説明

監視カメラ

【構成】CPU28は、イメージセンサ14を基準指標が捉えられるパン角α1およびチルト角β1に調整し、その後にイメージセンサ14から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する。カメラCPU28はまた、イメージセンサ14をパン角α2(=α1+180°)およびチルト角β2(=180°−β1)に調整し、その後にイメージセンサ14から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する。カメラCPU28は、撮像面に割り当てられるマスクエリアのパン方向における位置を90°以上のチルト角範囲に対応して補正するためのオフセットを、上述の要領で検出された基準指標の出現位置に基づいて算出する。
【効果】カメラ設定の誤差を解消するための調整作業を効率化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視カメラに関し、特にたとえばドーム型の監視カメラに適用され、パン/チルト操作に応答して撮像方向を変更する、監視カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカメラの一例が、特許文献1に開示されている。この背景技術によれば、レンズとCCDイメージャとの光軸のズレを示す光軸ズレ量が、検査段階で計測される。計測された光軸ズレ量は、メモリに記憶される。マイクロプロセッサは、メモリに記憶された光軸ズレ量を参照して、CCDイメージャから切り出す有効画面の中心と光軸とが一致するように切り出し位置をずらす。これによって、レンズシステムのメカ的精度のバラツキにかかわらず、容易に光軸ズレを補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−27926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、背景技術は、パンチルトカメラのような撮像方向をパン方向およびチルト方向に回転させるカメラを想定しておらず、パン/チルト回転動作に伴って顕在化するカメラ設定の誤差が上述した光軸ズレ量に基づいて補正されることもない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、パン/チルト回転動作に伴って顕在化するカメラ設定の誤差を解消するための調整作業を効率化できる、調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従うカメラ調整装置(10:実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、撮像手段(14)のパン角およびチルト角を基準指標が捉えられる第1パン角および第1チルト角にそれぞれ調整する第1調整手段(S35,S37)、撮像手段のパン角およびチルト角を第1パン角に180°を加算した第2パン角および180°から第1チルト角を減算した第2チルト角にそれぞれ調整する第2調整手段(S43~S45)、第1調整手段の調整処理に関連して撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する第1検出手段(S39)、第2調整手段の調整処理に関連して撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する第2検出手段(S47)、および撮像面に割り当てられる部分エリアのパン方向における位置を特定チルト角範囲に対応して補正するための第1パラメータ値を第1検出手段の検出結果と第2検出手段の検出結果とに基づいて算出する第1算出手段(S53)を備える。
【0007】
好ましくは、第1検出手段および第2検出手段の各々は撮像面の基準位置から基準指標の出現位置までの距離をパン方向に対応して検出し、第1算出手段は第1検出手段によって検出された距離と第2検出手段によって検出された距離との総和を第1パラメータ値として算出する。
【0008】
好ましくは、第1調整手段および/または第2調整手段の調整処理に関連して撮像手段から出力された被写界像上でチルト方向における基準指標の位置を検出する第3検出手段(S41, S49)、および撮像手段のチルト角の大きさの定義を補正するための第2パラメータ値を第3検出手段の検出結果に基づいて算出する第2算出手段(S51)がさらに備えられる。
【0009】
好ましくは、特定チルト角範囲はパン軸に対応するチルト角よりも大きい角度範囲およびパン軸に対応するチルト角よりも小さい角度範囲のいずれか一方に相当する。
【0010】
好ましくは、部分エリアは特殊効果処理を施すエリアに相当する。
【0011】
好ましくは、第1調整手段は、基準指標が撮像手段から出力された被写界像上で消失しているとき撮像手段のパン角および/またはチルト角を既定順序で変更する変更手段(S37)を含む。
