説明

相互作用型創傷ケアシステム

【課題】閉塞的な被覆と、治癒過程での創傷との相互作用とを提供して、創傷治癒の増進、患者の慰安の改善および費用の削減のために最適な期待および液体環境を提供する。
【解決手段】
本発明は、ポリアルキレン・カーボネートを含む適用液を調製すること、該適用液を動物組織に適用すること、および、該動物組織の上にフィルム包帯を形成することを含む、動物組織の上にその場でフィルム包帯を形成する方法を提供する。本発明は、動物組織の上にフィルム包帯を形成するための材料をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独特な包帯を含む創傷ケアシステムと、前記包帯を構成する組成物とに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、体外の創傷(皮膚等)と、体内の創傷(臓器等)との両方を覆う創傷ケアに関する。創傷ケアには医学的および経済的の両方で多くの側面がある。治療期間が短いほど、その手順は経済的であり、患者の慰安も大きい。治療および看護費用は物品コストより10倍近く高い。治療期間を増加させる合併症のいくつかは、感染、最適でない創傷ケア包帯、治癒および縫合の期間が長いことである。これらは使用される創傷ケアシステムによって影響される。最も一般的な創傷包帯は、ガーゼおよびテープであった。その後、多層システムがフィルム裏打ち付きで設計された。創傷のフィルム被覆を提供する液体包帯も示唆されている。これらの創傷被覆は、所望の保護を創傷に部分的に与えるが、創傷治癒を増進し、瘢痕形成(scarring)を最小にするために最適な環境を提供するわけではない。
【0003】
ガーゼ包帯は、水、細菌、埃、外界の酸素その他の外来物から創傷を完全には保護できない場合がある。ガーゼは創傷にくっつくことがあって、包帯の取り替えの際に創傷を傷害する原因となり、感染の蓋然性を増大させ、治癒期間を引き延ばす。
【0004】
多層包帯は、ガーゼ包帯に比べると改善されるが、窮屈でかさばることがあり、細菌および外来物が創傷に侵入することを可能にする通路を形成しやすくする場合がある。これらの包帯は、創傷滲出物を吸収する層を有し、創傷治癒期間中取り替える必要があるのが一般的である。傷害は、包帯が創傷にくっつくことによって起こる場合がある。これらの多層包帯は、フィルム裏打ちを有する場合がある。典型的にはポリウレタンが用いられる。これは、治癒の初期段階で創傷を外界の酸素から保護するための外界の酸素に対する所望の障壁を提供しない。一部の多層包帯は、単に包帯とその厚さのためだけによってやや低レベルの酸素障壁を提供する場合がある。
【0005】
従来示唆された液体包帯は、通常、有機溶媒中に溶解したポリマー溶液である。前記溶液は創傷に直接適用、すなわち塗布され、前記溶媒が蒸発およびまたは沈殿するか、あるいは、前記溶液がその場で(in situ)凝固して、前記創傷の上を覆うフィルムが残る。これらのフィルムはニトロセルロースポリマーまたはシアノアクリル酸の場合がある。これらのフィルムは、前記創傷の部位に酸素障壁特性を与えることはない。これらはエラストマーではないため、弾性および復元性を前記フィルムに付与することはない。これらの軟化温度は高いため、前記フィルムは皮膚/体温の結果として流動することができない。ニトロセルロースフィルムは、例えば親指の付け根その他の動きのある解剖学的な身体部分のような曲げ伸ばしする部位の上に配置されるとき、ひび割れを形成する傾向がある。その後、これらのひび割れは前記創傷の保護被覆を破壊する。これらのフィルムはまた望ましくない化学臭を発する場合がある。上記の創傷の被覆のいずれも、酸素障壁、弾性および復元性、前記部位へ適合性、すなわち、前記部位をぴったり被覆する性質を改善するための低いガラス転移温度、二酸化炭素と水とを発生する前記創傷の部位での前記ポリマーの酵素的分解によって前記創傷にくっつかないことのような、創傷治癒の増進に必要な所望の特性の組み合わせの全てを提供するわけではない。
【0006】
ポリカーボネートは、フィルムとして使用される多くのポリマーの1つとして挙げられる。ポリカーボネートには本出願で開示するような作用はない。ポリカーボネートはポリアルキレンカーボネートとは異なるポリマーである。
【0007】
