説明

真空断熱材を備えた冷蔵庫

【課題】放熱パイプからの断熱特性の向上と、放熱パイプの反り応力による直接的な接触防止とを果たして、真空断熱材の信頼性を確保すること。
【解決手段】外箱21と内箱22の間で外箱側に配設された真空断熱材50と、内箱側の発泡断熱材23と、外箱の内面側に配設された放熱パイプ90と、を備えた冷蔵庫であって、真空断熱材50は放熱パイプ90を配設するためにその表面に凹部溝50mを設け、凹部溝50mには放熱パイプ90の熱を断熱するように断熱塗料60にて断熱コーティングが施され、断熱コーティングした凹部溝50mと放熱パイプ90の間には隙間空間が形成されていること。凹部溝の外に、放熱パイプの熱によって温度上昇する外箱の放熱範囲に対面する真空断熱材の表面にも断熱コーティングが施されること。断熱コーティングの範囲は、放熱パイプの温度に対応して当該範囲の拡がりが変更されて決定されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材を備えた冷蔵庫に係わり、特に、冷蔵庫に適用される真空断熱材と放熱パイプの配置と構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護が大きく叫ばれている雰囲気において、家電製品特に冷蔵庫に関する省エネルギー化はますます重要となってきている。省エネルギー化を果たすために、無駄な熱の授受を防ぐ目的での断熱材の高性能化がある。断熱材の高性能化の例として、多孔質構造の芯材をアルミ箔ラミネートフィルム製の外被材で覆って内部を減圧封止する真空断熱材があり、電気冷蔵庫などに適用されている。例えば、冷蔵庫は、鉄板からなる外箱と、ABS樹脂からなる内箱と、外箱と内箱によって形成される空間に充填された発泡断熱材とからなる断熱壁において、断熱壁内部に予め真空断熱材を取り付け、発泡断熱材とともに一体構造体とする方法により適用している。
【0003】
また、冷蔵庫においては、凝縮器からキャピラリーチューブに至る放熱パイプが、冷蔵庫の天板、背面板、側面板等の各内面に沿って配設され、これらの各種板が放熱板として放熱パイプの熱を庫外に放出している。
【0004】
そこで、冷蔵庫の外箱と内箱によって形成される空間内における真空断熱材と放熱パイプの配置に関する従来技術として、例えば特許文献1には、真空断熱材と外箱の間に配設された放熱パイプが真空断熱材の表面に押し込まれて埋設される構成が開示されている。この特許文献1によると、真空断熱材の表面に形成される放熱パイプ用の真空断熱材溝は従来に比べ狭小化でき、外箱と放熱パイプの密着面積を増加できるため、放熱能力を増加し省エネ性を向上させることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−198622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に開示の技術によると、放熱パイプが真空断熱材の表面に押し込まれて埋設されるので、放熱パイプが常時、真空断熱材の表面に接触し真空断熱材は加熱されるため、真空断熱材の断熱性能としての信頼性は低下する。また、外箱と放熱パイプの密着面積を増加させるためには常時、真空断熱材の表面が放熱パイプの反り応力を受けることになり、さらに真空断熱材の信頼性は低下することになる。
【0007】
本発明は、真空断熱材の表面に放熱パイプが接触することにより加熱されること、さらに放熱パイプの反り応力を受けることによる真空断熱材の信頼性の低下を防ぎ、また冷蔵庫としての放熱性能を向上させるようにした冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は次のような構成を採用する。
外箱と内箱の間で前記外箱側に配設された真空断熱材と、前記内箱側に配設された発泡断熱材と、前記外箱の内面側に配設された放熱パイプと、を備えた冷蔵庫であって、前記真空断熱材は、前記放熱パイプを配設するためにその表面に凹部溝を設け、前記凹部溝には、前記放熱パイプの熱を断熱するように断熱塗料にて断熱コーティングが施され、前記断熱コーティングした前記凹部溝と前記放熱パイプの間には隙間空間が形成されている構成とする。
【0009】
