眼内レンズの挿入器具
【課題】眼内レンズの飛び出しを抑えて挿入筒部の先端縁部まで安定した押し出しを行なうことが出来ると共に、切開創への円滑な挿入を行なうことの出来る、新規な構造の眼内レンズの挿入器具を提供すること。
【解決手段】挿入筒部12の先端部92における先端開口端面94を該挿入筒部12の中心軸に直交する面に対して傾斜した傾斜面とすると共に、該先端開口端面94の該挿入筒部12の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を先端部側96よりも基端部側98において大きく形成し、更に、該先端開口端面94の先端部側96の周縁部103を、外周面テーパ形状104による尖鋭エッジ形状とした。
【解決手段】挿入筒部12の先端部92における先端開口端面94を該挿入筒部12の中心軸に直交する面に対して傾斜した傾斜面とすると共に、該先端開口端面94の該挿入筒部12の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を先端部側96よりも基端部側98において大きく形成し、更に、該先端開口端面94の先端部側96の周縁部103を、外周面テーパ形状104による尖鋭エッジ形状とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズを眼内に挿入するために用いられる眼内レンズの挿入器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、白内障等の手術においては、角膜(鞏膜)や水晶体前嚢部分などの眼組織に設けた切開創を通じて、嚢内の水晶体を摘出、除去せしめた後、その水晶体に代替する眼内レンズを、前記切開創より眼内に挿入して嚢内に配する手法が採用されている。
【0003】
特に近年においては、特許文献1(特許第3412103号公報)や特許文献2(特許第3420724号公報)に記載の如き眼内レンズの挿入器具を用いた手法が広く採用されている。一般的には、器具本体の先端部に設けられた挿入筒部の先端開口を切開創を通じて眼内に挿し入れると共に、眼内レンズを器具本体内で小さく変形せしめた状態で挿入筒部の先端開口から押し出すことによって、眼内レンズが眼内に挿入される。このような挿入器具を用いれば、水晶体の摘出除去のために形成した切開創を広げることなく眼内レンズを挿入出来ることから、施術に要する手間を軽減出来ると共に、術後乱視の発生や感染の危険を低減することも出来る。
【0004】
ところで、このような眼内レンズの挿入器具においては、その施術に際して細かな作業を安定して精度良く行なうために、施術者による優れた操作性が要求されると共に、施術に際する患者の負担を軽減することが要求される。かかる操作性とは、施術者の意図するようなレンズの眼内挿入の作動が実現されることであり、意図する位置、状態、および速さで眼内レンズが眼内に押し出されて挿入されることが要求される。また、患者の負担を軽減するためには、挿入器具を切開創に無理なく挿し入れて速やかに施術を終了することが要求される。
【0005】
ところが、前記特許文献1や特許文献2に記載の如き、挿入筒部の先端形状が単純な軸直角方向の端面を有する円形開口の挿入器具においては、何れの要求も達成することは困難であった。
【0006】
すなわち、眼内レンズは、挿入時の切開創を小さくするために弾性材料で形成されており、挿入器具の挿入筒部で湾曲状態や巻回状態等で小さくされて眼内に挿入される。それ故、眼内で挿入筒部の先端開口部から眼内レンズが押し出される際に、眼内レンズは、部分的に先端開口部から出されるに従ってそれ自体の弾性によって自ら広がろうと復元作用し、それが先端開口部に作用する結果、その反力によって自ら挿入筒部から吐出する方向に作用する。
【0007】
そのために、施術者が一定の力で押出部材を操作していても、眼内レンズはその弾性によってそれ自体が吐出作用を発揮する結果、眼内レンズの挿入筒部に対する摺接抵抗の減少と弾性復元力が相加的に作用することで、押出部材の押圧に対する抵抗力が次第に小さくなってしまう。その結果、施術者が無意識のうちに眼内レンズを加速度的に押し出してしまい、最終的に眼内に飛び出させてしまうおそれがある。これでは、施術者の意図する挿入は実現され難く、優れた操作性を得ることは困難である。
【0008】
また、挿入筒部の先端形状が軸直方向に広がる単純な円形開口では、開口端面の全体を一度に切開創に挿し入れなければならないことから、切開創を大きく開かなければならず、患者の負担軽減の面においても有効な効果は得難かった。
【0009】
なお、切開創への挿入を容易にするためには、例えば特許文献3(特表2002−516709号公報)に記載の如き挿入器具のように、挿入筒部の先端形状を斜めの開口形状とすることも考えられる。しかし、単に斜めの開口形状とするのみでは、前述の操作性および患者の負担軽減の要求を充分に満たし得るものではなかった。
【0010】
すなわち、単純な斜めの開口形状では、押し出しに際して眼内レンズが挿入筒部の最先端部に到達するまでの間に、眼内レンズの殆どの部分が外部に露出せしめられる。これにより、前述のレンズ自体の弾性による吐出作用が同様に生ぜしめられて、レンズを飛び出させてしまうおそれがあった。また、斜めの開口形状とされていても、開口端面の厚みによって引っ掛かりが生じてしまい、切開創に円滑に挿入出来ないおそれや、押し出された眼内レンズの保持部が開口部に引っ掛かって、挿入器具の切開創からの引き抜きが阻害されるおそれもあった。
【0011】
【特許文献1】特許第3412103号公報
【特許文献2】特許第3420724号公報
【特許文献3】特表2002−516709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、眼内レンズの飛び出しを抑えて挿入筒部の先端縁部まで安定した押し出しを行なうことが出来ると共に、切開創への円滑な挿入を行なうことの出来る、新規な構造の眼内レンズの挿入器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0014】
すなわち、本発明の第一の態様は、眼内レンズを収容する略筒形状を有する器具本体を備えており、該器具本体内に軸方向の後方から挿入された押出部材で該眼内レンズを軸方向前方に移動させつつ小さく変形せしめて該器具本体の軸方向先端部に設けられた挿入筒部を通じて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部の先端部における先端開口端面を該挿入筒部の中心軸に直交する面に対して傾斜した傾斜面とすると共に、該先端開口端面の該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を先端部側よりも基端部側において大きく形成し、更に、該先端開口端面の先端部側の周縁部を、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状としたことを、特徴とする。
【0015】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、挿入筒部の先端開口部が斜めの開口形状とされている。これにより、押出部材の押し込み量の増大に伴って、眼内レンズが先端開口部から少しずつ外部に露出せしめられる。従って、眼内レンズの弾性による復元力が次第に発現せしめられるようにされており、挿入筒部の軸直方向に広がる単純な円形開口のように、復元力による吐出作用が急激に発揮されて、眼内レンズが先端開口部から飛び出してしまうおそれを有利に軽減することが出来る。
【0016】
