説明

真空レギュレータバルブ

本真空レギュレータバルブは、真空源(40)に接続できる第1の開口(3)と吸引導管(52、36)に接続できる第2の開口(4)とを有する容量可変チャンバ(2)を備え、それにより、使用時に、チャンバ(2)を真空源(40)と流体連通させることができるとともに、真空をチャンバ内に発生させて吸引導管(52、36)を通じた吸引を引き起こすことができ、バルブが少なくとも1つの襞を有するベローズ(1、1a)を備え、ベローズは、チャンバ(2)を画定するように配置されるとともに、使用時に、チャンバ(2)の第1の開口(3)が開放されたままとなる拡張状態と、それが第1の開口(3)の閉塞を引き起こす収縮状態との間で移動するように動作できる。真空レギュレータバルブは、高真空吸引ボトルを使用して比較的低い真空レベルで創傷部を排出するための非常に単純で故障のない装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低い真空レベルで排出作業を行なうことが望ましいとき、例えば高真空吸引ボトルによって、創傷部を排出するために使用できる真空レギュレータバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
体液を除去するための、例えば手術後に創傷部を排出するための予め真空引きされる高真空吸引ボトルが当該技術分野において既知である。そのようなボトルは、製造メーカによって予め決定される例えば大気圧の5%の真空レベルを有する場合があり、創傷部の腔内に配置される有孔端部を有する吸引チューブによって創傷部に接続される。これらのボトルは、比較的一定の真空レベルで体液を引き出す。
【0003】
しかしながら、そのようなボトルの高い真空度は、全ての医療状況に適していない。すなわち、新鮮創などの一部のケースでは、ボトル内に高真空によって与えられる吸引力が非常に強く、そのため、レギュレータ装置を使用することが望ましい。
【0004】
吸引力を減少させるための幾つかの既知のレギュレータ装置またはレギュレータバルブは、一端が吸引ボトルに接続され、他端が流体源に接続されて、ボトルと創傷部との間の通路、一般的には真空源と体液源との間の通路を機械的に塞ぐことによって吸引チューブ内の真空レベルを調整する。これらのレギュレータバルブは、吸引ボトル内の真空レベルよりも低い比較的一定の真空レベルを吸引チューブ内に与える。
【0005】
1つのそのようなバルブが例えば特許文献1に開示されている。このバルブ装置は、ボトルに接続される第1の開口と吸引導管に接続される第2の開口とを有する容量可変チャンバを画定する円筒ハウジングの内壁に取り付けられる弾性ダイヤフラムを備える。ボトルおよび吸引導管は、2つの開口が開放したままのときにチャンバを介して連通する。しかしながら、ボトル内の高真空度に起因して、弾性ダイヤフラムが第1の開口を閉じる可能性があり、それによりチャンバがボトルから分離される。すなわち、この状態では、チャンバ内の真空レベルが減少し、吸引導管を通じて創傷部に及ぼされる吸引力が低下する。実際には、弾性ダイヤフラムは、第1の開口をうまく開閉するように動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5073172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この既知の装置は、製造して組み立てるのが比較的複雑である。すなわち、例えば、装置は、ホルダと、ダイタフラムとハウジングとの間のシール手段とを有さなければならない。高真空源によって創傷部に及ぼされる吸引力を減少させるために満足に使用され得る簡単で多目的な装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様によれば、本発明は、真空源に接続できる第1の開口と吸引導管に接続できる第2の開口とを有する容量可変チャンバを備え、それにより、使用時に、チャンバを真空源と流体連通させることができるとともに、真空をチャンバ内に発生させて吸引導管を通じた吸引を引き起こすことができる真空レギュレータバルブであって、バルブが少なくとも1つの襞を有するベローズを備え、ベローズが、チャンバを画定するように配置されるとともに、使用時に、チャンバの第1の開口が開放されたままとなる拡張状態とそれが第1の開口の閉塞を引き起こす収縮状態との間で移動するように動作できることを特徴とする、真空レギュレータバルブを提供する。
