説明

目標物検出システム

【課題】 特定の物体を探索対象とした場合に、目標物探索の処理負荷を軽減して、高速に探索を行うことが可能な目標物検出システムを提供する。
【解決手段】 画素ブロック判定手段31が、照合パターンに従って所定サイズの画素ブロックを探索対象画像から順次抽出し、抽出した画素ブロックに対して所定の判定条件を満たすかどうかの判定を行い、条件を満たす場合に各画素ブロックに対応する探索基点画素を設定する。次に、目標物特定手段32が、探索基点画素を含む所定の領域を基点画素影響領域として設定し、探索対象画像上の各画素について、基点画素影響領域に含まれた回数を計数し、所定サイズの計数集計範囲を設定し、計数集計範囲を移動させたときに、計数集計範囲に含まれる画素の回数の総計が最大となる場合に、計数集計範囲内の所定の画素を目標物を示す特定画素として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像中から目的とするパターンを検出するための技術に関し、特にパンクロマティック高精細衛星画像を用いて、自動車等の目標物を抽出するパターン検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
QuickBird(米国DigitalGlobe)、ALOS“だいち”(日本JAXA)、TERRA/ASTER(日本ERSDAC)など陸域観測・地球観測衛星は高度約450km上空で地球を極軌道で周回しており、高分解能な光学センサや合成開口レーダ(SAR)を搭載し、地上を連続的にスキャニングし、定時的に地球局に画像データを伝送している。主として3種類の画像が活用され、光学センサのマルチスペクトラル・モード(カラー写真)は、可視光のRGBバンドに近赤外を加えた4バンド構成で夜間も撮影でき、地上の資源探索や大規模災害などの状況を収集するのに有効である。SAR画像は電波によるレーダ画像で、雲がかかっていても透過するため、天候が悪いときでも画像を収集でき、ドップラー効果を用いて航行中の船舶を計測することもできる(特許文献1参照)。中でも、光学センサのパンクロマチック・モード(モノクロ写真)は地上の乗用車を識別できる1m弱(世界最高分解能QuickBird 0.6m)の分解能をもち、交通状況の監視などに有益である。交通状況の監視については、地上に設置された監視カメラやヘリコプター・航空機による航空写真の方が鮮明な画像が得られるが、広域を同時観測することが難しいのと、建築物などの陰に隠れた死角が必ず発生するという問題から、近年衛星画像が注目されている。
【0003】
また、目標物を航空機と船舶に特化したテンプレートマッチングによる検出方法(特許文献2参照)、テンプレートをあらかじめ準備し、画像データの先頭画素から順次スキャンしながらテンプレートと同サイズの画素ブロックを抽出し、テンプレートと照合する手法(特許文献3参照)なども提案されている。
【0004】
しかし、特許文献2、特許文献3の手法では、目標物を的確に検出するのに十分でなかった。そこで、出願人は、衛星画像等の探索対象とする画像から、目標物を高速、高精度で自動抽出することが可能な目標物検出システムを提案している(特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3863014号
【特許文献2】特許第3978979号
【特許文献3】特開2001−67470号公報
【特許文献4】特願2008−141617号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献4の手法では、様々な物体を目標物とすることができる反面、演算量が多いため、処理負荷が高く、探索処理に時間を要するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、特定の物体を探索対象とした場合に、目標物探索の処理負荷を軽減して、高速に探索を行うことが可能な目標物検出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、目標物の探索対象である探索対象画像から、目標物を検出するシステムであって、所定サイズの画素ブロックに対して、少なくとも2つ以上の画素群を定め、各々の画素群別に、あるいは異なる画素群間で所定の画素評価算出式、当該画素評価算出式に応じた画素判定基準値、画素評価算出式により算出される画素評価値と画素判定基準値の関係による判定条件が定義された画素評価ルールを利用して、前記探索対象画像から、前記画素ブロックを順次抽出し、当該画素ブロックにおける画素を用いて前記画素評価算出式により画素評価値を算出し、当該画素評価値と前記画素判定基準値を比較し、比較結果が前記判定条件を満たす場合に、前記画素ブロック内の所定の画素を、探索基点画素として設定する画素ブロック判定手段と、前記探索対象画像上において、前記探索基点画素を含む所定の領域を基点画素影響領域として設定し、前記探索対象画像上の各画素について、前記基点画素影響領域に含まれた回数を計数し、所定サイズの計数集計範囲を設定し、計数集計範囲を移動させたときに、当該計数集計範囲に含まれる画素の前記回数の総計が最大となる場合に、当該計数集計範囲内の所定の画素を特定画素として設定する目標物特定手段と、前記目標物特定手段により設定された特定画素を所定の態様で出力する探索結果出力手段を有する目標物検出システムを提供する。
