説明

目止め剤の充填装置

【課題】大きな凹凸のある湾曲する木口面を極めて能率よく綺麗に平滑化する。極めて簡単な構造としながら、大きな凹凸のある湾曲する木口面をも綺麗に平滑化する。
【解決手段】目止め剤の充填装置は、板材1の湾曲面であって凹凸のある木口面1Aに目止め剤2を充填して、板材1の木口面1Aを平滑にする。目止め剤の充填装置は、目止め剤2を吐出口4から加圧状態で押し出す加圧器3と、この加圧器3の吐出口4に連結してなる吸盤5とを備える。充填装置は、この吸盤5を木口面1Aに密着させる状態で、木口面1Aと吸盤5のいずれか又は両方を、吸盤5が木口面1Aに沿って移動するように移動して、板材1の木口面1Aに目止め剤2を塗布して平滑面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸があって湾曲する板材の木口面に目止め剤を充填して平滑面とする目止め剤の充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板材の木口面は凹凸面となっている。凹凸のある木口面は、表面を綺麗な木目模様などで表面処理できず、また、塗装などによっても綺麗に表面処理できない。天然の木材は、木口面に導管が表出して凹凸面となる。また、パーチクルボードのように低コストな板材は木口面の凹凸が大きく、製品として使用するためには平滑面に加工している。木材を繊維状に分散して板状に加工しているMDFは、パーチクルボードに比較して木口面を平滑にできるが、パーチクルボードに比較して加工コストが高くなる欠点がある。パーチクルボードは極めて安価であるが、木口面に大きな凹凸ができることから、木口面の平滑化にコストがかかる欠点がある。また、天然の板材やMDFも、切断した木口面は表面よりも凹凸があって、平滑化する処理を必要とする。
【0003】
木口面は、表面に目止め剤を充填して平滑化できる。(特許文献1参照)
ところが、木口面に目止め剤を充填して平滑化するのに相当に手間がかかる。とくに、湾曲する木口面は平滑化するために極めて手間がかかる。湾曲する木口面に目止め剤を充填する装置として、本発明者は、ペースト状の目止め剤を加圧して押し出すノズルの先端にブラシを連結している充填装置を開発した。この充填装置は、ノズルから押し出される目止め剤を、ブラシして凹凸面に擦り込んで充填した後、表面を平滑に均して、湾曲する木口面を平滑化する。このため、湾曲して凹凸のある木口面を平滑化するのに手間がかかる欠点があった。とくに、パーチクルボードのように、大きな凹凸のある木口面の平滑化には、全ての凹部に確実に目止め剤を充填して平滑化することから、極めて手間がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−104934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、大きな凹凸のある湾曲する木口面を極めて能率よく綺麗に平滑化できる目止め剤の充填装置を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、極めて簡単な構造としながら、大きな凹凸のある湾曲する木口面をも綺麗に平滑化できる目止め剤の充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の目止め剤の充填装置は、板材1の湾曲面であって凹凸のある木口面1Aに目止め剤2を充填して、板材1の木口面1Aを平滑にする。目止め剤の充填装置は、目止め剤2を吐出口4から加圧状態で押し出す加圧器3と、この加圧器3の吐出口4に連結してなる吸盤5とを備える。充填装置は、この吸盤5を木口面1Aに密着させる状態で、木口面1Aと吸盤5のいずれか又は両方を、吸盤5が木口面1Aに沿って移動するように移動して、板材1の木口面1Aに目止め剤2を塗布して平滑面とする。
【0007】
