説明

目地材およびその施工方法

【課題】ケーソンやブロックなどを設置した後に簡単に取り付けることができ、運搬性や施工性にも優れる目地材およびその施工方法を提供すること。
【解決手段】対向するケーソン1,1などに設けられ開口部3aを備えた目地材取付溝3,3に、目地材10として可撓性材料の伸縮部12の両端の取付部11,11の外側に抜け出し防止材13,13を設ける。
これら抜け出し防止部材13,13により、溝3の開口部3aからの抜け出しを防止するとともに、装着時の重量を確保する。
さらに抜け出し防止材13で癖のない装着形状を保持するとともに、溝との摩擦を小さくして溝への装着を容易にし、外側に配置した抜け出し防止部材13で、運搬後の取り付けも可能として取扱いを容易としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目地材およびその施工方法に関し、ケーソンやブロックなどを並べて構築する護岸壁や管理型廃棄物最終処分場の護岸壁などの構造物の遮水用の目地材を、ケーソンやブロックなどを設置した後に取り付けることで、目地材の損傷などを防止できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
護岸壁や管理型廃棄物最終処分場の護岸壁などの構造物では、ケーソンやブロックなどを並べて護岸壁を構築し、地震などによる地盤変動や不等沈下などにより隣接するケーソンなどの目地部の間隔が変位しても土砂、廃棄物、汚水などの流出を防止するため、目地部を遮水する必要があり、種々の目地材やその遮水構造が提案されている。
【0003】
これまでの目地シール構造では、先行するケーソンに予めアンカーボルトと押え板などで目地材を固定しておき、後行のケーソンを設置後、目地材の円筒状部分に中詰材を充填して膨らませることで遮水するものなどがあるが、予め取り付けるため、ケーソンの設置作業中に損傷することがある。
【0004】
そこで、隣合うケーソンの対向面に上下方向の溝を形成し、溝の開口をスリット状に狭くしておき、溝内に納まる形状で、しかも開口から抜け出さない寸法の取付部と目地幅より十分に広い幅の遮水部とを有する可撓性材料の目地材を用意し、ケーソンを設置後、目地材の両端部の取付部を対向する溝内に嵌め込んで取り付けることで目地部を遮水することが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0005】
そして、このようなケーソン用の目地材では、溝の開口から確実に抜けないようにするため、取付部の中心に芯材を入れるようにしている。
【特許文献1】特開平06−116924号公報
【特許文献2】特開2005−146659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような目地材を用いることで、ケーソンの設置後、ケーソンの対向面に設けた溝に挿入することで取り付けることができ、ケーソン据付の際に損傷することを防止することができるものの、両端部の取付部の中心に芯材が入れてあることから、剛性の高い芯材を予め入れると、ケーソン高さに応じて長尺の目地材を長手方向に巻回することができず、運搬などの取扱いに支障をきたすという問題がある。
【0007】
一方、芯材の剛性を長手方向に巻回することができる程度にすると、溝への挿入の際、巻き癖によって目地材をスムーズに装着できなくなるなどの施工性の問題が生じる。
【0008】
また、上記のいずれの目地材でも取付部の外表面が伸縮部と同様にゴムなどの可撓性材料で構成されるため、溝内面との摩擦が大きく、溝への挿入が簡単にできないという問題がある。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ケーソンやブロックなどを設置した後に簡単に取り付けることができ、運搬性や施工性にも優れる目地材およびその施工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1記載の目地材は、目地部を挟んで対向する構造物の対向面の上下方向に設けられ狭幅の開口部が対向する目地材取付溝に、それぞれの端部の取付部が装着されるとともに、前記開口部間に配置される中間部に前記目地部の変位を吸収し得る可撓性材料の伸縮部を備える目地材であって、この目地材の両端部の前記取付部の外側に、前記目地材取付溝の前記開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の吊下げ重量を確保する抜け出し防止部材を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
