説明

真核生物細胞の培養方法

重炭酸塩を含有する細胞培養系において、塩基を添加すること無く、細胞増殖をもたらす範囲内にpHを維持するための装置及び方法。該方法は、細胞培養物のpHを、所望の範囲内に維持することができるように、細胞培養物への及び培養物からのCO移動を調節するバイオリアクタシステムのガス移動特性に依存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その内容の全体を出典明示により本明細書中に援用する2009年7月6日出願の米国特許仮出願第61/223313号の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、培養培地へ塩基を直接添加することなく、細胞培養のpHを維持することを可能にする重炭酸塩含有培地において真核生物細胞を培養するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞バンクのため、例えば組換えタンパク質生産等の細胞産物の生産のための細胞の培養は、細胞が増殖するに伴い変化する条件によって妨げられる。ステンレス鋼製バイオリアクタが細胞製造のためにしばしば用いられる一方、ディスポーザブルのものが、生物製剤製造の全ての段階で使用されることが増えている(Rao等, 2009)。上流プロセシングにおいては、ディスポーザブルなバイオリアクタが、そのステンレス鋼製の対応品に勝る多くの利点を提供する(相互汚染のリスク低減からコスト及び時間の節約まで及ぶ)。WAVE BioreactorTMは、生物製剤産業において組換えタンパク質の生産に使用されるディスポーザブルな上流技術の十分に記述された例である(Cronin等, 2007;Haldankar等, 2006;Ling等, 2003;Ye等, 2009)。
【0004】
Singh(Singh, 1999)によって開発されたWAVE BioreactorTMシステムは、予め殺菌された、可撓性でディスポーザブルな培養チャンバ(CellbagTM)と、CO-及び/又はO-空気混合コントローラと、CellbagTMを揺動し加熱するための空気圧制御式プラットフォームを具備する。このプラットフォームによって発生する揺動動作は、CellbagTMにおける混合及びガス移動をもたらす。
【0005】
WAVE BioreactorTMシステムは、オンラインでのpH及び溶存酸素(DO)モニタ及び実時間フィードバック制御を提供するように更に装備せしめることができる(Mikola等, 2007;Tang等, 2007)。しかしながら、必要とされる更なる装置、並びにpH及びDOプローブを収容するための特別に設計されたバッグの必要性により、このシステムの稼動コスト及び複雑性が増加する。加えて、pH制御されたバイオリアクタにおいて、規定の設定値まで培養pHを上げるために必要とされる塩基の添加は、培養オスモル濃度を増加させる。バイオリアクタのオスモル濃度増加の程度に依存して、細胞増殖及び生存の付随する減少(deZengotita等, 2002;Zhu等, 2005)が、pH制御の利点を相殺する場合がある。更に、pHプローブが故障した場合、生じるpH摂動が細胞代謝を変化させ得、細胞死を促進し得る(Miller等, 1988;Osman等, 2002)。
【0006】
厳格なpH及びDO制御は、ある種の細胞培養アプリケーション、例えば、細胞維持及び増殖のための、振とうフラスコ及びスピナー等の小規模の培養システムにおける細胞の単調な継代等のためには必要ではないかもしれない。しかしながら、極端なpH及びDOは、細胞増殖及び生存に有害であり(Lin等, 1993;Link等, 2004;Miller等, 1988;Osman等, 2001)、製品品質に影響し得る(Restelli等, 2006;Yoon等, 2005)。従って、生物製剤製造の全てのステージにわたって細胞のこのような増殖条件に対してある程度の制御を維持することは極めて重要である。研究者は、6.8−7.3のpH範囲及び空気飽和の10−100%のDO範囲でのCHO細胞の培養における成功を既に証明した(Link等 2004;Restelli等 2006;Trummer等 2006;Yoon等 2005)。
【0007】
実時間pHモニタ及びDOモニタリング制御等の一般的なバイオリアクタの更なる機能は、生物学的製造における細胞培養の費用及び労働集約度を著しく増加させる。更に、これらの機能の故障又は不良は、時間及び資源が大きく犠牲となる、細胞培養の容認できない変動及び潜在的ロスを導き得る。
【0008】
このように、強塩基の導入を必要とすることなく、またpH及びDOの更なるモニタ及び実時間制御をすることのない、真核生物細胞を培養するための改良された方法に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、塩基を添加しないで、細胞培養系のpHを維持するための装置及び方法を提供する。重炭酸塩を含有する細胞培養培地において、培地のCO量は、炭酸-重炭酸塩バッファー平衡(式1)に基づいて、培地のpHに影響する:

【0010】
このように、本発明は、この関係を利用し、細胞培養系の液相及び気相の動的界面を用いて溶存CO濃度を増減させることによって、強酸又は塩基の追加を必要とすることなく細胞培養培地のpHを調節する。本発明は、この調節を達成するための方法及び該方法を実施するための装置を提供する。
【0011】
一般に、本発明の装置には、細胞培養の溶存酸素を維持するために、空気、酸素又はこれらの気体の組合せが供給される。装置のヘッド空間に(その組成及び導入速度に関して操作され得る)気体混合物を供給することにより、液相及び気相間のCOの濃度差に依存して、COが細胞培養培地に添加され又は培地から除去され得る。ヘッド空間からのCOの除去は、培地の溶存COがヘッド空間に拡散するに従い、培養pHを増加させる。逆に、COが培地の濃度より高い濃度で装置に加えられる時、COは培地に溶け、培養pHは減少する。本発明は、塩基を添加することなく、培養pHを維持するために細胞培養への又は培養からのCO移動を可能にする方法を提供する。
【0012】
このように、本発明は、容器内で、重炭酸塩を含有する培養液中に真核生物細胞を含んでなる真核生物細胞を培養する方法を提供するものであって、容器は細胞培養物及び前記細胞培養物上部の気相ヘッド空間を封入する壁部を有する。容器は、また、前記ヘッド空間からのガスの流出入を提供する少なくとも一つのポートを有する。容器は、液相及び気相間の動的界面を提供するために攪拌される。培養物のpHは、モニタされ得、ガスは、前記ポートを通りヘッド空間へ供給され、ガスは、細胞培養物によりCOが溶解するに従い、pHの低下をもたらすよう、所定量のCOを含むか、又は細胞培養物のpHの増加をもたらすために、ポートを通して、ヘッド空間から蓄積COが除去される。このように、pHは所定の範囲に維持される。
【0013】
一般に、細胞培養培地の溶存COの分圧は、1〜200mmHgの量に維持される。幾つかの実施態様では、溶存COの分圧は、10〜180mmHgである。幾つかの実施態様では、溶存COの分圧は、20〜150mmHgである。幾つかの実施態様では、溶存COの分圧は、100-180mmHgである。幾つかの実施態様では、溶存COの分圧は、20〜80mmHgである。幾つかの実施態様では、溶存COの分圧は、30〜60mmHgである。幾つかの実施態様では、溶存COの分圧は、35〜50mmHgである。幾つかの実施態様では、溶存COの分圧は、40mmHgである。
【0014】
ヘッド空間クリアランスは、連続的に又は断続的に実施され得る。
【0015】
一般に、DOは、10%より上に維持される。幾つかの実施態様では、DOは、20%より上に維持される。幾つかの実施態様では、DOは、30%より上に維持される。幾つかの実施態様では、DOは、40%より上に維持される。幾つかの実施態様では、DOは、50%より上に維持される。幾つかの実施態様では、DOは、60%より上に維持される。
【0016】
幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.001ヘッド空間体積/分(hvm)である。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.005hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.01hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.02hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.05hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.1hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.2hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.5hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、0.9hvmである。幾つかの実施態様では、容器へのガスの流量は、1.0hvmである。
【0017】
真核生物細胞は脊椎動物の細胞であり得、限定するものではないが、例えば、カエル、ウサギ、齧歯類、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長類、又はヒト等からの細胞である。
【0018】
方法は、剛性又は柔質の壁部を有する容器において実施され得、例えばプラスチック容器又はディスポーザブル培養バッグ等である。
【0019】
容器において液相及び気相の間の動的界面を提供する任意の手段によって、容器は、攪拌されうる。このような攪拌は、例えば、揺動、軌道運動、8の字運動、転動運動、振とう等によることができる。
【0020】
幾つかの実施態様では、撹拌は、揺動によって実施される。揺動速度及び揺動角度は、所望の攪拌を成し遂げるように調節されうる。幾つかの実施態様では、揺動角度は、20°、19°、18°、17°、16°、15°、14°、13°、12°、11°、10°、9°、8°、7°、6°、5°、4°、3°、2°又は1°である。ある実施態様では、揺動角度は、6−16°の間である。他の実施態様では、揺動角度は、7−16°の間である。他の実施態様では、揺動角度は、8−12°の間である。
【0021】
