説明

真空脱ガス装置の浸漬管

【課題】下耐火物層の落下を抑えるのに有利な真空脱ガス装置の浸漬管を提供する。
【解決手段】浸漬管は、真空脱ガス装置に直接的または間接的に取り付けられ縦方向に沿った中心軸線P1の回りに巡らされた芯金2と、縦向きの溶湯通路30を形成するように芯金2の内周側および外周に筒形状に設けられた耐火物層3を備える。耐火物層3は、芯金2の上部に機械的に係合する上耐火物層4と、上耐火物層4の下側に位置する下耐火物層5と、下耐火物層5に固定された縦部材27と縦部材27から外方に延設された鍔状フランジ部26fとをもつ金属製の第1結合部材26と金属製の第2結合部材24,25とを備えている。第2結合部材24,25は鍔状フランジ部26fに結合されている。これにより下耐火物層5は芯金2に吊持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空脱ガス装置の浸漬管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管が提供されている(特許文献1)。この浸漬管は、縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成するように芯金の内周側および外周側に筒形状に設けられた耐火物層とを備えている。この浸漬管の分野では、耐火物層は、上耐火物層と、上耐火物層の下側に配置された下耐火物層とを備えているものが知られている。使用につれて、上耐火物層や芯金から下耐火物層が重力により落下するおそれがある。このため耐火物層の寿命を低下させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−226092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、芯金に上耐火物層と下耐火物層とが保持されている場合であっても、下耐火物層の落下を抑えるのに有利な真空脱ガス装置の浸漬管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)様相1に係る真空脱ガス装置の浸漬管は、(i)真空脱ガス装置に直接的または間接的に取り付けられ縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、(ii)中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成するように芯金の内周側および外周側に筒形状に設けられた耐火物層とを備えており、(iii)耐火物層は、芯金の上部に機械的に係合する上耐火物層と、上耐火物層の下側に位置する下耐火物層と、下耐火物層に固定され下耐火物層の上面において露出するように延設された鍔状フランジ部とをもつ金属製の第1結合部材と、第1結合部材の鍔状フランジ部と芯金とを結合することにより下耐火物層を芯金に吊持させる金属製の第2結合部材とを備えている。
【0006】
耐火物層は、芯金の上部に機械的に係合する上耐火物層と、上耐火物層の下側に位置する下耐火物層とを備えている。上耐火物層はキャスタブル材料が例示される。下耐火物層はれんが、特に、焼成せずにバインダで結合させた不焼成れんがが例示される。金属製の第1結合部材は、下耐火物層に固定されており、下耐火物層の上面に露出するように延設された鍔状フランジ部をもつ。金属製の第2結合部材は、第1結合部材の鍔状フランジ部と芯金とを結合することにより下耐火物層を芯金に吊持させる。このように下耐火物層は、互いに結合された第1結合部材および第2結合部材により芯金に吊持される。本様相によれば、下耐火物層の落下が効果的に抑えられる。
【0007】
(2)様相2に係る真空脱ガス装置の浸漬管によれば、様相1において、(i)第1結合部材は、下耐火物層の内部に埋設され且つ上面が開口する上面開口部および空間をもつ縦部材と、縦部材の上端部から外方に延設された鍔状フランジ部とをもち、(ii)第2結合部材は、第1結合部材の鍔状フランジ部に対面しつつ結合された横方向に延びる横辺部と、芯金の内周部または外周部に対面しつつ結合された縦辺部とをもち、少なくとも断面L字形状をなしている断面L字形状部を備えている。このように下耐火物層は、互いに結合された第1結合部材および第2結合部材により芯金に吊持される。これにより下耐火物層の落下が抑えられる。
【0008】
(3)様相3に係る真空脱ガス装置の浸漬管によれば、様相1において、芯金の下端部は第1結合部材の縦部材の空間に挿入されており、空間にはキャスタブル材料が装填されていることを特徴とする。本様相によれば、下耐火物層の落下が効果的に抑えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上耐火物層と機械的に係合する下耐火物層が保持されている場合であっても、下耐火物層の落下を抑えるのに有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係り、浸漬管の断面図である。
