説明

真空弁構造

【課題】空気の吸込方式を、気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらにも切替えだけで対応することが可能となるようにする。
【解決手段】内部に弁座15を有して、真空下水管4の途中に接続される接続管部12と、前記弁座15に対して弁体16を当接離反可能に支持する弁駆動部14とを備えた真空弁構造であって、前記接続管部12に、真空下水管4への空気の吸込方式を気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらかに切替可能な、空気吸込方式切替部31を設けるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空式下水道システムに使用される真空弁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然流下式下水道システムに代えて、真空式下水道システムを用いることが既に行われている。この真空式下水道システムは、真空圧を利用して、汚水枡に一定量溜まった汚水を吸引収集するものである。
【0003】
図4は、真空式下水道システム1の主要部である真空弁ユニット2を示すものである。
【0004】
この真空式下水道システム1では、建物などから排出された汚水は、汚水流入管3を介して、自然流下で真空弁ユニット2へ一時的に貯留される。そして、真空弁ユニット2内の汚水が一定量に達した時に、真空弁ユニット2に接続された真空下水管4を通じて、汚水が真空圧により図示しない下流の真空ステーションの集水タンクへと移送される。
【0005】
この際、真空弁ユニット2には、通気管5を介して外部から地上の空気を導入し得るようになっており、上記した真空圧によって、汚水と通気管5からの空気とが順に吸込まれるようにしている(気液分離吸引方式、特許文献1参照)。
【0006】
そして、吸込まれた汚水は、汚水前方の真空圧と、汚水後方の吸引空気圧との圧力差を利用して気液混送流として上記した集水タンクへと搬送される。
【0007】
上記した真空弁ユニット2は、上記した汚水流入管3からの汚水を一時的に貯留する汚水枡6を備えている。そして、汚水枡6内の汚水は、汚水吸込管7を介して真空下水管4に吸込まれる。汚水吸込管7と真空下水管4との間には、真空圧を利用して開閉可能な真空弁8が設けられ、この真空弁8と真空下水管4との間には、真空弁8などのメンテナンス時に、真空弁8と真空下水管4との間を仕切るための仕切弁9が設けられる。
【0008】
真空弁ユニット2は、また、汚水枡6の内部に汚水の液位を検知可能な液位検知管11を備えている。
【0009】
そして、図5は、上記した真空弁8の詳細を示すものである。
【0010】
この真空弁8は、汚水を流通可能な接続管部12と、この接続管部12の内部に設けられて接続管部12を開閉可能な弁部13と、この弁部13を開閉駆動可能な弁駆動部14とを備えている。
【0011】
ここで、接続管部12は、内外径の径寸法がほぼ一定で、ほぼ水平方向へ延びる短管状をしている。そして、この接続管部12は、汚水吸込管7と仕切弁9との間に接続され、汚水吸込管7から吸込んだ汚水を、仕切弁9を介して、真空下水管4へと導くようになっている。
【0012】
弁部13は、接続管部12の内面に形成された弁座15と、この弁座15に対して当接離反自在に配設された弁体16とを備えている。また、接続管部12の弁座15の上流側近傍には、弁体16が弁座15から当接離反する際に弁体16が移動する空間となる短管状の弁体通路部17が分岐形成されている。そして、弁体16が弁座15に着座することにより接続管部12が閉じ、弁体16が弁座15から離れて弁体通路部17内へと退避することにより接続管部12が開くようになっている。
【0013】
弁駆動部14は、シリンダ状の本体ケーシング18と、この本体ケーシング18の内部に軸線方向へ移動可能に設けられたダイヤフラム付きのピストン19とを備えている。この本体ケーシング18は、上記した弁体通路部17の図中上側の端部に設置されている。ダイヤフラム付きのピストン19には、弁棒21を介して上記した弁体16が一体的に移動可能に連結されている。弁棒21は、上記した弁体通路部17内に同軸状に配設されている。
【0014】
そして、本体ケーシング18のヘッド側の作動室には、コイルバネなどの付勢手段22が介装され、この付勢手段22によって、ダイヤフラム付きのピストン19が、弁体16を弁座15に着座させる方向へ常時付勢されている。そして、本体ケーシング18の図中上端部には、ヘッド側の作動室に対して真空圧を作用させる弁制御部23が取付けられている。この弁制御部23には、真空下水管4に作用される真空圧が、真空ホース24を介して供給されるようになっている。
【0015】
