説明

真空弁装置

【課題】真空送水管内の真空度に拘わらず確実に作動する真空弁装置を提供する。
【解決手段】圧力室37内が設定真空度Ps以上になると開弁し設定真空度Psを下回ると閉弁される真空弁10と、貯水枡1内が第1水位になると圧力室37内が設定真空度以上になるように切り換える第1アクチュエータ90と、貯水枡1内が第2水位になると圧力室37内が設定真空度を下回るように切り換える第2アクチュエータ95とを備え、真空弁10の弁座18の下流側に、真空送水管5の開口面積より流体が通過可能な開口面積が大きい第1検圧室20を設け、かつ、第2アクチュエータ95を、真空弁10の第1検圧室20に連通される第1受圧室123と第1受圧室123内より真空度が低い第2受圧室124に区画し、貯水枡1内の水位が第2水位になると差圧ΔPによって真空弁10の圧力室37内が設定真空度を下回るように切り換える構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空下水道システム等の真空送水システムに使用される真空弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空吸引を利用して送水を行う真空式送水システムが知られている。この真空送水システムの一例としては、真空式下水道システムがある。この真空式下水道システムは、真空ステーション、真空送水管および真空弁ユニットを備えている。
【0003】
真空ステーションは、真空ポンプ、集水タンクおよび圧送ポンプを備えている。真空送水管は、上流側が真空弁ユニットに接続され、下流側が真空ステーションの集水タンクに接続されている。真空ステーションの真空ポンプは、真空送水管内に負圧を発生させる。この真空送水管内の負圧により、真空弁ユニット内の汚水が真空送水管を通って真空ステーションの集水タンクに排水される。集水タンクに貯留された汚水は、圧送ポンプによってさらに下流側に搬送される。
【0004】
真空弁ユニットは、上流側の宅内下水設備から搬送される汚水を一時的に貯留する貯水枡を備えている。この貯水枡の内部には、真空弁と、この真空弁を開閉させるコントローラとからなる真空弁装置が配設されている。
【0005】
真空弁は、下端が貯水枡内に位置する吸水管と真空送水管との間に介設されている。この真空弁は、弁体および弁座を含む弁本体と、弁体を開閉駆動する駆動部とを備えている。そして、閉弁時には吸水管と真空送水管の連通を遮断し、開弁時には吸水管と真空送水管を連通させて、貯水枡内の汚水を真空送水管に送水する。なお、駆動部は、2つの圧力室を備えている。そして、これら圧力室内の圧力差によって生じるピストンの押圧力と付勢スプリングの付勢力の釣り合いにより弁体が駆動する。
【0006】
特許文献1に記載された真空弁装置のコントローラは、真空弁の開弁のみを行うメカニカル型の第1アクチュエータと、真空弁の閉弁のみを行うニューマチック型の第2アクチュエータとを備えている。第1アクチュエータは、フロートの昇降に連動して真空弁の圧力室内の気体圧力を切り換える三方弁構造である。第2アクチュエータは、真空送水管内の真空度の変化に連動して真空弁の圧力室内の気体圧力を切り換える二方弁構造である。
【0007】
この真空弁装置は、貯水枡内に予め設定した第1水位まで汚水が溜まると、第1アクチュエータが真空弁を閉弁状態から開弁状態に切り換える。また、貯水枡内の汚水が吸水管の下端以下の第2水位になると、第2アクチュエータが真空弁を開弁状態から閉弁状態に切り換える。その結果、特許文献1の真空弁装置は、水面に浮遊するスカムを汚水と一緒に排出できる。
【0008】
一般に、真空式下水道システムでは、1つの真空ステーションに対して複数の真空弁ユニットが接続されている。また、各真空弁ユニットは、真空ステーションからの距離や真空送水管の配管構造(抵抗)などによって、真空ステーションへの吸引力である真空送水管の真空度が異なる。例えば、真空ステーションに近い真空弁ユニットは、遠い真空弁ユニットと比較すると真空送水管内の真空度が高い。
【0009】
特許文献1の第2アクチュエータは、真空送水管に接続した連通室と、大気に連通した大気圧室と、連通室内に配設したスプリングとを備えている。そして、貯水枡内の水位が前述の第2水位より高いときは、スプリングの付勢力が、連通室の負圧と大気圧室の大気圧の差圧によって生じるピストンの押圧力を下回っている。貯水枡内の水位が第2水位以下となると、空気の混入により真空送水管の真空度が低下して連通室の負圧が減少し、それによってスプリングの付勢力が連通室と大気圧室の差圧を上回る。その結果、スプリングの付勢力により二方弁構造の弁体の位置が真空弁を閉作動させる位置に切り換えられる。即ち、真空送水管の真空度(吸引力)とスプリングの付勢力とで、真空弁を閉作動させるタイミングが決定される。
【0010】
高真空度(例えば−70kPa)の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、貯水枡内の水位が第2水位に低下しても真空送水管の負圧の減少が不十分であるため、第2アクチュエータのスプリングの付勢力が小さいと、連通室と大気圧室の差圧を上回ることができない(真空弁を閉弁できない)。よって、高真空度の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、第2アクチュエータのスプリングの付勢力を大きく設定する必要がある。一方、低真空度(例えば−25kPa)の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、第2アクチュエータのスプリングの付勢力が大きいと、貯水枡内の水位が第2水位に低下すると、連通室と大気圧室の差圧を直ぐに上回り、真空弁が閉弁してしまう。よって、低真空度の真空送水管に接続された真空弁ユニットでは、第2アクチュエータのスプリングの付勢力を小さく設定する必要がある。
【0011】
よって、真空弁ユニットの第2アクチュエータは、真空弁を接続する真空送水管の実際の真空度に応じて、適した付勢力のスプリングを配設する必要がある。言い換えれば、特許文献1の第2アクチュエータは、全ての真空弁ユニットに共通のスプリングを使用することができないため、システム構築時の作業性が極めて悪い。
【0012】
また、高真空度用の第2アクチュエータは、スプリングの付勢力が大きいため、閉作動させる圧力設定誤差も大きくなる。よって、目標の吸引空気量まで真空弁を開いておくことが極めて困難である。その結果、水面に浮遊するスカムを十分に排出できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2805127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、真空送水管内の真空度に拘わらず確実に作動する真空弁装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明の真空弁装置は、一端が貯水枡に開口した吸水管の他端と真空吸引される真空送水管との間に介設され、圧力室内が設定真空度以上になると弁座から弁体が離れて開弁されるとともに、前記圧力室内が設定真空度を下回ると前記弁座に前記弁体が着座して閉弁される真空弁と、前記貯水枡内の水位が前記吸水管の一端より高い予め設定した第1水位になると、前記真空弁の圧力室内が設定真空度以上になるように切り換える第1アクチュエータと、前記貯水枡内の水位が前記吸水管の一端から空気と一緒に液体を吸引する第2水位になると、前記真空弁の圧力室内が設定真空度を下回るように切り換える第2アクチュエータと、を備えた真空弁装置において、前記真空弁の弁座の下流側に、前記真空送水管の開口面積より流体が通過可能な開口面積が大きい第1検圧室を設け、かつ、前記第2アクチュエータを、前記真空弁の第1検圧室に連通される第1受圧室とこの第1受圧室内より真空度が低い第2受圧室に区画し、前記貯水枡内の水位が第2水位になると、前記第1および第2受圧室の差圧によって前記真空弁の圧力室内が設定真空度を下回るように切り換える構成としている。
ここで、「第1受圧室内より真空度が低い第2受圧室」とは、第2受圧室内が大気開放された大気圧状態を含む。
【0016】