【0009】
容量可変チャンバを画定するためのベローズの使用は、容易に低コストで製造できる非常に単純で故障のない装置を得ることを可能にする。例えば、幾つかの実施形態では、装置を単一の成形工程によって製造できる。この場合、適切なエラストマー材料を使用してチャンバおよび開口を一体形成できる。
【0010】
装置が高真空ボトルに接続されると、ボトルの充填レベルにかかわらず、排出作業の全体にわたって真空レベルが略一定に維持される。
【0011】
好ましくは、ベローズの収縮状態では、ベローズの内壁の一部が第1の開口に当接して第1の開口を閉じる。これは、更なる閉塞要素が不要であるという利点を有する。
【0012】
1つの実施形態では、ベローズの壁と第1の開口との間で最適な閉塞を保証するために、第1の開口を閉じるベローズの内壁の一部が厚肉領域を備えることができる。
【0013】
一実施形態によれば、ベローズは、2つの略平坦な端壁と、少なくとも部分的に襞のある側壁とを備える。
【0014】
第1の開口および第2の開口が同じ平坦端壁に形成されてもよいが、それらの開口を対向する平坦端壁に形成することもできる。他の実施形態では、第1の開口が一方の平坦端壁に形成されてもよく、第2の開口が側壁に形成されてもよい。
【0015】
これらの実施形態のうちのいずれにおいても、有利な随意的特徴は、第1の開口が第2の開口よりも大きくベローズの壁からチャンバ内へ突出するということである。
【0016】
このように、ベローズが収縮すると、ベローズの同じ壁または他の壁が第2の開口に達する前にベローズの一方の壁によって第1の開口が閉じられる。これは、第2の開口を開放したまま第1の開口の閉塞を達成する簡単な方法である。
【0017】
一実施形態によれば、装置は、第1の開口が形成されるボトムカバーおよび第2の開口が形成されるトップカバーのうちの少なくとも一方を備え、前記少なくとも一方のカバーがベローズに取り付けられる。
【0018】
これは、装置のこれらの3つの部品を異なる材料を用いて製造することを可能にし、この場合、それぞれの部品がその特定の機能に最も良く適する。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、真空レギュレータバルブは、第1の開口に関連付けられるシートと、ベローズが拡張状態と収縮状態との間で移動するときに変位されるようにベローズに結合されるとともにチャンバ内に突出する略硬質部材とを更に備え、それにより、ベローズが収縮状態にあるときに略硬質部材が前記シートに当接することにより第1の開口を閉じ、ベローズが拡張状態にあるときに前記硬質部材が前記シートから離れるように上昇して第1の開口を開放状態のままにする。
【0020】
好ましくは略硬質部材は、前記硬質部材が前記シートに当接しているときであってもチャンバと流体連通するとともに吸引導管に接続できる内孔を備える。硬質部材は、内孔とチャンバとを連通する少なくとも1つの側部開口を有してもよい。
【0021】
一実施形態によれば、ベローズが少なくとも2つの襞を備える。ベローズのこの構造は良好な弾力性を有し、したがって、装置の小さい寸法を維持しつつ、高速で且つ確実な動作が可能となる。
【0022】
本発明の実施形態では、ベローズが保護ハウジング内に配置され、前記ハウジングがベローズの少なくとも一部を取り囲む。
【0023】
更なる実施形態によれば、バルブは、ベローズの拡張状態と収縮状態との間の動きを可能にする受動位置と、ベローズが収縮状態をとることを防止する能動位置との間で動作できる機械スイッチを備える。
【0024】
これにより、例えば同じ装置により高真空で吸引を行なうことが望ましい場合には、ベローズを拡張状態でロックできる。
【0025】
装置は、補助チューブをそのような補助チューブの端部によってチャンバの開口が形成されるように第1の開口および第2の開口のうちの少なくとも一方に対して結合する手段を備えてもよい。したがって、吸引ボトルのチューブを装置に取り付けることにより、装置を既存の吸引ボトルに対して非常に容易に取り付けることができる。
【0026】
そのような実施形態において、バルブは、補助チューブを第1の開口に結合する手段を備えてもよく、それにより、使用時、補助チューブがチャンバ内に突出する。好ましくは、バルブはチャンバ内への補助チューブの突出を調整する手段を備える。
【0027】
他の態様によれば、本発明は、体液を除去するための予め真空引きされる高真空吸引ボトルであって、前述した真空レギュレータバルブを備える高真空吸引ボトルを提供する。