このような構成により、主に付勢手段22の付勢力によって、ダイヤフラム付きのピストン19が弁体通路部17側へ移動することにより、弁体16が弁座15に着座して弁部13が常時閉となっている。そして、弁制御部23によってヘッド側の作動室に真空圧が作用した時に、付勢手段22の付勢力に抗して、ダイヤフラム付きのピストン19がヘッド側へ移動し、これにより、弁体16が弁座15から離れて、弁部13が開き、汚水が真空吸引されるようになっている。
【0016】
なお、このような真空弁8では、一般に、弁駆動部14は、上記した接続管部12の上側に設けられると共に、上流側(汚水吸込管7の側)へ向けて斜めに傾斜した状態で設置されており、これに応じて、上記した弁部13も、接続管部12に対して弁駆動部14と同じに斜めに傾斜された状態で設けられている。この弁駆動部14および弁部13の傾斜角度は、通常は、ほぼ45゜とされている。
【0017】
上記したように、汚水を真空吸引する際には、空気を吸込む必要がある。そして、汚水は、前方の真空圧と、後方の吸引空気圧との圧力差を利用して気液混送流として搬送される。この空気の吸込方式には、上記したような、汚水の吸引後から分離して空気を吸引する気液分離吸引方式の他にも、汚水と同時に空気を吸引する気液同時吸引方式(特許文献2参照)とが存在し、両者は並存していると共に、どちらの吸込方式にもそれぞれ一長一短がある。
【0018】
なお、上記したような気液分離吸引方式の場合には、通気管5は、汚水枡6に対して接続されるが、気液同時吸引方式の場合には、特許文献2の図2に示されているように、通気管(特許文献2の空気吸入管1)は、汚水吸込管(特許文献2の下水吸入管2)の先端部から分岐して上方へ立ち上がるように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特公平7−109568号(気液分離吸引方式)
【特許文献2】特許第2588076号(気液同時吸引方式)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記した真空式下水道システムは、国内で使用し始めてから既に約20年が経過しており、近年、真空弁の更新需要が発生し始めている。しかし、真空式下水道システムの空気吸込方式には、上記したように、気液分離吸引方式と気液同時吸引方式との2方式が並存しており、それぞれ構造が異なっているため、真空弁の更新の際などに、汚水吸込管まで取替える必要が生じるので、異なる空気吸込方式に変更することは不経済であった。
【0021】
例えば、気液分離吸引方式の真空弁を交換して気液同時吸引方式を実現する場合には、汚水吸込管も同時に空気吸入管付きのものに取替える必要が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明は、内部に弁座を有して、真空下水管の途中に接続される接続管部と、前記弁座に対して弁体を当接離反可能に支持する弁駆動部とを備えた真空弁構造において、
前記接続管部に、真空下水管への空気の吸込方式を気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらかに切替可能な、空気吸込方式切替部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、接続管部に空気吸込方式切替部を設けることにより、空気の吸込方式を、気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらにも切替えだけで対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例にかかる空気取込口を備えた真空弁の断面図である。
【図2】図1の空気取込口に対して、開閉弁または流量調節弁を、横向きとなるように取付けた状態を示す真空弁の断面図である。
【図3】図1の空気取込口に対して、開閉弁または流量調節弁を、縦向きとなるように取付けた状態を示す真空弁の断面図である。
【図4】従来例(気液分離吸引方式)の説明に用いた真空式下水道システムの主要部を示す図である。
【図5】図4の真空弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、上記した各課題を解決するために、空気の吸込方式を、気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらにも切替えだけで対応することが可能となる構成を備えるものである。
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
<構成>以下、構成について説明する。
【0028】
図1〜図3は、この実施例およびその変形例を示すものである。
【0029】
なお、真空式下水道システムおよび真空弁の構造については、基本的に図4、図5のものと同じなので、ここでの記載を省略する。但し、必要な場合には、上記した記載をこの欄の記載として流用することができる。
【0030】
そして、上記した基本構成に対し、この実施例のものは、以下のような特徴を備えている。
【0031】
