説明

真空成型機、真空成型機用基板及び真空成型方法

【課題】被着させるフィルムがドローダウン状態となった場合でも、型当り現象が生じるのを回避し、成型後に型当りの痕跡として残ったり、エアー溜まりが生じたり、皺が発生したりするのを確実に回避して、成型製品の歩留まりを向上させる。
【解決手段】テーブル3上にセットした被着体Wの表面近傍を減圧環境とし、加熱した加飾フィルムF3を近接させることで、被着体Wの表面に加飾フィルムF3を密着させて成型する真空成型機において、セットした被着体Wの周囲外方に、被着体の最大高さよりも高い突出高さで加飾フィルムF3の近接方向に突出した枠部11を設けてなり、前記枠部11が、加飾フィルムF3を近接させる際に被着体Wよりも先に加飾フィルムF3と接触し、被着体Wの周囲外方にて加飾フィルムF3を押し上げて張り拡げた状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート材を真空状態で被着体に被着して成型する真空成型機、この真空成型機を用いた真空成形工程において使用する真空成形機用基板、あるいはそのような真空成型機用基板を使用した真空成型方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外気の影響を受けにくい真空成型装置として、上下にチャンバーボックスを具備すると共に、前記両チャンバーボックス内で被成型物1の成型を行なう真空成型装置であって、上チャンバーボックスと下チャンバーボックスは接合・離反が可能とされると共に、上チャンバーボックス内にヒータが組み込まれ、接合した両チャンバーボックス内で前記ヒータにより被成型物を加熱するようにしたものが開示される(特許文献1参照)。
【0003】
これは接合した両チャンバーボックス内で前記ヒータにより被成型物を加熱するようにし、前記ヒータとして近赤外線ヒータを用いていることで、閉塞された空間内で被成型物を加熱・成型することができるので、成型時に従来よりも外気の影響を受けにくい真空成型装置を提供することができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−079573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この真空成型装置では保護プラスチックシート22が外気の雰囲気温度の変動の影響を受けにくいものの、ヒーターによって加熱された被成形物(プラスチックシート)はその材質によって軟化したドローダウン状態となり、膨張部分が波打ったり中央部が垂れ下がったりする場合がある。被成形物(プラスチックシート)がこのドローダウン状態となったときに、垂れ下がったり波打ったりした部分が成型前に型(FRP浴槽素形品)に接する、いわゆる型当り(ワック)現象が生じると、その部分が成型後に型当りの痕跡として残ったり、或いはエアー溜まりが生じたり、或いは皺が発生したりする可能性が高くなる。このような痕跡やエアー溜まり、皺の発生は成型不良として成型製品の歩留まりに影響してしまうが、型或いは真空成型機の形状によっては、被成形物と型との距離を調節するのは困難であった。特に平面積が広く高さの低い扁平の型を使用する場合には型当りが発生しやすかった。
【0006】
また、型−被成形物間の圧力を低くする真空成型によって成形する場合には、加熱された被成形物(プラスチックシート)は、成型時に瞬間的に型の形状或いは型の周囲の台形状に沿って伸長したときに破れたり皺が発生してしまうことがある。破れた場合、皺が発生した場合のいずれも真空成型の失敗となってしまう。
【0007】
そこでこの発明は、被着させるフィルム状のシートがドローダウン状態となった場合でも、いわゆる型当り(ワック)現象が生じるのを回避し、型当り(ワック)の部分が成型後に型当りの痕跡として残ったり、或いはエアー溜まりが生じたり、或いは皺が発生したりするのを確実に回避して、成型製品の歩留まりを向上させる真空成型機、真空成型機用基板或いは真空成型方法を提供することを課題とする。
【0008】
また被着させるフィルム状のシートが成型時に瞬間的に型の形状或いは型の周囲の台形状に沿って伸長したときにも破れにくく、皺が発生しにくい真空成型機、真空成型機用基板或いは真空成型方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記課題を解決すべく以下(1)〜(5)の手段を講じている。