【0028】
1つの実施形態において、ボトルは、真空レギュレータバルブのチャンバの第1の開口に接続される真空導管と、前記チャンバの第2の開口に接続される創傷部排出導管とを更に備える。あるいは、ボトルからチャンバ内に突出してチャンバの前記第1の開口を構成する首部を用いて、ベローズがボトルに取り付けられる。
【0029】
ボトルは、真空レギュレータ装置を選択的にバイパスしてボトルの内側を創傷部排出導管に接続する手段を更に備えてもよい。これにより、望み通りに、ボトルから直接に高真空吸引を行なうために、または、真空レギュレータバルブによる低真空吸引のために、同じボトルを使用することができる。
【0030】
以下、添付図面を参照し、非限定的な例示のみを目的として、本発明の特定の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ベローズが拡張状態にある本発明の一実施形態に係る装置の概略断面図である。
【図2】ベローズが収縮状態にある図1の概略断面図と同様の図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る装置の断面図である。
【図4】吸引ボトルに取り付けられる装置の第3の実施形態の部分断側面図である。
【図5】吸引ボトルに取り付けられる装置の第3の実施形態を異なる角度から見た部分断側面図である。
【図6】ボトルに取り付けられる装置の更なる実施形態の部分断面図である。
【図7】図6の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、予め真空引きされる高真空吸引ボトルによる創傷部の排出に適用される真空レギュレータバルブについて説明する。
【0033】
バルブの第1の実施形態が図1および図2に示されている。図示のように、この特定の実施形態は、高真空吸引ボトルと排出されるべき創傷部との間の導管に沿って配置されるのに適している。
【0034】
図1および図2に示される真空レギュレータバルブは、内部チャンバ2を画定するベローズ1を有しており、前記チャンバは、ベローズの相対する部分に配置される第1の開口3および第2の開口4を有している。
【0035】
図中、ベローズ1は、2つの平坦な端壁21、22、すなわち、平坦な上端壁21および平坦な下端壁22と、襞のある側壁23とを備える。開口3、4は対向する端壁21、22に配置されているが、両方の開口を上端壁21または下端壁22に配置してもよい。
【0036】
第1のチューブ51を第1の開口3に結合するためのブシュ5と、第2のチューブ52を第2の開口4に結合するための他のブシュ5’が、ベローズと一体成形される。第1のチューブ51は、チャンバ内に突出するようにブシュ5に取り付けられ、一方、第2のチューブ52は、ベローズの壁と面一にまたは略面一にブシュ5’に取り付けられる。
【0037】
実際には、チャンバ2の開口3、4は、チューブ51、52の端部によって形成されるが、無論、これには異なる構造も可能である。
【0038】
使用時、第1のチューブ51は、体液を除去するための予め真空引きされる高真空吸引ボトル(図1には示されない)または他の高真空源に接続される。一方、第2のチューブ52は、使用時、排出されるべき創傷部または他の体液源に接続され、したがって、吸引導管を構成する。
【0039】
また、バルブは、ベローズを取り囲む保護ハウジング6、および、ベローズの襞付き側壁と位置合わせされる機械的なスイッチ装置7も備える。スイッチの動作については後述する。
【0040】
以下、高真空ボトルを用いて創傷部を排出するために使用されるときのバルブの動作を、図1に示されるようなベローズ1の拡張状態を発端として説明する。
【0041】
吸引ボトルの高い真空度と、第1の開口3を通じたボトルとチャンバ2との間の連通とにより、また、ベローズがゴムなどの変形可能な材料から形成されることにより、高い真空はベローズ襞7同士を接触させ、それによりチャンバ2の容積が減少する。
【0042】
そのため、第1の開口3と対向して配置されるベローズ1の上端壁21は、それが第1のチューブ51の口部と接触するまで前記第1の開口に近づき、それにより、図2に示すように開口3が閉じられる。この場合、ベローズ1はその収縮状態にある。第2の開口4は、開放してチャンバ2と連通したままである。これは、第1の開口3が閉じた後はチャンバ2内の真空レベルが増大しえず、ベローズがそれ以上収縮しないからである。
