説明

真空機器の製造装置及び製造方法、真空機器、荷電粒子線露光装置、デバイス製造方法

【課題】 真空シールしながら複数の真空部材を高い位置精度で配置する真空機器組立装置を提供する。
【解決手段】 第1部材としてのデバイス101と第2部材としてのベース102との間に真空シール材103を挟み真空シールするとともに、デバイス101とベース102の相対位置を所望の位置に固定する真空機器組立装置であって、真空シールするために真空シール材103を変形させる第1の方向であるZ方向と直交するXY平面内で、デバイス101を固定したまま、Z方向に該デバイス101を移動させる機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空を用いた評価装置、蒸着装置、露光装置、または製造装置等に適用可能な、真空機器の組立装置及びその組立方法に関するものである。特に、本発明は、真空シールしながら複数のデバイスを高い位置決め精度で多段配置する真空機器組立装置及びその組立方法に適している。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のレンズもしくは鏡筒を持つ荷電粒子線露光装置において、多段に配置されたレンズ間の位置決めを行う構造として米国特許6,281,508 B1(特許文献1)に提案されている構造がある。この構造は、複数のレンズに位置決め用の開口を設けて、それら開口に位置決め用の棒を通すことでレンズ間の位置調整を行う構造である。位置決め用の開口径と位置決め用の棒の直径は、ほぼ同一となるように調整されている。そのため、多段に配置されたレンズ間の位置を高い位置精度で調整できる。
【特許文献1】米国特許6,281,508 B1公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来例に係る特許文献1は、真空内もしくは真空外での位置調整について開示しているが、真空シール材が接する部材の位置調整については言及していない。真空シールしながら荷電粒子線源、静電レンズ、静電レンズを形成する電極、磁場レンズ、磁場レンズを形成する磁極、偏向器、電子検出器、鏡筒、もしくは他の真空部材等を高い位置精度で調整することは、真空シール材が変形を伴いながら真空シールするので、非常に困難である。
【0004】
本発明の目的は、真空シールしながら荷電粒子線源、静電レンズ、静電レンズを形成する電極、磁場レンズ、磁場レンズを形成する磁極、偏向器、電子検出器、鏡筒、もしくは他の真空部材等を高い位置精度で調整することができる真空機器組立装置及び組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記従来例の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のある形態は、シール部材を間に挟んで第1基板と第2基板を結合させて、真空用の空間を形成する真空機器の製造装置であって前記第2基板の表面と略垂直な方向で、前記第2基板側に載置された前記シール部材に対する前記第1基板の位置を調整する位置調整手段と、前記第2基板側に設けられ、前記第2基板の表面と略垂直な基準面を有する基準手段と、前記第2基板の表面と略平行な方向で、前記基準手段の基準面に対して前記第1基板を押圧する押圧手段と、を備え、前記第1基板は、前記位置調整手段により前記シール部材に対して離間した状態で前記基準手段および前記押圧手段により前記第2基板の表面と略平行な方向で位置決めされた後、前記位置調整手段により前記シール部材を変形させるように前記第2基板の表面と略垂直な方向に移動することを特徴とする。
【0006】
また、本発明では、前記第1基板側に設けられ、前記基準手段の基準面に接触する位置決め部材をさらに備え、前記位置決め部材は、前記基準手段の基準面に対する前記第1基板の位置を調整可能であることを特徴としてもよい。
【0007】
また、本発明では、前記位置決め部材と前記基準手段の基準面との接触を検知する検知手段をさらに備えることを特徴としてもよい。
【0008】
また、前記基準手段は、前記第1基板を、前記基準面に対して固定した状態で、前記第2基板の表面と略垂直な方向にスライドさせることが可能なガイド部を有することを特徴としてもよい。
【0009】
前記位置調整手段は、前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた弾性部材により前記シール部材に対して前記第1基板を離間させ、前記第1基板上に重りを載せることで前記シール部材に前記第1基板を接触させることを特徴としてもよい。
【0010】
