説明

真空遮断器の圧力診断装置

【課題】点検対象の遮断器を含み、開閉装置の全フィーダを停電させることなく、容易にかつ安全に、真空遮断器の圧力健全性を診断できる真空遮断器の圧力診断装置を提供する。
【解決手段】接離自在な一対の接点19A,16Aと、該接点と電気的に絶縁された金属部17とを内蔵した真空容器11と、前記真空容器11の内部から外部に貫通する前記一対の接点及び前記金属部のそれぞれに接続された導体16,19,17,とを備えた真空遮断器の圧力診断装置100であって、前記金属部の導体17に電気的に接続され、前記金属部17を課電するための直流電圧発生装置106と、前記金属部の電位変動を測定する手段108とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置などで用いられる真空遮断器の圧力診断装置に係り、更に詳しくは、開閉装置の運転中に真空遮断器の圧力健全性を診断できる真空遮断器の圧力診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低コスト・省スペース化のニーズに応えるべく、真空遮断器を絶縁容器内に収納した開閉装置や、単一真空容器内に遮断、断路、接地の複数の機能を併せ持つ開閉装置などが、製品化されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−153320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空遮断器の耐電圧性能および遮断性能は、構成部品である真空容器の内部の圧力に依存する。一般に、真空中の放電特性を示すものとして、真空容器の内部の圧力と電極間距離との積に対する放電電圧の相関を表すパッシェンカーブが知られている。図5は、電極間のギャップ長さが5mmのときの真空容器の内部の圧力と放電電圧との相関を示す特性図である。図5に示すように、真空容器の内部の圧力がある値以上に上昇すると(真空度が低下すると)、急激に絶縁性能が低下する。真空遮断器では、真空容器の破損故障ばかりでなく、雰囲気ガスの長期的透過によっても圧力が上昇する可能性があるため、定期的な点検が要求されている。
【0005】
一般的な点検方法としては、真空遮断器を開路状態とし、製造者が指定する値の電圧を極間に印加して、放電が発生しなければ、内部の圧力は正常と判断する、いわゆる耐電圧試験が行われている。従来の開閉装置では、真空遮断器を開閉装置の外部に引き出せる構造となっているものが多い。このため、開閉装置の母線を課電したまま点検対象の遮断器を取り外し、当該遮断器から供給される負荷を除くことによって、他のフィーダの運転状態を維持したまま、点検対象の遮断器の圧力健全性を点検することができる。一方、近年の開閉装置では、点検用の接地開閉器やケーブルヘッドから電圧を印加して真空遮断器の圧力健全性を評価する。いずれの開閉装置においても、搭載される真空遮断器の圧力健全性を確認するには、当該遮断器に接続される負荷を停電せざるを得ない。
【0006】
本発明は、上記の背景を鑑みて検討したもので、点検対象の遮断器を含み、開閉装置の全フィーダを停電させることなく、容易にかつ安全に、真空遮断器の圧力健全性を診断できる真空遮断器の圧力診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、接離自在な一対の接点と、該接点と電気的に絶縁された金属部とを内蔵した真空容器と、前記真空容器の内部から外部に貫通する前記一対の接点及び前記金属部のそれぞれに接続された導体とを備えた真空遮断器の圧力診断装置であって、前記金属部の導体に電気的に接続され、前記金属部を課電するための直流電圧発生装置と、前記金属部の電位変動を測定する手段とで構成したものとする。
【0008】
また、第2の発明は、接離自在な一対の接点と、該接点と電気的に絶縁された金属部とを内蔵した真空容器と、前記真空容器の内部から外部に貫通する前記一対の接点及び前記金属部のそれぞれに接続された導体とを備えた真空遮断器に用いる真空遮断器の圧力診断装置であって、前記金属部の導体に電気的に接続され、前記金属部を課電するための直流電圧発生装置と、前記接点の少なくとも一方を系統電圧に課電した状態で前記接点と前記金属部間の放電により生起する前記金属部の電位変動を測定する手段とで構成したものとする。