【0043】
第1の開口3が閉じられた後、真空レベルはチャンバ2内に残存して吸引導管52を通じて吸引力を引き起こし、それにより、創傷部からの流体が前記導管を通じてチャンバ2の方へと吸引される。
【0044】
しかしながら、チャンバ2内の真空レベルは、その後、流体の前記吸引によって低下し、それにより、ベローズ2が再び拡張する傾向となる。ベローズが十分に拡張すると、ベローズの上端壁21は第1の開口3との接触を絶たれ、したがって、第1の開口3が開放される。このとき、チャンバ2内に存在する流体が、ボトル内の高い真空度によってボトルの方へ吸引される。再び、ボトル内の高い真空度がベローズ1の収縮を引き起こし、それにより、ベローズの上端壁21が再び第1の開口3を閉じる。
【0045】
これらのステップは、ボトル内の真空度が大気圧付近になるまでまたはボトルが流体で完全に満たされるまで繰り返される。
【0046】
ベローズ1内の圧力損失および第1の開口3の連続的な開閉により、チャンバ2内の真空レベルがボトル内よりも低くなり、それにより、創傷部に作用する吸引力が、ボトル内の高い真空度によって直接に及ぼされる力と比べて比較的小さくなることが分かる。
【0047】
第1のチューブ51の位置、すなわち、第1のチューブがチャンバ2内に突出する度合いを変えて、チャンバ2内に高いまたは低い真空レベルを与えることができると予想される。
【0048】
また、ベローズ1の全体と一緒に成形される厚肉部(図示せず)など、何らかの種類の補強を上端壁21に対して行なうことにより、第1の開口3との接触を改善し、良好な閉塞を保証することもできる。
【0049】
保護ハウジング6の一方の側に配置されるスイッチ7は、ベローズの襞のある壁とやりとりする硬質プレート8をハウジングの内側に備える。スイッチは、手動で回転させることで、2つの位置、すなわち、プレート8がベローズの動きを妨げない(図1に示される)受動位置と、プレート8が図1の右へ変位されることによりベローズ1の襞のある側壁23が右へと押圧されてハウジング6の内壁に押し付けられる能動位置との間で、変位させることができる。
【0050】
スイッチの能動位置では、ベローズ1の側壁23は、プレート8とハウジング6の内壁とによって側壁に及ぼされる圧力によって硬直し、それにより、ベローズの収縮が妨げられる。その結果、ベローズは、ボトル内の高い真空の作用下であっても拡張状態に維持される。
【0051】
したがって、スイッチ7が能動位置にあると、ベローズ1が動作せず、ボトルからの高い真空レベルが吸引導管52と持続的に流体連通する。これは、同じボトルを使用してスイッチの一方の位置または他方の位置を手動設定するだけで、創傷部を高圧または低圧で望み通りに排出できるため有益である。
【0052】
図1および図2には示さないが、チューブ51および/または52に適切な遮断クランプが設けられてもよい。
【0053】
図3は装置の第2の実施形態を示している。動作は図1および図2に関して説明した動作と同じであるが、装置の物理的構造が若干異なる。
【0054】
例えば、ベローズおよび開口を形成するエラストマー材料からなる単一品の代わりに、図3の実施形態では、装置は、略管状のベローズ1aと、ベローズに強固に取り付けられる2つの端部カバー21a、22aとを備える。
【0055】
トップ端部カバー21aは、第2のチューブ52を挿入するためのブシュ5’aを含み、一方、ボトムカバー22aは、チャンバ2の内側に突出してその第1の開口3を形成するブシュ5aを含む。第1のチューブ51は、ボトムカバーのブシュ5aの最初の部分内に挿入される。
【0056】
しかしながら、更に短いブシュを有するボトムカバーまたはトップ端部カバーのブシュのように外側に突出するブシュを有するボトムカバーを形成して、チャンバの内側に突出する第1のチューブ51を配置し、図1および図2の実施形態の場合のように第1の開口を形成することもできる。
【0057】
図3の場合のように装置を異なる部品で製造すると、部品毎にその機能に応じて最も適した材料を使用することができる。すなわち、例えば非常に良好な弾性特性を有するポリウレタンでベローズを製造することができ、また、第1の開口の緊密な閉塞を確保するのに適した天然または合成ゴム、あるいはシリコンまたはポリウレタンで、トップカバーを製造することができる。トップカバーおよびボトムカバーを接着によってベローズに取り付けることができる。
【0058】