特に本態様では、先端開口端面の傾斜角度を先端部側よりも基端部側において大きくすることによって、開口部を側面視において挿入筒部の外方に凸となる形状とすると共に、基端部側においては開口量が小さくされている。これにより、眼内レンズを両側で囲む領域を軸方向に長く確保することが出来て、斜めの開口形状であることによって軸方向に大きな開口寸法を有するにも関わらず、眼内レンズが基端部で飛び出してしまうことも有利に抑えることが可能とされており、眼内レンズを開口部の先端縁部まで保持することが可能とされている。従って、眼内レンズを先端開口端面の開口方向に向かって全体として充分に大きな領域で露出させてから、かかる開口方向に向けて落とし込むようにして眼内に挿入することが可能となり、施術者が意図する位置に安定して挿入することが可能とされる。また、眼内レンズを開口方向に向けて落とし込むように出来ることから、眼内レンズが表面張力等によって開口部の先端部分に張り付いたまま更に押し出されることによって、眼内レンズが上方に反り上がるようなことも防止され得る。
【0017】
さらに、眼内レンズを全体として開口部の先端縁部まで保持することが可能とされることによって、眼内レンズの保持部を充分に突出せしめた状態で挿入筒部から離脱せしめることが可能とされている。これにより、眼内レンズを押し出すに際して保持部が挿入筒部の先端部等に引っ掛かるおそれも軽減されている。このように、本態様によれば、眼内レンズの挿入作業をより確実に行なうことが出来る。
【0018】
また、本態様においては、先端開口端面の先端部側の周縁部が尖鋭エッジ形状とされている。これにより、先端部を切開創内へより容易に挿入することが出来て、施術者の操作性を向上せしめることが出来ると共に、先端部の挿入に際して必要とされる切開創の大きさをより小さくすることが出来て、患者の負担を軽減することも出来る。そして、かかる尖鋭エッジ形状が、外周面テーパ形状によって形成されていることから、先端部の内周面は平坦に形成することが出来る。これにより、眼内レンズを過渡に絞り込むことも回避されて、眼内レンズの復元力による吐出作用が過大に生ぜしめられるおそれも軽減されている。
【0019】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面の周縁部が全周に亘って、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状とされていることを、特徴とする。
【0020】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、先端開口端面の全周が尖鋭エッジ形状とされていることから、切開創内により容易に挿入することが出来る。
【0021】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部の前記先端開口端面の軸方向における最先端部と最基端部をつなぐ直線において、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が60°〜80°の範囲内に設定されていると共に、該先端開口端面の先端部分における該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が40°〜60°の範囲内に設定されていることを、特徴とする。
【0022】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、有効な操作性を得ることが出来る。即ち、先端開口端面の全体としての傾斜角度が60°よりも小さいと、実質的に挿入筒部の軸直角方向に広がる開口端面形状と等しくなって、眼内レンズを飛び出させてしまうことから有効な操作性が得られない一方、先端開口端面の全体としての傾斜角度が80°よりも大きいと、開口端面の軸方向長さ寸法が大きくなることから、眼内レンズを先端縁部まで保持することが困難となって、やはり有効な操作性を得ることが困難となる。また、先端開口端面の先端部分の傾斜角度が40°よりも小さいと、先端部分の尖鋭形状が平坦となって切開創への挿入が困難となったり、挿入に際して切開創を大きくしてしまうおそれがある一方、先端開口端面の先端部分の傾斜角度が60°よりも大きいと、眼内レンズを有効に保持出来なくなるおそれがある。
【0023】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面を、少なくとも前記挿入筒部の軸方向の先端部分において、該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状としたことを、特徴とする。
【0024】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、外周面テーパ形状と協働して、挿入筒部の先端部分に直線的な尖鋭形状が形成される。これにより、切開創への挿入をより容易に行なうことが出来る。
【0025】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面を、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が次第に変化する湾曲形状と該中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状との組み合わせ形状としたことを、特徴とする。
【0026】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、先端開口端面の形状をより高度に設定することが出来て、眼内への挿入の容易性や先端部のレンズ保持特性等をより高精度に調節することが出来る。例えば、先端開口端面の先端縁部のみを直線形状として、それより後方の部位は湾曲形状とすることによって、切開創への挿入の開始時点においては直線的な尖鋭形状によって挿入を容易にすると共に、その後の挿入の際には湾曲形状によって切開創などに滑らかに接触せしめることによって眼内を傷つけるおそれを軽減することが出来る。
【0027】
本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面の軸方向長さを2.5mm〜5.0mmの範囲内で設定したことを、特徴とする。
【0028】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズの復元力を少しずつ発揮せしめて安定した押し出しを行なうことが出来る。即ち、先端開口端面の軸方向長さが2.5mmよりも小さいと、挿入筒部の軸直方向に広がる単純な円形開口面と実質的に同じになって、眼内レンズの復元力が急激に発揮されて眼内レンズが勢い良く飛び出してしまうおそれがある一方、先端開口端面の軸方向長さが5.0mmよりも大きいと、開口寸法が大きくなって、眼内レンズを開口部の先端縁部まで保持し続けることが困難となり、基端部で飛び出してしまうおそれがある。特に好適には、先端開口端面の軸方向長さが、先端開口部分の内径寸法の大きさを考慮して設定されることとなり、先端開口部分の内径寸法の2〜4倍の長さに設定される。
【0029】
本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部における前記先端部の内径寸法を1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定したことを、特徴とする。
【0030】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズの開口部からの飛び出しを有利に防ぐことが出来ると共に、眼内レンズを先端開口端面の先端縁部まで安定して保持することが出来る。即ち、先端部の内径寸法が1.0mmよりも小さいと、眼内レンズを過度に湾曲変形せしめてしまい、その反力としての復元力がより大きく発揮される結果、眼内レンズが開口部から勢い良く飛び出してしまうおそれがある一方、先端部の内径寸法が1.5mmよりも大きいと、逆に眼内レンズの湾曲変形が充分に加えられないことから、眼内レンズの復元力による開口部の内周面に対する当接力が小さくなって、眼内レンズを先端縁部まで安定して保持出来なくなるおそれがある。