【0012】
さらに好ましくは、基準指標は複数の線の交点に相当しかつ複数の線は交点に向かって減少する幅を有し、第1調整手段は撮像手段から出力された被写界像に現れた線の幅に基づいて第1パン角および第1チルト角を調整する角度調整手段(S61~S65)をさらに含む。
【0013】
この発明に従うカメラ調整プログラムは、カメラ調整装置(10)のプロセッサ(28)に、撮像手段(14)のパン角およびチルト角を基準指標が捉えられる第1パン角および第1チルト角にそれぞれ調整する第1調整ステップ(S35,S37)、撮像手段のパン角およびチルト角を第1パン角に180°を加算した第2パン角および180°から第1チルト角を減算した第2チルト角にそれぞれ調整する第2調整ステップ(S43~S45)、第1調整ステップの調整処理に関連して撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する第1検出ステップ(S39)、第2調整ステップの調整処理に関連して撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する第2検出ステップ(S47)、および撮像面に割り当てられる部分エリアのパン方向における位置を特定チルト角範囲に対応して補正するためのパラメータ値を第1検出ステップの検出結果と第2検出ステップの検出結果とに基づいて算出する算出ステップ(S53)を実行させるための、カメラ調整プログラムである。
【0014】
この発明に従うカメラ調整方法は、カメラ調整装置(10)によって実行されるカメラ調整方法であって、撮像手段(14)のパン角およびチルト角を基準指標が捉えられる第1パン角および第1チルト角にそれぞれ調整する第1調整ステップ(S35,S37)、撮像手段のパン角およびチルト角を第1パン角に180°を加算した第2パン角および180°から第1チルト角を減算した第2チルト角にそれぞれ調整する第2調整ステップ(S43~S45)、第1調整ステップの調整処理に関連して撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する第1検出ステップ(S39)、第2調整ステップの調整処理に関連して撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する第2検出ステップ(S47)、および撮像面に割り当てられる部分エリアのパン方向における位置を特定チルト角範囲に対応して補正するためのパラメータ値を第1検出ステップの検出結果と第2検出ステップの検出結果とに基づいて算出する算出ステップ(S53)を備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、撮像面に割り当てられる部分エリアの位置は特定チルト角範囲に対応して補正され、そのために参照されるパラメータ値は第1姿勢に対応する出現位置および第2姿勢に対応する出現位置に基づいて算出される。これによって、パン/チルト回転動作に伴って顕在化するカメラ設定の誤差を解消するための調整作業を効率化できる。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の基本的構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施例に適用される監視カメラの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】監視ゾーンの一例を示す図解図である。
【図4】(A)はパン回転動作の一部を示す図解図であり、(B)はチルト回転動作の一部を示す図解図である。
【図5】(A)はチルト角の再定義動作の一部を示す図解図であり、(B)はチルト角の再定義動作の他の一部を示す図解図である。
【図6】(A)はパン回転動作の一部を示す図解図であり、(B)はパン回転動作の他の一部を示す図解図であり、(C)はパン回転動作のその他の一部を示す図解図である。
【図7】(A)はマスクエリアの割り当て動作の一部を示す図解図であり、(B)はマスクエリアの割り当て動作の他の一部を示す図解図である。
【図8】図2実施例に適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
【図9】図2実施例に適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
【図10】図2実施例に適用されるCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【図11】検査工程において用いられるチャートの一例を示す図解図である。
【図12】検査工程における撮像方向の調整動作の一部を示す図解図である。