また、前記冷蔵庫において、前記凹部溝に加えて、前記放熱パイプの熱によって温度上昇する外箱の放熱範囲に対面する真空断熱材の表面にも前記断熱塗料にて断熱コーティングが施される構成とする。さらに、前記真空断熱材の表面に前記断熱コーティングが施される範囲は、前記放熱パイプの熱による温度の高低に対応して当該範囲の拡がりの長短が変更されて決定される構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、真空断熱材の凹部溝に設けた断熱コーティングと凹部溝による隙間空間とによって、放熱パイプからの断熱特性の向上と、放熱パイプの反り応力による直接的な接触防止とを果たして、真空断熱材の信頼性を確保し、引いては冷蔵庫の放熱特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る真空断熱材を備えた冷蔵庫の正面外観図である。
【図2】本実施形態に係る真空断熱材を備えた冷蔵庫の側面断面図であり、図1のA−A線の断面矢視図である。
【図3】本実施形態に係る冷蔵庫に備えられた真空断熱材の基本的構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材及び放熱パイプの取付状態と配置を説明する図である。
【図5】本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材及び放熱パイプの取付状態と配置の具体的構成を示す図である。
【図6】本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材溝部及びその近傍への断熱コーティング範囲を示す具体的構造図である。
【図7】本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材溝部及びその近傍への断熱コーティング範囲を変更した具体的構造図である。
【図8】従来技術に関する冷蔵庫における真空断熱材及び放熱パイプの取付状態と配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る冷蔵庫とそれに備えられた真空断熱材の概要について、まず、図1〜図3を参照しながら以下説明する。図1は本発明の実施形態に係る真空断熱材を備えた冷蔵庫の正面外観図であり、図2は本実施形態に係る真空断熱材を備えた冷蔵庫の側面断面図であり、図1のA−A線の断面矢視図であり、図3は本実施形態に係る冷蔵庫に備えられた真空断熱材の基本的構成を示す断面図である。
【0013】
図1に示す本実施形態に係る真空断熱材を備えた冷蔵庫1は、図2に示すように、上から順に、冷蔵室2、製氷室3a及び上段冷凍室3b、下段冷凍室4、野菜室5を有している。図1に示す符号6〜9は、上述した各室の前面開口部を閉塞する扉であり、上から順に、扉用ヒンジ10等を中心に回動する冷蔵室扉6a,6b、製氷室扉7a及び上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9を表している。冷蔵室扉6a,6b以外は全て引き出し式の扉であり、これらの引き出し式扉7〜9は扉を引き出すと、各室を構成する容器が扉と共に引き出されてくる。各扉6〜9には冷蔵庫本体1とを密閉するためのパッキン11を備え、各扉6〜9の室内側外周縁に取り付けられている。
【0014】
また、冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3bとの間を区画断熱するために仕切断熱壁12を配置している。製氷室3a及び上段冷凍室3bと下段冷凍室4との間は、温度帯が同じであるため区画断熱する仕切断熱壁ではなく、パッキン11受面を形成した仕切り部材13を設けている。下段冷凍室4と野菜室5との間には区画断熱するための仕切断熱壁14を設けている。基本的に冷蔵、冷凍等の貯蔵温度帯の異なる部屋の仕切りには仕切断熱壁を設置している。
【0015】
なお、箱体20内には上から冷蔵室2、製氷室3a及び上段冷凍室3b、下段冷凍室4、野菜室5の貯蔵室をそれぞれ区画形成しているが、各貯蔵室の配置については特にこれに限定するものではない。また、冷蔵室扉6a,6b、製氷室扉7a、上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9に関しても回転による開閉、引き出しによる開閉及び扉の分割数等について、特に限定するものではない。
【0016】
箱体20は、外箱21と内箱22とを備え、外箱21と内箱22とによって形成される空間に断熱部を設けて箱体20内の各貯蔵室と外部とを断熱している。外箱21と内箱22の間の空間に真空断熱材50(50a,50b,50d)を配置し、真空断熱材50以外の空間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填してある。
【0017】