この真空弁装置は、真空弁の弁座の下流側に真空送水管より開口面積が大きい第1検圧室を設けているため、排水状態では、この第1検圧室内の真空度を真空送水管内の真空度より低くすることができる。その結果、第2アクチュエータは、第1検圧室に連通した第1受圧室と第2受圧室の差圧を小さくすることができる。よって、真空送水管内の実際の真空度に拘わらず、共通した真空弁装置を設置することができる。また、第1および第2受圧室の差圧が小さいため、第2アクチュエータの設定誤差も小さくなるので、確実に目標吸引空気量まで真空吸引させることができる。
【0017】
この真空弁装置では、前記真空弁の弁座の上流側に、この弁座内の弁口の開口面積より流体が通過可能な開口面積が大きい第2検圧室を設け、この第2検圧室に前記第2アクチュエータの第2受圧室を連通させることが好ましい。このようにすれば、第1および第2受圧室の差圧を更に小さくすることができる。よって、真空送水管内の真空度に拘わらず、確実に真空弁を閉作動させることができるとともに、目標吸引空気量まで真空吸引させることができる。
【0018】
この場合、前記第2アクチュエータの第2受圧室に、大気と連通する大気連通部を設け、この大気連通部の開口に、大気の取入量を調節可能な吸気部材を配設することが好ましい。ここで、「大気の取入量を調節」とは、大気連通部を遮断した取入量「0」を含む。このようにすれば、第2受圧室の内圧を調整することができる。よって、第2アクチュエータによる真空弁の閉作動を目標値に確実に設定できる。
【0019】
また、前記第1検圧室の下流側に連通される第1変圧室および前記真空弁の圧力室に連通される第2変圧室を形成したケーシングと、前記第1および第2変圧室を連通させる開位置および前記第1および第2変圧室の連通を遮断する閉位置の間を直動可能に前記ケーシング内に配設した切換用弁体と、この切換用弁体を開位置および閉位置に予め設定された保持力で保持する保持機構とを有する切換弁機構を設け、前記貯水枡内の水位が第1水位になると、前記第1アクチュエータによって前記切換弁機構の切換用弁体を閉位置から開位置へ前記保持機構の保持力に抗して移動させるとともに、前記貯水枡内の水位が第2水位になると、前記第2アクチュエータによって前記切換弁機構の切換用弁体を開位置から閉位置へ前記保持機構の保持力に抗して移動させることにより、前記第1および第2アクチュエータによって前記真空弁の圧力室内の真空度を切り換えることが好ましい。
【0020】
この真空弁装置は、真空弁の圧力室を切換弁機構の第2変圧室だけに接続した構成である。また、切換弁機構の第1変圧室は、第1検圧室の下流側に接続されている。そして、第1および第2変圧室は、1つの切換用弁体に対する第1アクチュエータによる開作動と、第2アクチュエータによる閉作動とで、連通と遮断が切り換えられる。しかも、切換用弁体は、保持機構の保持力で開位置および閉位置に保持される。そのため、切換用弁体が閉位置で、真空弁の弁体が閉位置にあれば、切換用弁体が開位置に移動しない限り、真空弁の圧力室内が設定真空度以上になることはない。また、切換用弁体が開位置で、真空弁の弁体が開位置にあれば、切換用弁体が閉位置に移動しない限り、真空弁の圧力室内が設定真空度を下回ることはない。よって、確実に真空弁を開閉作動させることができる。
【0021】
この場合、前記切換弁機構のケーシングの第2変圧室は、大気と連通する貫通孔を有するシール部材を備え、前記切換用弁体は、開位置に移動した状態で前記シール部材の貫通孔を閉塞して前記第2変圧室を大気と遮断し、閉位置に移動した状態で前記シール部材の貫通孔を開放して前記第2変圧室を大気と連通させることが好ましい。このようにすれば、第2アクチュエータにより切換用弁体を閉位置に移動させると、第2変圧室を介して真空弁の圧力室に大気を導入できる。そのため、確実に真空弁を閉弁作動させることができる。
【0022】
また、前記第2アクチュエータは、前記第1受圧室内に配設した切換用ピストンカップと、前記第1および第2受圧室内の差圧による前記切換用ピストンカップの押圧力が付勢力を上回ると収縮する一方、差圧による前記切換用ピストンカップの押圧力が付勢力以下になると伸張する付勢スプリングとを有し、前記切換用ピストンカップに、前記付勢スプリングの付勢力によって前記切換用弁体を開位置から閉位置に移動させる閉作動部材を連結することが好ましい。
この場合、前記第2アクチュエータに、前記付勢スプリングの付勢力を調整する調整機構を設けることが好ましい。
このようにすれば、閉作動部材を動作させる設定値を微調整できる。その結果、真空弁ユニットの設置場所の環境(スカム量)に応じて、吸引空気量を調整できる。そして、スカムが多い真空弁ユニットでは、吸引空気量を増やすことにより、残留スカムが硬化することによる排水トラブルを確実に防止できる。また、スカムが少ない真空弁ユニットでは、吸引空気量を減らすことにより、省エネ運転を実現できるとともに、他の真空弁ユニットの真空度低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の真空弁装置では、真空弁の弁座の下流側に、真空送水管内の真空度より低い真空度となる第1検圧室を設け、この第1検圧室に第2アクチュエータの第1受圧室を連通させているため、第1および第2受圧室の差圧を小さくすることができる。しかも、真空弁の弁座の上流側に更に真空度が低い第2検圧室を設け、この第2検圧室に第2アクチュエータの第2受圧室を連通させているため、第1および第2受圧室の差圧を更に小さくすることができる。よって、真空送水管の実際の真空度に拘わらず、共通した真空弁装置を設置することができる。また、第1および第2受圧室の差圧が小さいため、確実に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の真空弁装置を適用した真空式下水道システムを示す概略図である。
【図2】第1実施形態の真空弁装置の概念図である。
【図3】真空弁装置の真空弁の構成を示す断面図である。
【図4】図3の要部拡大断面図である。
【図5】コントローラの上方斜視図である。
【図6】(A),(B)は真空弁装置のコントローラの構成を示す断面図である。
【図7】(A)は切換弁機構のケーシングおよび保持機構を示す斜視図、(B)はケーシングの断面図、(C)は保持機構の斜視図である。
【図8】切換用弁体を示す分解斜視図である。
【図9】第2アクチュエータを示す分解斜視図である。
【図10A】真空弁装置の非作動状態を示す概略図である。
【図10B】切換用弁体が第1アクチュエータにより開作動した状態を示す概略図である。
【図10C】図10Bにより真空弁の弁体が開作動した状態を示す概略図である。
【図10D】排水により空気が混入して真空度が低下した状態を示す概略図である。
【図10E】切換用弁体が第2アクチュエータにより閉作動した状態を示す概略図である。
【図10F】図10Eにより真空弁の弁体が閉作動した状態を示す概略図である。
【図11】真空度が異なる真空送水管に接続した場合の排水時の第1検圧室と第2検圧室の差圧の変移を示すグラフである。
【図12】(A)は第2実施形態の真空弁装置のコントローラの構成を示す断面図、(B)はコントローラの第2アクチュエータの下側ケースを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0026】
図1は、本発明の真空弁装置を適用した真空送水システムの一例である真空式下水道システムの真空弁ユニットを示す。真空式下水道システムは、宅内下水設備と真空ステーションとの間に、真空弁ユニットが配設されている。真空弁ユニットは、汚水を一時的に貯留する貯水枡1を有し、この貯水枡1に本発明の真空弁装置を配設し、貯水枡1内の汚水を真空ステーションによる真空吸引作用で下流側の集水タンクに排水する。
【0027】
貯水枡1は有底筒状をなし、その上端開口が蓋体2により閉塞されている。この貯水枡1の底には、汚水を貯留するための汚水溜3が設けられている。また、貯水枡1には、汚水溜3の上方に上流側が宅内下水設備に連通した大気圧状態の自然流下管4が接続されている。さらに、貯水枡1には、自然流下管4より上方に位置するように、下流側が真空ステーションの集水タンクに接続された負圧(-25〜-70kPa)状態の真空送水管5が接続されている。そして、貯水枡1には、真空送水管5より更に上方に位置するように、大気開放した空気取入管6が接続されている。
【0028】
