説明

直流モータおよびハブユニット

【課題】モータケースでステータを保持する構成において、ステータの過熱を防止しつつ、寸法のばらつきを抑えることができる直流モータおよびハブユニットを提供すること。
【解決手段】モータケース16は、ロータ15の回転軸22の軸方向において、第1ケース30および第2ケース31に分割されている。第1ケース30および第2ケース31には、それぞれ、分割端縁(開放側端縁34,38)から軸方向に切り欠かれた切欠き部35,39が形成されていて、切欠き部35,39が形成されていない分割端縁は、第1ケース30および第2ケース31が互いに当接する突合せ部34A,38Aを形成している。切欠き部35,39によって、モータケース16の周面には、複数の窓43が形成されている。ステータ14は、複数の窓43に対応する位置に、ステータ14の周面が径方向に外方へ膨らんだ複数の膨出部20を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流モータおよびハブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
直流モータを内蔵し、電動アシスト自転車の車輪に取り付けられたハブユニットが知られている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載のハブユニットは、ステータおよびロータを備えたモータと、内部にモータを収容して、ロータの回転によって回転駆動されるハブとを主に備えている。ハブが回転駆動されることによって、ハブユニットが取り付けられた車輪が回転する。
【0003】
モータには、ステータを保持するモータハウジング(モータケース)が備えられている。モータハウジングは、ステータを構成する積層金属板を挟んで対向配置された1対の端板を含んでいる。これらの端板同士をボルト締めして積層金属板を挟圧保持することによって、ステータは、その外周面が1対の端板間にてハブの内面へ開放された状態で、モータハウジングによって保持される。この場合、ステータの巻き線が発熱しても、1対の端板間においてモータハウジングの外部へ放熱することで、ステータの過熱を防止できる。
【0004】
また、各端板には、ベアリングが備えられていて、ロータの回転軸の両端が各端板のベアリングによって回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−335535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のハブユニットのモータでは、モータハウジングが、1対の端板によってステータの積層金属板を挟圧保持することから、1対の端板による積層金属板の挟み具合や、積層金属板の厚みの誤差等に応じて、1対の端板の対向方向におけるモータの寸法がばらつく虞がある。このようなばらつきが生じると、各端板のベアリングの位置(換言すれば、平行度)がずれてしまい、位置がずれた状態でベアリングがロータの回転軸を回転自在に支持することで、ベアリングに負担がかかる虞がある。
【0007】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、モータケースでステータを保持する構成において、ステータの過熱を防止しつつ、寸法のばらつきを抑えることができる直流モータおよびハブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、回転軸を有するロータと、前記ロータの周囲を囲むように配置されるステータと、前記ステータを収容し、前記ステータを保持するためのモータケースとを有し、前記モータケースは、前記ロータ回転軸の軸方向において、第1ケースおよび第2ケースに分割されており、前記第1ケースおよび前記第2ケースの分割端縁は、前記ステータの周囲を囲むように延びており、前記第1ケースおよび前記第2ケースには、それぞれ、周方向に見て略等間隔の角度位置に、前記分割端縁から前記軸方向に切り欠かれた切欠き部が形成されており、前記切欠き部が形成されていない前記分割端縁は、前記第1ケースおよび前記第2ケースが互いに当接する突合せ部を形成しており、前記第1ケースの切欠き部および前記第2ケースの切欠き部によって、前記モータケース周面には、周方向に見て略等間隔に複数の窓が形成されており、前記ステータは、前記複数の窓に対応する位置に、前記ステータ周面が径方向に外方へ膨らんだ複数の膨出部を有し、前記膨出部には、前記ステータを前記第1ケースに固定するための固定用ねじ孔が、前記軸方向に平行に形成されていて、前記第1ケースには、前記固定用ねじ孔に挿通されたねじの先端を螺合するためのねじ孔が設けられていることを特徴とする、直流モータである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記複数の膨出部は、前記窓を介して前記モータケースの内周面より外方へ膨らんでおり、前記固定用ねじ孔は、前記膨出部における外側寄りの位置に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の直流モータである。