【0031】
本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記外周面テーパ形状の前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を5°〜15°の範囲内で設定したことを、特徴とする。
【0032】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、挿入筒部の先端部の切開創への挿入を容易に行なうことが出来る。即ち、外周面テーパ形状の傾斜角度が5°よりも小さいと、実質的に外周面テーパ形状が形成されていないことと同じになって、切開創への挿入を容易に行なえなくなるおそれがある一方、傾斜角度が15°よりも大きいと、外周面テーパ形状と先端開口端面によって形成されるエッジ形状が平坦になってしまい、同じく切開創への挿入が容易に行なえなくなるおそれがある。なお、外周面テーパ形状とされた傾斜面は、挿入筒部の軸方向断面において必ずしも直線的に延びる傾斜面である必要はない。例えば、かかる外周面テーパ形状の傾斜面としては、外方に凸となる湾曲形状をもって軸方向に延びる傾斜面などが好適に採用され得る。
【0033】
本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、該挿入筒部の先端部において該挿入筒部の中心軸に直交する断面および前記先端開口端面の軸方向視が幅方向で略平行に延びる幅方向直線部を有すると共にそれら幅方向直線部を滑らかに接続する縦方向湾曲部を有する略オーバル形状とされていることを、特徴とする。
【0034】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズを挿入筒部の周方向での回転を防ぎつつ押し出すことが出来る。即ち、本態様の如き特定形状を備えた挿入筒部においては、眼内レンズの中央部分を上面の幅方向直線部によって構成される平坦部の広い領域に押し付けて位置決め安定化を図る。そして、左右面の湾曲形状によって眼内レンズを下方から上面に対して安定して押し付けると共に、下面にも平坦面が形成されていることによって、眼内レンズへの押し付け力が周方向の回転力を可及的に伴わないように作用せしめられる。これにより、眼内レンズを周方向の回転を抑えつつ先端開口部から少しずつ外部に露出せしめることが可能となり、より安定した押し出しを行なうことが可能とされる。更に、本態様においては、縦方向湾曲部で幅方向直線部が滑らかに接続されており、挿入筒部内の上下両面に対して左右両面が共通接線をもって折れ点を有することなく接続されていることから、眼内レンズの引っ掛かりも抑えられて、引っ掛かりに起因する眼内レンズの損傷を可及的に回避することも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0036】
先ず、図1および図2に、本発明の一実施形態としての眼内レンズの挿入器具10を示す。挿入器具10は、全長に亘ってその内部が貫通せしめられて前後端縁部が開口せしめられた略筒形状を有する器具本体12の内部に眼内レンズ14を収容せしめると共に、押出部材としてのプランジャ16が挿入されて構成されている。なお、以下の説明において、前方とは、プランジャ16の押出方向(図1中、左方向)を言うものとし、上方とは、図2中、上方向を言うものとする。また、左右方向とは、挿入器具10の背面視における左右方向(図1中、上方が右、下方が左)を言うものとする。
【0037】
より詳細には、器具本体12は、図3乃至図8に示すように、略筒形状とされた本体筒部18を有している。本体筒部18の内部には、略矩形断面形状をもって軸方向に貫通する貫通孔20が形成されている。また、本体筒部18の後端部からやや前方の部位には、本体筒部18の延出方向と直交する向きに広がる板状部22が一体的に形成されている。
【0038】
さらに、器具本体12における本体筒部18の前方には、載置部としてのステージ24が形成されている。図9に、ステージ24を示す。ステージ24には、眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きな幅寸法をもって軸方向に延びる凹状溝28が形成されている。凹状溝28は、眼内レンズ14の両側に延びる保持部30、30を含む最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりもやや大きな軸方向長さ寸法をもって形成されている。
【0039】
ここにおいて、凹状溝28は上方に開口せしめらた開口部29を有する一方、その底面には載置面32が形成されている。載置面32は、眼内レンズ14の最小幅寸法(図1における上下方向寸法)よりも僅かに大きな幅寸法を有すると共に、眼内レンズ14の最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりも大きな軸方向長さ寸法を有する平坦面とされている。なお、載置面32の高さ位置は、本体筒部18における貫通孔20の底面の高さ位置よりも上方に位置せしめられており、本体筒部18における貫通孔20の前端縁部には、貫通孔20の底面から上方に延び出して載置面32の後端縁部に接続する下壁部34(図5参照)が形成されている。このようにして、凹状溝28は貫通孔20と連通せしめられており、凹状溝28の幅寸法が貫通孔20の幅寸法と略等しくされている。また、貫通孔20の前端縁部の上方には、貫通孔20の上面から前方に向けて下方に傾斜して延び出す当接部としての上壁部35が形成されている。更に、載置面32の幅方向両端縁部には、下方に突出する下方突出壁37,37が形成されている。
【0040】
そして、凹状溝28の側方(本実施形態においては、右側)には、蓋体としてのカバー部36が器具本体12と一体形成されている。カバー部36は、凹状溝28の軸方向寸法と略等しい軸方向寸法を有すると共に、凹状溝28の幅寸法よりもやや大きな幅寸法をもって形成されている。更に、カバー部36は、ステージ24の上端縁部が側方(本実施形態においては、右側)に延び出して形成された略薄板形状の連結部38によって器具本体12と連結されている。連結部38は、幅方向略中央部分を器具本体12の軸方向に延びる屈曲部40において最も薄肉とされており、屈曲部40で折り曲げ可能とされている。これにより、カバー部36は、連結部38を折り曲げて凹状溝28に重ね合わせ、開口部29を覆蓋することが出来るようにされている。
【0041】
ここにおいて、カバー部36において載置面32と対向せしめられる対向面42には、器具本体12の軸方向に延びる一対の案内突部としての左右案内板部44a,44bが突出して一体形成されている。これら左右案内板部44a,44bは凹状溝28の幅寸法よりもやや小さな対向面間距離をもって、カバー部36の軸方向の全体に亘って形成されている。なお、対向面42の外周縁部は、全周に亘ってやや肉厚に形成されており、左右案内板部44a,44bは、かかる対向面42の外周縁部よりも更に突出せしめられている。
【0042】
また、対向面42における左右案内板部44a,44bの対向面間の略中央位置には、左右案内板部44a,44bと平行に器具本体12の軸方向に延びる案内突部としての中央案内板部46が一体形成されている。中央案内板部46は、肉厚に形成された対向面42の外周縁部から僅かに突出する高さ寸法とされており、対向面42の軸方向の全長に亘って外周縁部から延びるように一体形成されている。更に、対向面42の外周縁部と中央案内板部46の軸方向後端縁部との接続部位には、中央案内板部46を挟んで一対の案内突起48,48が形成されている。案内突起48は、略三角の断面形状をもって対向面42の外周縁部から突出せしめられて一体形成されており、その突出寸法は、左右案内板部44a,44bの突出寸法と等しくされている。