【図2】実施形態1に係り、浸漬管の主要部を拡大して示す断面図である。
【図3】実施形態1に係り、下耐火物層を構成する1個のれんが付近を示す平面図である。
【図4】(A)は第1結合部材の断面図であり、(B)は第2結合部材としての第1結合部材の側面図である。
【図5】第1結合部材を埋設状態に固定している下耐火物層の要部を示す断面図である。
【図6】下耐火物層に埋設状態に固定されている第1結合部材および第2結合部材を介して芯金に下耐火物層を吊持している状態を示す要部の断面図である。
【図7】実施形態2に係り、浸漬管の左半分を示す断面図である。
【図8】実施形態3に係り、浸漬管の左半分を示す断面図である。
【図9】適用形態に係り、浸漬管の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1〜図6は実施形態1の概念を示す。本実施形態は、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管1に適用されている。浸漬管1はリング形状をなしており、縦方向に沿った中心軸線1pの回りに連続的に巡らされた筒形状をなす金属(例えば炭素鋼、合金鋼等の鉄合金)で形成された芯金2と、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する耐火物層3とを備えている。芯金2は、中心軸線1pの回りを1周する筒形状の芯金本体20と、中心軸線1pの回りを1周するように芯金本体20の上端部に径外方向に連設されたリング状をなすフランジ部21と、中心軸線1pの回りを1周するように芯金本体20の下部に連設された棒状のスタッド22とで形成されている。芯金本体20は、中心軸線1pの回りをそれぞれ1周する内周壁面20iおよび外周壁面20pをもつ。図1に示すように、芯金本体20の内周側である内周壁面20iには、溶接または取付具等で、複数の断面L字形状の第2結合部材24(第2結合部材)が固定されている。芯金本体20の外周側である外周壁面20pには、溶接または取付具等で、複数の断面L字形状の第2結合部材25(第2結合部材)がそれぞれ固定されている。外側の各第2結合部材25は、これの外周側から、中心軸線1pを1周する締結リング26rにより芯金本体20に締結されている。
【0012】
図1に示すように、耐火物層3は中心軸線1pの回りに巡らされた筒状をなしており、中心軸線1pを通過する縦向きの筒形状の溶湯通路30を形成するように芯金2の内周側、芯金2の外周側、および、芯金2の下側に配置されている。耐火物層3は、中心軸線1pの回りを1周するようにキャスタブル材料で形成されたリング形状をなす上耐火物層4と、中心軸線1pの回りを1周するように上耐火物層4の下側に配置された不焼成のれんがで形成されたリング形状をなす下耐火物層5とを備えている。
【0013】
上耐火物層4は内周壁面4iと外周壁面4pとをもつ。下耐火物層5は内周壁面5iと外周壁面5pとをもつ。上耐火物層4はキャスタブル材料で形成されており、殊にアルミナおよびマグネシアの混合系(例えばアルミナ:50〜99質量%、マグネシア:0.1〜30質量%)のキャスタブル材料、または、ハイアルミナ(アルミナ例えば80質量%以上)系のキャスタブル材料で形成されている。但しこの組成に限定されるものではない。
【0014】
下耐火物層5は、複数の不焼成のれんが53を中心軸線1pまわりで1周するように周方向(図3に示す矢印DW方向)に沿って並設することにより形成されている。図3は単数のれんが53付近の平面視を示す。図3に示すように、各れんが53は、これの平面視において、中心軸線1pに対して放射方向に延びる平坦な延設面53a,53cと、下耐火物層5の外周側となる外壁面53pと、下耐火物層5の内周側となる内壁面53iとを有する。下耐火物層5を構成するれんが53は、マグネシアおよびカーボンの混合系のれんがを例示できる。但し、れんが53の材料はこれに限定されるものではなく、マグネシア系のれんが、マグネシアおよび酸化クロム(Cr)の混合系のれんがでも良い。
【0015】
本実施形態によれば、図4(A)(B)に示すように、金属製の第1結合部材26は、断面でU字形状をなしており、下耐火物層5に固定され互いに空間27aを介して対面する金属製の縦部材27と、縦部材27から外方(下耐火物層5の径内方向および径外方向)に延設された金属製の鍔状フランジ部26fとをもつ。ここで、図2に示すように、第1結合部材26は、下耐火物層5の内部に埋設されており、且つ空間27aをもつと共に上面が開口する上面開口部27bをもつ縦部材27と、縦部材27の上端部27uから外方(半径方向の内側および外側)に向けて延設された鍔状フランジ部26fとをもつ。図5に示すように、鍔状フランジ部26fは、下耐火物層5の上面5uにおいて露出する。なお、下耐火物層5を形成するように中心軸線1pのまわりで並設された全部または2/3以上の複数のれんが53について、れんが53の上面53u側に第1結合部材26が埋設固定されている(図5参照)。
