説明

相変化視覚表示成分を含有する皮膚シーラントの塗布方法を提供するためのシステム

膜形成ポリマーを用いて皮膚をシーリングする方法を提供するためのシステムを提供する。前記システムは、少なくとも2つの部分から構成され、かつシーラント組成物を収容した1又は複数の破壊可能な容器が装填される塗布具と、前記塗布具の使用方法を示す説明手段とを含む。前記説明手段は、前記塗布具の前記少なくとも2つの部分のうちの少なくとも1つ部分を第1の位置から第2の位置へ移動させて前記1又は複数の破壊可能な容器を破壊し、破壊された前記容器から放出された前記シーラント組成物を皮膚に塗布することを示す。前記シーラント組成物は、膜形成剤と、可塑剤と、該組成物が相変化したときに通常の光条件下で人間の肉眼で視覚可能な変色を呈する3000ppm乃至10000ppmの濃度の染料とを含有する。染料の変色は、前記シーラント組成物が乾燥したことを示すために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相変化視覚表示成分を含有する皮膚シーラントの塗布方法を提供するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカ合衆国では外科手術の約2〜3%で手術部位感染(surgical site infection:SSI)が発生しており、患者の罹患率及び死亡率を大幅に高めるSSIが年間50万件発生していると推定されている。手術部位感染は患者の健康に悪影響を与えるのみならず、回避可能であるこの手術部位感染は医療制度の財政負担に大きな影響を及ぼす。SSIは切開部が細菌に汚染されたときに発生し、多くの手術では、感染を引き起こす微生物の主要な感染経路は皮膚である(消化管を穿刺手術する場合を除く)。
【0003】
手術前に皮膚を処理するために、様々な組成物が使用されている。皮膚切開前に皮膚上に存在する微生物を或る程度除去するために、皮膚処理剤が使用されている。また、手術部位の切開及び静脈注射針の挿入に伴う細菌感染から患者を保護するために、皮膚シーラント材料が使用されている。皮膚処理剤は、皮膚に塗布された後、微生物を減少させる効果を最大化するために乾燥させられる。皮膚処理剤を乾燥させた後、皮膚シーラントを皮膚上に液体形態で直接的に塗布する。皮膚シーラントは、その組成の化学的性質に基づいた様々な技術によって、皮膚に対する強力な粘着性を有する粘着性膜を形成する。
【0004】
現在、主に用いられている皮膚処理剤は、ポビドンヨード又はグルコン酸クロルヘキシジンをベースにした製剤であり、急速乾燥のため及び微生物をより効率的に殺滅するためのアルコールを含み得る。手術室における時間的制約及び皮膚処理剤が乾燥したことを示す表示手段が存在しないことにより、ドレーピング及び/又は手術を開始するときに皮膚が湿ったままの状態であることが多いため、感染の可能性が発生する。また、前記表示手段が存在しないことにより、皮膚処理剤及び皮膚シーラントが塗布された位置をユーザーが正確に知ることができないため、感染をもたらす危険性がある。
【0005】
最近の皮膚シーラントは、例えば乾燥すると溶媒の気化によって膜を形成するポリマー組成物を使用する。また、in situ重合してポリマー膜を形成するモノマーユニットを含有する皮膚シーラントもある。アルキルシアノアクリレートモノマーを含むシアノアクリレートシーラントは、後者のタイプの一例であり、例えば、水酸化物、水又はタンパク質分子等の極性種の存在下で重合して、アクリル膜を形成する。形成された膜は、皮膚上に存在する細菌フローラを固定する働きをし、細菌フローラが、外科手術中に形成された切開部又は静脈注射針の挿入に関連する皮膚孔へ移動するのを防止する。
【0006】
前記膜形成剤に加えて、皮膚シーラントは、膜の柔軟性及び追従性を向上させるための可塑剤を含む。可塑剤を含むことは、使用中における皮膚シーラント膜の亀裂や剥離を防止するために望ましい。そして、可塑剤を含むことにより、シーラント膜のバリア特性を損なうことなくユーザーの手足等の動作等を可能にするように膜を十分に柔軟性にすることができる。皮膚シーラントはまた、液体組成物の塗布を補助するため粘度調整剤、シーラント製品を使用前に安定させる遊離基及びアニオン性スカベンジャー、シーラント膜の下に固定された細菌を殺滅するための殺生剤等も含み得る。
【0007】
皮膚シーラントはまた、特に広い面積に塗布する場合に、ユーザーが液体組成物を皮膚に均一に塗布するのを補助するための着色剤を含んで製剤される。しかしながら、従来の着色剤には、いくつかの問題がある。着色剤を皮膚シーラント液体組成物へ直接的に添加することは、シアノアクリレート組成物の場合はin situ重合速度及び変換反応の両方に悪影響を与え、ポリマー溶液組成物の場合は気化速度及び凝集過程に悪影響を与える。加えて、既知の着色剤は、液体組成物の硬化が完了したことを示す視覚的な表示を提供することができない。さらに、外科手術の完了後、シーラント中の着色剤は創傷部位を見えにくくするため、手術部位の感染、あざ又は出血に関連する赤みを見つけることを困難にする。
【0008】
そのため、創傷部位を見えにくくすることなく、皮膚処理剤及び皮膚シーラントの被覆領域及び/又は硬化の視覚的な表示を提供する着色剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,775,582号明細書
【特許文献2】米国特許第4,853,281号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
当業者が直面する前述の問題点を踏まえて、本願発明者は、様々な変色染料を含有する可塑化膜形成剤を、皮膚シーラント組成物が乾燥したことを示すのに使用できることを見出した。染料は、相変化(すなわち、皮膚シーラントの乾燥)に対応して変色する。染料は、膜形成剤に直接的に添加されるか、又は、皮膚シーラントを塗布するための塗布具のスポンジに含浸させて使用される。或いは、染料と皮膚シーラントは互いに別個の容器に収容され、前記容器を装填した塗布具を使用して別々に或いは同時に塗布される。前記膜形成組成物中における染料の量は、ユーザーが塗布領域及び硬化の程度を視覚的に認識できるように調節される。また、前記膜形成組成物中における染料の量は、一部の製剤では、染料自体が可塑剤として作用するように調節される。概して言えば、染料は、薬剤用&化粧用(Drug & Cosmetic:D&C)オレンジ5及びD&Cオレンジ10などのキサンテン染料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシステムの実施に使用され得る皮膚シーラント塗布具を示す。
【図2A】塗布具が第1の位置にある状態を示す。
【図2B】塗布具が第2の位置にある状態を示す。
【図3】その外面に指示的な矢印が表示された塗布具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