【0043】
さらに、カバー部36における連結部38と反対側の縁部には、係合片50が突出形成されている一方、ステージ24におけるカバー部36と反対側の端部には、外側に突出する突出縁部52が形成されており、かかる突出縁部52における係合片50と対応する位置には、係合切欠54が形成されている。
【0044】
このような構造とされたステージ24の載置面32の下側には、担持部材56が取外し可能に設けられている。図10乃至図13に、担持部材56を示す。なお、担持部材56は、正面視と背面視が等しい形状とされていると共に、側面視が両側で等しい形状とされている。担持部材56は器具本体12と別体として構成されており、一対の側壁部58,58が対向面間に一体形成された連結板部60で連結された構造とされている。ここにおいて、側壁部58における外側面の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法と略等しくされている。また、それぞれの側壁部58の下端縁部には、外側に向けて突出して広がる脚板部62が一体形成されている。なお、脚板部62は、上面視において軸方向の中央部分が僅かに凹んだ形状とされている。
【0045】
そして、それぞれの側壁部58、58の上端部には、上面視において略円弧形状をもって上方に突出する支持部としての第一支持部64が一体形成されている。更に、第一支持部64の上端面における外側部分で、担持部材56の内方側には、周壁66が一体的に突出形成されている。ここにおいて、周壁66の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。
【0046】
また、連結板部60の軸方向両端部には、上面視において矩形状をもって上方に突出する支持部としての一対の第二支持部68,68が一体形成されている。ここにおいて、第二支持部68の上端面の高さ位置は、第一支持部64の上端面の高さ位置と等しくされている。更に、第二支持部68の上端面における担持部材56の外方側には、第二支持部68の幅方向の全体に亘って上方に突出する周壁70が一体形成されており、かかる周壁70の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。それと共に、第二支持部68の上端部には幅方向の全体に亘って外側に僅かに突出せしめられた係止爪72が一体形成されている。
【0047】
このような構造とされた担持部材56が、器具本体12の載置面32の下側から組み付けられるようになっている。具体的には、器具本体12の載置面32には、厚さ方向に貫通する貫通孔74が形成されている。かかる貫通孔74は、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68の上面視よりも僅かに大きな略相似形状をもって形成されている。そして、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68が、載置面32の下側から貫通孔74に挿通せしめられて、載置面32上に突出せしめられる。これにより、第二支持部68に設けられた係止爪72が載置面32上に突出せしめられて、載置面32の上面に係止せしめられることによって、第一支持部64および第二支持部68の抜けを防止して、担持部材56が器具本体12の外側から組み付けられ、第一支持部64および第二支持部68が載置面32から突出せしめられた状態が保持されることとなる。このように、本実施形態においては、係止爪72を含んで担持部材56を器具本体12に組み付けるロック機構が構成されている。
【0048】
さらに、ステージ24の前方で、器具本体12の軸方向先端部には、挿入筒部としてのノズル部76が一体形成されている。図14および図15に、ノズル部76を示す。ノズル部76は、全体としてステージ24側の基端部から延出方向の先端部に行くに連れて次第に先細となる外形形状をもって形成されていると共に、延出方向の全長に亘って貫通する通孔78が形成されている。
【0049】
通孔78は、ステージ24側に開口せしめられた基端開口部80が載置面32と接続されることによってステージ24と連通せしめられている。基端開口部80は、全体として、底面82が平坦面とされて、上面が略円弧形状とされた扁平な略楕円形状断面とされている。ここにおいて、通孔78には、底面82が載置面32と段差無く接続された導入部84が形成されている。導入部84は、扁平な略楕円形状断面とされて、基端開口部80から略一定の幅寸法および高さ寸法をもって器具本体12の軸方向に延び出されている。
【0050】
さらに、通孔78には、導入部84の前方において導入部84と連通せしめられて断面積が次第に小さくされた縮径部86が形成されている。縮径部86は、先端に行くに連れて底面82および上面の幅寸法が小さくされることによって断面積が小さくされている。ここにおいて、縮径部86の後端部分の底面82には、軸方向前方に行くに連れて次第に上方に傾斜せしめられた傾斜面88が形成されており、通孔78の底面82には、かかる傾斜面88によって段差が設けられている。なお、通孔78の上面は軸方向の全長に亘って段差の無い平坦面とされており、通孔78の上面の高さ位置は、軸方向の全長に亘って略一定とされている。
【0051】
さらに、導入部84および縮径部86の底面82には、底面82の幅方向中央部分を挟んで器具本体12の軸方向に延びる一対の導入突部90が形成されている。導入突部90は、軸方向の前端縁部が傾斜面88の前側端縁部と等しい位置とされると共に、軸方向の後端縁部が基端開口部80から僅かに軸方向後方に突出する軸方向長さ寸法をもって、底面82から僅かに上方に突出して互いに平行に延びる線形状とされている。ここにおいて、傾斜面88上に形成された導入突部90の軸方向前端部分は、傾斜面88が軸方向前方に行くに連れて次第に高くされていることによって、傾斜面88の軸方向前端縁部において傾斜面88と等しい高さ位置となるようにされている。
【0052】
更にまた、導入突部90は、底面82の幅方向の中央を挟んで器具本体12の軸直角方向で互いに所定距離を隔てて略平行に配設されている。かかる導入突部90の離隔距離は、押出部材の先端部の幅寸法よりも僅かに大きい寸法とされることが好ましく、特に本態様においては、後述するプランジャ16の棒状部112の幅寸法よりも僅かに大きくされている。
【0053】
そして、ノズル部76における縮径部86の軸方向前方には、略一定の断面積をもってストレートに延びる先端部92が形成されていると共に、かかる先端部92の先端縁部に、先端部92の先端開口端面を構成する先端開口部94が形成されている。図16乃至図23に、先端部92を示す。図23に示すように、本実施形態における先端開口部94の形状は、ノズル部76の軸方向の先端縁部となる上側先端縁部96が下側先端縁部98よりも前方に延び出されて、側面視においてノズル部76の中心軸:Lに直交する面:Mに対して傾斜した傾斜面とされている。
【0054】