【図13】検査工程における撮像動作の一部を示す図解図である。
【図14】検査工程における撮像動作の他の一部を示す図解図である。
【図15】図2実施例に適用されるレジスタの構成の一例を示す図解図である。
【図16】図2実施例に適用される他のレジスタの構成の一例を示す図解図である。
【図17】図2実施例に適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
【図18】図2実施例に適用されるCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【図19】他の実施例の検査工程において用いられるチャートの一例を示す図解図である。
【図20】他の実施例の監視カメラに適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
[基本的構成]
【0019】
図1を参照して、この発明のカメラ調整装置は、基本的に次のように構成される。第1調整手段1は、撮像手段6のパン角およびチルト角を基準指標が捉えられる第1パン角および第1チルト角にそれぞれ調整する。第2調整手段2は、撮像手段6のパン角およびチルト角を第1パン角に180°を加算した第2パン角および180°から第1チルト角を減算した第2チルト角にそれぞれ調整する。第1検出手段3は、第1調整手段1の調整処理に関連して撮像手段6から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する。第2検出手段4は、第2調整手段2の調整処理に関連して撮像手段6から出力された被写界像上でパン方向における基準指標の出現位置を検出する。第1算出手段5は、撮像面に割り当てられる部分エリアのパン方向における位置を特定チルト角範囲に対応して補正するための第1パラメータ値を第1検出手段3の検出結果と第2検出手段4の検出結果とに基づいて算出する。
【0020】
第1調整手段1の調整処理に対応する撮像面の姿勢を第1姿勢とし、第2調整手段2の調整処理に対応する撮像面の姿勢を第2姿勢と定義すると、第2姿勢は第1姿勢に対して垂直方向に反転したものとなる。パン/チルト機構または光学機構に設計誤差が存在する場合、第1姿勢に対応する基準指標の出現位置および第2姿勢に対応する基準指標の出現位置に設定誤差に起因するずれが生じる。さらに、このずれは一部のチルト角範囲において顕在化する。
【0021】
撮像面に割り当てられる部分エリアのパン方向における位置は特定チルト角範囲に対応して補正され、そのために参照される第1パラメータ値は第1姿勢に対応する出現位置および第2姿勢に対応する出現位置に基づいて算出される。これによって、パン/チルト回転動作に伴って顕在化するカメラ設定の誤差を解消するための調整作業を効率化できる。
[実施例]
【0022】
図2に示すこの実施例の監視カメラ10は、屋内の天井に設置されて図3に示す監視ゾーンを斜め上方から監視するドーム型のカメラであり、光学レンズ12およびイメージセンサ14を含む。監視ゾーンの一部を表す光学像は、ズームレンズ12を経てイメージセンサ14の撮像面に照射される。
【0023】
電源が投入されると、CPU28は、撮像制御タスクの下で動画取り込み処理を実行するべく、露光動作および電荷読み出し動作の繰り返しをドライバ16に命令する。ドライバ16は、周期的に発生するタイミング信号に応答して、撮像面の露光とこれによって生成された電荷の読み出しとを実行する。イメージセンサ14からは、撮像面から読み出された電荷に基づく生画像データが繰り返し出力される。
【0024】
カメラ処理回路18は、イメージセンサ14から出力された生画像データに色分離,白バランス調整,YUV変換などの処理を施し、これによって生成されたYUV形式の画像データをメモリ制御回路20を通してSDRAM22に書き込む。こうして周期的にSDRAM22に取り込まれる画像データは、CPU28によって後述するマスク処理を施される。映像I/F24は、マスク処理を施された画像データをメモリ制御回路20を通してSDRAM22から読み出し、読み出された画像データを外部コントローラ(図示せず)に向けて送出する。外部コントローラに設けられたモニタ画面には、送出された画像データに基づく監視画像が表示される。
【0025】
外部コントローラには、監視カメラ10のパン/チルト回転を指示するためのジョイスティックが設けられる。操作者がジョイスティックを傾けると、ジョイスティックの傾斜方向に対応する方向パラメータとジョイスティックの傾斜角度に対応する速度パラメータとが記述されたパン/チルト操作情報が作成される。操作者がジョイスティックを解放すると、ジョイスティックは復元力によって初期状態(スティックが正立する状態)に戻り、パン/チルト操作情報に代えてパン/チルト停止情報が1回だけ作成される。
【0026】