前記位置調整手段は、前記第1基板側に設けられた気体流出部から前記第2基板に対して気体を流出することで前記シール部材に対して前記第1基板を離間させ、前記気体流出部からの気体流出を止めることで前記シール部材に前記第1基板を接触させることを特徴としてもよい。
【0011】
また、本発明は、前記第1基板に設けられた第1マーク及び前記第2基板に設けられた第2マークの相対位置を検出する位置検出手段をさらに備えることを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明は、締結部材を用いて前記第1基板と前記第2基板を結合する締結手段をさらに備え、前記締結部材は、摩擦係数が0.04以下のネジ、または、前記第1基板に対して締付トルクを与えないような2段ネジであることを特徴とすることもできる。
【0013】
また、本発明は、シール部材を間に挟んで第1基板と第2基板を結合させて、真空用の空間を形成する真空機器の製造方法であって、前記第2基板側に載置された前記シール部材に対して前記第1基板を離間させる第1ステップと、前記第1ステップの状態で、前記第2基板の表面と略平行な方向で前記第2基板に対して前記第1基板を位置決めするために、前記第2基板側に設けられた基準手段の基準面に対して前記第1基板を押圧する第2ステップと、前記第2ステップの後に、前記シール部材を変形させるように、前記第2基板の表面と略垂直な方向で前記第1基板を移動させる第3ステップと、を備えることを特徴としてもよい。
【0014】
また、本発明は、シール部材を間に挟んで第1基板と第2基板を結合させて、真空用の空間を形成した真空機器であって、前記第1基板は前記第2基板に対して位置決めされており、前記シール部材は前記第2基板の表面と略垂直な方向に変形していることを特徴としてもよく、この真空機器は、前記第2基板側に載置された前記シール部材に対して前記第1基板を離間させた状態で、前記第2基板の表面と略平行な方向で前記第2基板に対して前記第1基板を位置決めするために、前記第2基板側に設けられた基準手段の基準面に対して前記第1基板を押圧した後、前記シール部材を変形させるように、前記第2基板の表面と略垂直な方向で前記第1基板を移動させることで、製造されることを特徴とするのが好ましい。
【0015】
前記第2基板は、前記シール部材を載置するための溝部を有することを特徴としてもよく、前記シール部材の断面積は、前記溝部の断面積の80%以上100%未満であることを特徴としてもよく、前記溝部は、前記第2基板の表面と略垂直な方向に対して0度より大きく20度以下の角度をなす側壁を有することを特徴とするのが好ましい。
【0016】
前記シール部材には、弾性材料または塑性材料を用いることを特徴とすることができ、前記シール部材には、摩擦係数がフッ素ゴム(例えばバイトン)の摩擦係数1.7以下の材料を用いることを特徴としてもよく、ショア硬さがフッ素ゴム(例えばバイトン)のショア硬さHS40以上HS100以下の弾性材料を用いることを特徴としてもよく、ショア硬さが銅のショア硬さ以上の塑性材料を用いることを特徴としてもよい。
【0017】
本発明は、荷電粒子線を用いて露光対象にパターンを露光する荷電粒子線露光装置であっ
て、荷電粒子線源と、上記いずれかの特徴を有する真空機器であって、前記荷電粒子線を通過させる開口を有し、前記荷電粒子線を偏向する偏向器と、を備える荷電粒子線露光装置にも適用できる。
【0018】
本発明に係るデバイス製造方法は、上記荷電粒子線露光装置を利用して露光対象に露光を行う工程と、露光された前記露光対象を現像する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、真空シールしながら高い位置精度で複数の真空部材を配置できる真空機器組立装置及び組立方法を提供できる。また、この装置または方法を用いて部材を配置することで、従来以上に高精度に部材の位置調整をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<真空機器の組立装置(製造装置)の説明>
真空機器組立装置に係る本発明の実施形態では、実施例1として2つの部材による真空機器組立装置、実施例2として複数の部材を多段並べる電子ビーム露光装置、実施例3として複数の部材を同一平面内に並べる電子ビーム露光装置の例を示す。
以下の実施例で用いる基板は、荷電粒子線源、静電レンズ、静電レンズを形成する電極、磁場レンズ、磁場レンズを形成する磁極、偏向器、電子検出器などである。
それぞれの相対的な位置調整を以下の実施例を用いて行う。
【実施例1】
【0021】
(2つの部材による真空機器組立装置の説明)
