説明

直流超電導ケーブルの接続構造

【課題】 冷媒と共に輸送される異物を除去可能な直流超電導ケーブルの接続構造を提供する。
【解決手段】 超電導ケーブルから引き出したケーブルコア10に具える超電導導体11と、超電導導体11に接続される常温側導体引出部(スリーブ12,リード部13,ジョイント部14,ブッシング15)と、これらの接続箇所が収納される終端接続箱20とを具える。終端接続箱20は、冷媒が充填される冷媒槽21と、冷媒槽21の外周を覆うように配置される真空槽22とを具える。冷媒槽21には、箱21内に冷媒を供給する供給路23、箱21から冷媒を排出する排出路24が接続され、これら供給路23,排出路24により冷媒が流通される。供給路23には、ろ過手段1を具え、冷媒と共に輸送される異物fを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流送電に利用される超電導ケーブルの接続構造に関するものである。特に、冷媒と共に輸送される異物を除去可能な超電導ケーブルの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力ケーブルとして、超電導ケーブルが検討されている。超電導ケーブルは、超電導導体を具えるケーブルコアと、このコアを収納する断熱管とを具え、断熱管内に液体窒素などの冷媒を流通し、この冷媒にてコアを冷却して超電導導体を超電導状態に維持する構成である。ケーブルコアは、中心から順にフォーマ、超電導導体、電気絶縁層を具える構成が一般的である。このような超電導ケーブルを用いて電力供給線路を構築する場合、ケーブル同士を接続する中間接続構造の他、低温状態にある超電導ケーブルと常温に配置される常電導ケーブルなどの常温側電力機器とを接続する終端接続構造が構築される。
【0003】
図4は、超電導ケーブルの中間接続構造を示す概略構成図である。中間接続構造は、接続する一方の超電導ケーブル100Aの端部から引き出したケーブルコア101Aと、他方の超電導ケーブル100Bの端部から引き出したケーブルコア101Bと、これらコア101A,101Bの端部が収納される中間接続箱110とを具える。各コア101A,101Bの接続は、端部を段剥ぎして、超電導導体102A,102B及び銅撚り線などで形成されたフォーマ(図示せず)を露出させ、例えば、中間接続スリーブ103にフォーマを挿入してスリーブ103を圧縮し、更に、両超電導導体102A,102Bをスリーブ103に挿入して半田付けすることで行われる。超電導導体102A,102B及びスリーブ103の外周には、補強絶縁層104が設けられる。コア101A,101Bの端部や超電導導体102A,102Bの接続箇所が収納される中間接続箱110は、液体窒素などの冷媒が流通される冷媒槽111と、冷媒槽111の外周に配置される真空槽112とを具える。冷媒槽111における冷媒の流通は、冷媒の貯留や冷却などを行う冷却システム(図示せず)と槽111との間に、槽111に導入される冷媒を輸送する供給路(同)と、槽111内から排出されて冷却システムに戻される冷媒を輸送する排出路(同)とを接続させて、これら供給路、排出路を利用して行う。その他、冷媒槽111に接続される一方の超電導ケーブルから冷媒が導入され、同他方のケーブルに排出されることで、冷媒の流通を行う場合もある。
【0004】
一方、超電導ケーブルの終端接続構造として、例えば、図5に示す構造のものがある(特許文献1参照)。この終端接続構造は、超電導ケーブルの端部から引き出したケーブルコア101と、このコア101の端部に接続される常温側導体引出部と、常温側導体引出部においてコアとの接続側を収納する終端接続箱200とを具える。常温側導体引出部は、コア101の端部を段剥ぎして露出させた超電導導体102に終端接続スリーブ150を介して接続されるリード部151と、リード部151にジョイント部152を介して接続されるブッシング153とを具える。スリーブ150,リード部151,ジョイント部152,後述する導体部153aは、銅などの導電性材料にて形成され、超電導導体102とスリーブ150とは半田付けにて接続される。超電導導体102,スリーブ150,リード部151の外周には、補強絶縁層104a,104bが形成される。ブッシング153は、中心部に、リード部151に接続される導体部153aを有し、導体部153aの外周にFRPなどで形成された固体絶縁層153bを具える。固体絶縁層153bの両端部には、テーパ状に形成したストレスコーン部を具える。
【0005】
そして、超電導導体102,スリーブ150,リード部151の一部(超電導導体102との接続側)は、終端接続箱200に接続される補助接続箱210に収納され、リード部151の他部(ブッシング153との接続側),ジョイント部152,ブッシング153の一部(リード部151との接続側)が終端接続箱200に収納される。終端接続箱200,補助接続箱210は、液体窒素などの冷媒が流通される冷媒槽201,211と、冷媒槽201,211の外周を覆うように配置される真空槽202,212とを具える。これら冷媒槽201,211や真空槽202,212は、ステンレス鋼といった高強度材料にて形成される。ブッシング153において常温側に配置される他部は、終端接続箱200の外側に突設され、絶縁油やSF6ガスなどの絶縁流体が内部に充填される碍管220内に収納される。
【0006】
冷媒槽201,211には、例えば、図5に示すように冷却システム(図示せず)からの冷媒を導入するための供給路203,213と、槽201,211内から排出される冷媒を冷却システムに輸送するための排出路204,214とが接続され、冷却システムにて所定の温度や輸送圧力に制御された冷媒が循環供給される。その他、ある終端接続箱に上記供給路又は排出路のみ具えて、供給路から導入された冷媒をこの終端接続箱からこの終端接続箱に接続される超電導ケーブルに供給し、このケーブルを介して別の終端接続箱や中間接続箱に接続される排出路により冷媒を排出する場合もある。また、冷媒槽201は、接地線205が接続され、槽201の内面を接地電位(低電圧)とすると共に、液体窒素といった絶縁性に優れる冷媒を用いることで、高電圧側のジョイント部152に対して絶縁性を持たせる構成である。
【0007】
一方、ブッシング153の固体絶縁層153bを、ステンレス鋼パイプの外周にFRPと箔電極とを積層してなるいわゆるコンデンサー方式の電界制御構造とし、線路運転時、ブッシング153表面に直流電界が均一に加えられるように電界制御することが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2005-12915号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超電導ケーブルと上述のような接続構造とを利用して線路を構築し、この線路にて直流送電を行う場合、超電導導体の外周や超電導導体に接続されて通電される部分の外周には、直流電界が生じる。そして、直流電界がかかる箇所には、金属を含む粉塵が集積され易く、上記接続構造において直流電界がかかる箇所にこのような粉塵が集積されると、この粉塵が電極の突起として機能し、沿面破壊を起こす恐れがある。