【0016】
図2に示すように、第2結合部材24,25は、第1結合部材26の鍔状フランジ部26fと芯金2の芯金本体20とに溶接または取付具等で結合されることにより、下耐火物層5を芯金2に吊持させる。図2に示すように、第2結合部材24は、横辺部24xと縦片部24yとをもつ断面L字形状をなしている断面L字形状部24zを備えている。横辺部24xは、横方向に延びており、第1結合部材26の鍔状フランジ部26fに対面しつつ、これの上側から、溶接又は取付具により結合されている。縦辺部24yは、芯金2の内周部である内周壁面20iに対面しつつこれの上側から、溶接又は取付具により結合されている。同様に、図2に示すように、第2結合部材25は、横辺部25xと縦片部25yとをもつ断面L字形状をなしている断面L字形状部25zを備えている。横辺部25xは横方向に延びており、第1結合部材26の鍔状フランジ部26fに対面しつつ溶接又は取付具により結合されている。縦辺部25yは、芯金2の外周部である外周壁面20pに対面しつつ溶接又は取付具により結合されている。
【0017】
このように第2結合部材24,25の横辺部24x,25xは、第1結合部材26の鍔状フランジ部26fに対面しつつ、これの上側から溶接または取付具等で固定されており、これにより第2結合部材24,25は第1結合部材26に固定されている。ここで、芯金2の下端部は、棒状のスタッド22と共に、第1結合部材26の縦部材27の空間27aに上面開口部27bから挿入されている。このように第1結合部材26の空間27aにはキャスタブル材料28と共に芯金本体20の下端部20dが配置されている。このような構造が採用されている本実施形態によれば、芯金2の芯金本体20は下耐火物層5を吊持している。芯金本体20はリング状のフランジ部21を介して真空脱ガス装置に固定されている。このため、下耐火物層5は、芯金本体20、第1結合部材26および第2結合部材24,25を介して真空脱ガス装置に吊持されている。
【0018】
更に本実施形態によれば、図1に示すように、上耐火物層4および下耐火物層5の境界域6において、下耐火物層5の上面5uには凸部7が設けられ、上耐火物層4の下面4dには凹部8が設けられている。凸部7および凹部8の双方は、上耐火物層4および下耐火物層5の境界域6において中心軸線1pの回りを1周するように、つまり、溶湯通路30をこれの周方向に1周するようにリング状に設けられている。境界域6にはモルタル層等の接合層69(図2参照)が介在し、溶湯等の進入を抑えている。中心軸線1pに沿った断面(図2)において、凸部7は、リング状をなす凸外周側面70と、ほぼ同軸的なリング状をなす凸内周側面72とを有する。凹部8は、凸部7の凸外周側面70に対面するリング状をなす凹外周側面80と、凸部7の凸内周側面72にほぼ同軸的に対面するリング状をなす凹内周側面82とを有する。
【0019】
中心軸線1pに沿った断面(図2)において、凸部7の凸外周側面70と凸内周側面72とは、凸部7が上向きの断面台形を形成するように中心軸線1pと平行な第1仮想線H1および第2仮想線H2(図2参照)に対して角度θ1,θ2(図2参照)で傾斜している。凹部8の凹外周側面80は、凸部7の凸外周側面70と同じ向きとなるように第1仮想線H1に対して角度θ1で傾斜している。凹部8の凹内周側面82は、凸部7の凸内周側面72と同じ向きとなるように第2仮想線H2に対して角度θ2で傾斜している。本実施形態によれば、下耐火物層5の上面5uに形成されている凸部7と、上耐火物層4の下面4dに形成されている凹部8とが嵌合して接触している。この嵌合により、上耐火物層4および下耐火物層5の境界域6における溶湯の進入を抑制させる。なお、境界域6にはモルタル層等の接合層69(図2参照)が介在しており、溶湯等の進入を一層抑えている。但し、これに限らず、上耐火物層4および下耐火物層5を直接接触させ、境界域6にモルタル層等の接合層69を介在させずとも良い。
【0020】
図1に示すように、上記した芯金本体20の内周側および外周側には、金属製(例えば炭素鋼または合金鋼)の第1係合部91が溶接等で固定されている。第1係合部91は、V形状またはU形状等の異形状の係止部91xをもち、キャスタブル材料で形成された上耐火物層4に埋設されて機械的に係合している。第2結合部材24,25には第2係合部92が下向きに溶接等で結合されている。第2係合部92は、V形状またはU形状等の異形状の係止部92xをもち、下耐火物層5の落下を抑えるように下耐火物層5の内部に埋設されており、第2結合部材24,25において内周側または外周側に向けて斜め下向きに指向している。