また、冷蔵庫の冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3b、冷凍室4と野菜室5を区画する断熱材として、それぞれ仕切断熱壁12,14を配置し、発泡ポリスチレン33と真空断熱材50cで構成されている。この仕切断熱壁12,14については硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填しても良く、特に発泡ポリスチレン33と真空断熱材50cに限定するものではない。
【0018】
また、箱体20の天面後方部には冷蔵庫1の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品41を収納するための凹部40が形成されており、電気部品41を覆うカバー42が設けられている。カバー42の高さは外観意匠性と内容積確保を考慮して、外箱21の天面とほぼ同じ高さになるように配置している。特に限定するものではないが、カバー42の高さが外箱の天面よりも突き出る場合は10mm以内の範囲に収めることが望ましい。
【0019】
これに伴って、凹部40は断熱材23側に電気部品41を収納する空間だけ窪んだ状態で配置されるため、断熱厚さを確保するため必然的に内容積が犠牲になってしまう。内容積をより大きくとると凹部40と内箱22間の断熱材23の厚さが薄くなってしまう。このため、凹部40の断熱材23中に略Z形状に成形した1枚の真空断熱材50aを配置して断熱性能を確保、強化している。なお、カバー42は外部からのもらい火や何らかの原因で発火した場合等を考慮し鋼板製としている。
【0020】
また、箱体20の背面下部に配置された圧縮機30、凝縮機31は発熱の大きい部品であるため、庫内への熱侵入を防止するため、底板21d側に真空断熱材50dを配置している。
【0021】
冷蔵庫1の冷蔵室2、冷凍室(3a,3b,4)、野菜室5等の各室を所定の温度に冷却するために、冷凍室4の背側には冷却器28が備えられており、この冷却器28、圧縮機30、凝縮機31、及び図示しないキャピラリーチューブが、冷凍サイクルの構成要素である。冷却器28の上方には、冷却器28にて冷却された冷気を冷蔵庫内に循環して所定の低温温度を保持する送風機27が配設されている。
【0022】
圧縮機30、凝縮器31からキャピラリーチューブに至る配管からなる放熱パイプ90(図4を参照)が、外箱21の天板21a、背面板21b、側面板21e等の各内面に沿って配設され、天板21a、背面板21b、側面板21e等を放熱板として放熱パイプ90の熱を庫外に放出している。
【0023】
次に、図3を用いて、冷蔵庫1の断熱性能の維持、強化に用いられる真空断熱材50の構成を説明する。真空断熱材50は、芯材51と、芯材51を圧縮状態に保持するための内包材52(内包材52は省略されてもよい)と、内包材52で圧縮状態に保持した芯材51を被覆するガスバリヤ層を有する外被材53と、吸着剤54と、から構成されている。真空断熱材50の片面には、放熱パイプ90を配置するための溝部50mが設けられている。
【0024】
真空断熱材50を製造するに際しては、外被材53を2枚準備し、外被材53のうちで熱溶着可能な内層フィルム面同士を対向させ、その間に芯材51を内包するように配置する。芯材51は平面からみて四角形状で薄い矩形の直方体に形成されている。2枚の外被材53は同面積で且つ同形状に作成されており、芯材51を内包させて熱溶着フィルムの側縁辺から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせる。熱溶着部を含む外被材をその外方側の四辺で折り曲げて折曲部を形成し、袋状を構成する。本実施形態において、芯材51についてはバインダー等で接着や結着していない無機繊維の積層体として平均繊維径4μmのグラスウールを用いた。
【0025】
芯材51に、無機系繊維材料の積層体を使用することによりアウトガスが少なくなるため、断熱性能的に有利であるが、特にこれに限定するものではなく、例えばセラミック繊維やロックウール、グラスウール以外のガラス繊維等の無機繊維等でもよい。芯材51の種類によっては内包材52を不要としてもよい。
【0026】
また、芯材51については、無機系繊維材料の他に、有機系樹脂繊維材料を用いることができる。有機系樹脂繊維の場合、耐熱温度等をクリヤーしていれば特に使用に際しては制約されるものではない。具体的には、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等をメルトブローン法やスパンボンド法等で1〜30μm程度の繊維径になるように繊維化するのが一般的であるが、繊維化できる有機系樹脂や繊維化方法であれば特に問うものではない。
【0027】
