説明

監視装置

【課題】 検出器の向きを360°以上回転させた場合でも、検出器から引き出された配線に捩れや巻き付きが発生することのない監視装置を提供すること。
【解決手段】 監視装置1においては、検出器80が向いている方向L0と略平行な第1の軸線L1と交差する方向に延びた第2の軸線L2周りの回転を検出器80に行わせる。その際、第2の軸線L2からみたとき、第2の軸線L2周りの回転を1回行う間に検出器80に第1の軸線L1周りの回転を1回、第2の軸線L2周りの回転とは逆方向に行わせる。すなわち、監視装置1を外部からみると、検出器80は、第2の軸線L2周りの回転を行う際、第1の軸線L1周りに回転せず、第1の軸線L1周りにおける同一の角度方向を向いたまま、第2の軸線L2周りに回転する。従って、検出器80から引き出された配線83に捩れや巻き付きが発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種センサや撮像装置などといった検出器の向きを切り換えることのできる監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線センサや撮像装置などといった検出器の向きを360°以上にわたって切り換える監視装置としては、モータの出力軸にホルダなどを介して赤外線センサを連結し、モータによってホルダとともに赤外線センサをモータ軸線周りに回転させる構成が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−72781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成では、赤外線センサが1回転すると、赤外線センサから引き出されている配線も1回転するため、赤外線センサの向きを繰り返し切り換えると、配線がモータ出力軸などに巻き付いてしまうという問題点がある。
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、検出器の向きを360°以上回転させた場合でも、検出器から引き出された配線に捩れや巻き付きが発生することのない監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、配線が引き出された検出器と、該検出器の向きを切り換える駆動装置とを有する監視装置において、前記検出器が向いている方向、前記検出器が向いている方向と平行、あるいは前記検出器が向いている方向と所定の角度を成す軸線を第1の軸線とし、当該第1の軸線および前記検出器が向いている方向と交差する方向に延びた軸線を第2の軸線としたとき、前記駆動装置は、前記検出器に前記第2の軸線周りの回転を行わせるとともに、前記第2の軸線からみたとき、前記第2の軸線周りの回転を1回行う間に前記検出器に前記第1の軸線周りの回転を1回、前記第2の軸線周りの回転とは逆方向に行わせることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る監視装置において、駆動装置によって、検出器を第2の軸線周りに回転させると、検出器の向きが切り換わる。その際、第2の軸線からみると、検出器は、第2の軸線周りの回転を1回行う間に第1の軸線周りの回転を1回、第2の軸線周りの回転とは逆方向に行う。このため、検出器が第2の軸線周りの回転を行う前後において、検出器からみて配線は、第1の軸線に対して常に同一方向に位置する。このため、検出器の向きを360°以上にわたって回転させても、検出器から引き出された配線が捩れることがなく、巻き付くこともない。
【0007】
本発明において、前記駆動装置は、前記検出器を保持した状態で前記第1の軸線方向に延びた軸体と、モータと、該モータの回転出力を前記軸体に伝達して当該軸体に前記第2の軸線周りの公転を行わせるための伝達部材と、前記第2の軸線から半径方向に離間した位置で前記第1の軸線周りの自転を許容した状態で前記軸体と前記伝達部材とを連結する連結機構と、前記自転および前記公転を許容した状態で前記軸体を支持する軸受機構とを備えていることが好ましい。このように構成すると、前記軸体は、前記第1の軸線周りにおける同一の角度方向を向いたまま前記公転を行うことにより、前記第2の軸線からみたとき、前記第2の軸線周りの公転を1回行う間に当該公転とは逆方向に前記自転を1回、自動的に行う。従って、軸体の1公転動作中に軸体を自転させるための駆動系が不要である。それ故、監視装置を小型かつ安価に構成することができる。
【0008】
本発明において、前記モータの出力軸は、前記第2の軸線上に位置し、前記軸受機構は、前記第2の軸線と前記軸体との交差部分に構成されていることが好ましい。このように構成すると、監視装置を小型に構成することができる。
【0009】