外部コントローラは、こうして作成されたパン/チルト操作情報およびパン/チルト停止情報を監視カメラ10に向けて送出する。送出されたパン/チルト操作情報およびパン/チルト停止情報は、通信I/F30を経てCPU28に与えられる。
【0027】
パン/チルト操作情報またはパン/チルト停止情報が与えられたとき、CPU28は、方向制御タスクの下で、パン/チルト回転指示をパン回転機構32および/またはチルト回転機構34に向けて発行する。この結果、撮像面の向きが所望の方向に所望の速度で変更される。CPU28はまた、パン/チルト停止情報が与えられたとき、方向制御タスクの下でパン/チルト停止指示をパン回転機構32および/またはチルト回転機構34に向けて発行する。この結果、撮像面の向きの変更動作が停止される。
【0028】
図4(A)を参照して、パン角θpは、撮像面に直交する光軸の水平角を定義するパラメータであり、撮像面を真北に向けたときの水平角を0°(または360°)として、時計回り方向に沿って増大する。したがって、パン角θpは、真東,真南および真西に対応してそれぞれ90°,180°および270°を示す。なお、パン角θpの可変範囲は0°≦θp<360°である。
【0029】
図4(B)を参照して、チルト角θtは、撮像面に直交する光軸の垂直角を定義するパラメータであり、イメージセンサ14の上端を上にして撮像面を水平方向に向けたときの垂直角を0°として、下方向に沿って増大する。チルト角θtは、撮像面を真下に向けたとき90°を示し、イメージセンサ14の上端を下にして撮像面を水平方向に向けたとき180°を示す。なお、チルト角θtの可変範囲は−20°≦θt<200°である。
【0030】
図2に戻って、CPU28は、撮像制御タスクの下でレジスタRGST1からオフセットOFST_AGLを読み出し、読み出されたオフセットOFST_AGLに従ってチルト角θtを再定義する。
【0031】
チルト回転機構34に“−Δβ”に相当する設定誤差が存在しており、かつこの設定誤差を放置すると、チルト角θtを“β1”に設定しようとした場合に、チルト角θtは実際には“β1−Δβ”に設定される。同様に、チルト角θtを“β2”に設定しようとした場合、チルト角θtは実際には“β2−Δβ”に設定される。
【0032】
“β1=180°−β2”が成り立つ条件で“β1”および“β2”を想定した場合、図5(A)から分かるように、“β1”に対応する光軸および“β2”に対応する光軸は鉛直軸VAXに対して対称的に設定されるものの、“β1−Δβ”に対応する光軸および“β2−Δβ”に対応する光軸は鉛直軸VAXに対して非対称的に設定される。
【0033】
このような非対称性は、θt=β2−Δβおよびθp=α1+180°の設定で捉えられる被写界像をθt=β1−Δβおよびθp=α1の設定で捉えられる被写界像と比較したときに顕在化する。
【0034】
オフセットOFST_AGLは、このような非対称性を解消するためのパラメータである。オフセットOFST_AGLを参照してチルト角θtを再定義した結果、チルト角θtの定義は図5(B)に点線で示す状態から同じ図5(B)に実線で示す状態にシフトする。
【0035】
CPU28は、このような再定義を踏まえてパン角θpおよびチルト角θtを繰り返し検出し、パン角θpおよびチルト角θtを記述した角度情報を通信I/F30を通して外部コントローラに繰り返し送出する。外部コントローラは、角度情報に記述されたチルト角θtが90°を下回るとき監視画像を正立姿勢でモニタに表示する一方、角度情報に記述されたチルト角θtが90°以上のとき監視画像を倒立姿勢でモニタに表示する。
【0036】
CPU28はまた、予め登録された保護対象物が撮像面(厳密には有効画素エリア)によって捉えられているか否かを検出されたパン角θpおよびチルト角θtに基づいて判別する。保護対象物が撮像面によって捉えられていれば、CPU28は、検出されたパン角θpおよびチルト角θtを参照して保護対象物画像の位置を特定し、特定された位置に対応してSDRAM24にマスクエリアを設定する。
【0037】
ただし、パン回転機構32に“−Δα”の設定誤差が存在しており、かつこの設定誤差を放置すると、パン角θpを“α1”に設定しようとした場合に、パン角θpは実際には“α1−Δα”に設定される。同様に、パン角θpを“α2”に設定しようとした場合、パン角θpは実際には“α2−Δα”に設定される。
【0038】
“α2=α1+180°”が成り立つ条件で“α1”および“α2”を想定した場合、光軸は、θp=α1−Δαおよびθt=0°に対応して図6(A)に示すように設定され、θp=α2−Δαおよびθt=0°に対応して図6(B)に示すように設定され、そしてθp=α2−Δαおよびθt=180°に対応して図6(C)に示すように設定される。
【0039】