【0010】
上記接続構造を形成する際、超電導導体などの構成部材から出た銀、銅やステンレス鋼などの金属粉、接続に用いた半田粉などが冷媒槽内などに残留されることがある。また、冷却システム内においてその構成部材と冷媒との摺動摩擦により金属性の粉塵が発生することがある。そして、上述のように超電導ケーブル線路では、冷媒を流通させているため、冷媒の輸送に伴って上記金属性の粉塵といった金属性の異物も輸送される。このとき、超電導ケーブルとして、高電位である超電導導体の外周に、接地電位となるシールド層を有する電界遮蔽構造のケーブルコアを具えるケーブルを利用する場合、このケーブル部分では、コアの表面に上記異物が集積しても沿面破壊を起こす可能性はほとんど無い。しかし、接続構造は、上記ケーブル部分と異なり、電界が開放された箇所が存在することがある。このような箇所では、その表面に異物が集積すると沿面破壊を起こすことがある。例えば、終端接続構造では、上記ブッシング表面において冷媒に接触しているブッシング端部のストレスコーン部の表面に異物が集積した場合、この部分において沿面破壊を起こす恐れがある。ブッシングにおいて冷媒槽内に収納された部分のうち、中間の平坦な部分は、接地電位となるシールド層を具えた電界遮蔽構造とすることが多いが、端部のストレスコーン部は、シールド層を設けず、表面を露出させた構成とすることがあり、このような場合、冷媒槽内の冷媒中に電界が開放された状態となる。そのため、ブッシングのストレスコーン部には、金属性の異物が集積し易く、また、この異物により沿面破壊を起こすことがある。
【0011】
一方、中間接続構造では、電界遮蔽構造を有するケーブル部分と同様に補強絶縁層の外周に接地電位となるシールド層を具えて電界遮蔽構造とすることで、接地電位層(シールド層)の表面に異物が集積しても、沿面破壊が生じにくい。しかし、この接地電位層よりも内側に異物が入り込んだ場合、電気的に不安定な状態となる。
【0012】
そこで、本発明の主目的は、直流超電導ケーブルの接続構造において、金属性の粉塵などの異物による不具合を解消するべく、異物を効果的に除去できる接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、超電導ケーブルに具える超電導導体と、この超電導導体との接続対象とが収納され、超電導導体を冷却する冷媒が内部に流通される接続箱とを具える直流超電導ケーブルの接続構造であり、上記接続箱には、箱内に冷媒を供給する供給路と、箱外に冷媒を排出する排出路とが接続されるものとする。そして、本発明では、この供給路から接続箱を経て排出路に至る冷媒流通路において、冷媒により輸送される異物を効果的に除去するべく、ろ過手段を具えることを提案する。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0014】
本発明において接続構造とは、超電導ケーブル同士を接続する中間接続、低温側に配置される超電導ケーブルと常温側に配置される常電導ケーブルなどの常温側機器とを接続する終端接続のいずれでもよい。利用する超電導ケーブルの構成は特に問わない。代表的には、超電導導体を有するケーブルコアと、このコアを収納し、内部に超電導導体を冷却する冷媒が流通される断熱管とを具えるものが挙げられる。ケーブルコアの基本的構成としては、中心から順に、フォーマ、超電導導体、電気絶縁層を有する構成が挙げられる。更に、電気絶縁層の外周に超電導導体と同様に超電導材料からなる外部超電導層、その外周に保護層を具えてもよい。外部超電導層を具える場合、外部超電導層は、接地電位(対地電位)としておく。外部超電導層を具えない場合、対地電位としての接地用シールド層を具えてもよい。超電導ケーブルは、このようなケーブルコアを1心具える単心ケーブルでもよいし、複数心具える多心ケーブルでもよい。複数心のコアを具える多心ケーブルとする場合、複数条のコアを撚り合わせてから断熱管に収納させるとよい。上記ケーブルコアを収納する断熱管は、内管と外管とからなる二重構造で、二重管内を真空引きした構成が挙げられる。更に、両管の間に断熱材を配置してもよい。内管内は、超電導導体や外部超電導層を冷却するための冷媒の流通路として利用される。
【0015】
フォーマは、銅やアルミニウムなどの金属材料にて形成した中実体でも中空体でもよく、例えば、銅線を複数本撚り合わせた構成のものが挙げられる。超電導導体は、例えば、酸化物超電導材料、具体的にはBi2223系超電導材料からなる線材を上記フォーマの外周に単層又は多層に巻回することで形成することが挙げられる。超電導導体を多層とする場合、層間絶縁層を設けてもよい。層間絶縁層は、クラフト紙などの絶縁紙やPPLP(登録商標)などの半合成絶縁紙を巻回して設けることが挙げられる。電気絶縁層は、クラフト紙などの絶縁紙やPPLP(登録商標)などの半合成絶縁紙などといった絶縁材料を超電導導体の外周に巻回して形成するとよい。電気絶縁層の外周に超電導導体とは別に外部超電導層を具える場合、上記超電導導体と同様に超電導材料にて形成するとよい。更に、超電導導体と電気絶縁層との間、電気絶縁層と外部超電導層との間にカーボン紙などにより半導電層を設けてもよい。前者内部半導電層、後者外部半導電層を具えた構成とすると、電気性能の安定に有効である。
【0016】
本発明接続構造は、上記超電導ケーブルの端部において形成される。具体的には、ケーブル端部(ケーブルコア端部)を段剥ぎし、超電導導体の一部を露出させて形成される。この露出された超電導導体に接続される対象は、本発明接続構造を中間接続とする場合、別の超電導ケーブルに具える超電導導体となり、本発明接続構造を終端接続とする場合、一端が常温側に配置される常温側導体引出部となる。
【0017】