具体的には、先端開口部94には、上側先端縁部96から下側先端縁部98に向けて中心軸:Lに直交する面:Mに対する傾斜角度が一定の直線形状とされた直線部100が所定寸法に亘って形成されていると共に、かかる直線部100から連続して、面:Mに対する傾斜角度が次第に変化せしめられた湾曲部102が形成されており、かかる湾曲部102の軸方向後端縁部が下側端縁部98に接続されている。ここにおいて、ノズル部76の基端部側に位置する湾曲部102の面:Mに対する傾斜角度は、ノズル部76の先端部側に位置する直線部100の面:Mに対する傾斜角度よりも大きくされている。これにより、本実施形態における先端開口部94は、側面視においてノズル部76の外方に凸となる略湾曲形状とされている。そこにおいて、上側先端縁部96と下側先端縁部98をつなぐ直線:Nの面:Mに対する傾斜角度:αは、特に限定されるものでないが、60°〜80°の範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、傾斜角度:αが60°よりも小さいと、実質的にノズル部76の軸直角方向に広がる単純な円形開口部に近くなって、後述する眼内レンズ14の飛び出しを抑え難くなると共に、眼内への挿入抵抗が大きくなったり、切開創が広がって患者の負担を増加してしまうおそれがある。一方、傾斜角度:αが80°よりも大きいと、先端開口部84の軸方向開口寸法が大きくなり過ぎて、後述する眼内レンズ14の保持効果が有効に発揮され難くなるおそれがある。加えて、直線部100の面:Mに対する傾斜角度:βは、特に限定されるものでないが、40°〜60°の範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、傾斜角度:βが40°よりも小さいと、上側先端縁部96が平坦となって切開創への挿入が困難となったり、切開創が広がって患者の負担を増加してしまうおそれがある。また、傾斜角度:βが60°よりも大きいと、眼内レンズを有効に保持出来なくなるおそれがある。そして、特に本実施形態においては、一般の条件下で最も好適と考えられる形状として、直線部100の面:Mに対する傾斜角度:α,βが、α=略70°,β=略50°に設定されている。
【0055】
また、湾曲部102は、ノズル部76の上方に曲率中心を有する湾曲形状とされている。ここにおいて、湾曲部102は、直線部100側の部位と下側端縁部98側の部位においてその曲率半径が異ならされており、特に本実施形態においては、直線部100側の部位は曲率半径:R1 =4.5mm、下側端縁部98側の部位は曲率半径:R2 =20mmの湾曲形状とされている。要するに、先端開口部94の開口端面は、図2に示されている側方視において、上部先端から下部先端に向かって次第に曲率半径が小さくなる複数の直線部分と曲線部分から形成されているのである。なお、かかる先端開口部94の開口端面は、その側方視において、全体に亘って曲線部分だけから構成されていても良いし、また、連続して次第に曲率が変化する曲線部分からなる形状等も採用可能である。
【0056】
これにより、先端開口部94は、全体として斜め下方に開口せしめられた開口端面形状を有している。なお、先端開口部94の軸方向長さは、2.5mm〜5.0mmの範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、先端開口部94の軸方向長さが2.5mmより小さいと、実質的にノズル部76の軸直角方向に広がる単純な円形開口部と同じとなって、後述する眼内レンズ14の飛び出しを抑え難くなる一方、軸方向長さが5.0mmよりも大きいと、眼内レンズ14を上側端縁部96に案内されるまで保持し続けることが困難となるおそれがある。特に本実施形態においては、先端開口部94の軸方向長さは3.70mmとされている。
【0057】
また、先端開口部94による眼内レンズ14の保持効果を有効に得るために、先端部92における通孔78の内径寸法は、1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、通孔78の内径寸法が1.0mmよりも小さいと、眼内レンズ14の圧縮変形が過渡に生ぜしめられて、眼内レンズ14自身の復元力によって眼内レンズ14が先端開口部94から勢い良く飛び出し易くなる一方、通孔78の内径寸法が1.5mmよりも大きいと、眼内レンズ14に加えられる湾曲変形が少なく、かかる変形の反力としての通孔78への当接力が充分に得られず、眼内レンズ14を上側端縁部96に案内されるまで保持し続けることが困難となるおそれがある。特に本実施形態においては、先端開口部94における通孔78の開口寸法である内径寸法は、1.20mmとされている。また、特に本実施形態では、一般の眼内レンズにおいて好適なように、先端開口部94において、その通孔78の内径寸法に対して、軸方向長さ寸法が略3倍の大きさに設定されている。
【0058】
さらに、先端開口部94の周縁部103の外周面には、全周に亘って軸方向後方に行くに連れてノズル部76の外方に広がるテーパ面104が形成されている。これにより、先端開口部94の周縁部103は、全周に亘って尖鋭エッジ形状とされている。ここにおいて、テーパ面104のノズル部76の中心軸:Lに対する傾斜角度:γは、特に限定されるものでないが、5°〜15°の範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、傾斜角度:γが5°よりも小さいと、実質的にテーパ面104が形成されていないのと同じとなって、後述する切開創への挿入を容易に行えなくなるおそれがある一方、傾斜角度:γが15°よりも大きいと、先端開口部94の周縁部103が尖鋭形状とされなくなって、やはり切開創への挿入を容易に行えなくなるおそれがある。なお、特に本実施形態においては、テーパ面104は、ノズル部76の中心軸:Lに対する傾斜角度が次第に変化せしめられた湾曲形状とされており、上側端縁部96に形成されたテーパ面104は、ノズル部76の下方に曲率中心を有する曲率半径:R3 =5.0mmの湾曲面とされている一方、下側端縁部98に形成されたテーパ面104は、湾曲部102における下側端縁部98側と同様に、ノズル部76の上方に曲率中心を有する曲率半径:R4 =20mmの湾曲面とされている。要するに、本実施形態では、先端開口部94の周縁部103の外周面には、その全周囲において、外方に凸状に湾曲した縦断面形状をもって軸方向に延びるテーパ面104が形成されている。これにより、湾曲部102は、テーパ面104に滑らかに接続されている。なお、かかるテーパ面104の傾斜角度は、先端開口部94の周方向で一定である必要はない。
【0059】
また、図19乃至図21に示すように、先端部92における下側端縁部98から軸方向後方の通孔78は、略一定の軸直方向断面をもって形成されている。より詳細には、図20に示すように、先端部92の後端縁部における通孔78の上下両面には、幅方向で略平行に延びる平坦な幅方向直線部としての上下平坦面105a,105bが形成されている。なお、本実施形態においては、通孔78の底面82は、ノズル部76の軸方向の全体に亘って平坦面とされていることから、下平坦面105aの平坦形状は、かかる底面82によって形成されている。そして、これら上下平坦面105a,105bの幅寸法が略等しくされていると共に、上下平坦面105a,bの両端部には、左右両面に上下方向で延びると共に内方に凹となる向きで湾曲せしめられた縦方向湾曲部としての左右湾曲面107a,107bが接続されている。ここにおいて、左右湾曲面107a,107bは、上下平坦面105a,105bに対して、共通接線をもって折れ点を有することなく滑らかに接続されている。これにより、先端部92の後端縁部における通孔78の軸直方向断面は略オーバル形状とされている。
【0060】
さらに、通孔78は、先端部92の後端縁部から先端開口部94に行くに連れて上下平坦面105a,105bの幅方向の延び出し寸法が次第に小さくされている。これにより、通孔78は、略オーバル形状を保ってその断面積が次第に小さくされている。なお、図16及び図22から明らかなように、上下平坦面105a,105bの上下方向の離隔距離は略一定とされており、先端部92における通孔78の高さ寸法は、軸方向の全体に亘って略一定とされている。
【0061】