図6(C)に示す設定で捉えられる被写界像を図6(A)に示す設定で捉えられる被写界像と比較した場合、“Δα*2”に相当するずれがパン方向に顕在化する。なお、チルト軸の設定に誤差が存在する場合は、この誤差に起因するずれが“Δα*2”に上乗せされる。
【0040】
そこで、CPU28は、チルト角θtが90°以上であるとき、レジスタRGST1に登録されたオフセットOFST_MSKを参照してマスクエリアの位置を補正する。オフセットOFST_MSKは、上述した“Δα*2”に相当するずれを解消するためのパラメータであり、チルト角θtが90°以上の角度範囲で参照される。
【0041】
したがって、図3に示す絵画PCTが保護対象物として登録されていることを前提として、絵画PCTがθp=α1−Δαおよびθt=β1(β1:再定義後のチルト角)に対応して捉えられると、マスクエリアは図7(A)に示す要領で設定される。一方、絵画PCTがθp=α2−Δαおよびθt=180°−β1に対応して捉えられると、マスクエリアは図7(B)に示す要領で設定される。
【0042】
CPU28は、こうして確定したマスクエリアに属する一部の画像データ(つまり保護対象物画像を表す画像データ)をマスクする。これによって、保護対象物のプライバシが守られる。
【0043】
CPU28は、図8に示す方向制御タスクと図9〜図10に示す撮像制御タスクとを含む複数のタスクを並列的に実行する。なお、これらのタスクに対応する制御プログラムは、フラッシュメモリ26に記憶される。
【0044】
図8を参照して、ステップS1ではパン/チルト操作情報を受信したか否かを判別し、ステップS3ではパン/チルト停止情報を受信したか否かを判別する。ステップS1でYESであればステップS5に進み、パン/チルト回転指示をパン回転機構32および/またはチルト回転機構34に向けて発行する。ステップS3でYESであればステップS7に進み、パン/チルト停止指示をパン回転機構32および/またはチルト回転機構34に向けて発行する。ステップS5または7の処理が完了すると、ステップS1に戻る。なお、ステップS1およびS3のいずれもNOであれば、そのままステップS1に戻る。
【0045】
図9を参照して、ステップS11では動画取り込み処理を実行する。この結果、撮像面で捉えられた被写界を表す複数フレームの画像データが外部コントローラに向けて送出される。ステップS13では、レジスタRGST1に登録されたオフセットOFST_AGLを参照してチルト角θtを再定義する。これによって、チルト回転機構34の設定誤差に起因するチルト角θtのずれが解消される。
【0046】
ステップS15では、ステップS13の再定義を踏まえて現時点のパン角θpおよびチルト角θtを検出し、ステップS17では検出されたパン角θpおよびチルト角θtを記述した角度情報を外部コントローラに向けて送出する。この結果、監視画像は、チルト角θtが90°未満のとき正立状態でモニタに表示され、チルト角θtが90°以上のとき倒立状態でモニタに表示される。
【0047】
ステップS19では、保護対象物が撮像面によって捉えられているか否かをステップS15で検出されたパン角θpおよびチルト角θtに基づいて判別する。判別結果がNOであればステップS15に戻り、判別結果がYESであればステップS21に進む。
【0048】
ステップS21では、ステップS15で検出されたパン角θpおよびチルト角θtを参照して保護対象物画像の位置を特定し、特定された位置に対応してSDRAM24にマスクエリアを設定する。ステップS23ではチルト角θtが90°以上であるか否かを判別し、判別結果がNOであればそのままステップS27に進む一方、判別結果がYESであればステップS25の処理を経てステップS27に進む。
【0049】
ステップS25では、ステップS21で設定されたマスクエリアの位置をレジスタRGST1に登録されたオフセットOFST_MSKを参照して補正する。ステップS27では、こうして確定したマスクエリアに属する一部の画像データ(つまり保護対象物画像を表す画像データ)をマスクする。マスク処理が完了すると、ステップS15に戻る。
【0050】
上述のオフセットOFST_AGLおよびOFST_MSKは、監視カメラ10の検査工程(=出荷前の工程)において算出される。
【0051】
まず、図11に示すように互いに直交する2つの直線L1およびL2が描かれたチャートCHRT1が準備され、撮像面がチャートCHRT1を向くように監視カメラ10が配置される。この状態で監視カメラ10の動作モードを検査モードに設定すると、CPU28のオフセット検出タスクの下で以下の処理が実行される。
【0052】
まず、パン角θpおよびチルト角θtを初期化するための初期化指示が、パン回転機構32およびチルト回転機構34に向けて発行される。初期化指示に従うパン/チルト回転動作の結果、撮像面は、図12に示すエリア0〜8うち中央のエリア0を捉える。
【0053】