貯水枡1内には、仕切弁7、吸水管8および真空弁装置が収容されている。真空送水管5には、仕切弁7が介設されるとともに、真空弁装置の真空弁10を介して吸水管8が接続されている。仕切弁7は、真空式下水道システムの新規構築時やメンテナンス時に手動操作により閉弁され、真空送水管5を介して真空弁10と真空ステーションとの連通を遮断する。また、新規構築後またはメンテナンス後の通常の使用時には開弁され、真空送水管5を介して真空弁10と真空ステーションと連通させる。吸水管8は、一端の開口が汚水溜3の底から所定間隔(50〜100mm)をもって上方に位置するように配管されている。
【0029】
本発明の真空弁装置は、真空弁10と、この真空弁10を開閉させるコントローラ50とを備えている。コントローラ50は、図2に示すように、フロート91を用いた開弁専用メカニカル型の第1アクチュエータ90と、差圧(圧力差)による閉弁専用ニューマチック型の第2アクチュエータ95とを備えている。そして、本発明では、真空弁10に第1および第2検圧室20,24を設け、これらの内部圧力(真空度)を第2アクチュエータ95で受け、その差圧ΔPで真空弁10を閉弁させる構成としている。
【0030】
真空弁10は、図3に示すように、仕切弁7と吸水管8との間に介設される管体11と、この管体11内に配設する止水用弁体26と、この止水用弁体26を開閉駆動させる止水弁駆動アクチュエータ27とを備えている。そして、管体11に形成した弁座18の下流側に第1検圧室20を設けるとともに、弁座18の上流側に第2検圧室24を設けたものである。
【0031】
管体11は、直管状をなす吸水部12と吐出部14とを備えている。吸水部12は、ベント管13を介して吸水管8が接続されるもので、その内径はD1である。吐出部14は、開口端に継手部材15が配設され、この継手部材15を介して真空送水管5に接続されるものである。この吐出部14は、内径が吸水部12より大きいD2である(D1<D2)。吐出部14は、軸芯が吸水部12の軸芯と平行に位置し、図4に示すように、下側頂部が吸水部12と接する位置関係である。継手部材15には、吸水部12と略同一内径D1の真空送水管接続部16が設けられている。
【0032】
また、管体11には、図3に示すように、止水用弁体26を移動可能に配設する弁体配設部17が設けられている。この弁体配設部17は、吸水部12と吐出部14との間に鋭角に交差するように分岐して設けられている。具体的には、弁体配設部17は、吸水部12の側に対して鋭角に位置し、吐出部14の側に鈍角に位置するように設けられている。弁体配設部17の交差部位には、管体11の内壁から弁座18を突設することにより、その内部に円形状をなす弁口19が設けられている。この弁口19は、弁体配設部17の軸芯に対して直交方向に広がるとともに、その中心が弁体配設部17の軸芯と一致する。また、弁口19の内径は、吸水部12と略同一内径のD1である。
【0033】
この管体11には、弁座18の下流側に吐出部14の内部空間からなる第1検圧室20が形成され、弁座18の上流側に弁体配設部17の内部空間からなる第2検圧室24が形成されている。第1検圧室20は、流体が通過可能な開口面積が、下流側の真空送水管接続部16(真空送水管5)の開口面積より大きい。この第1検圧室20の上側頂部には、後述する第2アクチュエータ95の第1受圧室123に接続するための第1受圧室接続部21が設けられている。また、第1検圧室20の上部には、第1受圧室接続部21へ排水が浸入することを防止する一対の邪魔板22A,22Bが設けられている。これら邪魔板22A,22Bには、気体の通過を可能とする通気孔23a,23bがそれぞれ設けられている。第2検圧室24の上側頂部には、第2アクチュエータ95の第2受圧室124に接続するための第2受圧室接続部25が設けられている。この第2検圧室24は、流体が通過可能な開口面積が、下流側の弁口19の開口面積より大きい。
【0034】
このように構成した管体11は、弁口19および真空送水管接続部16にて、流体が通過可能な開口面積が絞られている。その結果、管体11を通した排水時には、弁口19を通過する際に減圧され、真空送水管接続部16を通過する際に更に減圧される。その結果、真空度は、弁口19の上流側の第2検圧室24より、弁口19の下流側の第1検圧室20の方が高くなる。さらに、真空送水管接続部16の上流側の第1検圧室20より、真空送水管接続部16の下流側の真空送水管5の方が高くなる。
【0035】
止水用弁体26は、止水弁駆動アクチュエータ27により弁体配設部17の軸芯に沿って進退移動可能に配設されている。真空弁10の開閉は、止水用弁体26により切り換えられる。止水弁駆動アクチュエータ27により止水用弁体26が進出されると、止水用弁体26が弁座18に着座して弁口19を閉塞し、真空弁10は閉状態となる。真空弁10の閉弁により吸水部12と吐出部14の連通が遮断される。真空弁10の閉弁時には、吸水部12および弁体配設部17が吸水管8を介して大気圧(大気開放)状態となり、吐出部14が、仕切弁7および真空送水管5を介して接続した真空ステーションの真空吸引作用により大気圧より低い負圧状態となる。一方、止水弁駆動アクチュエータ27により止水用弁体26が後退されると、止水用弁体26が弁座18から離れて弁口19を開放し、真空弁10が開状態となる。真空弁10の開弁により吸水部12と吐出部14が連通される。真空弁10の開弁時には、吸水管8、吸水部12、弁体配設部17および吐出部14が、仕切弁7および真空送水管5を介して接続した真空ステーションの真空吸引作用により大気圧より低い負圧状態となる。
【0036】
止水弁駆動アクチュエータ27は、内部を圧力室37と基準圧室36に区画した止水用シリンダ28に、止水用弁体26を開閉作動させるための開閉作動部材41を配設したものである。止水用シリンダ28は、第1下側ケース29、第1上側ケース32、第1ダイヤフラム35、第1ピストンカップ38、第1付勢スプリング40を備えている。
【0037】
第1下側ケース29は、管体11の弁体配設部17の上端開口に密閉状態で取り付けられる上端開口の筒状部材からなる。この第1下側ケース29の下側閉塞部は、弁体配設部17内に向けて突出する円錐筒状をなす。そして、弁体配設部17の軸芯に位置するように、開閉作動部材41を挿通する第1挿通部材30が配設されている。また、第1下側ケース29の外周部には、大気と連通させるための通気孔31が設けられている。
【0038】
第1上側ケース32は、第1下側ケース29の上端開口に密閉状態で取り付けられる下端開口の筒状部材からなる。この第1上側ケース32の上側閉塞部には、コントローラ50の切換弁機構51の第2変圧室58に接続される第2変圧室接続部33が設けられている。また、第1上側ケース32の上側閉塞部には、第1ピストンカップ38の上向きの移動を停止するとともに、第1付勢スプリング40の上部を位置決めする位置決め筒部34が設けられている。
【0039】
第1ダイヤフラム35は、止水用シリンダ28の内部を、弁体配設部17の側に位置する基準圧室36と、離間した上側に位置する圧力室37とに区画する可撓性材料からなるものである。この第1ダイヤフラム35は、第1下側ケース29および第1上側ケース32の間に外周部を挟み込んだ状態で、一体的に組み付けられている。なお、本実施形態の基準圧室36内の基準圧は、第1下側ケース29に形成した通気孔31により大気圧とされている。
【0040】
第1ピストンカップ38は、内径が位置決め筒部34の外径より大きい上端開口の受皿形状をなす。この第1ピストンカップ38は、止水用シリンダ28の圧力室37内に位置するように、下側の底が第1ダイヤフラム35に固着して配設されている。具体的には、第1ダイヤフラム35の基準圧室36の側に板状をなす第1挟込部材39を配置することにより、この第1挟込部材39と第1ピストンカップ38とで第1ダイヤフラム35を挟み込んで装着している。
【0041】