【0010】
(1)本発明の真空成型機は、テーブル上にセットした被着体の表面近傍を減圧環境とし、加熱した加飾フィルムを近接させることで、被着体の表面に加飾フィルムを密着させて成型する真空成型機において、
セットした被着体の周囲外方に、被着体の最大高さよりも高い突出高さで加飾フィルムの近接方向に突出した枠部を設けてなり、
前記枠部が、加飾フィルムを近接させる際に被着体よりも先に加飾フィルムと接触し、被着体の周囲外方にて加飾フィルムを押し上げて張り拡げた状態とすることを特徴とする真空成型機。
【0011】
枠部が加飾フィルムよりも先に接触することで、図1上図(c1)に示すように、ドローダウンしたフィルムを接触前よりも張り拡げた状態としてたわみ量や波打ち量を減少させる。加飾フィルムの一部分が誤って先に被着体に接触することで生じる、いわゆる“型当り”現象による型当り部分の痕跡の発生を防止することができる。
【0012】
(2)前記枠部は、被着体を載置する底板10の外周部を多角形状に囲って固定された側枠材12を具備してなり、
側枠材12は、少なくとも前記多角形状を構成するすべての角部において、枠内側に、多角形状の中央寄りに傾斜した内傾斜面12tを有してなることが好ましい。このような応力集中の生じ易い多角形状の角部において枠内側の面が内傾斜することで、成型時に高圧の負荷がかかる枠部の強度を容易に確保することで、耐久性のある真空成型構造を得ることができる。
【0013】
また被着させるフィルム状のシートが成型時に瞬間的に型の形状或いは型の周囲の台形状に沿って伸長したときにも、側枠部を形成することで破れにくく、皺が発生しにくいものとなる。
【0014】
(3)前記いずれかの枠部は、被着体を載置する底板10の外周部を囲って固定された側枠材12を具備してなり、
側枠材12は、枠内側の収容部寄りに傾斜した内傾斜面12tを有した折曲柱体が底板上に固定されるものであって、
一側辺に前記内傾斜面12tによる傾斜辺を有すると共に、前記一側辺と対向する他側辺に、一側辺と反対方向へ傾斜した傾斜辺又は垂直辺を他側辺に有してなることが好ましい。
このような折曲柱体の断面形状は、外周部を囲う全長に亘って、一側辺が内傾斜すると共に他側辺が外傾斜した内外傾斜形状である。底板上に内外傾斜形状断面の柱体が底板上に固定されることで、底板上面側が高圧雰囲気となっても枠部がその内外両側から交差方向に負荷を受けるため、側枠材の底板への固定構造の耐久性を高めることができる。また内傾斜面を有することで、真空成型時に底板と枠部の境で伸長しすぎた加飾フィルムが破れてしまうのを、側枠材の伸長方向全長に亘って避けることができる。
【0015】
(4)本発明の真空成型機用基板は、前記いずれか記載の真空成型機のテーブル上に取り外し可能に設置される真空成型機用基板であって、
上面の中央寄りに被着体を載置し得る収容部を有した底板10と、底板の周囲に沿って固定され、底板上に収容された被着体の最大高さよりも高い枠高さにて被着体の周囲外側方を囲う側枠材12とから構成され、側枠材12によって前記枠部を構成することを特徴とする。
【0016】
前記真空成型機に取り外し可能に設置される真空成型機用基板は、被着体の平面形状や最大高さに応じた収容部/内傾斜面を有した形状のものを複数種類作製しておくことで、破れたり皺が発生したりしにくい適切な基板を複数種から選択して設置することができる。特に被着体の形状や加飾フィルムの伸長量に対応して内傾斜面の角度、或いは収容部を構成する底板の平面部の広さを調節したものを使用することができる。例えば収容部の広さに関しては、皺が発生しやすい被着体最大高さ部分での被着体周囲空間を他の部分よりも広く取ると共に、当該収容腔件外縁を構成する側枠材の傾斜角度を他の部分よりも小さく形成することが好ましい。
【0017】
(5)本発明の真空成型方法は、前記(1)(2)(3)のいずれか記載の真空成型機を使用して被着体の表面に加飾フィルムを密着させて成型する真空成型方法であって、
下部に成形空間内に設置した可動テーブル上に真空成型機用基板をセットし、真空成型機用基板の収容部上に被着体を載置する載置ステップと、
加飾フィルムを境として成形空間を上下に仕切り、下部の成形空間内にテーブル、真空成型機用基板及び被着体を密閉する密閉ステップと、
加飾フィルムを加熱する加熱ステップと、