続いて、動画取り込み処理が実行され、撮像面で捉えられた被写界を表す画像データがSDRAM22に繰り返し取り込まれる。チャートCHRT1に描かれた直線L1およびL2の交点がSDRAM22上の画像データに出現しなければ、パン角θpおよび/またはチルト角θtが変更される。この変更処理は、直線L1およびL2の交点が発見されるまで繰り返し実行される。撮像面は、変更処理毎に図12に示すエリア1〜8を順に捉える。
【0054】
直線L1およびL2の交点が発見されると、発見された交点から撮像面の中心までのオフセットがパン方向およびチルト方向の各々に対応して検出される。撮像面(有効画素エリア)が図13に示す要領でチャートCHRT1を捉えた場合、パン方向に対応して検出されたオフセットは“OFST_P1”に相当し、チルト方向に対応して検出されたオフセットは“OFST_T1”に相当する。
【0055】
オフセットOFST_P1は、現時点のパン角θp(=α1)に対応して図15に示すレジスタRGST2に登録される。また、オフセットOFST_T1は現時点のチルト角θt(=β1)に対応して同じレジスタRGST2に登録される。
【0056】
続いて、パン角θpが“α2”に設定され、チルト角θtが“β2”に設定される。ここで、“α2”は“α1+180°”に相当する角度であり、“β2”は“180°−β1”に相当する角度である。
【0057】
角度設定が完了すると、直線L1およびL2の交点から撮像面の中心までのオフセットがパン方向およびチルト方向の各々に対応して検出される。撮像面(有効画素エリア)が図14に示す要領でチャートCHRT1を捉えた場合、パン方向に対応して検出されたオフセットは“OFST_P2”に相当し、チルト方向に対応して検出されたオフセットは“OFST_T2”に相当する。
【0058】
オフセットOFST_P2は、現時点のパン角θp(=α2)に対応してレジスタRGST2に登録される。また、オフセットOFST_T2は現時点のチルト角θt(=β2)に対応してレジスタRGST2に登録される。
【0059】
チルト角θtを再定義するためのオフセットOFST_AGLは、レジスタRGST2に登録されたオフセットOFST_T1およびOFST_T2に基づいて算出される。具体的には、オフセットOFST_AGLは、オフセットOFST_T1およびOFST_T2の平均値に定数Kを掛け算することで算出され、算出されたオフセットOFST_AGLは図16に示すレジスタRGTS1に登録される。
【0060】
また、マスクエリアの位置を調整するためのオフセットOFST_MSKは、レジスタRGST2に登録されたオフセットOFST_P1およびOFST_P2に基づいて算出される。オフセットOFST_MSKは、オフセットOFST_P1およびOFST_P2の総和に相当し、オフセットOFST_MSKもまたレジスタRGTS1に登録される。
【0061】
検査モードが選択されたとき、CPU28は図17〜図18に示すオフセット検出タスクを実行する。このタスクもまた、フラッシュメモリ26に記憶される。
【0062】
ステップS31では、パン角θpおよびチルト角θtを初期化するべくパン回転機構32およびチルト回転機構34に初期化指示を与える。ステップS33では、動画取り込み処理を実行する。ステップS35では、チャートCHRT1に描かれた直線L1およびL2の交点が出現したか否かを判別する。判別結果がNOであれば、パン角θpおよび/またはチルト角θtを変更し、その後にステップS35に戻る。ステップS37の変更処理は、ステップS35の判別結果がNOである限り、繰り返し実行される。撮像面の向きは、図12に示すエリア1〜8が順に捉えられるように変更される。
【0063】
ステップS35の判別結果がYESであれば、ステップS39に進み、直線L1およびL2の交点から撮像面の中心までのオフセットをパン方向に対応して検出する。検出されたオフセット(=OFST_P1)は、現時点のパン角θp(=α1)に対応してレジスタRGST2に登録される。ステップS41では、直線L1およびL2の交点から撮像面の中心までのオフセットをチルト方向に対応して検出する。検出されたオフセット(=OFST_T1)は、現時点のチルト角θt(=β1)に対応してレジスタRGST2に登録される。
【0064】
ステップS43ではパン角θpを“α2”に設定し、ステップS45ではチルト角θtを“β2”に設定する。ステップS47では、直線L1およびL2の交点から撮像面の中心までのオフセットをパン方向に対応して検出する。検出されたオフセット(=OFST_P2)は、現時点のパン角θp(=α2)に対応してレジスタRGST2に登録される。ステップS49では、直線L1およびL2の交点から撮像面の中心までのオフセットをチルト方向に対応して検出する。検出されたオフセット(=OFST_T2)は、現時点のチルト角θt(=β2)に対応してレジスタRGST2に登録される。
【0065】