請求項3記載の発明は、前記モータケースにおいて前記窓の周囲に設けられ、前記モータケースの内側へ突出する突出部を有することを特徴とする、請求項1または2記載の直流モータである。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記第2ケースの軸方向に見て、前記第1ケースと反対側の外表面には、回転軸を中心に遊星歯車を取り付けるための歯車支軸が設けられており、前記直流モータは、電動アシスト自転車用のモータであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の直流モータである。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の直流モータと、前記直流モータを収容し、前記直流モータが駆動されることによって回転駆動されるハブと、前記ロータの回転を減速して前記ハブに伝達する減速機構とを有することを特徴とする、ハブユニットである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および5記載の発明によれば、直流モータは、回転軸を有するロータと、ロータの周囲を囲むように配置されるステータと、ステータを収容し、ステータを保持するためのモータケースとを有している。
モータケースは、ロータ回転軸の軸方向において、第1ケースおよび第2ケースに分割されていて、第1ケースおよび第2ケースの分割端縁は、ステータの周囲を囲むように延びている。
【0012】
第1ケースおよび第2ケースには、それぞれ、周方向に見て略等間隔の角度位置に、分割端縁から軸方向に切り欠かれた切欠き部が形成されていて、切欠き部が形成されていない分割端縁は、第1ケースおよび第2ケースが互いに当接する突合せ部を形成している。これにより、モータケースの分割端縁における強度が突合せ部によって維持されている。また、突合せ部において第1ケースと第2ケースとを当接させることで完成されたモータケースでは、第1ケースと第2ケースとの相対位置が安定しているので、ステータを保持した状態でも、寸法がばらつくことはない。
【0013】
そして、第1ケースの切欠き部および第2ケースの切欠き部によって、モータケース周面には、周方向に見て略等間隔に複数の窓が形成されており、ステータは、複数の窓に対応する位置に、ステータ周面が径方向に外方へ膨らんだ複数の膨出部を有している。膨出部には、ステータを第1ケースに固定するための固定用ねじ孔が、軸方向に平行に形成されていて、第1ケースには、固定用ねじ孔に挿通されたねじの先端を螺合するためのねじ孔が設けられている。
【0014】
この場合、ステータの各膨出部がモータケースの窓から露出されるので、ステータが発熱しても窓から放熱することができるし、モータケース外の空気を窓から取り込んで、各膨出部においてステータを冷却することができる。
以上の結果、ステータの過熱を防止しつつ、寸法のばらつきを抑えることができる。
また、ステータに膨出部を設けることで、ステータを、膨出部において径方向に大きくすることができ、その分、ロータも大きくなるので、モータの高出力および高効率化が可能となる。特に、ステータが大きくなると、ステータのスロット長さを長くすることができるので、その分、ステータでは太い巻線を多く巻き付けることができるのでモータの高出力および高効率化を図ることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、複数の膨出部は、窓を介してモータケースの内周面より外方へ膨らんでいることから、膨出部がモータケース外の空気に晒されやすくなるので、膨出部においてステータを効果的に冷却することができる。
そして、ステータ固定用ねじ孔は、モータケースの内周面より外方へ膨らんでいる膨出部における外側寄りの位置に形成されているので、固定用ねじ孔が、ステータで発生する磁路から遠ざけられ、これにより、固定用ねじ孔が磁路を妨げることを防止できる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、モータケースにおいて窓の周囲に設けられてモータケースの内側へ突出する突出部が、モータケースに収容されたステータに当接することでステータを径方向において位置決めすることができる。ここで、モータケースにおいて突出部が設けられた部分は、突出部の分だけ肉厚になっているので、モータケースにおいてステータに当接する部分が補強されている。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、第2ケースの軸方向に見て、第1ケースと反対側の外表面には、回転軸を中心に遊星歯車を取り付けるための歯車支軸が設けられていて、直流モータは、電動アシスト自転車用のモータであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係るハブユニット1を備える電動アシスト自転車2の左側面図である。