前記密閉ステップによって密閉した下部の成形空間内を上部の成形空間内に対して減圧させて仕切られた成形空間に圧力差を発生させ、テーブル上にセットした被着体の表面近傍をその周囲よりも減圧環境とする圧力調整ステップと、
前記加熱ステップによって加熱された加飾フィルムの下方から、前記載置ステップによって被着体を載置した真空成型用基板及び加熱した加飾フィルムを近接させて被着体の表面に加飾フィルムを密着成型する近接ステップとを具備してなり、
前記近接ステップにおいては、
セットした被着体の周囲外方に、被着体の最大高さよりも高い突出高さで加飾フィルムの近接方向に突出した枠部を設けてなり、
前記枠部が、被着体よりも先に加飾フィルムと接触し、被着体の周囲外方にて加飾フィルムを押し上げて張り拡げた枠部接触状態となり、
この枠部接触状態の次に、被着体が前記張り拡げられた加飾フィルムの表面に密着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の真空成型機、真空成型機用基板或いは真空成型方法は、上記手段によって被着体よりも先に加飾フィルムに接触する枠部を形成することで、被成形物に被着させる加飾シートが加熱によってドローダウン状態となった場合でも、いわゆる型当り(ワック)現象が生じるのを回避し、型当り(ワック)の部分が成型後に型当りの痕跡として残ったり、或いはエアー溜まりが生じたり、或いは皺が発生したりするのを確実に回避して、成型製品の歩留まりを向上させることが可能となった。
【0019】
また被着させるフィルム状のシートが成型時に瞬間的に型の形状或いは型の周囲の台形状に沿って伸長したときにも、側枠部を形成することで破れにくく、皺が発生しにくいものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1の真空成型機に使用する実施例1の真空成型機用基板の斜視図。
【図2】実施例1の真空成型機用基板の正面図。
【図3】実施例1の真空成型機用基板の右側面図。
【図4】実施例1の真空成型機用基板の平面図。
【図5】実施例1の真空成型機用基板の底面図。
【図6】本発明の実施例2の真空成型機に使用する実施例2の真空成型機用基板の斜視図。
【図7】実施例2の真空成型機用基板の正面図。
【図8】実施例1の真空成型機用基板の右側面図。
【図9】実施例1の真空成型機用基板の平面図。
【図10】本発明の実施例1の真空成型機による真空成型方法の各工程図。
【図11】図10(c)における工程の各状態図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を、実施例1,2の真空成型機用基板として示す図1〜9、実施例1の真空成型機及び真空成型方法として示す図10〜11を参照して説明する。
【0022】
図1〜図5に示す実施例1の真空成型機用基板は、被着体Wを収容すると共に真空成型機の可動テーブル上にセットされるものであり、底板10が底穴10Dによって真空成型機の可動テーブル上に設置して一時固定できるものとしている。また矩形の底板10の側周部に沿って、内側面が内傾斜した側部11,13を有し、前記枠部によって、平面視内側の収容部に被着体を収容してなる。
【0023】
真空成型機用基板に収容され、可動テーブル上へセットされた被着体Wは、加熱状態の加飾フィルムが保持された密閉の成形空間内にて、加飾フィルムを境として減圧/加圧環境とされることで被着体の表面形状に沿って、加熱したシート材が真空環境下で被着成型される。このとき真空成型途中においては、枠部が加飾フィルムよりも先に接触することで、図1上図(c1)に示すように、ドローダウンしたフィルムを接触前よりも張り拡げた状態としてたわみ量や波打ち量を減少させる。加飾フィルムの一部分が誤って先に被着体に接触することで生じる、いわゆる“型当り”現象による型当り部分の痕跡の発生を防止することができる。
【0024】
実施例1では略三角形状断面の柱体を使用している。このように側枠材12自体が略三角形状断面であり、天枠材で上面を保護することで、コンパクトでかつ耐圧性に富んだものとなる。
【0025】
(真空成型機)