そして、先端部92は、先端開口部94において通孔78の断面形状を保ちつつ側面視において斜め方向に開口せしめられている。これにより、先端開口部94の内周面は、軸方向視において略オーバル形状とされている。
【0062】
また、先端部92の内周面における先端開口部94から軸方向後方の所定位置には、凹状線106が形成されている。凹状線106は、先端部92の内周面の全周に亘って連続して延びると共に、先端部92の内方に向けて開口する凹溝とされている。また、凹状線106は、上部分が下部分よりも前方に形成された側面視において斜め形状とされていると共に、上面視において上部分と下部分がそれぞれ先端部92の軸直角方向に延びる形状とされている。そして、特に本実施形態においては、凹状線106は、上部分が先端開口部94の上側端縁部96から軸方向後方に6mmの位置に形成されている。なお、本実施形態における器具本体12は光透過性を有する部材で形成されており、先端部92の内周面に形成された凹状線106は、外部から視認可能とされている。特に、本実施形態では、前述のとおり、ノズル部76と本体部26を含む器具本体12が一体形成品で構成されているのであり、その成形材料として可視光線の透過率の大きい合成樹脂材料が採用されていることに加えて、ノズル部76の周壁と本体部26のステージ24が、充分に薄肉とされることによって、器具本体12の外部から、器具本体12の内部に収容された眼内レンズ14を、少なくとも外形線において目視にて視認することが出来るようになっている。そこにおいて、特にノズル部76の周壁と本体部26のステージ24においては、外部からの眼内レンズ14の視認性を向上させるために、それらの部分を形成する成形面を鏡面に近い精度に設定した樹脂成形金型を採用することが望ましい。
【0063】
なお、上記の凹状線106は、外部から視認可能であれば具体的構造は限定されるものでない。例えば、かかる凹状線106に代えて、目印線として、先端部92の内周面に僅かに突出する突条からなる凸状線を採用しても良いし、かかる位置よりも先端側の肉厚を薄肉とすることで段差を形成して凹状線106の代わりとしても良い。また、それら凹状線106や凸状線,段差等を、先端部92の外周面に形成しても良い。更に、先端部92の外周面に形成する場合には、凸状線に代えて、印刷等で着色した線等を設けても良い。更にまた、このような凹状線106や凸状線,段差,着色線等は、ノズル部76の全周に亘って連続して環状に形成されている必要はなく、周上で部分的に形成されていても良い。勿論、本実施形態の如く、ノズル部76の中心軸に対して傾斜していることは、必須でない。
【0064】
また、本実施形態では、先端部92が可視光線透過性の合成樹脂材料で形成されていることから、ノズル部76の内部を押し出される眼内レンズ14を外部から視認することが出来るのであり、その際、前述の如く、凹状線106が側面視でノズル中心軸に対して傾斜していることから、ノズル部76の内部を丸められた状態で押し出される眼内レンズ14の先端部の外形線に略沿うこととなる。それ故、ノズル部76の内部を押し出される眼内レンズ14の位置に関して、凹状線106に対する符合状態に至ったことを一層容易に視認することが可能である。
【0065】
以上のように、本実施形態における器具本体12は、本体筒部18、ステージ24、カバー部36、およびノズル部76が一体成形されて、単一の部材として構成されており、かかる器具本体12とは別体として構成された担持部材56が載置面32の下方から組み付けられるようになっている。なお、前述のように器具本体12は光透過性を有する部材で形成されており、ステージ24の開口部29がカバー部36で覆蓋せしめられた状態においても、カバー部36を通して、器具本体12に収容された眼内レンズ14が視認可能とされている。
【0066】
そして、このような構造とされた器具本体12の後方から、押出部材としてのプランジャ16が貫通孔20に挿し入れられている。図24および図29に、プランジャ16を示す。プランジャ16は、器具本体12の軸方向長さ寸法よりもやや大きな軸方向長さ寸法を有する略ロッド形状とされており、略円柱形状とされた作用部108と、略矩形ロッド形状とされた挿通部110が一体形成されている。
【0067】
作用部108は、プランジャ16の中心軸上を延びる略円柱形状とされた棒状部112と、棒状部112の幅方向両側に広がる薄板状の扁平部114とを含んで構成されている。扁平部114は、棒状部112の後端部から挿通部110と等しい幅寸法をもって先端方向に向けて延び出すと共に、棒状部112の長さ方向略中間部分から、棒状部112の先端部からやや後方の部位に行くに連れて次第に幅寸法が小さくされた先鋭部116が形成されている。ここにおいて、先鋭部116の上面視形状は、器具本体12のノズル部76における縮径部86の水平方向断面形状に沿う形状とされている。
【0068】
さらに、作用部108の軸方向先端部分には、切欠118が形成されている。本実施形態においては、切欠118は、上方および幅方向両側に開口せしめられると共に、軸方向後端側の内周面は上面視において作用部108の軸方向に対して斜めに延びると共に作用部108の軸直方向に広がって形成されている一方、軸方向先端側の内周面は上面視において作用部108の軸直方向に延びると共に作用部108の先端に行くに連れて上方に向かう傾斜面とされている。
【0069】
更にまた、作用部108の軸方向中間部分からやや後方には、上方に突出する上方突出部120が形成されている。上方突出部120は、棒状部112の幅寸法と等しい幅寸法とされており、棒状部112の軸方向中間部分からやや後方において、後方に行くに連れて上方に傾斜せしめられた傾斜面122が所定寸法に亘って形成されると共に、かかる傾斜面122の後端縁部から作用部108の後端縁部に亘って一定の高さ寸法をもって軸方向後方に延び出されている。
【0070】
一方、挿通部110は、貫通孔20の軸方向寸法よりも僅かに大きな軸方向寸法をもって形成されている。かかる挿通部110は略全体が略H字状の横断面形状とされており、その幅寸法および高さ寸法が、貫通孔20の幅寸法および高さ寸法よりも僅かに小さくされている。また、挿通部98の後端縁部には、軸直角方向に広がる円板状の押圧板部124が一体形成されている。
【0071】
さらに、挿通部110の軸方向中間部分からやや前方には、保持手段としての係止部126が形成されている。係止部126には、挿通部110の軸直方向に貫通する貫通孔128内に突出すると共に、挿通部110の上方に向けて突出する爪部130が形成されている。そして、プランジャ16が器具本体12の本体筒部18に挿通された状態で、本体筒部18の上面において厚さ方向に貫設された係止孔132とプランジャ16の爪部130が係合せしめられることによって、プランジャ16の器具本体12に対する相対位置が位置決めされた挿通状態で保持されるようになっている。なお、爪部130と係止孔132の形成位置は、係合状態において、作用部108の先端部が器具本体12の貫通孔20から突出せしめられて、切欠118が後述するステージ24内に収容せしめられた眼内レンズ14の軸方向後方に位置する保持部30を下方から支持せしめる位置となるように設定されている。なお、係止部126や係止孔132は、例えば、挿入器具10の下面や側面に形成しても良い。
【0072】
このような構造とされた眼内レンズの挿入器具10においては、先ず、プランジャ16の先端部分が器具本体12の本体筒部18に後方から挿入されて、爪部130が係止孔132に係止せしめれらた初期位置に位置せしめられる。それと共に、担持部材56が、前述のように、載置面32の下方から器具本体12に取り付けられる。これにより、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68が載置面32上に突出せしめらた状態に保持される。