創傷においては、酸素の豊富なゾーンから酸素のすくないゾーンに向けて新しい血管が成長する(非特許文献1)。正常組織は約40mmHgの酸素分圧がある。血管形成は約1−10mmHgの比較的低酸素状態で刺激される(非特許文献2−4)。
【非特許文献1】Knighton Dら、「酸素分圧が、マクロファージによる血管形成因子の発現を調節する。」、Science、1983年、221巻、1283−5頁。
【非特許文献2】Hunt TKら、「創傷微細環境」、Cohen IKら(編)、「創傷治癒:生化学的および臨床的側面」、Philadelphia、WB Saunders、1992年、274−281頁。
【非特許文献3】Pai MPら、「開放した創傷口の治癒に対する異なる酸素分圧の影響」、Gynecol Obstet 1972年、135巻、756−758頁。
【非特許文献4】Storch、TGら、「酸素濃度がヒト繊維芽細胞の血清および成長因子への増殖応答を調節する。」、Exp Cell Res、1988年、175巻、317−325年。
【0008】
外界の酸素を透過しない包帯は、血管形成を最も迅速に進行させる。初期の酸素欠乏と後期の酸素供給が治癒につながる。創傷のpH低下も血管形成に寄与する。低いpHは、創傷組織がその二酸化炭素を全部喪失するのを防ぐことによって維持される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の方法における一部の創傷ケアシステムに関する課題の一部は以下の事項を含む。
・初期段階で外界の酸素が創傷領域に侵入することを許す創傷の包帯の結果として、前記創傷の周辺の酸素ガス環境が最適でない(比較的高い)こと、
・適切な(十分な)湿度がないこと、
・包帯の接着および/または被覆が悪いため、および、弾性がないから前記創傷に至るひび割れ、通路およびしわを形成するフィルム被覆のために創傷領域に細菌が侵入すること、
・前記創傷からの水蒸気伝達が十分でないことと関連して、滲出物の除去が最適でないこと、
・創傷にかかる機械的圧力が不適切であること、
・取り扱いによるガーゼ包帯の汚染、
・創傷にくっついて、傷害を生じるガーゼ包帯による治癒途上の細胞への傷害、特に、包帯の交換の際に上皮細胞をはがしとって治癒を妨害することによる傷害。
・柔軟かもしれないが、曲げ伸ばしの際に身体形状にぴったりと適合する弾性がない堅い包帯、
・高いpHおよびアルカローシスにつながる、創傷組織からの二酸化炭素の喪失、
・発疹を起こすテープに対する皮膚の感受性、
・程度の異なる化学臭、
および
・他のフィルム包帯が、必要な鍵となる特性の全てを単一のフィルムに取り込むことができないこと。
【0010】
本発明は上記の課題に応える相互作用型創傷ケアシステムを提供する。我々のシステムは、閉塞的な被覆と、治癒過程での創傷との相互作用とを提供して、創傷治癒の増進、患者の慰安の改善および費用の削減のために最適な期待および液体環境を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
前記創傷被覆が、酸素、湿度、滲出物、二酸化炭素および細菌の創傷の周りでの必要濃度を可能にするとき、創傷治癒が増進し瘢痕形成が最小となる。
【0012】
ポリアルキレン・カーボネート(PAC)とよばれる最近開発されたポリマーのファミリーは、創傷の内部および周囲の最適な環境を設計するために利用される。これらのポリマーは二酸化炭素をエポキシドと反応させることによって生成される(Inoue S、“Organic and Bio−Organic Chemistry of Carbon Dioxide” Halsted Press、New York、pp167−176、1982)。前記ポリマーの得られた特性は選択されるエポキシドに応じて異なる。
【0013】
ガラス転移温度の低い(15°Cないし25°Cないし40°C)軟質弾性ポリマーから、例えば、132°Cというガラス転移温度の高い硬質硬直ポリマーまでの範囲の特性を有するポリマーが製造可能である。中間の特性を有するポリマーは、化学的手段(三元共重合体(terpolymer))および物理的手段(ブレンド)によって製造可能である。これらのポリマーは、創傷治癒の増進のために、外界の酸素から創傷を隔て、該創傷からの二酸化炭素伝達を阻む、程度の異なる酸素障壁を提供するように選択される場合がある。
【0014】