図10、11に示す真空成型機は、それ自体の上面側に上面開口を有して可動テーブル3を収納する下部成型室21と、下部成型室21の上方に設置され、それ自体の下面側に有した下面開口が前記下部成型室21の上面開口と対向して下部成型室21との相対移動によって密閉状態或いは解放状態の成型空間を形成する上部成型室22と、被着体及び本発明の基板を上部設置したまま下部成型室21内を上下に移動可能な可動テーブル3と、密閉状態の成形空間において下部成型室の室内、上部成型室の室内をそれぞれ減圧、加圧する圧力調整手段と、上部成型室の室内に加飾フィルムを保持する保持手段と、保持した加飾フィルムを加熱する加熱手段とを備える。
【0026】
上部成型室22を構成する上チャンバーボックスと下部成型室21を構成する下チャンバーボックスは接合・離反が可能とされると共に、上チャンバーボックス内にヒータが組み込まれ、接合した両チャンバーボックス内で前記ヒータにより被成型物を加熱するようにしている。
【0027】
下チャンバーボックス21内には真空回路が、上チャンバーボックス2内には真空回路及び圧空回路がそれぞれ配管されている。
上チャンバーボックス22内にはヒータ7が組み込まれており、接合した両チャンバーボックス内で前記ヒータ2により被成型物F(加飾印刷されたシート)を加熱するようにしている。前記ヒータ2として近赤外線ヒータを用いている。この装置によると、気密チャンバー内で被成型物1を加熱することで安定した成型条件を維持することができ、近赤外線ヒータ使用により省エネルギーとすることができる。
【0028】
可動テーブル上へセットされた被着体Wの表面に、加熱したシート材を真空環境下で被着成型する真空成型機の可動テーブル上に設置される基板は、少なくとも、被着体Wを載置しうる底板10と、
底板10の周囲四方から上方へ、所定以上の突出高さ1hで突出形成される枠部(11,13)とを具備してなる。
前記枠部は、底板10に載置された被着体Wの最大高さWhよりも高い突出高さ1hで。被着体Wの周囲外方を所定以上の離間距離をもって囲うものであり、加熱してドローダウン状態となったシート材Fを可動テーブル上方から近接させた際に、前記枠部が、被着体Wの周囲外方にて、被着体Wよりも先にシート材Fに当接してシート材を張架させる。
【0029】
(真空成型機用基板)本発明の真空成型機用基板は、前記いずれか記載の真空成型機のテーブル上に取り外し可能に設置される真空成型機用基板であって、
上面の中央寄りに被着体を載置し得る収容部を有した底板10と、底板の周囲に沿って固定され、底板上に収容された被着体の最大高さよりも高い枠高さにて被着体の周囲外側方を囲う側枠材12とから構成され、側枠材12によって前記枠部を構成することを特徴とする(図1〜図8)。
【0030】
前記真空成型機に取り外し可能に設置される真空成型機用基板は、被着体の平面形状や最大高さに応じた収容部/内傾斜面を有した形状のものを複数種類作製しておくことで、破れたり皺が発生したりしにくい適切な基板を複数種から選択して設置することができる。特に被着体の形状や加飾フィルムの伸長量に対応して内傾斜面の角度、或いは収容部を構成する底板の平面部の広さを調節したものを使用することができる。例えば収容部の広さに関しては、皺が発生しやすい被着体最大高さ部分での被着体周囲空間を他の部分よりも広く取ると共に、当該収容腔件外縁を構成する側枠材の傾斜角度を他の部分よりも小さく形成することが好ましい。
【0031】
(本発明の真空成型機)
本発明の真空成型機は、テーブル上にセットした被着体の表面近傍を減圧環境とし、加熱した加飾フィルムを近接させることで、被着体の表面に加飾フィルムを密着させて成型する真空成型機において、
セットした被着体の周囲外方に、被着体の最大高さよりも高い突出高さで加飾フィルムの近接方向に突出した枠部を設けてなり、
前記枠部が、加飾フィルムを近接させる際に被着体よりも先に加飾フィルムと接触し、被着体の周囲外方にて加飾フィルムを押し上げて張り拡げた状態とすることを特徴とする。
【0032】
枠部が加飾フィルムよりも先に接触することで、図1上図(c1)に示すように、ドローダウンしたフィルムを接触前よりも張り拡げた状態としてたわみ量や波打ち量を減少させる。加飾フィルムの一部分が誤って先に被着体に接触することで生じる、いわゆる“型当り”現象による型当り部分の痕跡の発生を防止することができる。
【0033】
(枠部)
実施例1の枠部は、被着体を載置する底板10の外周部を多角形状に囲って固定された側枠材12を具備してなり、
側枠材12は、枠内側の収容部寄りに傾斜した内傾斜面12tを有した折曲柱体が底板上に固定されるものであって、