幾つかの実施態様では、揺動速度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11,1 12、13、14 15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40rpmである。幾つかの実施態様では、揺動速度は、19−25rpmの間である。幾つかの実施態様では、揺動速度は、20−24rpmの間である。幾つかの実施態様では、揺動速度は、21−23rpmの間である。
【0022】
該方法は、培養のヘッド空間から、ガスの流出入を可能にする一つのポートを有する容器において実施され得る。あるいは、容器は、複数のポートを有しうる。
【0023】
培養のpHは、連続的に又は断続的にモニタされ、そして、液相のpHが所定の値に調節されるように、培養の液相における溶存COの濃度を増加又は減少するよう、ヘッド空間のガスのCO濃度が提供されるように、ヘッド空間にガスが注入される。
【0024】
他の実施態様では、該方法は、培地ポートを通して、細胞培養に新鮮培養培地を灌流する工程を含み得る。新鮮培地は、細胞培養を所定のpH範囲に一部維持するよう添加する際に、細胞培養の全体のpHの調節を提供するpHを有する。所定のpHを有する新鮮培地を用いたpHの調節は、培養方法において有用であるが、pHを完全に制御するには十分でない。
【0025】
該方法は、いかなるサイズの培養にも適応できる。幾つかの実施形態では、該方法は、市販されるディスポーザブル型バイオリアクタバッグにおいて実施される。この種のバイオリアクタバッグは500mL、1L、2L、10L、20L、50L、100L、200L、500L、及び1000L等の体積で入手可能である。
【0026】
培養の様々なパラメータは、モニタされ制御されうる。このようなパラメータは、計算がコンピュータによって実施され、自動化プロセスで制御されうる。単独で又は組合せで制御され得る幾つかのパラメータは、これに限定されるものではないが、ガス流量、pH、溶存CO濃度、温度、及び攪拌を含む。
【0027】
本発明は、本発明の方法を実施するための装置も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、潅流フィルタを有する本発明の装置の例を示す。該装置は、ガスの流入ポート及び流出ポート、培養物に新鮮培地を供給するポート、使用済み培地を除去する潅流フィルタ、揺動デッキ及び基台を有する。揺動動作は、細胞培養培地への及び該培地からのO及びCOの効果的な移動を提供する攪拌を可能にする。
【図2】図2は、WAVE BioreactorTMにおける酸素移動を測定するための、無細胞研究を示す。(パネルA)一定の空気流量0.2L/分での、kaに対する揺動速度及び揺動角度の効果;(パネルB)kaに対する揺動速度、揺動角度及び空気流量の効果;(パネルC)異なる揺動角度、揺動速度及び一定の空気流量0.2L/分(本明細書においてLPMとも称される)での、生のDOデータ;(パネルD)異なるガス流量での2つの異なる揺動セットポイントに対する生のDO経時データ。
【図3】図3は、WAVE BioreactorTMにおける、CO除去率を評価するための、無細胞研究を示す。(パネルA);一定のガス流量0.2LPMでの、異なる揺動角度、揺動速度に対する生のpH上昇データ;(パネルB)異なるガス流量での、2つの異なる揺動設定点に対する生のpH上昇経時データ。(パネルC)パネルAに示される異なる揺動条件に対する算出されたpH変化の割合;(パネルD)パネルBに示される、異なる揺動条件及び異なるガス流量に対する、算出されたpH変化の割合。ソリッドバーは、最初の5分の間のpHの変化の割合であり、オープンバーは次の55分の間のpHの算出変化率である。
【図4】図4は、WAVE BioreactorTM回分培養の、(パネルA)VCC、(パネルB)オフラインpH、(パネルC)オフラインpCO、及び(パネルD)オフラインDOプロファイルを示す。プロセス条件は、以下の表2にまとめられる。(i)MAbBを生産する細胞株に対しては、接種ステージのみが評価され、(ii)MAbCを生産する細胞株に対しては、接種及びスケールアップステージ(この間、作業体積は6Lから20Lまで増加した)双方が評価された。各ステージの間、ヘッド空間にポンプで送られた空気には、1日目の間は8%(v/v)で、2日目の間は5%(v/v)で、そして、その後は、2%(v/v)でCOが補充された。
【図5】図5は、非最適化条件の下実施された、MAbAを生産する細胞株を用いた、2つのWAVE BioreactorTM潅流培養の、(パネルA)VCC、(パネルB)培養生存率(パネルC)オフラインのpH、及び(パネルD)DO濃度を示す。細胞は、最初の6日間はバッチモードで、その後は潅流モードで培養された。回分培養の間、CellbagTMの作業体積は、6Lの培養物が接種され、3日目に、この培養物体積は、新鮮培地の追加により25Lに増加された。灌流培養の間、培養体積は、一日当たり一体積の灌流率で、25Lに維持された。このセットの実験では、揺動速度は18rpmであり、揺動角度は8度であり、ヘッド空間への空気流量は0.2L/分であった。培養の全期間の間、この空気は5%CO(v/v)で補充された。
【図6】図6は、バッチ(0-6日目)/潅流(6-14日目)プロセスの、細胞培養増殖プロファイル及びpHプロファイルを示す。(パネルA)%PCVでの血中血球容積;(パネルB)細胞生存率;(パネルC)pHプロファイル;(パネルD)ViCellTM ASで測定される生細胞数(VCC)での細胞増殖。
【図7】図7は、異なるヘッド空間クリアランス速度(hvm)からの培養実績を示す。(パネルA)は気流の単ステップ増加を有する2つの実験を示し、ヘッド空間クリアランス速度の増加に影響する((-◆-)では0.1hvm、(-▲-)では0.02hvm)。他のヘッド空間クリアランス速度ストラテジーは、10及び11日目の、多ステップ増加である(0.007hvm〜0.013hvm〜0.02hvm)(-■-)。(パネルB)NOVA BioProfile(登録商標)400によって測定された溶存CO分圧。
【図8】図8は、最適化プロセスを使用して、各々が異なるMAbを生産する6つの異なる細胞株の、WAVE BioreactorTMの、(パネルA)VCC、(パネルB)培養生存率(パネルC)オフラインのpH、及び(パネルD)DOを示す。6Lの接種段階の間、培養物は21rpmで揺動され、ヘッド空間への空気流量は0.2L/分であった。この空気は、1日目の間8%(v/v)で、2日目の間5%(v/v)で、その後は2%(v/v)でCOが補充された。この気流ストラテジーは、20Lのスケールアップステージで繰り返された(3日目-6日目)。20Lの潅流モードの培養の間(6日目以降)、ヘッド空間への空気流量は、CO補充無しで、0.6L/分に維持され、流入ガスの空気に対するOの配合は、8日目に、0%(v/v)から30%(v/v)まで増加され、そして培養の残りの期間、30%(v/v)に維持された。20Lのバッチ及び潅流培養は、23rpmで揺動された。全培養の揺動角度は10°で一定だった。
【図9】図9は、WAVE BioreactorTM(●)及び攪拌タンクバイオリアクタ(□)において、MAbEを生産する細胞株の平行培養の、(パネルA)VCC、(パネルB)生存率、(パネルC)オフラインpH及び(パネルD)オフラインDOを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
当業者は、真核生物細胞を培養する多くのプロトコル及び方法に精通しており、また同細胞に対する培養培地もしかりである。この種のプロトコル及び培養培地は、ANIMAL CELL CULTURE, A PRACTICAL APPROACH 2ND ED., Rickwood, D. and Hames, B.D., eds., Oxford University Press, New York (1992)等の文献及び教参考書に記載されている。一般的な使用方法が、インターネットも入手可能であり、例えばprotocol-online.org/prot/Cell_Biology/Cell_Cultureである。細胞培養培地は、また、商業的に種々の周知のソースから入手可能である。本願明細書において引用される全ての文献は、出典明示によりここに援用される。
【0030】
(定義)
本願明細書において記載又は参照される一般の細胞培養技術及び手順は、当業者に周知であり、また、一般的な方法論を使用して一般的に採用される。適宜、市販のキット及び試薬の使用を含む手順は、通常、特に明記しない限り、製造業者規定のプロトコル及び/又はパラメータに従って実施される。
【0031】
本方法の記載の前に、この発明は、記載された特定の方法論、プロトコル、細胞系、動物の種又は属、構造物、及び試薬に、このようなものはもちろん様々なので、限定されないことが理解されるべきである。また、本願明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を記載するためだけのものであり、添付の請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを目的としないことが理解される。
【0032】
本願明細書において、また添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数系「a」、「and」、及び「the」は、文脈から特に明記されない限り、複数形も含むことに注意されなければならない。明細書及び添付の請求項(例えば1〜200mmHg等)は、「約」なる用語により修飾されることが理解される。
【0033】
本明細書に記載される全ての刊行物は、該刊行物が引用するものと関連して方法及び/又は材料を開示し記載するために、出典明示により本明細書に援用される。本明細書に引用される刊行物は、本出願の出願日の前のそれらの開示に対して引用される。ここにおける何も、本発明の優先日又は先の日に基づいて、発明者が刊行物に先行する権利がないことを自認したと解されるものではない。更に、実際の公開日は、示されるものとは異なり得、個別の検証が必要とされ得る。
【0034】
ここで使用する場合、「約」は、記載される値より10%多い又は少ない値を意味する。
【0035】
ここで使用される場合、「攪拌する」は、培養物の液体相が、培養物の上部の気相と動的な相互作用にあるように摂動することを意味する。攪拌は、振とう(shaking)、撹拌(stirring)、揺動(rocking)、軌道振とう(orbital shaking)、転動(rolling)、八の字振とう(figure-eight shaking)、又は液相を非静態にし液相への又は液相からのガスの拡散を増加させる任意の手段をも意味しうる。
【0036】