本発明において、前記連結機構は、前記軸体および前記伝達部材のうちの一方に形成された連結機構用球部と、他方側で当該連結機構用球部を受ける連結機構用受け部とを備え、前記軸受機構は、前記軸体、および固定された支持板のうちの一方に形成された軸受機構用球部と、他方側で当該軸受機構用球部を受ける軸受機構用受け部とを備えていることが好ましい。このように構成すると、小型で簡素な構成で、各方向への回転を許容する連結機構や軸受機構を構成することができる。
【0010】
本発明において、前記連結機構は前記軸体の一方端側に構成され、前記検出器は前記軸体の他方端側で保持され、前記軸受機構は前記軸体の長さ方向における途中位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、モータは小さな力で軸体を公転させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る監視装置において、駆動装置によって、検出器を第2の軸線周りに回転させると、検出器の向きが切り換わる。その際、第2の軸線からみると、検出器は、第2の軸線周りの回転を1回行う間に第1の軸線周りの回転を1回、第2の軸線周りの回転とは逆方向に行う。このため、検出器が第2の軸線周りの回転を行う前後において、検出器からみて配線は、第1の軸線に対して常に同一方向に位置する。このため、検出器の向きを360°以上にわたって回転させても、検出器から引き出された配線が捩れることがなく、巻き付くこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した監視装置を説明する。
【0013】
(原理)
図1は、本発明を適用した監視装置の原理を示す説明図である。図1において、本発明の監視装置1は、配線83が引き出された検出器80と、この検出器80の向きを切り換える駆動装置(図示せず)とを有している。監視装置1において、駆動装置は、検出器80が向いている方向L0と平行な軸線L1と交差する方向に延びた第2の軸線L2周りの回転(θ回転)を検出器80に行わせるとともに、第2の軸線L2からみたとき、第2の軸線L2周りの回転を1回行う間に検出器80に第1の軸線L1周りの回転(ψ回転)を1回、第2の軸線L2周りの回転とは逆方向に行わせる。
【0014】
すなわち、監視装置1を外部からみると、検出器80は、第2の軸線L2周りのθ回転を行う際、第1の軸線L1周りにψ回転せず、第1の軸線L1周りにおける同一の角度方向を向いたまま、第2の軸線L2周りにθ回転する。
【0015】
このように構成した監視装置1において、駆動装置によって、検出器80を第2の軸線L2周りにθ回転させると、検出器80の向きL0は、例えば、実線で示した方向から点線で示す方向に切り換わる。その際、第2の軸線L2からみると、検出器80は、第2の軸線L2周りのθ回転を1回行う間に第1の軸線L1周りのψ回転を1回、第2の軸線L2周りのθ回転とは逆方向に行う。このため、検出器80が第2の軸線L2周りの回転を行う前後において、検出器80からみて配線83は常に同一方向に引き出された状態にあり、配線83は、第1の軸線L1に対して常に同一方向に位置する。このため、検出器80の向きを360°以上にわたって回転させても、検出器80から引き出された配線が捩れることがなく、巻き付くこともない。
【0016】
(装置の具体的構成)
図2、図3および図4はそれぞれ、本発明を適用した監視装置の側面図、底面図および断面図である。
【0017】
図2、図3および図4に示す監視装置1は、赤外線センサなどからなる検出器80を駆動装置2によって360°以上の範囲にわたって回転させることにより、検出器80の向きを監視対象となる空間の隅々まで向かせるための装置であり、配線83が側方に引き出された検出器80と、この検出器80を内側に保持するホルダ81と、駆動装置2とを有している。
【0018】
本形態において、ホルダ81の側面には、コネクタ82が固定されており、このコネクタ82を用いて検出器80には配線83が接続されている。ホルダ81の下面は開放状態にあり、検出器80は、下面開口から下方に向けて露出した状態にある。検出器80は、ホルダ81の中心からずれた位置に配置され、図4には、検出器80の向いている方向を矢印L0で示してある。
【0019】
本形態において、駆動装置2は、ホルダ81を介して検出器80を下端部に保持した軸体10と、出力軸220が下方に延びたステッピングモータ22と、ステッピングモータ22の出力軸220に連結された円板状の伝達部材24とを備えている。ここで、軸体10は、検出器80が向いている方向L0と略平行な第1の軸線L1に延びている。また、ステッピングモータ22の出力軸220は、第1の軸線L1と交差する方向に延びた第2の軸線L2上に位置している。ステッピングモータ22は、モータ本体が固定具60などを介して天井に固定されている。ステッピングモータ22のモータ本体の下面には連結板26が固定され、この連結板26の端部の折り曲げ部分には、支持板28の上端部分が固定されている。支持板28は、伝達部材24の側方から軸体10の下端部に向けて下方に折れ曲がり、第2の軸線L2が通っている部分を横切っている。