【0073】
そして、図30に示すように、眼内レンズ14の本体部26が保持部30,30を器具本体12の軸方向に向けた状態で第一支持部64および第二支持部68の上端面に載置せしめられる。なお、図30においては、理解を容易とするために、器具本体12の必要部分と眼内レンズ14、載置面32から突出せしめられた第一および第二支持部64,68、およびステージ24内に臨むプランジャ16の先端部分のみを示す。かかる載置状態において、眼内レンズ14は、本体部26の外周部分が第一及び第二支持部64,68に接触状態とされており、中央部分はこれら第一及び第二支持部材64,68に対して非接触状態で支持されている。このように、本実施形態においては、第一及び第二支持部64,68を含んで外周支持部が構成されている。また、かかる載置状態において、眼内レンズ14において器具本体12の軸方向後方に位置せしめられた保持部30が、プランジャ16の切欠118の底面によって支持せしめられる。更にまた、プランジャ16の初期位置において、プランジャ16の軸方向前方(図30中、左方向)には、載置面32から突出せしめられた第二支持部68が位置せしめられている。これにより、プランジャ16側(図30中、右側)に位置せしめられた第二支持部68によって、プランジャ16の前進を阻止するストッパが構成されており、プランジャ16は、後述するように第二支持部68が載置面32上から後退せしめられない限り、前進が不可能とされている。
【0074】
さらに、第一支持部64および第二支持部68に形成された周壁66、70が、眼内レンズ14における本体部26の外側に位置せしめられるようになっており、特に本実施形態においては、第一支持部64に形成された周壁66が眼内レンズ14を器具本体12の軸方向に対する斜め方向の両側を挟んで位置せしめられると共に、第二支持部68に形成された周壁70が、眼内レンズ14を器具本体12の軸方向の両側を挟んで位置せしめられるようになっている。これにより、眼内レンズ14の器具本体12に対する軸方向および軸直方向の変位量を制限せしめて、眼内レンズ14を安定して保持出来るようになっている。加えて、第一及び第二支持部64,68への載置状態において、眼内レンズ14の本体部26は、載置面32から所定距離を隔てて位置せしめられており、載置面32に対して非接触状態で支持せしめられるようになっている。
【0075】
そして、屈曲部40が屈曲せしめれられて、カバー部36によってステージ24の開口部29が覆蓋せしめられることによって、眼内レンズ14が器具本体12内に収容状態でセットされる。なお、カバー部36は、係合片50が係合切欠54に係合せしめられることによって、閉状態に維持される。
【0076】
以上のようにして、眼内レンズ14が挿入器具10内に収容される。そして、本実施形態における挿入器具10は、眼内レンズ14を収容した状態で殺菌処理等がなされた後に、梱包されて配送される。
【0077】
そして、本実施形態における挿入器具10を用いて眼内レンズ14を眼内に挿入する場合には、先ず、担持部材56を器具本体12の下方に引き抜いて、器具本体12から取り外す。これにより、眼内レンズ14を支持せしめていた第一及び第二支持部64,68が載置面32から下方に引き抜かれて載置面32上から後退せしめられ、眼内レンズ14が載置面32上に載置せしめられる。ここにおいて、本実施形態における載置面32は平坦面とされていることから、眼内レンズ14を安定して載置せしめることが出来ると共に、凹状溝28の幅寸法が眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きい程度とされていることから、載置面32上での眼内レンズ14の周方向の回転も阻止されるようになっている。
【0078】
続いて、眼組織に設けた切開創にノズル部76の先端開口部94を挿入する。ここにおいて、本実施形態においては、先端開口部94が斜めの開口形状とされていることによって、切開創への挿入を容易に行なうことが可能とされている。それに加えて、先端開口部94の周縁部103が、先端開口部94の外周部分に形成されたテーパ面104によって尖鋭エッジ形状とされていることから、切開創への挿入を更に容易に行なうことが可能とされている。
【0079】
そして、切開創に先端開口部94を挿し入れた後に、ノズル部76を切開創内に押し込んで行くことによって、先端開口部94を眼内の内方に挿し入れる。ここにおいて、ノズル部76には、凹状線106が形成されていることから、かかる凹状線106を挿入位置を確認する際の指標として用いることが出来て、凹状線106が切開創に重なる位置まで先端開口部94を挿し込むことによって、先端開口部94を眼内の好適な挿入位置に位置決めすることが出来るようにされている。
【0080】
次に、ノズル部76を切開創に挿入した状態で、プランジャ16の押圧板部124を器具本体12側に押し込む。これにより、載置面32に載置せしめられた眼内レンズ14における本体部26の外周縁部にプランジャ16の先端が当接せしめられて、プランジャ16によって眼内レンズ14が基端開口部80に向けて案内される。ここにおいて、眼内レンズ14におけるプランジャ16側の保持部30は、プランジャ16の切欠118内に載置されていることから、プランジャ16の先端が眼内レンズ14の本体部26の外周面とレンズ径方向一方向で直接に対向せしめられており、プランジャ16を本体部26に当接せしめるに際して、保持部30を巻き込むようなことも回避されている。
【0081】
しかも、保持部30がプランジャ16の切欠118に入り込んでいることで、プランジャ16の先端面で眼内レンズ14の本体部26を押し出す際に、保持部30の変形態様が或る程度制限されることとなる。これにより、眼内レンズ14をプランジャ16で押し出すに際して、保持部26の予期しない変形や、特に保持部26の本体部26への被着、保持部26のノズル部76内への引っ掛かり、更には眼内レンズ14の変形や回転などのトラブルの防止が図られ得るのである。
【0082】
なお、特に本実施形態では、かかる切欠118が、プランジャ16の上面を略軸直角方向に延びる一つの凹溝形状とされていると共に、そのプランジャ16の押出方向前方側の溝壁面が、凹溝の開口側に向かって拡開する傾斜面とされていることにより、眼内レンズ14の保持部30を凹溝である切欠118に対して容易に且つ確実に入れることが出来るようになっている。また、かかる凹溝である切欠118におけるプランジャ16の押出方向後方側の溝壁面は、溝の開口側に向かって溝底面から略垂直に立ち上がる垂直面とされており、切欠118に入り込んだ保持部30が、プランジャ16の押し出し操作に際しても、凹溝(切欠118)の前方側の傾斜面で切欠118内に確実に導き入れられた後、凹溝(切欠118)からの外れ出しが効果的に防止されて、凹溝(切欠118)内に入り込んだ状態に安定して保持され得るようになっている。
【0083】
なお、眼内レンズ14の押し出しの前に、必要に応じて、適当な潤滑剤をステージ24やノズル部76の内部に注入することが望ましい。特に本実施形態においては、カバー部36に厚さ方向に貫通する注入孔134(図9参照)が形成されており、かかる注入孔134を通じて、カバー部36を閉じた状態で潤滑剤が注入出来るようになっているが、潤滑剤の注入は、例えば、ノズル部76の先端開口部94から注入したり、一旦カバー部36を開いて、ステージ24の開口部29から注入したり、或いは、一旦プランジャ16を器具本体12から引き抜いて、貫通孔20の後端の開口部から注入するなどしても良い。
【0084】