ここで使用される場合、「ガス」は、純ガス又は窒素、酸素及び二酸化炭素を含み得るガスの混合物を意味する。典型的には、窒素は全ガス濃度の約60〜90%の量で存在し、酸素は全ガス濃度の約10〜40%の量で存在し、そして、二酸化炭素は全ガス濃度の約0〜50%の量で存在する。
【0037】
ここで使用される場合、「重炭酸塩を含有する細胞培養液」は、その組成の一部として、重炭酸塩バッファ系を含む真核生物細胞を培養するための適切な培養培地を意味する。培地は、また、HEPES又はMOPS等のような更なる緩衝剤を含みうるが、同様に重炭酸塩ベース系を含まなければならない。
【0038】
ここで使用される場合、「細胞培養」は、緩衝剤及び生細胞の増殖及び/又は維持に必要な養分を含む液体培地において、真核生物細胞を含んだ液状調製物を意味する。
【0039】
ここで使用される場合、「溶存COの濃度」は、mmHgでの、COの相対的測定分圧によって表される。従って、溶存COの分圧が、溶存COの濃度の反映として使用される。
「DO」は、溶存酸素を意味する。
【0040】
ここで使用される場合、「動的界面」は、細胞培養物の攪拌によって提供される、液相及び気相間の、ガスの強化された活発な交換を意味する。
ここで使用される場合、「真核生物細胞」は、無脊椎動物又は脊椎動物の細胞であり得る動物性細胞を意味する。
【0041】
ここで使用される場合、「ヘッド空間」は、容器が細胞培養に使用された場合に、細胞培養物の液相上部の気相を意味する。
【0042】
ここで使用される場合、hvmは、1分当たりのヘッド空間体積に関連し、ヘッド空間のガスが除去される速度を示す。
aは、体積測定酸素移動係数を意味する。
CO2は、体積測定二酸化炭素移動係数を意味する。
LPMは、ガス流の1分当たりのリットルを意味する。
【0043】
ここで使用される場合、「調節」は、値の増加又は減少をもたらすことに関連する。
【0044】
ここで使用される場合、「モニタ」は、特定の値を、断続的に又は連続的に決定するために、サンプリング及び分析することによって、追跡することを意味する。
pCOは、溶存CO濃度の分圧を意味する。
【0045】
ここで使用される場合、「ポート」は、それ以外は閉鎖されているシステムへのアクセスポイントを意味する。
【0046】
ここで使用される場合、「予め定められた」は、目的値として使われる、特定のパラメータのために前もって選ばれた値を意味する。。
【0047】
ここで使用される場合、「rpm」は、1分当たりの揺動を意味する。
【0048】
VCCは、生細胞濃度を意味する。。
【0049】
ここで使用される場合、「容器」は、コンテイナを意味する。ここで使用される場合、この種の容器は、例えば、フラスコ、バイオリアクタ、ディスポーザブル・バイオリアクタ・バッグ、培養チャンバ等であってもよい。
【0050】
ここで使用される場合、「vvm」は、1分当たりの容器体積を意味する。
【0051】
(理論的側面)
(WAVE BioreactorTM培養におけるO移動)
WAVE BioreactorTMのO移動速度を決定するために、オンラインDOプローブに対する十分に速い応答時間、CellbagTMにおける理想的な混合、及び液相界面による物質移動抵抗の支配を仮定する。これらの仮定の下で、以下の物質収支式は、気相から液相へのO移動の速度を概算する:

ここで、Oは、培地中の飽和DO濃度であり、またOは、培地中のDO濃度である。時間ゼロでOをゼロとすると、式は

となる。
時間の関数として、

をプロットすることにより、最適合線の傾きは、このシステムのkaを提供する。
【0052】
WAVE BioreactorTMのO移動の速度(式1)を増加するために、システムのkaを増加、又は濃度勾配(O−O)を増加、又は双方を増加することができる。WAVE BioreactTMシステムのkaを増加するために、揺動速度、揺動角度、又は空気流量を増加することができる(Mikola, 2007; Singh, 1999)。ガスから液相へのO移動の推進力を提供する、濃度勾配(O−O)を増加するために、流入ガスのOのパーセンテージを増加してOを増加することができる。
【0053】
(WAVE BioreactorTM培養におけるCO移動)
単純化されたモデルにおいて、CellbagTMのガス状CO(CO2(g))は、培養培地の溶存CO(CO2(aq))と平衡である。

次にCO2(aq)は、炭酸(HCO)と平衡に存在し、それは重炭酸塩(HCO)に解離することができる

炭酸塩(CO2−)へのHCOの更なる解離は、pH4−8の範囲では無視できる(Royce and Thornhill, 1991)。
【0054】
培養培地からのCO発生の律速段階は、気液物質移動であろう(式3)。界面での液体におけるCO濃度は、バルクガスの濃度と平衡であると仮定すると、以下の物質収支式が、液相から気相へのCO移動の速度を概算する:

ここで、kCO2は、体積測定溶解二酸化炭素移動係数である。
【0055】
WAVE BioreactorTMにおける溶存COのプローブなしでは、CO2(aq)移動の速度を直接算出するための、リアルタイムCO測定を実施することができなかった。しかしながら、我々の培養培地における、重炭酸塩緩衝システムについての我々の知識に基づくと、式3及び4における平衡が左に移動するため、我々はCO除去が培養pHを増加すと考える。オンラインpHプローブの十分に速い応答時間を仮定すると、動的CO2(aq)移動の研究において生成されるpHプロファイルは、CO2(aq)除去の割合の間接的な推定を提供する。
【0056】
培養pHを増加するために、系のkCO2を増加させることによって、又はCO移動の推進力(CO2(aq)−CO2(g))を増加させることによって、又は双方を増加させることによって、WAVE BioreactorTMにおけるCO除去の速度を増加させることができる。具体的には、WAVE BioreactorTMシステムのkCO2を増加するために、我々は、揺動速度及び揺動角度を増加することができた。推進力(CO2(aq)−CO2(g))を増加させるために、我々は、流入ガスのCOのパーセンテージを低下させ、CO2(g)を減少させることができた。ヘンリーの法則によれば、CellbagTMヘッド空間のCO2(g)(pCO2(g))の分圧は、培地のCO2(aq)濃度を制限する:

ここで、Hは、COに対するヘンリーの法則の定数である。
【0057】
逆に、培養pHを低下させるために、我々は、CO2(aq)を増加するために流入ガスのCO2(g)濃度を増加することができ、これは式4の平衡を右へ移す。
【0058】
(本発明の方法)
本発明の方法では、真核細胞が、細胞の生存を可能にする適切な培養培地及び温度で培養される。当業者に周知のように、様々な細胞タイプが様々な培地で増殖され得る。熟練した技術者は、どの培地が、特定の細胞種及び/又は特定の応用のために最適か容易に選択することができる。本発明の方法において、培地は、COによるpH調節を可能にするために、重炭酸塩緩衝系を含んでいなければならない。培地は、緩衝剤として作用する更なる薬剤を含み得る。
【0059】
本発明の方法で用いられうる真核生物細胞は動物細胞を含み、無脊椎動物細胞並びに脊椎動物細胞であり得る。無脊椎動物細胞は、昆虫細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)、カイコ(Bombyx mori)、及びイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞等)を含む。脊椎動物の細胞は、哺乳類及び非哺乳類細胞を含む。脊椎動物細胞は、これに限定されるものではないが、カエル(例えばアフリカツメガエル(Xenopus laevis))、ウサギ目(例えばウサギ及びノウサギ)、齧歯類(例えばラット、ハムスター、スナネズミ(jirds)、アレチネズミ(gerbils)及びマウス)、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ、非ヒト霊長類及びヒトからのものを含む。
【0060】
本発明の方法で使用される細胞は、組換え又は非組換え細胞であり得る。組換え細胞は、特定のタンパク質(例えば、安定に又は一過性にトランスフェクトされた細胞)を発現するために操作された細胞、又は特定のRNAs(例えばsiRNA、リボ酵素等)を生産するために操作された細胞を含みうる。
【0061】
適切な培地中の細胞が、培養容器に入れられ、ガスがヘッド空間に注入される。幾つかの実施態様では、ヘッド空間クリアランス速度は、約0.002〜0.1hvmの範囲内である。幾つかの実施態様では、ヘッド空間クリアランス速度は、約0.007〜0.08hvmの範囲内である。幾つかの実施態様では、ヘッド空間クリアランス速度は、約0.009〜0.06hvmの範囲内である。幾つかの実施態様では、ヘッド空間クリアランス速度は、約0.01〜0.04hmvの範囲内である。幾つかの実施態様では、ヘッド空間クリアランス速度は、約0.02〜0.03hvmの範囲内である。さらに他の実施例では、ヘッド空間クリアランス速度は、約0.009〜0.024hmvの範囲内である。更なる実施例では、ヘッド空間クリアランス速度は、約0.007〜0.02hvmの範囲内である。「hvm」は、ヘッド空間体積(L)に対するガスの体積流量の割合(L/分)である。
【0062】
幾つかの実施態様では、例えば、20Lの培養体積及びヘッド空間体積30Lを有する50LのWAVE BioreactorTMバッグにおいて、容器へのガスの流量は0.1L/分〜1L/分である。幾つかの実施態様では、バッグへのガスの流量は0.2L/分である。幾つかの実施態様では、流量は0.3L/分である。他の実施態様において、ガスの流量は0.4L/分である。更に他の実施例において、ガスの流量は0.5L/分である。他の実施態様において、ガスの流量は0.6L/分である。他の実施態様において、ガスの流量は0.7L/分である。更に他の実施例では、流量は0.8L/分である。他の実施態様では、流量は0.9L/分である。
【0063】
一般に、細胞培養は、約6〜8の範囲内に維持されなければならない。幾つかの実施態様では、pHは、約6.6〜7.6の範囲の中で維持される。幾つかの実施態様では、pHは、約6.9〜7.5の範囲の中で維持される。幾つかの実施態様では、pHは、約6.8〜7.2の範囲の中で維持される。幾つかの実施態様では、pHは、約7.0〜7.3の範囲の中で維持される。本発明の方法は、培養における細胞の増殖に貢献するpHの維持のための、pHのモニタを必要としないが、本発明の幾つかの実施態様では、培養物のpHが(断続的に又は連続的に)モニタされ得る。測定は、in sutu又はオフラインで成され得る。