【図2】図2は、ハブユニット1の正断面図である。
【図3】図3(a)は、モータ11の右側面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】図4は、モータ11の正面図である。
【図5】図5は、モータ11の斜視図である。
【図6】図6は、図5とは違う角度から見たモータ11の斜視図である。
【図7】図7は、第2ケース31を取り外した状態におけるモータ11の正面図である。
【図8】図8は、第2ケース31を取り外した状態におけるモータ11の右側面図である。
【図9】図9は、第2ケース31を取り外した状態におけるモータ11の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るハブユニット1を備える電動アシスト自転車2の左側面図である。
図1を参照して、ハブユニット1は、電動アシスト自転車2の前フォーク3の先端に取り付けられており、前車輪4のリム5とハブユニット1とがスポーク6で繋がれている。電動アシスト自転車2では、シートポスト7と後車輪8との間にバッテリー9が搭載されている。電動アシスト自転車2において、ペダル10の踏込み力が作用する位置には、センサー(図示せず)が設けられており、ペダル10の負荷が一定値に達したことをセンサーが検知すると、バッテリー9からハブユニット1のモータ11(後述する図2参照)に通電されるようになっている。
【0020】
図2は、ハブユニット1の正断面図である。図3(a)は、モータ11の右側面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A矢視断面図である。
図2を参照して、ハブユニット1は、モータ11と、モータ11を内部に収容して、モータ11が駆動されることによって回転駆動されるハブ12と、モータ11を電動アシスト自転車2の前フォーク3に固定するための1対の固定用支持軸13とを主に備えている。
【0021】
まず、モータ11について説明する。モータ11の説明に際し、図3も併せて参照する。
モータ11は、ブラシレスの直流モータであり、ステータ14と、ロータ15と、モータケース16とを有している。
ステータ14は、ヨーク17と、ヨーク17に巻回される巻線18とを含んでいる。
【0022】
ヨーク17は、図2の姿勢を基準として、横方向に延びる中心軸を有する金属製の略円環状であり、横方向に所定の厚みを有している。ヨーク17は、一体物として形成されても良いし、同じ円環状をなす薄い金属板を所定枚数積層することで形成されても良い。ヨーク17の内周面には、インシュレーター25が設けられ、さらに、ヨーク17の円中心側へ略T字状に突出するティース19が、ヨーク17の内周面の周方向に等間隔を隔てて複数設けられている(後述する図8および図9参照)。各ティース19には、巻線18が巻回されて巻き付けられている(図8および図9参照)。巻線18が巻回された状態にあるヨーク17がステータ14とされる。
【0023】
また、ステータ14の外周面において、周方向で等間隔を隔てた3箇所には、円弧状に膨出する膨出部20が一体的に形成されている(後述する図5および図6参照)。つまり、ステータ14は、その周面が径方向に外方へ膨らんだ複数(ここでは、3つ)の膨出部20を有している。各膨出部20において、ステータ14の径方向における外側寄りの位置には、ステータ14の中心軸の延びる方向(軸方向)に平行に延びて膨出部20を貫通する細長い固定用ねじ孔24が形成されている(図2参照)。
【0024】
ステータ14内(ヨーク17の中空部分)には、ロータ15が、ステータ14と同心で回転可能な状態で配置されている。換言すれば、ステータ14がロータ15の周囲を囲むように配置されている。ロータ15は、金属製の円筒体21と、円筒体21の円中心に挿通された回転軸22とを一体的に備えている(後述する図9も参照)。回転軸22は、ステータ14(ヨーク17)の軸方向に沿って延びており、ステータ14の軸方向と回転軸22の軸方向とは同じである。円筒体21の外周部には、回転軸22と平行に延びる複数の永久磁石23が、円筒体21の外周面の周方向においてS極とN極とを交互にして等間隔で取り付けられている(後述する図8参照)。
【0025】
図4は、モータ11の正面図である。図5および図6は、別の角度から見たモータ11の斜視図である。図7は、第2ケース31を取り外した状態におけるモータ11の正面図である。図8は、第2ケース31を取り外した状態におけるモータ11の右側面図である。図9は、第2ケース31を取り外した状態におけるモータ11の斜視図である。