外被材53のラミネート構成についてはガスバリヤ性を有し、熱溶着可能であれば特に限定するものではないが、本実施形態においては、表面保護層、ガスバリヤ層1、ガスバリヤ層2、熱溶着層の4層構成からなるラミネートフィルムとし、表面保護層は保護材の役割を持つ樹脂フィルムとし、ガスバリヤ層1は樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、ガスバリヤ層2は酸素バリヤ性の高い樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、ガスバリヤ層1とガスバリヤ層2は金属蒸着層同士が向かい合うように貼り合わせている。熱溶着層については表面保護層と同様に吸湿性の低いフィルムを用いた。
【0028】
具体的には、表面保護層を二軸延伸タイプのポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の各フィルム、ガスバリヤ層1をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ガスバリヤ層2をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム又はアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルム、或いはアルミ箔とし、熱溶着層を未延伸タイプのポリエチレン、ポリプロピレン等の各フィルムとした。
【0029】
上述した4層構成のラミネートフィルムの層構成や材料については特にこれらに限定するものではない。例えばガスバリヤ層1及び2として、金属箔、或いは樹脂系のフィルムに無機層状化合物、ポリアクリル酸等の樹脂系ガスバリヤコート材、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等によるガスバリヤ膜を設けたものや、熱溶着層には例えば酸素バリヤ性の高いポリブチレンテレフタレートフィルム等を用いても良い。表面保護層についてはガスバリヤ層1の保護材であるが、真空断熱材の製造工程における真空排気効率を良くするためにも、好ましくは吸湿性の低い樹脂を配置するのが良い。また、通常ガスバリヤ層2に使用する金属箔以外の樹脂系フィルムは、吸湿することによってガスバリヤ性が著しく悪化してしまうため、熱溶着層についても吸湿性の低い樹脂を配置することで、ガスバリヤ性の悪化を抑制すると共に、ラミネートフィルム全体の吸湿量を抑制するものである。
【0030】
これにより、先に述べた真空断熱材50の真空排気工程においても、外被材53が持ち込む水分量を小さくできるため、真空排気効率が大幅に向上し、断熱性能の高性能化につながっている。尚、各フィルムのラミネート(貼り合せ)は、二液硬化型ウレタン接着剤を介してドライラミネート法によって貼り合わせるのが一般的であるが、接着剤の種類や貼り合わせ方法には特にこれに限定するものではなく、ウェットラミネート法、サーマルラミネート法等の他の方法によるものでも何ら構わない。
【0031】
また、内包材52については本実施形態では熱溶着可能なポリエチレンフィルム、吸着剤54については物理吸着タイプの合成ゼオライトを用いたが、いずれもこれらの材料に限定するものではない。内包材52についてはポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等、吸湿性が低く熱溶着でき、アウトガスが少ないものであれば良く、吸着剤54については水分やガスを吸着するもので、物理吸着、化学反応型吸着のどちらでも良い。
【0032】
「実施例」
次に、本発明の実施形態に係る真空断熱材を備えた冷蔵庫の実施例について、図4と図5を参照しながら説明する。本実施例を説明する前に、まず、背景技術として特許文献1に開示した従来例を図8を用いて説明する。従来例では、外箱101と内箱102との間の空間において、外箱101に密着して備えられた真空断熱材103と放熱パイプ104とが設置され、放熱パイプ104は真空断熱材103の表面凹部溝105に押し込まれて埋設され、内箱102と真空断熱材103の間にはウレタン断熱材106が充填されている。図8に示す従来例では、放熱パイプ104が常時、真空断熱材103の表面に接触し真空断熱材が加熱され、さらに、外箱101と放熱パイプ104の密着面積を増加させるために常時、真空断熱材103の表面が放熱パイプ104の反り応力を受けることになり、真空断熱材の信頼性は悪化してしまうという課題があった。
【0033】
そこで、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の実施例では、上述した従来例の課題を解決するために、放熱パイプの放熱で真空断熱材が加熱されることを抑制し、さらに、真空断熱材が放熱パイプの反り応力を回避できるような構成を採用するものであり、図4と図5を用いて以下説明する。