【0064】
本発明の幾つかの実施態様では、DOは、10%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、20%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、30%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、40%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、50%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、60%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、70%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、80%より上に維持される。他の実施態様において、DOは、90%より上に維持される。
【0065】
液体培地におけるCO濃度のモニタリングは、当技術分野において周知であり、市販の技術を使用して達成されうる。測定は、現場で又はオフラインでなされうる。
【0066】
本発明の方法の特定の例示的な実施態様では、細胞が段階的に培養される回分法(バッチプロセス)が使用される。この方法では、WAVE BioreactorTMシステムの50Lバッグが、20Lの培養物の作業体積で使用され、ヘッド空間は、1日目の間、8%CO(v/v)ガスで、2日目には5%CO(v/v)ガスで、その後2%CO(v/v)ガスで補充されるガスが注入される。WAVE BioreactorTMは、0.2L/分接種のために、21rpm、10°で、0.2L/分スケールアップステージのために、23rpm、10°で揺動される。この構成では、pHは使用されるパラメータによって維持されるため、pHをモニタする必要がない。
【0067】
本発明の方法の特定の例示的な実施態様では、潅流プロセスが用いられる。この方法では、WAVE BioreactorTMの50Lバッグが、20Lの培養物の作業体積で、使用される。バッグは、潅流の開始の2日後に、30%O(v/v)で補充されるガスを注入される。ガス流量は、0日目に0.2L/分から段階的に増加され、3日目に0.4L/分まで増加され、そして6日目に0.6L/分まで増加される。この構成では、pHは使用されるパラメータによって維持されるため、pHをモニタする必要がない。
【0068】
本発明の方法の別の特定の例示的な実施態様では、潅流プロセスが用いられる。この方法では、WAVE BioreactorTMの50Lバッグが、20Lの培養物の作業体積で、使用される。バッグは、潅流の開始の2日後に、30%O(v/v)で補充されるガスを注入される。ガス流量は、0.6L/分の一定の流量に保たれる。この構成では、pHは使用されるパラメータによって維持されるため、pHをモニタする必要がない。
【0069】
本発明の方法の更に別の特定の例示的な実施態様では、潅流プロセスが用いられる。この方法では、WAVE BioreactorTMの50Lバッグが、20Lの培養物の作業体積で、使用される。バッグは、潅流の開始の2日後に、30%O(v/v)で補充されるガスを注入される。ガス流量は、1.0L/分の一定の流量に保たれる。この構成では、pHは使用されるパラメータによって維持されるため、pHをモニタする必要がない。
【0070】
当業者にとって、培養条件のパラメータ(ガス濃度、流量、hmv、揺動速度、揺動角度、その他)が、所望の範囲を有するpHを達成するために、本願明細書の教示を用いて調節されてもよいことは、明らかであろう。
【0071】
(装置)
細胞培養培地を収容する容器は、いかなる特定のサイズにも限られない。本発明の容器は、当該技術分野で用いられる一般的に用いられるバイオリアクタ及びディスポーザブル培養バッグのサイズに適合化され得、またより大きな又はより小さな培養に適応させることもできる。
【0072】
容器は、容器を製作するために使用される材料に制限されない。容器は、例えばガラス又は硬いプラスチックのような硬質材料から製造される得、又は例えばディスポーザブル型バイオリアクタバッグを製造するために使用される柔らかいプラスチック等の柔質な材料で製造され得る。
【0073】
容器は、攪拌される時に、培地の乱流を増加させるためにバッフルを任意に含んでいてもよい。
【0074】
容器には、ガス及び液体の添加又は除去を可能にするために、一又は複数のポートを具備せしめることができる。ガスは、一又は複数のポートによって、ヘッド空間に充填され、またヘッド空間から除去されうる。一実施態様では、ガスの流出入双方を可能にする一つのポートが存在する。他の実施態様では、2つのポートがある:一つはガスの流入のためであり、一つはガスの流出のためである。他の実施態様では、複数のポートが、ガスの流出入を可能にするために使用される。
【0075】
幾つかの実施態様では、装置は、また、連続的に又は断続的に細胞培養培地のpHをモニタするpHモニタを有しうる。pHモニタは、CO濃度を変更して細胞培養培地のpHを調節するために、容器のヘッド空間にガスを供給し又はそこからガスを除去する自動化システムと連結して使用されうる。
【0076】
幾つかの実施態様では、本発明の装置は、培地のCOの濃度の指標として、溶存COの分圧を連続的に又は断続的にモニタするCOのためのモニタを含む。COモニタは、COモニタによって測定されたCOの実際の濃度を調節して濃度を予め定められた値に調節するように、溶存CO濃度を変更するために、容器のヘッド空間にガスを供給し又はそこからガスを除去する自動化システムと連結されて使用されうる。
【0077】
幾つかの実施態様では、本発明の装置は、細胞培養培地の温度を、連続的に又は断続的にモニタする温度のためのモニタを含む。温度モニタは、モニタによって測定された実際の温度を予め定められた値に調節するように、温度を増減する自動化システムと連結されて使用されうる。
【0078】
様々なパラメータモニタは、単独で又は組み合わせで使用され得、またコンピュータによって制御される自動化システムを使用して制御され得る。コンピュータは、細胞培養培地のpHを調節するために、ガスと共に注入されるか又はヘッド空間から除去されるCOの量を決定するのに必要な演算を実施するようにプログラムされうる。コンピュータはまた温度、攪拌度合い、培地の潅流及び他のパラメータに関する演算を実施し、また自動的にパラメータを調節する手段を制御しうる。
【0079】
場合によっては、本発明の装置は、細胞培養培地が、静的ではなく、ヘッド空間のガスと動的界面をなすように、容器を攪拌するアジテータを含む。攪拌は、細胞培養培地への又は培地からのガスの拡散を促進する。アジテータは、当該技術分野で知られているいかなる形でもあってもよいが、シェーカ、オービタルシェーカ、ローテータ、8の字シェーカ、揺動プラットフォーム、回転プラットフォーム等の非制限的な例を含む。
【0080】
自動化されたガス移送及びガスパージシステムは、容器へのガス流の速度を制御するための制御ゲージを備えた無菌フィルタにより加圧ガスを移送するために弁及びポンプシステムを含むことができる。ガスの移送及びガスの除去のための、当該技術分野で知られているいかなる手段も、使用されうる。ガスは、細胞培養培地の溶存COの濃度が予め定められた値から逸脱したときにコンピュータで算出される信号に応答して導入されうる。COの測定濃度が予め定められた値から逸脱する場合、自動化システムは、システムに加えられるか又はシステムから除去される必要があるCOの量を算出し、内在ガスは流出ポートから除去されるに従って、適切な量のCOを含むガスがヘッド空間に導入される。コンピュータは、本明細書で定義される式1、2及び/又は3を含む演算、及び利用できる文献、市販のシステム及び本願明細書における教示に基づいた、当業者に知られているシステムを調節するための他の演算を実施し得る。
【0081】
別法では、又はモニタされたCO濃度を使用する応答システムと連動して、自動化システムは、また、培養培地のpHを測定し、測定されたpHが細胞を培養するための所定のpHから逸脱するときに応答しうる。自動化システムは、CO濃度及び/又はpHの逸脱に対して応答し得、培養培地のpHを適切に調節するように内在ガスを除去しながら、ガスと共に適切な量のCOを導入しうる。
【0082】
装置及び方法を、図1を参照して、非限定的な例において説明する。培養容器(40)は、細胞培養培地及び細胞(110)及びヘッド空間(130)を含んでいる。フィルタ(50)を有するガス流入ポート(70)が、ヘッド空間(130)へのガスの注入を可能にするために容器(40)に連結されている。フィルタ(60)を有するガス流出ポート(80)が、ヘッド空間(130)からのガスの流出を可能にするために容器(40)に連結されている。容器は、細胞培養培地(110)の揺動動作及び攪拌を可能にするために、ロッカー(20)及び基台(10)に連結されたプラットフォーム(30)に置かれる。ヘッド空間(130)内の攪拌及びガス流は、細胞培養培地(110)に流出入するO及びCOの拡散を可能にする。培養容器に細胞を保持するための任意の潅流フィルタ(90)は、必要に応じて細胞培養からの使用済み培養培地の除去を可能にするため、管(100)を介して培地ポート(120)に連結されている。
細胞は、容器(40)中の細胞培養培地(110)で培養される。容器(40)のヘッド空間(130)は、ガスで満たされる。ガス流入ポート(70)及び流出ポート(80)を通るガス流は、ガスが、ヘッド空間(130)内を流れ、培養物が、基台(10)に取り付けられたロッカー(20)上のプラットフォーム(30)の揺動動作によって撹拌されるに伴い、細胞培養培地(110)からヘッド空間(130)へ拡散するCOを排出することを可能にする。細胞培養培地(110)の溶存COの減少は、細胞培養培地(110)のpHの増加を引き起こす。
【0083】
細胞培養培地(110)には、場合によっては、培地管(140)通り培地ポート(150)を通って供給される新鮮培地が補充され得、また潅流フィルタ(90)を通り培地管(100)を上がってそして培地流出ポート(120)を通り抜け除去さる。本発明の方法のこの任意的な特徴では、元の細胞培養培地の栄養が枯渇し、また細胞老廃物が蓄積しpHが減少すると、新鮮培地が供給される。新鮮培地は、細胞培養培地を所定の最適pH範囲にするために混合する際に、全細胞培養培地のpHの増加を導くのに十分な予め定められたpHで供給される。
【実施例】
【0084】
(A.原理)