【0020】
本形態の駆動装置2において、伝達部材24は、ステッピングモータ22の回転出力を軸体10に伝達して、軸体10および検出器80に第2の軸線L2周りの公転(θ回転)を行わせるための部材であり、第2の軸線L2から半径方向で離間した位置において、連結機構30を介して軸体10の上端部と連結されている。連結機構30は、軸体10の第2の軸線L2周りの公転、および軸体10の第1の軸線L1周りの自転(ψ回転)を許容した状態で軸体10の上端部を支持している。このような連結機構30として、本形態では、軸体10の上端部に形成された連結機構用球部31と、伝達部材24の側に形成されて連結機構用球部31が嵌る半球状の連結機構用受け部32とが用いられている。
【0021】
また、本形態の駆動装置2において、軸体10の下端部と支持板28との間には、第2の軸線L2と軸体10との交差部分で、軸体10の第2の軸線L2周りの公転、および軸体10の第1の軸線L1周りの自転を許容する状態で軸体10を支持する軸受機構40が構成されている。このような軸受機構40として、本形態では、軸体10の下端部に形成された軸受機構用球部41と、支持板28の側に形成されて軸受機構用球部41が嵌るリング状の軸受機構用受け部42とが用いられている。ここで、軸受機構用受け部42の底部には穴421が形成されているが、穴421は、軸受機構用球部41よりも小さいので、軸受機構用受け部42は、軸体10の下方への抜け止め機能も担っている。一方、連結機構30は、軸体10の上方へのずれを防止しており、本形態において、軸体10は、連結機構30と軸受機構40により上下方向の動きが規制されている。なお、軸体10とホルダ81との連結は穴421を介して行われている。
【0022】
(本形態の動作、効果)
図4は、本発明を適用した監視装置において、検出器の向きが変化する様子を示す説明図である。本形態の監視装置1において、ステッピングモータ22を動作させると、ステッピングモータ22の出力軸220の回転が伝達部材24を介して軸体10の上端部に伝達され、図4に示すように、軸体10は、第2の軸線L2周りにすりこぎ運動を行いながら公転(θ回転)する。その結果、軸体10の姿勢が切り換わり、それに伴って検出器80の姿勢が切り換わるため、検出器80が向いている方向L0が切り換わる。それ故、軸体10に360°の公転を行わせれば、検出器80が向いている方向L0も360°回転する。また、検出器80をいずれの方向に向かせたい場合でも、180°以下の角度範囲で軸体10を公転させればよいので、所定の方向に短時間で向かせることができる。
【0023】
その際、連結機構30および軸受機構40では、軸体10の第2の軸線L2周りの公転、および軸体10の第1の軸線L1周りの自転の双方が可能であるため、軸体10が第2の軸線L2周りに1公転動作を行う際、第2の軸線L2からみたとき、軸体10は、第1の軸線L1周りの自転を1回、公転とは反対方向に行う。この様子を監視装置1の外部からみると、検出器80は、第2の軸線L2周りの公転を行う際、第1の軸線L1周りに自転せず、第1の軸線L1周りにおける同一の角度方向を向いたまま、第2の軸線L2周りに公転する。それ故、公転により軸体10の姿勢が切り換わるに伴って検出器80の向きが切り換わるが、検出器80に接続されている配線83は、多少振れることがあっても捩れることがなく、また、軸体10に巻き付くこともない。
【0024】
また、本形態では、軸体10とともに検出器80が第2の軸線L2周りに回転するが、検出器80は、軸体10に対して常に同一方向に位置する。このため、検出器80の法線方向の向きを360°回転させても、検出器80上における座標系は公転前後で変化しないので、検出結果の解析が容易である。
【0025】
さらに、本形態では、軸受機構40での自由回転により、軸体10の公転により軸体10に自動的に自転を行わせる構成を採用したため、軸体10の1公転動作中に軸体10を当該軸体10の軸線L1周りに自転させるための駆動系が不要である。それ故、監視装置1を小型かつ安価に構成することができる。
【0026】
また、ステッピングモータ22の出力軸は第2の軸線L2上に位置し、かつ、軸受機構40は、第2の軸線L2と軸体10との交差部分に構成されている。このため、監視装置1を小型に構成することができる。
【0027】
また、連結機構30は軸体10の上端側に構成され、検出器80は軸体10の下端側に連結され、軸受機構40は連結機構30と検出器80との間の位置に配置されているため、ステッピングモータ22は、小さな力で軸体10を公転させることができる。それ故、ステッピングモータ22として、小型で安価なものを用いればよい。
【0028】