モータケース16は、ロータ15を収容したステータ14を収容および保持するものであり、ステータ14より一回り大きい中空円筒状をなしている。モータケース16は、図4の姿勢を基準として、左側に配置される第1ケース30と、右側に配置される第2ケース31とを分割可能に備えている。ここで、図4における左右方向とは、ロータ15の回転軸22(ロータ回転軸)の軸方向と同じである。つまり、モータケース16は、この軸方向において第1ケース30および第2ケース31に分割されている。
【0026】
第1ケース30は、図7の姿勢を基準として、右側面が開放された中空円筒状であり、その左端部は、一段縮径されていて縮径部32とされる。縮径部32の円中心位置には、縮径部32を軸方向に貫通する貫通穴33が形成されている(図3(b)参照)。第1ケース30の中心軸が延びる方向(軸方向)と、前述したロータ15の回転軸22の軸方向とは、同じである。
【0027】
第1ケース30において、右側面の開放された部分を区画する開放側端縁34は、第2ケース31に対する第1ケース30の分割端縁をなしている。開放側端縁34は、第1ケース30の軸方向に直交する方向(第1ケース30の径方向)に沿って平坦であり、軸方向から見て円形状をなしている(図8参照)。開放側端縁34において、周方向に略等間隔を隔てた3箇所には、縮径部32側へ窪む切欠き部35が形成されている。つまり、第1ケース30には、周方向に見て略等間隔の角度位置に、開放側端縁34から軸方向に切り欠かれた切欠き部35が形成されている。ここで、開放側端縁34において切欠き部35が形成されていない部分は、突合せ部34Aとされる。
【0028】
各切欠き部35は、第1ケース30の径方向外側から見て、縮径部32側へ向かって幅狭となる略等脚台形状であり、切欠き部35の四隅の角は丸められている。各切欠き部35は、縮径部32側へ窪みつつ、第1ケース30の周壁を肉厚方向に貫通している。また、第1ケース30の周壁の内周面における切欠き部35の近傍には、第1ケース30の径方向内側へ少し突出する突出部46が形成されている(図8参照)。第1ケース30の周壁は、突出部46において肉厚になっている。
【0029】
また、図5および図6を参照して、第1ケース30において縮径部32より右側の部分と縮径部32とをつなぐ環状の平坦部分26には、この部分を厚さ方向に貫通する貫通穴27が、形成されている。貫通穴27は、いずれか1つの切欠き部35の近傍位置にまとまった状態で3つ形成されている。
また、平坦部分26の内側面(開放側端縁34側に臨む面)の周縁部において、各切欠き部35に一致する位置には、第1ケース30の軸方向に沿って縮径部32側へ延びるねじ孔29が形成されている(図2および図3(b)参照)。
【0030】
第2ケース31は、図4の姿勢を基準として、左側面が開放されて右側面が塞がれた中空円筒状である。第1ケース30の外径と第2ケース31の外径とはほとんど同じである。第2ケース31の中心軸が延びる方向(軸方向)と、前述したロータ15の回転軸22の軸方向とは、同じである。
第2ケース31において塞がれた右側面を区画する円板状の閉塞部分36において、その円中心位置には、閉塞部分36を軸方向に貫通する貫通穴37が形成されている(図3(b)参照)。第2ケース31において、左側面の開放された部分を区画する開放側端縁38は、第1ケース30に対する第2ケース31の分割端縁をなしている。開放側端縁38は、軸方向に直交する方向(第2ケース31の径方向)に沿って平坦であり、軸方向から見て、前述した第1ケース30の開放側端縁34と同じ直径を有する円形状をなしている。開放側端縁38において、周方向に略等間隔を隔てた3箇所には、閉塞部分36側へ窪む切欠き部39が形成されている。つまり、第2ケース31には、周方向に見て略等間隔の角度位置に、開放側端縁38から軸方向に切り欠かれた切欠き部39が形成されている。ここで、開放側端縁38において切欠き部39が形成されていない部分は、突合せ部38Aとされる。
【0031】
各切欠き部39は、第2ケース31の径方向外側から見て、閉塞部分36側へ向かって幅狭となる略等脚台形状であり、第1ケース30の切欠き部35とほぼ同じ大きさを有している。各切欠き部39は、閉塞部分36側へ窪みつつ、第2ケース31の周壁を肉厚方向に貫通している。また、閉塞部分36の外側周縁部には、閉塞部分36を厚さ方向に貫通する貫通穴40が、周方向に等間隔を隔てて3つ形成されている(図3(b)参照)。
【0032】
モータケース16でステータ14を保持する場合、図9に示すように、ロータ15を収容したステータ14を、第1ケース30の開放された部分(開放側端縁34に囲まれた部分)から第1ケース30内に挿入する。この際、ステータ14の外周面の各膨出部20が、第1ケース30の外周面において周方向で同じ位置にある切欠き部35に嵌るので、周方向における第1ケース30とステータ14との位置合わせが容易である。
【0033】
