説明

目標物体の容量性位置探知のためのデバイス、センサ配列、および方法

本発明は、物体の容量性位置記録のための、物体の位置が記録される領域にわたって分布された多数の容量性プローブを伴うデバイスに関する。このデバイスは、それらのプローブがそれぞれ結合容量によって電圧源に接続されて供給電圧が供給されること、プローブに接続される分析デバイスが備えられ、それによってプローブ信号が処理され、物体の位置について記録するための測度を与える出力信号を提供できることを特徴とする。さらに本発明は、物体の容量性位置記録のためのプローブ配列および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲第1項のプリアンブルに従った目標物体の容量性位置探知のためのデバイスに関する。
【0002】
別の側面において本発明は、特許請求の範囲第12項のプリアンブルに従った目標物体の容量性位置探知のためのセンサ配列、および特許請求の範囲第17項のプリアンブルに従った目標物体の容量性位置探知のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この種のデバイスは、目標物体の位置が探知されるべき検出エリアにわたって分布された複数の容量性プローブを有する。
【0004】
この種の目標物体の容量性位置探知のためのセンサ配列は、第1のエリア内に、特に支持体の一方の側に、目標物体の位置が探知されるべき検出エリアにわたって分布された複数の容量性プローブを有する。
【0005】
この種の目標物体の容量性位置探知のための方法においては、複数の容量性プローブが、目標物体の位置が探知されるべき検出エリアにわたって配列される。
【0006】
デバイス、センサ配列、および方法においては、それぞれの場合に、プローブの1ないしは複数の容量の環境に関する変化が、目標物体の位置もしくは位置の変化またはそれらから導かれた量の関数として、測定量として役立つ。
【0007】
ここでは、目標物体という表現が可能な限り広く解釈されるべきである。これは、離散的な物体によって、また物質、特に液体ならびに気体等の流体をはじめ、塊状物質によって構成することが可能である。以下においては、目標物体ならびに物体という表現が同義語として使用される。流体ならびに塊状物質に関しては、位置という表現もまた、それらの分布もしくは広がりを意味するものと理解される。
【0008】
この種のデバイスは、独国特許発明第19851213号(C1)の中で述べられている。この開示された容量性センサ構成においては、複数のキャパシタ・プレートが柔軟なフォイルに貼られる。このフォイルは、たとえばUまたはS字形といった所望の形状に曲げられ、流体、すなわち液体もしくは気体媒体の検出のために使用される。測定量は、所定のプローブの近隣に運ばれた検出されるべき媒体の誘電体特性によって変更された容量である。
【0009】
容量性の近接スイッチが、独国特許出願公開第19623969号(A1)に開示されている。
【0010】
独国特許出願公開第19503203号(A1)は、変位電流を測定することによって物体の位置または質量もしくは重量分布が決定できる容量性センサについて述べている。
【0011】
欧州特許出願公開第609021号明細書(A2)には、容量性位置センサの配列またはマトリクスが開示されている。米国特許第5136286号の目的は、測定計器のポインタの向きの容量性の決定であり、それにおいては特別に形づくられた電極が使用される。欧州特許出願公開第302727号(A2)の中では、たとえば薬剤用ブリスタ・パックの標本の組成の容量性の監視のためのデバイスが述べられている。
【0012】
目標物体の位置探知に関連して誘導性の方法ならびにデバイスも知られている。その種のデバイスは、多くの産業用プロセスにおける自動化に使用される。また、自動車テクノロジにおいても多数の可能性のある用途が存在する。たとえば、独国特許出願公開第10204453号(A1)は、乗り物のシートと乗り物ボディの間の相対的な変位の検出を可能にするアナログの誘導性変位ピックアップについて述べている。その測定原理は、高透磁率材料から作られたテスト・ボディの相対的変位の場合にもたらされる磁気誘導に対する変化である。
【0013】
この点については線形変位または経路測定システムが知られており、それにおいては、傾斜された縦コイル、磁気結合を伴う誘導性変位ピックアップもしくは多数の個別のコイルを包含する誘導性変位ピックアップが使用される。これらの解決策においては、検出信号が比較的大きな間隔依存を有し、したがって限定された距離しか監視可能でないことから好ましくないとわかった。さらに根本的な理由のため、強磁性体の物体だけが検出可能となることも頻繁にある。これは、強磁性体の物体の機械的敏感度から望ましくない。最後に、多数の個別のコイルを伴う解決策は、実際に非常に大きな面積の監視を可能にするが、個別のコイルの信号の漏話を回避する必要があることから、それぞれの個別のコイルに異なる周波数が供給され、その種の解決策が高い回路ならびに装置コストを必然的に伴う。