大部分の哺乳類細胞培養系は、重炭酸塩を含有する細胞培養培地を利用するので、哺乳類細胞培養におけるpH制御は、塩基/CO添加によって主に実施される。pH制御は、炭酸-重炭酸塩緩衝液系を利用する。このようなシステム、例えばディスポーザブル型バイオリアクタバッグ等では、培養のpHを、培地の溶存COの濃度を操作することによって調節でき、これはヘッド空間のCOの濃度を調節することによって調節されうることが発見された。双方向pH調節は、本願明細書の実施例において、ヘッド空間のCO濃度を調節することによって可能であることが示される。この方法は、細胞培養バイオリアクタシステムのpHを増加するための、塩基の使用を排除する。ディスポーザブル型バイオリアクタの細胞培養のpHを減少させる必要がある場合、ヘッド空間のCOの濃度を、COを含む流入ガスを補充することによって増加させることができる。これは、COを細胞培養に移動せしめることを可能にする。ディスポーザブル型バッグの細胞培養のpHが増加される必要がある場合、細胞培養からのCOの除去を促進するために、ヘッド空間のCO濃度を減少させ又はヘッド空間クリアランス速度を増加させることができる。
【0085】
pH維持のこの方法は、バイオリアクタ中のガス移動が、バイオリアクタにおいて作られる大きな表面積によって主に促進されるバイオリアクタシステムに拡張されうる。
【0086】
(細胞バンクプロセスにおけるCO添加/除去に基づくpH維持ストラテジー)
細胞培養の初期段階の間、比較的少ない数の細胞が存在する時に、細胞培養のpHは概して上昇する。pHを制御するために、COを典型的にはバイオリアクタに加えてpHを低減させる。通常、この添加は、通常の攪拌タンクバイオリアクタにおいて細胞培養へCOガスを散布することによって達成される。本発明のディスポーザブル型バイオリアクタでは、ヘッド空間中のCO濃度は、CO移動の方向が気相から液相へとなるように変更される。細胞濃度が培養の経過に伴って増加するにつれて、細胞培養のCO濃度も増加し、これにより典型的にはpHが減少する。通常のpHフィードバック制御を伴う通常の撹拌タンクバイオリアクタでは、pHを制御するために塩基が加えられる。塩基の添加は、細胞培養のpHを増加させる。本発明のディスポーザブル型バイオリアクタでは、pHの増加は、ヘッド空間中のCOの濃度を減少させること、並びにヘッド空間のクリアランス速度を増加させることによって、CO移動の方向を逆転させることによって達成することができる。培地中のCO濃度を管理することによって細胞培養のpHを維持するこの方法は、塩基の使用を排除することを可能にする。要求(pHを増加又は減少させる)に基づいて、ヘッド空間中のCO濃度を、それぞれ減少又は増加させることができる。
【0087】
ディスポーザブル型バイオリアクタシステムは、限定するものではないが、例えばMaster Cell Banks(MCB)及びWorking Cell Banks(WCB)等の、高細胞密度細胞バンクを作製するバイオリアクタシステムとして使用されうる。潅流細胞培養プロセスは、ディスポーザブル型バイオリアクタにおいて、高細胞密度細胞バンクの製造を可能にすると考えられる。MCBs及びWCBsを作製するための細胞培養プロセスを開発しながら、COの添加/除去アプローチはpH維持のために提案される。pHを維持するためのガス移動アプローチに加えて、細胞培養の潅流は、pHを維持する更なる機会を可能にする。潅流細胞培養プロセスにおいて、新鮮細胞培養培地がバイオリアクタに連続的に加えられ、使用された培養培地が連続的に除去される。潅流は、細胞培養のpHに潜在的に影響を及ぼす細胞培養副産物の除去を可能にする。細胞培養副産物の除去に加えて、入ってくる新鮮細胞培養培地のpHは、また、細胞培養のpHを変えることができる。細胞培養のpHが減少することが分かっている場合、流入培地のpHは、pHの減少を補うために増加されうる。あるいは、潅流の率は、また、培養pHを管理するために変えられることができる。上記の全方法は、pHに影響を及ぼすが、pHに影響を及ぼす最も重要な要因はCO移動方法である。CO移動はまた、ディスポーザブル型バイオリアクタのガス流量及びCO補充が、多くの問題無く効果的に制御されうるため、より信頼性が高い方法である。
【0088】
pH及びDOフィードバック制御なしで、WAVE BioreactorTMにおいてCHO細胞を培養する我々の最初の試みの間、我々は、幾つかの課題を特定した(図5):(1)回分培養段階(0−6日目)の間、およそ0.3日−1での遅い増殖;(2)潅流培養段階(6日目以降)の間、最初の3日の間のおよそ0.5日−1からその後の0.3日−1未満への低下となる、次第により遅くなる増殖;(3)最初の培養pHは、時に7.3を上回り、その後の培養pHはしばしばpH6.8を下回った;そして(4)6日目の潅流開始後、DOレベルは、しばしば空気飽和の20%を下回った。我々は、他のMAbsを生成するCHO細胞株を使用する場合に同じ課題に遭遇した(データは示さない)。回分培養の遅い増殖は高い最初のpHに起因し、潅流培養の増殖速度の下降は減少するpH及びDOに起因すると考えた。
【0089】
WAVE BioreactorTMにおいてpHフィードバック制御がない場合、これらの重炭酸塩緩衝培養物のpHは、CellbagTMのヘッド空間中のCO含有量に依存する。培地中の重炭酸塩及びHEPESバッファの存在に関わらず、培養pHは、乳酸塩蓄積の結果として、最終的に時間と共に低下する。培養pHを我々の所望の6.8−7.2の範囲に維持するための、我々のストラテジーは、CellbagTMのCO濃度を操作することであった。我々は、回分培養の初期段階の間に、pHを減少させるために、培地へのCO移動を増加する。逆に、我々は、バッチ又は潅流培養の後の段階の間、pHを増加するために、COを培地から除去する。WAVE BioreactorTMにおいてDOフィードバック制御がない場合、DOレベルは、細胞密度の増加と共に低下する。DOを空気飽和の20%より大きく維持するために、我々は、WAVE BioreactorTMシステムの体積酸素移動係数(ka)を増加することによって、また流入ガスにOを補充することによって、培養組織へのO移動を増加させる。
【0090】
(B.材料及び方法)
(1.CHO細胞株及び細胞培地)
実施例において使用される全ての細胞株は、無血清浮遊培養において増殖するよう適合されたCHOジヒドロ葉酸還元酵素欠失(DHFR−)宿主に由来した。特異的モノクローナル抗体(MAb)を生産する各細胞株は、DHFR、MAb軽鎖(LC)及びMAb重鎖(HC)をコードするDNAプラスミドを用いてDHFR-宿主をトランスフェクトすることによって生成された。安定にトランスフェクトされた細胞は、メトトレキセートを含む私有の既知組成選択培地において、2−5日毎に継代することによってその後維持された。私有の混合養分に加えて、1.0g/LのプルロニックF-68、2.44g/Lの重炭酸ナトリウム、及び15mMのHEPESを含む同じ培地が、バッチ及び潅流モード双方での、WAVE BioreactorTMにおける細胞培養のために使用された。
【0091】
(2.WAVE BioreactorTMシステム)
バッチ又は潅流モードでCHO細胞を培養するために使用されるWAVE BioreactorTMシステム(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)は、揺動プラットフォーム、制御ユニット、及び流出入ガスフィルタ及び複数のサンプリングポートを有する、予め殺菌され、可撓性であり、またディスポーザブルであるバッグから構成された(Singh, 1999; Tang等, 2007)。各システムは、それぞれ、温度制御及び必要とされる流入ガス組成(空気と混合されたO及び/又はCO)を提供するために、加熱パッド及びガス混合ボックスを備えた。全ての細胞培養実験は、6又は20Lの作用体積である50LのCellbagTMを使用して、37℃の温度設定値、19−25rpmの揺動速度、及び8−12°の揺動角度で実施された。オンラインpH又はDOプローブは、WAVE BioreactorTMに設置されなかった;代わりに、異なるガス混合及びガス流量ストラテジーが、培養pH及びDOレベルを目標の範囲内に維持するそれらの能力のために試験された。
【0092】
(3.WAVE BioreactorTMにおける回分培養)
回分培養は、通常の又は潅流CellbagTMを〜7.5×10細胞/mLで接種をすることによって、WAVE BioreactorTMにおいて6Lで始められた。接種の2、3後日、培養組織が充分な細胞集団を蓄積した時に、新鮮培地が、作用体積を20Lに増加するために加えられた。各継代で、培養組織は、回分モードで2−5日保たれた。
【0093】
(4.WAVE BioreactorTMにおける潅流培養)
他に明記しない限り、回分培養が、潅流CellbagTMにおいて20Lの作用体積での充分な細胞集団を蓄積した後、23rpmの揺動速度、及び10°の揺動角度、及び一日当たり1作用体積の潅流流量で開始された。潅流CellbagTMにおける細胞保持機器は、培養プロセスの間、液表層を浮遊するフィルタから成った(Tang等, 2007)。潅流フィルタは、細胞をCellbagTMに保持するが、新鮮培地が添加され、また濾過物は連続的に除去された。一日当たりの一作用体積の、新しいメディアの添加と、濾過物除去率とを一致させることによって、一定の体積が、潅流WAVE BioreactorTMにおいて維持された。
【0094】
(5.撹拌タンクバイオリアクタ培養)
WAVE BioreactorTM及び撹拌タンク・バイオリアクタにおける培養の性能を比較するために、同じシードトレインソース(seed train source)からの細胞が、WAVE BioreactorTMバイオリアクタ及び20Lのステンレス鋼撹拌タンク・バイオリアクタ(Applikon, Foster City, CA, USA)に、〜7.5×10細胞/mlで接種された。細胞は、まず回分モードで培養され、そして、十分な細胞集団の蓄積の上で潅流は開始された。作用体積は、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、回分モードで7Lであり、潅流モードでは15Lであった。培養温度、DO及び攪拌は、それぞれ37℃、空気飽和の30%及び125rpmに保たれた。培養pHは7.15に保たれ、不感帯は0.03であり、pHを増加するために1Mの炭酸ナトリウムの添加又はpHを減少させるためにCOガスの散布によって維持された。潅流動作の間、Centritech遠心分離システム(Centritech AB, Norsborg, Sweden)が、増殖培地から細胞を分離するために使用された;細胞は遠心分離機により保持されバイオリアクタに戻され、上澄みは取り除かれた(Johnson等, 1996)。一日当たりの一作用体積の、新鮮培地の添加の割合と上澄み除去率とを一致させることによって、バイオリアクタにおける一定の体積が保たれた。