本発明接続構造を中間接続とする場合、超電導導体同士は、銅などの導電性材料からなる中間接続スリーブを用いて接続するとよい。中間接続スリーブとしては、例えば、両端部に超電導導体及びフォーマが挿入可能な中空部を有する形状のものが挙げられる。このスリーブを用いる場合、まず、中空部にフォーマを挿入して圧縮し、圧着にてフォーマとスリーブとを接続し、更に、中空部に両ケーブルから引き出した超電導導体をそれぞれ挿入し、半田付けなどにより超電導導体とスリーブとを接続させるとよい。或いは、中間接続スリーブとして、両端部にフォーマを挿入可能な中空部を有する形状のものを用い、中空部にフォーマを挿入して圧着などによりフォーマとスリーブとを接続し、このスリーブの外周に接続用超電導材を縦添えなどして固定し、これら接続用超電導材の両端に、両ケーブルから引き出した各超電導導体をそれぞれ半田付けなどすることで、超電導導体同士を接続させてもよい。これら超電導導体及びスリーブの外周には、クラフト紙や半合成絶縁紙などの絶縁材料により、補強絶縁層を形成する。補強絶縁層の端部は、電界が集中し易いため、中間接続スリーブから遠ざかる側に向かって先細りするテーパ状として電界を制御可能な形状とすることが好ましい。また、このような超電導導体の接続部分は、後述する中間接続箱に固定させる構成としてもよい。例えば、接続部分の外周にエポキシ樹脂などからなる固体絶縁部材を具えておき、中間接続箱にこの固体絶縁部材を固定させる固定部材を取り付けて、固体絶縁部材を固定部材に固定することで、超電導導体の接続部分を中間接続箱に固定させてもよい。この固定部材は、例えば、中間接続箱(冷媒槽)の内周に適合した形状の板状部材にて構成し、中間接続箱内の空間を一方の超電導ケーブル側と、他方の超電導ケーブル側とに分離する区画壁として利用してもよい。上記補強絶縁層の外周には、導電性材料からなるシールド層を設けて電界遮蔽構造としてもよい。シールド層を形成する導電性材料としては、カーボン紙、軟銅線、メタルメッシュテープなどが挙げられる。これら導電性材料を補強絶縁層上に巻回することでシールド層を形成するとよい。このシールド層は、接地電位となるようにする。このような電界遮蔽構造とすることで、補強絶縁層の表面に金属性の異物が集積されても、沿面破壊が生じることがほとんどない。但し、このシールド層の内側に異物が侵入すると、電気的に不安定な状態となる。従って、本発明接続構造では、中間接続構造においてもろ過手段を具えておくことを提案する。
【0018】
本発明接続構造を終端接続とする場合、常温側導体引出部としては、例えば、超電導導体に接続されるリード部と、リード部に接続されるブッシングとを具えるものが挙げられる。リード部は、銅などの導電性材料からなる棒状体が挙げられる。このリード部と超電導導体とは、銅などの導電性材料からなる終端接続スリーブを介して接続するとよい。終端接続スリーブは、一端に超電導導体やフォーマが挿入可能な導体側挿入穴を有し、他端にリード部が挿入可能なリード部側挿入穴を有する形状のものが挙げられる。このスリーブを用いてリード部と超電導導体とを接続するには、例えば、挿入穴にフォーマを挿入して圧着などしてフォーマをスリーブに接続させた後、導体側挿入穴に超電導導体を挿入して半田付けなどしてスリーブと超電導導体とを接続する。一方、リード部側挿入穴にリード部を挿入して圧着することでスリーブとリード部とを接続したり、リード部側挿入穴にマルチコンタクト(商品名)を具えておき、マルチコンタクトを介してスリーブとリード部とを接続する。このようにしてスリーブを介して超電導導体とリード部とを接続することができる。これら超電導導体、スリーブ、リード部の外周には、上記中間接続の場合と同様にクラフト紙やPPLP(登録商標)などの絶縁材料により、補強絶縁層を形成する。補強絶縁層の端部は、電界が集中し易いため、終端接続スリーブから遠ざかる側に向かって先細りするテーパ状として電界を制御可能な形状とすることが好ましい。ブッシングは、中心部に、リード部に接続され、銅などの導電性材料からなる導体部を有し、導体部の外周にFRPなどの絶縁性材料で形成された固体絶縁層を具える構成が挙げられる。固体絶縁層は、ステンレス鋼パイプなどの金属製パイプの外周にFRPなどの絶縁性材料と箔電極とを積層したいわゆるコンデンサー方式の電界制御構造とすることが好適である。また、固体絶縁層の両端部は、電界が集中し易いため、いずれも端部に向かって先細りするテーパ状として電界を制御できる形状とすることが好ましい。このブッシングと上記リード部とは、銅などの導電性材料からなるジョイント部を介して接続するとよい。
【0019】
上記超電導導体やその接続対象は、接続箱に収納する。この接続箱は、超電導導体などを冷却する冷媒が充填される冷媒槽と、この冷媒槽の外周を覆うように配置される真空槽とを具える構成が好適である。このような接続箱は、強度に優れるステンレス鋼などの金属といった高強度材料にて形成することが好ましい。本発明接続構造を中間接続とする場合、接続される超電導導体と、接続に利用される中間接続スリーブとを同一の接続箱に収納するとよい。本発明接続構造を終端接続とする場合、超電導導体と常温側導体引出部とを同一の接続箱に収納してもよいし、超電導導体と常温側導体引出部の一部を収納する接続箱と、常温側導体引出部の他部を収納する接続箱とを分けてもよい。また、常温側導体引出部において常温側は、絶縁油やSF6ガスなどの絶縁流体が内部に充填される碍管に収納させる。この碍管は、真空槽の外側に突設させるとよい。これら接続箱は、高電圧となる超電導導体との接続箇所に対して、低電圧(接地電位)となるように接地線を取り付けておき、接地可能な構成としておくことが好ましい。
【0020】
そして、本発明では、上記接続箱内に冷媒を供給する供給路と、接続箱外に冷媒を排出する排出路とを具え、接続箱内に冷媒が流通される構成とする。超電導ケーブル線路を構築する場合、通常、タンクや冷凍機、ポンプなどを具備した冷却システムを具えておき、この冷却システムにより冷媒の貯留や温度制御、輸送圧力の制御などを行う。従って、上記供給路及び排出路を冷却システムに接続させて、このシステムにより所定の温度、流量などに制御された冷媒を接続箱内に供給し、侵入熱などにより温度が上昇した冷媒を接続箱外に排出してシステムに戻して冷媒の温度などを調整し、再び箱内に供給する、といった循環供給を行ってもよいし、システムにより調整された冷媒を常時接続箱内に供給し、高温となった冷媒を排出する、といった非循環型の供給を行ってもよい。このような供給路、排出路は、冷媒が所定の温度を維持できるように、内管と外管とからなる二重管からなり、二重管内を真空引きした構成とすることが挙げられる。二重管間に断熱材を配置してもよい。また、これらの管は、強度に優れるステンレス鋼などの金属といった高強度材料にて形成することが好ましい。
【0021】
本発明接続構造では、上述した供給路、接続箱(冷媒槽)、排出路が冷媒流通路となり、この冷媒流通路にろ過手段を具える点が最も特徴とするところである。ろ過手段は、冷媒温度領域、例えば、冷媒として液体窒素を用いる場合、65〜77K程度において使用可能であり、冷媒流通時の輸送圧力、例えば、0.5MPa・G程度に耐え得る材料からなるフィルタが好適に利用できる。このようなフィルタとして、例えば、ステンレス鋼からなる網状部材や、この網状部材に焼結体からなるエレメントを具えるものが挙げられる。公知のろ過手段を利用してもよい。
【0022】
ろ過手段としてフィルタを利用する場合、フィルタのメッシュサイズを変化させることで、ろ過能力を変化させることができる。メッシュサイズを大きくし過ぎると、悪影響を及ぼす異物を捕捉できない恐れがあるため、異物の捕捉をより確実に行うためには、メッシュサイズを小さくすることが望まれる。しかし、メッシュサイズを小さくし過ぎると、冷媒輸送時の圧力損失が上昇する。これらの事情を考慮すると、メッシュサイズは、2μm以上300μm以下が好ましく、特に、75μm以上100μm以下が好適である。