図1から図6を用いて、本発明の実施例1に係る2つの部材による真空機器組立装置について説明する。
図1と図2は、2つの部材による真空機器組立装置を横と上から見た要部概略図である。
図1に示すように、第1基板としてのデバイス101は第2基板としてのベース102の上側にあり、真空シール材(シール部材)103を用いて真空シールする構造となっている。真空ポンプは、ベース102の下側にあるが、図示していない。真空シール材103の材料は、具体的には弾性材料(バイトンやシリコーン)や塑性材料(メタルガスケット)などである。真空シール材103としてシリコーンを用いた場合、真空シール材の摩擦係数が低い程、真空シール材と第1基板が接触した際に、真空シール材が第1基板の表面と平行な方向に対して第1基板に与える力が少なくなり、位置ずれが起こりにくい。また、真空シール材103としてメタルガスケットを用いた場合、メタルガスケットは塑性材料であるため、真空シール材と第1基板が接触した際に真空シール材が第1基板の表面と平行な方向に対して第1基板に与える力はほぼゼロとなり、位置ずれが起こりにくい。
【0022】
図1に示すように、デバイス101は、位置検出用マーク104と少なくとも1個以上の位置決め用部品(位置決め部材)105とを具備している。位置検出用マーク104に対する位置決め用部品105の位置は、位置決め用部品105をXY平面内で各々移動することで調整できる。位置決め用部品105の先端は、球状もしくは平面となっている。図2に示すように、位置決め用部品105は、X方向には1個Y方向には2個具備されている。
【0023】
図1に示すように、デバイス101は、デバイス101と真空シール材103とを接触させずにXY平面内を移動することができる少なくとも1個以上の浮上機構(位置調整手段)106を具備している。図2に示すように、浮上機構106はXY平面内に3個具備されている。浮上機構106の具体的な構造は、図3(A)に示すように、筒301とバ
ネ302と球303からなる構造や、図3(B)に示すように、筒301内にエアー304を流す構造である。エアー304を作り出す装置は図示していない。バネ302やエアー304の力によってデバイス101を浮上させる。また、浮上機構106のデバイス101に対するZ方向の位置を調整することで、デバイス101のベース102に対するZ方向の位置を調整することができる。浮上機構106としてバネ302を用いる場合、デバイス101に重りを載せることで、バネ302を縮めてデバイス101と真空シール材103を接触させることができる。一方、浮上機構106としてエアー304を用いる場合、エアー304を止めることで、デバイス101と真空シール材103を接触させることができる。
【0024】
図1に示すように、ベース102は真空シール材103の位置と動きと変形量を規定する溝107を具備している。溝107はXY平面において円形もしくは多角形である。図4に示すように、溝107の断面積に対する真空シール材の断面積の割合は、80%以上100%未満、または特に95%以上100%未満であり、さらに溝107の側面は、0度より大きく20度以下の角度を持つことによって、真空シール材103の位置と動きと変形量を規定する。
【0025】
図1に示すように、ベース102はXY平面と垂直な基準面を持つ少なくとも1個以上の基準板(基準手段)108を具備している。位置検出用マーク111に対する基準板108の位置は、基準板108をXY平面内で各々移動することで調整できる。基準板108は、図5に示すようにZ方向にスライドするガイド501を有しているか、もしくは滑らかな平面となっている。図2では、基準板108は、X方向Y方向それぞれに1個ずつあり、位置決め部品105とX方向で1ヶ所Y方向で2ヶ所接触させることにより、ベース102に対するデバイス101の位置と回転を規定できるようになっている。
【0026】
図1に示すように、ベース102はXY平面と平行な方向に圧力をかけられ、かける圧力を調整できる少なくとも1個以上の与圧機構(押圧手段)109を具備している。図2に示すように、与圧機構109の力の作用点と位置決め用部品105の力の作用点とは、デバイス101の中心に対して対称な位置関係である。また、図2に示すように、与圧機構109の間隔は、対応する位置決め部品105の間隔以上となっている。与圧機構109の先端は、球状もしくは平面となっており、与圧機構109の圧力は、位置決め用部品105と基準板108を不可逆的に変形させる圧力未満、デバイス101の位置を固定できる以上の圧力の範囲で調整する。
【0027】