【0095】
(6.オフラインサンプル分析)
培養組織は、生細胞濃度(VCC)及び生存率(Vi-Cell AS, Beckman Coulter, Fullerton, CA, USA)、並びにpH、DO、pCO、ブドウ糖及び乳酸塩に対して、サンプルが採られ分析された(Bioprofile 400, Nova Biomedical, Waltham, MA, USA)。
【0096】
(実施例1:無細胞実験:ガス移動の測定)
CellbagTMにおけるガス移動特性は、それらのDO及びpHレベルへの影響のため、培養性能に影響を及ぼす。我々の所望の範囲内にpH及びDOを維持することに対する第1のステップとして、CellbagTMにおける無細胞研究が、O及びCO移動を測定するために実施された。
【0097】
(A.O移動実験)
50LのCellbagTMにおけるO移動が、模擬培養培地を使用して、揺動速度(20、30及び40rpm)、揺動角度(8°、10°及び12°)及びガス流量(0.1、0.2及び0.3L/分)の様々な組合せで、体積測定O移動係数(ka)を算出することによって特徴づけられた。古典的な動的ガス放出方法が、kaを算出するために用いられた(Dunn and Einsele, 1975)。これらの研究のために使用された試験培地は、専有の細胞培養培地をシミュレーションするように設計された:1.0g/LのプルロニックF-68、2.44g/Lの重炭酸ナトリウム及び15mMのHEPESから成った。同じ製造業者(Broadley-James Corporation, Irvine, CA, USA)からの、Model40トランスミッターに連結されたOxyProbe(登録商標)DOプローブが、オンラインDO測定を提供するために使用された。
【0098】
移動試験に備えて、50LのCellbagTMが25Lの模擬培地で満たされた後、窒素(N)がガス流入ポートに通された。バッグは、Nの擬培地への移動を促進するために揺動された。ヘッド空間へのNの流入は、擬培地のDO量が空気飽和の10%を下回った時に、停止された。この脱酸素化過程の後、バッグは、ヘッド空間から残留Nを放出するために押圧された。気液界面へのかく乱を最小化すると共に、バッグのヘッド空間に圧縮ガスが加えられた。バッグが十分に膨らまされると直ぐに、O移動試験が、規定の揺動速度、揺動角度及びガス流量で開始された。DO濃度において生じた増加が記録され、システムのkaを決定するために用いられた。更に、オフラインDOが、最初の5分の間毎分、その後毎5分で、オンラインDO測定の精度を検証するために測定された。
【0099】
一定の空気流量では、揺動速度又は揺動角度を増加することは、おそらく酸素移動のための表面積を増加することにより、kaを増加した(図2A)。試験された最低の揺動速度(20rpm)で我々が得たka数値は、他の研究者がWAVE BioreactorTMシステムのために報告したものと同程度である(Mikola等, 2007; Singh, 1999)。これらのka数値は、また、我々の社内撹拌タンク・バイオリアクタで得られたそれらと同等である(データは示さず)。
【0100】
20rpmの一定の揺動速度での、WAVE BioreactorTMシステムのO移動研究において、2Lのスケールでは、空気流量を0.01vvmから0.05vvmまで増加することは、kaを2h−1から3h−1まで増加し、また20Lのスケールでは、空気流量を0.01vvmから0.1vvmまで増加することは、kaを0.5h−1から3h−1まで増加した(Singh, 1999)。対照的に、50Lのスケールでの我々の研究では、揺動速度及び揺動角度の2つの異なる組合せでは、空気流量を0vvmから0.02vvmまで増加することは、kaを増加しなかった(図2B)。我々が使用した最大空気流量は、kaに何れかの重要な影響を及ぼすために、気液界面で液可動性に影響を及ぼすには低過ぎたことが考えられる。
【0101】
50Lのディスポーザブル型バッグの酸素移動容量が、物質移動係数、kaを決定することによって評価された。図2Cは一定のガス流量での経時のDO濃度を示し、また、図2Dは溶存酸素へのガス流量の効果を示す。積極的な揺動条件(より高い揺動速度及び揺動角度)では、物質移動係数は高い。驚くべきことに、ヘッド空間クリアランス速度は、しかしながら、酸素移動に関しては、kaに影響を及ぼさない。模擬培地は、実験の開始前に脱酸素化された。ガスの酸素濃度は、模擬培地の酸素濃度より高かった。それ故、酸素は、気相から液相に移動された。積極的な揺動条件では、より多くの波形成により、気液体界面が増加する(これは、本明細書において、動的界面を有すると称される)。表面積におけるこの増加は、高い割合の酸素移動を生じると考えられる。ガス流量が増減される時、ヘッド空間クリアランス速度がそれに応じて変わる。ヘッド空間クリアランスにおける変化は、気液相間の酸素の濃度差を変えない。従って、ガス流量は、酸素の物質移動係数に影響を及ぼさないと考えられる。模擬培地の酸素の濃度がヘッド空間のそれに等しい時に、酸素移動は止まる。
【0102】
(B.CO移動研究)
移動研究で使用された方法によって、模擬培地が脱酸素化された後、Nを供給するために使用された同じ流入ポートを通してCOがCellbagTMに供給された。オンラインpHプローブが7.0を読んだ時に、COの供給が止められ、ヘッド空間はO移動研究に記載されている同じ方法を使用して除去された。バッグが十分に膨らまされた時に、CO移動試験が、揺動速度、揺動角度及びガス流量の規定された条件で開始された。pHに生じた増加は、同じ製造業者(E Healthcare, Piscataway, NJ, USA)によって提供されるpH20トランスミッターに連結されたディスポーザブルのオンラインpHプローブを用いて記録された。COが重炭酸塩塩基の模擬培地から除去されたので、pHは増加した。オンラインpH計測の精度を検証するために、模擬培地のオフラインのpHが、最初の5分の間毎分、その後、5分毎に測定された。時間に対するオンラインpH測定をプロットすることにより、ベストフィットラインの傾きは、pH変化の割合を提供し、またこれにより、模擬培地からCellbagTMのヘッド空間へのCO移動の割合を示した。
【0103】
他の研究者が、WAVE BioreactorTMにおけるO移動を特徴付けたが(Mikola等, 2007; Singh, 1999)、我々は、波誘導の攪拌を有する細胞培養系における、CO移動に関する報告を見出してはいない。WAVE BioreactorTMにおけるCO移動を特徴づけるために、我々は、我々の細胞培養培地と同じ濃度(2.44g/L)で重炭酸ナトリウムを含んでいる模擬培地を使用した。この重炭酸塩緩衝無細胞システムにおいて、液相からのCO除去は、活発なpH制御無しで、システムのpHを増加する。模擬培地の直接のCO測定のためのCOプローブに依存する代わりに、我々は、CO除去の相対的な割合を評価するために、WAVE BioreactorTMのオンラインpHプローブからのpHプロファイルを使用した。
【0104】
この研究において、WAVE BioreactorTMのpHプロファイルは、2相に分けられた(図3A及び3B)。第一相では、pHは、0〜5分の間、毎時〜1−4pH単位で急増された。第二相では、pHは、毎時<0.5pH単位で、5から60分まで徐々に増加された。この第二相の間(5-60分)、異なる揺動速度及び揺動角度は、pH増加の割合に、無視できる程の影響を及ぼした:0.2L/分の一定の気流量で、揺動条件に関わりなく、pHは毎時0.2の単位で増加した(図3A)。対照的に、より高い空気流量は、この第二相の間(5−60分)、pH変化の割合を増加した:気流量が0L/分から0.6L/分まで増加する時に、pH変化の割合は毎時0−0.1の単位から毎時0.4の単位まで増加した(図3B)。気流がない場合(0L/分)、第二相の間(5−60分)に観察された、最小のpH増加(毎時0.1単位以下)は、模擬培地及びCellbagTMのヘッド空間間のCO交換が、およそ5分での平衡に近づいたことを示唆する。最初の5分を越えて更なるpHの増加を得るために、CO除去のための推進力が、空気流量を上げて、ヘッド空間・クリアランスの割合を増加して、これによりヘッド空間のCO濃度を最小化することによって、増強されうる。
【0105】
図3Cは、図3Aからのデータの、算出されたpHの変化の割合を示す。図3Dは、図3Bからのデータの、算出されたpHの変化の割合を示す。二相性の挙動は、波の高い表面積及び流入ガスによるヘッド空間の連続的なスイーピング双方による、高いガス移動率によって説明され得る。高い表面積は、液相から気相への速いCO移動を容易にする。速い移動は、気液相間のCOの濃度差の結果である。この濃度における差は、実験の開始時に、最も高く、この差は、よりCOが液相から気相に移動されるに従い連続的に減少された。気液相間のCOの濃度差が減少するにつれ、pHの変化の割合もまた、減少した。図3Aにおいて、pHの変化の割合は、第二相(5−60分)と比較して、第一相(0−5分)で非常に高かった。ガス流量は、図3Aに示される場合では同じに保たれた。最初のCOの移動の後、CO移動の割合は、ヘッド空間のCO濃度に依存する。同じヘッド空間クリアランス速度では、最初の5分の後のpHの変化の割合は、揺動条件に関係関わらず同じであった。pHの変化率の算出された値は図3Cに示される。
【0106】
ガス流量が変化した場合、ヘッド空間のクリアランス速度もまた変化した。異なるガス流量に対するpHの上昇のデータが、図3Bに示される。二相性の挙動が、これらのケースについても観察された。しかしながら、同じガス流量を有する場合とガス流量が異なる場合との間で、違いは、同じガス流量でのケースの場合に類似であることと比較して、第二相(5−60分)のpH変更率はガス流量に依存して変化することである。ガス流量の変化が、ヘッド空間クリアランスの割合を変化させるため、ヘッド空間のCOは異なる割合で除去された。
最初の速いガス移動は、ディスポーザブル型バッグの大きい表面積を作る特性の結果である。この最初のガス移動は、主に揺動条件(揺動速度及び揺動角度)に依存する。しかしながら、培地からのCOの継続した除去は、ヘッド空間CO濃度に依存する。ヘッド空間クリアランスの速度は、ガス流量に依存する。
【0107】
(実施例2:細胞増殖特徴研究)
(A.回分培養)
(1.初期実験)
(細胞培養培地)