これらのポリマーからできたフィルムは皮膚に接着して、外部の埃、水および細菌に対する障壁を形成し、前記創傷からの水蒸気透過を可能にして、過剰な滲出物および細菌が蒸発によって前記創傷から出て行って、創傷の圧力および感染を低減する。
【0015】
これらのフィルムは創傷には接着しないので、該創傷の正常な治癒過程を乱すことなく頻繁に包帯を交換することを可能にする。さらに、これらのポリマーは、1種類または2種類以上のポリアルキレン・カーボネートと、1種類または2種類以上の溶媒との溶液を提供し、多数の生物学的に受容可能な溶媒に適当なフィルム、発泡体またはゲルの組成物を設計することを可能にする。これらのポリマーは、水系エマルジョン(water based emulsion)として製造される場合もある。これらの溶液またはエマルジョンは、創傷の周りにブラシまたはスプレーで塗布されて、創傷治癒に適合する保護および相互作用型フィルムを形成する場合がある。押出チューブからのゲルか、溶融形成フィルム(melt formed films)か、ゴムローラー(squeegee)をかけ、または、スパーテルで拡げる溶液かのような他の適用方法が使用可能である。創傷治癒を最適化する化学的な医療システムの設計を可能にするために、他の接着剤がこれらの溶液に溶解または分散される場合がある。前記ポリアルキレン・カーボネート液に添加可能な薬剤は、例えば、周知の抗細菌剤(エリスロマイシンおよびクリンダマイシン等)、ステロイド(クロベスタゾール、トリアムシノレンおよびフルオシノニド等)、抗真菌薬(シクロプロクス(Penlac)、グリセオフルビンおよびテルビナフィン(Lamisil)等)、免疫変調剤、抗微生物剤、抗ざ瘡剤および抗乾癬剤のいずれかを含む。創傷はまず薬剤等で前処置され、それから、保護フィルム被覆等がスプレーで塗布される場合がある。本発明の目的は、従来の包帯の課題を解決するために、適当なポリアルキレン・カーボネート・ポリマーまたはポリアルキレン・カーボネート・ポリマーの組み合わせを適切に設計することによって、他の創傷ケア包帯に固有の課題に応えることである。
【0016】
選択的に利用可能なポリアルキレン・カーボネート・ポリマーの本ファミリーの1または2以上の物理化学的特性は、以下の事項である。
・透明性、非晶質、熱可塑性があること、
・ガラス転移温度が約15°Cから約132°Cまでの範囲内であること、
・皮膚接着性が優良で、創傷に付着しないこと、
・硬いエンジニアリングポリマーに対し、復元性が高い軟質弾性ポリマーであること、
・酵素分解または燃焼により主に二酸化炭素および水に分解されること、
・優良な酸素障壁であること、
・水蒸気に半透過性があること、
・安価であること、
・無臭で即乾性があること、
・沸点の低い溶媒から沸点の高い溶媒までの広範囲の溶媒で可溶性であること、
・ポリエチレン・カーボネートのガラス転移温度が、例えば25°Cのように低いこと、
・動く身体の形状への適応を促進するために、皮膚および全身の体温によって軟化して、柔らかく、柔軟で、弾性のある包帯になること、
・酸素透過性を制御可能であること、
・外部の水、埃および細菌に対する障壁であること、
・水系エマルジョンとして製造できること、および、
・フィルムの自己接着性が優良であること。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明を利用するためには、単数または複数の前記ポリアルキレン・カーボネート・ポリマーが液体状で動物組織に(例えば、創傷を覆うように)適用される、すなわち、塗布される。したがって、例えば、前記ポリアルキレン・カーボネートは生体適合性のある1種または2種以上の溶媒に可溶性である。利用可能な溶媒の一部は、塩化メチレン、ジクロロエタン、プロピレン・カーボネート、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンおよびその他のケトン、エステル、エーテル等である。前記ポリマーの濃度は送達システムに応じて異なる。
【0018】
一般則として、アルキレン部分が約2個から約9個の炭素原子を含むポリアルキレン・カーボネートを用いることが好ましい。アルキレン部分が、エチレン、プロピレンおよびブチレンのうちの1つである、ポリアルキレン・カーボネートを用いることが特に好ましい。
【0019】