この目地材によれば、対向するケーソンなどに設けられ開口部を備えた目地材取付溝に、目地材として可撓性材料の伸縮部の両端の取付部の外側に抜け出し防止材を設けて溝の開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の重量を確保するようにしており、取付部外側の抜け出し防止材で抜け出しおよび癖のない装着形状を保持するとともに、溝との摩擦を小さくして溝への装着を容易にできるようにし、外側に配置することで、運搬後の取り付けも可能として取扱いを容易としている。
【0012】
また、この発明の請求項2記載の目地材は、請求項1記載の構成に加え、前記抜け出し防止部材が、前記取付部の外側に当てて取り付ける金属部材であることを特徴とするものである。
【0013】
この目地材によれば、前記抜け出し防止部材が、前記取付部の外側に当てて取り付ける金属部材であり、金属部材で簡単に抜け出し防止部材を構成でき、摩擦の低減や重量の確保による施工性など目地材として必要な機能を得ることができるようになる。
【0014】
さらに、この発明の請求項3記載の目地材は、請求項1または2記載の構成に加え、前記抜け出し防止部材が、前記取付部の外側に当て間隔をあけて予め取り付けられる先付け型鋼材と、前記目地材取付溝への装着時に前記先付け型鋼材の間隔に取り付ける後付け型鋼材とであることを特徴とするものである。
【0015】
この目地材によれば、前記抜け出し防止部材が、前記取付部の外側に当て間隔をあけて予め取り付けられる先付け型鋼材と、前記目地材取付溝への装着時に前記先付け型鋼材の間隔に取り付ける後付け型鋼材とであり、先付け型鋼材を予め間隔をあけて取り付けておくことで、折り返すように重ねて運搬することができ、溝への装着の際に後付け型鋼材を取り付けることで、運搬性や取扱い性を大幅に高めると同時に、摩擦の低減や重量の確保による施工性など目地材に必要な機能を確保できるようにしている。
【0016】
また、この発明の請求項4記載の目地材は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記抜け出し防止部材を、前記取付部を挟む両側に対称に取り付けたことを特徴とするものである。
【0017】
この目地材によれば、前記抜け出し防止部材を、前記取付部を挟む両側に対称に取り付けるようにしており、目地材取付溝への装着の際にバランス良く吊下げることができ、一層装着など施工が円滑にできるようになる。
【0018】
さらに、この発明の請求項5記載の目地材は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記目地材の伸縮部に、中詰材を充填して前記目地部を遮水可能とする中空部を設けたことを特徴とするものである。
【0019】
この目地材によれば、前記目地材の伸縮部に、中詰材を充填して前記目地部を遮水可能とする中空部を設けるようにしており、中詰材で膨らませた中空部で目地部の遮水性を向上できるようになる。
【0020】
また、この発明の請求項6記載の目地材の施工方法は、目地部を挟んで対向する構造物の対向面の上下方向に狭幅の開口部が対向する目地材取付溝を設け、それぞれの端部の取付部が前記目地材取付溝に装着されるとともに、中間部が前記開口部間に配置されて前記目地部の変位を吸収し得る可撓性材料の伸縮部で構成された目地材を装着して取り付ける目地材の施工方法であって、前記目地材の両端部の前記取付部に、前記目地材取付溝の前記開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の吊下げ重量を確保する抜け出し防止部材を設け、この抜け出し防止部材が取り付けられた前記目地材を前記目地材取付溝に吊り下ろすとともに、前記中間部を前記目地材取付溝の開口部間に位置させて装着固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
この目地材の施工方法によれば、ケーソンなどに開口部が対向する溝を備えた目地材取付溝に、可撓性材料の伸縮部の両端の取付部の外側に抜け出し防止材を設けて溝の開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の重量を確保し、この抜け出し防止部材が取り付けられた目地材を目地材取付溝に吊り下ろすとともに、中間部を目地材取付溝の開口部間に位置させて装着固定するようにしており、取付部外側の抜け出し防止材で抜け出しおよび癖のない装着形状を保持するとともに、溝との摩擦を小さくし、しかも吊下げ重量を確保して溝への装着が容易にできるようになり、外側に配置することで、運搬後の取り付けも可能として取扱いを容易としている。
