説明

直流式バー形除電電極構造

【課題】プラス・マイナス両方の沿面放電の干渉を防止して、防爆型構造の製品とすることが可能な直流式バー形除電電極構造を提供する。
【解決手段】複数本のプラス側放電針7aと複数本のマイナス側放電針7bが、プラス・マイナス別々にそれぞれの電極基板6a・6bに突設され、これらプラス側とマイナス側の電極基板6a・6bが、絶縁性ホルダ1の中間仕切壁1cで仕切られた2つの長溝4a・4b内にプラス・マイナス分けて保持されている。中間仕切壁1cの高さは、プラス側放電針7aおよび前記マイナス側放電針7bの尖端の高さよりも低い、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラス・マイナスそれぞれ複数本の放電針が溝形の絶縁性ホルダ内に保持され、複数本のプラス側放電針からの放電によりプラスイオンを生成すると同時に、複数本のマイナス側放電針からの放電によりマイナスイオンを生成する直流式バー形除電電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、このような除電電極構造として、特許文献1に開示されたものを既に提供している。
この従来構造では、断面U字形の絶縁ホルダ内において、細長いプリント基板を樹脂にて埋設し、このプリント基板に所定の間隔でプラス・マイナス交互に一列に植設された複数本のプラス放電針と複数本のマイナス放電針とを、絶縁ホルダ内において樹脂の表面より突出させ、これら放電針の配列と平行にして絶縁ホルダの両側に接地電極を固定している。これら両側の接地電極をパイプ状として、それぞれに、多数のエアー噴射孔をプラス・マイナスの放電針の配列方向に所定の間隔で設けることにより、両側の接地電極の多数のエアー噴射孔から、プラス・マイナスの放電針の指向方向と同じ方向にエアーを噴射できるようになっている。
【0003】
しかし、この従来構造では、プラス・マイナスの放電針が、絶縁ホルダ内に充填された樹脂表面上において、絶縁ホルダの中心線に沿って交互に一列に配列しているため、プラス・マイナス両方の沿面放電が樹脂表面上で干渉し、防爆型構造の製品とするには問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−35686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記の従来構造を改良し、プラス・マイナス両方の沿面放電の干渉を防止して、防爆型構造の製品とすることが可能な直流式バー形除電電極構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による除電電極構造では、本体である絶縁性ホルダが、平行な両側壁とこれらと平行なその中間の中間仕切壁とで断面E形をなしていて、中間仕切壁にて仕切られた断面凹形の2つの長溝を平行に形成している。複数本のプラス側放電針を長手方向に間隔をおいて直線上に突設したプラス側電極基板は、2つの長溝のうちの一方の長溝内において絶縁性ホルダに保持されているのに対し、複数本のマイナス側放電針を長手方向に間隔をおいて直線上に突設したマイナス側電極基板は、他方の長溝内において絶縁性ホルダに保持されている。そして、複数本のプラス側放電針と複数本のマイナス側放電針とは、長溝の長手方向に交互にずれた千鳥状配列になっている。
【0007】
その実施形態である請求項2に係る発明では、2つの長溝内のそれぞれに、多数のエアー噴射孔を長手方向に間隔をおいて設けたエアー噴射管が配設されている。
【0008】
同じく請求項3に係る発明では、プラス側放電針の一本一本がプラス側電極基板上に固定されたソケットに着脱可能に保持され、同様に、マイナス側放電針の一本一本がマイナス側電極基板上に固定されたソケットに着脱可能に保持されている。
請求項4に係る発明では、さらに、プラス側及びマイナス側のそれぞれにおいて、ソケットの一部が電極基板と共に長溝内に充填した樹脂に埋設されている。