無血清細胞培養培地が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を増殖するために使用された。細胞培養培地は、DMEM及びハムF-12の1:1混成に基づく培地を、幾つかの構成要素、例えばアミノ酸、塩類、糖及びビタミンを変更することによって得られた。この培地は、グリシン、ヒポキサンチン及びチミジンを欠く。この培地は、15mMのHEPES(4(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)及び2.44g/Lの重炭酸ナトリウムから成った。これらの塩類の濃度は、変更されうる。培地は、微量元素、組換えヒトインスリン及び細胞保護剤、Lutrol F-68 Prill(同等のものが使用されうる)で補充された。
【0108】
(哺乳類細胞培養)
トランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、液体窒素に貯蔵された1mL又は10mLのバイアルバンクから増殖された。選択された冷凍バイアルは、スピナーフラスコ、振とうフラスコ、又は撹拌タンクバイオリアクタの、重炭酸ナトリウムを含有する培養培地に解凍された。細胞は、2−7日毎に継代された。この培養は、「シードトレイン」と呼ばれる。シードトレインからの細胞は、ディスポーザブル型バッグにおいて細胞培養を開始するために、ディスポーザブル型バッグへ移された。
【0109】
(分析:)
血液ガス分析定装置(NOVA BioProfileR 400)が、オフライン分析のために用いられた。細胞培養物pH、溶存酸素及びCOの分圧、ブドウ糖、乳酸塩及びアンモニアの濃度が、このオフライン分析定装置を使用して測定された。細胞生存率及び生細胞濃度(VCC)測定は、Beckman-Coulter’s ViCellTM AS又はViCellTM XRを使用して成された。細胞濃度測定に加えて、バイオマスの量が、また、血中血球容積(%PCV)を記録することによって測定された。
【0110】
(実施例3:幾つかのCHO細胞株を用いた詳細な分析)
(A.バッチ・プロセス)
回分培養の過程において、CellbagTMに供給されるガスにおけるCO濃度を減少させることによって、我々は、最初の高いpH(>7.3)を低下させ、そして、WAVE BioreactorTMシステムのその後のpH低下少を最小化することが可能となる。幾つかのCHO細胞株を用いた、WAVE BioreactorTM回分培養において、異なるCOガスストラテジーを試験した後(データは示さない)、我々は、接種及びスケールアップステージ双方に対する、「8-5-2」段階的ストラテジーを規定した:CellbagTMにポンプで送りこまれる空気は、1日目の間8%(v/v)で、2日目の間の5%(v/v)で、その後2%(v/v)でCOガスが補充された。
【0111】
無細胞研究からの結果に基づいて、以下の揺動速度、揺動角度及び空気流量を、我々のWAVE BioreactorTM回分培養に対するプロセス設定値として選択した:接種については21rpm、10°の揺動角度及び0.2L/分;スケールアップステージについては、23rpm、10°の揺動角度及び0.2L/分であった。これらのプロセス設定値の信頼性を試験するために、我々は要因実験(表1)を設計した。プロセス条件が中央点から逸脱する時、試験された両細胞株に対して、我々は細胞増殖及びpCOプロファイルに対するごくわずかな影響を観察し、また、pHは6.8−7.2及びDO>50%を維持した(図4)。

【0112】
(B.潅流培養)
WAVE BioreactorTMでの、潅流培養の我々の最初の試みにおいて、6日目の潅流開始後、培養pHは概して6.8を下回り、DOはしばしば空気飽和の30%を下回った(図5)。潅流流量を上げることなくpH低下を最小化するために、CellbagTMへの空気流量の増加の実施可能性を調査し、これは無細胞研究が、増加空気流量はpHを増加することを示したからである(図3)。DO低下を克服するために、我々は、潅流の開始の2日後に、30%O(v/v)で、CellbagTMへの気流を補充した。観察されたDO低下(図5)と一致したため、我々はこのタイミングを選択した。
【0113】
(実施例4:バッチ潅流プロセス)
この潅流プロセスは、2つのバッチステップとその後の潅流ステップから成った。50Lのディスポーザブル型バッグは、接種ステップで、5から7.5×10細胞/mLの標的細胞密度で、6Lの作用体積で接種をされた。接種3日後に、スケールアップステップのため、新鮮培地が、ディスポーザブル型バッグの体積を20Lに増加するために加えられた。接種ステップ及びスケールアップステップがバッチステップを構成した。バッチステップでのCO段階的低減ストラテジーが、バッチプロセスにて説明したように、使用された。3日のスケールアップステップの終りに、潅流が開始された。新鮮培地がディスポーザブル型バッグに連続的に加えられ、そして、細胞を保持すると共に、使用された培養培地はディスポーザブル型バッグから連続的に除去された。細胞培養培地は、1日当たり20リットル(1日当たり1体積)の割合で潅流された。潅流培地pH設定値は7.2単位であった。潅流の開始で、流入ガスのCO濃度は、ゼロに設定された。ヘッド空間クリアランス速度は、CO除去を促進するために増加された。図7に示すように、ヘッド空間クリアランス速度の増加は、単ステップ増加もしくはマルチステップ増加が続いた。揺動速度範囲は、19〜25rpmの間であった。揺動角度範囲は、8及び12度の間であった。温度は37℃に維持された。細胞の酸素要求量を満たすために、酸素が、潅流開始の48時間後に補充された。流入ガスにおける酸素濃度は、潅流開始の48時間後で、30%に設定された。
【0114】
図6は、バッチ-潅流プロセス(バッチ工程(0−6日目)及び潅流工程(6−14日目))の細胞培養実績である(図6A)。図6Bは、%細胞生存率を示す。図7Aは、3つの異なる実験での、ヘッド空間クリアランス速度設定点を示す。潅流ステップのヘッド空間クリアランス速度セットポイントは、異なるプロファイルを見せた(6-14日目):(1)2つの一定のヘッド空間クリアランス速度:0.02hvm(-▲-)及び0.1hvm(◆);及び(2)ヘッド空間クリアランス速度の段階的増加:0.007hvm〜0.013hvm〜0.02hvm(-■-)。単ステップ増加並びにマルチステップ増加双方が実験された。図7Bは、オフライン溶存CO濃度を示す。図6Dは、生細胞数(VCC)の細胞成長である。図6及び7の説明:◆、■、▲は、3つの異なる実施を示す。図6Cに示すように、pHは、ヘッド空間のクリアランスによりCOを調節することによって、所望の範囲内に維持することができた。
【0115】
(実施例5:「8-5-2」条件下での6CHO細胞株の挙動)
細胞増殖の支持、及び所望の範囲にpH及びDOを維持することにおける、このWAVE BioreactorTMプロセスの信頼性を試験するために、我々のインハウスCHO細胞株で典型的に観察される細胞増殖及び代謝挙動の範囲を包含する、6つのCHO細胞株を選択した。
【0116】
最適化されたプロセス条件では、全ての6細胞株は、バッチ及び潅流培養ステージを通して高い生存率で増殖した(図8)。全ての場合において、pHは所望の6.8−7.2の範囲内を保ち、またDOは空気飽和の20%を超えた。
【0117】
(実施例6:「8-5-2」WAVE BioreactorTM方法と一般的な撹拌タンク・バイオリアクタ培養との比較)
pH及びDO制御を用いた、発明者のWAVE BioreactorTMプロセスと撹拌タンク・バイオリアクタプロセスとの培養性能を比較するため、我々は両システムにおいて、平行培養を実施した(図9)。増殖長及び生存率プロファイルは、2つのバイオリアクタ・システムの間で類似だった:WAVE BioreactorTM及び撹拌タンク・バイオリアクタにおける増殖率は、〜0.5日−1で同程度であった。WAVE BioreactorTMシステムのpH及びDOのオンライン・フィードバック制御の欠如にもかかわらず、pH及びDOプロファイルは、2つのバイオリアクタ培養間で有意に異ならなかった。
【0118】
本発明は、WAVE BioreactorTMにおいて、培養pHを6.8-7.2の範囲に、またDOを空気飽和の20%より大きく維持するためのプロセス制御方法を提供し、バッチ及び潅流モード双方で作動され、pH及びDOフィードバック制御に依存しない。pH及びDO制御無しで、WAVE BioreactorTMシステムにおいてCHO細胞を培養することの課題を特定した後、WAVE BioreactorTMシステムにおける、揺動速度、揺動角度、及びガス流量の、O及びCO移動への影響を決定するために無細胞研究を実施した。流入ガスにおけるO及びCOの濃度と共に、これらのプロセスパラメータを調節することによって、我々は、6つの組換えCHO細胞株のバッチ及び潅流培養について、pH及びDOを我々の所望の範囲に維持した。pH及びDOのプローブの必要性を除くことにより、この方法は、WAVE BioreactorTMシステムで細胞を培養することの、より単純でより費用効果的な方法を提供する。これは、また、それらのプローブを備えたWAVE BioreactorsTMにおける、pH又はDOプローブの故障の際に、細胞を培養するための代替の方法を提供する。
【0119】
また、本願明細書において記載される具体的な例は、例証のためだけであり、本発明の範囲を制限するものではないことが理解される。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0120】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核生物細胞を回分培養するための方法において、
重炭酸塩含有培養液中に真核生物細胞を含んでなる細胞培養接種物を、容器に供給する工程であって、
前記容器は、前記細胞培養物及び前記細胞培養物上部の気相ヘッド空間を封入する壁部を有し、かつ前記容器は、前記ヘッド空間に対するガスの流出入を提供する少なくとも一のポートを有する工程;
前記容器を攪拌する工程;及び
前記ポートを通して前記ヘッド空間にガスを供給する工程であって、前記ガスは所定量のCOを含み、前記ガス中のCOの前記量は、前記ガスの前記細胞培養物の所定のpHを維持するために、前記細胞培養物の予め定められたpHを維持するために、経時的に調節される工程
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記攪拌が、前記容器を、15から30rpmの揺動速度及び5°から15°の揺動角度で揺動することによる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