【0009】
さらに、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記金属部の電位変動を測定する手段を、一端を前記金属部に接続し、他端を接地に接続したコンデンサ列と、前記コンデンサ列の一部分の電位差を測定するための放電検出装置とで構成したものとする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記直流電圧発生装置と前記金属部の電位変動を測定する手段とは、万一放電した際の電流を抑制するための抵抗を介して、前記金属部に接続するものとする。
【0011】
更に、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記直流電圧発生装置は、直流電圧投入又は遮断時の過電圧を抑制するための抵抗を介して、前記コンデンサ列と接続するものとする。
【0012】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明のいずれかにおいて、前記コンデンサ列の一部分と並列にインピーダンス整合用抵抗を接続するものとする。
【0013】
更に、第7の発明は、第1乃至第6の発明のいずれかにおいて、前記コンデンサ列、前記放電電流抑制抵抗、前記過電圧抑制抵抗および前記インピーダンス整合用抵抗を収納したユニットと、前記ユニットと電気的にそれぞれ接続する前記直流電圧発生装置と、前記放電検出装置と、前記ユニット内の前記放電電流抑制抵抗と前記金属部とを接続させる絶縁電線とを備えるものとする。
【0014】
また、第8の発明は、接離自在な一対の接点と、該接点と電気的に絶縁された金属部とを内蔵した真空容器と、前記真空容器の内部から外部に貫通する前記一対の接点及び前記金属部のそれぞれに接続された導体とを備えた真空遮断器の圧力診断装置であって、前記金属部に取外し自在なゴムブッシングと、前記ゴムブッシング内で中心導体と対向してモールドされた電極と、前記接点の少なくとも一方を系統電圧に課電した状態で前記接点と前記金属部間の放電により生起する前記電極の電位変動を測定する手段とで構成したものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の真空遮断器の圧力診断装置によれば、真空容器内に配置された金属部に直流電圧を重畳させ、接点と金属部との間に系統電圧に直流電圧を重畳した高電圧を印加可能としたので、真空遮断器を運転状態のまま、真空遮断器の真空圧力を診断することができる。この結果、開閉装置の母線及び点検対象の遮断器を含む全フィーダを停電させることなく、真空遮断器の圧力健全性を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の真空遮断器の圧力診断装置の一実施の形態を接続した開閉装置を一部断面にて示す側面図である。
【図2】図1におけるA矢視から見た開閉装置の正面図である。
【図3】本発明の真空遮断器の圧力診断装置の一実施の形態を適用した開閉装置の動作を説明する側面図である。
【図4】本発明の真空遮断器の圧力診断装置の一実施の形態における放電検出信号を示す説明図である。
【図5】電極間のギャップ長さが5mmのときの雰囲気圧力と放電電圧との相関を示す特性図である。
【図6】本発明の真空遮断器の圧力診断装置の他の実施の形態を接続した開閉装置を一部断面にて示す側面図である。
【図7】本発明の真空遮断器の圧力診断装置の更に他の実施の形態を接続した開閉装置を一部断面にて示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の真空遮断器の圧力診断装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の真空遮断器の圧力診断装置の一実施の形態を接続した開閉装置を一部断面にて示す側面図、図2は図1におけるA矢視から見た開閉装置の正面図、図3は本発明の真空遮断器の圧力診断装置の一実施の形態を適用した開閉装置の動作を説明する側面図である。
【0018】