一側辺に前記内傾斜面12tによる傾斜辺を有すると共に、前記一側辺と対向する他側辺に、一側辺と反対方向へ傾斜した傾斜辺又は垂直辺を他側辺に有してなる。
このような折曲柱体の断面形状は、外周部を囲う全長に亘って、一側辺が内傾斜すると共に他側辺が外傾斜した内外傾斜形状である。底板上に内外傾斜形状断面の柱体が底板上に固定されることで、底板上面側が高圧雰囲気となっても枠部がその内外両側から交差方向に負荷を受けるため、側枠材の底板への固定構造の耐久性を高めることができる。また内傾斜面を有することで、真空成型時に底板と枠部の境で伸長しすぎた加飾フィルムが破れてしまうのを避けることができる。
【0034】
実施例1及び2の枠部は、被着体を載置する底板10の外周部を多角形状に囲って固定された側枠材12を具備してなり、
側枠材12は、少なくとも前記多角形状を構成するすべての角部において、枠内側に、多角形状の中央寄りに傾斜した内傾斜面12tを有してなる。このような応力集中の生じ易い多角形状の角部において枠内側の面が内傾斜することで、成型時に高圧の負荷がかかる枠部の強度を容易に確保することで、耐久性のある真空成型構造を得ることができる。
【0035】
実施例2の枠部は、三角柱からなるコーナー材を板状の側枠材の四隅に張り付けることで内傾斜面12tを四角形状のコーナーに有してなる。
【0036】
(真空成型方法)本発明の真空成型方法は、前記いずれか記載の真空成型機を使用して被着体の表面に加飾フィルムを密着させて成型する真空成型方法であって、図10に示す以下のステップを有する。
・下部の成形空間内に設置することとなる可動テーブル上に真空成型機用基板をセットし、真空成型機用基板の収容部上に被着体を載置する載置ステップ(図10(a))
・加飾フィルムを境として成形空間を上下に仕切り、下部の成形空間内にテーブル、真空成型機用基板及び被着体を密閉する密閉ステップ(図10(b))
・加飾フィルムを加熱する加熱ステップ(図10(b))
・前記密閉ステップによって密閉した下部の成形空間内を上部の成形空間内に対して減圧させて仕切られた成形空間に圧力差を発生させ、テーブル上にセットした被着体の表面近傍をその周囲よりも減圧環境とする圧力調整ステップ(図10(b))
・前記加熱ステップによって加熱された加飾フィルムの下方から、前記載置ステップによって被着体を載置した真空成型用基板及び加熱した加飾フィルムを近接させて被着体の表面に加飾フィルムを密着成型する近接ステップ(図10(c))
・前記近接ステップによって加飾フィルムが密着成型された後、圧力調整ステップによる圧力差、密閉ステップによる密閉状態を順に又は同時に解除して密着成型した加飾フィルムと被着体の一体成型品を取り出し可能にする解除ステップ(図10(d))
・密着成型した加飾フィルムと被着体の一体成型品のうち、加飾フィルムの余分なはみ出し部分を切除する切除ステップ(図示せず)
(近接ステップ)
特に上記のうち近接ステップにおいては、セットした被着体の周囲外方に、被着体の最大高さよりも高い突出高さで加飾フィルムの近接方向に突出した枠部を設けてなることで、図11に示す以下の2状態を順に経て加飾フィルムの密着成型が行われる。
・枠部が、被着体よりも先に加飾フィルムと接触し、被着体の周囲外方にて加飾フィルムを押し上げて張り拡げた枠部接触状態
・被着体が前記張り拡げられた加飾フィルムの表面に密着した密着成形状態
特に平面積が広く高さの低い扁平の型を使用する場合において、被成形物と型との距離が近い状態となるため型当りが発生しやすかった。このため上記真空成型径或いは真空成型方法は、 高さ15mm以下の扁平形状の被着物において有効に使用される。
【0037】
また内傾斜部面の傾斜角度11θは多くとも80度以下であることが好ましく、特に強度及び枠部の収まりとの関係では、実施例1(図3)のように60度プラスマイナス5度の範囲であって、側枠部11が略直角三角形断面の屈曲柱体からなることが好ましい。このような側枠部にて−被成形物間の圧力を低くする真空成型によって成形する場合には、加熱された被成形物(プラスチックシート)は、成型時に瞬間的に型の形状或いは型の周囲の台形状に沿って伸長したときに破れたり皺が発生してしまうことが少ない。
【0038】