皮膚切開前に皮膚上に存在する微生物を或る程度除去するために、皮膚処理剤が使用される。皮膚処理剤は、皮膚に塗布された後、微生物を減少させる効果を最大化するために乾燥させられる。現在、主に用いられている皮膚処理剤は、ポビドンヨード又はグルコン酸クロルヘキシジンをベースにした製剤であり、急速乾燥のため及び微生物をより効果的に殺滅するためのアルコールを含み得る。ベタディン(Betadine)(登録商標)として市販されているポビドンヨードは、外科手術の80%において皮膚処理剤として使用されていると推定される。ベタディン皮膚処理剤は、1%のヨウ素滴定濃度を有する、10%ポビドンヨードの水溶液である。ベタディン皮膚処理剤は、皮膚に塗布したときは橙褐色(オレンジブラウン色)を示す。その他の一般的な製剤としては、グルコン酸クロルヘキシジンをベースにしたChloraprep(登録商標)皮膚処理剤がある。
【0013】
手術部位の切開及び静脈注射針の挿入に伴う細菌感染から患者を保護するために、皮膚シーラント材料が使用される。皮膚シーラントは、多くの場合、皮膚処理剤上に直接的に塗布される。シーラントは、シーラント組成物の化学的性質に基づいた様々な技術によって、皮膚に対する強力な粘着性を有する粘着性膜を形成する。本発明で使用される皮膚シーラントは、膜形成剤及び可塑剤を含む。また、シーラントは、液体組成物の塗布を補助するため粘度調整剤、シーラント製品を使用前に安定させる遊離基及びアニオン性スカベンジャー、シーラント膜の下に固定された細菌を殺滅するための殺生剤等の他の成分も随意的に含む。
【0014】
皮膚シーラント組成物に利用可能な膜形成剤の1つは、インテグシール(InteguSeal)(登録商標)として商業的に知られており、英国プリマス所在のメドロジック・グローバル社(Medlogic Global, Ltd)から入手可能である。インテグシール皮膚シーラントは、医療用グレードのn−ブチルシアノアクリレートモノマー(80%w/w)を含有している。医療用グレードのシアノアクリレートは、2回蒸留されている。対照的に、非医療用グレードのシアノアクリレートは単回蒸留されており、一般的に、幅広い種類の物質を互いに接着するための「強力瞬間接着剤(super glue)」型接着剤として市販されている。別の膜形成剤は、トシルアミド/ホルムアルデヒドをベースにした樹脂である「ハードアスネイルズ(Hard as Nails)」(登録商標)である。ハードアスネイルズは、米国ニューヨーク州ユニオンデール所在のデル・ラボラトリーズ社(Del Laboratories Inc.)から入手可能である。
【0015】
皮膚シーラントにおける可塑剤の使用は、膜コーティングの亀裂又は剥離を防止すべくシーラント膜に十分な柔軟性及び追従性(conformability)を与えるために重要である。必要とされる可塑剤の濃度範囲は、約10〜60%w/wであり、特に15〜50%w/wであり、とりわけ18〜25%w/wである。使用され得る一般的な可塑剤には、O−アセチルクエン酸トリブチル、アセチン、その他のアルキル置換クエン酸誘導体、フタル酸ジオクチル、及びアクリル酸モノマーが含まれる。高濃度(>3000ppm)では、染料自体が、膜の硬化時の性能を向上させる可塑剤として作用できることに留意されたい。本願発明者は、この染料の作用は、おそらくは染料の表面活性剤の性質に起因すると推測している。100万分の1(ppm)は、所与の物質の1個の粒子が、その他の物質の999,999個の粒子毎に存在することを示す。これは、ドラムに入れた150リットル(40ガロン)の水に垂らした一滴のインク、或いは、280時間(11日と16時間)あたりの1秒とほぼ同じである10分の1は、0.0001%の精度である。
【0016】
概して言えば、シアノアクリレートは、攪拌棒又は機械的撹拌機を使用して、染料と混合させることができる。この混合は、シアノアクリレートを60℃に加熱してその温度に維持し、染料が溶解するまで行われる(5〜20分間)。濃度が500ppm以上の染料を溶解させるためには、シアノアクリレートを加熱することが重要である。加熱しない場合は、染料の大部分が沈殿物として沈殿する。一方、加熱した場合は、大気温度に冷却した後も、又は冷蔵若しくは冷凍温度で貯蔵した後でさえも、染料は溶液中に留まる。この組成物は、染料を溶解させるのに十分な温度及び時間で加熱されるべきである。本発明では様々な染料が意図されるが、前記加熱は、例えば、50〜70℃で、少なくとも5分間行うべきである。代替的な方法では、染料を可塑剤中に溶解させ、それにより得られた溶液をシアノアクリレートと適切な比率で混合させて、所望の染料濃度の最終組成物を作成する。可塑剤中に染料を溶解させるためには、ある程度の高温が必要であると考えられる。さらに別の代替的な方法では、染料を不安定溶媒と混合させ、それにより得られた溶液をシアノアクリレートと混合させ、その後、前記溶媒を(例えば蒸発により)除去することにより最終組成物を作成する。
【0017】
光の強度又は明度は、ルクス(lx)として表される。例えば、夏の曇りの日は、約30,000〜40,000lxと推定され、真冬日は約10,000lxと推定される。英国規格協会の昼光照度実施規定(BS 8206 Part 1)に、人工光についての実施規定が定められている。職場に必要な光についての或る一般的なガイダンスを次に示す。
・一般的なオフィス、研究室、台所 500lx
・製図室 750lx
・工具室及び塗装作業 1000lx
・グラフィック複製の検査 1500lx
したがって、本発明の目的のためには、BS 8206 Part 1に従って決定されるように、「通常の光条件」は、約500〜2000lx、より望ましくは、約750〜l500lxの光条件を指す。
【0018】
適切な領域が覆われたことを確認できるように皮膚シーラント及び皮膚処理剤が塗布された位置を正確に知ることは、医療関係者にとって有益である。本願発明者は、乾燥した際に変色する皮膚シーラント及び/又は皮膚処理剤を創出することにより、医療関係者に有益な情報を提供できると考えている。
【0019】
人間の肉眼で見ることができるか、さもなければ随意的に通常の光条件下、即ち、一般的なオフィス、研究室及び台所で、紫外線(400ナノメートル〜約200ナノメートルのUV波長)又は「不可視光線」或いはその他の特殊な照明を必要としないで作動するスキャナ又はその他の光学装置を用いて認識可能な、被覆及び硬化の両方についての新規な表示を提供する染料のユニークな組み合わせが判明している。この改良された被覆インジケータは、非常に目立つ色により、コーティングの塗布領域をユーザーがはっきりと認識することを可能にし、さらには、色の強度によってコーティングの正確な厚さを示すこともできる。コーティングの塗布厚さが非常に薄い場合、コーティングはほぼ無色であり、コーティングの塗布厚さが非常に厚い場合、コーティングの色強度が高くなる。また、この被覆インジケータの色は、皮膚の色合い及び皮膚上に印付けられる手術マーキングが被覆インジケータを通して見ることができ、かつ、例えば皮膚のあざ、発疹又は感染などの生理的状態と見間違えないような色であることが望ましい。このようにして、コーティング及び染料は、外科医が、手術前に手術部位に印付けられた手術マーキングを見ることを可能にすると共に、手術後に創傷の健康状態を評価にすることを可能にする。