【0022】
さらに、この発明の請求項7記載の目地材の施工方法は、請求項6記載の構成に加え、前記目地材を吊り下ろして前記目地材取付溝に装着後、この目地材取付溝に充填材を充填して固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0023】
この目地材の施工方法によれば、前記目地材を吊り下ろして前記目地材取付溝に装着後、この目地材取付溝に充填材を充填して固定するようにしており、抜け出し防止部材を取り付けた取付部を充填材で確実かつ遮水状態で目地材取付溝に固定できるようになる。
【0024】
また、この発明の請求項8記載の目地材の施工方法は、請求項6または7記載の構成に加え、前記目地材が前記請求項1〜5のいずれかに記載の目地材で構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
この目地材の施工方法によれば、前記目地材が前記請求項1〜5のいずれかに記載の目地材で構成されており、これら目地材を用いることで、取付部外側の抜け出し防止材で抜け出しおよび癖のない装着形状を保持できるとともに、溝との摩擦を小さくし、しかも吊下げ重量を確保して溝への装着が容易にできるようになり、外側に配置した抜け出し防止部材で、運搬後の取り付けも可能として取扱いも容易となる。
【発明の効果】
【0026】
この発明の請求項1記載の目地材によれば、対向するケーソンなどに設けられ開口部を備えた目地材取付溝に、目地材として可撓性材料の伸縮部の両端の取付部の外側に抜け出し防止材を設けて溝の開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の重量を確保するようにしたので、取付部外側の抜け出し防止材で抜け出しおよび癖のない装着形状を保持することができるとともに、溝との摩擦を小さくして溝への装着を容易にすることができ、しかも外側に配置することで、運搬後の取り付けも可能として取扱いを容易にすることができる。
【0027】
また、この発明の請求項2記載の目地材によれば、前記抜け出し防止部材を、前記取付部の外側に当てて取り付ける金属部材としたので、金属部材で簡単に抜け出し防止部材を構成することができ、摩擦の低減や重量の確保による施工性など目地材として必要な機能を簡単に得ることができる。
【0028】
さらに、この発明の請求項3記載の目地材によれば、前記抜け出し防止部材を、前記取付部の外側に当て間隔をあけて予め取り付けられる先付け型鋼材と、前記目地材取付溝への装着時に前記先付け型鋼材の間隔に取り付ける後付け型鋼材とで構成したので、先付け型鋼材を予め間隔をあけて取り付けておくことで、折り返すように重ねて運搬することができ、溝への装着の際に後付け型鋼材を取り付けることで、運搬性や取扱い性を大幅に高めると同時に、摩擦の低減や重量の確保による施工性など目地材として必要な機能を得ることができる 。
【0029】
また、この発明の請求項4記載の目地材によれば、前記抜け出し防止部材を、前記取付部を挟む両側に対称に取り付けるようにしたので、目地材取付溝への装着の際にバランス良く吊下げることができ、一層装着を円滑に行うことができる。
【0030】
さらに、この発明の請求項5記載の目地材によれば、前記目地材の伸縮部に、中詰材を充填して前記目地部を遮水可能とする中空部を設けるようにしたので、中詰材で膨らませた中空部で目地部の遮水性を一層確実に向上することができる。
【0031】
また、この発明の請求項6記載の目地材の施工方法によれば、ケーソンなどに開口部が対向する溝を備えた目地材取付溝に、可撓性材料の伸縮部の両端の取付部の外側に抜け出し防止材を設けて溝の開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の重量を確保し、この抜け出し防止部材が取り付けられた目地材を目地材取付溝に吊り下ろすとともに、中間部を目地材取付溝の開口部間に位置させて装着固定するようにしたので、取付部外側の抜け出し防止材で抜け出しおよび癖のない装着形状を保持することができるとともに、溝との摩擦を小さくすることができ、しかも吊下げ重量を確保して溝への装着が容易にでき、さらに外側に配置することで、運搬後の取り付けも可能として取扱いを容易にすることができる。
【0032】
さらに、この発明の請求項7記載の目地材の施工方法によれば、前記目地材を吊り下ろして前記目地材取付溝に装着後、この目地材取付溝に充填材を充填して固定するようにしたので、抜け出し防止部材を取り付けた取付部を充填材で確実かつ遮水状態で目地材取付溝に固定することができる。