図3の装置のボトムカバー22aには、ベローズ1aを超えて突出して垂直環状壁22cで終端する環状フランジ22bが更に設けられる。この構成は、図1および図2に関連して示される保護ハウジング6と同様の適切な保護ハウジング(図3に示されない)を取り付けるためのシートを形成する。
【0059】
ボトムカバーの垂直壁22cは、内側に突出する縁部または歯22dで終わる。この構造により、適切に形成されたハウジングを装置にスナップ嵌合させことができる。
【0060】
図1、図2、図3の装置は、高真空ボトルと排出されるべき創傷部との間のチューブまたは導管内に挿入される。しかしながら、他の実施形態も可能である。例えば、装置をボトル自体に取り付けることができる。
【0061】
装置がボトルに取り付けられる実施形態が図4および図5に示されている。これらの図において、チャンバ2を形成するベローズ1は、その下端の平坦壁32が高真空吸引ボトル40の首部41に取り付けられる。ベローズは、部分的にのみ襞が付けられる側壁33を有する。この場合、前記側壁33の襞のない部分が首部41を取り囲む。
【0062】
チャンバ2の第1の開口3は、ベローズの内側に突出するボトルの首部41によって形成され、それにより、チャンバ2がボトルと流体連通する。一方、第2の開口4は、ボトルの首部41から距離を隔てて前記側壁33の襞がない部分に配置されるとともに、以下で更に詳しく説明されるように吸引ボトル40の内側と流体源(すなわち、身体創傷部)との間に流体通路を形成する吸引導管に接続される。
【0063】
この場合も、装置が使用中であると、チャンバ2と連通するボトル40内の真空レベルによってベローズ1が収縮状態に切り換わり、ベローズの上端の平坦な端壁31が第1の開口3に近づいて第1の開口を閉じ、それにより、ベローズの内部チャンバ1の環状部が第2の開口4と連通状態になる。装置の動作は、第1の実施形態に関して説明した動作と同様である。
【0064】
この機能により、第2の開口4と接続される吸引導管内で低い真空レベルおよび小さい吸引力が達成される。
【0065】
この実施形態において、装置は、前述したようなベローズを通じた低い真空レベルでの吸引から、以下で説明するようなボトル40の直接に高い真空度を使用する吸引へと切り換え可能に配置されて、ボトルに接続される。
【0066】
前述したように、ボトル40は、チャンバ2を介して第2の開口4と連通する第1の首部41を有しており、図4および図5に示すように、第2の開口4が低真空チューブ36に接続される。
【0067】
また、ボトルは、高真空チューブ37に直接に接続される第2の首部42を有する。
【0068】
チューブ36、37はいずれも、排出されるべき創傷部または他の流体源と連通状態に置かれる吸引導管35に接続される。また、チューブ36、37はそれぞれ、対応する遮断クランプ60、61によって遮断されてもよい。
【0069】
したがって、クランプ60、61のうちの一方が閉状態にあり且つ他方が開状態にあると、吸引導管35とボトルの2つの首部41、42のうちの一方との間に流体通路が形成され、それにより、ボトルの高い真空レベルまたはバルブ装置の作用により形成される低い真空レベルの間で切り換え可能であることが分かる。
【0070】
言い換えると、クランプ60、61を選択的に開閉することにより、吸引導管35を、必要に応じて、高真空吸引(首部42およびチューブ37を通じてボトル40から直接に)と低真空吸引(首部41、ベローズ1、および、チューブ36を通じて)との間で切り換えることができる。つまり、真空レギュレータ装置を必要に応じてバイパスして、ボトルの内側を創傷部排出導管に接続することができる。
【0071】
無論、チューブ36、37と吸引導管35との間の接続、および、各導管を選択的に開閉する手段は、任意の既知の類のものにすることができる。
【0072】
更なる実施形態が図6、7に示されている。この場合も、ベローズ1は、第1の開口3が前記首部41によって形成されるようにボトル40の首部41に取り付けられる。しかしながら、ベローズの側壁は開口を有していない。
【0073】
この実施形態は、ベローズ1に関連付けられる略硬質の長尺部材70の使用を前提とする。硬質部材70は、ベローズの上端壁に取り付けられてチャンバ2の内側に突出する。硬質部材70は、ベローズ1が拡張するときに上方に変位し、ベローズが収縮するときに下方に変位することが分かる。図6および図7は、ベローズが拡張状態にある装置を示している。