【0008】
本発明によれば、所定の画素評価ルールを用いて、探索対象から抽出した画素ブロックが目標物に関係するかどうかの条件を判定し、条件を満たした画素ブロック内の画素を探索基点画素として、複数の探索基点画素についての基点画素影響領域内に含まれた回数を各画素について計数し、回数の総計が最大となる計数集計範囲内の画素を特定画素として設定するようにしたので、主に計数処理等の比較的負荷の小さい処理により目標物を表現する特定画素が設定できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の物体を探索対象とした場合に、目標物探索の処理負荷を軽減して、高速に探索を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(1.システム構成)
まず、本発明に係る目標物検出システムの構成について説明する。図1は本発明に係る目標物検出システムの構成図である。図1において、10は探索対象画像記憶部、20は照合パターン記憶部、30は目標物探索部、40は探索結果記憶部である。本発明に係る目標物検出システムは、自動車等の金属材質の目標物の検出に適したものである。
【0011】
探索対象画像記憶部10は、探索対象となる画像である探索対象画像を記憶したものである。本実施形態では、人工衛星により撮影された画像である衛星画像を探索対象画像として記憶している。照合パターン記憶部20は、画素ブロックの判定に用いる照合パターンを記憶したものである。目標物探索部30は、探索対象画像中から目標物を探索する処理を実行するものであり、画素ブロック判定手段31、目標物特定手段32、探索結果出力手段33を有している。探索結果記憶部40は、目標物探索部30により探索された結果を記憶するものである。図1に示した目標物検出システムは、現実には汎用のコンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現される。また、各記憶部は、コンピュータに内蔵または接続されたハードディスク等の記憶装置で実現される。
【0012】
探索対象画像記憶部10に記憶された探索対象画像について説明する。探索対象画像は、人工衛星により撮影された衛星画像である。本実施形態では、Adobe社TIFF規格準拠のGeo−TIFF形式であり、画像データに地理情報(緯度経度情報など)が付加されたものを採用する。衛星画像には、自動車などの目標物になり得るものが写っている。
【0013】
照合パターン記憶部20に記憶された照合パターンについて説明する。本実施形態では、照合パターンとして、固定照合パターンと可変照合パターンの2種類が用意されている。固定照合パターンは、中央の画素群と周辺の画素群の配置が固定されている照合パターンである。図2は、固定照合パターンの一例を示す図である。本実施形態では、図2(a)に示すような7×7画素の照合パターンを用いる。照合パターンは、中央3×3画素の9個の画素値(Vi1〜Vi9)と、中央3×3画素以外の周辺40個のの画素値(VO1〜VO40)からなる。さらに、照合パターンには、各画素値を用いた画素評価算出式、画素評価算出式に応じた画素判定基準値、画素評価算出式により算出される画素評価値と画素判定基準値の関係による判定条件が定義された画素評価ルールが定められている。本実施形態では、判定条件として画素分散値、周辺レベル、ヒストグラム特徴の3条件が定義されている。画素分散値Disの判定条件を以下の〔数式1〕に示す。
【0014】
〔数式1〕
iave=(Σk=1,9ik)/9
is={Σk=1,9(Vik−Viave2/9+Σk=1,40(VOk−Viave2/40}1/2
is>Sdis
【0015】
上記〔数式1〕において、Viaveは、中央3×3画素(中央画素群)の9個の画素値の平均値であり、Sdisは事前に設定される閾値(画素判定基準値)である。次に、周辺レベルの判定条件を以下の〔数式2〕に示す。
【0016】
〔数式2〕
oave=(Σk=1,40ok)/40
oave>Soave+(Viave−Voave)/2
【0017】
上記〔数式2〕において、Voaveは、中央3×3画素以外の周辺40個(周辺画素群)の画素値の平均値であり、Soaveは事前に設定される閾値(画素判定基準値)である。次に、ヒストグラム特徴の判定条件を以下の〔数式3〕に示す。