【0033】
また、この発明の請求項8記載の目地材の施工方法によれば、前記目地材が前記請求項1〜5のいずれかに記載の目地材で構成したので、これら目地材を用いることで、取付部外側の抜け出し防止材で抜け出しおよび癖のない装着形状を保持することができるとともに、溝との摩擦を小さくすることができ、しかも吊下げ重量を確保して溝への装着が容易にでき、さらに外側に配置した抜け出し防止部材で、運搬後の取り付けも可能として取扱いも容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図4は、この発明の目地材およびその施工方法を構造物であるケーソンの目地部に適用した一実施の形態にかかり、図1は目地材の平面図および目地材の輸送状態の概略説明図、図2は施工状態の斜視図および平面図、図3はケーソンへの施工完了状態および地震時の変位状態の平面図、図4はケーソン全体への配置状態の平面図および断面図である。
【0035】
この発明の目地材およびその施工方法は、例えば図4に示すような構造物であるケーソン1,1間の目地部2に適用され、この目地部2を遮水するために目地材10が施工される。なお、構造物としては、コンクリート製、鋼鉄製、これらを組み合わせたハイブリット製などのケーソンやL型ブロックなどであっても良い。
【0036】
目地材10が設けられる構造物としてのケーソン1,1には、目地部2を挟んで対向する端面1a、1aにそれぞれ狭幅の開口部3a,3aが設けられるとともに、内部に空間3b,3bを備えた目地材取付溝3、3が上下方向に形成してある。この目地材取付溝3,3は、例えば図2(b)に示すように、ケーソン1の端面1aに横断面が矩形の凹部4を形成し、その開口を2枚の板材5で塞ぐようにして狭い幅の開口部3aと内部の空間3bを形成して目地材取付溝3,3としてある。さらに、この目地材取付溝3,3では、開口部3a,3aと目地材10との接触による損傷を防止するため、板材5の開口側端部に丸棒5aが溶接などで取り付けてあり、円弧面で接触するようにしてある。
【0037】
なお、この目地材取付溝3は、開口部3aが狭幅で内部に空間3bが形成されるものであれば、その横断面形状は、矩形に限らず円形など他の形状であっても良く、開口部3aがケーソン1の端面1a上に位置し、空間3bがケーソン1内に配置される場合に限らず、鋼材などで構成した別体の目地材取付溝をケーソン1の端面1aから突き出すように取り付けるようにすることもできる。
【0038】
このような目地材取付溝3は、ケーソン1の端面1aの大きさにもよるが、図4の例では、海側に2箇所、廃棄物投入側になどの反対側に2箇所それぞれ設けられ、これにより、4箇所に目地材10が施工されるようにしてある。
【0039】
なお、ケーソン1,1の対向する目地材取付溝3,3は、完全に直線状に対向させる必要はなく、目地材10の大きさなどによって異なるが、目地材を装着できる程度のずれが生じて対向する状態であっても良い。
【0040】
このような対向するケーソン1,1の端面1a,1aの目地材取付溝3,3の間に取り付けられる目地材10は、例えば図1に示すように、両端部に目地材取付溝3に取り付けられる取付部11,11を備え、これら取付部11,11を連結して目地部2の変位に追従し得る伸縮部12が設けられ、ゴムや合成樹脂などの可撓性材料で作られてその可撓性および形状効果で変位に追従させるようにしてある。なお、目地材10には、必要に応じて可撓性材料の内部に補強材が入れられて外部を可撓性材料とした補強構造が採られたものが用いられる。
【0041】
この目地材10では、伸縮部12がシート状の可撓性材料を環状に接続してその内部に中空部となる空間が形成される大環状部12aと、この中空部となる大環状部12aの中央部にシート状の可撓性材料の中央部を重ねて連結するとともに、両端部を重ねて環状とされた小環状部12bとで構成されている。また、この目地材10の小環状部12bの重ね合せ部分が一方の取付部11とされ、大環状部12aの反対側の中央部に可撓性材料のシートを重ねて連結し、その端部が外側に突き出したもう一方の取付部11としてある。そして、このような横断面形状の目地材10は、長手方向には、ケーソン1の高さに応じた必要な長さに形成され、複数枚の可撓性材料のシートを接着などで連結することで製造される。
【0042】