【0021】
図1に示すように、第2結合部材24,25を介して第1結合部材26が芯金本体20の下側に溶接または取付具等により結合されている。図1に示すように、第1結合部材26は、空間27aおよび底部27cを持つ金属製の有底形状をなす縦部材27と、縦部材27の空間27aに装填されたキャスタブル材料28と、第1結合部材26の外周側、内周側および底部に固定された第3係合部93とをもつ。第3係合部93は、V形状またはU形状等の異形状の係止部93xをもつ。上記したように第2係合部92および第3係合部93は、不焼成のれんがで形成された下耐火物層5に埋設されており、下耐火物層5の脱落を抑制させている。なお、縦部材27、第1係合部91、第2係合部92、第3係合部93は、金属(例えば炭素鋼、合金鋼)で形成されている。
【0022】
以上説明したように本実施形態によれば、使用期間が長期にわたったとしても、芯金2からの下耐火物層5の脱落を抑制させることができる。更に本実施形態によれば、図1に示すように、下耐火物層5の上面5uに形成されているリング状をなす凸部7と、上耐火物層4の下面4dに形成されているリング状をなす凹部8とが互いに嵌合している。この嵌合により、上耐火物層4の下面4dと下耐火物層5の上面5uとの境界域6における溶湯の進入を抑制させることができる。従って、進入した高温の溶湯で当該境界域6、ひいては金属製の芯金本体20が溶損することが抑制される。よって、浸漬管1の耐久性が高められている。
【0023】
本実施形態によれば、図1に示すように、凹部8の凹外周側面80と凸部7の凸外周側面70とが互いに対面し、浸漬管1の外周側において、溶湯(溶鋼)に対してシール作用を示す。凹外周側面80と凸部7の凸外周側面70とは角度θ1で傾斜しているため、外周側におけるシール距離および溶湯進入抵抗を増加できる。また図2に示すように、凹部8の凹内周側面82と凸部7の凸内周側面72と互いに対面し、浸漬管1の内周側において、溶湯(溶鋼)に対してシール作用を示す。凹部8の凹内周側面82と凸部7の凸内周側面72とは角度θ2で傾斜しているため、内周側におけるシール距離および溶湯進入抵抗を確保できる。
【0024】
図1から理解できるように、芯金本体20の上部20uは上耐火物層4に埋設されており、芯金本体20の下端部20dは下耐火物層5内の第1結合部材26の内部に埋設されている。このため、下耐火物層5および上耐火物層4の連結結合性を高めるのに有利である。
【0025】
使用時には、一般的には、溶湯の湯面やスラグラインの位置(図2に示す位置XA)は、上耐火物層4の外周壁面4pに対面する。但し、位置XAは、下耐火物層5の外周壁面5pに対面しても良い。図2に示すように、下耐火物層5の上面5uから突出する凸部7の突出高さはt1として示される。径方向における凸部7の幅はD1として示される。D1>t1の関係とされている。図1に示すように、第2係合部92は、境界域6に存在するように芯金本体20に固定された第2結合部材24,25に結合されている第1結合部材26の鍔状フランジ部26fに固定されている。このため、下耐火物層5のうち境界域6付近に存在する上面5u側の耐火物部分を補強できる。これにより下耐火物層5の上面5u付近を補強でき、ひいては下耐火物層5の上面5uに形成されている凸部7付近を補強できる。このため当該境界域6付近を補強させるのに有利である。
【0026】
本実施形態によれば、浸漬管1の使用時(真空脱ガス処理時)には溶湯通路30側は真空される。このため、周方向に連続する筒形状をなすように金属で形成された芯金本体20は、外気遮断性を有しており、更に、浸漬管1の外周側に存在する外気を溶湯通路30側に吸い込むことを抑制する機能を有することができる。当該境界域6は微小隙間を形成させるおそれがある。浸漬管1の外方に存在する外気が当該境界域6を介して矢印W方向(図1参照)へ溶湯通路30側に吸い込まれようとするときであっても、金属で形成されている芯金本体20は外気遮断性を有するため、溶湯通路30側への矢印W方向への外気の吸込を抑制させることができる。
【0027】
(実施形態2)
図7は実施形態2の概念を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図7に示すように、耐火物層3は、芯金2の上部に機械的に係合する上耐火物層4と、上耐火物層4の下側に位置する下耐火物層5と、下耐火物層5に固定された縦部材27と縦部材27から外方に延設された鍔状フランジ部26fとをもつ金属製の第1結合部材26と、第1結合部材26の鍔状フランジ部26fと芯金2とに結合されることにより下耐火物層5を芯金2に吊持させる金属製の第2結合部材24,25とを備えている。そして、第1結合部材26は、下耐火物層5の内部に埋設され且つ上面が開口する上面開口部27bおよび空間27aをもつ断面でU字形状をなす縦部材27と、縦部材27の上端部27uから外方に延設された鍔状フランジ部26fとをもつ。第2結合部材24,25は、第1結合部材26の鍔状フランジ部26fに対面しつつ結合された横方向に延びる横辺部24xと、芯金2の内周部に対面しつつ結合された縦辺部24yとをもつ。