図1に示すように、締結部品110は少なくとも1個以上用いられることでデバイス101とベース102とを固定することができる。図2では、締結部品110は、X方向の2ヶ所と、Y方向の2ヶ所の計4ヶ所でデバイス101とベース102とを固定できるようになっている。締結部品110は、具体的には摩擦係数0.04以下のネジや締結部品110自身が回転しない2段ネジなどである。図6に示す2段ネジは、締結部品110を固定するための板601と締結力を生み出すネジ602とから成り、締結部品110に回転トルクを生み出すことなくデバイス101とベース102を締結できる。
【0028】
図1に示す位置検出用マーク104と位置検出用マーク111は、図示しない位置測定機(位置検出手段)を用いることで、デバイス101とベース102の相対位置計測に使用される。
【0029】
以上のような構造の真空機器組立装置において、最初、浮上機構106を用いてベース102に対してデバイス101を浮上させ、デバイス101を移動させて位置決め用部品105と基準板108とを接触させ、与圧機構109を用いてベース102に対するデバイス101の位置を固定する。そうすることによって、デバイス101とベース102を真空シールするために真空シール材103を変形させるZ方向と直交するXY平面内で、
デバイス101を固定したままZ方向にデバイス101を移動させることができる。その時、位置決め用部品105と基準板108との接触は、それらの内部に接触を検知するスイッチ(検知手段)を組み込むことで、もしくはそれらを電気的に絶縁しておいてそれらの間の電気抵抗を測ることで、判断される。
【0030】
その後、デバイス101の上に重りを載せて浮上機構106のバネを縮めるか、浮上機構106のエアー供給を止めることで、Z方向にデバイス101を移動させて真空シール材103と接触させる。それから、デバイス101、ベース102、及び真空シール材103で囲まれる空間を真空に引くことで、真空シール材103のXY方向の変形を伴わずに、真空シールしながらベース102に対するデバイス101の位置を高い精度で決定することができる。
【実施例2】
【0031】
(複数の部材を多段並べる電子ビーム露光装置の説明)
図7から図9を用いて、本発明の実施例2に係る複数の部材を多段並べる電子ビーム露光装置について説明する。
図7は、マルチビーム方式の電子ビーム露光装置の要部概略図である。
電子源701からマルチ偏向器アレイ707までの要素は、複数の電子源像を形成し、その電子源像から電子ビームを放射するマルチソースモジュールであり、図7の場合、このマルチソースモジュールは5×5に2次元配列されている。701は、電子銃が形成する電子源(クロスオーバ像)である。この電子源701から放射される電子ビームは、コンデンサーレンズ702によって略平行な電子ビームとなる。703は、開孔が2次元配列して形成されたアパーチャアレイであり、704は、同一の光学パワーを有する静電レンズが2次元配列して形成されたレンズアレイである。705,706,707,708は、個別に駆動可能な静電の8極偏向器が2次元配列して形成されたマルチ偏向器アレイであり、709は、個別に駆動可能な静電のブランカーが2次元配列して形成されたブランカーアレイである。
【0032】
図8を用いて各要素の機能を説明する。コンデンサーレンズ702(図7)からの略平行な電子ビームは、アパーチャアレイ703によって複数の電子ビームに分割される。分割された電子ビームは、対応するレンズアレイ704の静電レンズを介して、ブランカーアレイ709の対応するブランカー上に、電子源の中間像801を形成する。この時、マルチ偏向器アレイ705,706,707,708は、ブランカーアレイ709上に形成される電子源の中間像の位置(光軸と直交する面内の位置)を個別に調整する。また、ブランカーアレイ709で偏向された電子ビームは、図7のブランキングアパーチャ710によって遮断されるため、ウエハ720には照射されない。一方、ブランカーアレイ709で偏向されない電子ビームは、図7のブランキングアパーチャ710によって遮断されないため、ウエハ720には照射される。
【0033】
図7に戻り、マルチソースモジュールで形成された電子源の複数の中間像は、磁界レンズ715,716,717,718の縮小投影系を介して、ウエハ720に投影される。この時、複数の中間像がウエハ720に投影される際、焦点位置は、ダイナミックフォーカスレンズ(静電若しくは磁界レンズ)711,712で調整できる。713,714は各電子ビームを露光すべき個所へ偏向させる主偏向器と副偏向器である。719はウエハ720上に形成された電子源の各中間像の位置を計測するための反射電子検出器である。721はウエハを移動させるためのステージである。722は電子ビームの位置を検出するためのマークである。