好ましい溶媒の一部は塩化メチレンおよびアセトンを含むが、一般に、アルコールその他の周知の有機溶媒が利用可能である。ポリアルキレン・カーボネートがポリエチレン・カーボネートのときには、塩化メチレンを溶媒として用いることが好ましいが、ポリアルキレン・カーボネートがポリプロピレン・カーボネートのときには、アセトンを溶媒として用いることが好ましい。
【0020】
創傷は、まず洗浄され、それから、以下の適用方法のいずれかが用いられる。
【0021】
・スプレー缶(エアロゾル)または瓶スプレーが用いられる場合には、前記創傷の上および周囲に噴霧およびフィルム形成するために適当な粘度を与えるために、より低濃度のポリマーが使用される。この濃度は、選択された溶媒および分子量に応じても異なるであろう。この用途でのポリマー濃度は、通常は、溶液重量濃度で約5%から約35%までの範囲内である。
【0022】
ブラシ、綿棒(Q−チップ)、点眼具(eye−dropper)または棒が用いられる場合には、前記創傷から溶液が流れ出してしまわないように、適当な粘度を有する中濃度のポリマーが用いられる。この用途のポリマー濃度は、通常は、溶液重量濃度で約5%から約50%の範囲内である。
【0023】
ゲルまたは押し出しチューブが用いられる場合には、ポリマー濃度はもっと高い場合がある。前記ゲルは、直接適用されて、前記創傷の上および周囲にフィルムを形成するために塗布される。この用途でのポリマー濃度は、通常は、前記ゲルの重量濃度で約20%から約60%の範囲内である。
【0024】
溶融フィルム形成器から取り出される溶融フィルムが用いられる場合には、ポリマー濃度は、添加物、例えば、吸収剤、保湿剤、薬剤、可塑化剤等をすべて除いたポリマー重量で例えば約100%以内という比較的高い濃度の場合がある。
【0025】
例えば水系エマルジョンのような乳剤が用いられる場合には、ポリマー濃度は系全体の他の化学物質に基づいて最大化される場合がある。ポリマー濃度は、前記乳剤に基づく重量で約10%から約60%までの範囲内の場合がある。
【0026】
上記の方法のいずれかで製造されたフィルムは、優良な自己接着性を有する。したがって、これらのフィルムは、特定の身体部分の周囲を完全に被覆して、自己接着するようにできる。フィルムの上を噴霧することは、身体の半端な形状(不規則な形状)の創傷の周りを完全な密封状態にすることによって、創傷の周囲の保護をより手厚くすることができる。
【0027】
酸素障壁特性が優良で、約25°Cの低いTgで、伸張回復性、柔軟性および弾性が高いポリアルキレン・カーボネートを使用することは、不規則な身体形状に優良な適合性および保護を与える。低いTgは、皮膚体温が前記ポリマーをさらに軟化させ、不規則な形状により適合することを可能にして、患者の慰安を増大し、創傷のすばらしい保護を提供する。フィルムの厚さは、約0.25ミルから、約3.0ミルより厚い、例えば、約3.5ミルまでの場合がある。
【0028】
ある種のタイプの創傷の治癒の初期段階では、外界の酸素は望ましくない。外界の酸素を遮断し、血管内部の酸素が創傷治癒を補助することを可能にすることによって、創傷は、より迅速、かつ、瘢痕形成がより少ないように治癒する。先行技術の特許は、酸素排除のこの重要な役割を認識していなかった。先行技術の特許は、反対に、酸素の「適切な交換」および/または酸素について「半透過性」のフィルムを開示した。Kayらの米国特許第5,713,842号明細書は、「酸素、水蒸気その他のガスが分子マトリクスを通じて自由に拡散する」ことを可能にし、ポリウレタンフィルムが好ましいということを開示する。Tiptonらの米国特許第5.725,491号明細書は、「フィルム包帯の細孔のサイズおよび数は栄養分、酸素、水および生物学的に活性のある試薬の拡散を促進することが好ましい。」と開示する。
【0029】
使用可能なポリマーの先行技術の特許における実施例は、ポリアルキレン・カーボネートを含まない。
【0030】
酸素透過性フィルムで治療された創傷は、回復速度が遅い。閉塞性の包帯は、非閉塞性の包帯より感染率が低い。したがって、ポリアルキレン・カーボネートフィルムを適切なポリマーとして用いることによって、我々は、以下の特徴を組み合わせることになる。
・酸素障壁であること、
・外部の水に対する防水性があること、
・表面の動きでひび割れしないフィルムにする弾性があること、
・良好な遮蔽特性があること、
・適用が容易で、店頭販売可能な1液システムであること、
・細菌および外来物を侵入させない良好な皮膚接着性があること、
・完全に周辺を被覆し、必要な場合には多層にするための優良な自己接着性があること、
