直流電圧変換回路、記録装置及び直流電圧変換回路の制御方法
【課題】 スイッチング方式の直流電圧変換回路において、温度変化によって出力電圧が不安定となることを防止し、安定した電圧を出力すること。
【解決手段】 スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、スイッチング素子を制御する制御回路を有し、前記制御回路は、想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする。
【解決手段】 スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、スイッチング素子を制御する制御回路を有し、前記制御回路は、想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサなどを使用したLPF(ロー パス フィルタ)を有するスイッチング方式の直流電圧変換回路、記録装置及び直流電圧変換回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流電圧変換回路として、環境配慮の観点から、効率的なスイッチング方式の直流電圧変換回路が多く採用されている。スイッチング方式の直流電圧変換回路は、インダクタとキャパシタを接続したLPFを備え、出力される電圧を平滑化している。
【0003】
上記スイッチング方式の直流電圧変換回路として、負荷変動による効率の変動を改善する為に、出力電圧と出力電流に応じてスイッチング周波数やデューティを可変させる方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、低温時の動作安定性を向上する為に、パルス電圧のデューティや周囲温度に応じて誤差増幅器のゲインを可変させる方式が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許 第2607569号公報
【特許文献2】特許 第3574394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング方式の直流電圧変換回路において、インダクタとキャパシタによるLPFを接続して出力される電圧を平滑化する方式では、平滑化した電圧にリップル状の変動が重畳する。このリップル状の変動が重畳した電圧(リップル電圧)は、前記LPF用キャパシタのESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)特性に大きく影響され、ESRが大きいとリップル電圧も大きくなる。このリップル電圧が大きいということは、安定した電圧の出力できないこととなり電源として望ましくない。
【0006】
前記LPF用のキャパシタとしては、電解コンデンサが使用されることが多い。前記電解コンデンサのESRは一般的に温度依存性を有しており、低温時ほどESRは大きくなる。つまり、低温時で電解コンデンサのESRが大きい時は、リップル電圧が大きくなり、電源として望ましくなくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、温度変化によって安定した電圧の出力できなくなることのないスイッチング方式の直流電圧変換回路及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路を有し、
前記制御回路は、想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路と、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする。
【0011】
さらに、上記課題を解決するための別の本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出工程と、
前記キャパシタ温度検出工程により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御する制御工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチング方式の直流電圧変換回路において、温度変化によって出力電圧が不安定となることを防止し、安定した電圧を出力することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明のスイッチング方式の直流電圧変換回路は、インクジェット記録装置等の記録装置に好ましく使用することができる。
【0015】
図10は、本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【0016】
図10に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置という)は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行う記録ヘッド3を搭載している。記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2にキャリッジモータM1によって発生する駆動力を伝達機構4より伝え、キャリッジ2を主走査方向である矢印A方向に往復移動(往復走査)させる。この往復走査とともに、例えば、記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行う。
【0017】
記録装置のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを収容するインクタンク6を装着する。このインクタンク6は、キャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0018】
図10に示した記録装置はカラー記録が可能であり、そのためキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクをそれぞれ収容した4つのインクタンクを搭載している。これら4つのインクタンクはそれぞれ独立に着脱可能である。
【0019】
キャリッジ2と記録ヘッド3とは、両部材の接合面が適正に接触されて所要の電気的接続を達成維持できるようになっている。記録ヘッド3は、記録信号に応じてエネルギーを印加することにより、複数の吐出口からインクを選択的に吐出して記録する。特に、本実施例の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用し、熱エネルギーを発生するために電気熱変換体を備える。その電気熱変換体に印加される電気エネルギーが熱エネルギーへと変換され、その熱エネルギーをインクに与えることにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させる。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。
【0020】
図10に示されているように、キャリッジ2はキャリッジモータM1の駆動力を伝達する伝達機構4の駆動ベルト7の一部に連結されており、ガイドシャフト13に沿って矢印A方向に摺動自在に案内支持されるようになっている。したがって、キャリッジ2は、キャリッジモータM1の正転及び逆転によってガイドシャフト13に沿って往復走査する。また、キャリッジ2の主走査方向(矢印A方向)に沿ってキャリッジ2の位置を示すためのスケール8が備えられている。
【0021】
また、記録装置には、記録ヘッド3の吐出口(不図示)が形成された吐出口面に対向してプラテン(不図示)が設けられており、キャリッジモータM1の駆動力によって記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2が往復走査される。これと同時に、記録ヘッド3に記録信号を与えてインクを吐出することによって、プラテン上に搬送された記録媒体Pの全幅にわたって記録が行われる。
【0022】
記録装置には、記録ヘッド3を搭載するキャリッジ2の記録動作のための往復運動の範囲外(記録領域外)の位置に、記録ヘッド3の吐出不良を回復するための回復装置10が配設されている。
【0023】
回復装置10は、記録ヘッド3の吐出口面をキャップするキャッピング機構11と記録ヘッド3の吐出口面をクリーニングするワイピング機構12を備えている。そして、キャッピング機構11による吐出口面のキャッピングに連動して回復装置内の吸引手段(吸引ポンプ等)により吐出口からインクを強制的に排出させる。それによって、記録ヘッド3のインク流路内の粘度の増したインクや気泡等を除去するなどの吐出回復動作を行う。
【0024】
また、非記録動作時等には、記録ヘッド3の吐出口面をキャッピング機構11によるキャッピングすることによって、記録ヘッド3を保護するとともにインクの蒸発や乾燥を防止することができる。一方、ワイピング機構12はキャッピング機構11の近傍に配され、記録ヘッド3の吐出口面に付着したインク滴を拭き取るようになっている。
【0025】
また、記録装置では、キャッピング機構11に記録に関係しないインクを吐出することにより、予備吐出を行うことができる構成となっている。
【0026】
これらキャッピング機構11を使用した吸引動作及び予備吐出動作、ワイピング機構12を使用したワイパー動作により、記録ヘッド3のインク吐出状態を正常に保つことが可能となっている。
【0027】
図10では、インクタンク6と記録ヘッド3とが分離された構成について示しているが、インクタンクと記録ヘッドとが一体に形成されたヘッドカートリッジであっても良い。
【0028】
図11は、図10に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0029】
図11に示すように、コントローラ600は、MPU601、所要のテーブル、その他の固定データを格納したROM602を有する。また、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する特殊用途集積回路(ASIC)603を有する。また、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等を設けたRAM604、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行うシステムバス605を有する。さらに、以下に説明するセンサ群から入力されたアナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給するA/D変換器606などで構成される。
【0030】
また、610は画像データの供給源となるコンピュータ等でありホストと総称される。ホスト610と記録装置との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス信号等を送受信する。
【0031】
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリント開始を指令するためのプリントスイッチ622、及び回復動作の起動を指示するための回復スイッチ623など、操作者による指令入力を受けるためのスイッチから構成される。630はホームポジションを検出するためのフォトカプラなどの位置センサ631、環境温度を検出するために記録装置の適宜の箇所に設けられた温度センサ632等から構成される装置状態を検出するためのセンサ群である。
【0032】
さらに、640はキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。また、644は、記録ヘッド3を駆動させる記録ヘッドドライバである。本発明のスイッチング方式の直流電圧変換回路は、例えば、記録ヘッド3に駆動電圧を供給するために記録ヘッドドライバ644に使用することができる。また、例えば、搬送モータM2に電力を供給するために搬送モータドライバ642に使用することもできる。
【実施例1】
【0033】
図1は、本実施例の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【0034】
入力電圧Vin101は、スイッチング素子であるバイポーラ型のトランジスタ102のスイッチングによりパルス変換され、インダクタ103とキャパシタ104で構成されたLPF(ロー パス フィルタ)に入力され平滑化される。なお、ここではキャパシタ104として、電界コンデンサを使用している。前記トランジスタ102のエミッタと接地(GND)とを接続する配線にはSBD(ショットキー バリア ダイオード)105が配置されており、前記トランジスタ102がオフした時に前記インダクタ103により発生する電位に従って電荷が流れる。このようにトランジスタ102のエミッタとGNDとの間にSBDが配置された方式を非同期方式と呼ぶ。これに対して前記SBD105の替わりにトランジスタが配置され、前記トランジスタ102がオフしたタイミングで、前記トランジスタ102のエミッタと前記GNDとの間に配置したトランジスタをオンする制御方式もあり、これを同期方式と呼ぶ。平滑化された電圧Vout106を抵抗107と抵抗108により分圧して得られる所定の電圧109は、トランジスタ102の制御回路であるDC/DC制御ブロック110にフィードバックされる。そして、このフィードバックされた電圧109が安定するように前記DC/DC制御ブロック110は前記トランジスタ102のスイッチングを制御する。
【0035】
図2は、前記LPFに使用する電解コンデンサのESRについての温度特性の代表例を示すグラフである。図2のグラフに示されるとおり電解コンデンサのESRは低温時ほど大きい。また、その変化率は、低温になるに従い急激に高くなっていく。
【0036】
図3は、前記直流電圧変換回路において、通常周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【0037】
通常周期でLPFに入力される電圧波形301は、この通常周期である規定の周期T1 302毎にスイッチング制御が実施され、この波形においてはTon1 303の期間トランジスタがオンしている。以後、通常周期である規定の周期毎にスイッチング制御して駆動する状態を通常周波数駆動と呼ぶ。このようなスイッチング波形がLPFに入力されると、常温時LPFから出力される電圧波形304に示すように、平滑化された電圧にリップル状の変動が重畳したリップル電圧が出力される。ここで、LPFに使用する電解コンデンサの温度が低い場合、図2で示したようにESRが大きくなる。このため、LPFに使用する電解コンデンサの温度が低い場合、常温時にLPFから出力される電圧波形304のリップル電圧波高値306に対して、低温時にLPFから出力される電圧波形305のリップル電圧波高値307は大きくなり、電圧が不安定となる。
【0038】
図4は、前記直流電圧変換回路において、短周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【0039】
短周期でLPFに入力される電圧波形401に示されるスイッチング制御の周期T2 402は、前記図3のスイッチング制御の周期である周期T1 302より短い周期、つまり相対的に高い駆動周波数で制御されている。ただし、前記スイッチング制御の周期T2 402とトランジスタがオンしている期間Ton2 403との比率は、前記図3の周期T1 302とトランジスタがオンしている期間Ton1 303との比率とほぼ同じになっている。以後、短周期毎にスイッチング制御して駆動する状態を高速周波数駆動と呼ぶ。図4の低温時にLPFから出力される電圧波形404のリップル電圧波高値405は、前記図3の低温時にLPFから出力される電圧波形305のリップル電圧波高値307と比較して波高値が小さくなる。このように、同一の条件下でスイッチング制御の周期を短くすると、リップル電圧は小さくなる。
【0040】
しかし、スイッチング制御の周期を短くすると単位時間当りのスイッチング回数が増えるため、図1のトランジスタ102のスイッチングロスが増加する。そして、このスイッチングロスにより、図1のトランジスタ102の他、キャパシタ104(電解コンデンサ)等における発熱量が増加してしまうというデメリットが存在する。本発明はこのデメリットも回避するものである。
【0041】
図5に本実施例を説明する為のフローチャートを示す。
【0042】
直流電圧変換回路による処理を開始すると(ステップS110)、直流電圧変換回路は高周波数駆動を行う(ステップS140)。直流電圧変換回路を動作する前は、環境温度及びLPFの電解コンデンサの温度が低い可能性がある。この場合、前記LPFの電解コンデンサのESRは高い。電解コンデンサのESRが高いと、前記した通り直流電圧変換回路からの出力電圧のリップル電圧波高値が大きくなりこの出力電圧は不安定化する。このような状態を回避する為に、直流電圧変換回路による処理の開始時(起動時)には、高周波数駆動で動作してリップル電圧波高値を小さく抑えるように制御する(ステップS140)。
【0043】
電解コンデンサは、直流電圧変換回路の動作に伴うリップル電流の充放電が繰り返されると電解コンデンサの自己発熱により温度が上昇する。直流電圧変換回路の起動時は、この電解コンデンサの自己発熱による温度上昇が無い為、高周波数駆動によるスイッチングロスが発生しても問題無い。このため、予め定められた規定時間その高周波数駆動を維持する(ステップS150)。こうすることにより、LPF用の電解コンデンサは、前記したとおりこの電解コンデンサの自己発熱により温度が上昇してESRが低下する。ここで、高周波数駆動を維持する規定時間としては、直流電圧変換回路の動作保証下限温度から自己発熱により直流電圧変換回路からの出力電圧が安定するESRの値となると想定される温度まで電解コンデンサが温まるのに必要な時間とすることが望ましい。
【0044】
そして、予め定められた規定時間が経過するまで規定時間高周波数駆動を維持した後(ステップS150)、通常周波数駆動に移行して(ステップS160)、通常の動作状態である定常動作状態(ステップS170)になる。
【実施例2】
【0045】
図6は、本実施例の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【0046】
本実施例の直流電圧変換回路は、図1で示した実施例1の直流電圧変換回路に、さらに、DC/DC制御ブロック110に接続された周囲温度検出回路701を備える構成となっている。そして、DC/DC制御ブロック110が周囲温度検出回路701により検出された直流電圧変換回路の使用環境の温度に従って直流電圧変換機能の制御を切り替えることが可能な構成となっている。なお、それ以外の構成は図1で示した実施例1の直流電圧変換回路と共通する。
【0047】
図7に本実施例を説明する為のフローチャートを示す。
【0048】
直流電圧変換回路による処理を開始すると(ステップS110)、直流電圧変換回路の使用環境の温度検出を周囲温度検出回路701により行う(ステップS120)。直流電圧変換回路の使用環境の温度が予め定められた規定値温度以下の場合、直流電圧変換回路を高速周波数駆動させる(ステップS140)。この規定値温度とは、LPFの電解コンデンサの温度がこの規定値温度以下となった場合に、ESRが高くなり安定した電圧の出力が困難となる温度である。直流電圧変換回路の使用環境の温度が予め定められた規定値温度を超える場合、直流電圧変換回路を通常周波数駆動させる(ステップS160)。ステップS140からステップS170までは、実施例1の図5の各ステップと共通するため説明を省略する。
【実施例3】
【0049】
図8は、本実施例の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【0050】
本実施例の直流電圧変換回路は、図1で示した実施例1の直流電圧変換回路に、さらに、DC/DC制御ブロック110に接続された電解コンデンサの温度検出回路(キャパシタ温度検出回路)801を備える構成となっている。そして、DC/DC制御ブロック110が電解コンデンサの温度検出回路801により検出された電解コンデンサの温度に従って直流電圧変換機能の制御を切り替えることが可能な構成となっている。この電解コンデンサの温度検出回路801は、例えば温度検出素子を電解コンデンサのボディーに接触するように配置する構造となっている。なお、それ以外の構成は図1で示した実施例1の直流電圧変換回路と共通する。
【0051】
図9に本実施例を説明する為のフローチャートを示す。
【0052】
直流電圧変換回路による処理を開始すると(ステップS110)、電解コンデンサの温度検出を電解コンデンサの温度検出回路801により行う(ステップS130)。電解コンデンサの温度が予め定められた規定値温度以下の場合、直流電圧変換回路を高速周波数駆動させる(ステップS140)。この規定値温度とは、LPFの電解コンデンサの温度がこの規定値温度以下となった場合に、ESRが高くなり安定した電圧の出力が困難となる温度である。そして、電解コンデンサの温度が予め定められた規定値温度を超えるまで、ステップS130とステップS140とを繰り返すことにより、直流電圧変換回路を高速周波数駆動させる。ステップS130において、電解コンデンサの温度が予め定められた規定値温度を超えた場合、直流電圧変換回路を通常周波数駆動させる(ステップS160)。
【0053】
直流電圧変換回路の動作中は常に電解コンデンサの温度を検出するようにし、検出された温度に従って直流電圧変換回路のスイッチング周期を定期的に切り替えても良い。また、切り替えられるスイッチング周期を複数持っていても良い。スイッチング周期を複数持っている場合、電解コンデンサの温度が高くESRが小さい時には、長いスイッチング周期とし、電解コンデンサの発熱を抑えた寿命的に有利な制御とすることも可能である。
【0054】
以上の各実施例で示したように、本発明により、スイッチング方式の直流電圧変換回路において、LPFに使用される電解コンデンサのESR温度特性の影響による出力電圧の不安定化を防止し、安定した電圧を出力することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【図2】電解コンデンサのESRについての温度特性の代表例を示すグラフである。
【図3】直流電圧変換回路において通常周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【図4】直流電圧変換回路において短周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【図5】実施例1の直流電圧変換回路の動作を説明する為のフローチャートである。
【図6】実施例2の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【図7】実施例2の直流電圧変換回路の動作を説明する為のフローチャートである。
【図8】実施例3の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【図9】実施例3の直流電圧変換回路の動作を説明する為のフローチャートである。
【図10】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図11】インクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
102 トランジスタ
103 インダクタ
104 キャパシタ
110 DC/DC制御ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサなどを使用したLPF(ロー パス フィルタ)を有するスイッチング方式の直流電圧変換回路、記録装置及び直流電圧変換回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流電圧変換回路として、環境配慮の観点から、効率的なスイッチング方式の直流電圧変換回路が多く採用されている。スイッチング方式の直流電圧変換回路は、インダクタとキャパシタを接続したLPFを備え、出力される電圧を平滑化している。
【0003】
上記スイッチング方式の直流電圧変換回路として、負荷変動による効率の変動を改善する為に、出力電圧と出力電流に応じてスイッチング周波数やデューティを可変させる方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、低温時の動作安定性を向上する為に、パルス電圧のデューティや周囲温度に応じて誤差増幅器のゲインを可変させる方式が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許 第2607569号公報
【特許文献2】特許 第3574394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング方式の直流電圧変換回路において、インダクタとキャパシタによるLPFを接続して出力される電圧を平滑化する方式では、平滑化した電圧にリップル状の変動が重畳する。このリップル状の変動が重畳した電圧(リップル電圧)は、前記LPF用キャパシタのESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)特性に大きく影響され、ESRが大きいとリップル電圧も大きくなる。このリップル電圧が大きいということは、安定した電圧の出力できないこととなり電源として望ましくない。
【0006】
前記LPF用のキャパシタとしては、電解コンデンサが使用されることが多い。前記電解コンデンサのESRは一般的に温度依存性を有しており、低温時ほどESRは大きくなる。つまり、低温時で電解コンデンサのESRが大きい時は、リップル電圧が大きくなり、電源として望ましくなくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、温度変化によって安定した電圧の出力できなくなることのないスイッチング方式の直流電圧変換回路及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路を有し、
前記制御回路は、想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路と、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする。
【0011】
さらに、上記課題を解決するための別の本発明は、スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出工程と、
前記キャパシタ温度検出工程により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御する制御工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチング方式の直流電圧変換回路において、温度変化によって出力電圧が不安定となることを防止し、安定した電圧を出力することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明のスイッチング方式の直流電圧変換回路は、インクジェット記録装置等の記録装置に好ましく使用することができる。
【0015】
図10は、本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【0016】
図10に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置という)は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行う記録ヘッド3を搭載している。記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2にキャリッジモータM1によって発生する駆動力を伝達機構4より伝え、キャリッジ2を主走査方向である矢印A方向に往復移動(往復走査)させる。この往復走査とともに、例えば、記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行う。
【0017】
記録装置のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを収容するインクタンク6を装着する。このインクタンク6は、キャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0018】
図10に示した記録装置はカラー記録が可能であり、そのためキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクをそれぞれ収容した4つのインクタンクを搭載している。これら4つのインクタンクはそれぞれ独立に着脱可能である。
【0019】
キャリッジ2と記録ヘッド3とは、両部材の接合面が適正に接触されて所要の電気的接続を達成維持できるようになっている。記録ヘッド3は、記録信号に応じてエネルギーを印加することにより、複数の吐出口からインクを選択的に吐出して記録する。特に、本実施例の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用し、熱エネルギーを発生するために電気熱変換体を備える。その電気熱変換体に印加される電気エネルギーが熱エネルギーへと変換され、その熱エネルギーをインクに与えることにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させる。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。
【0020】
図10に示されているように、キャリッジ2はキャリッジモータM1の駆動力を伝達する伝達機構4の駆動ベルト7の一部に連結されており、ガイドシャフト13に沿って矢印A方向に摺動自在に案内支持されるようになっている。したがって、キャリッジ2は、キャリッジモータM1の正転及び逆転によってガイドシャフト13に沿って往復走査する。また、キャリッジ2の主走査方向(矢印A方向)に沿ってキャリッジ2の位置を示すためのスケール8が備えられている。
【0021】
また、記録装置には、記録ヘッド3の吐出口(不図示)が形成された吐出口面に対向してプラテン(不図示)が設けられており、キャリッジモータM1の駆動力によって記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2が往復走査される。これと同時に、記録ヘッド3に記録信号を与えてインクを吐出することによって、プラテン上に搬送された記録媒体Pの全幅にわたって記録が行われる。
【0022】
記録装置には、記録ヘッド3を搭載するキャリッジ2の記録動作のための往復運動の範囲外(記録領域外)の位置に、記録ヘッド3の吐出不良を回復するための回復装置10が配設されている。
【0023】
回復装置10は、記録ヘッド3の吐出口面をキャップするキャッピング機構11と記録ヘッド3の吐出口面をクリーニングするワイピング機構12を備えている。そして、キャッピング機構11による吐出口面のキャッピングに連動して回復装置内の吸引手段(吸引ポンプ等)により吐出口からインクを強制的に排出させる。それによって、記録ヘッド3のインク流路内の粘度の増したインクや気泡等を除去するなどの吐出回復動作を行う。
【0024】
また、非記録動作時等には、記録ヘッド3の吐出口面をキャッピング機構11によるキャッピングすることによって、記録ヘッド3を保護するとともにインクの蒸発や乾燥を防止することができる。一方、ワイピング機構12はキャッピング機構11の近傍に配され、記録ヘッド3の吐出口面に付着したインク滴を拭き取るようになっている。
【0025】
また、記録装置では、キャッピング機構11に記録に関係しないインクを吐出することにより、予備吐出を行うことができる構成となっている。
【0026】
これらキャッピング機構11を使用した吸引動作及び予備吐出動作、ワイピング機構12を使用したワイパー動作により、記録ヘッド3のインク吐出状態を正常に保つことが可能となっている。
【0027】
図10では、インクタンク6と記録ヘッド3とが分離された構成について示しているが、インクタンクと記録ヘッドとが一体に形成されたヘッドカートリッジであっても良い。
【0028】
図11は、図10に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0029】
図11に示すように、コントローラ600は、MPU601、所要のテーブル、その他の固定データを格納したROM602を有する。また、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する特殊用途集積回路(ASIC)603を有する。また、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等を設けたRAM604、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行うシステムバス605を有する。さらに、以下に説明するセンサ群から入力されたアナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給するA/D変換器606などで構成される。
【0030】
また、610は画像データの供給源となるコンピュータ等でありホストと総称される。ホスト610と記録装置との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス信号等を送受信する。
【0031】
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリント開始を指令するためのプリントスイッチ622、及び回復動作の起動を指示するための回復スイッチ623など、操作者による指令入力を受けるためのスイッチから構成される。630はホームポジションを検出するためのフォトカプラなどの位置センサ631、環境温度を検出するために記録装置の適宜の箇所に設けられた温度センサ632等から構成される装置状態を検出するためのセンサ群である。
【0032】
さらに、640はキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。また、644は、記録ヘッド3を駆動させる記録ヘッドドライバである。本発明のスイッチング方式の直流電圧変換回路は、例えば、記録ヘッド3に駆動電圧を供給するために記録ヘッドドライバ644に使用することができる。また、例えば、搬送モータM2に電力を供給するために搬送モータドライバ642に使用することもできる。
【実施例1】
【0033】
図1は、本実施例の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【0034】
入力電圧Vin101は、スイッチング素子であるバイポーラ型のトランジスタ102のスイッチングによりパルス変換され、インダクタ103とキャパシタ104で構成されたLPF(ロー パス フィルタ)に入力され平滑化される。なお、ここではキャパシタ104として、電界コンデンサを使用している。前記トランジスタ102のエミッタと接地(GND)とを接続する配線にはSBD(ショットキー バリア ダイオード)105が配置されており、前記トランジスタ102がオフした時に前記インダクタ103により発生する電位に従って電荷が流れる。このようにトランジスタ102のエミッタとGNDとの間にSBDが配置された方式を非同期方式と呼ぶ。これに対して前記SBD105の替わりにトランジスタが配置され、前記トランジスタ102がオフしたタイミングで、前記トランジスタ102のエミッタと前記GNDとの間に配置したトランジスタをオンする制御方式もあり、これを同期方式と呼ぶ。平滑化された電圧Vout106を抵抗107と抵抗108により分圧して得られる所定の電圧109は、トランジスタ102の制御回路であるDC/DC制御ブロック110にフィードバックされる。そして、このフィードバックされた電圧109が安定するように前記DC/DC制御ブロック110は前記トランジスタ102のスイッチングを制御する。
【0035】
図2は、前記LPFに使用する電解コンデンサのESRについての温度特性の代表例を示すグラフである。図2のグラフに示されるとおり電解コンデンサのESRは低温時ほど大きい。また、その変化率は、低温になるに従い急激に高くなっていく。
【0036】
図3は、前記直流電圧変換回路において、通常周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【0037】
通常周期でLPFに入力される電圧波形301は、この通常周期である規定の周期T1 302毎にスイッチング制御が実施され、この波形においてはTon1 303の期間トランジスタがオンしている。以後、通常周期である規定の周期毎にスイッチング制御して駆動する状態を通常周波数駆動と呼ぶ。このようなスイッチング波形がLPFに入力されると、常温時LPFから出力される電圧波形304に示すように、平滑化された電圧にリップル状の変動が重畳したリップル電圧が出力される。ここで、LPFに使用する電解コンデンサの温度が低い場合、図2で示したようにESRが大きくなる。このため、LPFに使用する電解コンデンサの温度が低い場合、常温時にLPFから出力される電圧波形304のリップル電圧波高値306に対して、低温時にLPFから出力される電圧波形305のリップル電圧波高値307は大きくなり、電圧が不安定となる。
【0038】
図4は、前記直流電圧変換回路において、短周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【0039】
短周期でLPFに入力される電圧波形401に示されるスイッチング制御の周期T2 402は、前記図3のスイッチング制御の周期である周期T1 302より短い周期、つまり相対的に高い駆動周波数で制御されている。ただし、前記スイッチング制御の周期T2 402とトランジスタがオンしている期間Ton2 403との比率は、前記図3の周期T1 302とトランジスタがオンしている期間Ton1 303との比率とほぼ同じになっている。以後、短周期毎にスイッチング制御して駆動する状態を高速周波数駆動と呼ぶ。図4の低温時にLPFから出力される電圧波形404のリップル電圧波高値405は、前記図3の低温時にLPFから出力される電圧波形305のリップル電圧波高値307と比較して波高値が小さくなる。このように、同一の条件下でスイッチング制御の周期を短くすると、リップル電圧は小さくなる。
【0040】
しかし、スイッチング制御の周期を短くすると単位時間当りのスイッチング回数が増えるため、図1のトランジスタ102のスイッチングロスが増加する。そして、このスイッチングロスにより、図1のトランジスタ102の他、キャパシタ104(電解コンデンサ)等における発熱量が増加してしまうというデメリットが存在する。本発明はこのデメリットも回避するものである。
【0041】
図5に本実施例を説明する為のフローチャートを示す。
【0042】
直流電圧変換回路による処理を開始すると(ステップS110)、直流電圧変換回路は高周波数駆動を行う(ステップS140)。直流電圧変換回路を動作する前は、環境温度及びLPFの電解コンデンサの温度が低い可能性がある。この場合、前記LPFの電解コンデンサのESRは高い。電解コンデンサのESRが高いと、前記した通り直流電圧変換回路からの出力電圧のリップル電圧波高値が大きくなりこの出力電圧は不安定化する。このような状態を回避する為に、直流電圧変換回路による処理の開始時(起動時)には、高周波数駆動で動作してリップル電圧波高値を小さく抑えるように制御する(ステップS140)。
【0043】
電解コンデンサは、直流電圧変換回路の動作に伴うリップル電流の充放電が繰り返されると電解コンデンサの自己発熱により温度が上昇する。直流電圧変換回路の起動時は、この電解コンデンサの自己発熱による温度上昇が無い為、高周波数駆動によるスイッチングロスが発生しても問題無い。このため、予め定められた規定時間その高周波数駆動を維持する(ステップS150)。こうすることにより、LPF用の電解コンデンサは、前記したとおりこの電解コンデンサの自己発熱により温度が上昇してESRが低下する。ここで、高周波数駆動を維持する規定時間としては、直流電圧変換回路の動作保証下限温度から自己発熱により直流電圧変換回路からの出力電圧が安定するESRの値となると想定される温度まで電解コンデンサが温まるのに必要な時間とすることが望ましい。
【0044】
そして、予め定められた規定時間が経過するまで規定時間高周波数駆動を維持した後(ステップS150)、通常周波数駆動に移行して(ステップS160)、通常の動作状態である定常動作状態(ステップS170)になる。
【実施例2】
【0045】
図6は、本実施例の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【0046】
本実施例の直流電圧変換回路は、図1で示した実施例1の直流電圧変換回路に、さらに、DC/DC制御ブロック110に接続された周囲温度検出回路701を備える構成となっている。そして、DC/DC制御ブロック110が周囲温度検出回路701により検出された直流電圧変換回路の使用環境の温度に従って直流電圧変換機能の制御を切り替えることが可能な構成となっている。なお、それ以外の構成は図1で示した実施例1の直流電圧変換回路と共通する。
【0047】
図7に本実施例を説明する為のフローチャートを示す。
【0048】
直流電圧変換回路による処理を開始すると(ステップS110)、直流電圧変換回路の使用環境の温度検出を周囲温度検出回路701により行う(ステップS120)。直流電圧変換回路の使用環境の温度が予め定められた規定値温度以下の場合、直流電圧変換回路を高速周波数駆動させる(ステップS140)。この規定値温度とは、LPFの電解コンデンサの温度がこの規定値温度以下となった場合に、ESRが高くなり安定した電圧の出力が困難となる温度である。直流電圧変換回路の使用環境の温度が予め定められた規定値温度を超える場合、直流電圧変換回路を通常周波数駆動させる(ステップS160)。ステップS140からステップS170までは、実施例1の図5の各ステップと共通するため説明を省略する。
【実施例3】
【0049】
図8は、本実施例の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【0050】
本実施例の直流電圧変換回路は、図1で示した実施例1の直流電圧変換回路に、さらに、DC/DC制御ブロック110に接続された電解コンデンサの温度検出回路(キャパシタ温度検出回路)801を備える構成となっている。そして、DC/DC制御ブロック110が電解コンデンサの温度検出回路801により検出された電解コンデンサの温度に従って直流電圧変換機能の制御を切り替えることが可能な構成となっている。この電解コンデンサの温度検出回路801は、例えば温度検出素子を電解コンデンサのボディーに接触するように配置する構造となっている。なお、それ以外の構成は図1で示した実施例1の直流電圧変換回路と共通する。
【0051】
図9に本実施例を説明する為のフローチャートを示す。
【0052】
直流電圧変換回路による処理を開始すると(ステップS110)、電解コンデンサの温度検出を電解コンデンサの温度検出回路801により行う(ステップS130)。電解コンデンサの温度が予め定められた規定値温度以下の場合、直流電圧変換回路を高速周波数駆動させる(ステップS140)。この規定値温度とは、LPFの電解コンデンサの温度がこの規定値温度以下となった場合に、ESRが高くなり安定した電圧の出力が困難となる温度である。そして、電解コンデンサの温度が予め定められた規定値温度を超えるまで、ステップS130とステップS140とを繰り返すことにより、直流電圧変換回路を高速周波数駆動させる。ステップS130において、電解コンデンサの温度が予め定められた規定値温度を超えた場合、直流電圧変換回路を通常周波数駆動させる(ステップS160)。
【0053】
直流電圧変換回路の動作中は常に電解コンデンサの温度を検出するようにし、検出された温度に従って直流電圧変換回路のスイッチング周期を定期的に切り替えても良い。また、切り替えられるスイッチング周期を複数持っていても良い。スイッチング周期を複数持っている場合、電解コンデンサの温度が高くESRが小さい時には、長いスイッチング周期とし、電解コンデンサの発熱を抑えた寿命的に有利な制御とすることも可能である。
【0054】
以上の各実施例で示したように、本発明により、スイッチング方式の直流電圧変換回路において、LPFに使用される電解コンデンサのESR温度特性の影響による出力電圧の不安定化を防止し、安定した電圧を出力することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【図2】電解コンデンサのESRについての温度特性の代表例を示すグラフである。
【図3】直流電圧変換回路において通常周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【図4】直流電圧変換回路において短周期でLPFに入力される電圧の波形とLPFから出力される電圧の波形を示す図である。
【図5】実施例1の直流電圧変換回路の動作を説明する為のフローチャートである。
【図6】実施例2の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【図7】実施例2の直流電圧変換回路の動作を説明する為のフローチャートである。
【図8】実施例3の直流電圧変換回路を説明する為の回路図である。
【図9】実施例3の直流電圧変換回路の動作を説明する為のフローチャートである。
【図10】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図11】インクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
102 トランジスタ
103 インダクタ
104 キャパシタ
110 DC/DC制御ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路を有し、
前記制御回路は、想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする直流電圧変換回路。
【請求項2】
前記制御回路は、予め定められた規定時間が経過する前は、相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記規定時間が経過した後は、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換回路。
【請求項3】
前記直流電圧変換回路の使用環境の温度を検出する検出回路を有し、