【0018】
〔数式3〕
max−Vave<Vave−Vmin かつ Vmax−Vave>Shis
または Vmax−Vave>Vave−Vmin かつ Vave−Vmin>Shis
【0019】
上記〔数式3〕において、Vmax、Vmin、Vaveは、それぞれ7×7画素(画素ブロック)の最大値、最小値、平均値であり、Shisは事前に設定される閾値(画素判定基準値)である。結局、上記〔数式3〕では、Vmax−VaveまたはVave−Vminのいずれか小さい方と画素判定基準値との比較を行っている。
【0020】
次に、可変照合パターンについて説明する。可変照合パターンは、中央の画素と周辺の画素の配置が可変となっている照合パターンである。本実施形態では、固定照合パターンと同様、7×7画素のサイズのものを用いる。可変照合パターンでは、中央画素と周辺画素の配置が動的に定まる。可変照合パターンでは、固定照合パターンのように、事前に中央画素と周辺画素が定まっておらず、探索対象画像から画素ブロックを読み込んだ後、画素ブロックを構成する画素の値に応じて決定する。
【0021】
具体的には、まず画素ブロックの画素を読み込んだ後、7×7画素の49個の画素値のヒストグラムを求め、各画素値が半分に分かれるような位置に閾値を設定する。49画素の場合、24個と25個に分かれるような値で閾値を定めるのが理想であるが、実際には、同一画素値の画素が複数存在する場合もあるため、閾値で区分した場合、ほぼ半分ずつにならない場合もある。このような場合、閾値より画素値が大きい画素の数と、閾値より画素値が小さい画素の数の差が最小となる値を閾値として設定する。
【0022】
閾値を設定することにより、画素値の大きいグループと画素値の小さいグループに分けることはできるが、この段階では、まだ、どちらが中央でどちらが周辺であるかは決まっていない。そこで、各グループに属する画素の画素ブロックの中心画素までの距離の平均値を求め、この距離の平均値が小さい方のグループに含まれる画素を可変中央画素として設定し、距離の平均値が大きい方のグループに含まれる画素を可変周辺画素として設定する。図3は、可変照合パターンの一例を示す図である。図3の例では、可変中央画素が画素値(Vi1〜Vi10)となる10個の画素であり、可変周辺画素が画素値(VO1〜VO39)となる39個の画素である。
【0023】
可変照合パターンにも、各画素値を用いた画素評価算出式、画素評価算出式に応じた画素判定基準値、画素評価算出式により算出される画素評価値と画素判定基準値の関係による判定条件が定義されている。本実施形態では、判定条件として中央集積率に関する条件が定義されている。中央集積率の判定条件を以下の〔数式4〕に示す。
【0024】
〔数式4〕
i×100/9>Scon
【0025】
上記〔数式4〕において、Niは、可変照合パターンの中心3×3画素に含まれる中央画素(Vik)の個数であり、Sconは事前に設定される閾値(画素判定基準値)である。例えば、図3の例では、中心3×3画素には、Vi3〜Vi8の6個の中央画素が含まれるため、Ni=6となる。
【0026】
(2.処理動作)
次に、本発明に係る目標物検出システムの処理動作について説明する。本システムにおいて、探索対象画像を指定すると、目標物探索部30が探索対象画像において目標物の探索を行う。利用者が目標物探索処理を指示すると、目標物探索部30の画素ブロック判定手段31が画素ブロック単位で判定条件を満たすかどうかの判定を行う。具体的には、探索対象画像中の始点画素位置から、照合パターンに対応する画素ブロックを順次抽出し、判定を行う。
【0027】
判定処理は、最初に、探索対象画像中の始点画素位置(0,0)を起点として(S−1,S−1)までのS×S個の正方形状の画素ブロックに対して行い、(1,0)を起点とする正方形領域、(2,0)を起点とする正方形領域…というように、X方向スキャン範囲に1画素づつ移動させて比較を行っていき、x軸方向について終了したら、Y方向スキャン範囲に1画素分移動し、(0,1)を起点とする正方形領域、(1,1)を起点とする正方形領域…というように順次探索対象画像全体について行っていく。なお、本実施形態では、S=7である。
【0028】
続いて、各画素位置から抽出した画素ブロックに対する判定処理について図4のフローチャートを用いて説明する。画素ブロック判定手段31は画素ブロックを抽出したら、抽出した画素ブロック内の各画素を照合パターンに当てはめ、上記〔数式1〕に従った処理を実行し、画素分散値Disの判定を行う(S101)。例えば、上述のように、最初は画素位置(0,0)を起点として(6,6)までの7×7個の正方形状の画素ブロックが抽出されるので、画素(0,0)の値をVo1、画素(0,1)の値をVo2、…、画素(6,6)の値をVo40として上記〔数式1〕に従った処理を実行する。この結果、Dis>Sdisの判定条件に不適合の場合は、全体として不適合と判定する(S106)。