【0014】
【特許文献1】独国特許発明第19851213号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19623969号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19503203号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第609021号明細書
【特許文献5】米国特許第5136286号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第302727号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10204453号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い精度をもって長い距離にわたって目標物体が探知されることを可能にする目標物体の容量性位置探知のためのデバイス、センサまたはプローブ配列、および方法を提供することである。デバイスおよびプローブ配列は、設計の観点から実装容易であることも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の側面においては、上記の目的が、特許請求の範囲第1項の特徴を有するデバイスによって達成される。
【0017】
本発明の別の側面においては、上記の目的が、特許請求の範囲第11項の特徴を有するプローブ配列によって、また特許請求の範囲第16項の特徴を有する方法によって達成される。
【0018】
本発明に従ったデバイスおよびセンサ配列の別の有利な発展をはじめ、本発明の方法の好ましい変形は、従属請求項の目的を形成する。
【0019】
上記のプリアンブルに従ったデバイスは、プローブが、それぞれの場合において結合容量を介して電圧源に接続され、供給電圧が供給されることが可能であること、およびプローブに接続された評価デバイスが備えられ、プローブの信号が、探知されるべき目標物体の位置のための測度である出力信号に処理されることを可能にすることによって発明的に特徴付けされる。
【0020】
上記のタイプのセンサ配列は、結合容量、すなわちそれによって供給電圧をプローブに結合することができる結合容量を形成するために、第2のエリア内に、特に反対側に、または支持体内に少なくとも1つの結合電極が備えられること、および結合層の形成のために支持体が少なくとも部分的に誘電体材料から作られることによってさらに発明的な発展がなされる。
【0021】
目標物体の容量性位置探知のためのプリアンブルに従った方法をさらに発展させるために、本発明は、プローブに、それぞれの場合において結合容量を介して供給電圧が供給されること、およびプローブ信号が、評価デバイスの補助を伴って、検出されるべき目標物体の位置のための測度である出力信号に処理されることを提案する。
【0022】
本発明の第1の基本的な考え方によれば、供給電圧、たとえばAC電圧が結合容量によって複数の容量性プローブに結合される。
【0023】
本発明の第2の基本的な考え方は、プローブ配列に関して、それを非常にコンパクトな態様で支持体上に構成することであり、それにおいては複数のプローブが第1のエリア内に配置され、その第1のエリアから離れた第2のエリア内に、プローブとともに結合容量を構成するための少なくとも1つの結合電極が備えられる。
【0024】
これらのプローブおよび結合電極は、ともに、少なくとも部分的に誘電体材料によって構成される支持体の外側に、あるいはその内側に直接配置可能である。
【0025】
本発明の第1の本質的な利点は、ランダムな金属または非金属の物体の位置が検出できることであり、それは、それぞれの場合において環境に関してプローブの容量に対する変化が存在することによる。プローブの配列、たとえば経路に沿った配列は、原理的にランダムな長さとすること、およびランダムな形状を取ることが可能である。たとえばまっすぐな、すなわち直線の経路、円形の経路、またはジグザグの経路を有することが可能であり、また平らな、すなわち2次元の、あるいは空間的な、すなわち3次元のプローブ構成を有することも可能である。
【0026】
したがってプローブについてはランダムなトポロジが可能であり、特に同心円、矩形、マトリクス/アレイ状の配列が可能である。原理的にあらゆる『一様でない』技術的に製造可能なトポロジが可能である。
【0027】
離散的な態様で検出されることになる物体のほかに、本発明に従ったデバイスならびに方法を用いて流体、すなわち液体ならびに気体をはじめ、塊状物質を、与えられた物質とは無関係に検出することができる。特に、多くの応用にとって重要となる堅牢な金属性の目標を検出することが可能である。
【0028】