(その他の実施形態)
上記実施の形態では、検出器80が向いている方向L0と軸体10の軸線である第1の軸線L1とが平行な構造を採用したが、検出器80が向いている方向L0と第1の軸線L1とが一致する構造、あるいは、検出器80が向いている方向L0と軸体10の軸線である第1の軸線L1とが所定の角度を成す構造を採用してもよい。また、上記実施の形態では、検出器80として赤外線センサを用いたが、検出器80として撮像装置などを用いてもよい。また、上記実施の形態では、駆動装置2の駆動源としてステッピングモータ22を用いたが、その他のDCモータ、あるいはACモータを用いてもよい。また、駆動装置2の駆動源としては、モータに代えて、手動で行ってもよい。また、上記実施の形態において、軸体10は、連結機構30と軸受機構40により上下方向の動きが規制されていたが、連結機構30および軸受機構40の一方で軸体10の上下方向の動きを規制してもよい。さらに、上記実施の形態では、軸受機構40での自由回転により、軸体10の公転により軸体10に自動的に自転を行わせる構成であったが、軸体10の公転に同期させて、軸体10を強制的に自転させる構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した監視装置の原理を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した監視装置の側面図である。
【図3】本発明を適用した監視装置の底面図である。
【図4】本発明を適用した監視装置の断面図である。
【図5】本発明を適用した監視装置において、検出器の向きが変化する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 監視装置
2 駆動装置
10 軸体
22 ステッピングモータ
24 伝達部材
28 支持板
30 連結機構
40 軸受機構
80 検出器
81 ホルダ
82 コネクタ
83 配線
L0 検出器の向いている方向
L1 第1の軸線
L2 第2の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線が引き出された検出器と、該検出器の向きを切り換える駆動装置とを有する監視装置において、
前記検出器が向いている方向、前記検出器が向いている方向と平行、あるいは前記検出器が向いている方向と所定の角度を成す軸線を第1の軸線とし、
当該第1の軸線および前記検出器が向いている方向と交差する方向に延びた軸線を第2の軸線としたとき、
前記駆動装置は、前記検出器に前記第2の軸線周りの回転を行わせるとともに、前記第2の軸線からみたとき、前記第2の軸線周りの回転を1回行う間に前記検出器に前記第1の軸線周りの回転を1回、前記第2の軸線周りの回転とは逆方向に行わせることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
請求項1において、前記駆動装置は、前記検出器を保持した状態で前記第1の軸線方向に延びた軸体と、モータと、該モータの回転出力を前記軸体に伝達して当該軸体に前記第2の軸線周りの公転を行わせるための伝達部材と、前記第2の軸線から半径方向に離間した位置で前記第1の軸線周りの自転を許容した状態で前記軸体と前記伝達部材とを連結する連結機構と、前記自転および前記公転を許容した状態で前記軸体を支持する軸受機構とを備え、
前記軸体は、前記第1の軸線周りにおける同一の角度方向を向いたまま前記公転を行うことにより、前記第2の軸線からみたとき、前記第2の軸線周りの公転を1回行う間に当該公転とは逆方向に前記自転を1回、自動的に行うことを特徴とする監視装置。
【請求項3】
請求項2において、前記モータの出力軸は、前記第2の軸線上に位置し、
前記軸受機構は、前記第2の軸線と前記軸体との交差部分に構成されていることを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記連結機構は、前記軸体および前記伝達部材のうちの一方に形成された連結機構用球部と、他方側で当該連結機構用球部を受ける連結機構用受け部とを備え、
前記軸受機構は、前記軸体、および固定された支持板のうちの一方に形成された軸受機構用球部と、他方側で当該軸受機構用球部を受ける軸受機構用受け部とを備えていることを特徴とする監視装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかにおいて、前記連結機構は前記軸体の一方端側に構成され、
前記検出器は前記軸体の他方端側で保持され、
前記軸受機構は前記軸体の長さ方向における途中位置に配置されていることを特徴とする監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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