【0020】
本願発明者は、染料のユニークな種類を特定し、その染料の、皮膚シーラント及びその他の硬化性樹脂における被覆及び樹脂の硬化の完了の両方の表示する鮮明な変色を実証した。本願発明者は、前記染料が、接着剤の硬化時に生じる相変化に感応的であることを発見した。前記特定された染料は全て、次に示す構造を有するキサンテン染料に属しその一種である。
【0021】
【化1】

【0022】
これらの染料は、その発色団の性質上蛍光性を有し、それらの色強度については微結晶相互作用に依存する。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、シーラントはポリマー鎖を硬化させた際にその微結晶相互作用を分断し、それにより観察される色が変化すると考えられる。染料の濃度範囲は、3000〜10000ppmであり、特に3500〜8000ppmであり、とりわけ4000〜6000ppmである。
【0023】
pH指示剤を利用した別の硬化インジケータが、当該技術分野では既知である。シアノアクリレート系が硬化した際は、一般的に、pHは2から3又は4に変化する。しかし残念なことに、これらのインジケータは、皮膚に直接的に接触させることについては米国食品医薬品局に承認されていない。本発明の相変化感応型染料は、pHインジケータではないので、皮膚シーラントの硬化時に観察されるpH範囲内では変色しない。
【0024】
本明細書で使用される「相変化」の用語は、当該技術分野での一般的な意味、すなわち、物質の物理的状態の変化、このケースでは、液体から固体への変化を指す。「相変態」という用語は、相変化と同じ意味で使用され、或る相から他の相への物質の変化を指す。本明細書中では、本願発明者は、固体を、柔軟性の固体すなわちゲル、又は非柔軟性の固体と定義する。
【0025】
本発明の相変化感応型染料は、凝集を利用していると考えられ、凝集はシアノアクリレート及び他の硬化樹脂系において生じることが本願発明者により実証されている。前記染料は、シーラント組成物の硬化時に生じる相変化を検出し表示するのに十分に感応的である。蛍光性分子の挙動が液体溶液中と固体状態とでは異なることは、当業者には周知である。その理由は、染料分子が自由に浮遊する信号分子ユニット又はエキシマー(互いに積層した複数の分子の凝集体)として存在することに関係していると考えられる。溶液の大部分はモノマーであり、固体の大部分は凝集体である。一般的に、凝集体は、染料の蛍光色の消光、及び発光スペクトルのシフトを引き起こすので、固形系では同じ染料の液体系とは異なる色のより弱い蛍光を示す。そのため、本発明では、樹脂モノマーが重合すると、前記染料は、変色を呈する及び/又は蛍光強度を増加させるエキシマーを形成する。
【0026】
上述したように、染料を膜形成剤と共に使用する方法には、様々な方法がある。染料を、膜形成剤を可塑化するのに十分な量で皮膚シーラントと混合させる方法。染料を、可塑剤及び膜形成剤の組成物と混合させる方法。染料を、シーラントの塗布に使用されるスポンジやワイプ(wipe)に含浸させる方法。染料とシーラントを別々の容器に収容し、別々に塗布する方法。染料とシーラントを別々の容器に収容し、エポキシ樹脂の塗布と同様の方法で同時に塗布する方法。
【0027】
染料のキャリアへの適用は、当業者には周知の「浸漬して絞る(dip and squeeze)」方法により行われる。この方法では、キャリア(例えば、スポンジ、不織布(ワイプ)、綿ボール等)を染料が収容された槽に入れて、染料を吸収させる。染料を吸収させた後、余分な染料を強制的に排出するために、キャリアを例えば一対のローラー間で絞る。
【0028】
染料をキャリアに適用する他の方法としては、染料をキャリア上にスプレーする方法がある。スプレーする方法は、浸漬して絞る方法のようにキャリアに染料を浸透させることはできないが、手早くかつ簡単な方法である。
【0029】
染料をキャリアに適用するさらなる別の方法としては、収容箱にスタックされたワイプに染料を加える方法がある。本発明の譲受人に譲渡された、米国特許第4,775,582号(特許文献1)及び米国特許第4,853,281号(特許文献2)(これらの特許文献の開示全体は引用を以って本明細書の一部となす)には、スタックされたワイプにおいて水分を比較的均一に保つ方法が開示されている。ワイプは、スパンボンド繊維又はメルトブローン繊維或いはその組み合わせ等の、押し出して集積することにより作成したポリオレフィン系超極細繊維から作成されている。ワイプを構成する一般的な材料としては、様々な構造のスパンボンド繊維若しくは織物又はメルトブローン繊維若しくは織物がある。
【0030】
「スパンボンド繊維」という用語は、溶融熱可塑性材料を、(紡糸口金)の複数の細くて通常は円形であるキャピラリー(押し出されるフィラメントの径を有する)からフィラメントとして押し出し、その後、例えば、米国特許第4,340,563号(Appelら)、米国特許第3,692,618号(Dorschnerら)、米国特許第3,802,817号(Matsukiら)、米国特許第3,338,992号及び米国特許第3,341,394号(Kinney)、米国特許第3,502,763号(Hartman)或いは米国特許第3,542,615号(Doboら)に開示されているようにして急速に縮径することにより形成された小径の繊維を指す。スパンボンド繊維は、通常は、捕集面に堆積したときに粘着的ではない。スパンボンド繊維は、一般的に、連続的であって、7μmよりも大きく、特に約10〜20μmの平均直径を有する(少なくとも10のサンプルに基づく)。「メルトブローン繊維」という用語は、溶融熱可塑性材料を、複数の細くて通常は円形であるダイキャピラリから、溶融糸又はフィラメントとして収斂する高速ガス(例えば空気)流中へ押し出し、その流れにより溶融熱可塑性材料のフィラメントの直径を細くする(超極細繊維まで細くすることもある)ことにより形成された繊維を指す。メルトブローン繊維は、その後、前記高速ガス流により搬送され、捕集面上に堆積されて、ランダムに分散されたメルトブローン繊維のウエブを形成する。このような工程は、例えば米国特許第3,849,241号(Butinら)に開示されている。メルトブローン繊維は、連続的或いは非連続的な超極細繊維であって、一般的に10μm未満の平均直径を有し、一般的に捕集面上に堆積したときに粘着的である。スパンボンド繊維とメルトブローン繊維との積層材は、例えば、動いている成形ベルト上に、スパンボンド繊維層、メルトブローン繊維層、別のスパンボンド層をその順番に堆積させ、その後、これらの層を後述する方法で接合することにより形成される。或いは、前記繊維層を個々に形成して個々のローラーに巻き取っておき、それらの繊維層を別々の接合工程で組み合わせることもできる。このような繊維は、通常は、約0.1〜12osy(6〜400gsm)、特に、約0.75〜3osyの秤量(basis weight)を有する。多層積層材は、様々な数のメルトブローン層(M)やスパンボンド層(S)を様々な構成で備えることができ、或いは、膜(F)やコフォーム(coform)材料(米国特許第4,100,324号に例示的なコフォーム材料が示されている)等の別の材料も備えることもでき、例えば、SMMS、SM、SFS等がある。