ここで提案されている非接触動作の位置探知システムの別の重要な利点は、このデバイス、プローブ配列、および方法が、それぞれの場合において、限られた構成ならびに設計のコストを伴って実装できることである。本発明によれば、評価デバイスが常にプローブ信号、たとえばプローブ電圧を、検出されるべき目標物体の位置を決定するために使用する。
【0029】
達成可能な検出精度に関して、誤差の大きさが、すべてのプローブに、すなわちすべてのチャンネルに同時に作用し、評価の間にまったく影響を及ぼさなくなることも有利である。これらの誤差の大きさには、温度効果および、たとえば溶接の間の電界または無線干渉電圧の結果としてもたらされる電気的な干渉をはじめ、与えられた物体の間隔に対するプローブ信号の依存性から生じる効果が含まれる。
【0030】
検出されるべき目標物体の材料は、すべてのプローブの容量に対して同一の態様で作用するため、評価結果が、検出されるべき目標物体の材料に依存しない。
【0031】
目標物体または物体は金属、プラスティック、ガラス、セラミクス、紙、および木から、すなわち原理的にランダムな材料から作られるものとすることができる。検出されるべき物体が導電性材料から作られている場合には、その物体がアースまたはグラウンドされているか否かとは独立に検出を行うことも可能である。
【0032】
本発明は、特に、あらゆる直線経路測定、ダイナモメータにおける経路または角度付き測定をはじめ、液体または塊状物質のための直接または容器壁を介した充填レベル測定について重要な実際的応用を有する。
【0033】
本発明の別の基本的な考え方によれば、結合容量および、検出されるべき目標物体の変化する位置に起因して変化する環境に関するプローブの容量が、それぞれの場合において容量性分圧器を構成する。
【0034】
したがって本発明によれば、従来技術とは異なり、測定プローブと呼ぶこともできる容量性プローブに対する直接供給がなく、それに代わって1ないしは複数の結合容量および1ないしは複数の測定容量を介して分圧回路が構成される。
【0035】
従来技術における場合には、結合容量という表現が、物体に対する接近によって結合が変化する容量を意味するものと理解されるが、それとは異なり、ここでの『結合容量』は、『接続している』容量を意味するものと理解される。すなわち、それを用いてAC電圧が測定プローブに結合される容量である。
【0036】
従来技術と比較したときの本発明の重要な構造および基本的な差異は、ジェネレータによって直接給電される容量、すなわち結合容量が、常時、実質的に影響を受けないままとなることである。したがって、本発明のプローブ配列は、離散的なキャパシタを用いて実装することが可能である。従来技術における場合とは異なり、本発明においては、最初にフォローアップ容量が物体の接近によって変更を受ける。この種のフォローアップ容量は、従来技術の中に存在しない。
【0037】
本発明の方法の特に好ましい変形においては、プローブ電圧がプローブ信号として評価される。
【0038】
したがって以下において説明するとおり、供給電圧とは別に、測定信号となるのは結合容量に対するプローブ容量の比である。
【0039】
本発明のデバイスの好ましい発展においては、少なくとも1つの発明的プローブ配列が提供される。本発明に従ったプローブ配列においては、プローブおよび結合容量を特にコンパクトかつ簡単に作ることができるだけでなく、それらが非常に高いプローブ配列の多様性を可能にする。
【0040】
たとえば、支持体をプリント回路基板として構成することが可能であり、その結果、製造の観点から、高度に発展した回路基板技術を使用することができる。
【0041】
プローブは、基本的にランダムな形状ならびにサイズを有することが可能であり、好ましくはプレート状の電極を、たとえば回路基板上において使用することができる。所望の局所的/位置分解能およびプローブの関数として、その表面積を、数平方ミリメートルから数平方センチメートルまで、およびそれを超える範囲とすることが可能である。特に、プローブの形状ならびにサイズを検出されるべき目標物体に関して計画された態様で選択すると適切である。
【0042】
監視されるべきエリアに関する特に高い変化性が、支持体を柔軟なプリント回路基板として構成すれば達成可能になる。この種の柔軟な回路基板は、原理的に任意の所望の形状にすることが可能であり、その結果ランダムな3次元エリアを監視することができる。たとえば、円形または球形部分上を移動するレバーの位置を監視することが可能になる。
【0043】
支持体を、フォイルによって構成することも可能であり、それにおいては対応する金属構造が、適切なマスクを使用して、たとえば蒸着コーティング手順を使用して塗布される。
【0044】
プローブ配列は、両面が金属化された連続するワン・ピースの誘電体の形式、あるいは分散された容量を伴う両面が金属化された連続しない誘電体の形式とすることができる。
【0045】
しかしながら、いくつかの発明的プローブ配列が使用されることから監視されるべき3次元エリアに関する特定の設計の自由度を得ることが可能であり、それにおいては支持体が従来的なプリント回路基板によって構成される。別々の回路基板はまた、機械的応力または温度変動を補償するために有利となり得る。