第1付勢スプリング40は、第1上側ケース32の上側閉塞部と第1ピストンカップ38との間に配設されている。この第1付勢スプリング40は、第1ピストンカップ38および開閉作動部材41を介して止水用弁体26を閉位置へ向けて付勢する。また、第1付勢スプリング40は、圧力室37内の圧力が大気圧より低い設定真空度Ps以上になると、この圧力室37内の真空度(負圧)および基準圧室36内の大気圧との差圧により生じる第1ピストンカップ38の押圧力との力の釣り合いにより収縮する。具体的には、第1付勢スプリング40は、圧力室37内の真空度がPsになると、基準圧室36の大気圧との差圧による押圧力を下回り、第1ピストンカップ38の移動(後退)による押圧力(真空吸引力)で徐々に収縮し始める。そして、圧力室37内の真空度が設定真空度Psより高いPs’(Ps<Ps’)になると、完全に収縮した状態をなす。一方、圧力室37内が設定真空度Ps’を下回ると、基準圧室36の大気圧との差圧による押圧力を上回り、第1ピストンカップ38の後退方向へ向けた押圧力に抗して徐々に伸張する。そして、圧力室37内が設定真空度Psを下回ると、完全に伸張した状態をなす。
【0042】
開閉作動部材41は、第1ピストンカップ38の底中心に連結したロッドからなる。この開閉作動部材41は、第1下側ケース29の第1挿通部材30を挿通し、弁体配設部17の軸芯に沿って延びる。そして、その先端には、止水用弁体26が連結されている。なお、開閉作動部材41は、第1ピストンカップ38に連結した状態で一体的に設け、止水用弁体26に連結してもよく、止水用弁体26に一体的に設け、第1ピストンカップ38に一体的に連結してもよい。
【0043】
次に、真空弁10を開閉制御するコントローラ50の概略構成について説明する。
【0044】
図2に示すように、コントローラ50は、三方弁構造の切換弁機構51を備えている。この切換弁機構51は、フロート91の昇降に連動する第1アクチュエータ90により開作動される。そして、切換弁機構51が開位置に作動されると、真空送水管5と真空弁10の圧力室37を連通させ、真空弁10を開弁させる。また、切換弁機構51は、第1および第2検圧室20,24内の差圧ΔPにより動作する第2アクチュエータ95により閉作動される。そして、切換弁機構51が閉位置に作動されると、真空送水管5と真空弁10の圧力室37との連通を遮断するとともに、この圧力室37を大気開放する。これにより、圧力室37を設定真空度Psより下回らせ、真空弁10を閉弁させる。
【0045】
具体的には、コントローラ50は、図5および図6(A),(B)に示すように、1つの切換用弁体70を有する切換弁機構51と、切換用弁体70を開作動させるための第1アクチュエータ90と、切換用弁体70を閉作動させるための第2アクチュエータ95とを備えている。そして、第1および第2アクチュエータ90,95によって切換用弁体70を切り換えることにより、真空弁10の圧力室37内の真空度を切り換えて、真空弁10を開閉作動させるものである。
【0046】
切換弁機構51は、ケーシング52と、このケーシング52の内部に直動可能に配設した切換用弁体70と、この切換用弁体70を開位置および閉位置で保持する保持機構とを備えている。
【0047】
図5および図7(A),(B)に示すように、ケーシング52は、下部の真空弁接続部55と、上部のアクチュエータ連結部61を備えている。このケーシング52には、固定用アーム部53が設けられている。この固定用アーム部53はホルダ54(図6(A),(B)参照)に連結され、このホルダ54を介して貯水枡1内の所定部位に固定される。
【0048】
真空弁接続部55は、第1検圧室20の下流側の真空送水管5に連通される第1変圧室56と、真空弁10の圧力室37に連通される第2変圧室58とが形成されている。第1変圧室56は下端に位置するもので、その外周部には真空送水管接続部57が径方向外向きに突設されている。第2変圧室58は第1変圧室56の軸方向に沿った上部に位置し、この第1変圧室56より内径が大きいものである。この第2変圧室58には、外周部に圧力室接続部59が径方向外向きに突設されている。これら変圧室56,58の間には、切換用弁体70が圧接される被圧接部60が設けられている。この被圧接部60は、内径が上向きに漸次大きくなる逆円錐筒形状をなす。
【0049】
アクチュエータ連結部61は、真空弁接続部55の上部である第2変圧室58より大きな内径で上向きに延びる円筒状をなす。真空弁接続部55とアクチュエータ連結部61との境界部分には、シール用の圧接段部62が形成されている。この圧接段部62の上方には、アクチュエータ連結部61の内部空間と連通するように切り欠いたスリット状の挿通穴63,63が設けられている。この挿通穴63の上方には、保持機構を構成するトグル部材85の配設部64が設けられている。このトグル部材配設部64は、アクチュエータ連結部61の内部空間と連通するように、挿通穴63,63に対して平行に延びる一対の弾性保持部挿通溝65,65と、これらの間に位置するように固定用アーム部53に対して逆向きに突設した係止片66とを備えている。また、アクチュエータ連結部61には、横方向に隣接する固定用アーム部53,53間に位置するように、軸方向に沿って上下に延び、内部空間に連通する挿通溝67が設けられている。さらに、アクチュエータ連結部61には、上端から弾性保持部挿通溝65にかけて延びるガイド溝68が設けられている。また、アクチュエータ連結部61の上端には、第2アクチュエータ95を連結する平面視長円形状をなすブラケット部69が設けられている。このブラケット部69には、長径側外周部に位置するように連結孔が設けられている。
【0050】
切換用弁体70は、弁ロッド71と、弁パッキン78と、ガイド部材81と、シール部材82と、補強部材84A,84Bとを備えている。この切換用弁体70は、第1アクチュエータ90により弁ロッド71が上方に直動されることにより、弁パッキン78がケーシング52の第1および第2変圧室56,58を連通させる開位置(図10B参照)に移動される。また、第2アクチュエータ95により弁ロッド71が下方に直動されることにより、弁パッキン78が被圧接部60に圧接され、ケーシング52の第1および第2変圧室56,58の連通を遮断する閉位置(図10E参照)に移動される。
【0051】
弁ロッド71は、真空弁接続部55内からアクチュエータ連結部61内にかけて延びるものである。図8に示すように、弁ロッド71の下端には、弁パッキン78を取り付けるパッキン取付部72が設けられている。このパッキン取付部72の上方には、ガイド部材81の上端を位置決めする拡径したストッパ部73が設けられている。このストッパ部73の上部には、円錐形状をなすように突出した圧接部74が設けられている。この圧接部74の上方には、平面視矩形状をなし、側面視で菱形形状をなす板状の膨出部75が設けられている。この膨出部75の上方には、径方向外向きに突出する受動フランジ部76が設けられている。この受動フランジ部76の外周部には、アクチュエータ連結部61のガイド溝68に係合されることにより、アクチュエータ連結部61内で切換用弁体70を回転不可能に規制するガイド片77が突設されている。
【0052】
弁パッキン78には、真空弁接続部55の被圧接部60に圧接される軟質なシール部79の一部に、他の部分より剛性が高い高剛性部を形成するために補強リブ部80が設けられている。この補強リブ部80は、切換用弁体70の移動方向から見て、円筒状をなす基部からシール部79の外周縁にかけて傾斜して延びるように設けられている。即ち、本実施形態のシール部79は、肉厚が一様にならないように形成されている。そして、被圧接部60から離間される際には、補強リブ部80からなる高剛性部から離間し、薄肉シール部79の裂傷を抑制する構成としている。
【0053】
ガイド部材81は、上端が弁ロッド71のストッパ部73の下端に位置決めされ、下端が弁パッキン78の上端に位置決めされる筒状のものである。
【0054】
シール部材82は、圧接段部62に上方から圧接されるもので、弁ロッド71に対して軸方向に沿って移動可能に装着されている。このシール部材82は、切換用弁体70の移動により、挿通溝67によって大気開放されたアクチュエータ連結部61と第2変圧室58とを、連通した開放状態および連通を遮断した閉塞状態に切り換えるものである。このシール部材82は、弁ロッド71の装着部位の直径より大径の貫通孔83を備えている。この貫通孔83は、切換用弁体70が開位置に移動されると、圧接部74により閉塞される。これにより、真空弁接続部55の第2変圧室58は、アクチュエータ連結部61内との連通が遮断される。また、貫通孔83は、切換用弁体70が閉位置に移動されると、圧接部74の離間により開放される。これにより、真空弁接続部55の第2変圧室58は、アクチュエータ連結部61内と連通した大気開放状態とされる。