【0028】
図7に示すように、芯金本体20には、水平方向に沿って延設された金属製(例えば炭素鋼または合金鋼)の横係合部90が結合されており、上耐火物層4に埋設されて機械的に係合している。横係合部90には、縦方向に延設された第4係合部94が延設されている。第4係合部94は金属製(例えば炭素鋼または合金鋼)である。第4係合部94の下端部94dは、上耐火物層4から境界域6を下方に向けて貫通しており、下耐火物層5の下端5dx近くまで延設されている。第1結合部材26の縦部材27には第3係合部93が結合されている。複数の第3係合部93のうちの一部には、縦方向に延びる金属製(例えば炭素鋼または合金鋼)の第5係合部95が結合されている。第5係合部95は係止部95xをもち、下耐火物層5に縦方向に沿って埋設されており、下耐火物層5の下端5dx付近まで延設されており、下耐火物層5の脱落を一層抑制させる。
【0029】
(実施形態3)
図8は実施形態3の概念を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図8に示すように、下耐火物層5は、中心軸線1pの回りに巡らされた内周側れんが層50と、中心軸線1pの回りに巡らされた外周側れんが層52とで形成されている。内周側れんが層50と外周側れんが層52との間には、周方向境界域60が形成されている。周方向境界域60は、内周側れんが層50および外周側れんが層52の製造時において内周側れんが層50と外周側れんが層52との間に焼失可能な紙材、わら材等の有機系材料を配置し、焼失させることにより形成できる。
【0030】
使用時には、筒形状をなす金属(例えば炭素鋼または合金鋼)製の芯金本体20が高温に加熱されるため、外径方向(図5に示す矢印Dp方向)に拡径する。このとき、万一、外周側れんが層52に亀裂が生成されるときには、その亀裂が内周側につまり溶湯通路30側に進展するおそれがあり、好ましくない。そこで本実施形態によれば、図8に示すように、下耐火物層5は、中心軸線1pの回りに巡らされた内周側れんが層50と、中心軸線1pの回りにほぼ同軸的に巡らされた外周側れんが層52とで形成されており、周方向境界域60を形成している。このように内周側れんが層50および外周側れんが層52は、互いに周方向境界域60を介して対面している。内周側れんが層50および外周側れんが層52は、金属製の第2係合部92および第3係合部93を埋設させているため、これらを熱損傷または溶損させないように、不焼成のれんがで形成されている。本実施形態によれば、凸部7の凸外周側面70は、外周側れんが層52の上面52uに形成されている。凸部7の凸内周側面72は、内周側れんが層50の上面50uに形成されている。このように凸部7の凸外周側面70および凸内周側面72は、互いに独立可能な別部材(外周側れんが層52(外周耐火物層)および内周側れんが層50(内周耐火物層)に形成されているため、熱膨張時に独立して変位することが許容される。このため凸部7および凹部8における亀裂抑制に貢献できる。すなわち、本実施形態によれば、外周側れんが層52(外周耐火物層)および内周側れんが層50(内周耐火物層)は独立変位性がある。このため浸漬管1の使用時において熱膨張し、外周側れんが層52に亀裂が発生するときであっても、その亀裂が内周側れんが層50に展開することは抑制され易い。また、内周側れんが層50に亀裂が発生するときであっても、その亀裂が外周側れんが層52に展開することは抑制され易い。
【0031】
(実施形態4)
本実施形態は前記した実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。第1結合部材26は中心軸線1p周りで1周するようにリング形状をなしている。熱膨張等により芯金本体20が径外方向に膨張するとき、万一、第1結合部材26の空間27aに装填されているキャスタブル材料28に亀裂が発生するときであっても、その亀裂は空間27a内のキャスタブル材料28内で収まり、下耐火物層5の外周部または内周部に伝搬されることが抑制される。
【0032】
(適用形態)
図9は適用形態を示す。図9に示すように、減圧脱ガス装置とも呼ばれる真空脱ガス装置は、環流式であり、高い真空状態に真空される上部槽100と、下部槽110と、互いに並設された2個一対の浸漬管1R,1Lとを有する。操業時には、浸漬管1R,1Lが取鍋200にセットされる。この状態で、容器としての取鍋200の溶湯230(溶鋼)は、一方の浸漬管1L(上昇管)の溶湯通路30を上昇し、他方の浸漬管1R(下降管)の溶湯通路30を下降して取鍋200に戻るように溶湯230が環流される。このように浸漬管1R,1Lを介して取鍋200内の溶湯を環流させることにより、取鍋200内の溶湯の脱ガスが進行する。溶鋼等の溶湯から排出されガスは矢印W方向に排出される。図示しないものの、芯金は真空脱ガス装置に直接的にまたは間接的に吊持されている。