【0046】
また、結合電極に関してもかなりの設計の自由度が存在する。原理的に、結合電極は複数の個別の電極に細分することができる。これは、個別の結合容量が異なる電位を伴って供給されることになる場合に適切となり得る。非常に単純な設計の変形においては、結合電極が連続する電位表面として構成される。これは、ここで提案されている容量性位置探知システムの場合に、複数のコイルを伴う誘導性検出システムの場合とは異なり、個別の容量が異なる周波数で給電される必要がないことから特に重要である。したがって、連続する結合電極が共通ベースまたは足としての要求を満たし、そこに供給電圧を、特にAC電圧を供給することが可能になる。このように、誘導性のシステムと比較して必要となる電極を一層単純に作ることが可能になる。
【0047】
本発明に従ったプローブ配列は、支持体が追加の評価エレクトロニクスの部品を担持する場合、すなわち評価デバイスの部品を担持する場合に特に有用性を伴って使用することができる。これは、非常にコンパクトな構造を得ることを可能にする。
【0048】
プローブおよび結合電極は、原理的に支持体内に配置することができる。たとえば両面がコーティングされた回路基板から作られる単純な変形においては、プローブおよび結合電極が、実際に支持体の外側に直接配置される。支持体内における結合電極の配置は、別の回路コンポーネントをその支持体上または中にシールドするか受け入れるために、追加の金属コーティングが提供される場合に好ましいものとなり得る。これらの変形は、干渉電界に対するシールドが必要とされるところで適切に使用される。原理的に、結合容量が少なくとも部分的に離散的なキャパシタとして構成されることも可能である。これは、たとえば個別のプローブが、異なる応用のために異なって位置決めされなければならない場合に有利となり得る。
【0049】
少なくとも1つのプローブが基準プローブとして構成および/または使用されるとき、評価の精度、したがって位置検出の精度を向上させることが可能になる。これは特に、非アクティブ測定プローブ、すなわちその検出エリア内に検出されるべき目標物体が絶対に入らない態様で位置決めされたプローブとすることができる。原理的に、アクティブ測定プローブの信号も、懸案の時点において検出されるべき物体がそのプローブの検出エリア内にないことが確保されるとすれば、基準として使用することが可能である。基準プローブの基準測定の補助があれば、たとえば残りの振幅の電圧振幅を調整することが可能である。
【0050】
これに関連して、測定電極または測定プローブが、1ないしは複数の基準電極と同一もしくは少なくとも類似の形状および/または表面積を有していると有利である。その結果、位置決定に関して関連信号の評価が特に簡単になる。
【0051】
簡単な発展においては、評価デバイスが、少なくとも各プローブ用の整流器を有する。
【0052】
プローブ信号を数学的に処理するために、評価ユニットは、中央処理ユニットを適切に有する。原理的に、アナログ・コンポーネントから構成された回路、たとえばオペアンプ回路とすることも可能であるが、好ましくはマイクロプロセッサが使用される。この変形においては、したがってアナログ測定信号をディジタル化するための少なくとも1つのアナログ−ディジタル・コンバータが存在する。
【0053】
コスト的に有利な変形においては、多数のアナログ−ディジタル・コンバータが必要ではなく、それに代わり1ないしは複数のマルチプレクサを評価デバイス内に備えることが可能であり、それらを介して少なくとも2つのプローブのプローブ信号を中央処理ユニット、たとえばマイクロプロセッサに供給することができる。
【0054】
特定のアプリケーションのためにマルチプレクサのスキャニング周波数との独立性が望ましい場合には、各チャンネルに整流器、可能な処理エレクトロニクス、およびアナログ−ディジタル・コンバータを備えることも明らかに可能である。
【0055】
プローブ信号、たとえばプローブ電圧の数学的評価に関して言えば、高い自由度が存在する。周知のブリッジ回路の原理によれば、たとえば個別の信号電圧の差を評価することが可能である。本発明の方法の好ましい変形においては、いくつかの電圧振幅の比率が評価目的のために形成される。これは、すべてのプローブに対して同一の態様で作用する、温度および干渉電界といった望ましくない干渉効果の排除も可能にする。
【0056】
これらの方法の組み合わせも可能である。
【0057】
信号処理の速度は、アナログ・プローブ信号の前処理のための信号プロセッサを有していると向上させることができる。
【0058】
本発明のデバイス、プローブ配列、および方法の追加の利点ならびに特徴については、以下に、添付図面に関連してより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