そして、挿入が完了すると、開放側端縁34(突合せ部34A)は、軸方向において、ステータ14の外周面の略中央位置にあり、ステータ14の一部が第1ケース30からはみ出ている(図7も参照)。また、第1ケース30の周壁の内周面における各切欠き部35の近傍の突出部46がステータ14の外周面に当接しており、これによって、径方向において、ステータ14が第1ケース30内で位置決めされている(図8参照)。また、突出部46は、前述したように肉厚になっているので、第1ケース30では、ステータ14に当接する部分(つまり、突出部46)において補強されている。
【0034】
また、このとき、図3(b)を参照して、ステータ14内のロータ15の回転軸22の一端部(図3(b)では左端部)22Aが、ベアリング44が外嵌された状態で、第1ケース30の縮径部32の貫通穴33に対して、開放側端縁34側から嵌め込まれている。
次いで、ステータ14の各膨出部20の固定用ねじ孔24に対してねじ47を開放側端縁34側から挿通し、ねじ47の先端47Aを第1ケース30の対応するねじ孔29に螺合する(図2および3(b)参照)。これにより、ステータ14が第1ケース30に固定される。
【0035】
次いで、図5および図6に示すように、ステータ14において第1ケース30からはみ出ている部分(図7および図9参照)を覆うように、第2ケース31が第1ケース30に対して嵌め合わされる。この際、ステータ14の外周面の各膨出部20が、第2ケース31の外周面において周方向で同じ位置にある切欠き部39に嵌るので、周方向における第2ケース31とステータ14との位置合わせが容易である。
【0036】
嵌め合わせが完了すると、第1ケース30の開放側端縁34の突合せ部34Aと、第2ケース31の開放側端縁38の突合せ部38Aとが、周方向における全域に亘って当接する。つまり、第1ケース30と第2ケース31とは、開放側端縁34(突合せ部34A)および開放側端縁38(突合せ部38A)において突き合わされた状態で組み合わされ、これにより、モータケース16が完成する。ここで、第2ケース31の周壁の内周面における各切欠き部39の近傍には、第1ケース30の突出部46(図8参照)と同様の突出部(図示せず)が形成されていて、この突出部が、ステータ14の外周面に当接している。これによって、径方向において、ステータ14が第2ケース31内で位置決めされている(図2および図3(b)参照)。
【0037】
このとき、第1ケース30の開放側端縁34(突合せ部34A)と、第2ケース31の開放側端縁38(突合せ部38A)とが、当接した状態で、ステータ14の周囲を囲むように延びている。また、第1ケース30の各切欠き部35が、第2ケース31において周方向で同じ位置にある切欠き部39と連続している。連続している切欠き部35および切欠き部39は、まとまった状態で、略矩形状の窓43を形成している。組み合わされた第1ケース30および第2ケース31、つまり、完成したモータケース16の周面には、切欠き部35,39によって、周方向に見て略等間隔に3つの窓43が設けられている。なお、窓43の数は、適宜設定される。
【0038】
窓43は、モータケース16の内外を連通させており、各窓43では、ステータ14の外周面において周方向で同じ位置にある膨出部20が、窓43を介して、モータケース16の内周面16Aより径方向外方へ膨らんでいて(図3(b)参照)、モータケース16の径方向外側へ露出されている。ここで、ステータ14は、複数の窓43に対応する位置に複数の膨出部20を有していることがわかる。
【0039】
また、このとき、モータケース16の各窓43付近の内周面では、前述した第1ケース30の突出部46(図8参照)と、第2ケース31の突出部(図示せず)とが、つながった状態で、窓43の周囲に位置していて、モータケース16の内側へ突出してステータ14に対して径方向外側から接触している(図8および図9参照)。これにより、モータケース16内で、ステータ14を径方向において位置決めすることができる。ここで、モータケース16において突出部46および第2ケース31の突出部(図示せず)が設けられた部分は、これらの突出部の分だけ肉厚になっているので、モータケース16においてステータ14に当接する部分が補強されている(図8参照)。
【0040】
また、このとき、図3(b)を参照して、ロータ15の回転軸22の他端部(図3(b)では右端部)22Bが、ベアリング42が外嵌された状態で、第2ケース31の貫通穴37に対して、開放側端縁38側から嵌め込まれている。図3(b)の姿勢を基準として、他端部22Bにおいてベアリング42よりも右側の部分は、第2ケース31の閉塞部分36から右外側へはみ出ている。
【0041】
また、このとき、第1ケース30の平坦部分26に形成された貫通穴27から、ステータ14に取り付けられた端子28が露出されている(図6も参照)。この貫通穴27に配線(図示せず)を通して端子28に接続することができる。