まず、開閉装置1000の構造について説明する。図1及び図2において、例えば乾燥空気やSF6ガス等の絶縁ガス1Gを内部に封入した絶縁容器1は、相間絶縁性を向上させるための2枚の絶縁仕切板3間に、3個の真空バルブ11を収納し、エポキシ樹脂で成形された絶縁容器本体2と、絶縁容器本体2の下側と上側に設けられた本体絶縁板4B,固定絶縁板4Aと、固定絶縁板4Aに着脱自在に配置された母線絶縁板6とを備えている。絶縁容器1の外面には接地層を設け、作業員等が接触した際の安全を確保している。
【0019】
真空バルブ11は内部を真空密閉してあり、金属ケース12と金属ケース12の上側及び下側に突出したセラミック部材の絶縁ブッシング13、14を設け、上側絶縁ブッシング13と下側絶縁ブッシング14の外側に設けた封着金具15に固定導体16と金属部としての試験導体17を取り付け、両導体間の図1上の右側に可動導体19を設けている。真空バルブ11は図1に示すように側面視略T字形に形成している。
【0020】
固定導体16は真空バルブ11の内部から上方の外部に向かって延び、外部で固定絶縁板4Aの支持部4Cに母線側導体23Aとともにボルト22で締め付け固定されている。固定導体16の内部先端には高融点金属部材例えばCu−Cr合金よりなる固定接点16Aが設けられている。母線側導体23Aは母線絶縁板6の母線23Bに接続している。
【0021】
下側ブッシング14に設けた封着金具15の内径にベローズ25設け、ベローズ25に取り付けられた試験導体17は、絶縁ガイド24及び固定ガイド29により支持され、バネ26により可動導体19の接触に応じて軸方向に移動する。試験導体17は途中に設けたバネ26を圧縮している止板27や、複数の薄い銅板からなるフレキシブル導体28を、その突出端に嵌め込んだナット31で締め付け固定する。したがって、可動導体19が試験導体17と接触する際には、可動導体19の下方向への押圧力と試験導体17を上方向に向けるバネ26の圧縮力とが作用し、可動導体19と試験導体17との接触安定性を確保できる。なお、試験導体17はフレキシブル導体28を介して試験端子32に接続されている。
【0022】
軸方向に対して直角方向に延びている可動導体19は、主軸35を支点として固定導体16と試験導体17との間を移動し、両者と接離する。固定接点16Aと可動接点19Aとの接離によって、主回路の投入および遮断が実現される。
【0023】
可動導体19は真空バルブ11の内部から図1上の右側の外部に延びており、封着金具15に固定されているベローズ36を貫通している。このベローズ36により、真空気密を維持したまま、可動導体19の移動が可能になる。可動接点19Aの材料は上述の固定接点16Aと同じである。接続導体37にて可動導体19を挟持し、両導体の貫通穴に挿入した主軸35を、主軸35の先端のネジにナットを締め付けることで固定している(図示せず)。
【0024】
図3において、可動導体19の外側端と連結した操作機構部38を駆動することにより、可動導体19の内側部は主軸35を介して上、下方向に回動し、図3に示す4つの位置に停止することができる。即ち、可動導体19が回動するのに応じて、可動接点19Aが固定接点16Aに接触する入位置Y1と、入位置より下側に回動して電流を遮断する切位置Y2と、更に下側に回動して雷などで絶縁破壊しないこと及び負荷導体側で作業員が感電しない絶縁距離を充分に取った断路位置Y3と、更に下側に回動して可動導体19が試験導体17と接触した試験位置Y4の4つの位置である。
【0025】
試験位置Y4では、試験端子32を接地すれば、ケーブル43に接続される負荷を接地できる。また、試験端子32から所定の直流電圧を印加し、ケーブル43の健全性を評価することもできる。この真空バルブ11では、SF6ガスなどよりも高絶縁媒体である真空中にて、可動接点19A、固定接点16A、試験導体17を一箇所に集合化したので、従来の開閉装置に比べて著しく小型化できる。
【0026】
操作機構部38のU字金具38Aとこれに挿入した可動導体19の先端部とは、ピン38Bにて連結されている。U字金具38Aは絶縁操作ロッド38Cの一端に取り付けられている。絶縁操作ロッド38Cの他端とその一端を連結した操作レバー38Dは、その他端をシャフト38Eに取り付けられている。この結果、絶縁容器1の外部に設けた操作機構(図示せず)にてシャフト38Eを回転させることで、可動導体19を上述したように移動させることができる。