・フィルムが、所望の場合には、創傷の観察のため透明であること、
・包帯除去性および創傷治癒力を強化するために、創傷/フィルム表面の界面でポリマーが二酸化炭素および水を形成するように酵素分解できること、
・体内の油脂または液体によって影響されないように、耐油性、酸およびアルカリ耐性があること、
・外部の力によって簡単に傷害を受けないように耐摩耗性があること、
・結合性、分散性または溶解性が良好になるように化学的/医学的な添加物を含むこと、
・創傷にくっつかず、創傷の治療細胞を傷害せずに頻繁に包帯交換できるようにして、臭いを低減し、治癒を促進すること。
・滲出物および細菌の除去を補助するために、フィルムが水蒸気透過性であること、
・低いpHを維持して、アルカローシスを防ぐために、二酸化炭素に半透性であること、
・塩化メチレンを溶媒とする場合には、フィルムが即乾性で臭いが残らないこと、
・保存寿命が無限であること、および、
・安価な創傷被覆であること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の好ましい使用方法は、塩化メチレン中のポリエチレン・カーボネート溶液の重量濃度で約10%から約15%までを含む溶液を製造することである。創傷は、洗浄または前処理され、その後乾燥される。それから、前記ポリマーの溶液をブラシまたはスプレーでコーティングされる。前記溶媒の沸点が例えば39.7°Cと低いため、乾燥の過程は数分間のことである。皮膚体温は約33°Cで、体温は約37°Cで、前記溶媒の蒸発と、約20−25°Cのガラス転移温度である前記ポリマーの流動とを促進する。創傷治癒の過程は透明なフィルムを通して観察される。包帯交換が必要な場合には、前記フィルムは容易に除去され、新しいフィルムが適用される。前記フィルムは、前記治癒が終了するときに除去される。
【0032】
特定の他のタイプの創傷では、または、ある種の創傷の後期段階では、外界の酸素が望ましい場合があるので、ポリプロピレン・カーボネートを用いることができるが、それは、ポリプロピレン・カーボネートが酸素障壁としてはあまり良好ではないからである。ポリプロピレン・カーボネートとポリエチレン・カーボネートとを物理的または化学的(三元共重合体)のいずれかでブレンドすることによって、創傷のタイプに応じて、創傷治癒を最適化するために、中間的な特性を得ることができる。
【0033】
ポリアルキレン・カーボネートというこの新規なポリマーのファミリーを用いて得ることができる、物理/化学的特性の独特な広範囲の組み合わせを一体化可能なポリマーのファミリーは他にはない。ポリアルキレン・カーボネートは、本用途に適合するように「仕立てる」ことができるので、創傷治癒を促進し、瘢痕形成を低減し、患者の慰安を増し、費用を低減する全体的な治癒システムを提供する。
【0034】
創傷治癒は複雑な過程である。創傷ケアを増進できる有意義で価値のある医学知識が発達してきた。ポリアルキレン・カーボネート・ポリマーは、新世代の創傷被覆を製造するための現代的な医学知識を用いて効果的に利用可能な広範囲の特性を有する。新たな創傷ケアの知識が発達するにつれて新たな医学的な必要性を満たすように仕立てられる可能性を有する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレン・カーボネートを含む適用液を調製すること、該適用液を動物組織に適用すること、および、該動物組織の上にフィルムを形成することを含む、動物組織の上にその場でフィルム包帯を形成する方法。
【請求項2】
前記ポリアルキレン・カーボネートは、そのガラス転移温度と少なくとも同じ温度に加温し、液状になったポリアルキレン・カーボネートを前記動物組織に押し出すことによって、液体状態で配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアルキレン・カーボネートは、生体適合性のある溶媒中の懸濁液を形成し、液状になったポリアルキレン・カーボネートを動物組織に適用し、前記生体適合性のある培地を蒸発させることによって、液体状態で配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアルキレン・カーボネートは、生体適合性のある溶媒中のエマルジョンを形成し、液状になったポリアルキレン・カーボネートを動物組織に適用し、前記