そして、閉塞部分36の各貫通穴40に対して外側(図3(b)では右側)からねじ41を挿通して、第1ケース30に組み付けると、第1ケース30と第2ケース31とは、開放側端縁34(突合せ部34A)および開放側端縁38(突合せ部38A)において突き合わされた状態で一体化され、モータケース16が完成した状態が維持される。ここで、第1ケース30の開放側端縁34の突合せ部34Aと第2ケース31の開放側端縁38の突合せ部38Aとが突き合わされていることから、完成したモータケース16では、モータケース16の分割端縁(開放側端縁34,38)における強度が突合せ部34A,38Aによって維持されている。また、突合せ部34A,38Aにおいて第1ケース30と第2ケース31とを当接させることで完成されたモータケース16では、第1ケース30と第2ケース31との相対位置が安定しているので、ステータ14を保持した状態でも、寸法(特に、軸方向寸法)がばらつくことはない。
【0042】
この状態において、ロータ15の回転軸22では、一端部22Aが第1ケース30の貫通穴33においてベアリング44によって支持され、他端部22Bが第2ケース31の貫通穴37においてベアリング42によって支持されていることから、ロータ15は、ステータ14に収容された状態において、モータケース16によって回転自在に支持されている。
【0043】
また、前述した1対の固定用支持軸13のうちの一方の固定用支持軸13Aが、第1ケース30の縮径部32の貫通穴33に対して、内側(図3(b)では右側)から挿通され、第1ケース30に対して相対回転不能に固定されている。この状態で、この固定用支持軸13Aは、貫通穴33に対して開放側端縁34側(図3(b)では右側)から挿通されたロータ15の回転軸22の一端部22Aには接触していない。
【0044】
図2を参照して、第2ケース31の外側(図2では右側)には、ロータ15の回転を減速してハブ12に伝達する減速機構が配備される。この減速機構の一例として、遊星歯車減速機構50が用いられる。
遊星歯車減速機構50は、1つの太陽歯車51と、3つの遊星歯車52と、これらの遊星歯車52を支持する遊星歯車支持枠53とを含んでいる。
【0045】
ここで、前述したように、図2の姿勢を基準として、ロータ15の回転軸22の他端部22Bにおいてベアリング42よりも右側の部分は、第2ケース31の閉塞部分36から右外側へはみ出ており、この部分に、太陽歯車51が設けられている。
遊星歯車支持枠53には、周方向に等間隔に配置されて第2ケース31の閉塞部分36に向けて突出する3本の筒状脚部54が設けられている。各筒状脚部54を第2ケース31の閉塞部分36に当てて、各筒状脚部54を貫通したボルト57を閉塞部分36に組み付けることよって、遊星歯車支持枠53は、第2ケース31に固定されている。
【0046】
閉塞部分36の外表面(第2ケース31の軸方向に見て、第1ケース30と反対側の外表面であり、図2では右側面)には、閉塞部分36(第2ケース31)の周方向に等間隔に配置されて遊星歯車支持枠53側へ突出する3本の歯車支軸55が設けられている(図5および図6も参照)。各歯車支軸55が、1つの遊星歯車52を回転可能に支持している。詳しくは、3本の歯車支軸55には、ロータ15の回転軸22が中心になるように、遊星歯車52が取り付けられている。
【0047】
遊星歯車52は、第2ケース31側の大歯車52Aと、その反対側の小歯車52Bとを一体的に備えている。大歯車52Aと小歯車52Bとは同軸上に配置されている。遊星歯車52の大歯車52Aは、ロータ15の回転軸22の他端部22Bの太陽歯車51に噛み合っている。各遊星歯車52の小歯車52Bは、後述するハブ12の蓋板61のリング体66の内周面に形成された内歯66Aに噛合している。
【0048】
遊星歯車支持枠53の中央部内面には、ボス56が形成されている。前述した1対の固定用支持軸13のうちの他方の固定用支持軸13Bが、ボス56の中心を貫通して外側(図2では右側)へ突出した状態で、遊星歯車支持枠53(換言すれば、遊星歯車支持枠53に固定された第2ケース31)に対して相対回転不能に固定されている。
ハブ12は、ハブ本体60と、蓋板61とを含んでいる。
【0049】
ハブ本体60は、図2における左側に底60Aを有し、その反対側が開口した略カップ状であり、蓋板61は、ハブ本体60の開口を図2における右側から塞ぐ円盤形状である。ハブ本体60の底60Aの中央位置には、底60Aを貫通する貫通穴62が形成され、蓋板61の中央位置には、蓋板61を貫通する貫通穴63が形成されている。
ハブ本体60は、モータケース16および遊星歯車減速機構50に被さり、底60Aにおいて貫通穴62を区画する縁とモータケース16の第1ケース30の縮径部32との間には、ベアリング64が介装されている。
【0050】
蓋板61は、遊星歯車減速機構50の遊星歯車支持枠53を隠す様にしてハブ本体60の開口に被さって、複数本のボルト65によってハブ本体60に固定されている。蓋板61の内面(図2では左側面)には、固定用支持軸13Bと同心をなす環状のリング体66がネジ止め固定され、リング体66の内周面には、遊星歯車52の小歯車52Bに噛み合う内歯66Aが形成されている。