【0031】
別個の容器に収容したシーラントを塗布する際は、その目的のために開発されたディスペンサーの使用を伴う場合がある。図1に示すような或る例示的なディスペンサー10は、剛性ナイロン製ハウジング内に、シーラント液体組成物を収容した少なくとも1つの楕円形のガラスアンプル4を有する。ハウジングは、互いに摺動可能に連結された本体部2とキャップ部3とを有し、キャップ部3でアンプル4を保持するように構成されている。使用する際は、前記液体をディスペンスするために、本体部2及びキャップ部3を互いに接近させる。具体的には、キャップ3を、第1の位置から、本体部2の内部の第2の位置へ移動させる。本体部2及びキャップ部3を互いに接近させた結果、破壊可能なガラスアンプル4は押圧されて破壊され、前記液体がディスペンスされる。戻り止め型のロック機構が、移動後の本体部及びキャップ部を互いに結合させる。前記ロック機構は、キャップ部3に形成されたスロット5と、スロットと適合するように本体部2の内面に形成されたプラスチック製の小さな突起又は凸部6とから構成される。アンプルが破壊されると、前記液体は、アンプルの破壊によって生じたガラス破片を捕まえる発泡体小片9を通って、本体部の先端部7へ移動する。先端部7は、前記液体が通過可能な複数の小孔8を有している。先端部はその外側に別の発泡体片10を有している。この発泡体片10は、先端部7の適所に嵌め込まれた硬質プラスチック製の卵型のリング11により適所に保持されている。この外側発泡体片10は、前記液体をディスペンスするときに、患者の皮膚と接触する。例えば、米国特許出願第2007/0147947号を参照されたい、他の型のディスペンサーが、米国特許第4,854,760号、米国特許第4,925,327号、米国特許第5,288,159号に開示されている(これらは、引用を以って本明細書の一部となす)。
【0032】
本明細書中に開示された、膜形成ポリマーを使用して皮膚をシーリングする方法を提供するためのシステムは、少なくとも2つの部分から構成され、かつシーラント組成物を収容した1又は複数の破壊可能な容器が装填される塗布具と、前記塗布具の使い方を示す説明手段(instructions)とを含む。前記説明手段は、前記塗布具の前記少なくとも2つの部分のうちの少なくとも1つ部分を第1の位置から第2の位置へ移動させて前記容器を破壊し、前記容器からディスペンスされた前記シーラント組成物を皮膚に塗布することを示す。前記シーラント組成物は、膜形成剤と、可塑剤と、該組成物が相変化したときに通常の光条件下で人間の肉眼で視覚可能な変色を呈する3000ppm乃至10000ppmの濃度の染料とを含有する。
【0033】
前記説明手段は、前記塗布具の前記少なくとも2つの部分のうちの少なくとも1つ部分(キャップ3)が前記第1の位置又は前記第2の位置にある状態を図示する(図2A及び図2B参照)。或いは、前記説明手段は、前記塗布具の外面上に印された、前記塗布具の前記少なくとも2つの部分のうちの少なくとも1つ部分(キャップ3)を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させる方向を示す指示的な矢印を図示する(図3参照)。
【0034】
前記塗布具は包装材で包装され、包装材にはシーラントと共に使用される皮膚処理組成物のブランド名及び/又はロゴ(例えば、Betadine(登録商標), Chloraprep(登録商標))が表示される。このことは、医療従事者に情報を提供し、シーラント組成物が適切に使用されることを確認することを助ける。
【0035】
他の実施形態では、可塑化皮膚シーラントと染料は、皮膚処理剤が塗布された領域に別々に塗布される。米国特許第5,928,611号には、シーラント用容器を有し、シーラントが必ず通過する発泡体片に活性成分(架橋結合促進剤又は開始剤等)が配設されたディスペンサーが開示されている。このようなディスペンサーを使用して、前記発泡体片に染料を配設しておき、皮膚にシーラントを塗布する際に、シーラントが前記発泡体片を通過するように構成することが可能である。米国特許第6,322,852号も参照されたい。
【0036】
さらなる別の実施形態では、米国特許第6,340,097号に、本体部内に少なくとも1つの破壊可能なアンプルを有するディスペンサー(アンプルを1つ以上保持可能)が開示されている。このディスペンサーは、第1のアンプルが可塑化皮膚シーラントを収容し、第2のアンプルが染料を収容するようにすることが可能である。このディスペンサーの使用時は、皮膚に塗布する直前に、両方のアンプルを破壊して皮膚シーラントと染料とを混合させる。
【0037】
従来の皮膚シーラント、すなわち、それを通じて外科的切開術が行われる可塑化膜形成バリアとして使用するのに加えて、前記染料と皮膚シーラントとの組成物は、創傷、擦り傷、やけど、にきび、水脹れ、及び他の皮膚の崩壊を、その後の汚染から保護するために閉じる及び/又は覆う絆創膏(或いは包帯)のように使用することができる。そのため、皮膚シーラント組成物の使用は、医療関係者に限定されない。
【0038】
創傷保護は、治癒過程を行うために重要である。従来の粘着型の絆創膏又はガーゼ創傷包帯は、急性創傷又は皮膚炎を治療/保護するために消費者によって使用されてきた。このような絆創膏は一般的に能動的に作用せず、創傷治癒のための化学的治療はほとんど提供しない。むしろ、このような絆創膏は、主として、創傷部に低レベルの圧力を加える、創傷部を周囲環境への露出から保護する、及び、創傷部で生成された浸出液を吸収する働きをする。このような絆創膏は、一般的に、創傷部に貼った後に消費者から見える基層を含む。前記基層は、典型的には、ポリマー材料(例えばフィルム等)、不織布ウエブ、又はそれらの組み合わせから作成され、柔軟性及び/又は通気性をもたらすために何らかの方法で穿孔されている。前記基層は、多くの場合、絆創膏を創傷部に貼った後に消費者から見える上面と、底面(皮膚接触面)とを有する膜要素を備えている。絆創膏を消費者に貼り付ける手段を提供するために、前記基層の前記底面に肌に優しい接着剤が通常は配設されている。或いは、絆創膏/創傷包帯が非粘着型である場合は、別個の接着テープを使用して、絆創膏/創傷包帯を創傷部に貼り付ける。前記基層の前記底面の中央には、創傷部からの浸出液を吸収するための吸収パッドが通常は配置されている。そして、吸収パッドと創傷部との間にバリアを提供するために、吸収パッド上には非粘性の穿孔膜層が通常は設けられている。創傷液が穿孔膜層を介して吸収パッドへ移動するようにすることにより、創傷部に創傷液が粘着することがなくなる。典型的には、このような絆創膏の吸収パッドは薬剤成分を含んでいないが、比較的最近では、絆創膏メーカーは、創傷治癒を助長するために抗生物質製剤を絆創膏の表面又は内部に含めることを始めている。