このような目地材10の取付部11,11には、目地材取付溝3に装着したときに開口部3aから抜け出すことがないように、抜け出し防止部材13が外側から取り付けてあり、装着時には、目地材10の取付部11,11の形状を保持するとともに、吊下げ重量を確保して施工性を向上する。
【0043】
なお、この吊下げに必要な重量は、地上での実験によれば、目地材取付溝に目地材の取付部を挿入するときの抵抗値が10kgf/m程度であり、海中での施工では、目地材の比重を略海水と同程度とし、抜け出し防止材に用いる鋼材の比重を7.85とすれば、海水による浮力を考慮した必要重量Wは、10÷(8.85/7.85)で求められ、略11.2kgfとなることから、両側の重量を合わせてWを11kgf/m以上とすることが好ましい。
【0044】
この抜け出し防止部材13は、取付部11に取り付けたときに外側に突き出して開口部3aから抜け出さないようにでき、しかも形状の保持と重量の確保の必要から型鋼材などの金属部材が好ましく用いられる。
【0045】
この目地材10では、溝型鋼で抜け出し防止部材13が構成され、溝部分を背中合わせとして取付部11,11の両外側から長手方向に沿って配置してボルトで締め付けて取り付けられる。
【0046】
このような溝型鋼で構成した抜け出し防止部材13を目地材10の取付部11,11の長手方向に取り付けると、目地材10を長手方向に巻回したり、折り畳むことができず、運搬などの取り扱いに支障をきたすことになる。
【0047】
そこで、この目地材10では、抜け出し防止部材13を予め取り付ける先付け抜け出し防止部材(先付け型鋼材)13aと、運搬後、施工現場で取り付ける後付け抜け出し防止部材(後付け型鋼材)13bとで構成してある。そして、予め取り付ける先付け抜け出し防止部材(先付け型鋼材)13aを間隔をあけて目地材10の取付部11,11に取り付けることで、図1(b)に示すように、後付け抜け出し防止部材(後付け型鋼材)13bの取り付け部分を湾曲させることができ、折り畳んで運搬台上に載せることができ、必要に応じてスペーサなどを介して重ねられる。
【0048】
そして、運搬後、施工現場で後付け抜け出し防止部材(後付け型鋼材)13bを取り付ける場合には、予め取り付けた先付け抜け出し防止部材(先付け型鋼材)13aの間隔をあけた部分に配置して上下の先付け抜け出し防止部材(先付け型鋼材)13aとスポット溶接で連結したり、間隔より長い後付け抜け出し防止部材(後付け型鋼材)13bを重ねてボルトで締め付けて取り付けることで、直線状の形状を確保できるようにする。
【0049】
次に、このような目地材10の施工方法について説明する。
目地部2を挟んで対向するケーソン1,1の目地材取付溝3,3の距離(通常は目地間隔Dに相当)に合わせて目地材10の取付部11,11を吊り上げることができるように、例えば図2(a)に示すように、吊り上げ治具20を用意する。
【0050】
この吊り上げ治具20は、略十字状の吊り上げ板21の一方の両端部21aに、目地材10の小環状部12bを引き伸ばして取付部11、11を目地間隔Dに合わせて支持するとともに、吊り上げ板21の直交するもう一方の両端部21bで伸縮部12の大環状部12aを目地部2に吊り下ろすことができるように押し潰して重ねた状態で支持する。
【0051】
こうして吊り上げ治具20を介して吊り上げた目地材10を吊り下ろし、両端部の取付部11,11が目地材取付溝3,3の空間3b、3b内に位置し、伸縮部12が開口部3a,3a間に位置するようにし、抜け出し防止部材13の重量を利用して吊り下ろすことで、目地材10の下端から装着していく。
【0052】
そして、目地材1の先付け抜け出し防止部材(先付け型鋼材)13aの大部分を挿入した状態で、後付け抜け出し防止部材(後つけ型鋼材)13bを現場で取り付け、目地材10の取付部11,11の形状を直線状に保持するとともに、吊下げ重量を確保して吊下げることを繰り返し、目地材10を目地材取付溝3,3に予めつけてある天端マークまで装着する。
【0053】
この後、吊下げ治具20を取り外し、目地材10の伸縮部12の大環状部12aの内側にアスファルトマスチックなどの中詰材14を充填して押し広げ、目地部2の両側に接する遮水状態とする(この中詰材14の充填は、充填後、ケーソン1,1の安定を待って補充する)。
【0054】
そして、目地材10の取付部11,11が装着された目地材取付溝3,3の空間3bに膨張モルタルなどの充填材15を充填して固定する。
こうして、1箇所の目地材10の取付施工が完了する(図3(a)参照)。
【0055】
この後、図4に示したように、2つの目地材10を隣接して設けた場合には、これら目地材10,10間にアスファルトマスチックなどの間詰材16を投入し、一層完全な遮水状態を確保するようにする。