【0055】
補強部材84A,84Bは、シール部材82の上下に配設される。これら補強部材84A,84Bは、貫通孔83より大きな貫通孔を有する円環状をなす。上側の補強部材84Aは、上面がトグル部材85の係止部89に係止されることにより、シール部材82を圧接段部62に圧接状態で移動不可能に配置する。
【0056】
保持機構は、アクチュエータ連結部61のトグル部材配設部64に外嵌するように配設する樹脂製のトグル部材85からなる。このトグル部材85は、図7(A),(C)に示すように、平面視円弧状をなすように湾曲され、アクチュエータ連結部61の外面に配置されるベース板部86を備えている。このベース板部86には、アクチュエータ連結部61の係止片66が貫通して係止される係止孔87が設けられている。
【0057】
また、トグル部材85には、アクチュエータ連結部61の弾性保持部挿通溝65に嵌り、アクチュエータ連結部61の内部空間に突出する一対の弾性保持部88,88が設けられている。この弾性保持部88は、アクチュエータ連結部61内に位置する切換用弁体70の膨出部75の傾斜面に線接触することにより、この切換用弁体70を開位置または閉位置に保持する。さらに、トグル部材85には、ベース板部86の下端にアクチュエータ連結部61の挿通穴63,63に挿通され、シール部材82の上端を位置決めする一対の係止部89,89が設けられている。
【0058】
第1アクチュエータ90は、図1に示すように、貯水枡1内に予め設定した第1水位HWLまで汚水が貯められると、切換用弁体70をトグル部材85の保持力に抗して閉位置から開位置に移動させるものである。この第1アクチュエータ90は、貯水枡1内の水位に応じて昇降するフロート91と、このフロート91の昇降に連動して切換用弁体70の直動方向に沿って移動する開作動部材93とを備えている。
【0059】
フロート91の浮力Fbは、トグル部材85の保持力Fsより大きい(Fs<Fb)。このフロート91には、開作動部材93に連結するための連結ロッド92が一体的に設けられている。この連結ロッド92は、貯水枡1内に予め設定した第1水位HWLまで汚水が溜まった状態で、開作動部材93を介して切換用弁体70を開作動可能な全長に設定されている。また、切換用弁体70の開作動に必要なストロークS1と、フロート91が汚水に浸かる深さS2とを加算した距離は、切換用弁体70を開閉作動させる第1水位HWLおよび第2水位LWL間の距離より小さく設定している。これにより、貯水枡1の汚水が第2水位LWLまで低下している状態では、フロート91が汚水の水面より上方に位置し、着水しないように構成している。
【0060】
開作動部材93は、図6(A),(B)に示すように、連結ロッド92の上端に連結され、切換用弁体70の直動方向であるケーシング52の軸方向に沿って延びるように、固定用アーム部53に連結したホルダ54により、移動可能かつ離脱不可能に装着されている。この開作動部材93には、ケーシング52の挿通溝67を挿通してアクチュエータ連結部61内に突出し、切換用弁体70の受動フランジ部76の下部に位置する作動部94が設けられている。
【0061】
第2アクチュエータ95は、貯水枡1内の汚水が、吸水管8の下端から空気と一緒に吸引する第2水位LWLまで排水されると、切換用弁体70をトグル部材85の保持力に抗して開位置から閉位置に移動させるものである。この第2アクチュエータ95は、図6(A),(B)および図9に示すように、内部を第1受圧室123と第2受圧室124に区画した切換用シリンダ96に、切換用弁体70を閉作動させるための閉作動部材129を配設したものである。切換用シリンダ96は、第2下側ケース97、第2上側ケース101、第2ダイヤフラム122、第2ピストンカップ125および第2付勢スプリング128を備えている。そして、この第2アクチュエータ95には、第2付勢スプリング128による付勢力を調整するための調整機構110が更に設けられている。
【0062】
第2下側ケース97は、アクチュエータ連結部61のブラケット部69の上端を覆う略円板状の板体からなる。この第2下側ケース97には、第2上側ケース101に密閉状態で組み付けるための連結孔を有するブラケット部98が設けられている。なお、このブラケット部98の連結孔のうち、径方向に対向する一対の連結孔は、アクチュエータ連結部61のブラケット部69の連結孔と一致する。また、第2下側ケース97の中心には、閉作動部材129を挿通する孔が設けられ、その上側に第2挿通部材99が配設されている。さらに、第2下側ケース97には、アクチュエータ連結部61の平面視長円形状をなすブラケット部69の外側に位置するように、略L字形状をなすように突出する第2検圧室接続部100が設けられている。
【0063】
第2上側ケース101は、第2下側ケース97の上方を覆う下端開口の円筒状部材からなる。この第2上側ケース101の下端縁には、連結するための連結孔を有するブラケット部102が設けられている。また、第2上側ケース101の上側閉塞部には、中心に調整機構取付部103が設けられている。この調整機構取付部103は、第2上側ケース101の上側閉塞部に設けた孔から筒状をなすように下(内)向きに突出するスライド部材取付部104を備えている。このスライド部材取付部104には、周方向に所定間隔をもってガイド溝105が設けられている。なお、このスライド部材取付部104の下端は、第2ピストンカップ125の上向きの移動を停止するストッパの役割もなす。また、調整機構取付部103は、第2上側ケース101の孔より筒状をなすように上向きに突出する締付部材取付部106を備えている。この締付部材取付部106には、内周面にシール段部107が設けられている。また、締付部材取付部106の上端には、締付部材117の離脱を防止するための係止突部108が設けられている。さらに、第2上側ケース101の上側閉塞部には、調整機構取付部103の外周部に位置するように、略L字形状をなすように突出する第1検圧室接続部109が設けられている。
【0064】
調整機構110は、第2上側ケース101内に移動可能に配設されるスライド部材111と、第2上側ケース101の外側に露出するように回転可能に装着される締付部材117とを備えている。
【0065】
スライド部材111は、スライド部材取付部104の外側に位置される大径筒部112と、スライド部材取付部104の内側に位置される小径筒部113とを備え、これらをガイド溝105と等間隔で設けた連結板部114によって一体に形成したものである。このスライド部材111は、連結板部114がスライド部材取付部104のガイド溝105に挿通されることにより、軸を中心とした周方向の回転が防止されるとともに、過剰な上向きに移動が停止される。大径筒部112の上端には、第2付勢スプリング128の上端を位置決めする位置決めフランジ115が、径方向外向きに突出するように設けられている。小径筒部113の内面には、螺旋状をなすようにネジ溝部116が設けられている。
【0066】
締付部材117は、締付部材取付部106の外側から内部に挿入される有底筒状のものである。この締付部材117の外周部には、ネジ溝部116に螺合するネジ部118が下端から上向きに延びるように設けられている。また、ネジ部118の上部にはシールフランジ部119が設けられている。このシールフランジ部119は、締付部材取付部106のシール段部107に当接することにより、大気の侵入を防止するとともに、締付部材117の軸方向の移動を阻止する。さらに、締付部材117の上端には、径方向に対向するように一対の操作部120が設けられている。この操作部120には、略U字形状の溝を設けることにより、その内部に弾性片121を設け、その外面に係止突部108に係止する係止爪部(図示せず)が設けられている。
【0067】
第2ダイヤフラム122は、切換用シリンダ96の内部を、第2上側ケース101の側に位置する第1受圧室123と、第2下側ケース97の側に位置する第2受圧室124とに区画する可撓性材料からなるものである。この第2ダイヤフラム122は、第2下側ケース97および第2上側ケース101の間に外周部を挟み込んだ状態で、一体的に組み付けられている。第1受圧室123は第1検圧室20に連通され、第2受圧室124は第1受圧室123より真空度が低くなる第2検圧室24に連通される。