図1は、本発明に従ったデバイス10の第1の実施態様を図式的に示している。デバイス10は、概して複数の、すなわち少なくとも2つの容量性測定プレートまたはプローブ20、30、40を包含する。結合キャパシタ22、32、42を使用し、AC電圧が供給電圧として電圧源14からプローブ20、30、40に結合される。容量24、34、44が、個別のプローブ20、30、40と、目標物体として検出されるべき物体12の間に形成される。これらの容量が、図1においては等価回路図の態様で示されている。結合容量22、32、42は、必ずしも離散的なキャパシタである必要はない。
【0060】
プローブ20、30、40は、それぞれの場合において評価デバイス50に接続されており、それについては図2および3に関連して次に説明する。評価デバイス50は、プローブ20、30、40のプローブ電圧を評価し、プローブ20、30、40に関する物体12の位置の関数として出力信号52を生成する。
【0061】
簡略化の目的から、本発明のデバイス10の動作を例示するためにアースされた、またはグラウンドされた物体12を前提とする。電圧源14の基準電位もまたアースまたはグラウンドされている。結合容量22および容量24は、平均電圧としてプローブ電圧を伴う容量性分圧器を構成する。プローブ電圧U20は、接続される電圧U0、結合容量22の値C22、および容量24の値C24から生じる:
U20=U0×1/(1+C24/C22)
ほかのプローブ30、40についても相応じた形となる。
【0062】
物体12がプローブ20、30、40に近いほど、プローブ電圧が低くなる。したがって、異なるプローブ20、30、40のプローブ電圧は、物体12の位置に依存し、もっとも低いレベルを示すプローブが物体12にもっとも近いものとなる。電圧源14から結合容量22、32、42にAC電圧が供給されることから、それぞれの場合においてAC電圧がプローブ20、30、40に存在し、これが評価デバイス50の補助を伴って処理される。
【0063】
物体12は、簡略化の目的だけのためにアースされていると見なされている。この測定は、同様にアースまたはグラウンドされていない目標物体の場合にも機能する。アース電位と比較すると、検出されるべき各物体12は、寄生容量を有する。アースに対するプローブ20、30、40の1つの容量は、アース電位に対して、プローブ対物体12の容量および物体12の寄生容量の直列接続を通じて構成される。アースされた物体に対するプローブの容量は、この直列接続に起因して、アースされていない物体に対するプローブの容量より高い。したがって、アースされていない物体12は、アースされた物体12よりプローブ電圧を変更する程度が小さい。
【0064】
図1の矢印18は、検出エリア16内における物体12のシフトを示す。
【0065】
評価回路50は、物体12の位置を決定するためにいくつかのプローブ電圧を常に使用する。誤差の大きさ、たとえば温度、溶接電界またはエリアまたは無線干渉電圧に起因する電気的干渉等は、プローブ20、30、40に関する物体12の間隔とともにすべてのチャンネルに同時に作用し、このようにして計算から外すことができる。
【0066】
物体12の材料がすべての容量24、34、44上に独立に作用することから、評価の結果もまた物体12の材料とは独立になる。アースされていない物体12の寄生容量がすべてのプローブ20、30、40にとって平等であることから、評価結果もまた物体のアースとは独立になる。
【0067】
評価デバイス50の設計についての2つの例を図2および3に詳細に例示する。同等のコンポーネントには、それぞれの場合において同じ参照番号が与えられている。
【0068】
図2に示されている例の場合には、プローブ20、30、40の電圧が、それぞれの場合にまず、整流器26、36、46に渡される。整流後の信号は、続いてマルチプレクサ56およびアナログ−ディジタル・コンバータ58を介してマイクロプロセッサ54に供給される。マイクロプロセッサ54は、これらのディジタル化された信号から物体12の位置の関数として出力信号を計算し、この信号を出力52において出力する。この例においては、多数の高価なアナログ−ディジタル・コンバータを必要としない。
【0069】
図2の例とは異なり、図3における変形の場合には、各プローブ・チャンネルが独自のアナログ−ディジタル・コンバータ28、38、48を有する。プローブ20、30、40の電圧の評価は、したがって原理的にマルチプレクサのスキャニング周波数と独立に生じる。
【0070】
また、図2および3に示されている例の混合した形式を有することも明らかに可能である。
【0071】
図1に示されているデバイス10の結合容量22、32、42は、図9に略図的に示されているとおり、原理的に離散的なキャパシタ23、33、43として構成することが可能である。この変形は、たとえば異なるエリアまたは経路を監視するために1ないしは複数のプローブの位置決めの変更が必要とされる場合に特に適している。図9に示されている例においてプローブ20、30、40は、監視されるべきエリア16内に直線的に位置決めされる。
【0072】