【0034】
図4は本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材及び放熱パイプの取付状態と配置を説明する図であり、図5は本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材及び放熱パイプの取付状態と配置の具体的構成を示す図である。
【0035】
外箱の側面板21eの内面側に、真空断熱材50の溝部50mに接しないように放熱パイプ90が配置され、真空断熱材50の溝部50mには断熱塗料60にて断熱コーティングが施されている。外箱の側面板21eの内面側に例えばアルミテープ91を用いて放熱パイプ90を固定しているため、放熱パイプ90の熱は外箱の側面板21eの鋼板へ熱伝達され放熱される。さらに、放熱パイプ90と断熱塗料60との間には溝部空間が形成され、この溝部空間によっても放熱パイプ90からの真空断熱材50へ熱伝導量の低減が図れる(放熱パイプ90と真空断熱材50の直接接触を示す図8の従来例に比べて)。
【0036】
さらに、真空断熱材50は放熱パイプ90と溝部空間を介して配置されているので、放熱パイプの応力変形による影響を受けることはない。断熱塗料によるコーティングによって放熱パイプ90からの熱が熱反射され真空断熱材50への断熱効果を奏している。
【0037】
真空断熱材50の表面層である外被材53は、放熱パイプ90からの加熱によりガスバリア性の劣化速度が加速されるが、放熱パイプ90により加熱される真空断熱材50の溝部50mを断熱塗料60にて断熱コーティングすることにより劣化速度は低減される。さらに、溝部50mを形成する工程において、溝部50mを形成していない平面部と比較すると、溝部形成でストレスが加わることによりガスバリア性が低下している場合でも、断熱コーティングによりバスバリア性低下を防止することが可能となる。
【0038】
また、断熱コーティングで真空断熱材50への熱伝導量も低減されることにより、ヒートブリッジによる熱リーク量も低減されるため、断熱効果を向上することが出来る。なお、真空断熱材50は外箱21の側面板21eに設ける例を示したが、これに限らず背面板21bに設けてもよいことは当然である。
【0039】
次に、本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材溝部及びその近傍への断熱コーティング範囲を示す具体的構造について、図6を参照しながら以下説明する。図6には、接着機能をもつアルミテープ91で固定された放熱パイプ90の熱が外箱21の側面板21e鋼板へ熱伝達され放熱する放熱範囲(放熱パイプからの放熱によって鋼板が温度上昇する範囲)に亘って、溝部50mを含めてその両側の真空断熱材50に断熱塗料60で断熱コーティングした場合の断面図を示す。放熱パイプ90は、外箱21の側面板21eの内面側において、真空断熱材50eの溝部50mに接しないようにしてアルミテープ91で固定されている。
【0040】
放熱パイプ90の熱が外箱21の側面板21eの鋼板へ熱伝達され放熱されるが、側面板21eの鋼板の温度が上昇する範囲は限られているため、この上昇する範囲内を断熱塗料60にて断熱コーティングすることで、コーティング作業範囲を抑え、効果的に放熱性能を向上させることが可能となる。
【0041】
換言すると、放熱パイプ90による放熱で外箱鋼板の温度上昇する範囲に亘って真空断熱材50の面(溝部60を含めてその両側の適宜の範囲の面)に断熱塗料60による断熱コーティングを施して真空断熱材50としての断熱性能の向上を図っている。図6においては、放熱パイプ90による熱で外箱鋼板が温度上昇する範囲が300mmであるときに、温度上昇した外箱鋼板の熱が真空断熱材50への断熱効果を奏すべく300mmの範囲に亘って真空断熱材50に断熱塗料を塗布している。断熱コーティングに際して、例えば断熱塗料60にて断熱コーティングする範囲を、予め真空断熱材50に凹みやマーキングを設けて指定しておいてもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る冷蔵庫の実施例における真空断熱材溝部及びその近傍への断熱コーティング範囲の変更を示す具体的構造について、図7を参照しながら以下説明する。図7には、放熱パイプ90の熱が外箱21の側面板eの鋼板へ熱伝達され放熱する量の多寡により真空断熱材50の溝部50mを含めて断熱塗料60にて断熱コーティングする範囲を変える場合の断面図を示す。
【0043】