【0034】
以上のようなマルチビーム方式の電子ビーム露光装置において、図7のマルチ偏向器アレイ705から708までとブランカーアレイ709は、それぞれのデバイス間に電子ビ
ームの位置を調整できるアライナーを配置するスペースがないため、高精度で多段配置する必要がある。
【0035】
図9は、図7のマルチ偏向器アレイ705から708までとブランカーアレイ709を高精度で多段配置する真空機器組立装置を横から見た要部概略図である。複数の部材を多段並べるには、図1に示すデバイス101の上段に真空シール材用の溝を追加すればよい。図9に示す901,902,903,904,905は、マルチ偏向器アレイ705から708までとブランカーアレイ709を搭載するベース部材である。さらに、マルチ偏向器アレイ705から708までとブランカーアレイ709には、それぞれ位置検出用マーク906から910が具備されている。また、図10に示すように、浮上機構106と締結部品110は、位置の位相をずらされており、お互い干渉し合わないようになっている。
【0036】
2段の場合と同様に、ベース部材901に対するベース部材902から905までの位置を、基準板108に位置決め用部品105を接触させて一段一段決定し、一段一段締結部材110を用いて締結していくことで、ブランカーアレイ709に対するマルチ偏向器アレイ705から708までの位置を高精度で決定することができる。また、アパーチャアレイ703、レンズアレイ704、ブランカーアレイ709においても同様に、相対位置を高精度で決定することが出来る。
【実施例3】
【0037】
(複数の部材を同一平面内に並べる電子ビーム露光装置)
図11を用いて、本発明の実施例3に係る複数の部材を同一平面内に並べる電子ビーム露光装置について説明する。
図11は、マルチビーム方式の電子ビーム露光装置を2×2で配置したマルチカラム方式において、4つの部材を同一平面内に並べたときに、上から見た要部概略図である。複数の部材を同一平面内に複数個並べるには、図1に示すのと同様の基準板108を複数部材に対応する数だけベース102に対して並べればよい。この場合も2段の場合と同様に、各部材の位置を順次決定し締結していくことで、高精度に部材の位置を決定することができる。
【実施例4】
【0038】
<真空機器組立方法の説明>
図12を用いて本発明の実施例4に係る2つの部材による真空機器組立方法について説明する。デバイス101を、真空シール材103を用いながらベース102に対して所望の位置に固定するために、次のステップを実行する。
【0039】
(ステップ1)では、デバイス101に付随する位置検出用マーク104とデバイス101に付随する位置決め用部品105とのXY平面内での相対位置を計測し、位置決め用部品105をXY平面内で移動させて、デバイス101に対する位置決め用部品105の相対位置をあらかじめ決められた所望の値に調整する。
【0040】
(ステップ2)では、ベース102の溝107に真空シール材103を取り付ける。
【0041】
(ステップ3)では、ベース102に付随する位置検出用マーク111とベース102に付随する基準板108とのXY平面内での相対位置を計測し、基準板108をXY平面内で移動させて、ベース102に対する基準板108の相対位置をあらかじめ決められた所望の値に調整する。
【0042】
(ステップ4)では、デバイス101と真空シール材103を、浮上機構106を用い
浮上させることにより、互いに接触させないようにする。
【0043】
その状態でデバイス101をXY平面内で移動させ、デバイス101もしくはデバイス101に付随する位置決め用部品105と、ベース102もしくはベース102に付随する基準板108とを、あらかじめ決められた箇所で接触させて、ベース102に対するデバイス101のXY平面内での相対位置を決定する。
【0044】
その後、与圧機構109によって圧力をXY平面内でかけてベース102に対してデバイス101を固定する。
【0045】
(ステップ5)では、デバイス101もしくはデバイス101に付随する位置決め用部品105と、ベース102もしくはベース102に付随する基準板108とが、あらかじめ決められた箇所で接触している場合は、ステップ6に進む。そうでない場合はステップ4に戻る。
【0046】
(ステップ6)では、デバイス101に重りを載せるかもしくは浮上機構106を解除して、デバイス101とベース102のXY平面内での相対位置を保ったままデバイス101をZ方向に移動させ、デバイス101と真空シール材103を接触させる。
【0047】