しかしながら、プローブ20、30、40の位置決めのために、図6〜8に実施態様が示されている発明的なプローブ配列60を有すると特に有利である。
【0073】
図6に示されている発明的プローブ配列60の第1の例は、両面がコーティングされたプリント回路基板から作られる。支持体70として機能するこの回路基板の第1の側71は、回路基板コーティングからプローブ20、30、40が形成される。個別のプローブ20、30、40は、原理的にランダムな形状を有することが可能であり、特に、異なるサイズを有することもできる。支持体70の反対の外側73の上には、結合容量22、32、42を形成するための連続する結合電極80が形成される。この結合電極80は、原理的にキャパシタ・プレートの機能を肩代わりし、AC電圧発生器の接続のために使用され、足またはベース・ポイントとも呼ばれる。
【0074】
容量性分圧器内には非常にわずかな電流しか流れないため、供給電圧に対する接続は、比較的高い抵抗性のものとすることが可能であり、たとえばここでは最大で1メガオームのオーム性抵抗が可能である。したがって、回路構造は非常に非決定的である。
【0075】
本発明によれば、結合電極80とプローブ20、30、40の間の回路基板70の材料によって結合層72も形成され、回路基板材料の誘電体特性の結果として、結合容量22、32、42が増加する。原理的に結合層72は、確定できる誘電体、たとえば回路基板材料、プラスティック、ガラス、セラミクス、空気、または発泡体から形成することが可能である。
【0076】
図7に示されている例は、基本的にプローブ30、40が共通支持体70上に配置されており、プローブ20が独立の支持体上に配置されているという点だけが図6に示した変形と異なる。図7の変形には連続する結合電極もなく、それに代わり、それぞれの場合において結合容量22、32、42を構成するための別々の結合電極25、35、45が存在する。ベース・ポイントを分けた結果として、原理的に各結合容量22、32、42に異なるAC電圧を供給することが可能になる。結合電極25、35、45が単一電位表面を形成するもっともありがちな応用について言えば、その場合においても結合電極25、35、45の間の接続が比較的高い抵抗性のものとすることが可能である。
【0077】
より複雑な実施態様を図8に示すが、この場合においてもプローブ20、30、40が、実際に支持体70の外側71上に配置される。しかしながら結合電極80は、多層プリント回路基板とすることのできる支持体70の内側に配置される。結合電極80の上には、追加の金属層86が備えられ、オプションとしてそれを、干渉フィールドの照射に対するプローブのシールドのために使用することができる。支持体70のプローブ20、30、40とは反対の側には、コンポーネント90によって電気回路が図式的に例示されている。この場合もプローブ20、30、40および結合電極80が、それぞれの場合において結合容量22、32、42を形成し、それらは、結合層42の誘電体特性によって増加される。図8に示されているプローブ配列は、評価エレクトロニクスの部品を同時に集積化できることから、非常にコンパクトな構造を得ることができる。
【0078】
物体12の動きを中断なく確定することを可能にするためには、プローブ20、30、40が、互いに関して、それらの感度曲線が少なくとも部分的に重複するように位置決めされなければならない。
【0079】
本発明に従ったデバイスおよび方法を使用するときの物体12のシフトの簡単な非接触決定を、図4を参照して説明する。
【0080】
図4は、図1〜3に図式的に示されているとおりに配列された3つのプローブ20、30、40のプローブ電圧をプロットしている。図4から推断できるように、プローブ20および物体12が互いに正確に対向したときにプローブ20の電圧が最小値に達する。物体12がプローブ30の方向に移動している場合には、プローブ20の電圧が再びより高くなり、相応じてプローブ30の電圧がより低くなる。
【0081】
時間にわたるプローブ電圧のローカル記録を通じて、時間の関数として物体12の位置を表すことが可能になる。
【0082】
図4は、プローブ20、30の感度曲線が大きく重複していることも示しており、その結果、このエリア内において高い位置分解能が達成される。
【0083】
図5には、本発明の別の使用例が例示されており、この場合においても3つのプローブ20、30、40の電圧が、目標物体としての液体または塊状物質の充填レベルが検出される応用について表現されている。
【0084】
液体または塊状物質の検出において、好ましくはプローブ20、30、40が垂直に位置決めされる。液体または塊状物質のレベルが上昇すると、さらに上側に配置されているプローブの容量が、その環境に関して連続的に増加する。下側にあるプローブの容量の値は、液体または塊状物質が依然としてそこに存在することから変化しない。したがって液体または塊状物質の場合のプローブ電圧の評価は、個別の物体が検出されることになる場合と比較すると異なる。
【0085】