【0039】
皮膚シーラントと染料との組成物は、この見たところ複雑な絆創膏構造を、乾燥すると柔軟性コーティングとなり創傷部を絆創膏と同じようにして保護する液体を用いた1回の液体処理に置き換えることができる。加えて、微生物阻害領域の形成及び創傷治癒の促進等の更なる利益をもたらすために、例えば抗生物質等の薬剤が効果的な量で前記組成物に混合される。前記シーラント組成物は、表在性の創傷、やけど又は擦り傷の表面を覆う効果的な厚さのコーティングを形成するために塗布される。治療すべき創傷が表在性であり真皮層下まで延在していないため、創傷部内へ拡散されるか又は創傷部内に形成されるポリマー残基は、皮膚から自然に押し出される。一般的に、シーラントは、形成されたときに十分な柔軟性及び組織に対する粘着性を有し、剥離及び亀裂がすぐに生じることがない、創傷領域を覆う可塑化粘着性膜コーティングを提供する。このコーティングは、一般的に、約0.5mm未満の厚さを有する。
【0040】
このような厚さのシーラントコーティングは、表存性創傷を覆う物理的なバリア層を形成し、従来の絆創膏と同じような方法で創傷部を保護する。具体的には、コーティングは、創傷部が濡れても交換する必要がないほぼ気密性の防水シールを、創傷部の周辺に形成する。一旦塗布されると、コーティングは、細菌及び汚染物質が創傷部に進入するのを防止し、それにより、二次感染の可能性が減少する。一般的に、粘着性コーティングは、コーティング領域の動作を妨げるものではなく、創傷の早期治癒を促進する。さらに、従来の絆創膏とは異なり、シーラントは塗布後2〜3日で皮膚から自然に剥がれ落ちるので、従来の絆創膏を皮膚から剥がすときのような不快感はない。また、このポリマー性コーティングを早期に除去したいのであれば、アセトン等の溶剤を使用して除去することができる。このことについての詳細は、米国特許第6,342,213号を参照されたい。
【0041】
詳述すると、殺菌性塩化ベンザルコニウムと、ポリミキシンB硫酸及び亜鉛バシトラシンの抗生物質組成物とを含む創部治癒製品が、現在いくつか市販されていることに留意されたい。この技術分野の特許には、一般に知られている殺菌剤や抗生物質の使用が開示されている(米国特許第4,192,299号、第4,147,775号、第3,419,006号、第3,328,259号、第2,510,993号)。米国特許第6,054,523号(Braunら)には、凝縮を可能にする基を含有するオルガノポリシロキサンと、縮合触媒と、オルガノポリシロキサン樹脂と、塩素窒素を含有する化合物と、ポリビニルアルコールとから作成された物質が開示されている。米国特許第5,112,919号には、熱可塑性物質ベースのポリマー(例えばポリエチレン、又はエチレンのコポリマー)を、1−ブテン・1−ヘキセン・1−オクテン等、シラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン)を含有する固形担体ポリマー(例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA))及び遊離基生成剤(例えば有機過酸化物)と混合し、その混合物を加熱することにより作成される水架橋性ポリマーが開示されている。前記コポリマーは、その後、水と触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ)の存在下での反応により架橋結合させることができる。米国特許第4,593,071号(Keough)には、ペンダントシランアクリロキシ基を有する水架橋性エチレンコポリマーが開示されている。
【0042】
ポリウレタン創傷コーティングが、EP0992 252 A2(Tedeshchlら)に開示されている。この文献には、ポリイソシアネートと、アミン供与体及び/又は水酸基供与体と、末端イソシアネート基及びアルコキシルシランを有するイソシアナートシラン付加物とから作成された潤滑性の薬剤含有コーティングが開示されている。随意的に、例えばポリ(エチレン酸化物)等の水溶性ポリマーを含めることもできる。架橋結合は、イソシアネートが水酸基供与体又はアミン供与体と反応するかどうかによって、ポリウレタン又はポリ尿素ネットワークを形成する。米国特許第6,967,261号には、創傷治療へのキトサンの使用が開示されている。キトサンは、豊富に存在する天然グルコサミン多糖であるキチンの(C13NOの脱アセチル化産物である。特に、キチンは、甲殻類(カニ、ロブスター、エビ)の殻から得られる。また、キチンは、海洋動物プランクトンの外骨格、或る昆虫(例えば蝶やてんとう虫)の羽根、及び、酵母・キノコ・他の菌類の細胞壁からも得られる。キトサンが、グラム陽性及びグラム陰性細菌(例えば、ストレプトコッカス属(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌)、シュードモナス属、エシェリキア属、プロテウス属、クレブシエラ属、セラシア属、アシネトバクター属、エンテロバクター属及びシトロバクター属)に対する抗菌性を有することが報告されている。また、前記文献には、キトサンが、規則的に配列されたコラーゲン線維束を含有する組織の修復を促進することが記載されている。
【0043】
また、前記組成物は、縫合又は絆創膏と同じようにして、創傷部を閉じるのにも使用される。このように使用するために、前記組成物は、例えば、哺乳類の患者(例えば、人間の患者)の縫合可能な創傷部における互いに対向する皮膚部分の少なくとも一方の皮膚表面に塗布される。前記互いに対向する皮膚部分は、前記組成物の塗布前又は塗布後に互いに接触させられる。どちらの場合でも、前記組成物の塗布後、創傷領域は、前記組成物が重合して前記互いに対向する皮膚部分を互いに結合させるような条件下に維持される。一般的に、前記縫合可能な創傷部と、その互いに対向する皮膚部分の少なくとも一方の皮膚表面の近傍とを覆うように、十分な量の前記組成物が使用される。皮膚水分と組織タンパク質とを接触させると、前記組成物は重合する。或いは、前記組成物が部分的に重合されたモノマーを使用した組成物である場合は、周囲条件(皮膚温度)では約10〜60秒の間さらに重合する。この重合により、前記皮膚部分を互いに結合する固形ポリマー膜が形成され、それによって、創傷部が閉じられる。一般的に、前記組成物は、前記互いに離れた(対向する)皮膚部分を覆うポリマー膜を形成することができ、それによって、治癒中における創傷部の感染を抑制する。このことについての詳細は米国特許第6,214,332号を参照されたい。
【0044】