揺動速度が19及び25rpmの間であり、揺動角度が8°から12°の間である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記COが、前記ガスの10%及び0%(v/v)の間の量で供給される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記COが、前記ガスの8%及び2%(v/v)の間の量で供給される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記COが、1日目に前記ガスの8%(v/v)の量で、2日目に前記ガスの5%(v/v)の量で、その後は、前記ガスの2%(v/v)の量で供給される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ガスの流量が、0から1.0hvmの間である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガスの流量が、0.001及び0.002hvmの間である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガスの流量が、0.007hvmである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記真核生物細胞が、脊椎動物細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記脊椎動物細胞が、カエル細胞、ウサギ細胞、齧歯類細胞、ヒツジ細胞、ヤギ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ウシ細胞、ウマ細胞、非ヒト霊長類細胞及びヒト細胞からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
真核生物細胞を灌流培養するための方法において、
重炭酸塩含有培養液中に真核生物細胞を含んでなる細胞培養接種物を、容器に供給する工程であって、
前記容器は、前記細胞培養物及び前記細胞培養物上部の気相ヘッド空間を封入する壁部を有し、かつ前記容器は、前記ヘッド空間に対するガスの流出入を提供する少なくとも一のポートを有する工程;
前記容器を攪拌する工程;
前記容器に新鮮培地を灌流し、前記容器から使用済み培養培地を除去する工程;及び
前記容器のヘッド空間から蓄積COをスイープするために、前記ポートを通して前記ヘッド空間にガスを供給し、これにより、前記細胞培養物の所定pHを維持するために、前記細胞培養物のpHを調節する工程
を含んでなる方法。
【請求項13】
前記攪拌が、前記容器を、15から30rpmの揺動速度及び5°から15°の揺動角度で揺動することによる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
揺動速度が19及び25rpmの間であり、揺動角度が12°から8°の間である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ガスが、前記ガスの0%及び50%(v/v)の間のOの量を含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
が、前記ガスの20%及び40%(v/v)の間の量で供給される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
が、1日目及び2日目に前記ガスの0%(v/v)の量において、その後は前記ガスの30%(v/v)の量において提供される請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ガスの流量が、0から1.0hvmの間である請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ガスの流量が、0.001及び0.03hvmの間である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ガスの流量が、0.02hvmである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記真核生物細胞が脊椎動物細胞である請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記脊椎動物細胞が、カエル細胞、ウサギ細胞、齧歯類細胞、ヒツジ細胞、ヤギ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ウシ細胞、ウマ細胞、非ヒト霊長類細胞及びヒト細胞からなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記容器が、硬質コンテイナである請求項1又は12に記載の方法。
【請求項24】
前記容器が、柔質コンテイナである請求項1又は12に記載の方法。
【請求項25】
前記容器が、ディスポーザブル培養バッグである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞培養物のpHを連続的に又は断続的にモニタするための、pHモニタを更に含んでなる請求項1又は12に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞培養のpHを調節するために、前記新鮮培養培地が、予め定められたpHを有する請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記新鮮培養培地の潅流が、前記培養培地での細胞の残留を可能にする潅流機器を介して実施される請求項12に記載の方法。
【請求項29】
細胞培養物が溶存COの分圧を約1から200mmHgのレベルに維持するように、前記ガスが、前記ヘッド空間に供給される請求項1に記載の方法。
【請求項30】
細胞培養物が溶存COの分圧を約10から150mmHgのレベルに維持するように、前記ガスが、前記ヘッド空間に供給される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
細胞培養物が溶存COの分圧を約20から120mmHgのレベルに維持するように、前記ガスが、前記ヘッド空間に供給される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
細胞培養物が溶存COの分圧を約20から80mmHgのレベルに維持するように、前記ガスが、前記ヘッド空間に供給される請求項1に記載の方法。
【請求項33】
真核生物細胞を培養するための装置において、
容器の内部空間を画成し、前記内部空間を周囲の環境から隔離する壁部を有する容器;
前記容器に対するガスの流出入を提供する少なくとも一つのポート;
前記容器に可逆的に取付けられたアジテータ;及び
場合によっては、前記内部空間に位置させられたプローブを有するpHモニタ
を具備してなる装置。
【請求項34】
前記容器が、ディスポーザブル型バイオリアクタバッグである請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記容器が、該容器に対するガスの流出入を提供する複数のポートを有する請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記容器が、前記容器から使用済み培地を除去するための使用済み培地ポートと、前記容器に新鮮培地を提供する潅流ポートを更に有する請求項33に記載の装置。
【請求項37】
前記pHモニタが、コンピュータ化された自動化システムに接続され、該システムが、前記容器のヘッド空間クリアランスを調節し、前記pHモニタで測定されるpHの調節に応答して前記容器中のCO濃度を調節する請求項33に記載に装置。
【請求項38】
ガス流、温度、攪拌、新鮮培地の潅流流量、及び溶存COからなる群から選択されるパラメータをモニタするための、少なくとも一つの他のモニタを更に具備してなる請求項37に記載の装置。
【請求項39】
真核生物細胞を回分培養するための方法において、
重炭酸塩含有培養液中に真核生物細胞を含んでなる細胞培養接種物を、容器に供給する工程であって、
前記容器は、前記細胞培養物及び前記細胞培養物上部の気相ヘッド空間を封入する壁部を有し、かつ前記容器は、前記ヘッド空間に対するガスの流出入を提供する少なくとも一のポートを有する工程;
前記容器を攪拌する工程;及び
前記ポートを通して前記ヘッド空間にガスを供給する工程であって、前記ガスは、1日目の間は8%のCO(v/v)のガスを、2日目には5%のCO(v/v)のガスを、その後は2%のCO(v/v)のガスを含む工程
を含んでなる方法。
【請求項40】
前記容器が、21から23rpmの揺動速度で、ロッカー上で攪拌される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記容器が、8から12°の揺動角度で、ロッカー上で攪拌される請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記容器が、10°の揺動角度で、ロッカー上で攪拌される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
真核生物細胞を灌流培養するための方法において、
重炭酸塩含有培養液中に真核生物細胞を含んでなる細胞培養接種物を、容器に供給する工程であって、
前記容器は、前記細胞培養物及び前記細胞培養物上部の気相ヘッド空間を封入する壁部を有し、かつ前記容器は、前記ヘッド空間に対するガスの流出入を提供する少なくとも一のポートを有する工程;
前記容器を攪拌する工程;
前記ポートを通して前記ヘッド空間にガスを供給する工程であって、前記ガスは、灌流の開始2日後に、少なくとも30%O(v/v)で補充される工程
を含んでなる方法。

【図1】
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【図2AB】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−531930(P2012−531930A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519674(P2012−519674)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/041082
【国際公開番号】WO2011/005773
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】