デバイス101とベース102のXY平面内での相対位置を保ったままデバイス101をZ方向に移動させる方法は、位置決め用部品105と滑らかな平面を持つ基準板108とを滑らせてもよいし、デバイス101を固定した状態でスライダーやリニアガイドを用いてもよい。
【0048】
その後、真空ポンプを用いてデバイス101に大気による圧力をかけて、やはりデバイス101とベース102のXY平面内での相対位置を保ったままデバイス101をZ方向に移動させ、真空シール材103を変形させて、真空シールを行う。真空シール材103を変形させるには、重りをデバイス101にのせてもよい。
【0049】
(ステップ7)では、デバイス101もしくはデバイス101に付随する位置決め用部品105と、ベース102もしくはベース102に付随する基準板108とが、あらかじめ決められた箇所で接触している場合は、ステップ8に進む。そうでない場合はステップ9に進む。
【0050】
(ステップ8)では、デバイス101とベース102の相対移動量を位置検出用マーク104と位置検出用マーク111を用いて計測し、デバイス101とベース102の相対移動量が所望の値となっている場合は、ステップ10に進む。そうでない場合はステップ9に進む。
【0051】
(ステップ9)では、デバイス101に対して与圧機構109により掛っているXY平面内の圧力とZ方向の圧力を解除する。もしくは浮上機構106を作動させる。
【0052】
(ステップ10)では、締結部品110を用いて、デバイス101とベース102とを固定する。
【0053】
その後、デバイス101に対して与圧機構109によって掛っているXY平面内の圧力とZ方向の圧力を解除する。
【0054】
以下、ステップ1からステップ10を繰り返すことで、複数の部材を多段並べることが可能である。また、複数の部材を同一平面内に複数個並べることも可能である。
【実施例5】
【0055】
次に、上記実施例に係る露光装置を利用した半導体デバイスの製造プロセスを説明する。図13は半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(EBデータ変換)では設計した回路パターンに基づいて露光装置の露光制御データを作成する。
【0056】
一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記露光制御データが入力された露光装置とウエハを用い、リソグラフィ技術を利用してウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組み立て工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、ステップ7でこれを出荷する。
【0057】
上記ステップ4のウエハプロセスは以下のステップを有する。ウエハの表面を酸化させる酸化ステップ、ウエハ表面に絶縁膜を成膜するCVDステップ、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する電極形成ステップ、ウエハにイオンを打ち込むイオン打ち込みステップ、ウエハに感光剤を塗布するレジスト処理ステップ、上記の露光装置によって回路パターンをレジスト処理ステップ後のウエハに焼付け露光する露光ステップ、露光ステップで露光したウエハを現像する現像ステップ、現像ステップで現像したレジスト像以外の部分を削り取るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト剥離ステップ。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係る2つの部材による真空機器組立装置(製造装置)を横から見た要部概略の説明用断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る2つの部材による真空機器組立装置を上から見た要部概略の説明用平面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る浮上機構の説明用図である。
【図4】本発明の実施例1に係る真空シール材用の溝を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1に係るスライドすることができるガイドの説明用図である。
【図6】本発明の実施例1に係る2段ネジの説明用図である。
【図7】本発明の実施例2に係るマルチビーム方式の電子ビーム露光装置の要部概略を説明するための構成図である。
【図8】本発明の実施例2に係るマルチソースモジュールを説明するための図である。
【図9】本発明の実施例2に係る5つの部材による真空機器組立装置を横から見た要部概略を説明するための図である。