【0023】
ろ過手段の形状は、例えば、板状や有底筒形状が挙げられる。後者有底筒形状の場合、筒形状としては、円筒状が挙げられる。また、有底筒形状とする場合、側壁部及び底部の双方を網状として、両部とも冷媒の透過が可能な構成としてもよいが、この場合、両部とも異物により目詰まりを起こし易く、交換や洗浄といったメンテナンスに時間がかかる恐れがある。そこで、有底筒形状のろ過手段を用いる場合、側壁部を網状にして冷媒を透過可能とし、底部を網状にせず異物の滞留部としてもよい。この構成により、側壁部に付着した異物が底部に沈降して溜まり、側壁部の目詰まりを低減する。また、この場合、底部に異物が溜まり易いように冷媒の流れる方向に対して下流側に底部が位置するようにろ過手段を配置することが好ましい。
【0024】
上記ろ過手段は、供給路、排出路、接続箱(冷媒槽)の少なくとも一つに配置するとよく、供給路、排出路、接続箱のいずれか一つに配置してもよいし、供給路と排出路の双方、供給路又は排出路と接続箱との双方に配置してもよいし、これら三つ全てに配置してもよい。また、上記のように異なる二箇所以上にろ過手段を配置し、接続構造全体としてろ過手段を複数具える構成としてもよいし、同一箇所、例えば供給路に適宜間隔をあけて複数のろ過手段を配置して、接続構造全体としてろ過手段を複数具える構成としてもよい。このように多段に複数のろ過手段を具えることで、より確実に異物を捕捉することができる。複数のろ過手段を配置する場合、各ろ過手段は、同様の仕様のものを用いてもよいし、異なる仕様、例えば、メッシュサイズの異なるものを用いてもよい。
【0025】
また、上記ろ過手段は、冷媒流通路に対して、着脱自在な構成としておくと、交換、洗浄などといったメンテナンス作業を容易に行うことができて好ましい。特に、供給路や排出路にろ過手段を具える場合、ろ過手段において冷媒の導入側(冷媒の上流側)及び冷媒の排出側(冷媒の下流側)にバルブを具えておくことが好ましい。これらのバルブは、通常時、開いておいて接続箱への冷媒の供給或いは接続箱から冷媒の排出といった冷媒の流通が可能な状態とし、ろ過手段のメンテナンス時は閉じるようにし、接続箱内に冷媒が充填された状態で冷媒の供給又は冷媒の排出が停止されるようにする。このようにバルブを具えておき、バルブを閉じることで供給路や排出路に設けたろ過手段と接続箱とが切り離し可能な状態となるため、ろ過手段のメンテナンス作業の際、接続箱内から冷媒を排出させることなくメンテナンス作業を行うことができる。即ち、本発明接続構造を具える線路が直流送電を行った状態(通電状態)でメンテナンス作業を行うことができる。このようなバルブとして、例えば、市販されている真空ジャケットを具えるバルブ(例えば、山田バルブ製作所製ジャケット式真空断熱弁など)を利用してもよい。
【0026】
上述のようにバルブを設けておくことで接続箱に冷媒を充填させた状態でろ過手段のメンテナンスを行うことができるが、冷媒の流通が停止されることで、メンテナンス時間が長引くと、侵入熱などにより冷媒の温度が上昇して、接続箱内における超電導導体が超電導状態を維持できなくなる恐れがある。そこで、本発明接続構造を具える線路が通電状態であっても、ろ過手段のメンテナンスが十分に行えるように供給路や排出路といった輸送路をそれぞれ一系統(一本)ではなく、複数系統(複数本)とすることが好ましい。具体的には、輸送路を分岐し、複数の分岐路を並列させ、これら分岐路にそれぞれろ過手段を具えると共に、各ろ過手段において冷媒の導入側及び排出側の双方にバルブを具える構成とすることが好適である。ろ過手段を具える供給路や排出路をそれぞれ複数の並列分岐路とし、各分岐路にバルブを具える構成とすることで、通常時、ある分岐路を用いて冷媒の供給や排出を行い、この分岐路に具えるろ過手段をメンテナンスする際、この分岐路のバルブを閉じると共に別の分岐路のバルブを開き、上記別の分岐路に切り替えることで、冷媒の流通を停止することなく、ろ過手段のメンテナンスを行うことができる。このろ過手段のメンテナンスが終了したら、再度バルブの開閉を行って分岐路を切り替えもよいし、メンテナンスのために切り替えた分岐路に具えるろ過手段がメンテナンスを行うまでそのままこの分岐路を用いて冷媒の輸送を行ってもよい。
【0027】
なお、本発明接続構造は、直流送電に利用されるものを対象とする。直流送電は、単極送電(モノポール送電)、双極送電(バイポール送電)のいずれを行ってもよい。単極送電を行う場合、超電導導体を有し、同軸状に別途外部超電導層を有していないケーブルコアを具える単心ケーブルを2条以上用意し、いずれかのケーブルのコアに具える超電導導体を往路、別のケーブルのコアに具える超電導導体を帰路、残りのケーブルを予備としてもよいし、超電導導体を有し、同軸状に別途外部超電導層を有していないケーブルコアを2心以上具える多心ケーブルを1条用意し、いずれかのコアに具える超電導導体を往路、別のコアに具える超電導導体を帰路、残りのコアを予備心としてもよい。いずれの場合もケーブルコアには、接地用シールド層を具えておく。或いは、超電導導体とこの超電導導体と同軸状に外部超電導層とを有するケーブルコアを具える超電導ケーブル(単心でも多心でもよい)を用意し、同一のコアにおいて超電導導体を往路、外部超電導層を帰路としてもよい。外部超電導層は、接地しておく。
【0028】
双極送電を行う場合、超電導導体を有し、同軸状に別途外部超電導層を有していないケーブルコアを具える単心ケーブルを3条以上用意し、いずれかのケーブルのコアに具える超電導導体を正極、別のケーブルのコアに具える超電導導体を負極、更に別のケーブルに具える超電導導体を中性線、残りのケーブルを予備としてもよいし、超電導導体を有し、同軸状に別途外部超電導層を有していないケーブルコアを3心以上具える多心ケーブルを1条用意し、いずれかのコアの超電導導体を正極、別のコアの超電導導体を負極、更に別のコアの超電導導体を中性線、残りのコアを予備心としてもよい。いずれの場合も、正極用コア、負極用コアには接地用シールド層を具えておく。或いは、超電導導体とこの超電導導体と同軸状に外部超電導層とを有するケーブルコアを2心以上具える多心ケーブルを用意し、いずれかのコアの超電導導体を正極、別のコアの超電導導体を負極、これら二つのコアの外部超電導層を中性線、残りのコアを予備心としてもよい。外部超電導層は、接地しておく。
【発明の効果】
【0029】