ステップS51では、レジスタRGST2に登録されたオフセットOFST_T1およびOFST_T2に基づいてオフセットOFST_AGLを算出し、算出されたオフセットOFST_AGLをレジスタRGST1に設定する。ステップS53では、レジスタRGST2に登録されたオフセットOFST_P1およびOFST_P2に基づいてマスク位置調整用のオフセットOFST_MSKを算出し、算出されたオフセットOFST_MSKをレジスタRGST1に設定する。オフセット検出タスクは、ステップS53の処理の後に終了される。
【0066】
以上の説明から分かるように、CPU28は、イメージセンサ14のパン角およびチルト角を基準指標(=チャートCHRT1上の交点)が捉えられるパン角α1およびチルト角β1にそれぞれ調整し(S35, S37)、パン方向における基準指標の出現位置を示すオフセットOFST_P1をイメージセンサ14から出力された被写界像上で検出する(S39)。CPU28はまた、イメージセンサ14のパン角およびチルト角をパン角α2(=α1+180°)およびチルト角β2(=180°−β1)にそれぞれ調整し(S43~S45)、パン方向における基準指標の出現位置を示すオフセットOFST_P2をイメージセンサ14から出力された被写界像上で検出する(S47)。CPU28は、撮像面に割り当てられるマスクエリアのパン方向における位置を90°以上のチルト角範囲に対応して補正するためのオフセットOFST_MSKを、上述のオフセットOFST_P1およびOFST_P2に基づいて算出する(S53)。
【0067】
パン角α1およびチルト角β1に対応する撮像面の姿勢が正立姿勢であれば、パン角α2およびチルト角β2に対応する撮像面の姿勢は倒立姿勢となる。パン回転機構32,チルト回転機構34または光学レンズ12に設計誤差が存在する場合、正立姿勢に対応する基準指標の出現位置および倒立姿勢に対応する基準指標の出現位置に、設定誤差に起因するずれが生じる。さらに、このずれは90°以上のチルト角範囲において顕在化する。
【0068】
撮像面に割り当てられるマスクエリアのパン方向における位置は90°以上のチルト角範囲に対応して補正され、そのために参照されるオフセットOFST_MSKは正立姿勢に対応して検出された基準指標の出現位置と倒立姿勢に対応して検出された基準指標の出現位置とに基づいて算出される。これによって、パン/チルト回転動作に伴って顕在化するカメラ設定の誤差を解消するための調整作業を効率化できる。
【0069】
なお、この実施例では、検査工程において図11に示すチャートCHRT1を用いるようにしているが、これに代えて図19に示すチャートCHRT2を用いるようにしてもよい。チャートCHRT2では、直線L1およびL2の交点から離れるにつれて直線L1およびL2の各々の幅が増大する。このような線幅の変化を利用することで、直線L1およびL2の交点を検出するための時間を短縮することができる。この場合、図20に示すステップS61〜S65の処理が追加的に実行される。
【0070】
図20を参照して、ステップS35の判別結果がNOであれば、直線L1および/またはL2を表す線画像がSDRAM22上の画像データに出現したか否かがステップS61で判別される。判別結果がNOであればステップS37に進み、判別結果がYESであればステップS63に進む。ステップS63では、画像データに出現した直線L1および/またはL2の線幅に基づいて直線L1およびL2の交点が出現するパン角およびチルト角を“α1”および“β1”として算出する。ステップS65では、撮像面のパン角θpを“α1”に調整するための指示をパン回転機構32に与え、撮像面のチルト角θtを“β1”に調整するための指示をチルト回転機構34に与える。ステップS65の処理が完了すると、ステップS9に進む。
【0071】
また、この実施例では、ドーム型の監視カメラを用いて説明しているが、パン回転動作およびチルト回転動作が可能である限り、ドーム型と異なる型の監視カメラでもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 …監視カメラ
14 …イメージセンサ
22 …SDRAM
28 …CPU
32 …パン回転機構
34 …チルト回転機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段のパン角およびチルト角を基準指標が捉えられる第1パン角および第1チルト角にそれぞれ調整する第1調整手段、
前記撮像手段のパン角およびチルト角を前記第1パン角に180°を加算した第2パン角および180°から前記第1チルト角を減算した第2チルト角にそれぞれ調整する第2調整手段、
前記第1調整手段の調整処理に関連して前記撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における前記基準指標の出現位置を検出する第1検出手段、