以上の充填装置は、大きな凹凸のあるパーチクルボードなどの湾曲する木口面を極めて能率よく、しかも綺麗に平滑化できる特徴がある。それは、吸盤が、その外周縁部を湾曲する木口面に密着させる状態で内部に加圧された目止め剤が充填されるからである。すなわち、吸盤で閉鎖された空間に加圧された目止め剤が押し出されて、木口面の凹部に速やかに充填される。さらに、外周縁部を木口面に密着させる吸盤は、これが木口面に沿って移動することで、充填された目止め剤の表面を平滑に均しながら移動する。このため、吸盤の内部に加圧された目止め剤を押し出しながら、これを木口面に沿って移動することで、木口面の凹部には目止め剤が充填され、さらに充填された目止め剤の表面は綺麗に平滑化される。さらに吸盤は、木口面に押圧されることで湾曲する木口面に密着する。したがって、湾曲する木口面に沿って移動させることで、この木口面に目止め剤を充填して綺麗な平滑面にできる。さらにまた、以上の充填装置は、吐出口に吸盤を連結するという極めて簡単な構造としながら、大きな凹凸のある湾曲する木口面をも綺麗に平滑化できる特徴を実現する。
【0008】
本発明の目止め剤の充填装置は、木口面1Aに凹凸のある板材1をパーチクルボードとすることができる。
以上の充填装置は、パーチクルボードの木口面に沿って吸盤を移動させながら、吸盤と木口面との間に加圧された目止め剤を吐き出して、パーチクルボードの木口面にできる大きな凹凸を綺麗に平滑化できる。このため、極めて安価なパーチクルボードを使用して、その木口面を簡単かつ容易に、しかも能率よく低コストに綺麗な平滑面に処理できる。
【0009】
本発明の目止め剤の充填装置は、加圧器3が、目止め剤2を充填してなる加圧タンク6と、この加圧タンク6に加圧空気を供給するコンプレッサ7と、加圧タンク6に連結してなる開閉弁8を設けてなるグリップ9とを備えて、グリップ9の先端部に設けた吐出口4に吸盤5を連結することができる。
以上の充填装置は、グリップに設けた開閉弁を操作しながら、吸盤を木口面に沿って移動して、木口面に目止め剤を充填して平滑化できる。このため、特に能率よく木口面を綺麗な平滑化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例にかかる目止め剤の充填装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す充填装置で板材の木口面に目止め剤を充填する状態を示す拡大斜視図である。
【図3】図1に示す充填装置で板材の木口面に目止め剤を充填する状態を示す拡大断面図である。
【図4】他の形状の板材に目止め剤を充填する状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための板材の木口面に目止め剤を充填する装置を例示するものであって、本発明は充填装置を以下のものに特定しない。
【0012】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0013】
図1と図2に示す充填装置は、板材1の湾曲面であって凹凸のある木口面1Aに目止め剤2を充填して、板材1の木口面1Aを平滑にする。この充填装置は、目止め剤2を吐出口4から加圧状態で押し出す加圧器3と、この加圧器3の吐出口4に連結してなる吸盤5とを備える。
【0014】
加圧器3は、目止め剤2を充填している加圧タンク6と、この加圧タンク6に加圧空気を供給するコンプレッサ7と、加圧タンク6に連結してなる開閉弁8を設けてなるグリップ9とを備える。
【0015】
加圧タンク6は、加圧空気で加圧されたペースト状の目止め剤2を押し出す排出口10を設けている。この排出口10にはホース15を連結している。ホース15は、加圧タンク6をグリップ9に連結して、加圧された目止め剤2をグリップ9に供給する。さらに、加圧タンク6は、目止め剤2を充填できるように、上方の開口部をパッキン11を介して脱着蓋12で密閉している。脱着蓋12は、フランジ13をネジ止めして固定される。この加圧タンク6は、脱着蓋12を開いて内部に目止め剤2を充填する。目止め剤2を加圧して押し出す状態で、脱着蓋12で内部は気密に密閉される。さらに、加圧タンク6はコンプレッサ7に連結する空気ホース16を連結するニップル14を上部に固定している。このニップル14には開閉弁17を連結している。ニップル14に連結される空気ホース16は、コンプレッサ7に連結されて、加圧タンク6の内部に加圧空気を供給する。開閉弁17は、脱着蓋12を開くときに閉じられ、加圧タンク6に加圧空気を供給するときに開かれる。