上述のように本発明接続構造は、冷媒流通路にろ過手段を具えることで、金属性異物を効率よく除去することができるため、接続構造の構成部材の表面、特に、直流電界が加わる箇所の表面に異物が集積して、沿面放電による沿面破壊が生じることを効果的に防止できる。また、本発明接続構造は、ろ過手段を具えることで、上記金属性異物だけでなく、接続構造作製時に生じた絶縁材料の屑や、接続構造内に入った湿気(水分)が冷媒により冷却されて生じた固化物(氷)などの異物をも除去することができる。そのため、これらの異物による電気的な不具合の防止に加えて、冷媒流通路、特に供給路や排出路が閉塞されたり、異物の衝突などにより構成部材が破損するなどといった不具合をも防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0031】
図1(A)は、本発明接続構造において、終端接続構造を示す概略構成図、(B)は、供給路にろ過手段を配置した状態を示す概略構成図である。この終端接続構造において基本的構成は、図5に示す従来の構成と同様である。即ち、超電導ケーブルの端部から引き出したケーブルコア10と、このコア10の端部に接続される常温側導体引出部と、常温側導体引出部においてコアとの接続側を収納する終端接続箱20とを具える。終端接続箱20には、コア10との接続箇所を冷却するための極低温の冷媒が充填される冷媒槽21と、冷媒槽21の外周を覆うように配置される真空槽22とを具える。また、接続箱20には、冷媒槽21に冷媒を供給するための供給路23と、冷媒槽21から冷媒を排出する排出路24とが接続される。これら供給路23及び排出路24は、別途具える冷却システム(図示せず)に接続されており、供給路23→接続箱20(冷媒槽21)→排出路24→冷却システム(→供給路23)という経路により、接続箱20に冷媒の循環供給を行う構成である。即ち、この終端接続構造では、上記経路を冷媒流通路として利用する。このような終端接続構造において最も特徴とするところは、冷媒流通路を形成する供給路23において冷媒槽21近傍(図1(A)において破線円Aで示す箇所、真空槽22の外側)に、ろ過手段1(図1(B)参照)を具えることにあり、ろ過手段1によって冷媒に伴って輸送される異物の除去を行う。
【0032】
本例において超電導ケーブルは、内周側から順に、フォーマ、超電導導体、電気絶縁層、外部超電導層、保護層を具えるケーブルコア1条を断熱管に収納させた単心ケーブルを利用した。超電導導体及び外部超電導層は、Bi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線)を用い、このテープ線をフォーマの外周、電気絶縁層の外周にそれぞれ多層に螺旋状に巻回して構成した。フォーマは、銅線を複数本撚り合わせたものを用い、フォーマと超電導導体との間には、絶縁紙によりクッション層を形成した。電気絶縁層は、超電導導体に対して所定の絶縁強度を有するように、半合成絶縁紙PPLP(登録商標)を巻回して形成した。電気絶縁層の内周(超電導導体の外周)及び電気絶縁層の外周(外部超電導層の内周)に半導電層を設けてもよい。保護層は、クラフト紙を巻回して形成した。断熱管は、ステンレス鋼製の内管及び外管とからなる二重管であり、内管の外周にスーパーインシュレーション(商品名)といった断熱材を配置すると共に、両管の間を真空引きした構成とした。内管には、超電導導体や外部超電導層を冷却する冷媒(本例では液体窒素)が流通される。このような超電導ケーブルの端部からケーブルコア10を引き出し、コア10の端部を段剥ぎして外部超電導層、電気絶縁層、超電導導体11、フォーマを順次露出させ、終端接続スリーブ12を用いて、超電導導体11と常温側導体引出部とを接続する。終端接続スリーブ12は、一端にフォーマ及び超電導導体11を挿入可能な導体側挿入穴を具え、他端に常温側導体引出部(後述するリード部13)を挿入可能なリード部側挿入穴を具える銅製の筒状部材を用いた。超電導導体11とスリーブ12との接続は、導体側挿入穴にフォーマ及び超電導導体11を挿入して圧着によりスリーブ12とフォーマとを接続し、次に超電導導体11を半田付けすることにて行い、リード部13とスリーブ12との接続は、スリーブ12のリード部側挿入穴の内側にマルチコンタクトを具えておき、マルチコンタクトによる接触にて行った。
【0033】
常温側導体引出部は、上記超電導導体11とスリーブ12を介して接続されるリード部13と、このリード部13とジョイント部14を介して接続されるブッシング15とを具える。リード部13は、銅製の棒状体からなるものを用いた。超電導導体11,スリーブ12,リード部13の外周は、電気絶縁層と同様に合成絶縁紙にて補強絶縁層16a,16bを形成している。補強絶縁層16a,16bの端部は、電界の集中を制御するべくテーパ状(スリーブ12から離れるにつれて先細る形状)とした。ジョイント部14は、リード部13との接続端及びブッシング15との接続端を有する銅製の編組材からなり、その外周を銅製のカバーで覆ったシールド構造としている。ブッシング15は、中心部に、リード部13に接続される銅製の棒状体からなる導体部15aを有し、導体部15aの外周にFRPで形成された固体絶縁層15bを具える。固体絶縁層15bは、ステンレス鋼製パイプの外周にFRPと箔電極とを積層し、両端部がテーパ状(低温側の一端は、ジョイント部14に向かうにつれて先細り、常温側の他端は、カバー31(後述)に向かうにつれて先細る形状)のストレスコーン部を有する棒状体とした。この積層構造により、いわゆるコンデンサー方式の電界制御を行い、ブッシング15の表面にかかる直流電界が均一になるようにした。このような常温側導体引出部において、リード部13の一部(ジョイント部14との接続側)、ジョイント部14、ブッシング15の一部(ジョイント部14との接続側)が冷媒槽21に収納され、その外周を真空槽22に覆われる。冷媒槽21及び真空槽22は、ステンレス鋼製の容器である。この冷媒槽21には、接地線25が接続されており、この接地線25が接地されることで、冷媒槽21は、接地電位となる構成であり、冷媒として絶縁性に優れる液体窒素を用いることで、ジョイント部14といった高電圧箇所に対して絶縁性が維持される。この接地線25は、真空槽22に貫通されており、真空槽22において貫通箇所のシールには、ハーメチックシールを用いて気密を保持している。なお、接地電位である冷媒槽21と絶縁するべく、リード部13において冷媒槽21に導入される箇所の外周には、エポキシ樹脂からなる絶縁スペーサ(エポキシユニット)17を配置している。真空槽22は、内部にスーパーインシュレーションといった断熱材が配置されると共に、所定の真空度に真空引きされている。また、真空槽22の外側には、内部に絶縁油やSF6ガスなどの絶縁流体が充填される碍管30が突設されており、ブッシング15の一端(常電導機器に接続される側)が収納される。碍管30の常温側端部は、導電性のカバー31により覆われたシールド構造としている。
【0034】