請求項5に係る発明では、複数本のプラス側放電針の尖端の高さ、及び複数本のマイナス側放電針の尖端の高さが、絶縁性ホルダの両側壁の先端縁の高さよりも低くなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複数本のプラス側放電針と複数本のマイナス側放電針が、プラス・マイナス別々にそれぞれの電極基板に突設され、これらプラス側とマイナス側の電極基板が、絶縁性ホルダの中間仕切壁で仕切られた2つの長溝内にプラス・マイナス分けて保持されているので、プラス側放電針とマイナス側放電針との間に、絶縁性ホルダの中間仕切壁が介在することになるとともに、複数本のプラス側放電針と複数本のマイナス側放電針とが、長溝の長手方向に交互にずれた千鳥状配列になっているので、プラス・マイナス両方の沿面放電の干渉を防止して、防爆型構造の製品とすることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、2つの長溝内のそれぞれに配設したエアー噴射管の多数のエアー噴射孔から、プラス側とマイナス側のそれぞれにおいて、エアー噴射できるので、プラス・マイナスそれぞれのイオンを同じ条件でエアーと共に長溝の外方へ吹き出すことができ、エアーによっても沿面放電を防止しながら、プラス・マイナスのイオンがバランスした高性能の除電が行える。
【0011】
請求項3に係る発明によると、プラス側とマイナス側のそれぞれにおいて、放電針の一本一本が電極基板上に固定されたソケットに着脱可能に保持されているので、電極基板への放電針の保持及び放電針の交換を容易に行える。
請求項4に係る発明によると、プラス側及びマイナス側のそれぞれにおいて、ソケットの一部が電極基板と共に長溝内に充填した樹脂に埋設されているので、ソケットによる放電針の交換を可能としながら、防爆性を高めることができるとともに、ソケットの一部分は樹脂表面から露出するため、放電針の交換は可能である。
請求項5に係る発明によると、複数本のプラス側放電針の尖端の高さ、及び複数本のマイナス側放電針の尖端の高さが、絶縁性ホルダの両側壁の先端縁の高さよりも低いので、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の全体平面図である。
【図2】その全体側面図である。
【図3】切欠した斜視図である。
【図4】断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1に本実施例の全体平面図、図2に全体側面図、図3に切欠斜視図、図4に断面図を示す。
本実施例は全体としてバー形で、本体である横長の絶縁性ホルダ1の一端に電源・エアー供給ブロック2、他端に配管連結ブロック3を設けている。
【0015】
絶縁性ホルダ1は例えば繊維強化プラスチックで一体成型され、平行な両側壁1a・1bとこれらと平行なその中間の中間仕切壁1cとで断面E形をなし、中間仕切壁1cにて仕切られた断面凹形の2つの長溝4a・4bを平行に形成している。本例では、中間仕切壁1cは両側壁1a・1bよりも高さを低くしてあるが、同じ高さとしてもよい。
【0016】
一方の長溝4a内にはプラス側電極ユニット5a、他方の長溝4b内にはマイナス側電極ユニット5bが、次のようにプラス・マイナス別々に設置されている。
【0017】
プラス側電極ユニット5aは、樹脂の長板であるプラス側電極基板6a上に、複数本のプラス側放電針7aを長手方向に一定間隔(以下、この間隔を「針間隔P」と言う。)をおいて一直線上に突設し、また、マイナス側電極ユニット5bは、同様に、マイナス側電極基板6b上に、複数本のマイナス側放電針7bを長手方向に同じ針間隔Pをおいて一直線上に突設したものである。
【0018】
プラス側及びマイナス側のいずれにおいても、放電針7a・7bの一本一本はボルト状コア8に植設され、このコア8を電極基板6a・6b上に位置決め固定されたソケット9にねじ込むことにより、電極基板6a・6bに対し一本ずつ着脱可能となっている。個々のソケット9は、その下面中央に突設したピン9aを、電極基板6a・6bに設けられた孔10に嵌合させてあり、放電針7a・7bの一本一本は、電極基板6a・6b上にこのようにして保持されていることにより、電極基板6a・6bの表面に形成された高電圧印加用配線パターン(図示せず)と電気接続されている。その際、放電針7a・7bの一本一本は、電極基板6a・6b上に実装されている抵抗素子(図示せず)を介して高電圧印加用配線パターンに電気接続される。
【0019】