【0027】
接続導体37は負荷側導体41と接続している。負荷側導体41はL形通電部を形成し、その先端でケーブルヘッド45及び負荷ケーブル43に接続している。
【0028】
次に、圧力診断装置100の構成を図1を用いて説明する。
遮断器を開路状態とし、製造者が指定する値の電圧を極間に印加して、放電が発生しなければ、内部の圧力が正常と判断するのが一般的な圧力診断方法である。本実施の形態では、開閉装置1000を運転した状態、すなわち真空バルブ11内の固定導体16、固定接点16A、可動接点19Aおよび可動導体19が系統電圧に課電された状態(上述した可動導体19が入位置Y1に停止した状態)にて、試験端子32に直流電圧を印加する。このとき、主回路と試験端子32の間(真空バルブ11内の固定導体16と試験導体17の間)には、系統電圧に直流電圧が重畳された状態となり、この重畳電圧を上記の製造者が指定する値になるように設定すれば、一般的な真空遮断器の圧力診断方法と等価になる。つまり、開閉装置1000を運転したまま、系統電圧を積極的に利用して真空遮断器の圧力診断をすることができる。
【0029】
図1において、試験端子32には、直流電圧を印加するためのゴムブッシング101が取り付けられている。試験端子自身に十分な絶縁性能がある場合には、このゴムブッシング101は不要である。ゴムブッシング101の中心導体102を試験端子32にねじ込み、ゴムブッシング101を試験端子32と中心導体102で挟持する。中心導体102の先端には絶縁電線103の一端が取り付けられている。絶縁電線103の他端は、ユニット104の高圧端子105に接続されている。
【0030】
直流電圧発生装置106の出力は、ユニット104の直流電圧入力端子107に接続している。ユニット104と直流電圧発生装置106の接地は、両者とも開閉装置1000の接地母線に接続している。なお、この直流電圧発生装置106は、電気設備点検作業者が所有している絶縁抵抗計でも代用することができる。
【0031】
次に、上述したユニット104の内部構成を図1を用いて説明する。
ユニット104には、3つの抵抗A、B、Cと2つのコンデンサC0、C1の計5つの素子が収納されている。高圧端子105に一端が接続された抵抗Aは、診断中に主回路と試験端子32との間で放電が発生しても、その放電電流を人間が感じる限界(感知限界)以下に抑制するためのものである。この抵抗Aによって、万一、ユニット104内の他の素子が故障して、作業者が操作する直流電圧発生装置106や放電検出装置108側に高電圧が出力されたとしても、作業者の安全を確保できる。
【0032】
なお、人間の感知限界は約1mAと言われており、例えば、系統電圧22kVの場合には、抵抗Aの値を下記式で定まる12.7MΩ以上にすれば、作業者の安全が確保できる。
【0033】
対地電圧22/√3kV÷感知限界1mA=12.7MΩ・・・(1)
抵抗Bは、その一端を直流電圧入力端子107に接続する。抵抗Bは直流電圧発生装置106を投入遮断(ON・OFF)したときの過電圧を抑制するためのもので、詳細な説明は後述する。なお、抵抗Bの他端は抵抗Aの他端に接続されている。すなわち、抵抗Aおよび抵抗Bを介して、直流電圧が試験端子32に印加される。
【0034】
主回路から試験端子32への放電はコンデンサ分圧方式にて検出する。コンデンサC0とC1を直列接続したコンデンサ列を用意し、その一端を抵抗Aと抵抗Bの接続点に、他端を接地に接続する。コンデンサ列の接地側のコンデンサC1の両端の電位差が、放電検出装置108の入力となる。主回路から試験端子32への放電によって抵抗Aと抵抗Bの接続点に高電圧が誘起され、同電圧のコンデンサC0とC1の分圧比分が放電検出装置108に入力される。
【0035】
放電検出装置108には、放電波形を測定できるようにオシロスコープを用いてもよいし、あるいは、簡易的に、放電が発生したときに動作するブザー回路やリレー回路を接続してもよい。なお、コンデンサC1と並列に抵抗Cを接続しているが、これは、接続するオシロスコープ、ブザー回路、あるいはリレー回路の入力インピーダンスによって測定電圧が変化するのを防ぐためのインピーダンス整合用のもので、あらかじめある程度小さい抵抗を挿入している。