(1)真空弁8の接続管部12に対し、真空下水管4への空気の吸込方式を気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらかに切替可能な、空気吸込方式切替部31を設けるようにする。
【0032】
(2)上記した空気吸込方式切替部31が、少なくとも、接続管部12の弁座15よりも上流側(汚水吸込管7側)の部分に設けられた空気取込口32(図1参照)を有し、更に、この空気取込口32に接続された開閉弁または流量調節弁33(図2または図3参照)を有するものとする。
【0033】
ここで、図1に示すように、空気取込口32は、弁駆動部14との干渉を避けつつ開閉弁または流量調節弁33を取付けられるようにするため、接続管部12の側面に設けるのが好ましい。
【0034】
図2または図3に示すように、開閉弁または流量調節弁33は、空気取込口32の近傍にて、空気取込口32を開閉し、または、開度を調整することにより空気を取込可能なものとする。この開閉弁または流量調節弁33は、手動操作可能なハンドル部34を備えるものとする。
【0035】
そして、図2に示すように、開閉弁または流量調節弁33は、空気取込口32に対して横向きに取付けることができる。或いは、図3に示すように、開閉弁または流量調節弁33は、空気取込口32に対して方向変更用接続管部材35を介して縦向きに取付けることができる。この場合、方向変更用接続管部材35は、水平部と垂直部とを有する短い屈曲管部材などとされている。
【0036】
ここで、気液同時吸引方式とする場合には、開閉弁または流量調節弁33を適切な気液比となるように開度調整して他端を開口すれば良いが、外部からの空気を取入可能な図4の通気管5を接続しても良い。
【0037】
また、気液分離吸引方式とする場合には、開閉弁または流量調節弁33は締切にしておけば良い。
なお、空気取込口32と開閉弁または流量調節弁33とを、ユニオンナット等で分離結合可能に接続する構造にしても良い。このようにすることにより、弁座に異物が挟まれた場合に、空気取込口32から手を挿入して異物を除去することが可能となるので、メンテナンス上有利である。
【0038】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0039】
(作用効果1)
真空弁8の接続管部12に空気吸込方式切替部31を設けることにより、空気の吸込方式を気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらにも切替えるだけで対応することが可能となる。よって、空気吸込方式切替部31を有する真空弁8を用いるだけで、汚水吸込管7の構造を変更することなく、空気の吸込方式を自由に選択することができるようになる。以て、真空弁8の更新の際に、空気の吸込方式を、気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらにも切替えだけで対応することが可能となる。
【0040】
(作用効果2)
より具体的には、真空弁8に設けられた開閉弁または流量調節弁33を開くことにより、接続管部12の弁座15よりも上流側の部分から空気取込口32を介して空気を取込むことができる。これにより、気液同時吸引方式とすることができる。
【0041】
反対に、真空弁8に設けられた開閉弁または流量調節弁33を閉じることにより、接続管部12の弁座15よりも上流側の部分からは空気取込口32を介して空気を取込めないようにすることができる。これにより、気液分離吸引方式とすることができる。
【0042】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0043】
4 真空下水管
12 接続管部
14 弁駆動部
15 弁座
16 弁体
31 空気吸込方式切替部
32 空気取込口
33 開閉弁または流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁座を有して、真空下水管の途中に接続される接続管部と、
前記弁座に対して弁体を当接離反可能に支持する弁駆動部とを備えた真空弁構造において、
前記接続管部に、真空下水管への空気の吸込方式を気液同時吸引方式または気液分離吸引方式のどちらかに切替可能な、空気吸込方式切替部を設けたことを特徴とする真空弁構造。
【請求項2】
前記空気吸込方式切替部が、少なくとも、接続管部の弁座よりも上流側の部分に設けられた空気取込口と、該空気取込口に接続された開閉弁または流量調節弁とを有することを特徴とする請求項1記載の真空弁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127069(P2012−127069A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277622(P2010−277622)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】