【0068】
第2ピストンカップ125は、内径がスライド部材111の外径より大きい上端開口の受皿形状をなす。この第2ピストンカップ125は、切換用シリンダ96の第1受圧室123内に位置するように、第2ダイヤフラム122に固着して配設されている。この第2ピストンカップ125は、第2受圧室124の側に板状をなす第2挟込部材126を配置することにより、この第2挟込部材126とで第2ダイヤフラム122を挟み込んで装着している。なお、図中符号127は、第2ピストンカップ125内が区画されることを防止するための通気溝である。
【0069】
第2付勢スプリング128は、スライド部材111と第2ピストンカップ125との間に配設されている。この第2付勢スプリング128は、第2ピストンカップ125および閉作動部材129を介して切換用弁体70を閉位置へ向けて付勢する。また、第2付勢スプリング128は、第1および第2受圧室123,124内の真空度が差圧ΔPになると、第2ピストンカップ125を介して収縮する付勢力のものを採用している。即ち、第1受圧室123内は、第1検圧室20との接続により上向きの吸引力(P1)が作用し、第2受圧室124内は、第2検圧室24との接続により下向きの吸引力(P2)が作用する(P1>P2)。これにより、これらの間に位置する第2ピストンカップ125には、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPに相当する上向きの押圧力(F1)が生じる。そのため、第2付勢スプリング128は、差圧ΔPによって生じる第2ピストンカップ125の押圧力(F1)がスプリング付勢力(F2)を上回る(F1>F2)と、収縮した状態をなす。一方、差圧ΔPによる第2ピストンカップ125の押圧力(F1)がスプリング付勢力(F2)以下(F1≦F2)になると、伸張した状態をなす。
【0070】
なお、第2付勢スプリング128の付勢力、即ち、切換用弁体70を閉位置に移動させる力Fcは、フロート91の浮力Fbより大きく設定している(Fs<Fb<Fc)。これにより、切換用弁体70に対して、第1アクチュエータ90による開作動と第2アクチュエータ95による閉作動とが同時に行われた場合、第2アクチュエータ95による閉作動が実行されるように構成している。その結果、真空弁10が開状態と閉状態とが繰り返されるチャタリングの発生を防止できる。そして、本実施形態の第2付勢スプリング128は、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPが、約5kPaになると伸長する付勢力に設定している。
【0071】
閉作動部材129は、第2挟込部材126および第2ピストンカップ125の底中心を貫通させて連結したロッドからなる。この閉作動部材129は、第2下側ケース97の第2挿通部材99を挿通し、アクチュエータ連結部61の軸芯に沿って延びることにより、切換用弁体70の弁ロッド71に一致し、この切換用弁体70の直動方向に沿って直動する。この閉作動部材129は、第2ピストンカップ125が図10Eに示す限界位置まで進出した状態で、膨出部75がトグル部材85の弾性保持部88より下方に位置するまで下降できる全長に設定されている。なお、この第2アクチュエータ95の閉作動部材129は、第2ピストンカップ125に連結した状態で一体的に設けてもよい。
【0072】
この真空弁装置を真空式下水道システムに適用する場合、仕切弁7を閉じた状態で貯水枡1内に位置する真空送水管5に真空弁10の管体11を接続する。また、ホルダ54を介して貯水枡1内にコントローラ50を固定する。この際、第1水位HWLで切換用弁体70が開作動し、第2水位LWLでフロート91が水面から離間するように連結ロッド92を調節する。
【0073】
そして、コントローラ50の真空送水管接続部57と、第1検圧室20の下流側に位置する真空送水管5とを、接続配管である空気チューブ130Aによって接続する。また、コントローラ50の圧力室接続部59と、真空弁10の第2変圧室接続部33とを、空気チューブ130Bによって接続する。さらに、コントローラ50の第1検圧室接続部109と、真空弁10の第1受圧室接続部21とを、空気チューブ130Cによって接続する。そして、コントローラ50の第2検圧室接続部100と、真空弁10の第2受圧室接続部25とを、空気チューブ130Dによって接続する。
【0074】
次に、本発明の真空弁装置を適用した真空式下水道システムの動作を、図10A〜図10Fを参照して説明する。なお、これらの図には、吸水管8の下端から真空送水管5に至る排水経路において、真空度の高低状態を薄墨の濃淡で表すとともに、右側上部にグラフで表している。
【0075】
図10Aに示すように、貯水枡1の内部の汚水が吸水管8の下側近傍までしか溜められていない状態では、コントローラ50の切換用弁体70が閉位置に移動され、この状態がトグル部材85の弾性保持部88の保持力で保持されている。
【0076】
この状態では、真空弁10の第1検圧室20は真空送水管5の吸引力である高真空度(設定真空度Ps以上)の状態をなし、真空弁10の第2検圧室24を含む吸水部12は大気圧状態をなす。そのため、コントローラ50は、切換弁機構51の第1変圧室56が設定真空度Ps以上の状態をなす。また、第2アクチュエータ95は、第1受圧室123が高真空度(Ps)の状態をなし、第2受圧室124が大気圧状態をなす。その結果、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPによる押圧力は、第2付勢スプリング128の付勢力より強く、閉作動部材129が第2ピストンカップ125を介して後退した非作動状態をなす。また、コントローラ50の切換弁機構51は、切換用弁体70が閉位置に維持し、第2変圧室58が貫通孔83および挿通溝67を通して大気開放状態をなす。そのため、第2変圧室58に連通した真空弁10の圧力室37も大気開放状態となる。その結果、真空弁10は、基準圧室36と圧力室37の差圧による押圧力より、第1付勢スプリング40の付勢力が上回り、力の釣り合いの関係によって閉弁状態を維持する。
【0077】
貯水枡1内に汚水が溜まり、フロート91が着水して第1水位HWLまで上昇すると、図10Bに示すように、開作動部材93が上向きに移動される。その結果、切換用弁体70がトグル部材85の弾性保持部88の保持力に抗して開位置まで上向きに移動し、この開位置をトグル部材85の弾性保持部88の保持力で保持する。これにより、コントローラ50の第1変圧室56と第2変圧室58とが連通し、切換用弁体70の圧接部74がシール部材82の貫通孔83を閉塞する。
【0078】
この状態では、コントローラ50の第2変圧室58が大気と遮断され、設定真空度Ps以上となる。そのため、第2変圧室58に連通した真空弁10の圧力室37も設定真空度Ps以上の高真空度になる。また、コントローラ50の第2アクチュエータ95は、第1受圧室123が高真空度Psの状態を維持し、第2受圧室124が大気圧状態を維持するため、力の釣り合いによって非作動状態を維持する。
【0079】
真空弁10の圧力室37が設定真空度Ps以上になると、図10Cに示すように、力の釣り合いによって止水弁駆動アクチュエータ27が開作動し、管体11の吸水部12と吐出部14とを連通させた開弁状態となる。よって、貯水枡1内の汚水は、吸引作用によって吸水管8、管体11、仕切弁7および真空送水管5を経て真空ステーションへ排水される。
【0080】
この時の排水経路の真空度は、吸水管8の下端から徐々に上昇する。そして、真空弁10の弁口19に近づくと、通水可能な開口面積が絞られるため急激に上昇する。また、真空弁10の弁口19を通過して、通水可能な開口面積が広い第1検圧室20内に至ると真空度は略平衡する。そして、通水可能な開口面積が絞られた真空送水管接続部16に近づくと再び急激に上昇する。さらに、真空送水管接続部16を通過して真空送水管5内に至ると、略平衡状態で真空ステーションに至る。
【0081】