【0051】
遊星歯車支持枠53に固定された固定用支持軸13Bは、蓋板61の貫通穴63を貫通して外側(図2では右側)へはみ出ている。蓋板61において貫通穴63を区画する縁と固定用支持軸13Bとの間には、ベアリング67が介装されている。
そして、ハブ本体60の外周面において、図2における横方向両端部には、ハブ本体60を一周するようにハブ本体60の径方向外側へ突出する周壁68が形成され、各周壁68には、複数のスポーク取付け孔69が、周壁68の周方向において、規則的に配置されるように形成されている。
【0052】
図2に示すようにハブユニット1が完成した状態において、ロータ15の回転軸22、モータケース16の第1ケース30に固定された固定用支持軸13A、ハブ12の蓋板61を貫通して第2ケース31に固定された固定用支持軸13Bは、一直線上に揃っている。この状態で、回転軸22は、固定用支持軸13Aおよび固定用支持軸13Bのいずれにも接触していない。
【0053】
ハブユニット1では、固定用支持軸13Aおよび固定用支持軸13Bが、電動アシスト自転車2の前フォーク3(図1参照)にネジ止め固定される。この状態で、図2において、ロータ15を除く右下がり斜線部分が、固定用支持軸13とともに動かない固定部分であり、左下がり斜線部分が、固定用支持軸13を中心として回転する回転部分である。
詳しくは、電動アシスト自転車2のペダル10(図1参照)の踏込みに一定値以上の負荷が作用すれば、バッテリー9(図1参照)からステータ14の巻線18に通電され、ロータ15が回転する。ロータ15の回転によって、回転軸22の他端部22Bの太陽歯車51も回転して、各遊星歯車52が定位置で回転する。遊星歯車52の回転は、蓋板61の内面のリング体66の内歯66Aを介して、ハブ12に減速して伝達され、これにより、ハブ12および前車輪4(図1参照)が回転駆動される。
【0054】
つまり、ロータ15の電動回転によって、ペダル10の踏込み力を軽くして電動アシスト自転車2を走行させることができる(図1参照)。
ここで、巻線18への通電によって巻線18が発熱し、ステータ14は熱をもつ。しかし、ステータ14が熱をもっても、ステータ14を保持するモータケース16の各窓43から、ステータ14の膨出部20が、モータケース16の外部へ露出されているので(図2〜図6参照)、各窓43からモータケース16外に直接に放熱できるし、モータケース16外の空気を窓43から取り込んで、各膨出部20においてステータ14を冷却することができる。特に、複数の膨出部20は、窓43を介してモータケース16の内周面16Aより外方へ膨らんでいることから(図3(b)参照)、膨出部20がモータケース16の外の空気に晒されやすくなるので、膨出部20においてステータ14を効果的に冷却することができる。これにより、ステータ14の放熱性が向上するので、モータ11の出力向上および高効率化を図ることができる。
【0055】
また、ハブ12内において、各窓43を介してモータケース16内外で循環する空気の流れが発生する。さらに、モータケース16の第1ケース30における平坦部分26に形成された貫通穴27からモータケース16内に流入して、貫通穴27の近傍の窓43から流出する空気の流れが発生する(図5および図6参照)。これらの空気の流れによって、モータケース16内のステータ14を冷却することができる。
【0056】
また、各窓43に膨出部20がはみ出る分だけ、ステータ14の外径を大きくできる。これにより、スロット長さを長く取れるので、その分だけ、ステータ14のティース19に多くの巻線18(または、太い巻線18)を巻くことができるとともに、ステータ14内のロータ15の外径も大きくすることができる。これにより、モータ11の出力向上および高効率化を図ることができる。
【0057】
さらに、各窓43において膨出部20がはみ出ていて、前述したように、固定用ねじ孔24が、モータケース16の内周面16Aより外方へ膨らんでいる膨出部20における外側寄りの位置に形成されている。これによって、膨出部20の固定用ねじ孔24を、ステータ14の内周側の巻線18から極力離して配置できるので、固定用ねじ孔24が、ステータ14の巻線18周辺で生じる磁束の流れ(ステータ14の磁路)から遠ざけられ、これにより、固定用ねじ孔24が磁路を妨げることを防止できる。これによっても、モータ11の出力向上および高効率化を図ることができる。
【0058】
また、モータケース16に窓43を設けた分だけ、モータケース16が小さく、軽くなるので、モータ11全体の小型化を図ることができる。ここで、窓43に配置されるステータ14の膨出部20を小さくすれば、モータ11全体の小型化を一層図ることができる。