【0029】
S101において、Dis>Sdisの判定条件に適合の場合は、周辺レベルの判定を行う(S102)。具体的には、上述のように、画素(0,0)〜画素(6,6)の値をVi1〜Vi9、Vo1〜Vo40のいずれかに当てはめ、上記〔数式2〕に従った処理を実行する。この結果、Voave>Soave+(Viave−Voave)/2の判定条件に不適合の場合は、全体として不適合と判定する(S106)。
【0030】
S102において、Voave>Soave+(Viave−Voave)/2の判定条件に適合の場合は、ヒストグラム特徴の判定を行う(S103)。具体的には、上述のように、画素(0,0)〜画素(6,6)の値をVi1〜Vi9、Vo1〜Vo40のいずれかに当てはめ、上記〔数式3〕に従った処理を実行する。この結果、Vmax−Vave<Vave−VminかつVmax−Vave>Shisの判定条件、Vmax−Vave>Vave−VminかつVave−Vmin>Shisの判定条件にともに不適合の場合は、全体として不適合と判定する(S106)。
【0031】
S103において、Vmax−Vave<Vave−VminかつVmax−Vave>Shisの判定条件、Vmax−Vave>Vave−VminかつVave−Vmin>Shisの判定条件のいずれかに適合の場合は、中央集積率の判定を行う(S104)。具体的には、上述のように、画素(0,0)〜画素(6,6)の値をVik、Vokのいずれかに当てはめ、上記〔数式4〕に従った処理を実行する。この結果、Ni×100/9>Sconの判定条件に不適合の場合は、全体として不適合と判定する(S106)。S104において、中央集積率の判定条件に適合の場合は、全体として適合と判定する(S105)。
【0032】
全体として適合(S105)と判定された場合は、その画素ブロックの1番先頭の画素、すなわち、照合パターンの画素値Vo1に対応する画素を“探索基点画素”に設定する。画素(0,0)〜画素(6,6)の画素ブロックの場合、画素(0,0)が探索基点画素として設定される。全体として不適合(S106)と判定された場合は、探索基点画素の設定は行われない。本実施形態では、画素ブロックの左上端の画素を探索基点画素としているが、画素ブロック内の他の画素を探索基点画素としても良い。全体として適合、または不適合の判定が行われた場合には、その画素位置の画素ブロックについての処理を終了し、次の画素を先頭画素位置として画素ブロックを抽出し、その画素ブロックについて図4のフローチャートに従った処理を実行する。なお、本実施形態では、最も理想的な例としてS101〜S104において上記〔数式1〕〜〔数式4〕に対応した処理を実行して画素ブロックの判定を行うようにしたが、S101〜S104を必ずしもこの順序で行わなくても、それなりの効果が得られる。また、S101〜S104のうち、3つ以下のものを選択して実行するようにしても良い。S101〜S104のうち、いずれか1つを実行するだけでも目標物の大まかな特定を行うことは可能である。
【0033】
図4のフローチャートに従った処理を探索対象画像上の全ての画素に対して実行した結果の一例を図5に示す。図5において、網掛けで示した6個の画素(0,0)、(1,1)、(1,2)、(1,3)、(8,7)、(8,8)は、探索基点画素として設定された画素を示す。したがって、図5に示した探索対象画像においては、この6画素を左上端とする7×7画素の画素ブロックが、全ての判定条件を満たしたことを意味している。
【0034】
次に、この探索基点画素を利用して、目標物特定手段32が目標物の特定を行う。図6(a)は、図5に示した探索対象画像の左上端から8×10画素部分を拡大したものである。探索基点画素として、画素(0,0)、画素(1,1)、画素(1,2)、画素(1,3)が設定されている。目標物特定手段32は、各探索基点画素を左上端とした7×7画素の正方形領域(基点画素影響領域)を設定し、探索対象画像上の各画素について、基点画素影響領域に含まれた回数をカウント(計数)していく。まず、画素(0,0)を左上端とする基点画素影響領域についてカウントすると、各画素のカウント数は、図6(b)に示すようになる。次に、画素(1,1)を左上端とする基点画素影響領域についてカウントすると、各画素のカウント数は、図6(c)に示すようになる。同様に、画素(1,2)を左上端とする基点画素影響領域についてカウントすると、各画素のカウント数は、図6(d)に示すようになる。最後に、画素(1,3)を左上端とする基点画素影響領域についてカウントすると、各画素のカウント数は、図7(a)に示すようになる。図6(a)の例では、探索基点画素が4個であるので、重複回数は最大で“4”となる。本実施形態では、基点画素影響領域を画素ブロックと同一形状の7×7画素分としているが、所定画素数による任意の形状とすることができる。