【図10】本発明の実施例2に係る5つの部材による真空機器組立装置のうち2つの部材を上から見た要部概略を説明するための平面図である。
【図11】本発明の実施例3に係る4つの部材を同一平面内に2×2で並べたときの真空機器組立装置を上から見た要部概略を説明するための平面図である。
【図12】本発明の実施例4に係る2つの部材による真空機器の組立方法について説明するためのフロー図である。
【図13】半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
101:デバイス(第1基板)、102:ベース(第2基板)、103:真空シール材(シール部材)、104:デバイスの位置検出用マーク、105:位置決め用部品(位置決め部材)、106:浮上機構(位置調整手段)、107:真空シール材用の溝、108:基準板(基準手段)、109:与圧機構(押圧手段)、110:締結部品、111:ベースの位置検出用マーク、301:筒、302:バネ、303:球、304:エアー、501:ガイド、601:締結部材を固定するための板、602:締結力を生み出すネジ、701:電子源、702:コンデンサーレンズ、703:アパーチャアレイ、704:レンズアレイ、705:マルチ偏向器アレイ、706:マルチ偏向器アレイ、707:マルチ偏向器アレイ、708:マルチ偏向器アレイ、709:ブランカーアレイ、710:アパーチャ、711:ダイナミックフォーカスレンズ、712:ダイナミックフォーカスレンズ、713:主偏向器、714:副偏向器、715:縮小電子光学系レンズ、716:縮小電子光学系レンズ、717:縮小電子光学系レンズ、718:縮小電子光学系レンズ、719:反射電子検出器、720:ウエハ、721:ステージ、722:位置検出用マーク、801:電子の中間像、901:マルチ偏向器アレイ用ベース部材、902:マルチ偏向器アレイ用ベース部材、903:マルチ偏向器アレイ用ベース部材、904:マルチ偏向器アレイ用ベース部材、905:ブランカーアレイ用ベース部材、906:マルチ偏向器アレイ用ベース部材に取り付けられた位置検出用マーク、907:マルチ偏向器アレイ用ベース部材に取り付けられた位置検出用マーク、908:マルチ偏向器アレイ用ベース部材に取り付けられた位置検出用マーク、909:マルチ偏向器アレイ用ベース部材に取り付けられた位置検出用マーク、910:ブランカーアレイ用ベース部材に取り付けられた位置検出用マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材を間に挟んで第1基板と第2基板を結合させて、真空用の空間を形成する真空機器の製造装置であって
前記第2基板の表面と略垂直な方向で、前記第2基板側に載置された前記シール部材に対する前記第1基板の位置を調整する位置調整手段と、
前記第2基板側に設けられ、前記第2基板の表面と略垂直な基準面を有する基準手段と、前記第2基板の表面と略平行な方向で、前記基準手段の基準面に対して前記第1基板を押圧する押圧手段と、を備え、
前記第1基板は、前記位置調整手段により前記シール部材に対して離間した状態で前記基準手段および前記押圧手段により前記第2基板の表面と略平行な方向で位置決めされた後、前記位置調整手段により前記シール部材を変形させるように前記第2基板の表面と略垂直な方向に移動することを特徴とする真空機器の製造装置。
【請求項2】
前記第1基板側に設けられ、前記基準手段の基準面に接触する位置決め部材をさらに備え、前記位置決め部材は、前記基準手段の基準面に対する前記第1基板の位置を調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の真空機器の製造装置。
【請求項3】
前記位置決め部材と前記基準手段の基準面との接触を検知する検知手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の真空機器の製造装置。
【請求項4】
前記基準手段は、前記第1基板を、前記基準面に対して固定した状態で、前記第2基板の表面と略垂直な方向にスライドさせることが可能なガイド部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の真空機器の製造装置。
【請求項5】
前記位置調整手段は、前記第1基板と前記第2基板の間に設けられた弾性部材により前記シール部材に対して前記第1基板を離間させ、前記第1基板上に重りを載せることで前記シール部材に前記第1基板を接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の真空機器の製造装置。
【請求項6】