【0036】
次に、上述した本発明の圧力診断装置100の使用手順を説明する。
先ず、試験端子32を高電圧検電器で検電し、真空バルブ11に圧力劣化が発生していないことを確認する。次に、絶縁操作棒(図示しない)によってゴムブッシング101を試験端子32に挿入し、同絶縁操作棒によって中心導体102を試験端子32に締め付け、ゴムブッシング101を固定する。絶縁電線103、ユニット104、直流電圧発生装置106、および放電検出装置108を接続しておき、絶縁操作棒にて絶縁電線103の他端を中心導体102に連結して、診断の準備が完了する。この状態にて、直流電圧発生装置106を投入(ON)し、放電検出装置108にて主回路から試験端子32への放電発生の有無を確認する。
【0037】
次に、本発明の圧力診断装置100の動作原理を図1及び図4を用いて説明する。図4は、本発明の真空遮断器の圧力診断装置の一実施の形態における放電検出信号を示す説明図である。具体的には、直流電圧発生装置106にて直流電圧を投入遮断(ON・OFF)した時、および主回路と放電端子32の間に放電が発生した時の放電検出装置108への入力信号波形を示す。
【0038】
直流電圧発生装置106を投入(ON)すると、主回路−試験端子間で放電が発生しない場合、直流電圧発生装置106−抵抗B−コンデンサC0−コンデンサC1−接地−直流電圧発生装置106の回路にて過渡現象が発生し、コンデンサC1の両端、すなわち放電検出装置108の入力信号は、図4の波形W1のようになる。抵抗Bが存在しない場合には、過渡電圧のピークが上昇して波形W11のようになり、放電検出装置108の許容入力電圧を超えてしまう。
【0039】
主回路−試験端子間で放電しなければ、コンデンサC0は、印加した直流電圧で充電された状態となる。このとき、コンデンサC1は抵抗Cで短絡されているため、放電検出装置108の入力電圧はゼロに落ち着く(波形W2)。
【0040】
直流電圧印加中に、主回路−試験端子間で放電が発生すると、コンデンサC0に蓄積された電荷が、抵抗A−試験端子32―真空バルブ11内の放電経路―主回路―系統に接続された変圧器―接地―コンデンサC1−コンデンサC0−抵抗Aの回路で放電され、放電検出装置108の入力信号は、波形W3に示すように、過渡振動に系統電圧の交流成分が重畳された電圧となる。
【0041】
主回路−試験端子間の放電が停止すると、再び、直流電圧発生装置106−抵抗B−コンデンサC0−コンデンサC1−接地−直流電圧発生装置106の回路で過渡現象が発生し、コンデンサC0が直流電圧で充電され、コンデンサC1の両端、すなわち放電検出装置108の入力信号は、W1と同様になる(波形W4)。
【0042】
直流電圧を遮断(OFF)すると、コンデンサC0に蓄積された電荷が、コンデンサC0−抵抗B−直流電圧発生装置106―接地―コンデンサC1−コンデンサC0の回路で放電され、放電検出装置108の入力信号は、波形W5のようになる。
【0043】
なお、直流電圧を印加しない状態にて、主回路−試験端子間で放電が発生した場合には、放電検出装置108には交流成分だけが入力され、その波形はW6のようになる。
【0044】
また、本実施の形態では、真空バルブ11内の固定導体16、固定接点16A、可動接点19Aおよび可動導体19が系統電圧に課電された状態(可動導体19が入位置Y1に停止した状態)において説明したが、固定接点16A、及び可動接点19Aのいずれか一方のみに系統電圧に課電された状態、可動導体19が切位置Y2に停止した状態、可動導体19が断路位置Y3に停止した状態のいずれかの状態のときにも、同様に真空遮断器の圧力診断を行うことができる。
【0045】
本発明の真空遮断器の圧力診断装置の一実施の形態によれば、真空容器内に配置された試験導体17に直流電圧を重畳させ、接点と試験導体17との間に系統電圧に直流電圧を重畳した高電圧を印加可能としたので、真空遮断器を運転状態のまま、真空遮断器の真空圧力を診断することができる。この結果、開閉装置の母線及び点検対象の遮断器を含む全フィーダを停電させることなく、真空遮断器の圧力健全性を診断することができる。また、万一、主回路−試験端子間で放電したり、ユニット104の他の素子が故障して、直流電圧発生装置106や放電検出装置108側に高電圧が出力されても、抵抗Aによって放電電流が人の感知限界以下に制限されるため、操作する作業者の安全を確保できる。さらに、この放電電流は系統の保護リレーの動作電流以下であるため、誤って、系統の地絡故障を起こす心配もない。