また、モータケース16は、第1ケース30と第2ケース31とを開放側端縁34および開放側端縁38において突き合わせることで形成されていることから、モータケース16に収容されたステータ14のヨーク17において厚みの大小が部分的に生じていても、モータケース16の寸法(軸方向寸法)の精度が、ヨーク17の厚みの誤差によって狂うことはない。よって、第1ケース30と第2ケース31との平行度に狂いが生じることもないので、第1ケース30側のベアリング44と第2ケース側のベアリング42との平行度を高めて、ベアリング42,44に支持されたロータ15を円滑に回転させることができる。
【0059】
以上の結果、突合せ部34A,38Aにおいて第1ケース30と第2ケース31とを当接させることで完成されたモータケース16でステータ14を保持し、ステータ14の各膨出部20をモータケース16の窓43から露出させることで、ステータ14の過熱を防止しつつ、寸法のばらつきを抑えることができる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0060】
たとえば、本発明のモータ11は、電動アシスト自転車2の他に、電動車椅子等、電動モータで回転される車輪を備えた乗物のハブに適用できる。
また、前述した実施形態では、ハブ12の両端から別個の固定用支持軸13A,13Bを突出させてハブユニット1を固定用支持軸13A,13Bによって両持ちで支持しているが、ハブユニット1を片持ちで支持してもよく、その場合には、一方の固定用支持軸13を省略すればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ハブユニット
2 電動アシスト自転車
11 モータ
12 ハブ
14 ステータ
15 ロータ
16 モータケース
16A 内周面
20 膨出部
22 回転軸
24 固定用ねじ孔
29 ねじ孔
30 第1ケース
31 第2ケース
34 開放側端縁
34A 突合せ部
35 切欠き部
38 開放側端縁
38A 突合せ部
39 切欠き部
43 窓
46 突出部
47 ねじ
47A 先端
50 遊星歯車減速機構
52 遊星歯車
55 歯車支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、前記ロータの周囲を囲むように配置されるステータと、前記ステータを収容し、前記ステータを保持するためのモータケースとを有し、
前記モータケースは、前記ロータ回転軸の軸方向において、第1ケースおよび第2ケースに分割されており、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの分割端縁は、前記ステータの周囲を囲むように延びており、
前記第1ケースおよび前記第2ケースには、それぞれ、周方向に見て略等間隔の角度位置に、前記分割端縁から前記軸方向に切り欠かれた切欠き部が形成されており、前記切欠き部が形成されていない前記分割端縁は、前記第1ケースおよび前記第2ケースが互いに当接する突合せ部を形成しており、前記第1ケースの切欠き部および前記第2ケースの切欠き部によって、前記モータケース周面には、周方向に見て略等間隔に複数の窓が形成されており、
前記ステータは、前記複数の窓に対応する位置に、前記ステータ周面が径方向に外方へ膨らんだ複数の膨出部を有し、
前記膨出部には、前記ステータを前記第1ケースに固定するための固定用ねじ孔が、前記軸方向に平行に形成されていて、
前記第1ケースには、前記固定用ねじ孔に挿通されたねじの先端を螺合するためのねじ孔が設けられていることを特徴とする、直流モータ。
【請求項2】
前記複数の膨出部は、前記窓を介して前記モータケースの内周面より外方へ膨らんでおり、
前記固定用ねじ孔は、前記膨出部における外側寄りの位置に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の直流モータ。
【請求項3】
前記モータケースにおいて前記窓の周囲に設けられ、前記モータケースの内側へ突出する突出部を有することを特徴とする、請求項1または2記載の直流モータ。
【請求項4】
前記第2ケースの軸方向に見て、前記第1ケースと反対側の外表面には、回転軸を中心に遊星歯車を取り付けるための歯車支軸が設けられており、前記直流モータは、電動アシスト自転車用のモータであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の直流モータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の直流モータと、
前記直流モータを収容し、前記直流モータが駆動されることによって回転駆動されるハブと、
前記ロータの回転を減速して前記ハブに伝達する減速機構とを有することを特徴とする、ハブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−34474(P2012−34474A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170961(P2010−170961)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】