この排水状態では、真空弁10の止水弁駆動アクチュエータ27は、圧力室37内が真空送水管5内の真空度と同一の高真空度(>Ps)であり、基準圧室36が大気圧状態である。そして、この圧力室37内と基準圧室36の差圧による力は、第1付勢スプリング40の付勢力より大きい。一方、コントローラ50の第2アクチュエータ95は、第1受圧室123が、真空送水管5内の真空度より低い第1検圧室20内の真空度と同一の真空度である。また、第2受圧室124が、第1検圧室20内の真空度より更に低い第2検圧室24内の真空度と同一の真空度である。そして、この状態でのこれらの差圧ΔPによる押圧力は、第2付勢スプリング128の付勢力より大きい。
【0082】
排水により貯水枡1内の汚水が吸水管8の下端近傍まで低下すると、吸水管8からの吸水に空気が混入(分離吸引)し、図10Dに示すように、排水経路の真空度が略一様(同比率)に低下する。即ち、真空弁10の圧力室37内の真空度は、第1および第2変圧室56,58を介して真空送水管5の真空度と同等に低下する。また、コントローラ50の第2アクチュエータ95は、第1受圧室123の真空度が第1検圧室20の真空度と同等に低下し、第2受圧室124の真空度が第2検圧室24の真空度と同等に低下する。
【0083】
但し、この状態では、真空弁10の止水弁駆動アクチュエータ27の圧力室37と基準圧室36の差圧による力は、第1付勢スプリング40の付勢力より十分に大きいため、第1付勢スプリング40が伸長することはない。一方、コントローラ50の第2アクチュエータ95は、第1および第2検圧室20,24の真空度が一様に低下するに従って、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPが低下する。
【0084】
そして、貯水枡1内の汚水が第2水位LWLまで排水されて空気の混入量が増え、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPによる押圧力が第2付勢スプリング128の付勢力以下になると、図10Eに示すように、第2アクチュエータ95が閉作動する。これにより、切換用弁体70が閉位置に移動される。その結果、コントローラ50は、第1変圧室56と第2変圧室58との連通が遮断され、第2変圧室58がシール部材82の貫通孔83および挿通溝67を通して大気開放した状態になる。よって、真空弁10の圧力室37内が、設定真空度Psを下回る大気圧状態となる。
【0085】
その結果、図10Fに示すように、真空弁10は、止水用弁体26が閉位置に移動され、閉弁状態となる。そうすると、真空弁10の吸水部12から吐出部14を経た排水が停止される。また、弁口19の遮断により、第1検圧室20の真空度が設定真空度Ps以上の高真空度となり、第2検圧室24が大気圧状態となる。その結果、第2アクチュエータ95は、第1受圧室123が高真空度となり、第2受圧室124が大気圧状態となる。よって、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPによる押圧力が、第2付勢スプリング128の付勢力を上回る。よって、第2ピストンカップ125を介して閉作動部材129が後退位置に移動し、図10Aに示す状態になる。
【0086】
次に、真空度が異なる真空送水管5に接続した真空弁ユニットの差圧ΔPの変移について説明する。
【0087】
図11に示すように、真空弁10が閉弁している場合、真空度が−70kPaの真空送水管5に接続された真空弁装置は、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPは70kPaである。また、真空度が−50kPaの真空送水管5に接続された真空弁装置は、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPは50kPaである。さらに、真空度が−25kPaの真空送水管5に接続された真空弁装置は、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPは25kPaである。
【0088】
そして、真空弁10が第1アクチュエータ90によって開弁されると、真空送水管5の真空度に拘わらず、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPは、略15kPaまで低下する。その後、汚水が第2水位まで低下して空気が混入し始めると、差圧ΔPは徐々に低下する。そして、差圧ΔPが第2付勢スプリング128の付勢力に相当する5kPaまで低下すると、第2アクチュエータ95によって真空弁10が閉弁される。その結果、差圧ΔPは、真空送水管5の真空度である70kPa、50kPaまたは25kPaに上昇する。
【0089】
このように、本発明の真空弁装置は、真空弁10の弁座18の下流側に真空送水管5より開口面積が大きい第1検圧室20を設けているため、排水状態では、第1検圧室20内の真空度を真空送水管5内の真空度より低くすることができる。しかも、本実施形態では、真空弁10の弁座18の上流側に弁口19の開口面積より開口面積が大きい第2検圧室24を設けている。そして、第2アクチュエータ95は、第1検圧室20に連通した第1受圧室123と、第1受圧室123より真空度が低い第2検圧室24に連通した第2受圧室124の差圧ΔPによって、真空弁10を開弁状態から閉弁状態に切り換える構成としている。
【0090】
その結果、第1および第2受圧室123,124の差圧ΔPを小さくすることができる。しかも、この差圧ΔPは、真空送水管5の実際の真空度と大気圧との差圧より小さく保たれる。よって、真空送水管5内の実際の真空度に拘わらず、共通した真空弁装置を設置することができる。また、差圧ΔPが小さいため、差圧ΔPによって動作させる第2付勢スプリング128の付勢力も小さくすることができる。よって、第2アクチュエータ95の第2付勢スプリング128による設定誤差も小さくなるため、確実に作動させることができる。
【0091】
また、本実施形態のコントローラ50は、真空弁10の圧力室37を切換弁機構51の第2変圧室58だけに接続した構成である。また、切換弁機構51の第2変圧室58は、第1検圧室20の下流側の真空送水管5に接続した第1変圧室56に連通したものである。そして、これら第1および第2変圧室56,58は、1つの切換用弁体70を、第1アクチュエータ90によって開作動し、第2アクチュエータ95によって閉作動することにより、開位置および閉位置に切り換えられる。しかも、切換用弁体70は、アクチュエータ90,95の非作動時には、トグル部材85によって開位置または閉位置に保持される。そのため、切換用弁体70を開位置に移動させ、止水用弁体26を開位置に移動させた真空弁10の開弁状態では、切換弁機構51以外の構成により、真空弁10の圧力室37内の真空度が、閉作動する設定真空度Psより低くなることはない。
【0092】
そして、切換弁機構51には、ケーシング52の第2変圧室58に、大気と連通する貫通孔83を有するシール部材82を配設し、このシール部材82の貫通孔83を切換用弁体70で開閉するため、第2アクチュエータ95により切換用弁体70を閉位置に移動させると、第2変圧室58を介して真空弁10の圧力室37に大気を導入できる。そのため、確実に真空弁10を閉弁作動させることができる。
【0093】
さらに、本実施形態の第2アクチュエータ95は、第2付勢スプリング128の付勢力を、調整機構110の締付部材117により調整できる構成としている。そのため、閉作動部材129を動作させる差圧ΔPの設定値の微調整が可能となる。その結果、真空弁ユニットの設置場所の環境(スカム量)に応じて、吸引空気量を調整できる。そして、スカムが多い真空弁ユニットでは、吸引空気量を増やすことにより、残留スカムが硬化することによる排水トラブルを確実に防止できる。また、スカムが少ない真空弁ユニットでは、吸引空気量を減らすことにより、省エネ運転を実現できるとともに、他の真空弁ユニットの真空度低下を抑制できる。
【0094】
なお、フロート91を利用した第1アクチュエータ90は、切換用弁体70の開作動のみを行うものである。そのため、切換用弁体70を開作動した後は、貯水枡1の水位を検出する必要がない。即ち、フロート91は、貯水枡1内に汚水が溜められている状況下で、第1水位HWLを検出するための極めて小さい範囲のみを検出できればよい。よって、フロート91は、貯水枡1内の汚水量が少ない状態では、汚水の水面の上方、即ち、空中に浮いて汚水に接しない状態とすることができる。これにより、汚水の水面に浮遊するスカムがフロート91に付着することを防止できる。そのため、フロート91の上下動が妨げられて発生する動作不良を防止できる。
