説明

真空遮断器

【課題】簡単な構造で、かつ発熱を抑えながらチャタリングを抑制することのできる真空遮断器を提供する。
【解決手段】可動側導電軸13および固定側導電軸18とほぼ同一軸線上に配置した収納用固定導体20をボルトによって上部端蓋2に固定し、この収納用固定導体20内に形成した収納空部内に、可動側導電軸13および固定側導電軸18とほぼ同一軸線上に配置されると共に、可動電極12の動作軸方向に移動可能に衝撃吸収用ウエイト21と、この衝撃吸収用ウエイト21と上部端蓋2間に介在した衝撃吸収用弾性体22と、衝撃吸収用ウエイト21を接続用端面19側の定常位置に保持する復帰ばね23とを収納している。閉極時の衝撃を受けても、収納用固定導体20は電気的な接続を不安定にするような積極的な摺動や移動を生じないのに対し、衝撃吸収用ウエイト21は上部端蓋2側に反発移動し、閉極時の衝撃エネルギを運動エネルギとして吸収または減衰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突き合わせ接触の固定電極および可動電極を有する真空遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空遮断器は、真空状態を保持した真空容器内で固定電極から可動電極間を開極して電流遮断を行うように構成したもので、固定電極および可動電極は突き合わせ接触であるため、閉極時に可動電極が跳ね返りを繰り返すチャタリングを発生することが知られている。このチャタリングが大きいと、電極が消耗しダメージをうけるため、チャタリングをできるだけ抑制する必要がある。
【0003】
従来の真空遮断器では、上述したチャタリングを防止するために、固定電極を接合した固定側導電軸の後方部に可動電極側からの閉極時の衝撃力を受けて移動可能な中間導体と、この中間導体を固定側導電軸側に付勢した復帰ばねとを配置し、閉極時の可動電極から伝達された衝撃力を受けて中間導体を復帰ばねに抗して移動させ、可動電極の閉極時における跳ね返り動作の原因となる衝突エネルギを吸収するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−339934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の真空遮断器では、閉極時の可動電極から伝達された衝撃力を受けて移動する中間導体は、固定電極と一方の端子間を電気的に接続する通電部も形成しているため、中間導体の移動時においても電気的な接続関係を保持するための摺動接触構造が必要となる。従って、この中間導体は、閉極時の可動電極からの衝撃力を受けたときに移動する機能と、この移動時にも電気的な摺動接触状態を保持する機能とを満足しなければならず、構造が複雑になったり同部での発熱が大きくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構造で、かつ発熱を抑えながらチャタリングを抑制することのできる真空遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、真空容器内に、固定側導電軸に接合した固定電極と、前記固定側導電軸とほぼ同一軸線上に配置した可動導電軸に接合すると共に前記真空容器内の真空度を保持しながら開閉可能にした可動電極とを対向して配置し、前記固定電極および前記固定側導電軸を一方側の端子に電気的に接続し、前記可動電極および前記可動側導電軸を他方側の端子に電気的に接続した真空遮断器において、前記固定側導電軸の反固定電極側に位置すると共に前記固定側導電軸と前記一方側の端子間を電気的に接続して通電路を形成する収納用固定導体と、閉路時の前記可動電極から前記固定電極および前記固定側導電軸を介して前記収納用固定導体へ伝達される衝撃を受けるように前記収納用固定導体を支持固定した支持固定手段と、前記収納用固定導体の前記固定側導電軸と反対側に設けられて、前記収納用固定導体が受けた衝撃を反発移動による運動エネルギとして吸収する衝撃吸収用ウエイトとを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の真空遮断器において、前記衝撃による前記衝撃吸収用ウエイトの反発移動を抑制するように作用する衝撃吸収用弾性体を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による真空遮断器によれば、閉極時に可動電極から固定電極および固定側導電軸側に衝撃が伝達されるが、このときの衝撃エネルギは衝撃吸収用ウエイトの運動エネルギとして吸収または減衰されるため、可動電極が跳ね返り動作を繰り返すチャタリングは抑制される。