【0046】
次に、本発明の真空遮断器の圧力診断装置の他の実施の形態を図6を用いて説明する。図6は本発明の真空遮断器の圧力診断装置の他の実施の形態を接続した開閉装置を一部断面にて示す側面図である。この図6において図1と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本発明の真空遮断器の圧力診断装置100にて圧力診断実施中に、瞬時的な信号が発生した場合、この信号が真の放電か、あるいはノイズかの識別が難しいケースも想定される。このような場合、放電の発生をしばらくの間継続して監視したいということが多い。本発明の一実施の形態の場合、直流高電圧を印加することなどから、例えば、絶縁電線103の絶縁性の確保など、常時作業者が圧力診断装置近傍に滞在する必要がある。このため、数時間以上の継続監視期間が必要とされる場合には、本発明の一実施の形態では、対応することは難しかった。
本発明の真空遮断器の圧力診断装置の他の実施の形態を用いることにより、主回路から試験端子32への放電の発生を暫時監視することができる。この暫時監視の手順を以下に示す。
(1)絶縁操作棒にて絶縁電線103を試験端子32側から取り外す。この場合、主回路―試験端子間で放電が発生し、仮にこの放電が継続していても、ユニット104の抵抗Aによって放電電流が1mA以下に制限されているため、この状態におけるこの取り外しによるアークは、持続することなく安全上の問題はない。
(2)図6に示すように、放電検出装置108によって、主回路から試験端子32への放電を監視する。具体的には、ゴムブッシング101にモールドしておいた金属端子110と別途設けたコンデンサC2を計測用電線111により配線接続し、中心導体102−金属端子110間の静電容量とコンデンサC2の分圧回路によって、試験端子32の電位を監視する。
【0047】
本発明の真空遮断器の圧力診断装置の他の実施の形態によれば、中心導体102−金属端子110間の静電容量とコンデンサC2の分圧回路によって、試験端子32の電位を監視するので、高電圧になる部位の発生を防止することができる。この結果、圧力診断装置を安全にしばらくの間、無人で、真空遮断器の近傍に配置することができる。また、計測用電線111に対する絶縁性能は、特別なものでないため、例えば、開閉装置の筺体内に圧力診断装置を配置することも可能となり、開閉装置設備の運転信頼性を損なうことがない。
【0048】
次に、本発明の真空遮断器の圧力診断装置の更に他の実施の形態を図7を用いて説明する。図7は本発明の真空遮断器の圧力診断装置の更に他の実施の形態を接続した開閉装置を一部断面にて示す側面図である。
本発明の真空遮断器の圧力診断装置の更に他の実施の形態を用いることにより、ケーブルの健全性を評価する直流耐電圧試験が開閉装置1000を運転した状態のまま実施できる。具体的な手順としては、
(1)該当真空遮断器において、図7に示す試験位置Y4に可動導体16を位置させる。
(2)図7に示すように、絶縁電線103、ユニット104および直流電圧発生装置106を接続しておき、絶縁操作棒によって、絶縁電線103の他端を中心導体102に接続する。
(3)試験端子32に直流電圧を印加する。このとき、主回路とケーブル43の間には、系統電圧に直流電圧が重畳された状態となり、この重畳電圧を製造者が指定する耐電圧値になるように設定すればよい。
【0049】
本発明の真空遮断器の圧力診断装置の更に他の実施の形態によれば、母線23Bが課電された状態で、ケーブル43の健全性を評価する直流耐電圧試験が行える。この結果、仮に試験端子32側に放電しても、抵抗Aによって放電電流が人の感知限界以下に抑制されるため、直流電圧発生装置106を操作する作業者の安全を確保できる。また、放電電流は系統の保護リレーの動作電流以下であるため、系統の地絡故障が発生する恐れもない。
【符号の説明】
【0050】
1 絶縁容器
11 真空バルブ