これらの情況が図5に示されている。
【0086】
プローブ20の最小値には、液体または塊状物質によってプローブ20が完全に覆われるときに到達する。液体または塊状物質のレベルがさらに増加する場合には、プローブ30の電圧が減少し、最終的に最小値まで下がる。図4に例示されている場合とは異なり、液体または塊状物質によって対応するプローブが覆われてしまった直後からの上昇がないことは明らかである。
【0087】
本発明は、物体の非接触容量性位置探知のための新しいデバイス、センサ配列、および方法を提供し、一方においてそれは、物体、あるいはまた液体および塊状物質の位置の特に正確な決定を可能にし、他方においてそれは、構成および設計の観点から、特に周知の解決策と比較したとき、特に簡単な態様で実装できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明のデバイスの第1の実施態様の図である。
【図2】本発明のデバイスの第2の実施態様の図式的な部分図である。
【図3】本発明のデバイスの第3の実施態様の図式的な部分図である。
【図4】検出されるべき物体の位置に対して3つのプローブのプローブ電圧をプロットしたグラフである。
【図5】検出されるべき塊状物質または液体の充填レベルの関数として3つのプローブの信号電圧をプロットしたグラフである。
【図6】本発明のプローブ配列の第1の実施態様を示した説明図である。
【図7】本発明のプローブ配列の第2の実施態様を示した説明図である。
【図8】本発明のプローブ配列の第3の実施態様を示した説明図である。
【図9】結合容量の構造に関する代替例を示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物体の容量性位置探知のため、特に特許請求の範囲第17項〜第22項のうちの1項に従った方法を実行するための、
前記目標物体(12)の位置が確定されるべき検出エリア(16)にわたって分布された複数の容量性プローブ(20,30,40)を有するデバイスであって、
前記プローブ(20,30,40)が、それぞれの場合において、結合容量(22,32,42)によって電圧源(14)に接続され、供給電圧が供給されることが可能であること、および前記プローブ(20,30,40)に接続された評価デバイス(50)が備えられ、確定されるべき前記目標物体(12)の位置のための測度である出力信号(52)への前記プローブの信号の処理を可能にすることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
環境に対する前記プローブ(20,30,40)の容量が、それぞれの場合において結合容量(22,32,42)とともに容量性分圧器を構成することを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記プローブ電圧が、プローブ信号として検出され、処理されることが可能であることを特徴とする、特許請求の範囲第1項または第2項に記載のデバイス。
【請求項4】
特許請求の範囲第12項〜第16項のうちの1項に従った少なくとも1つのプローブ配列(60)が備えられることを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第3項のうちの1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記結合容量(22,32,42)が、少なくとも部分的に離散的キャパシタ(23,33,43)として構成されることを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第4項のうちの1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記プローブ(20,30,40)のうちの少なくとも1つが、基準プローブとして構成されることを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第5項のうちの1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記プローブ(20,30,40)が、3次元の検出エリア(16)にわたって分布されることを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第6項のうちの1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記評価デバイス(50)が、各プローブ(20,30,40)のために整流器(26,36,46)を有することを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第7項のうちの1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記評価デバイス(50)が、中央処理ユニット、特にマイクロプロセッサ(54)を有することを