補強絶縁層16aで覆われた超電導導体11,スリーブ12,リード部13の一部は、終端接続箱20に接続される補助接続箱40に収納される。補助接続箱40は、超電導導体11を冷却する冷媒が流通される冷媒槽41と、その外周を覆う真空槽42とを具える。補助接続箱40の構成は、上記終端接続箱20と同様であり、冷媒槽41には、冷媒槽21と同様に冷媒の供給路43,排出路44が接続され、これら供給路43,排出路44を利用して冷媒が流通される。これら供給路43,排出路44も、冷却システム(図示せず)に接続されており、接続箱20と同様にして、補助接続箱40に冷媒の循環供給を行う。従って、供給路43,補助接続箱40(冷媒槽41),排出路44も、冷媒流通路として利用される。なお、本例では、冷媒槽21と冷媒槽41との間で冷媒が直接行き来しない分離された構成とした。供給路42及び排出路43は、後述する供給路23,排出路24と同様の構成である。
【0035】
供給路23は、図1(B)に示すように内管23aと外管23bとの二重管からなり、両管23a,23bの間が真空引きされた断熱構造であり、内管23a内が冷媒流通路として利用される。排出路24も同様の構成である。そして、本例では、この内管23a内にろ過手段1を具える。ろ過手段1は、有底円筒形状のフィルタであり、側壁部1aを冷媒が透過可能な網状とし、底部1bを冷媒が透過しない板材にて構成される。このようなフィルタとして、例えば、商品名:ポアメット(FLOWELL CORPORATION製)、円筒型(CY)、メッシュサイズ100μmが挙げられる。ろ過手段の大きさは、供給路23を形成する管の径により種々変化させるとよく、例えば、フィルタ外径:50〜100mm程度、長さ:200mm程度のものが利用できる。
【0036】
そして、本例では、図1(B)に示すように、供給路23において、冷媒が鉛直方向上向きから下向きに流れる箇所に、底部1bが鉛直方向に対して直交し、側壁部1aが鉛直方向と平行するようにろ過手段1を配置している。特に、底部1bが冷媒の下流側となるように配置している。図1(B)において黒三角矢印は、冷媒の流れる方向を示す。後述する図2についても同様である。
【0037】
上記構成を具える本発明接続構造では、冷却システム(図示せず)から供給管23に冷媒が輸送されると、冷媒は、ろ過手段1を通過して冷媒槽21に供給される。このとき、冷媒と共に異物fが輸送された場合、側壁部1aにより異物fの通過が阻止され、異物fは、冷媒の輸送圧力により底部1bに沈下して滞留する。従って、本発明接続構造では、異物fが除去された冷媒のみを効率よく冷媒槽21に供給することができる。そして、冷媒槽21から排出路24を経て排出された冷媒は、冷却システムにて温度調整などが行われて再度供給路23を通過して冷媒槽21に供給される。このとき、ろ過手段1により異物fが除去されるため、冷却システムなどに存在する粉塵が冷媒と共に輸送されても、この粉塵が冷媒槽21に供給されることがない。このように本発明接続構造では、供給路23,冷媒槽21,排出路22,冷却システムのいずれかに異物が存在して冷媒に伴って輸送されたとしても、上記ろ過手段1によりその異物を効率よく除去することができる。直流送電に利用される本発明接続構造では、各所に直流電界が加わる。このような直流電界が加わる箇所には、いわゆる集塵効果により金属性の屑が集積され易い。そして、集積箇所によっては、沿面破壊が生じるといった不具合が生じるが、本発明接続構造では、ろ過手段を具えることで、上記不具合を効果的に低減することができる。
【0038】
上記説明では、供給路23にろ過手段1を具える構成としたが、排出路24に具えてもよいし、冷媒槽21内に配置してもよいし、供給路23及び排出路24の双方に具えてもよい。一つの冷媒流通路に対して複数のろ過手段を具えることで、異物をより確実に捕捉することができる。また、上記説明では、供給路23にろ過手段1を一つ具える構成としたが適当な間隔をあけて複数具えてもよい。更に、冷媒槽40,供給路42,排出路43の少なくとも一つにも同様にろ過手段1を具えて異物を除去できるようにすることが好ましい。
【0039】
ろ過手段は、洗浄や交換などのメンテナンスが行い易い構成であることが好ましい。即ち、冷媒流通路から簡単に着脱できる構成であることが好ましい。そこで、次に、着脱が容易に行えるろ過手段の具体的な構成について説明する。図2は、冷媒流通路において屈曲した箇所にろ過手段を具える例を示す概略構成図である。ろ過手段の着脱を考慮すると、ろ過手段は、供給路や排出路に具えることが好ましい。特に、接続箱から突出した箇所であることが好ましい。更に、供給路や排出路において、冷媒の流れる方向が変化するような箇所、例えば、水平方向から垂直方向に屈曲した箇所や垂直方向から水平方向に屈曲した箇所にろ過手段を配置すると、着脱が容易な構成とし易い。例えば、図2に示すように供給路又は排出路の内管50として、冷媒が水平方向に流れる水平内管51と、冷媒が鉛直方向に主に流れる鉛直内管52と、水平内管51及び鉛直内管52を接続する屈曲内管53とを具え、屈曲内管53は、水平内管51及び鉛直内管52に対して着脱可能であり、この屈曲内管53にろ過手段1を取り付ける構成のものを利用する。本例では、屈曲内管53の一端を水平内管51との接続端とし、他端をろ過手段1との接続端とする。そして、ろ過手段1において側壁部1aの開口部側にその外周方向に突出するようにフランジ1cを具えておき、このフランジ1cを介して鉛直内管52に固定される構成とする。この構成により、フランジ1cの径R1は、側壁部1aの外径よりも大きくなる。屈曲内管53は、リジット管でもよいが、図2に示すように一部を可撓性のあるベローズ管とすると、ろ過手段1の取り付けを行い易い。
【0040】
水平内管51,鉛直内管52,屈曲内管53において開口部にはそれぞれ、フランジを設けており、水平内管51のフランジと屈曲内管53のフランジ、ろ過手段1のフランジ1cと鉛直内管52のフランジをそれぞれ重ね合わせ、ボルトなどの締付部材により接続固定する。各フランジ間には、金属Oリングなどのシール材を配置することが好ましい。上記接続により、ろ過手段1は、内管50内に配置される。この配置により、水平内管51を経た冷媒は、屈曲内管53を通過してろ過手段1に輸送され、ろ過手段1の側壁部1aを通過して鉛直内管52に輸送される。一方、冷媒と共に輸送された異物fは、冷媒の輸送圧力により底部1bに沈下して滞留する。
【0041】
そして、上記水平内管51、ろ過手段1及び屈曲内管53との一体物、鉛直内管52が収納される外管54は、屈曲部分を開放可能な構成とする。図2に示す例では、外管54において鉛直方向上方に開口部を設け、この開口部を閉じる蓋部54aを具える。外管54の開口部には、フランジ54bを設けており、このフランジ54bと蓋部54aとを重ね合わせ、ボルトなどの締付部材により開口部を閉じ、締付部材を取り外すことで、蓋部54aを開放して、開口部を開ける。蓋部54aとフランジ54bとの間には、金属Oリングなどのシール材を配置することが好ましい。外管54の開口部の径R0は、ろ過手段1に具えるフランジ1cの径R1よりも大きくする。この構成により、外管54の蓋部54aを開けて、外管54内からろ過手段1と屈曲内管53との一体物を容易に取り外すことができる。なお、図2では、外管54においてろ過手段1と屈曲内管53との一体物が配置される屈曲部分をその他の部分よりも大きくしているが同じ大きさとしてもちろんよい。また、外管54には、真空引きポート54cを具えており、外管54内を真空引き可能な構成としている。