32 試験端子
100 圧力診断装置
101 ゴムブッシング
103 絶縁電線
104 ユニット
106 直流電圧発生装置
108 放電検出装置
A 抵抗
B 抵抗
C 抵抗
C0 コンデンサ
C1 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在な一対の接点と、該接点と電気的に絶縁された金属部とを内蔵した真空容器と、前記真空容器の内部から外部に貫通する前記一対の接点及び前記金属部のそれぞれに接続された導体とを備えた真空遮断器の圧力診断装置であって、
前記金属部の導体に電気的に接続され、前記金属部を課電するための直流電圧発生装置と、
前記金属部の電位変動を測定する手段とで構成した
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。
【請求項2】
接離自在な一対の接点と、該接点と電気的に絶縁された金属部とを内蔵した真空容器と、前記真空容器の内部から外部に貫通する前記一対の接点及び前記金属部のそれぞれに接続された導体とを備えた真空遮断器に用いる真空遮断器の圧力診断装置であって、
前記金属部の導体に電気的に接続され、前記金属部を課電するための直流電圧発生装置と、
前記接点の少なくとも一方を系統電圧に課電した状態で前記接点と前記金属部間の放電により生起する前記金属部の電位変動を測定する手段とで構成した
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空遮断器の圧力診断装置において、
前記金属部の電位変動を測定する手段を、一端を前記金属部に接続し、他端を接地に接続したコンデンサ列と、
前記コンデンサ列の一部分の電位差を測定するための放電検出装置とで構成した
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空遮断器の圧力診断装置において、
前記直流電圧発生装置と前記金属部の電位変動を測定する手段とは、万一放電した際の電流を抑制するための抵抗を介して、前記金属部に接続する
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空遮断器の圧力診断装置において、
前記直流電圧発生装置は、直流電圧投入又は遮断時の過電圧を抑制するための抵抗を介して、前記コンデンサ列と接続する
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空遮断器の圧力診断装置において、
前記コンデンサ列の一部分と並列にインピーダンス整合用抵抗を接続する
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の真空遮断器の圧力診断装置において、
前記コンデンサ列、前記放電電流抑制抵抗、前記過電圧抑制抵抗および前記インピーダンス整合用抵抗を収納したユニットと、
前記ユニットと電気的にそれぞれ接続する前記直流電圧発生装置と、前記放電検出装置と、
前記ユニット内の前記放電電流抑制抵抗と前記金属部とを接続させる絶縁電線とを備える
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。
【請求項8】
接離自在な一対の接点と、該接点と電気的に絶縁された金属部とを内蔵した真空容器と、前記真空容器の内部から外部に貫通する前記一対の接点及び前記金属部のそれぞれに接続された導体とを備えた真空遮断器の圧力診断装置であって、
前記金属部に取外し自在なゴムブッシングと、
前記ゴムブッシング内で中心導体と対向してモールドされた電極と、
前記接点の少なくとも一方を系統電圧に課電した状態で前記接点と前記金属部間の放電により生起する前記電極の電位変動を測定する手段とで構成した
ことを特徴とする真空遮断器の圧力診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−277909(P2010−277909A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130598(P2009−130598)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】