【0056】
こうして目地材10を施工した状態で、例えば地震などでケーソン1,1が変位して目地間隔Dが広がる場合には、図3(b)に示すように、目地材の小環状部12bが引き出されるように広がって遮水状態が維持される。
【0057】
また、地震などでケーソン1,1が変位して目地間隔Dが広がると同時に前後にずれるようになる場合には、図3(c)に示すように、目地材10の小環状部12bが斜めに引き出されるように広がることで遮水状態が維持される。
【0058】
この目地材10およびその施工方法によれば、可撓性材料の伸縮部12の両端の取付部11,11の外側に抜け出し防止材13を設けたので、取付部11,11の外側の抜け出し防止材13で抜け出しを防止することができ、しかも癖のない装着形状を保持することができるとともに、装着時の重量を確保することもでき、施工性が向上する。
【0059】
また、金属部材や型鋼材の抜け出し防止部材13により、可能性材料が外側に位置する場合に比べ、目地材取付溝3,3との摩擦を小さくして装着を容易にすることができる。
【0060】
さらに、抜け出し防止部材13を外側に配置することで、運搬後、装着前に後付け型鋼材13bの取り付けも可能となり、運搬性や取扱い性に優れる。
【0061】
この目地材10およびその施工方法によれば、抜け出し防止部材13を、取付部11,11を挟む両側に対称に取り付けるようにしたので、目地材取付溝3,3への装着の際に前後・左右のバランスを保って吊下げることができ、一層装着など施工を安定した状態で円滑に行うことができる。
【0062】
さらに、この目地材10およびその施工方法では、目地材10の伸縮部12に、中空部としての大環状部13aを設けて中詰材を充填するようにしたので、中詰材14で膨らませた中空部である大環状部13aで目地部2の遮水性を向上することができる。
【0063】
次に、この発明の目地材およびその施工方法の他の一実施の形態について、図5により説明する。
この目地材30は、ゴムや合成樹脂のシート状の膜部材を多重構造として構成したものであり、受圧膜シート31と、その外側の受圧膜シートより広幅で中間部に折り畳み部32aを備えるとともに、両端部に膨らんだ膨出部32bが形成された変位追従膜シート32と、さらに外側の保護用のゴムなどの保護膜シート33とを重ね合わせて構成されている。そして、受圧膜シート31および変位追従膜シート32は、補強材を挟んだ補強構造とされ、両端部の取付部34,34部分は、幅方向に2枚、長さ方向に2枚の補強材が入れられた4プライ構造とされ、中間部分の伸縮部35は2枚の補強材が入れられた2プライ構造としてある。
【0064】
このような目地材30の両端の取付部34,34には、抜け出し防止材36として、山型鋼が取付部34を挟んで両側に配置され、山型鋼の中央部側が直角に突き出すようにしてボルトで締め付けてある。
【0065】
この抜け出し防止部材36も、すでに説明したように、長手方向には、一定の間隔をあけて予め取り付ける先付け抜け出し防止部材と運搬後装着前に取り付ける後付け抜け出し防止部材とで構成することで、長手方向に折り畳むことができるようにし、これにより、運搬性や取扱い性を確保する。
【0066】
このような目地材30の目地材取付溝3,3への装着は、すでに説明した目地材10と同様にして行われる。
【0067】
なお、この目地材30では、取付部34,34および抜け出し防止部材36の取付間隔は一定であり、目地材10のように小環状部12bの引き出し量で変えることができないため、そのまま目地材取付溝3,3の空間3b、3bに吊り下ろして装着する。
【0068】
したがって、抜け出し防止部材36の山型鋼が、たとえば図5(b)に示すように、開口部3aと必ずしも当接した状態とならないが、充填材15を充填することで固定され、遮水性や変位に対する追従性などに何ら支障はない。
【0069】
このような目地材30およびその施工方法によってもすでに説明した目地材10およびその施工方法と同様の作用効果を奏する。
【0070】
なお、上記各実施の形態では、2つの異なる形状の目地材を例に説明したが、目地材の形状は両端部に取付部を備え、これらをつないで変位に追従できる部分が設けられるものであれば、どのような形状や材料であっても良い。
【0071】
また、上記実施の形態では、ケーソンの目地に適用する場合で説明したが、ケーソンに限らず他の構造物の目地にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の目地材およびその施工方法を構造物であるケーソンの目地部に適用した一実施の形態にかかる目地材の平面図および目地材の輸送状態の概略説明図である。