【0074】
硬質部材70は、その上部に、図示のように低真空チューブ36と連通する内孔71を有するとともに、2つの側部開口72を有しており、側部開口72を介して内孔71がチャンバ2と連通する。
【0075】
また、硬質部材70の下端は、ボトルの首部41内へ延びることができる小径の部分73で終端するテーパ状の肩部74を有する。
【0076】
テーパ状の肩部74は、首部41の口部に形成されるシート43に当接するのに適しており、ベローズ1が収縮状態にあるときにチャンバ2の第1の開口3を閉じる。
【0077】
この構成を用いると、ベローズ1が拡張状態にあるときに硬質部材70の肩部74がシート43から持ち上がり(図7で最も良く分かる)、それにより、第1の開口3およびチャンバ2がボトル40内の高真空と連通状態になることが理解される。逆に、ベローズ1が収縮状態にあるとき、第1の開口3が硬質部材の肩部74によって閉じられ、チャンバ2は、側部開口72、孔71、および、チューブ36を通じて、吸引導管35と流体連通する。
【0078】
図6、図7の構成を伴う装置の動作は、他の実施形態に関して前述した動作と殆ど同じである。
【0079】
図4および図5の実施形態の場合と同様、図6でも、ボトルは、高真空チューブ37に接続される第2の首部42を有する。この場合、チューブ36、37はいずれも吸引導管35に接続され、チューブ36、37にはそれぞれの遮断クランプ60、61が設けられる。そのため、この実施形態でも、創傷部を排出するために印加される吸引力を必要に応じて選択できる。
【0080】
この場合、チューブ36、37は、Y形状コネクタ38を介して吸引導管35に接続される。
【0081】
以上、本発明の特定の実施形態のみを説明してきたが、当業者は、請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、任意の特定の要素または特徴を技術的に等価な他のものと置き換えることができる。
【0082】
例えば、幾つかの実施形態において、装置には、第1の開口が閉じられた後に第1の開口から離れた側でのベローズの変形の可能性を制限する手段が更に設けられてもよい。これは、場合によっては、装置の寿命を延ばすことができるとともに、装置の動作の信頼性を向上させることができる。そのような手段は、例えば、第1の開口から離れた側でのベローズの収縮を制限する略硬質部材によって具現化できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空源(40)に接続できる第1の開口(3)と吸引導管(52、36)に接続できる第2の開口(4)とを有する容量可変チャンバ(2)を備え、それにより、使用時に、チャンバ(2)を真空源(40)と流体連通させることができるとともに、真空をチャンバ内に発生させて吸引導管(52、36)を通じた吸引を引き起こすことができる真空レギュレータバルブであって、少なくとも1つの襞を有するベローズ(1、1a)を備え、当該ベローズが、チャンバ(2)を画定するように配置されるとともに、使用時に、チャンバ(2)の第1の開口(3)が開放されたままとなる拡張状態とそれが第1の開口(3)の閉塞を引き起こす収縮状態との間で移動するように動作できることを特徴とする、真空レギュレータバルブ。
【請求項2】
ベローズ(1)の収縮状態では、ベローズの内壁の一部が第1の開口(3)に当接して第1の開口を閉じる、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
第1の開口(3)を閉じるベローズ(1)の内壁の一部が厚肉領域を備える、請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
ベローズ(1)は、2つの略平坦な端壁(21、22、31、32)と、少なくとも部分的に襞のある側壁(23、33)とを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
第1の開口(3)および第2の開口(4)が同じ平坦端壁(21、22)に形成される、請求項4に記載のバルブ。
【請求項6】
第1の開口(3)および第2の開口(4)が対向する平坦端壁(21、22)に形成される、請求項4に記載のバルブ。
【請求項7】
第1の開口(3)が一方の平坦端壁(32)に形成され、第2の開口(4)が側壁(33)に形成される、請求項4に記載のバルブ。
【請求項8】