しかも、固定側導電軸と一方側の端子間を電気的に接続する通電路を形成する収納用固定導体は、積極的に移動させることなく支持固定手段によって位置を固定した構造である。従来のように収納用固定導体を移動するように構成した場合には、電気的な接続関係を保持するための複雑な摺動接触構造が必要となり、構造が複雑化してしまうのに対して、摺動接触部を形成しない収納用固定導体は、固定側導電軸と一方側の端子間の電気的な接続関係を常に良好に保持し続けることができるので、通電時の発熱を抑え、また構造を簡単にすることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の本発明による真空遮断器によれば、閉極時の衝撃エネルギを運動エネルギとして吸収または減衰するために衝撃吸収用ウエイトと衝撃吸収用弾性体とを収納用固定導体の固定側導電軸と反対側に形成した収納空間部に容易に収納して配置することができるので、見掛け上の構成を簡略化することができる。また、衝撃吸収用ウエイトの移動によって消費する運動エネルギは、電気的な通電部とは無関係に衝撃吸収用ウエイトの質量や衝撃吸収用弾性体の弾性力などによって容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明に一実施の形態による碍子形真空遮断器の開極状態を示す縦断面図である。
【図2】図2は図1に示した碍子形真空遮断器における閉極時の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態による碍子形真空遮断器の縦断面図である。
碍管1の上端および下端を上部端蓋2および下部端蓋3によってそれぞれ気密に封じて密閉容器を形成し、この密閉容器内に絶縁媒体を封入すると共に真空バルブ4を収納している。上部端蓋2には上部側端子5が取り付けられ、下部端蓋3には下部側端子6が取り付けられている。真空バルブを収納した碍管1は、付設面に樹立した支持碍管7上に固定されて大地から電気的に絶縁されており、大地側に配置した図示しない操作器によって真空バルブの開閉操作を行うように構成している。
【0013】
真空バルブは、絶縁筒8の両端を上部端蓋9および下部端蓋10によってそれぞれ気密に封じると共に、図示しないベローズを用いて内部を真空に保持した真空容器を形成し、この真空容器内に固定電極11および可動電極12を配置している。可動電極12は可動側導電軸13に固定され、上述したベローズの一端を可動側導電軸13に耐気密接続し、ベローズの他端を下部端蓋10に耐気密接続し、このベローズによって真空容器内の真空状態を保持しながら可動側導電軸13をその軸方向に駆動して可動電極12の開閉動作を行うようにしている。
【0014】
また真空容器外に導出した位置の可動側導電軸13には、圧接ばね14を介して絶縁操作ロッド15が連結されている。この絶縁操作ロッド15の下端側は図示しない操作器に連結されており、操作器によって図示の下方へ絶縁操作ロッド15を駆動すると、可動側導電軸13を介して可動電極12を下方の開極方向に駆動することができる。一方、操作器によって図示の上方へ絶縁操作ロッド15を駆動すると、可動側導電軸13を介して可動電極12を上方の閉極方向に駆動することができる。
【0015】
可動側導電軸13と絶縁操作ロッド15とは、軸方向に多少の遊びを有した連結となっており、この遊びを有した連結を利用して圧接ばね14を配置している。つまり操作器によって絶縁操作ロッド15が所定の閉極位置まで駆動されて可動電極12が固定電極11に接触すると、この圧接ばね14が付勢されて可動側導電軸13を介して可動電極12に作用し、可動電極12を押し上げて固定電極11への接触圧を与えるように構成している。さらに真空容器外に導出した位置の可動側導電軸13には集電子16が常時接触しており、この集電子16、筒状導体17、下部端蓋3を介して可動側導電軸13と下部側端子6間が電気的に接続されている。
【0016】