【0033】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。上耐火物層4および下耐火物層5の材質は上記したものに限定されるものではない。下耐火物層5は、不焼成のれんが53で形成されているが、焼成されたれんがで形成されていても良い。上記した記載から次の技術的思想が把握できる。
【0034】
[付記項1]請求項1において、更に、前記上耐火物層および前記下耐火物層の境界域において前記上耐火物層および前記下耐火物層のうちの一方に設けられた凸部と、前記上耐火物層および前記下耐火物層の境界域において前記上耐火物層および前記下耐火物層のうちの他方に設けられ前記凸部に嵌合する凹部とを備えており、前記凸部および前記凹部の嵌合により前記上耐火物層および前記下耐火物層の当該境界域における溶湯の進入を抑制させることを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。この場合、上耐火物層および下耐火物層の境界域における凸部および凹部の嵌合により、上耐火物層および下耐火物層の境界域における溶湯の進入を抑制させることができる。
【0035】
[付記項2]付記項1において、前記凸部および前記凹部は、前記上耐火物層および前記下耐火物層の境界域において前記中心軸線の回りを少なくとも1周するようにそれぞれ設けられており、前記中心軸線に沿った断面において、前記凸部は、凸外周側面と凸内周側面とを有しており、且つ、前記凹部は、前記凸部の前記凸外周側面に対面する凹外周側面と、前記凸部の凸内周側面に対面する凹内周側面とを有することを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。
【符号の説明】
【0036】
1は浸漬管、1pは中心軸線、2は芯金、20は芯金本体、21はフランジ部、3は耐火物層、30は溶湯通路、4は上耐火物層、5は下耐火物層、50は内周側れんが層(内周耐火物層)、52は外周側れんが層(外周耐火物層)、6は境界域、7は凸部、70は凸外周側面、72は凸内周側面、8は凹部、80は凹外周側面、82は凹内周側面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス装置に用いられる浸漬管であって、
前記真空脱ガス装置に直接的または間接的に取り付けられ縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、前記中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成するように前記芯金の内周側および外周側に筒形状に設けられた耐火物層とを備えており、
前記耐火物層は、前記芯金の上部に機械的に係合する上耐火物層と、前記上耐火物層の下側に位置する下耐火物層と、前記下耐火物層に固定され前記下耐火物層の上面において露出するように延設された鍔状フランジ部をもつ金属製の第1結合部材と、前記第1結合部材の前記鍔状フランジ部と前記芯金とに結合されることにより前記下耐火物層を前記芯金に吊持させる金属製の第2結合部材とを備えていることを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項2】
請求項1において、前記第1結合部材は、前記下耐火物層の内部に埋設され且つ上面が開口する上面開口部および空間をもつ縦部材と、前記縦部材の上端部から外方に延設された前記鍔状フランジ部とをもち、
前記第2結合部材は、前記第1結合部材の前記鍔状フランジ部に対面しつつ結合された横方向に延びる横辺部と、前記芯金の内周部または外周部に対面しつつ結合された縦辺部とをもち、少なくとも断面L字形状をなしている断面L字形状部を備えていることを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項3】
請求項2において、前記芯金の下端部は前記第1結合部材の前記縦部材の前記空間に挿入されており、前記空間にはキャスタブル材料が装填されていることを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11002(P2013−11002A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145436(P2011−145436)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】