前記第2調整手段の調整処理に関連して前記撮像手段から出力された被写界像上で前記パン方向における前記基準指標の出現位置を検出する第2検出手段、および
撮像面に割り当てられる部分エリアの前記パン方向における位置を特定チルト角範囲に対応して補正するための第1パラメータ値を前記第1検出手段の検出結果と前記第2検出手段の検出結果とに基づいて算出する第1算出手段を備える、カメラ調整装置。
【請求項2】
前記第1検出手段および前記第2検出手段の各々は前記撮像面の基準位置から前記基準指標の出現位置までの距離を前記パン方向に対応して検出し、
前記第1算出手段は前記第1検出手段によって検出された距離と前記第2検出手段によって検出された距離との総和を前記第1パラメータ値として算出する、請求項1記載のカメラ調整装置。
【請求項3】
前記第1調整手段および/または前記第2調整手段の調整処理に関連して前記撮像手段から出力された被写界像上でチルト方向における前記基準指標の位置を検出する第3検出手段、および
前記撮像手段のチルト角の大きさの定義を補正するための第2パラメータ値を前記第3検出手段の検出結果に基づいて算出する第2算出手段をさらに備える、請求項1または2記載のカメラ調整装置。
【請求項4】
前記特定チルト角範囲はパン軸に対応するチルト角よりも大きい角度範囲および前記パン軸に対応するチルト角よりも小さい角度範囲のいずれか一方に相当する、請求項1ないし3のいずれかに記載のカメラ調整装置。
【請求項5】
前記部分エリアは特殊効果処理を施すエリアに相当する、請求項1ないし4のいずれかに記載のカメラ調整装置。
【請求項6】
前記第1調整手段は、前記基準指標が前記撮像手段から出力された被写界像上で消失しているとき前記撮像手段のパン角および/またはチルト角を既定順序で変更する変更手段を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載のカメラ調整装置。
【請求項7】
前記基準指標は複数の線の交点に相当しかつ前記複数の線は前記交点に向かって減少する幅を有し、
前記第1調整手段は前記撮像手段から出力された被写界像に現れた線の幅に基づいて前記第1パン角および前記第1チルト角を調整する角度調整手段をさらに含む、請求項6記載のカメラ調整装置。
【請求項8】
カメラ調整装置のプロセッサに、
撮像手段のパン角およびチルト角を基準指標が捉えられる第1パン角および第1チルト角にそれぞれ調整する第1調整ステップ、
前記撮像手段のパン角およびチルト角を前記第1パン角に180°を加算した第2パン角および180°から前記第1チルト角を減算した第2チルト角にそれぞれ調整する第2調整ステップ、
前記第1調整ステップの調整処理に関連して前記撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における前記基準指標の出現位置を検出する第1検出ステップ、
前記第2調整ステップの調整処理に関連して前記撮像手段から出力された被写界像上で前記パン方向における前記基準指標の出現位置を検出する第2検出ステップ、および
撮像面に割り当てられる部分エリアの前記パン方向における位置を特定チルト角範囲に対応して補正するためのパラメータ値を前記第1検出ステップの検出結果と前記第2検出ステップの検出結果とに基づいて算出する算出ステップを実行させるための、カメラ調整プログラム。
【請求項9】
カメラ調整装置によって実行されるカメラ調整方法であって、
撮像手段のパン角およびチルト角を基準指標が捉えられる第1パン角および第1チルト角にそれぞれ調整する第1調整ステップ、
前記撮像手段のパン角およびチルト角を前記第1パン角に180°を加算した第2パン角および180°から前記第1チルト角を減算した第2チルト角にそれぞれ調整する第2調整ステップ、
前記第1調整ステップの調整処理に関連して前記撮像手段から出力された被写界像上でパン方向における前記基準指標の出現位置を検出する第1検出ステップ、
前記第2調整ステップの調整処理に関連して前記撮像手段から出力された被写界像上で前記パン方向における前記基準指標の出現位置を検出する第2検出ステップ、および
撮像面に割り当てられる部分エリアの前記パン方向における位置を特定チルト角範囲に対応して補正するためのパラメータ値を前記第1検出ステップの検出結果と前記第2検出ステップの検出結果とに基づいて算出する算出ステップを備える、カメラ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−166336(P2011−166336A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25122(P2010−25122)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】