第1の開口(3)が、第2の開口(4)よりも大きく端壁からチャンバ(2)内へ突出している、請求項4から7のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項9】
第1の開口(3)が形成されるボトムカバー(22a)および第2の開口(4)が形成されるトップカバー(21a)のうちの少なくとも一方を備え、前記少なくとも一方のカバー(21a、22a)がベローズ(1a)に取り付けられる、請求項1に記載のバルブ。
【請求項10】
第1の開口(3)に関連付けられるシート(43)と、ベローズが拡張状態と収縮状態との間で移動するときに変位するようにベローズ(1)に結合されるとともにチャンバ(1)内に突出する略硬質部材(70)とを更に備え、それにより、ベローズ(1)が収縮状態にあるときに硬質部材(70)が前記シート(43)に当接することにより第1の開口(3)が閉じ、ベローズ(1)が拡張状態にあるときに硬質部材(70)が前記シート(43)から離れて上昇することにより第1の開口(3)が開放されたままとなる、請求項1に記載のバルブ。
【請求項11】
略硬質部材(70)が、前記硬質部材(70)が前記シート(43)に当接しているときであってもチャンバ(2)と流体連通するとともに吸引導管(36)に接続できる内孔(71)を備える、請求項10に記載のバルブ。
【請求項12】
略硬質部材(70)が、内孔(71)をチャンバ(2)と連通させる少なくとも1つの側部開口(72)を有する、請求項11に記載のバルブ。
【請求項13】
ベローズ(1)が少なくとも2つの襞を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項14】
ベローズ(1)が保護ハウジング(6)内に配置され、前記ハウジングがベローズ(1)の少なくとも一部を取り囲む、請求項1から13のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項15】
ベローズ(1)の拡張状態と収縮状態との間の動きを可能にする受動位置と、ベローズ(1)が収縮状態をとることを防止する能動位置との間で動作できる機械スイッチ(7)を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項16】
補助チューブ(51、52)をそのような補助チューブ(51、52)の端部によってチャンバ(2)の開口(3、4)が形成されるように第1の開口(3)および第2の開口(4)のうちの少なくとも一方に対して結合する手段(5、5’)を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項17】
補助チューブ(51)を第1の開口(3)に結合する手段を備え、それにより、使用時、補助チューブ(51)がチャンバ(2)内に突出する、請求項16に記載のバルブ。
【請求項18】
チャンバ(2)内への補助チューブ(52)の突出を調整する手段を備える、請求項17に記載のバルブ。
【請求項19】
体液を除去するための予め真空引きされる高真空吸引ボトルであって、請求項1から18のいずれか一項に記載のバルブを備えることを特徴とする、高真空吸引ボトル。
【請求項20】
バルブのチャンバ(2)の第1の開口(3)に接続される真空導管(51)と、前記チャンバ(2)の第2の開口(4)に接続される創傷部排出導管(52)とを更に備える、請求項19に記載のボトル。
【請求項21】
ボトル(40)からチャンバ(2)内に突出してチャンバ(2)の前記第1の開口(3)を構成する首部(41)を用いて、ベローズ(1)がボトルに取り付けられている、請求項19に記載のボトル。
【請求項22】
真空レギュレータ装置を選択的にバイパスしてボトル(40)の内側を創傷部排出導管(35)に接続する手段を更に備える、請求項21に記載のボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−502666(P2011−502666A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533553(P2010−533553)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065250
【国際公開番号】WO2009/062915
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(510132255)
【Fターム(参考)】