本明細書中で説明した皮膚シーラントは、樹脂の硬化時に視覚確認可能な変色を呈する1又は複数の相変化表示染料を含有する。また、前記相変化表示染料を非変色性染料と共に前記シーラントに混合させることにより、異なる変色パターンを実現することができる。このような相変化感応性の変色は、液相では或る色(第1の色)を呈し、硬化状態では前記相変化インジケータが変色して前記色組成物が前記第1の色とは全く異なる第2の色を呈するように、複数の染料を混合させることにより達成される。例えば、D&Cオレンジ5をD&Cグリーン6と共にシアノアクリレート組成物に混合させることにより、緑色の液体が得られる(黄色+緑色=濃い緑色)。そして、前記樹脂が硬化して相変化したときは、青紫色に変色する(明るいピンク色+緑色=青紫色)。このように、前記色組成物を慎重に選択することにより、このシステムにより、第1の色から第2の色への変色パターンを様々に設定することが可能である。
【0045】
前記シーラントは、医療施設で使用するために「キット」形態でパッケージ化され、医療関係者が使いやすく便利になるように、適切な皮膚処理剤溶液と共にセット販売される。前記キットは、上述したように、皮膚シーラント組成物を収容する容器と、染料を収容するための別の容器とを含む。また、前記キットは、塗布具と、前記2つの容器の内容物を混合するための手段も含み得る。或いは、前記シーラントを塗布するのに使用され、塗布時に前記シーラントが通過するスポンジに、染料を含浸させることもできる。加えて、様々な混合用(complimentary, mating)容器、及び従来使用されたことがある当該技術分野で周知の別のパッケージスキームを使用することができる。
【0046】
以下の例は、この手法の有用性を示す。下記の例では、攪拌棒又は機械的撹拌機を使用して、シアノアクリレートを染料と混合させる。この混合は、シアノアクリレートを60℃に加熱してその温度に維持し、染料が溶解するまで行われる(5〜20分間)。
【0047】
例1
【0048】
D&Cオレンジ5を、シアノアクリレート樹脂であるインテグシール(登録商標)皮膚シーラントに、200ppmの濃度で溶解させた。D&Cオレンジ5は、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在のシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)から入手可能である。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、皮膚シーラントが硬化したときにのみ現れ、皮膚シーラントがまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。鮮明で目立つ変色は、硬化が完了したことを示す。
【0049】
【化2】

【0050】
例2
【0051】
D&Cオレンジ5を、シアノアクリレート樹脂であるインテグシール(登録商標)皮膚シーラントに、500ppmの濃度で溶解させた。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、皮膚シーラントが硬化したときにのみ現れ、皮膚シーラントがまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0052】
例3
【0053】
D&Cオレンジ5を、シアノアクリレート樹脂であるインテグシール(登録商標)皮膚シーラントに、1000ppmの濃度で溶解させた。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、皮膚シーラントが硬化したときにのみ現れ、皮膚シーラントがまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0054】
例4
【0055】
D&Cオレンジ5を、シアノアクリレート樹脂であるインテグシール(登録商標)皮膚シーラントに、5000ppmの濃度で溶解させた。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、皮膚シーラントが硬化したときにのみ現れ、皮膚シーラントがまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0056】
例5
【0057】
D&Cオレンジ5を、トシルアミド/ホルムアルデヒドをベースにした樹脂である「ハードアスネイルズ(Hard as Nails)」(登録商標)に、500ppmの濃度で溶解させた。ハードアスネイルズは、米国ニューヨーク州ユニオンデール所在のデル・ラボラトリーズ社(Del Laboratories Inc.)から入手可能である。前記溶解は、単純に、D&Cオレンジ5の粉末を、容器内に収容された前記樹脂に加えることにより行なわれた。この組成物を5分間攪拌して、前記染料が前記樹脂中に完全に均一に分布するように溶解させた。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、前記樹脂が硬化したときにのみ現れ、前記樹脂がまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0058】
例6
【0059】
D&Cオレンジ5を、エポキシ樹脂(Loctite Quick set)に、500ppmの濃度で溶解させた。Loctite Quick setは、米国オハイオ州エイボン所在のヘンケル・コンシューマ・アドへシブス社(Henkel Consumer Adhesives, Inc.)から入手可能である。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、エポキシ樹脂が硬化したときにのみ現れ、エポキシ樹脂がまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0060】
例7
【0061】
D&Cオレンジ5を、クレイジー・グルー樹脂に、500ppmの濃度で溶解させた。クレイジー・グルー(Krazy glue)は、米国オハイオ州コロンバス所在のエルマーズ・プロダクツ社(Elmer's Products, Inc.)から入手可能である。この強力瞬間接着剤(クレイジー・グルー樹脂)は、エチルシアノアクリレートである。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、前記強力瞬間接着剤(クレイジー・グルー樹脂)が硬化したときにのみ現れ、前記強力瞬間接着剤がまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0062】
例8
【0063】
D&Cオレンジ5を、スコッチ超強力接着剤に、500ppmの濃度で溶解させた。スコッチ超強力接着剤(Scotch super strength adhesive)は、米国ミネソタ州セントポール所在の3M社の建設及び住宅補修市場部門(3M Construction and Home Improvement Market Division)から入手可能である。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、前記樹脂が硬化したときにのみ現れ、前記樹脂がまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0064】
例9
【0065】