また本発明はヒーター2を備えるため、外気の影響を受けにくい真空成型装置となっている。その他本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、一部要素の抽出、他実施例の要素または代替物への置換、削除、或いは実施例間の構成同士の重畳的組み合わせ等、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
3 可動テーブル
W 被着体
F1、F2、F3 加飾フィルム
被着体の最大高さWh
突出高さ1h
底板10
側枠材12
天枠材13
12t 内傾斜面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上にセットした被着体の表面近傍を減圧環境とし、加熱した加飾フィルムを近接させることで、被着体の表面に加飾フィルムを密着させて成型する真空成型機において、
セットした被着体の周囲外方に、被着体の最大高さよりも高い突出高さで加飾フィルムの近接方向に突出した枠部を設けてなり、
前記枠部が、加飾フィルムを近接させる際に被着体よりも先に加飾フィルムと接触し、被着体の周囲外方にて加飾フィルムを押し上げて張り拡げた状態とすることを特徴とする真空成型機。
【請求項2】
前記枠部は、被着体を載置する底板10の外周部を多角形状に囲って固定された側枠材12を具備してなり、
側枠材12は、少なくとも前記多角形状を構成するすべての角部において、枠内側に、多角形状の中央寄りに傾斜した内傾斜面12tを有してなる請求項1記載の真空成型機。
【請求項3】
前記枠部は、被着体を載置する底板10の外周部を囲って固定された側枠材12を具備してなり、
側枠材12は、枠内側の収容部寄りに傾斜した内傾斜面12tを有した折曲柱体が底板上に固定されるものであって、
一側辺に前記内傾斜面12tによる傾斜辺を有すると共に、前記一側辺と対向する他側辺に、一側辺と反対方向へ傾斜した傾斜辺又は垂直辺を他側辺に有してなる請求項1又は2記載の真空成型機。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか記載の真空成型機のテーブル上に取り外し可能に設置される真空成型機用基板であって、
上面の中央寄りに被着体を載置し得る収容部を有した底板10と、底板の周囲に沿って固定され、底板上に収容された被着体の最大高さよりも高い枠高さにて被着体の周囲外側方を囲う側枠材12とから構成され、側枠材12によって前記枠部を構成することを特徴とする真空成型機用基板。
【請求項5】
請求項1,2,3のいずれか記載の真空成型機を使用して被着体の表面に加飾フィルムを密着させて成型する真空成型方法であって、
下部に成形空間内に設置した可動テーブル上に真空成型機用基板をセットし、真空成型機用基板の収容部上に被着体を載置する載置ステップと、
加飾フィルムを境として成形空間を上下に仕切り、下部の成形空間内にテーブル、真空成型機用基板及び被着体を密閉する密閉ステップと、
加飾フィルムを加熱する加熱ステップと、
前記密閉ステップによって密閉した下部の成形空間内を上部の成形空間内に対して減圧させて仕切られた成形空間に圧力差を発生させ、テーブル上にセットした被着体の表面近傍をその周囲よりも減圧環境とする圧力調整ステップと、
前記加熱ステップによって加熱された加飾フィルムの下方から、前記載置ステップによって被着体を載置した真空成型用基板及び加熱した加飾フィルムを近接させて被着体の表面に加飾フィルムを密着成型する近接ステップとを具備してなり、
前記近接ステップにおいて、セットした被着体の周囲外方に、被着体の最大高さよりも高い突出高さで加飾フィルムの近接方向に突出した枠部が設けられ、
前記枠部が、被着体よりも先に加飾フィルムと接触し、被着体の周囲外方にて加飾フィルムを押し上げて張り拡げた枠部接触状態となり、
この枠部接触状態の次に、被着体が前記張り拡げられた加飾フィルムの表面に密着することを特徴とする真空成型方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−96416(P2012−96416A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244869(P2010−244869)
【出願日】平成22年10月31日(2010.10.31)
【出願人】(598163628)布施真空株式会社 (5)
【Fターム(参考)】