一方、固定電極11は、可動側導電軸13とほぼ同一軸上に配置した固定側導電軸18に接合されている。この固定側導電軸18は気密を保持して真空容器外に導出され、その導出端に接続用端面19が形成されている。この接続用端面19には、可動側導電軸13および固定側導電軸18とほぼ同一軸線上に配置した収納用固定導体20がボルトによって連結されている。この収納用固定導体20は上部端蓋2の下面側にボルトによって固定されている。また、収納用固定導体20内には収納空部が形成され、この収納空部内には、可動側導電軸13および固定側導電軸18とほぼ同一軸線上に配置されると共に、可動電極12の動作軸方向に移動可能に衝撃吸収用ウエイト21と、この衝撃吸収用ウエイト21と上部端蓋2間に介在したゴムまたはばねなどで構成した衝撃吸収用弾性体22と、衝撃吸収用ウエイト21を接続用端面19側の定常位置に保持する復帰ばね23とが収納されている。
【0017】
このようにして、固定電極11と上部側端子5間は、ボルトによる接続構造によって一体化した上部端蓋2および収納用固定導体20を通して常時電気的に接続されている。つまり、固定電極11と上部側端子5間に存在する電気的な通電部には摺動部または摺動接触部が無く、ボルトによる接続構造によって固定電極11と上部側端子5間は安定した電気的な接続と通電を保持している。
【0018】
前述したように真空バルブにおいては、両電極11,12が突き合わせ接触であるため、可動電極12が固定電極11に接触した後、可動電極12が跳ね返りを繰り返すチャタリングが発生しやすい。次に、このチャタリングを抑制する動作について説明する。
【0019】
上述した構成の真空遮断器においては、可動電極12が上方側に駆動されて固定電極11に接触したとき、固定電極11には可動電極12側から衝撃が伝達されるが、この衝撃は固定電極11を通して可動側導電軸13と同一軸上に配置した固定側導電軸18へと伝達される。さらに、上述した可動側導電軸13と同一軸線上には上部端蓋2に固定した収納用固定導体20が配置されているため、衝撃はこの収納用固定導体20に伝達される。
【0020】
この収納用固定導体20は、ボルトによって上部端蓋2に支持固定されているため、衝撃を受けても電気的な接続を不安定にするような積極的な摺動や移動が起きない。しかし、このとき収納用固定導体20に伝達された衝撃力は、可動側導電軸13および固定側導電軸18の軸線とほぼ同一の軸線上で収納用固定導体20の背面側、つまり上部端蓋2側に配置した衝撃吸収用ウエイト21に伝達され、その結果、図2に示すように衝撃吸収用弾性体22および復帰ばね23によって収納用固定導体20内の固定電極11側に保持されていた衝撃吸収用ウエイト21を上部端蓋2側に反発移動させる。このとき衝撃吸収用ウエイト21の移動に対して抵抗するように衝撃吸収用弾性体22が作用する。こうして、衝撃吸収用ウエイト21の質量や衝撃吸収用弾性体22のばね係数などに応じて、閉極時の衝撃エネルギは衝撃吸収用ウエイト21の運動エネルギとして吸収または減衰される。その後、衝撃吸収用ウエイト21は復帰ばね23によって定常位置に保持される。
【0021】
このような真空遮断器によれば、閉極時に可動電極12から固定電極11側に伝達される衝撃エネルギは、衝撃吸収用ウエイト21の運動エネルギとして吸収または減衰されるため、可動電極12が跳ね返りを繰り返すチャタリングが抑制される。しかも、衝撃吸収用ウエイト21は反発移動するのに対して、固定電極11と上部端蓋2間を電気的に接続する通電路を形成する収納用固定導体20は、閉極時の衝撃を受けて積極的には移動しない構造であるため、固定電極11と上部側端子5間に形成されている電気的な通電部での積極的な摺動は発生せず、同通電部における電気的な接続関係を常に良好に保持し続けることができる。
【0022】
もし、収納用固定導体20の積極的な移動または摺動によって閉極時の衝撃を吸収しようとすると、その移動が生じているときも、電気的な通電路を形成している収納用固定導体20は電気的な接続関係を保持するために複雑な摺動接触構造が必要となり、構造が複雑化してしまう。しかしながら、上述したように閉極時の衝撃を吸収するために移動するのは電気的な通電路を形成していない衝撃吸収用ウエイト21であり、固定電極11と上部側端子5間の電気的な通電路の一部を形成している収納用固定導体20は、衝撃を吸収するために積極的には移動しないため、電気的な接続構造を簡単にすることができる。
【0023】