【0035】
各探索基点画素を左上端とする基点画素影響領域の重複回数がカウントされたら、次に、目標物特定手段32は、7×7画素の正方形領域(計数集計範囲)を設定し、この計数集計範囲内に含まれる49画素の重複回数の合計が最大となる位置を探索する。この際、探索対象画像の左上端から1画素ずつ計数集計範囲を移動させて順に処理していく。例えば、探索対象画像の左上端の画素を基点とした計数集計範囲内の合計は図7(b)に示すように“139”となる。同様に、探索対象画像の各画素を基点として計数集計範囲内の重複回数の合計を算出していく。図7の例では、画素(1,1)を基点とした位置に計数集計範囲を設定したときが、重複回数の合計は“162”で最大となる。重複回数の合計が最大となる計数集計範囲の位置が定まったら、目標物特定手段32は、その計数集計範囲の中心の3×3画素を“特定領域”として設定する。具体的には、中心の3×3画素それぞれを特定画素として設定する。この特定画素で構成される特定領域が目標物を示すことになる。本実施形態では、重複回数の合計の最大値について閾値を設定しており、重複回数の合計の最大値が閾値以上の場合に限り、特定領域を設定するようにしている。例えば、図7の例では、閾値を“150”として設定しているので、特定領域が設定される。重複回数の合計の最大値について、必ずしも閾値を設定する必要はないが、設定しておくことにより、目標物検出の精度が高まる。
【0036】
図8(a)は、図5に示した探索対象画像の画素(8,7)を左上端として8×10画素分を拡大したものである。探索基点画素として、画素(8,7)、画素(8,8)が設定されている。図8(a)に示すような探索基点画素が設定された探索対象画像について、重複回数のカウントを行うと、各画素のカウント数は、図8(c)に示すようになる。そして、計数集計範囲内に含まれる49画素の重複回数の合計が最大となる位置を探索すると、図8(d)に示すように、重複回数の合計は“91”で最大となる。しかし、閾値が“150”と設定されていると、重複回数の合計が閾値より小さいため、この位置では特定領域は設定されない。
【0037】
図6、図7を用いて説明した処理では、簡易迅速に目標物であると思われる物体が存在する領域を特定することができる。しかし、上記処理では、特定領域の物体が目標物である可能性は高いが、探索漏れが生じる場合もある。そこで、目標物である可能性はやや低くなるものの、探索漏れが生じないようにする探索を行うこともできる。この場合、目標物特定手段32は、重複回数の合計の最大値についての閾値を、上記処理より小さくして下位閾値として設定し、重複回数の合計の最大値が下位閾値以上の場合に限り、その矩形領域の中心の3×3画素を“準特定領域”として設定する。例えば、上記処理において、閾値を“90”と設定しておけば、図7(d)に示した矩形の中央3×3画素が、準特定領域として設定される。
【0038】
特定領域、準特定領域が設定されたら、探索結果出力手段33が、探索結果の出力を行う。探索結果は複数の形式で出力することができる。第1の形式は、得られた特定領域、準特定領域の画素の座標をデータとして出力するものである。第2の形式は、探索対象画像上の特定領域、準特定領域の画素の値を、特定領域、準特定領域と認識できるように変更した後、探索対象画像を表示出力するものである。表示出力する場合は、まず、探索対象画像上の各画素の0〜255の値を0〜127の値に変換し、2〜8ビット目までに格納する。そして、目標物特定手段32は、1ビット目には、階調とは関係なく、特定領域または準特定領域であるか、特定領域、準特定領域のいずれにも属さないかを示す値を設定する。したがって、本実施形態では、探索対象画像が256階調から128階調に変換されることになる。さらに、探索結果出力手段33は、特定領域として設定された3×3画素の周囲の16画素を所定の同一値に設定する。この16画素により、特定領域を囲む枠が出現することになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る目標物検出システムの構成図である。
【図2】固定照合パターンの一例を示す図である。
【図3】可変照合パターンの一例を示す図である。
【図4】画素ブロックに対する判定処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】目標物に関わる可能性が高いと判定された画素ブロックの探索基点画素を示す図である。
【図6】目標物特定手段32による処理を示す図である。
【図7】目標物特定手段32による処理を示す図である。
【図8】目標物特定手段32による処理を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10・・・探索対象画像記憶部
20・・・照合パターン記憶部
30・・・目標物探索部
31・・・画素ブロック判定手段