プラス側電極基板6aは、長溝4aの底面との間に所定の間隔を持たせるために、その複数箇所にU形のスペーサ片11を介在させて長溝4a内に設置され、同様に、マイナス側電極基板6bも、長溝4bの底面との間に所定の間隔を持たせるために、その複数箇所に同じスペーサ片11を介在させて長溝4b内に設置されている。スペーサ片11の両辺には、電極基板6a・6bの両側縁部と嵌合する凹部11aが形成されている。
【0020】
また、長溝4a・4b内には、多数のエアー噴射孔12を針間隔Pより短い間隔で設けたエアー噴射管13a・13bが、そのエアー噴射孔12を上向きにしてそれぞれ配設されている。これらエアー噴射管13a・13bをそれぞれの長溝4a・4b内の所定の高さ位置に安定して設置するため、絶縁性ホルダ1の両側壁1a・1bの内面には、その内面凸部14の下面からエアー噴射管13a・13bの外周面に沿った湾曲形状で窪む凹面15が形成されているとともに、スペーサ片11の片側上面も同様に凹面11bとなっており、エアー噴射管13a・13bは、スペーサ片11の片側を受け台として、それぞれの両側壁1a・1bの凹面15に添わせて設置されている。
【0021】
プラス側とマイナス側の相互においては、複数本のプラス側放電針7aと複数本のマイナス側放電針7bとが、針間隔Pの半分の距離ずつ、長溝4a・4bの長手方向に交互にずれた千鳥状配列になっている。
【0022】
なお、プラス側電極ユニット5aとマイナス側電極ユニット5bとは、実質的には同じ構造であるので、図1に示すように、同じ2つものを一端と他端とが逆向きになるように長溝4a・4b内に設置することにより、互いの放電針7a・7bを上記のような関係にすることができる。
【0023】
プラス側及びマイナス側のそれぞれにおいて、このように電極基板6a・6b及びエアー噴射管13a・13bをそれぞれの長溝4a・4b内に設置した状態で、長溝4a・4bのそれぞれに樹脂16を充填し、電極基板6a・6bの全体とソケット9の上端部を除く部分とエアー噴射管13a・13bの下半部までを樹脂16に埋設してある。
【0024】
従って、充填された樹脂16の上面高さは、中間仕切壁1cの上端縁より低いのは勿論のこと、エアー噴射管13a・13bのエアー噴射孔12よりも低く、エアー噴射管13a・13bの上半部とソケット9の上端部とそれより突出する放電針7a・7bは、樹脂16外に露出するが、放電針7a・7bの尖端の高さは、絶縁性ホルダ1の両側壁1a・1bの先端縁の高さよりも低い。
なお、樹脂16が長溝4a・4b内でスペーサ片11の両側に行き渡るように、スペーサ片11の両辺の下角部はカットされている。
【0025】
図1に示した電源・エアー供給ブロック2の側面には電源コネクタ17が設けられ、この電源コネクタ17は、プラス側電極基板6a表面に形成されたプラス側高電圧印加用配線パターン、及び、マイナス側電極基板6b表面に形成されたマイナス側高電圧印加用配線パターンと、電源・エアー供給ブロック2内で電気接続されている。また、この電源・エアー供給ブロック2の端面には、エアー配管用ジョイント18が設けられ、このジョイント18は、エアー噴射管13a・13bの一端と電源・エアー供給ブロック2内で連通されている。
【0026】
配管連結ブロック3の端面にもエアー配管用ジョイント19が設けられ、このジョイント19は、エアー噴射管13a・13bの他端と配管連結ブロック3内で連通されている。
【0027】
このように構成された本実施例を使用するには、電源コネクタ17に高電圧電源(図示せず)を接続して、プラス側電極基板6a上のプラス側高電圧印加用配線パターンにプラス高電圧、マイナス側電極基板6b上のマイナス側高電圧印加用配線パターンにマイナスの高電圧を印加しながら、エアー配管用ジョイント18に接続したエアー供給源からプラス側及びマイナス側のエアー噴射管13a・13bにエアーを供給する。
【0028】
これにより複数本のプラス側放電針7aにプラス高電圧が一斉に印加されてプラスイオンが生成されると同時に、複数本のマイナス側放電針7bにマイナス高電圧が一斉に印加されてマイナスイオンが生成され、これらプラス・マイナスのイオンが、エアー噴射管13a・13bの多数のエアー噴射孔12から噴射されるエアーと共に長溝4a・4b外へ吹き出される。
【0029】
プラス側放電針7aとマイナス側放電針7bとは上記のように針間隔Pの半分の距離ずつずれているとともに、これらの間には、樹脂16の上面よりも高い中間仕切壁1cが介在しているので、プラス側の沿面放電とマイナス側の沿面放電とは干渉しない。
【0030】