【0016】
加圧タンク6に充填される目止め剤2は、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニル系、シリコン樹脂系などのバインダーに無機粉末を添加している。無機粉末には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の粉末が使用される。無機粉末は、平均粒径を1μm〜10μmとする微粉末で、バインダーに添加されて粘度を高くしてペースト状とする。目止め剤2は、粘度が低すぎると木口面1Aから板材1の内部に浸透して、木口面1Aの凹部を塞ぐことができない。無機粉末を添加している目止め剤2は、添加する無機粉末によって粘度が高くなり、板材1の内部に浸透することなく、凹部に充填されて木口面1Aを平滑化する。ただし、目止め剤は、必ずしも無機粉末を添加するものに特定しない。目止め剤は、無機粉末に代わって微細な繊維等を混合することもでき、また、添加剤を混合しないで所定の粘度のものは、添加剤を混合することなく使用できる。目止め剤2には、板材1の木口面1Aに充填して平滑化できる全てのものが使用できる。したがって、目止め剤には、たとえば、加熱状態でペースト状で冷却して硬化するホットメルトなども使用できる。
【0017】
図1と図2の充填装置は、グリップ9の後端に開閉弁8を設けて、この開閉弁8に連結している開閉レバー18を前方に伸びるようにグリップ9側に設けている。開閉レバー18は、グリップ9の後端から先端に向かって、グリップ9から離れる姿勢に傾斜している。グリップ9を握る手で開閉レバー18を握ると、開閉弁8は開かれる。開閉レバー18を握らない状態で開閉弁8は閉じられる。開閉レバー18を握らない状態で、開閉弁8を閉じる位置に移動させるために、弾性体(図示せず)を設けている。ただし、弾性体を設けることなく、供給される目止め剤2の圧力で開閉弁8を閉じることもできる。
【0018】
グリップ9の先端部には、吐出口4のノズル19を突出させている。このノズル19を吸盤5に挿入して、吐出口4に吸盤5を連結している。
【0019】
吸盤5は、天然又は合成ゴムなどのゴム状弾性体で製作される。吸盤5は、外周縁に向かって次第に薄くしてなるカップ部5Aと、このカップ部5Aの外側面の中心部に、カップ部5Aに一体的に固定するように設けている連結凸部5Bからなる。カップ部5Aの直径は木口面1Aの幅よりも大きく、吸盤5のカップ部5Aが木口面1Aに沿って移動されて、木口面1Aの全幅に目止め剤2を充填して均等化する。木口面1Aに目止め剤2を充填して平滑化される板材1の厚さは、一般的には1cm〜2cmであるから、吸盤5のカップ部5Aの直径は、たとえば3cm〜5cmとして、ほとんどの板材1の木口面1Aを平滑化できる。
【0020】
図3の拡大断面図に示すように、カップ部5Aは、内面をアーチ状に湾曲する凹部形状としている。カップ部5Aは、湾曲している内面の曲率半径(R1)を、木口面1Aが湾曲している曲率半径(R2)よりも小さくしている。カップ部5Aの外周部を木口面1Aの両側部に密着させて、カップ部5Aの内部に加圧状態で供給される目止め剤2をカップ部5Aの外部に漏らさないためである。吸盤5は、カップ部5Aの外周部を木口面1Aに密着する状態で、カップ部5Aの内面と木口面1Aとの間に目止め剤2を充填する隙間20ができる。この隙間20に加圧された目止め剤2を充填して、木口面1Aの凹凸を平滑化するように目止め剤2が充填される。カップ部5Aと木口面1Aの間にできる隙間20は、吸盤5を木口面1Aに押圧する圧力でコントロールできる。カップ部5Aを木口面1Aに強く押圧すると、カップ部5Aの内面が広い面積で木口面1Aに密着して、隙間20が狭くなる。カップ部5A内面と木口面1Aの隙間20が狭くなる状態にあっては、この隙間20に加圧して充填される目止め剤2が、連続する凹部を透過しながら隣の凹部に充填される。したがって、カップ部5Aの内面を木口面1Aに密着させる状態で、目止め剤2を木口面1Aに充填して平滑化することもできる。とくに、パーチクルボードのように多数の凹部のある木口面は、隣接する凹部が互いに連続する状態となるので、カップ部の内面を木口面に密着するように移動して、木口面にできる凹凸を綺麗な平滑面に処理できる。MDFのように凹凸の少ない木口面にあっては、カップ部を木口面に押圧する力をコントロールしながら、木口面に沿って移動して、木口面を目止め剤で平滑化できる。