生体適合性のある培地を蒸発させることによって、液体状態で配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアルキレン・カーボネートは、生体適合性のある溶媒中のポリアルキレン・カーボネート溶液を形成し、液状になったポリアルキレン・カーボネートを動物組織に適用し、前記生体適合性のある溶媒を蒸発させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアルキレン・カーボネートのアルキレン部分は、2個なら9個までの炭素原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアルキレン・カーボネートのアルキレン部分は、エチレン、プロピレンおよびブテンからなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液中のポリアルキレン・カーボネート濃度は、該溶液の重量濃度で5%から50%までであり、前記溶液は前記動物組織の上に適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁液中のポリアルキレン・カーボネート濃度は、該懸濁液の重量濃度で約10%から約60%までであり、前記懸濁液は前記動物組織の上に適用される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記液状になったポリアルキレン・カーボネートは薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤は、抗細菌剤、ステロイド類、抗真菌薬、免疫変調剤、抗微生物剤、ステロイド類、抗ざ瘡剤および抗乾癬剤からなるグループから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
約15°Cから約40°Cまでのガラス転移温度を有する液状のポリアルキレン・カーボネートを含み、該液状のポリアルキレン・カーボネートは動物組織に接着する、動物組織の上にフィルム包帯を形成するための材料。
【請求項13】
前記ポリアルキレン・カーボネートは、そのガラス転移温度と少なくとも同じ温度に加温されることによって液体状態で配置される、請求項12に記載の材料。
【請求項14】
前記ポリアルキレン・カーボネートは、生体適合性のある培地中でポリアルキレン・カーボネートの懸濁液を形成することによって液体状態で配置される、請求項12に記載の材料。
【請求項15】
液状の前記ポリアルキレン・カーボネートは生体適合性のある溶媒中の溶液である、請求項12に記載の材料。
【請求項16】
前記ポリアルキレン・カーボネートのアルキレン部分は、エチレン、プロピレンおよびブテンからなるグループから選択される、請求項15に記載の材料。
【請求項17】
前記ポリアルキレン・カーボネートのアルキレン部分はエチレンで、ポリエチレン・カーボネートの生体適合性のある溶媒は塩化メチレンを含む、請求項15に記載の材料。
【請求項18】
前記ポリアルキレン・カーボネートのアルキレン部分はプロピレンで、ポリプロピレン・カーボネートの生体適合性のある溶媒は塩化メチレンを含む、請求項15に記載の材料。
【請求項19】
前記ポリアルキレン・カーボネートは、約20°Cから約25°Cまでのガラス転移温度を有するポリエチレン・カーボネートであり、前記生体適合性のある溶媒は塩化メチレンであり、前記ポリエチレン・カーボネートは、前記溶液中の重量濃度で約10%から約15%までの濃度で溶液中に存在する、請求項15に記載の材料。
【請求項20】
薬剤を含む、請求項19に記載の材料。
【請求項21】
前記薬剤は、抗細菌剤、ステロイド類、抗真菌薬、免疫変調剤、抗微生物剤、ステロイド類、抗ざ瘡剤および抗乾癬剤からなるグループから選択される、請求項20に記載の材料。


【公開番号】特開2006−333897(P2006−333897A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−158652(P2005−158652)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(505203287)メドパック エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】