32・・・目標物特定手段
33・・・探索結果出力手段
40・・・探索結果記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物の探索対象である探索対象画像から、目標物を検出するシステムであって、
所定サイズの画素ブロックに対して、少なくとも2つ以上の画素群を定め、各々の画素群別に、あるいは異なる画素群間で所定の画素評価算出式、当該画素評価算出式に応じた画素判定基準値、画素評価算出式により算出される画素評価値と画素判定基準値の関係による判定条件が定義された画素評価ルールを利用して、前記探索対象画像から、前記画素ブロックを順次抽出し、当該画素ブロックにおける画素を用いて前記画素評価算出式により画素評価値を算出し、当該画素評価値と前記画素判定基準値を比較し、比較結果が前記判定条件を満たす場合に、前記画素ブロック内の所定の画素を、探索基点画素として設定する画素ブロック判定手段と、
前記探索対象画像上において、前記探索基点画素を含む所定の領域を基点画素影響領域として設定し、前記探索対象画像上の各画素について、前記基点画素影響領域に含まれた回数を計数し、所定サイズの計数集計範囲を設定し、計数集計範囲を移動させたときに、当該計数集計範囲に含まれる画素の前記回数の総計が最大となる場合に、当該計数集計範囲内の所定の画素を特定画素として設定する目標物特定手段と、
前記目標物特定手段により設定された特定画素を所定の態様で出力する探索結果出力手段と、
を有することを特徴とする目標物検出システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記画素ブロックはS×S画素の正方形状であり、前記画素群は、中央の正方形状の中央画素群と、中央画素群以外の周辺画素群であって、中央画素群の平均値をViaveとしたとき、Viaveと前記画素ブロックの全ての画素との差分の二乗平均値を用いて画素評価算出式を定義していることを特徴とする目標物検出システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記画素ブロックはS×S画素の正方形状であり、前記画素群は、中央の正方形状の中央画素群と、中央画素群以外の周辺画素群であって、中央画素群の平均値をViave、周辺画素群の平均値をVoaveとしたとき、Voave−(Viave−Voave)/2を用いて画素評価算出式を定義していることを特徴とする目標物検出システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、
前記画素ブロックはS×S画素の正方形状であり、前記画素群は、中央の正方形状の中央画素群と、中央画素群以外の周辺画素群であって、前記画素ブロックの最小値、最大値、平均値をVmin、Vmax、Vaveとしたとき、Vmax−VaveまたはVave−Vminのいずれか小さい方を用いて画素評価算出式を定義していることを特徴とする目標物検出システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかにおいて、
前記画素ブロックはS×S画素の正方形状であり、中央の正方形状の固定中央画素群と、固定中央画素群以外の固定周辺画素群に分けられるとともに、画素ブロック内の各画素値と閾値との大小関係により可変中央画素群と可変周辺画素群に分けられ、
前記固定中央画素群および前記可変中央画素群の双方に含まれる画素の個数に基づいて画素評価算出式を定義していることを特徴とする目標物検出システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかにおいて、
前記目標物特定手段は、前記計数集計範囲に含まれた画素の回数の合計が所定の閾値以下である場合には、当該領域内には特定画素を設定しないことを特徴とする目標物検出システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記目標物特定手段は、前記計数集計範囲に含まれた画素の回数の合計が、前記閾値より小さい第2の閾値より大きい場合には、当該計数集計範囲内に準特定画素を設定することを特徴とする目標物検出システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかにおいて、
前記探索結果出力手段は、前記特定画素の周囲の画素を所定の値に設定し、探索対象画像を出力することを特徴とする目標物検出システム。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から請求項8のいずれかに記載の目標物検出システムとして機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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