているため、位置Aに比べて厚さが大きくなっている。
この場合には、キャップ25によってクランプ部材19を回して、ナット23(本体3)に対して上方に移動させ、クランプ面21の位置を骨材97の厚み分だけ上方へ移動させる。
このようにした後、前記した位置Aにおける皿取り加工と同じようにして、位置Bにおける皿取り加工を行なう。
このように、クランプ面21は、加工方向20における位置が調整可能に設けられているので、クランプ面21の位置を調整することによってマイクロストップカウンタ5、移動手段9およびドリル7側を調整することなく、ワークWの厚さ変化に簡単に対応することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、移動手段9として、リンク機構を用いているが、これに限定されるものではなく、油圧、空気圧によるアクチュエータとしてもよいし、あるいはラックとピニオン等の機械式のものとしてもよい。
また、本実施形態では、連結ピン75の右方への移動をリンク機構によって制限させているが、これに限定されるものではなく、例えば、ストッパを用いて制限するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態にかかる皿取り装置の全体概略構成を示し、クランプ解除の状態を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる皿取り装置の全体概略構成を示し、クランプの状態を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる皿取り装置の全体概略構成を示し、皿取り作業時の状態を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるクランプ部の周辺を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる皿取り装置を用いて加工される構造を示す斜視図である。
【図6】図5のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 皿取り加工装置
3 本体
5 マイクロストップウンタ
7 ドリル
9 移動手段
11 第一把手
13 第二把手
15 クランプ部
20 加工方向
21 クランプ面
31 ピン
37 カッタ
43 先端面
49 ガイドピン
69 本体ピン
71 本体リンク
73 移動リンク
75 連結ピン
77 駆動機構
CL 支点線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方に突出したクランプ部を有する本体と、
前記クランプ部に設けられたクランプ面から、該クランプ面と直交する加工方向に出没可能に設けられたピンと、
先端面が前記クランプ面に対向して配置され、前記本体に前記加工方向に移動可能に取り付けられたマイクロストップカウンタと、
該マイクロストップカウンタに設けられ、前記先端面から前記加工方向に所定量突出可能で、先端に前記ピンの先端と嵌合する凹部を有する皿取り用のカッタと、
前記本体に前記加工方向に移動可能に取り付けられ、前記マイクロストップカウンタのカッタを回動させるドリルと、
前記マイクロストップカウンタを前記加工方向に作動させる移動手段と、
が備えられていることを特徴とする皿取り加工装置。
【請求項2】
前記クランプ面は、前記加工方向における位置が調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の皿取り加工装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記本体に取り付けられた第一支点部に回動自在に支持された第一リンクと、前記マイクロストップカウンタに前記加工方向に移動可能に取り付けられた第二支点部に回動自在に支持された第二リンクと、前記第一リンクおよび前記第二リンクを相互に回動自在に接続する連結部と、前記第一支点部と前記第二支点部とを結ぶ支点線に対して交差する方向に前記連結部を移動させる駆動機構とを備え、
前記連結部の前記支点線を越える一方への動きは、微小範囲に制限されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の皿取り加工装置。
【請求項4】
前記本体を挟んで両側に、第一把手と第二把手とが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の皿取り加工装置。
【請求項5】
前記第一把手には、前記移動手段が取り付けられ、前記第二把手は前記ドリルを保持していることを特徴とする請求項4に記載の皿取り加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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