圧縮機30から延出する放熱パイプ90の温度は、圧縮機30に近い程高温であり、圧縮機30からの延出直後は60℃以上にも達し外箱21の鋼板の温度が上昇する範囲も広いため、例えば、図6に示した放熱範囲(300mm)を断熱塗料60にて断熱コーティングしているが、圧縮機30から遠ざかるにしたがって低温になり、断熱塗料60による断熱コーティングが必要となる範囲も狭くなる。例えば、圧縮機30から2m延出された放熱パイプ90の温度が40℃であれば、図7に示すように放熱範囲は200mmとなり、この範囲のみを断熱コーティングすることにより断熱性能を向上させる効果を得られる。また、放熱パイプ90を固定しているアルミテープ21は、作業性、コスト等を優先し、断熱コーティングする範囲よりも狭いサイズでもよい。
【0044】
このように、本実施例は、例えば、放熱パイプ90の熱を断熱するように真空断熱材50の溝部とその両側近傍に断熱塗料60による断熱コーティングを行うことで、放熱パイプの放熱で真空断熱材が加熱されることを抑制し、さらに、真空断熱材が放熱パイプの熱による反り応力の影響を回避できるようにすることができる。
【0045】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において様々な変形例が含まれるものである。また、断熱コーティング材として断熱塗料を用いているが、フッ素樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、遮熱塗料、光触媒塗料等でも断熱効果が得られるものであればどれを選定してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…冷蔵庫、2…冷蔵室、3a…製氷室、3b…上段冷凍室、4…下段冷凍室、5…野菜室、6a…冷蔵室扉、6b…冷蔵室扉、7a…製氷室扉、7b…上段冷凍室扉、8…下段冷凍室扉、9…野菜室扉、10…扉用ヒンジ、11…パッキン、12,14…断熱仕切壁、13…仕切り部材、
20…箱体、21…外箱、21a…天板、21b…背面板、21d…底板、21e…側面板、21f…前面、22…内箱、23…断熱材、27…送風機、28…冷却器、30…圧縮機、31…凝縮機、33…発泡ポリスチレン、40…凹部、41…電気部品、42…カバー、
50,50a〜50g…真空断熱材、50m…真空断熱材溝部、51…芯材、52…内包材、53…外被材、54…吸着剤、60…断熱塗料、90…放熱パイプ、91…アルミテープ、101…外箱、102…内箱、103…真空断熱材、104…放熱パイプ、105…凹部溝、106…ウレタン断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と内箱の間で前記外箱側に配設された真空断熱材と、前記内箱側に配設された発泡断熱材と、前記外箱の内面側に配設された放熱パイプと、を備えた冷蔵庫であって、
前記真空断熱材は、前記放熱パイプを配設するためにその表面に凹部溝を設け、
前記凹部溝には、前記放熱パイプの熱を断熱するように断熱塗料にて断熱コーティングが施され、
前記断熱コーティングした前記凹部溝と前記放熱パイプの間には隙間空間が形成されている
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1において、
前記凹部溝に加えて、前記放熱パイプの熱によって温度上昇する外箱の放熱範囲に対面する真空断熱材の表面にも前記断熱塗料にて断熱コーティングが施される
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項2において、
前記真空断熱材の表面に前記断熱コーティングが施される範囲は、前記放熱パイプの熱による温度の高低に対応して当該範囲の拡がりの長短が変更されて決定される
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記断熱コーティングが施される前記真空断熱材の表面の部位にはマーキングが設けられることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1において、
前記断熱コーティングは、前記放熱パイプからの熱を断熱する本来機能に加えて、水分又はガスの内部浸入を阻止するガスバリア機能を奏するものであることを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−61131(P2013−61131A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200848(P2011−200848)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】