また、上述した真空遮断器によれば、閉極時の衝撃エネルギを運動エネルギとして吸収または減衰するために衝撃吸収用ウエイト21と衝撃吸収用弾性体22とを配置しているが、これらの衝撃吸収用ウエイト21および衝撃吸収用弾性体22は収納用固定導体20の固定側導電軸18と反対側に形成した収納空間部に容易に収納して配置することができる。外観上、衝撃吸収用ウエイト21および衝撃吸収用弾性体22は収納用固定導体20内に隠されているため、見掛け上の構成を簡略化することができる。さらに、衝撃吸収用ウエイト21の移動によって消費する運動エネルギは、衝撃吸収用ウエイト21の質量や衝撃吸収用弾性体22の弾性力などによって容易に調整することができる。
【実施例2】
【0024】
上述した真空遮断器は、支持碍管7によって上方位置に固定した碍管1内に真空バルブ4を収納して構成した碍子形真空遮断器として説明したが、絶縁性ガスを封入した密閉タンク内に真空バルブを配置して構成したタンク形真空遮断器とすることもできる。この場合、密閉タンク内に一端を固定した絶縁支持物を設け、この絶縁支持物の他端側で図1に示した収納用固定導体20を支持固定しても良い。また、絶縁支持物で上部端蓋2に相当する導体を支持固定し、この導体へ収納用固定導体20をボルトによって固定したり、絶縁支持物で上部端蓋2に相当する導体と一体に製作した収納用固定導体20を直接固定しても良い。
【0025】
いずれの方式を採用するにしても本発明を実施するに当たっては、可動電極12の閉極時における衝撃によって収納用固定導体20が移動することがないように、図1に示した碍管1やこれに対応する絶縁筒や絶縁支持物などによって支持固定手段を設け、この支持固定手段によって収納用固定導体20を支持固定する必要がある。このようにして支持固定手段によって支持固定した収納用固定導体20には、固定側導電軸18の軸線上に位置するその裏面側に運動エネルギによって閉極時の衝撃を吸収または減衰する衝撃吸収用ウエイト21を配置することによって、ほぼ同様の効果を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による真空遮断器は、図1に示した構成に限らず、その他の構成の真空遮断器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 碍管
2 上部端蓋
3 下部端蓋
4 真空バルブ
5 上部側端子
6 下部側端子
7 支持碍管
8 絶縁筒
9 上部端蓋
10 下部端蓋
11 固定電極
12 可動電極
13 可動側導電軸
14 圧接ばね
15 絶縁操作ロッド
16 集電子
17 筒状導体
18 固定側導電軸
19 接続用端面
20 収納用固定導体
21 衝撃吸収用ウエイト
22 衝撃吸収用弾性体
23 復帰ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に、固定側導電軸に接合した固定電極と、前記固定側導電軸とほぼ同一軸線上に配置した可動導電軸に接合すると共に前記真空容器内の真空度を保持しながら開閉可能にした可動電極とを対向して配置し、前記固定電極および前記固定側導電軸を一方側の端子に電気的に接続し、前記可動電極および前記可動側導電軸を他方側の端子に電気的に接続した真空遮断器において、前記固定側導電軸の反固定電極側に位置すると共に前記固定側導電軸と前記一方側の端子間を電気的に接続して通電路を形成する収納用固定導体と、閉路時の前記可動電極から前記固定電極および前記固定側導電軸を介して前記収納用固定導体へ伝達される衝撃を受けるように前記収納用固定導体を支持固定した支持固定手段と、前記収納用固定導体の前記固定側導電軸と反対側に設けられて、前記収納用固定導体が受けた衝撃を反発移動による運動エネルギとして吸収する衝撃吸収用ウエイトとを設けたことを特徴とする真空遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の真空遮断器において、前記衝撃による前記衝撃吸収用ウエイトの反発移動を抑制するように作用する衝撃吸収用弾性体を設けたことを特徴とする真空遮断器。

【図1】
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【図2】
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