【図2】この発明の目地材およびその施工方法を構造物であるケーソンの目地部に適用した一実施の形態にかかる施工状態の斜視図および平面図である。
【図3】この発明の目地材およびその施工方法を構造物であるケーソンの目地部に適用した一実施の形態にかかるケーソンへの施工完了状態および地震時の変位状態の平面図である。
【図4】この発明の目地材およびその施工方法を構造物であるケーソンの目地部に適用した一実施の形態にかかるケーソン全体への配置状態の平面図および断面図である。
【図5】この発明の目地材およびその施工方法を構造物であるケーソンの目地部に適用した一実施の形態にかかる目地材の平面図およびケーソンへの施工状態の平面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ケーソン(構造物)
1a 端面
2 目地部
3,3 目地材取付溝
3a,3a 開口部
3b,3b 空間
4 凹部
5 板材
5a 丸棒
10 目地材
11 取付部
12 伸縮部
12a 大環状部(中空部)
12b 小環状部
13 抜け出し防止部材
13a 先付け抜け出し防止部材(先付け型鋼材)
13b 後付け抜け出し防止部材(後付け型鋼材)
14 中詰材
15 充填材
16 間詰材
20 吊り上げ治具
30 目地材
31 受圧膜シート
32 変位追従膜シート
33 保護膜シート
34,34 取付部
35 伸縮部
36 抜け出し防止部材
D 目地間隔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部を挟んで対向する構造物の対向面の上下方向に設けられ狭幅の開口部が対向する目地材取付溝に、それぞれの端部の取付部が装着されるとともに、前記開口部間に配置される中間部に前記目地部の変位を吸収し得る可撓性材料の伸縮部を備える目地材であって、
この目地材の両端部の前記取付部の外側に、前記目地材取付溝の前記開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の吊下げ重量を確保する抜け出し防止部材を設けたことを特徴とする目地材。
【請求項2】
前記抜け出し防止部材が、前記取付部の外側に当てて取り付ける金属部材であることを特徴とする請求項1記載の目地材。
【請求項3】
前記抜け出し防止部材が、前記取付部の外側に当て間隔をあけて予め取り付けられる先付け型鋼材と、前記目地材取付溝への装着時に前記先付け型鋼材の間隔に取り付ける後付け型鋼材とであることを特徴とする請求項1または2記載の目地材。
【請求項4】
前記抜け出し防止部材を、前記取付部を挟む両側に対称に取り付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の目地材。
【請求項5】
前記目地材の伸縮部に、中詰材を充填して前記目地部を遮水可能とする中空部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の目地材。
【請求項6】
目地部を挟んで対向する構造物の対向面の上下方向に狭幅の開口部が対向する目地材取付溝を設け、それぞれの端部の取付部が前記目地材取付溝に装着されるとともに、中間部が前記開口部間に配置されて前記目地部の変位を吸収し得る可撓性材料の伸縮部で構成された目地材を装着して取り付ける目地材の施工方法であって、
前記目地材の両端部の前記取付部に、前記目地材取付溝の前記開口部からの抜け出しを防止するとともに、装着時の吊下げ重量を確保する抜け出し防止部材を設け、この抜け出し防止部材が取り付けられた前記目地材を前記目地材取付溝に吊り下ろすとともに、前記中間部を前記目地材取付溝の開口部間に位置させて装着固定するようにしたことを特徴とする目地材の施工方法。
【請求項7】
前記目地材を吊り下ろして前記目地材取付溝に装着後、この目地材取付溝に充填材を充填して固定するようにしたことを特徴とする請求項6記載の目地材の施工方法。
【請求項8】
前記目地材が前記請求項1〜5のいずれかに記載の目地材で構成されていることを特徴とする請求項6または7記載の目地材の施工方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−211545(P2007−211545A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35067(P2006−35067)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】