【0095】
図12(A)は第2実施形態の真空弁装置のコントローラ50を示す。このコントローラ50は、第2アクチュエータ95の第2受圧室124に、大気と連通する大気連通部131を設け、この大気連通部131の開口に、大気の取り入れ量を調節可能な吸気部材133を配設したものである。
【0096】
具体的には、図12(B)に示すように、第2アクチュエータ95を構成する第2下側ケース97には、ブラケット部69の外側に位置するように、第2受圧室124内に連通する筒状の大気連通部131が設けられている。この大気連通部131の横には、筒状をなす吸気部材取付部132が設けられている。
【0097】
吸気部材133は、円板状をなし、その中央には吸気部材取付部132に回転可能に装着する装着部134が設けられている。この装着部134の外周部には、大気連通部131の下端内周部に嵌合する嵌合部135が設けられている。本実施形態では、8個の嵌合部135が設けられ、1個の嵌合部135を除く7個の嵌合部135には、直径がそれぞれ異なる吸気孔136a〜136gが設けられている。具体的には、吸気孔136a〜136gの順番で、内径が徐々に小さくなるように構成している。そして、吸気孔136aと吸気孔136gを設けた嵌合部135,135の間に位置する嵌合部135には、吸気孔を設けない(取入量「0」)構成としている。
【0098】
この第2実施形態のコントローラ50は、第2受圧室124内に微量の空気を取り込むことにより、真空度を低下させることができる。即ち、第1および第2検圧室20,24の差圧ΔPを大きくすることができる。よって、第2付勢スプリング128が作動する設定を調整できる。よって、第2アクチュエータ95による真空弁10の閉作動を目標値に確実に設定できる。
【0099】
なお、本発明の真空弁装置は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0100】
例えば、前記実施形態では、コントローラ50は1個の切換用弁体70を第1および第2アクチュエータ90,95で開閉作動させる構成としたが、第1および第2アクチュエータ90,95に、それぞれ切換用の弁体を有する切換機構を設ける構成としてもよい。
【0101】
また、前記実施形態では、第1および第2検圧室20,24を真空弁10を構成する管体11に形成したが、真空送水管5に下流側より通水可能な開口面積が大きい第1検圧室20を設け、吸水管8に下流側より通水可能な開口面積が大きい第2検圧室24を設けてもよい。また、第2検圧室24は、必ずしも設けることなく、第2受圧室124は大気開放した状態としてもよい。
【0102】
さらに、前記実施形態では、第1検圧室20には、排水の漏出を防止するために邪魔板22A.Bを設けたが、気体の通過は可能で、液体の通過は不可能な部材を配設する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…貯水枡 5…真空送水管
8…吸水管 10…真空弁
18…弁座 19…弁口
20…第1検圧室 24…第2検圧室
26…止水用弁体 27…止水弁駆動アクチュエータ
35…第1ダイヤフラム 36…基準圧室
37…圧力室 38…第1ピストンカップ
40…第1付勢スプリング 41…開閉作動部材
50…コントローラ 51…切換弁機構
52…ケーシング 56…第1変圧室
58…第2変圧室 70…切換用弁体
78…弁パッキン 82…シール部材
83…貫通孔 85…トグル部材
90…第1アクチュエータ 91…フロート
93…開作動部材 95…第2アクチュエータ
96…切換用シリンダ 110…調整機構
111…スライド部材 117…締付部材
122…第2ダイヤフラム 123…第1受圧室
124…第2受圧室 125…第2ピストンカップ
128…第2付勢スプリング 129…閉作動部材
130A〜130D…空気チューブ 131…大気連通部
133…吸気部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が貯水枡に開口した吸水管の他端と真空吸引される真空送水管との間に介設され、圧力室内が設定真空度以上になると弁座から弁体が離れて開弁されるとともに、前記圧力室内が設定真空度を下回ると前記弁座に前記弁体が着座して閉弁される真空弁と、
前記貯水枡内の水位が前記吸水管の一端より高い予め設定した第1水位になると、前記真空弁の圧力室内が設定真空度以上になるように切り換える第1アクチュエータと、
前記貯水枡内の水位が前記吸水管の一端から空気と一緒に液体を吸引する第2水位になると、前記真空弁の圧力室内が設定真空度を下回るように切り換える第2アクチュエータと、
を備えた真空弁装置において、
前記真空弁の弁座の下流側に、前記真空送水管の開口面積より流体が通過可能な開口面積が大きい第1検圧室を設け、かつ、
前記第2アクチュエータを、前記真空弁の第1検圧室に連通される第1受圧室とこの第1受圧室内より真空度が低い第2受圧室に区画し、前記貯水枡内の水位が第2水位になると、前記第1および第2受圧室の差圧によって前記真空弁の圧力室内が設定真空度を下回るように切り換えるようにしたことを特徴とする真空弁装置。
【請求項2】
前記真空弁の弁座の上流側に、この弁座内の弁口の開口面積より流体が通過可能な開口面積が大きい第2検圧室を設け、この第2検圧室に前記第2アクチュエータの第2受圧室を連通させたことを特徴とする請求項1に記載の真空弁装置。
【請求項3】
前記第2アクチュエータの第2受圧室に、大気と連通する大気連通部を設け、この大気連通部の開口に、大気の取入量を調節可能な吸気部材を配設したことを特徴とする請求項2に記載の真空弁装置。
【請求項4】
前記第1検圧室の下流側に連通される第1変圧室および前記真空弁の圧力室に連通される第2変圧室を形成したケーシングと、前記第1および第2変圧室を連通させる開位置および前記第1および第2変圧室の連通を遮断する閉位置の間を直動可能に前記ケーシング内に配設した切換用弁体と、この切換用弁体を開位置および閉位置に予め設定された保持力で保持する保持機構とを有する切換弁機構を設け、
前記貯水枡内の水位が第1水位になると、前記第1アクチュエータによって前記切換弁機構の切換用弁体を閉位置から開位置へ前記保持機構の保持力に抗して移動させるとともに、前記貯水枡内の水位が第2水位になると、前記第2アクチュエータによって前記切換弁機構の切換用弁体を開位置から閉位置へ前記保持機構の保持力に抗して移動させることにより、前記第1および第2アクチュエータによって前記真空弁の圧力室内の真空度を切り換えるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空弁装置。
【請求項5】
前記切換弁機構のケーシングの第2変圧室は、大気と連通する貫通孔を有するシール部材を備え、
前記切換用弁体は、開位置に移動した状態で前記シール部材の貫通孔を閉塞して前記第2変圧室を大気と遮断し、閉位置に移動した状態で前記シール部材の貫通孔を開放して前記第2変圧室を大気と連通させることを特徴とする請求項4に記載の真空弁装置。
【請求項6】
前記第2アクチュエータは、
前記第1受圧室内に配設した切換用ピストンカップと、
前記第1および第2受圧室内の差圧による前記切換用ピストンカップの押圧力が付勢力を上回ると収縮する一方、差圧による前記切換用ピストンカップの押圧力が付勢力以下になると伸張する付勢スプリングとを有し、
前記切換用ピストンカップに、前記付勢スプリングの付勢力によって前記切換用弁体を開位置から閉位置に移動させる閉作動部材を連結したことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の真空弁装置。
【請求項7】
前記第2アクチュエータに、前記付勢スプリングの付勢力を調整する調整機構を設けたことを特徴とする請求項6に記載の真空弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−77473(P2012−77473A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221639(P2010−221639)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】