D&Cオレンジ5を、スチレン/ブタジエンコポリマーをベースにした接着剤であるリキッドネイルズ(Liquid Nails)に、500ppmの濃度で溶解させた。リキッドネイルズ(Liquid Nails)は、米国オハイオ州クリーブランド所在のマッコ社(Macco)から入手可能である。この組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。ピンク色は、前記ゴム接着剤(リキッドネイルズ)が硬化したときにのみ現れ、前記ゴム接着剤がまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0066】
例10
【0067】
例2で説明した組成物を、小さいホビーペイントブラシを使用してマネキンの腕に塗布し、その後、前記組成物を引き伸ばして薄い膜(5cm×4cm)を形成した。最初は黄色の膜がはっきりと見えたが、その後前記膜が硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。
【0068】
例11
【0069】
例2で説明した組成物を、事前にベタディン(登録商標)皮膚処理剤を塗布したマネキンの腕に、スポンジブラシ塗布具を使用して塗布した。ベタディン(Betadine)は、米国コネティカット州スタンフォード所在のパーデュ・ファーマ社(Perdue Pharma)から入手可能である。その後、小さいホビーペイントブラシを使用して前記組成物を引き伸ばして薄い膜を形成した。最初は黄色の膜がはっきりと見えたが、その後、前記膜が硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。このピンク色は、赤茶色の皮膚処理剤膜上にはっきりと見ることができた。
【0070】
例12
【0071】
例2で説明した組成物に、アスコルビン酸を300ppmの濃度となるように加えた。前記アスコルビン酸は、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在のシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)社から入手可能である。スポンジブラシ塗布具を使用して、マネキンの腕にベタディン皮膚処理剤を塗布し被覆した。前記組成物の小サンプルを、皮膚処理剤で処理したマネキンの腕に載せ、前記ブラシで薄く広げた(5cm×6cm)。皮膚処理剤の赤茶色が観察されたが、その色は2分以内に消え(前記アスコルビン酸により)、シアノアクリレート液体組成物の黄色が残った。そして、前記組成物が硬化すると、黄色から濃い蛍光ピンク色へ変化した。このように、本発明の組成物を活性剤と混合させることにより皮膚処理剤又は前処理剤の色を消すことができ、このことにより医療スタッフが塗布領域を明確に知ることが可能となる。
【0072】
例13
【0073】
D&Cオレンジ5をインテグシール(登録商標)皮膚シーラントに5000ppmの濃度で溶解させ、10mlの黄色溶液を調製した。その溶液の5mlをオニオンスキンガラスアンプル内に入れて、ゴムプラグで密閉する。このアンプルをインテグシール(登録商標)塗布具の本体部内に装填し、その後、前記塗布具を組み立てる。前記塗布具の使用時は、前記塗布具の上側部分を前記塗布具の前記本体内に押し込むことにより前記アンプルを破壊し、前記アンプル内の液体を放出させる。前記液体シーラントは、スポンジ先端部を通って放出され、前記スポンジ先端部でマネキンの腕の一部に沿ってブラッシングすることによって、マネキンの腕に塗布される。黄色の膜が容易に観察されたが、硬化時には濃い蛍光ピンク色に変化し、このことにより、シーラント膜は乾燥しており次の処置を開始可能であることをユーザーに対して示す。
【0074】
例14
【0075】
例4で説明した組成物に、緑色マイカをベースにしたグリッターを100ppmの濃度となるように加えた。前記グリッター(glitter)は、米国ニュージャージー州ノースブランズウィック所在のライフ・オブ・ザ・パーティー社(Life of the Party)社から入手可能である。前記組成物を5分間攪拌し、前記マイカ粒子が均一に分布することを確実にする。この組成物の40mgを、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ載せて、その後、薄く広げた(5cm×5cm)。前記マイカグリッターは濃い反射色であるため非常に目立ち、被覆領域を明確に示すことができる。別の角度から見ると前記マイカグリッターの色は見えないため、皮膚の色及び外観の良好な可視性を可能にする。前記樹脂の黄色ベースの色は、前記樹脂が硬化したときは蛍光ピンク色に変化する。このピンク色は、前記緑色マイカグリッターとは独立的であり、容易に見ることができる。
【0076】
【化3】

【0077】
例15
【0078】
D&Cオレンジ10を、シアノアクリレート樹脂であるインテグシール(登録商標)皮膚シーラントに、500ppmの濃度で溶解させた。D&Cオレンジ10は、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在のシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)社から入手可能である。前記組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。この変色は、前記樹脂が硬化したときにのみ生じた。
【0079】
例16
【0080】
D&Cオレンジ10を、クレイジー(登録商標)グルー樹脂に、500ppmの濃度で溶解させた。D&Cオレンジ10は、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在のシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)社から入手可能である。クレイジー・グルー(Krazy glue)は、米国オハイオ州コロンバス所在のエルマーズ・プロダクツ社(Elmer's Products, Inc.)から入手可能である。クレイジー・グルーは、エチルシアノアクリレートをベースにした樹脂である。前記組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、固化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。この変色は、前記樹脂が硬化したときにのみ生じた。
【0081】
例17
【0082】
D&Cオレンジ10を、トシルアミド/ホルムアルデヒドをベースにした樹脂であるハードアスネイルズ(登録商標)に、500ppmの濃度で溶解させた。ハードアスネイルズ(Hard as Nails)は、米国ニューヨーク州ユニオンデール所在のデル・ラボラトリーズ社(Del Laboratories Inc.)から入手可能である。前記溶解は、単純に、D&Cオレンジ10の粉末を、容器内に収容された前記樹脂に加えることにより行なわれた。前記組成物を5分間攪拌して、前記染料が前記樹脂中に完全に均一に分布するように溶解させた。前記溶液の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。この液体は、最初は黄色であったが、硬化すると濃い蛍光ピンク色に変化した。このピンク色は、前記樹脂が硬化したときにのみ現れ、前記樹脂がまだ液相又は粘性であるときは現れなかった。