例えば走行するフィルムを除電する場合、プラス側放電針7aとマイナス側放電針7bとがフィルムの走行方向に離れていると、フィルムの下流側では、下流側に配置された放電針によってそれと同じ極性に帯電される傾向となるが、プラス側放電針7aとマイナス側放電針7bとが、上記のようにフィルムの走行方向とは直交する方向へ、針間隔Pの半分の距離ずつ交互にずれていると、上記のような帯電傾向を抑えることができる。
【0031】
本実施例では、その複数を、エアー配管用ジョイント18・19により直列に連結して使用できるようになっている。このようにすると、除電するフィルム等の幅の大小に容易に対応できる。
【符号の説明】
【0032】
1…絶縁性ホルダ、1a・1b…両側壁、1c…中間仕切壁、2…電源・エアー供給ブロック、3…配管連結ブロック、4a・4b…長溝、5a…プラス側電極ユニット、5b…マイナス側電極ユニット、6a…プラス側電極基板、6b…マイナス側電極基板、7a…プラス側放電針、7b…マイナス側放電針、8…コア、9…ソケット、9a…ピン、10…孔、11…スペーサ片、11a…凹部、11b…凹面、12…エアー噴射孔、13a・13b…エアー噴射管、14…内面凸部、15…凹面、16…樹脂、17…電源コネクタ、18・19…エアー配管用ジョイント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラス・マイナスそれぞれ複数本の放電針が溝形の絶縁性ホルダ内に保持され、複数本のプラス側放電針からの放電によりプラスイオンを生成すると同時に、複数本のマイナス側放電針からの放電によりマイナスイオンを生成する直流式バー形除電電極構造において、前記絶縁性ホルダが、平行な両側壁とこれらと平行なその中間の中間仕切壁とで断面E形をなしていて、中間仕切壁にて仕切られた断面凹形の2つの長溝を平行に形成し、複数本のプラス側放電針を長手方向に間隔をおいて直線上に突設したプラス側電極基板が、前記2つの長溝のうちの一方の長溝内において前記絶縁性ホルダに保持され、複数本のマイナス側放電針を長手方向に間隔をおいて直線上に突設したマイナス側電極基板が、他方の長溝内において前記絶縁性ホルダに保持されており、
前記中間仕切壁の高さは、前記プラス側放電針および前記マイナス側放電針の尖端の高さよりも低い
ことを特徴とする直流式バー形除電電極構造。
【請求項2】
2つの長溝内のそれぞれに、多数のエアー噴射孔を長手方向に間隔をおいて設けたエアー噴射管が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の直流式バー形除電電極構造。
【請求項3】
プラス側放電針の一本一本がプラス側電極基板上に固定されたソケットに着脱可能に保持され、マイナス側放電針の一本一本がマイナス側電極基板上に固定されたソケットに着脱可能に保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直流式バー形除電電極構造。
【請求項4】
プラス側及びマイナス側のそれぞれにおいて、ソケットの一部が電極基板と共に長溝内に充填した樹脂に埋設されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の直流式バー形除電電極構造。
【請求項5】
複数本のプラス側放電針の尖端の高さ、及び複数本のマイナス側放電針の尖端の高さが、絶縁性ホルダの両側壁の先端縁の高さよりも低いことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の直流式バー形除電電極構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−204694(P2011−204694A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152650(P2011−152650)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2008−83645(P2008−83645)の分割
【原出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000183738)春日電機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】