【0021】
また、吸盤5と木口面1Aとの間に供給される目止め剤2の圧力を高くして、木口面1Aの凹部に、より確実に目止め剤2を充填できる。高い圧力で供給される目止め剤2は、吸盤5のカップ部5Aを木口面1Aに密着させる状態で、カップ部5Aの内面と木口面1Aとの隙間20に圧入されて、木口面1Aの凹部に充填されて、木口面1Aを綺麗な平滑面に処理する。
【0022】
したがって、空気で加圧して目止め剤2を木口面1Aに充填する装置は、加圧タンク6に供給する空気の圧力を、たとえば0.2MPa〜1MPa、好ましくは0.3MPa〜0.6MPaとして、目止め剤2を、吸盤5と木口面1Aとの隙間20に充填する。
【0023】
さらに、この充填装置は、図4に示すように、木口面1Aが中央凹となる形状の板材1においても、吸盤5のカップ部5Aの内面を木口面1Aの内面に沿う形状に変形させて、カップ部5Aの内面と木口面1Aとの間に隙間20を設けて目止め剤2を充填することができる。
【0024】
以上の充填装置は、板材1を固定して吸盤5を移動し、あるいは反対に吸盤5を固定して板材1を移動し、あるいはまた、吸盤5と板材1の両方を移動することで、吸盤5を木口面1Aに沿って移動させて、木口面1Aを平滑面に処理する。
【0025】
図1と図2の充填装置は、以下の方法で使用して、板材1の木口面1Aを平滑化する。
(1)目止め剤2を充填している加圧タンク6を密閉して、コンプレッサ7で加圧空気を供給する。この状態で、グリップ9に設けている開閉弁8を閉弁する。
(2)開閉レバー18を握ることなく、すなわち開閉弁8を閉じる状態でグリップ9を手で握り、吸盤5を木口面1Aの一端部に密閉させる。
(3)その後、開閉レバー18を握って吸盤5と木口面1Aとの間に加圧された目止め剤2を供給して、木口面1Aに目止め剤2を充填しながら、吸盤5を木口面1Aに沿って移動させる。この状態で、図2の矢印で示すように、木口面1Aに沿って移動する吸盤5は、木口面1Aに目止め剤2を充填しながら平滑化する。
(4)吸盤5が木口面1Aの終端部まで移動すると、開閉レバー18を離して開閉弁8を閉じる。その後、吸盤5を木口面1Aの終端部の外側に移動して、木口面1Aの全面に目止め剤2を充填して平滑化する。
【符号の説明】
【0026】
1…板材 1A…木口面
2…目止め剤
3…加圧器
4…吐出口
5…吸盤 5A…カップ部
5B…連結凸部
6…加圧タンク
7…コンプレッサ
8…開閉弁
9…グリップ
10…排出口
11…パッキン
12…脱着蓋
13…フランジ
14…ニップル
15…ホース
16…ホース
17…開閉弁
18…開閉レバー
19…ノズル
20…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材(1)の湾曲面であって凹凸のある木口面(1A)に目止め剤(2)を充填して、板材(1)の木口面(1A)を平滑にする目止め剤の充填装置であって、
目止め剤(2)を吐出口(4)から加圧状態で押し出す加圧器(3)と、この加圧器(3)の吐出口(4)に連結してなる吸盤(5)とを備え、この吸盤(5)が木口面(1A)に密着される状態で、木口面(1A)と吸盤(5)のいずれか又は両方を、吸盤(5)が木口面(1A)に沿って移動するように移動して、板材1の木口面(1A)に目止め剤(2)を塗布して平滑面とするようにしてなる目止め剤の充填装置。
【請求項2】
前記木口面(1A)に凹凸のある板材(1)がパーチクルボードである請求項1に記載される目止め剤の充填装置。
【請求項3】
前記加圧器(3)が、目止め剤(2)を充填してなる加圧タンク(6)と、この加圧タンク(6)に加圧空気を供給するコンプレッサ(7)と、加圧タンク(6)に連結してなる開閉弁(8)を設けてなるグリップ(9)とを備え、グリップ(9)の先端部に設けた吐出口(4)に吸盤(5)を連結している請求項1に記載される目止め剤の充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate