説明

直線作動機及び直線作動機の製造方法

【課題】回転運動を直線運動に変換する変換機構(例えばボールねじ機構)を減速機に連結する部分の寸法及び減速機の寸法を短縮し、狭小な空間にも設置可能な直線作動機及び該直線作動機の製造方法を提供する。
【解決手段】軸受けホルダ54をフレーム51に内嵌し、軸受けホルダ54の径方向の寸法をフレーム51よりも短くする。金具を取り付ける部分を確保することなく、フレーム51から突出した軸受けホルダ54を減速機10の凹部23aに収容して、軸方向の寸法を短くする。軸受けホルダ54はフレーム51の内側又は減速機10の凹部23aに収容されており、減速機10の寸法を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転運動を減速機にて減速し、ボールねじ機構で直線運動に変換する直線作動機及び該直線作動機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扉の開閉及びテーブルの昇降など直線的な動作を実現するために、以前より、直線作動機が使用されている。特にモータの回転運動を減速機にて減速し、ボールねじ機構などで直線運動に変換する直線作動機は、空気圧又は油圧などの圧力を駆動源とする直線作動機に比べて、大掛かりな設備(例えばコンプレッサ)を必要とせず、また静粛性に優れることから、一般に広く普及している。
【0003】
特許文献1には、モータ及びローラねじ機構を減速機のケーシングの一面に並設した直線作動機が開示されている。該直線作動機は、筒形のハウジングを介して、ローラねじ機構の外筒(フレーム)と減速機のケーシングとを連結している。ハウジングの一端部は、ローラねじ機構の外筒に外嵌している。ハウジングの他端部にはフランジが形成してあり、該フランジにローラねじ機構側からねじを挿入し、ハウジングを減速機のケーシングに連結している。ハウジングにおいて、外筒とフランジとの間には、直線作動機を設置するための金具(例えばトラニオン金具)を取着するための部分が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−196756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ハウジングは、金具を取着するための部分を確保すべく、軸方向に長く設計しなければならない。また外部からねじを挿入するための部分を確保すべく、フランジを大径に設計しなければならない。更に減速機の寸法を、フランジの径方向の寸法に対応させる必要がある。金具の取着及びねじの挿入のために、ハウジングの短寸化には限界があり、直線作動機の小型化を促進することができない。そのため狭小な空間に直線作動機を設置する要請があった場合、この要請に応えることは難しい。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、回転運動を直線運動に変換する変換機構(例えばボールねじ機構)を減速機に連結する部分の寸法及び減速機の寸法を短縮し、狭小な空間にも設置可能な直線作動機及び該直線作動機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る直線作動機は、ケーシングの側部に設けたモータの回転を減速して出力する減速機と、前記側部に設けた筒形のフレームに収容してあり、前記減速機から出力された回転運動をねじ軸及びナットを介して直線運動に変換する変換機構と、前記フレーム及び側部を連結し、軸受けを保持する筒形の軸受けホルダとを備える直線作動機において、前記軸受けホルダは、一部が突出した状態で前記フレームに内嵌しており、前記フレームから突出した前記一部を収容する凹部を前記側部に形成してあり、前記軸受けホルダ及び凹部を結合してあることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、軸受けホルダをフレームに内嵌し、軸受けホルダの径方向の寸法をフレームの径方向の寸法よりも短くする。金具を取り付ける部分を確保することなく、フレームから突出した軸受けホルダを減速機の凹部に収容して、軸方向の寸法を短くする。
【0009】
本発明に係る直線作動機は、前記凹部の内奥に貫通孔を形成してあり、前記ケーシングの内側から前記貫通孔にねじを挿通し、前記軸受けホルダ及び凹部を結合してあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、ケーシングの内側からねじを挿通して、軸受けホルダ及び凹部を結合し、外部からねじを挿通する部分を軸受けホルダに形成しない。
【0011】
本発明に係る直線作動機は、前記モータの出力軸及び前記変換機構のねじ軸は、前記側部から前記ケーシング内にそれぞれ突出しており、前記ケーシングは、前記出力軸に嵌合した駆動歯車と、前記ねじ軸に嵌合しており、前記駆動歯車よりも前記側部寄りに配置された従動歯車と、同一の軸に各嵌合しており、前記駆動歯車に噛合する第1歯車及び前記従動歯車に噛合する第2歯車とを収容していることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、モータの出力軸に嵌合した駆動歯車及び第1歯車からなる1組目の歯車機構よりも、第2歯車及び変換機構のねじ軸に嵌合した従動歯車からなる2組目の歯車機構を、変換機構側に配置することによって、減速機の寸法が変換機構から離反する方向に拡張することを回避し、軸方向の寸法を短縮する。
【0013】
本発明に係る直線作動機は、前記ケーシングは、前記側部に対向する対向部と、該対向部の周縁部分から前記側部側に突出しており、前記対向部に一体成形された周面部とを有し、前記対向部及び周面部の内部に貫通孔を形成してあり、前記貫通孔にねじを挿通し、前記側部を前記周面部に結合してあることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、前記対向部及び周面部の内部にねじを貫通させて、側部を周面部にねじ止めする。ケーシング内の空間に通じる貫通孔が対向部になく、減速機内の潤滑油は対向部から漏出しない。
【0015】
本発明に係る直線作動機は、前記出力軸の突出端部を支持する軸受けを前記側部に対向する前記ケーシングの対向部に設けてあることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、出力軸を支持する軸受けを、出力軸が挿入された側部に対向する対向部に設けて、出力軸を安定に保持する。
【0017】
本発明に係る直線作動機は、前記変換機構を物体に取り付ける取付部を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、取付部によって変換機構を物体に固定し、直線作動機を所望の場所に設置する。
【0019】
本発明に係る直線作動機の製造方法は、減速機のケーシングにモータ及び変換機構を連結する直線作動機の製造方法において、前記変換機構のねじ軸を前記ケーシングに挿入する工程と、挿入したねじ軸の端部に従動歯車を嵌合させる工程と、前記モータの出力軸を前記ケーシングに挿入する工程と、挿入した出力軸の端部に駆動歯車を嵌合させる工程と、同一の軸に嵌合した第1歯車及び第2歯車を前記駆動歯車及び従動歯車に各噛合するように、ケーシング内に配置する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、減速機のケーシングに変換機構のねじ軸を挿入して従動歯車を嵌合し、その後、第1歯車をケーシング内に配置して、第1歯車と従動歯車との干渉を回避し、直線作動機の製造を実現する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る直線作動機にあっては、軸受けホルダをフレームに内嵌し、軸受けホルダの径方向の寸法をフレームの径方向の寸法よりも短くする。金具を取り付ける部分を確保することなく、フレームから突出した軸受けホルダを減速機の凹部に収容して、軸方向の寸法を短くする。軸受けホルダはフレームの内側又は減速機の凹部に収容されており、減速機の寸法を短縮することができる。フレームの内部に収容されている限り、軸受けホルダを軸方向に長く設計しても、減速機の寸法は長くならない。そのため軸受けホルダを軸方向に長く設計し、軸受けホルダ内に軸受けを配置することで、変換機構のねじ軸を安定に保持してねじ軸の振動及び騒音の発生を防止すると共に直線作動機の小型化を図ることができる。また軸受けホルダはフレームの内側又は減速機の凹部に収容されているので、外部に露出した面積が低減し、塗装部分が減少する。また外観上、凹凸が減少して意匠性が向上し、特にフレームに対する塗装は不要となり、直線作動機の製造時間を短縮することができ、また製造費用を削減することができる。
【0022】
本発明に係る直線作動機にあっては、ケーシングの内側からねじを挿通して、軸受けホルダ及び凹部を結合し、外部からねじを挿通する部分を軸受けホルダに形成しない。そのため従来の軸受けホルダに比べて、径方向の寸法を短くすることができる。また軸受けホルダ及び凹部を結合するねじはケーシング内に位置するので、ねじによる凹凸の形成を回避することができる。
【0023】
本発明に係る直線作動機にあっては、モータの出力軸に嵌合した駆動歯車及び第1歯車からなる1組目の歯車機構よりも、第2歯車及び変換機構のねじ軸に嵌合した従動歯車からなる2組目の歯車機構を、変換機構側に配置することによって、減速機の寸法が変換機構から離反する方向に拡張することを回避し、減速機の寸法を短縮する。また減速機の短縮に応じて、モータの出力軸は短縮されるので、出力軸に作用するOHL(Over Hang Load)が低下し、出力軸の基端部に補強のための軸受けを設ける必要がない。
【0024】
本発明に係る直線作動機にあっては、前記対向部及び周面部の内部にねじを貫通させて、側部を周面部にねじ止めする。ケーシング内の空間に通じる貫通孔が対向部になく、対向部からの潤滑油の漏出を回避することができ、清潔な空間を保つべき室内(例えばクリーンルーム)において使用することができる。
【0025】
本発明に係る直線作動機にあっては、側部に対向する対向部に軸受けを設けて、モータの出力軸の端部を支持する。そのため出力軸の振動が防止され、出力軸を減速機において安定に保持することができる。
【0026】
本発明に係る直線作動機にあっては、取付部を介して変換機構を物体に固定することによって、直線作動機を所望の場所に設置することができる。
【0027】
本発明に係る直線作動機の製造方法にあっては、減速機のケーシングに変換機構のねじ軸を挿入して従動歯車を嵌合し、その後、第1歯車をケーシング内に配置するので、製造過程において第1歯車と従動歯車との干渉を回避することができ、小型の直線作動機を組立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1に係る直線作動機を略示する縦断面図である。
【図2】ケース及び蓋部を略示する斜視図である。
【図3】ケース及び蓋部を部分的に略示する拡大縦断面図である。
【図4】軸受けホルダ及び蓋部を部分的に略示する斜視図である。
【図5】実施の形態2に係る直線作動機を略示する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る直線作動機を示す図面に基づいて詳述する。図1は直線作動機を略示する縦断面図である。
直線作動機はモータ1と、該モータ1の回転運動を減速して出力する減速機10と、該減速機10から出力された回転運動を直進運動に変換するボールねじ機構50(変換機構)とを備える。前記モータ1は図示しないブレーキと、第1ピニオン(駆動歯車)11が嵌合した出力軸2とを備える。該出力軸2は、減速機10に挿入してある。
【0030】
減速機10は、縦長の矩形状をなすケーシング20を備える。該ケーシング20は、縦長の矩形板状の蓋部(側部)21と、該蓋部21側を開放したケース27とを備える。長手方向における蓋部21の一端部側に貫通孔22が形成してある。該貫通孔22に前記出力軸2が挿入してあり、出力軸2はケース27内に位置する。出力軸2全体に、出力軸2の先端側を底部とした有底円筒形の第1ピニオン11が嵌合している。該第1ピニオン11は、中途部に歯車部11aを形成してある。歯車部11aは、ケース27寄りに位置する。第1ピニオン11は、底部の中心部からケース27側に突出し、後述する軸受け12に係合する係合部11bを備える。出力軸2の基端部付近に位置する第1ピニオン11と貫通孔22の内周面との間に、オイルシール3が周設してある。該オイルシール3は、第1ピニオン11及び貫通孔22に密着している。そのため減速機10内の潤滑油は、貫通孔22から漏出しない。
【0031】
前記ケース27は、前記蓋部21に対向しており、縦長の矩形板状のケース底部(対向部)27aと、該ケース底部27aの周縁部に周設してあり、蓋部21側に突出したケース周面部(周面部)27bとを備える。該ケース周面部27bとケース底部27aとは一体に成形してある。ケース底部27aは、貫通孔22に対向する位置に凹部28を備える。該凹部28に、軸受け12が設けてある。第1ピニオン11の係合部11bは、軸受け12の内側に係合し、回転可能に支持されている。
【0032】
長手方向におけるケース底部27aの中央部分であって、ケーシング20の内側に凹部29が形成してある。前記蓋部21おいて、凹部29に対向する位置に凹部24が形成してある。各凹部29,24には、軸受け16,17が設けてある。両軸受け16,17は、後述する第1ホイル(第1歯車)14及び第2ピニオン(第2歯車)15を支持する支軸(軸)13の両端部を回転可能に支持している。支軸13のケース27側に、中央に貫通した孔を有し、周面に歯を形成した第1ホイル14が嵌合している。支軸13の蓋部21側に第2ピニオン15が嵌合している。第1ホイル14は、第2ピニオン15よりも大径である。第1ホイル14は、第1ピニオン11に噛合している。第1ホイル14のケース27側の側面と第1ピニオン11の底面とは、支軸13の軸方向において面一になるように配してある。
【0033】
長手方向における前記蓋部21の他端部において、ケース27と反対側の表面に、円形の凹部23aを形成してある。該凹部23aの底部(内奥)の中央部分には、後述するボールねじ機構50のねじ軸52を挿入する貫通した挿入穴23が形成してある。凹部23aの径方向及び深さ方向の寸法は、後述する円筒形の軸受けホルダ54の突出した部分に対応している。凹部23aの径方向の寸法は、後述する角筒形のフレーム51の縦寸法及び横寸法よりも小さい。挿入穴23には、ボールねじ機構50のねじ軸52の一端部が、ケース27と反対側から挿入してあり、該一端部は、ケース27内に位置する。該一端部に、中央に貫通した孔を有し、周面に歯を形成した第2ホイル(従動歯車)18が嵌合している。該第2ホイル18は、第1ピニオン11及び第1ホイル14よりも蓋部21側に位置している。第2ホイル18は、第2ピニオン15に噛合している。
【0034】
図2はケース27及び蓋部21を略示する斜視図、図3はケース27及び蓋部21を部分的に略示する拡大縦断面図である。
図2及び図3に示すように、ケース底部27aの四隅には貫通孔26a,26a,26a,26aがそれぞれ設けてあり、該貫通孔26aは、ケース底部27a及びケース周面部27bの内部を貫通している。ケース底部27aの外側表面には、貫通孔26aに連なり、ねじ260の頭部が収容される座繰り26bが形成してある。蓋部21は、貫通孔26aに対応した位置に配してあり、内周面にねじ溝を形成したねじ孔21aを備える。各貫通孔26a,26a,26a,26aに、ケース底部27aの外側からねじ260、260、260、260が挿入してあり、ねじ260とねじ孔21aとが螺合している。ケース27と蓋部21とは、ねじ260によって緊密に結合している。なおケース底部27aの四隅部分は、ケース27の他の箇所に比べて肉厚である。
【0035】
図1に示すように、ボールねじ機構50は、角筒形のフレーム51を備えている。該フレーム51の内側は、軸方向に沿う貫通した円筒形に形成されている。フレーム51の一端部には、ボールねじ機構50と蓋部21とを連結し、軸受けを保持する円筒形の軸受けホルダ54が内嵌している。該軸受けホルダ54は、フレーム51から軸方向に僅かに突出している。突出した部分は径方向に張り出しており、小径のフランジ状をなす。該フランジ部分の外径は、フレーム51の縦方向及び横方向寸法よりも小さい。軸受けホルダ54の両端部に、軸受け55,56が各内嵌してある。軸受けホルダ54の内側にねじ軸52が配してあり、両軸受け55,56によって、ねじ軸52の中途部が回転可能に支持されている。ねじ軸52の他端部には、ねじ溝が形成してあり、該ねじ溝にナット53が螺合している。ねじ溝とナット53との間には、多数のボール(図示せず)が転動可能に係合している。ねじ軸52の回転によって、ナット53は軸方向に進退する。なおモータ1が停止している場合、ブレーキが作用し、停止中に荷重を保持することができる。これにより、停止時の惰行を防止することができ、停止精度を向上させることができる。
【0036】
図4は軸受けホルダ54及び蓋部21を部分的に略示する斜視図である。
蓋部21の挿入穴23の周囲であって、凹部23aの底面部分には、ねじ210、210、210、210を挿入するための複数の貫通孔21b,21b,21b,21bが形成してある。軸受けホルダ54におけるフレーム51から突出した部分(フランジ部分)に、内周面にねじ溝を形成した複数のねじ孔54a,54a,54a,54aが開設してある。該ねじ孔54aと貫通孔21bとは対応している。軸受けホルダ54において、フレーム51から突出した部分は、全体が前記凹部23a内に収容されている。ケーシング20の内側からねじ210を貫通孔21bに挿入し、ねじ孔54aに螺合して、蓋部21と軸受けホルダ54とを連結している。これにより、ボールねじ機構50は減速機10に固定してある。なお軸受けホルダ54において、フレーム51から突出した部分は、前述したねじ止めによって凹部23aに密着しており、減速機10内の潤滑油は凹部23aから漏出しない。
【0037】
図1に示すように、前記フレーム51の他端部に、ボールねじ機構50を物体に取り付けるための取付部70が固定してある。該取付部70は、ねじ軸52の軸方向に直角な矩形板状をなし、フレーム51が嵌合する嵌合穴71を中央部に備える。また嵌合穴71の周囲に、ねじを挿入するための複数の貫通孔72、72、・・・、72が形成してある。利用者は、フレーム51の他端部を嵌合穴71に嵌合し、貫通孔72にねじを挿入して、物体に螺結することで、直線作動機を所望の場所に設置することができる。
【0038】
直線作動機の製造は以下に示す手順で実行される。軸受けホルダ54におけるフレーム51から突出した部分を凹部23aに収容して、ボールねじ機構50を位置決めする。このとき挿入穴23にボールねじ機構50のねじ軸52が挿入される。ねじ210を貫通孔21bに挿入してねじ孔54aに螺合させ、蓋部21と軸受けホルダ54とを連結する。ねじ軸52の一端部に第2ホイル18を嵌合する。蓋部21の貫通孔22にモータ1の出力軸2を挿入し、出力軸2に第1ピニオン11を嵌合する。蓋部21の凹部24に軸受け17を配置する。支軸13における第2ピニオン15側の端部を、軸受け17に係合する。なお支軸13には予め第1ホイル14及び第2ピニオン15を嵌合してある。第2ピニオン15と第2ホイル18とを噛合させ、第1ホイル14と第1ピニオン11とを噛合させる。支軸13における第1ホイル14側の端部及び第1ピニオン11の係合部11bに、軸受け16,12をそれぞれ係合させる。各凹部29,28に各軸受け16,12を係合させて、ケース27と蓋部21とを合わせる。ケース27の貫通孔26aにねじ260を挿入し、蓋部21に螺合してケース27と蓋部21とを連結する。
【0039】
ボールねじ機構50のねじ軸52を蓋部21に挿入して第2ホイル18を嵌合し、その後、第1ホイル14をケーシング20内に配置するので、製造過程において第1ホイル14と第2ホイル18との干渉を回避することができ、小型の直線作動機を製造することができる。
【0040】
実施の形態1にあっては、軸受けホルダ54をフレーム51に内嵌し、軸受けホルダ54の径方向の寸法をフレーム51の内径よりも短くする。軸方向において金具を取り付ける部分を確保することなく、軸受けホルダ54におけるフレーム51から突出した部分全体を減速機10の凹部23aに収容し、軸方向の寸法を短くする。軸受けホルダ54はフレーム51の内側又は減速機10の凹部23aに収容されており、従来の減速機と比べて減速機10の寸法を短縮することができる。フレーム51の内部に収容されている限り、軸受けホルダ54を軸方向に長く設計しても、減速機10の寸法は長くならない。そのため軸受けホルダ54を軸方向に長く設計し、軸受けホルダ54内に軸受け55,56を配置することで、ボールねじ機構50のねじ軸52を安定に保持してねじ軸52の振動及び騒音の発生を防止すると共に直線作動機の小型化を図ることができる。また軸受けホルダ54はフレーム51の内側又は減速機10の凹部23aに収容されているので、外部に露出した面積が低減し、塗装部分が減少する。また外観上、凹凸が減少して意匠性が向上する。また角筒形をなし、すっきりとした外観を備えるフレーム51に対して塗装が不要となり、直線作動機の製造時間を短縮することができ、製造費用を削減することができる。
【0041】
フレーム51から径方向外側に張り出しており、外部からねじを挿通するための大径のフランジ部分を軸受けホルダ54に形成しない。そのため従来の軸受けホルダに比べて、大径のフランジ部分を削除して径方向の寸法を短くすることができる。またケーシング20の内側からねじ210を挿通して、軸受けホルダ54及び凹部23aを結合している。ねじ210はケーシング20内に位置するので、ねじ210による凹凸の形成を回避することができ、軸受けホルダ54の付近はすっきりとした外観を呈し、塗装が不要となる。
【0042】
またモータ1の出力軸2に嵌合した第1ピニオン11及び第1ホイル14からなる1組目の歯車機構よりも、第2ピニオン15及び第2ホイル18からなる2組目の歯車機構を、ボールねじ機構50側に配置することによって、減速機10の寸法がボールねじ機構50から離反する方向に拡張することを回避し、減速機10の寸法を短縮する。また減速機10の短縮に応じて、モータ1の出力軸2は短縮されるので、出力軸2に作用するOHLが低下し、出力軸2の基端部に補強のための軸受けを設ける必要がない。
【0043】
ケース底部27a及びケース周面部27bの内部にねじを貫通させて、蓋部21をケース周面部27bにねじ止めしている。そのためケース底部27aからケーシング20内に通じる貫通孔がなく、ケース底部27aからの潤滑油の漏出を回避することができ、清潔な空間を保つべき室内(例えばクリーンルーム)において使用することができる。またケース底部27aに軸受け12を設けて、モータ1の出力軸2の先端部を支持しているので、出力軸2の振動が防止され、出力軸2を減速機10において安定に保持することができる。
【0044】
なおケース底部27aにおいて、ねじ軸52の一端部に対向する位置に軸受けを設け、該軸受けにて、ねじ軸52の一端部を回転可能に支持するように構成してもよい。
【0045】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る直線作動機を示す図面に基づいて詳述する。図5は直線作動機を略示する縦断面図である。
モータ1の出力軸2には、プーリ31が嵌合している。出力軸2の基端部にオイルシール3が周設してあり、オイルシール3によって貫通孔22を封止してある。ケース底部27aにおいて、ねじ軸52の一端部に対向する位置に凹部35が形成してある。該凹部35には、軸受け34が設けてある。該軸受け34にて、ねじ軸52の一端部が回転可能に支持されている。ねじ軸52の一端部には、プーリ31よりも大径のプーリ32が嵌合している。両プーリ31,32の間に、ベルト33が掛架してある。モータ1の回転運動は、ベルト33及びプーリ31,32を介して減速され、ねじ軸52に伝達される。なおベルト33としては、歯付きベルト及びVベルトが挙げられる。
【0046】
実施の形態2に係る直線作動機の構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
実施の形態1及び2は、ボールねじ機構50を使用して回転運動を直進運動に変換しているが、これに限定されるものではなく、回転運動を直進運動に変換する構成を使用すればよい。例えばボールに代えてローラを用いたローラねじ機構を使用してもよい。ねじ210をケーシング20内から貫通孔21bに挿通して、軸受けホルダ54を凹部23aに連結しているが、連結のための構成はこれに限定されない。例えばケーシング20の外側からねじによって連結するように構成してもよいし、溶接によって連結してもよい。なお減速比が1対1になるように減速機10を構成してもよい。例えば第1ホイル14及び第2ピニオン15を略同径に構成するか又は両プーリ31,32を同径に構成してもよい。
【0048】
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲に記載された事項及び特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ
2 出力軸
10 減速機
11 第1ピニオン(駆動歯車)
12 軸受け
13 支軸(軸)
14 第1ホイル(第1歯車)
15 第2ピニオン(従動歯車)
18 第2ホイル(第2歯車)
20 ケーシング
21 蓋部(側部)
23a 凹部
27 ケース
27a ケース底部(対向部)
27b ケース周面部(周面部)
50 ボールねじ機構(変換機構)
51 フレーム
52 ねじ軸
53 ナット
54 軸受けホルダ
70 取付部
210,260 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの側部に設けたモータの回転を減速して出力する減速機と、前記側部に設けた筒形のフレームに収容してあり、前記減速機から出力された回転運動をねじ軸及びナットを介して直線運動に変換する変換機構と、前記フレーム及び側部を連結し、軸受けを保持する筒形の軸受けホルダとを備える直線作動機において、
前記軸受けホルダは、一部が突出した状態で前記フレームに内嵌しており、
前記フレームから突出した前記一部を収容する凹部を前記側部に形成してあり、
前記軸受けホルダ及び凹部を結合してあること
を特徴とする直線作動機。
【請求項2】
前記凹部の内奥に貫通孔を形成してあり、
前記ケーシングの内側から前記貫通孔にねじを挿通し、前記軸受けホルダ及び凹部を結合してあること
を特徴とする請求項1に記載の直線作動機。
【請求項3】
前記モータの出力軸及び前記変換機構のねじ軸は、前記側部から前記ケーシング内にそれぞれ突出しており、
前記ケーシングは、
前記出力軸に嵌合した駆動歯車と、
前記ねじ軸に嵌合しており、前記駆動歯車よりも前記側部寄りに配置された従動歯車と、
同一の軸に各嵌合しており、前記駆動歯車に噛合する第1歯車及び前記従動歯車に噛合する第2歯車と
を収容していること
を特徴とする請求項1又は2に記載の直線作動機。
【請求項4】
前記ケーシングは、
前記側部に対向する対向部と、
該対向部の周縁部分から前記側部側に突出しており、前記対向部に一体成形された周面部と
を有し、
前記対向部及び周面部の内部に貫通孔を形成してあり、
前記貫通孔にねじを挿通し、前記側部を前記周面部に結合してあること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の直線作動機。
【請求項5】
前記出力軸の突出端部を支持する軸受けを前記側部に対向する前記ケーシングの対向部に設けてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の直線作動機。
【請求項6】
前記変換機構を物体に取り付ける取付部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の直線作動機。
【請求項7】
減速機のケーシングにモータ及び変換機構を連結する直線作動機の製造方法において、
前記変換機構のねじ軸を前記ケーシングに挿入する工程と、
挿入したねじ軸の端部に従動歯車を嵌合させる工程と、
前記モータの出力軸を前記ケーシングに挿入する工程と、
挿入した出力軸の端部に駆動歯車を嵌合させる工程と、
同一の軸に嵌合した第1歯車及び第2歯車を前記駆動歯車及び従動歯車に各噛合するように、ケーシング内に配置する工程と
を備えることを特徴とする直線作動機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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