【0042】
図2に示す例において、ろ過手段1のメンテナンス作業の手順を説明する。
(1) 超電導ケーブルが通電を行っており、冷媒流通路に冷媒を流通させている場合、冷媒の流通を停止する。
(2) 真空引きポート54cにより、外管54内を真空から大気圧に戻す。
(3) 外管54から蓋部54aを取り外し、水平内管51と屈曲内管53との接続、鉛直内管52とろ過手段1(フランジ1c)との接続を取り外し、ろ過手段1と屈曲内管53との一体物を外管54から取り出す。なお、内管50内の冷媒は、排出させておく。
(4) ろ過手段1の汚れや異物の滞留具合を確認する。確認作業は、ろ過手段1を目視したり、ファイバスコープなどを用いて覗いたり、異物が出てこないか一体物を振ったりなどすることが挙げられる。ろ過手段の長さを200mm程度とする場合、屈曲内管53の開口部からろ過手段1の底部1bまでの長さは、せいぜい300mm程度であり、目視などでも容易にチェックすることができる。この確認により、異物が溜まっていれば、ろ過手段1を洗浄したり、交換する。
(5) 一体物を外管54に挿入して、水平内管51、鉛直内管52に固定する。
(6) 蓋部54aを閉じた後、真空引きポート54cから真空引きを行い、冷媒の流通を開始する。
【0043】
上述した構成では、ろ過手段1のメンテナンスにあたり、冷媒の流通を停止すると共に、輸送管などから冷媒を排出させる必要があり、手間がかかる。そこで、輸送管や冷媒槽から冷媒を排出させることなくろ過手段1のメンテナンスを行うことができるように、ろ過手段1の冷媒導入側及び冷媒の排出側にバルブを具えることが好ましい。例えば、図2に示す配管の場合、水平内管51においてろ過手段側の端部近傍と、鉛直内管52においてろ過手段1の下方側とにバルブを具えることが挙げられる。これらバルブは、通電を行う通常時に開いておいて冷媒槽への冷媒の供給、冷媒槽からの冷媒の排出を行えるようにし、ろ過手段1のメンテナンスを行う際に閉じて、冷媒槽への冷媒の供給、冷媒槽からの冷媒の排出を停止する。このとき、冷媒槽には、冷媒が流通しない状態であるが、冷媒が充填された状態が維持される。なお、メンテナンスの際に、接続箱の真空槽の真空状態が破られないように構成しておく。一方、内管においてろ過手段を設けた箇所近傍を覆う外管と、内管の他の箇所を覆う外管との間には、区画壁などを設けておき、両管内にそれぞれ独立した真空層を有する構成とする。この構成により、メンテナンス時、冷媒の流通を停止しても、ろ過手段の取付箇所近傍以外は、真空状態が保持されるため、冷媒の温度上昇を低減することができる。かつ、メンテナンス後、真空引きを行うのは、ろ過手段の取付箇所近傍のみでよいため、作業性がよい。
【0044】
また、図2に示す配管のように一系統の輸送路ではなく、配管を分岐して複数の分岐路を並列してなる複数系統の輸送路とし、各分岐路にろ過手段と、分岐路においてろ過手段の上流側及び下流側にバルブとを具えた構成とすると、冷媒槽に冷媒を流通したままろ過手段のメンテナンスを行うことができる。即ち、通常時、いずれかの一の分岐路のバルブを開いて冷媒の供給/排出を行い、残りの分岐路のバルブを閉じておき、通常時に用いている分岐路に具えるろ過手段のメンテナンスを行う際、この分岐路のバルブを閉じると共に、残りのいずれかの分岐路のバルブを開く。このようにバルブが開かれた分岐路を冷媒の流通に用いることで、冷媒槽には、冷媒の供給/排出が滞りなく行われ、冷媒の流通を停止することなく、ろ過手段のメンテナンスを行うことができる。また、ろ過手段を具えていない分岐路を設けておいて、メンテナンス時にこの分岐路を用いるようにしてもよいが、各分岐路にろ過手段を具えておくことで、常時、異物の除去を行うことができる。各分岐路には、上述と同様にそれぞれ独立した真空層を有する構成としておくことが好ましい。
【実施例2】
【0045】
上記説明では、終端接続構造である場合について説明したが、本発明接続構造は、超電導ケーブル同士を接続する中間接続においても適用することができる。図3は、本発明接続構造において、中間接続構造を示す概略構成図である。この中間接続構造において基本的構成は、図4に示す従来の構成と同様である。即ち、この中間接続構造は、接続する一方の超電導ケーブル60Aの端部から引き出したケーブルコア61Aと、他方の超電導ケーブル60Bの端部から引き出したコア61Bと、これら両コア61A,61Bの端部が収納される中間接続箱70とを具える。本例において超電導ケーブル60A,60Bはいずれも、実施例1と同様の構成を具えるケーブルコアを3条撚り合わせて具える3心ケーブルを用い、三つの接続箇所を一つの接続箱70に収納させる構成とした(図3では接続箇所が二つしか記載されていないが実際には三つ存在する)。各コア61A,61Bは、端部を段剥ぎして超電導導体62A,62Bを露出させ、中間接続スリーブ63にて接続する。接続させた両超電導導体62A,62B及びスリーブ63の外周には、補強絶縁層64を設ける。この補強絶縁層64は、その端部をスリーブ63から離れるにつれて先細りするテーパ状に形成し、端部において電界が集中することを制御する構成とした。また、この補強絶縁層64の外周に銅などの導電性材料にてシールド層(図示せず)を設け、電界遮蔽構造とした。中間接続箱70は、超電導導体62A,62Bを冷却するための液体窒素などの冷媒が流通される冷媒槽71と、冷媒槽71の外周に配置される真空槽72とを具える。冷媒槽71には、冷媒を供給する供給路73及び冷媒を排出する排出路74を具える。本例では、冷媒槽71内に冷媒槽71の内周に適合した大きさを有するステンレス鋼製の円盤状部材65を設けており、この円盤状部材65により、冷媒槽71内の空間を超電導ケーブル60A側の空間Aと超電導ケーブル60B側の空間Bとに区画して、両空間A,B間で冷媒が流通しない構成とした。従って、各空間A,Bのそれぞれに供給路73及び排出路74を設けた。そして、この供給路73又は排出路74の少なくとも一方に実施例1で説明したろ過手段を具えることで、異物を捕捉することができる。本例では、補強絶縁層64の外周にシールド層を設けて電界遮蔽構造としており、シールド層の表面に金属性の異物が集積しても、沿面破壊を起こしにくい。しかし、このシールド層を打ち破って、シールド層の内側に粉塵が入り込むと電気的に不安定となる恐れがある。これに対し、本発明接続構造では、ろ過手段を具えることで、このような不具合を防止できる。このろ過手段は、供給路73,排出路74において、接続箱70の外側に配置される箇所に具えておくと、メンテナンスなどの作業が行いやすい。