前記制御回路は、前記検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、前記予め定められた規定時間が経過する前から相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする請求項2に記載の直流電圧変換回路。
【請求項4】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路と、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする直流電圧変換回路。
【請求項5】
前記キャパシタは、電解コンデンサであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の直流電圧変換回路。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、バイポーラ型のトランジスタであり、
前記バイポーラ型のトランジスタのエミッタと接地との間にショットキー バリア ダイオードが配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の直流電圧変換回路。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の直流電圧変換回路を用いていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを駆動させる記録ヘッドドライバと、前記記録媒体を搬送する搬送モータと、前記搬送モータを駆動させる搬送モータドライバとを有し、
前記直流電圧変換回路は、前記記録ヘッドドライバ及び前記搬送モータドライバの少なくともいずれか一方に用いられていることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする直流電圧変換回路の制御方法。
【請求項10】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出工程と、
前記キャパシタ温度検出工程により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御する制御工程と、
を有することを特徴とする直流電圧変換回路の制御方法。
【請求項1】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路を有し、
前記制御回路は、想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする直流電圧変換回路。
【請求項2】
前記制御回路は、予め定められた規定時間が経過する前は、相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記規定時間が経過した後は、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換回路。
【請求項3】
前記直流電圧変換回路の使用環境の温度を検出する検出回路を有し、
前記制御回路は、前記検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、前記予め定められた規定時間が経過する前から相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする請求項2に記載の直流電圧変換回路。
【請求項4】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路であって、
前記スイッチング素子を制御する制御回路と、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御することを特徴とする直流電圧変換回路。
【請求項5】
前記キャパシタは、電解コンデンサであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の直流電圧変換回路。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、バイポーラ型のトランジスタであり、
前記バイポーラ型のトランジスタのエミッタと接地との間にショットキー バリア ダイオードが配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の直流電圧変換回路。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の直流電圧変換回路を用いていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを駆動させる記録ヘッドドライバと、前記記録媒体を搬送する搬送モータと、前記搬送モータを駆動させる搬送モータドライバとを有し、
前記直流電圧変換回路は、前記記録ヘッドドライバ及び前記搬送モータドライバの少なくともいずれか一方に用いられていることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
想定される前記キャパシタの温度に従って前記スイッチング素子の駆動周波数を制御することを特徴とする直流電圧変換回路の制御方法。
【請求項10】
スイッチング素子と、インダクタと、キャパシタとを有し、入力される電圧を前記スイッチング素子によりパルス電圧に変換し、前記インダクタとキャパシタにより平滑化して出力する直流電圧変換回路の制御方法であって、
前記キャパシタの温度を検出するキャパシタ温度検出工程と、
前記キャパシタ温度検出工程により検出された温度が予め定められた規定値温度以下である場合には、前記キャパシタを駆動させることにより前記キャパシタの温度が前記規定値温度を超えるまで相対的に高い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御し、前記キャパシタ温度検出回路により検出された温度が予め定められた規定値温度を超える場合には、相対的に低い駆動周波数で前記スイッチング素子が駆動するように制御する制御工程と、
を有することを特徴とする直流電圧変換回路の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−289285(P2008−289285A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132031(P2007−132031)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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