【0083】
例18
【0084】
D&Cオレンジ5及び10は、キサンテン染料の1つである。D&Cオレンジ5及び10以外の他のキサンテン染料もこのユニークなかつ予期せぬ特性を示すか否かを調べるための実験を行った。この実験では、各染料を、シアノアクリレート樹脂であるインテグシール(登録商標)皮膚シーラントに500ppmの濃度で溶解させた。前記組成物の一滴(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。前記樹脂が硬化したときの変色の有無を観察した。変色が観察された場合は、その変色を記録した。
【0085】
前記染料の構造式を下記に示す。また、前記実験の結果を下記の表1に示す。表1から、キサンテン染料のうちのジヨード及びジブロモ系のものだけが、シアノアクリレートベース樹脂の硬化時に鮮明に変色することが分かった。
【0086】
【化4】

【0087】
【化5】

【0088】
【化6】

【0089】
【化7】

【0090】
【化8】

【0091】
【化9】

【0092】
【化10】

【0093】
【表1】

【0094】
加えて、別の薬剤用&化粧用(D&C)染料が視覚的な変色を呈するか否かを、前記シアノアクリレートベース樹脂と同様の方法で試験した。下記の表2に示すように、別の染料は全て、前記樹脂が硬化したときに変色を呈しない。このことは、本発明のユニークな染料の前記予期せぬ特性を際立たせる。
【0095】
【表2】

【0096】
例19
【0097】
例3で説明したD&Cオレンジ5組成物に10mgのD&Cグリーン6を加えて攪拌し、緑色の液体を調製した。この液体のサンプル(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。前記液体の色(緑色)が、前記樹脂が硬化したときに青紫色に変化することが視覚的に観察された。
【0098】
例20
【0099】
例3で説明したD&Cオレンジ5溶液に10mgのD&Cバイオレット2を加えて攪拌し、赤紫色の液体を調製した。この液体のサンプル(30mg)を、ガラス攪拌棒を使用して顕微鏡スライドガラスへ移し、その後、ガラス攪拌棒を使用してスライドガラス上に広げた。前記液体の色(赤紫色)が、前記樹脂が硬化したときに緋紫色(スカーレット・パープル)に変化することが視覚的に観察された。
【0100】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の細部の実施にあたっては、当業者は、開示された実施例に様々な改良を加えることが可能である。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜形成ポリマーを用いて皮膚をシーリングする方法を提供するためのシステムであって、
少なくとも2つの部分から構成され、かつシーラント組成物を収容した1又は複数の破壊可能な容器が装填される塗布具と、
前記塗布具の使用方法を示す説明手段とを含み、
前記説明手段が、前記塗布具の前記少なくとも2つの部分のうちの少なくとも1つ部分を第1の位置から第2の位置へ移動させて前記1又は複数の破壊可能な容器を破壊し、破壊された前記容器から放出された前記シーラント組成物を皮膚に塗布することを示し、
前記シーラント組成物が、膜形成剤と、可塑剤と、該組成物が相変化したときに通常の光条件下で人間の肉眼で視覚可能な変色を呈する3000ppm乃至10000ppmの濃度の染料とを含有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1の位置では、前記破壊可能な容器の完全性が保たれることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第2の位置では、前記破壊可能な容器の完全性が損なわれることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記説明手段明が、前記第1の位置及び前記第2の位置を図示することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、
前記説明手段が、前記塗布具の外面上に印された、前記塗布具の前記少なくとも2つの部分のうちの少なくとも1つ部分を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させる方向を示す指示的な矢印を図示することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
シーリングされる皮膚が、創傷、擦り傷、やけど、にきび、水脹れ、及び他の皮膚の崩壊を含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
ヨード含有皮膚処理剤をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
製品であって、
皮膚シーラント組成物を塗布するための皮膚シーラント塗布具と、前記塗布具用の包装手段とを含み、
前記包装手段に、皮膚処理組成物のブランド名及び/又はロゴを表示したことを特徴とする製品。
【請求項9】
請求項8に記載の製品であって、
前記ブランド名がベタジン(Betadine)であることを特徴とする製品。
【請求項10】
請求項8に記載の製品であって、
前記ブランド名がChloraprepであることを特徴とする製品。
【請求項11】
請求項8に記載の製品であって、
前記包装手段が、前記塗布具の使用方法の説明手段を含み、
前記シーラント組成物が、膜形成剤と、可塑剤と、該組成物が相変化したときに通常の光条件下で人間の肉眼で視覚可能な変色を呈する3000ppm乃至10000ppmの濃度の染料とを含有することを特徴とする製品。
【請求項12】
請求項8に記載の製品であって、
前記包装手段が、皮膚処理組成物を含むことを特徴とする製品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−500123(P2011−500123A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528507(P2010−528507)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053779
【国際公開番号】WO2009/047663
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(309038085)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】