前記位置調整手段は、前記第1基板側に設けられた気体流出部から前記第2基板に対して気体を流出することで前記シール部材に対して前記第1基板を離間させ、前記気体流出部からの気体流出を止めることで前記シール部材に前記第1基板を接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の真空機器の製造装置。
【請求項7】
前記第1基板に設けられた第1マーク及び前記第2基板に設けられた第2マークの相対位置を検出する位置検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに1つに記載の真空機器の製造装置。
【請求項8】
締結部材を用いて前記第1基板と前記第2基板を結合する締結手段をさらに備え、前記締結部材は、摩擦係数が0.04以下のネジ、または、前記第1基板に対して締付トルクを与えないような2段ネジであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の真空機器の製造装置。
【請求項9】
シール部材を間に挟んで第1基板と第2基板を結合させて、真空用の空間を形成する真空機器の製造方法であって、
前記第2基板側に載置された前記シール部材に対して前記第1基板を離間させる第1ステップと、
前記第1ステップの状態で、前記第2基板の表面と略平行な方向で前記第2基板に対して前記第1基板を位置決めするために、前記第2基板側に設けられた基準手段の基準面に対して前記第1基板を押圧する第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記シール部材を変形させるように、前記第2基板の表面と略垂直な方向で前記第1基板を移動させる第3ステップと、を備えることを特徴とする真空機器の製造方法。
【請求項10】
シール部材を間に挟んで第1基板と第2基板を結合させて、真空用の空間を形成した真空機器であって、
前記第1基板は前記第2基板に対して位置決めされており、前記シール部材は前記第2基板の表面と略垂直な方向に変形していることを特徴とする真空機器。
【請求項11】
前記第2基板側に載置された前記シール部材に対して前記第1基板を離間させた状態で、前記第2基板の表面と略平行な方向で前記第2基板に対して前記第1基板を位置決めするために、前記第2基板側に設けられた基準手段の基準面に対して前記第1基板を押圧した後、前記シール部材を変形させるように、前記第2基板の表面と略垂直な方向で前記第1基板を移動させることで、製造されること特徴とする請求項10に記載の真空機器。
【請求項12】
前記第2基板は、前記シール部材を載置するための溝部を有することを特徴とする請求項10または11に記載の真空機器。
【請求項13】
前記シール部材の断面積は、前記溝部の断面積の80%以上100%未満であることを特徴とする請求項12に記載の真空機器。
【請求項14】
前記溝部は、前記第2基板の表面と略垂直な方向に対して0度より大きく20度以下の角度をなす側壁を有することを特徴とする請求項12または13に記載の真空機器。
【請求項15】
前記シール部材には、弾性材料または塑性材料を用いることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1つに記載の真空機器。
【請求項16】
前記シール部材の摩擦係数は、1.7以下であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1つに記載の真空機器。
【請求項17】
前記弾性材料のショア硬さは、HS40以上HS100以下であることを特徴とする請求項15に記載の真空機器。
【請求項18】
前記塑性材料のショア硬さは、銅のショア硬さ以上であることを特徴とする請求項15に記載の真空機器。
【請求項19】
荷電粒子線を用いて露光対象にパターンを露光する荷電粒子線露光装置であって、
荷電粒子線源と、
請求項10〜18のいずれか1つに記載の真空機器であって、前記荷電粒子線を通過させる開口を有し、前記荷電粒子線を偏向する偏向器と、を備える荷電粒子線露光装置。
【請求項20】
請求項19に記載の荷電粒子線露光装置を利用して露光対象に露光を行う工程と、露光された前記露光対象を現像する工程と、を具備することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−19101(P2006−19101A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194772(P2004−194772)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】