【0046】
本例に示す中間接続構造では、上記円盤状部材65により、超電導導体62Aと62Bとの接続部分を接続箱70(冷媒槽71)に固定させる構成とした。具体的には、超電導導体62Aと62Bとの間に銅製の棒状体からなる接続導体66を介在させ、超電導導体62Aと62Bを、中間接続スリーブ63及び接続導体66を用いて接続した。中間接続スリーブ63は、一端にフォーマ及び超電導導体62A(62B)を挿入可能な導体側挿入穴を具え、他端に上記接続導体66を挿入可能な接続導体用挿入穴を具える銅製の筒状部材で、接続導体用挿入穴の内側にマルチコンタクトを具えるものを利用した。接続導体66は、その外周にエポキシ樹脂成形体からなる固体絶縁部材67を装着させている。この固体絶縁部材67は、円盤状部材65に設けられた挿通孔に挿通配置され、中間部に設けられたフランジ部67aを円盤状部材65と押さえ部材68とで挟んだ状態としてボルト69を締めることで、円盤状部材65に固定される。そして、円盤状部材65は、冷媒槽71に溶接などにより固定されることで、超電導導体62A,62Bの接続部分が冷媒槽71に固定される。
【0047】
また、本例において接続箱70は、ケーブルコアの長手方向(図3において左右方向)に分割可能な一対の半割れ片を組み合わせて一体となるものを用いた。更に、本例では、一つの超電導ケーブルから3条のケーブルコアを引き出すため、接続作業が行い易いようにコア間を広げた状態で保持可能な保持具80を冷媒槽71内に適宜配置させた。加えて、本例では、同一の超電導ケーブルから引き出された3条のケーブルコアに具える外部超電導層を短絡させる短絡部90を設けた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明直流超電導ケーブルの接続構造は、超電導ケーブル同士を接続する中間接続、超電導ケーブルと常温側に配置される常電導機器とを接続する終端接続のいずれにも適用することができる。このような接続構造は、直流送電を行う超電導ケーブル線路の構築において好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(A)は、本発明接続構造において、終端接続構造を示す概略構成図、(B)は、供給路にろ過手段を配置した状態を示す概略構成図である。
【図2】本発明接続構造において、冷媒流通路にろ過手段を配置した状態を示す概略構成図であり、供給路又は排出路において屈曲した箇所にろ過手段を具える例を示す。
【図3】本発明接続構造において、中間接続構造を示す概略構成図である。
【図4】従来の超電導ケーブルの中間接続構造を示す概略構成図である。
【図5】従来の超電導ケーブルの終端接続構造を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ろ過手段 1a 側壁部 1b 底部 1c フランジ
10 ケーブルコア 11 超電導導体 12 終端接続スリーブ 13 リード部
14 ジョイント部 15 ブッシング 15a 導体部 15b 固体絶縁層
16a,16b 補強絶縁層 17 絶縁スペーサ 20 終端接続箱 21,41 冷媒槽
22,42 真空槽 23,43 供給路 23a 内管 23b 外管 24,44 排出路
25 接地線 30 碍管 31 カバー 40 補助接続箱
50 内管 51 水平内管 52 鉛直内管 53 屈曲内管 54 外管
54a 蓋部 54b フランジ 54c 真空引きポート
60A,60B 超電導ケーブル 61A,61B ケーブルコア 62A,62B 超電導導体
63 中間接続スリーブ 64 補強絶縁層 65 円盤状部材 66 接続導体
67 固体絶縁部材 67a フランジ部 68 押さえ部材 69 ボルト
70 中間接続箱 71 冷媒槽 72 真空槽 73 供給路 74 排出路
80 保持具 90 短絡部
100A,100B 超電導ケーブル 101,101A,101B ケーブルコア
102,102A,102B 超電導導体 103 中間接続スリーブ
104,104a,104b 補強絶縁層
110 中間接続箱 111 冷媒槽 112 真空槽
150 終端接続スリーブ 151 リード部 152 ジョイント部
153 ブッシング 153a 導体部 153b 固体絶縁層
200 終端接続箱 201,211 冷媒槽 202,212 真空槽 203,213 供給路
204,214 排出路 205 接地線 210 補助接続箱 220 碍管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導ケーブルに具える超電導導体と、この超電導導体との接続対象とが収納され、超電導導体を冷却する冷媒が内部に流通される接続箱とを具える直流超電導ケーブルの接続構造であって、
前記接続箱には、箱内に冷媒を供給する供給路と、箱外に冷媒を排出する排出路とが接続され、
前記供給路から排出路に至る冷媒流通路に冷媒中の異物を除去するろ過手段を具えることを特徴とする直流超電導ケーブルの接続構造。
【請求項2】
ろ過手段は、供給路及び排出路の少なくとも一方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の直流超電導ケーブルの接続構造。
【請求項3】
ろ過手段は、冷媒温度領域において使用可能であり、冷媒流通時の輸送圧力に耐え得る材料からなることを特徴とする請求項1に記載の直流超電導ケーブルの接続構造。
【請求項4】
ろ過手段は、メッシュサイズが2〜300μmのフィルタを具えることを特徴とする請求項1に記載の直流超電導ケーブルの接続構造。
【請求項5】
冷媒流通路に複数のろ過手段を多段に配置したことを特徴とする請求項1に記載の直流超電導ケーブルの接続構造。
【請求項6】
ろ過手段において冷媒の導入側及び冷媒の排出側にバルブを具えることを特徴とする請求項2に記載の直流超電導ケーブルの接続構造。
【請求項7】
接続対象は、常温側導体引出部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の直流超電導ケーブルの接続構造。
【請求項8】
接続対象は、別の超電導ケーブルに具える超電導導体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の直流超電導ケーブルの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−28710(P2007−28710A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203363(P2005−203363)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】