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第8項のうちの1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記評価デバイス(50)が、マルチプレクサ(56)を有し、それによって少なくとも2つのプローブ(20,30,40)からの前記プローブ信号が前記中央処理ユニットに供給されることが可能になることを特徴とする、特許請求の範囲第9項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記評価デバイス(50)が、アナログの前記プローブ信号を処理するための信号プロセッサを有することを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第10項のうちの1項に記載のデバイス。
【請求項12】
目標物体の容量性位置探知のため、
特に特許請求の範囲第1項〜第11項のうちの1項に従ったデバイス内に使用するための、
前記目標物体(12)の位置が確定されるべき検出エリア(16)にわたって、第1のエリア内、特に支持体(70)の1つの側(71)に分布された複数の容量性プローブ(20,30,40)を有するセンサ配列であって、
第2のエリア内、特に支持体(70)の反対側(73)における結合容量(22,32,42)の形成のために、少なくとも1つの結合電極(80)が存在し、それによって供給電圧をプローブ(20,30,40)に結合できること、および
結合層(72)を形成するために前記支持体(70)が少なくとも部分的に誘電体材料から作られること、
を特徴とするセンサ配列。
【請求項13】
支持体(70)が、特に、柔軟なプリント回路基板として構成されることを特徴とする、特許請求の範囲第12項に記載のセンサ配列。
【請求項14】
評価エレクトロニクスの少なくとも一部(90)が、支持体(70)上に配置されることを特徴とする、特許請求の範囲第12項または第13項に記載のセンサ配列。
【請求項15】
前記結合電極(80)が単一電位表面として、特に、連続する金属層として構成されることを特徴とする、特許請求の範囲第12項〜第14項のうちの1項に記載のセンサ配列。
【請求項16】
支持(70)上またはその中に回路コンポーネントをシールドし、あるいは受けるために別の金属層(86)が備えられることを特徴とする、特許請求の範囲第12項〜第15項のうちの1項に記載のセンサ配列。
【請求項17】
目標物体の容量性位置探知のための、
前記目標物体(12)の位置が確定されるべき検出エリア(16)にわたって複数の容量性プローブ(20,30,40)が配置される方法であって、
前記プローブ(20,30,40)に、それぞれの場合において結合容量(22,32,42)を介して供給電圧が供給されること、および
前記プローブ信号が、評価デバイス(50)を用いて、探知されるべき前記目標物体(12)の位置のための測度である出力信号に処理されることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記結合容量(22,32,42)および検出されるべき前記目標物体(12)の位置変化の結果として環境に関して変化する前記プローブ(20,30,40)の容量(24,34,44)を介して容量性分圧器が形成されること、および前記プローブ電圧がプローブ信号として評価されることを特徴とする、特許請求の範囲第17項に記載の方法。
【請求項19】
離散的な物体、液体、または塊状物質が検出されることを特徴とする、特許請求の範囲第17項または第18項に記載の方法。
【請求項20】
すべての結合容量(22,32,42)に特定周波数を伴う同一の供給電圧が供給されることを特徴とする、特許請求の範囲第17項〜第19項のうちの1項に記載の方法。
【請求項21】
いくつかのプローブ電圧の比率が前記プローブ信号を評価するために形成されることを特徴とする、特許請求の範囲第17項〜第20項のうちの1項に記載の方法。
【請求項22】
評価の間に少なくとも1つの基準プローブの信号電圧が考慮されることを特徴とする、特許請求の範囲第17項〜第21項のうちの1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−533220(P2007−533220A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507692(P2007−507692)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003389
【国際公開番号】WO2005/100924
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(300024047)ペッパール ウント フュフス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (17)
【Fターム(参考)】