そして、プランジャ16の押し込みに際して、プランジャ16の棒状部112は、カバー部36に形成された案内突起48、48で挟まれることによって、左右方向の変位量が制限される。これにより、プランジャ16を軸方向に安定して押し出すことが可能とされている。また、中央案内板部46および左右案内板部44a,44bが載置面32に向けて突出せしめられていることによって、眼内レンズ14の上方への過大な変位量も制限されており、眼内レンズ14を基端開口部80内に滑らかに案内することが可能とされている。
【0085】
それと共に、プランジャ16の上面には、カバー部36に形成された中央案内突部46が当接せしめられる。これにより、プランジャ16が載置面32に向けて押圧せしめられて上方への変位や変形が阻止されており、プランジャ16を載置面32から大きく離隔することなく案内して、基端開口部80に円滑に押し込まれるようにすることが可能とされている。
【0086】
そして、プランジャ16によって基端開口部80から導入部84内に案内された眼内レンズ14は、導入部84の底面82に形成された導入突部90、90によって、本体部26の中央部分を下方へ突出せしめた凹形状に初期変形が加えられつつ、縮径部86内に押し込まれる。更に、プランジャ16の棒状部112が導入突部90、90で挟まれることによって、軸直方向の変形や変位が抑えられて、軸方向に安定した押し出しを行なうことが可能とされている。
【0087】
更にまた、プランジャ16の先端部が縮径部86に差し掛かると、縮径部86の軸方向後端部に形成された傾斜面88に当接せしめられることによって、プランジャ16を通じて施術者に節度感が与えられる。これにより、プランジャ16の先端部が縮径部86に差し掛かったこと、換言すれば、眼内レンズ14が縮径部86内に押し込まれて、眼内レンズ14の湾曲変形が開始されたことを施術者に知らせることが可能とされている。
【0088】
続いて、プランジャ16が更に押し込まれることによって、眼内レンズ14は、縮径部86内を先端方向に向けて案内されて、更に小さく湾曲変形せしめられた後に、ノズル部76の先端部92に案内される。そこにおいて、本実施形態においては、先端部92の内周面に溝状の凹状線106が形成されていることによって、凹状線106が空気抜き孔として作用することから、眼内レンズ14の押し出しをより円滑に行なうことが出来る。要するに、かかる凹状線106を目印として、眼内レンズ14の先端縁部がノズル部76内で凹状線106に達する位置までプランジャ16で押し出すことによって、ノズル部76内の残留空気を速やかに排出操作することが可能となる。
【0089】
そして、更にプランジャ16が押し込まれることによって、眼内レンズ14が、ノズル部76の先端開口部94に案内される。ここにおいて、特に本実施形態においては、プランジャ16の棒状部112に上方突出部120が形成されると共に、上方突出部120の軸方向前端部には、傾斜面122が形成されている。そして、傾斜面122は、プランジャ16の先端部が先端開口部94の下側端縁部98からやや後方、要するに、先端開口部94の手前に到達した時点で上壁部35に当接せしめられる軸方向位置に形成されている。これにより、プランジャ16が先端開口部94の手前に到達すると、傾斜面122が上壁部35に当接せしめられ、プランジャ16を更に押し込むに連れて、上壁部35の弾性変形量の増大に伴って、傾斜面122と上壁部35との当接力が増大せしめられる。これにより、プランジャ16の操作抵抗力を増大せしめることが出来て、施術者に対してプランジャ16の先端部が先端開口部94の手前に到達した時点で節度感を与え、眼内レンズ14が先端開口部94に差し掛かったことを認識させることが可能とされている。それと共に、上壁部35に傾斜面122が当接せしめられた後は、上方突出部120と上壁部35が当接状態とされることによって、プランジャ16の操作抵抗が大きくなるようにされている。
【0090】
このようにして、眼内レンズ14が、ノズル部76の先端開口部94にまで案内される。そこにおいて、特に本実施形態においては、先端開口部94の開口端面形状が、側面視においてノズル部76の外方に向けて凸となる斜めの開口形状とされていることから、プランジャ16の押し込み量の増大に伴って、眼内レンズ14を少しずつ挿入器具10の外部に露出せしめてゆくことが可能とされている。これにより、眼内レンズ14自体の弾性による復元力が少しずつ発揮せしめられるようになっており、復元力が急激に開放されて眼内レンズ14が飛び出すおそれも軽減することが出来て、眼内レンズ14を施術者が要求する位置に安定して挿入することが可能とされている。このようにして、眼内レンズ14が先端開口部94から挿入器具10の外部に押し出されて、眼内に挿入されることとなる。
【0091】
なお、特に本実施形態においては、眼内レンズ14においてプランジャ16の押込方向の後方側に位置せしめられた保持部30が、プランジャ16の先端部に形成された切欠118内に通された状態で押し出しが行なわれるようになっている。それ故、切欠118内に通された保持部30を完全に離脱させるために、プランジャ16は、図31に示すように、切欠118が先端開口部94から完全に突出せしめられる位置が器具本体12への最大押し込み位置とされており、かかる最大押し込み位置は、プランジャ16の挿通部110の先端面が貫通孔20の上下壁部35、34で係止されることで制限されるようになっており、本実施形態においては、これら上下壁部35,34を含んで、プランジャ16のストッパ機構が構成されている。そして、かかるストッパ機構によって、プランジャ16の先端開口部94からの過渡の突出が抑えられており、挿入に際する安全性も向上せしめられている。
【0092】
このような構造とされた挿入器具10においては、眼内レンズ14の本体部26の外周部分のみが第一及び第二支持部64,68によって支持されると共に、載置面32の上方に離隔した非接触状態で支持されていることから、本体部26の中央部分を傷つけるおそれを軽減することが出来る。そして、第一及び第二支持部64、68に設けられた周壁66、70によって眼内レンズ14の変位量が制限されることによって、眼内レンズ14を安定して支持せしめると共に、載置面32上に優れた位置決め精度をもって載置することが出来る。
【0093】
さらに、本実施形態においては、担持部材56の器具本体12への組み付け状態を保持して、第一及び第二支持部64,68の載置面32からの突出状態を保持する係止爪72が、第二支持部68に一体的に形成されている。これにより、第二支持部68を載置面32に対して直接的に係合せしめることが可能とされており、第一および第二支持部64、68を載置面32から所期の位置に精度良く突出せしめることが出来ると共に、かかる突出状態を有利に保持することが出来る。また、担持部材56を器具本体12へ組み付けるロック機構を、優れたスペース効率をもって形成することが出来ると共に、担持部材56を器具本体12に組み付ける際に、係止爪72が載置面32上に突出せしめられた際の節度感を与えることが出来て、担持部材56の組み付けが正しく行われたことを知らせることも出来る。
【0094】
そして、本実施形態における挿入器具10を使用する際には、担持部材56を器具本体12から取り外すという非常に簡易な操作によって眼内レンズ14を載置面32上に載置することが可能とされている。そこにおいて、本実施形態における挿入器具10においては、前述の如き第一及び第二支持部64,68によって安定した位置決め精度を得られることから、このような簡易な操作にも関わらず、眼内レンズ14を載置面32上に優れた位置決め精度をもって載置することが可能とされている。更にまた、カバー部36によってステージ24の開口部29を覆蓋せしめた状態を維持して眼内レンズ14の載置を行えることから、眼内レンズ14の挿入器具10からの脱落を抑えることが出来ると共に、眼内レンズ14の外界との接触の機会も軽減されて、衛生面上も優れた効果を得ることが出来る。
【0095】
加えて、本実施形態における挿入器具10においては、先端開口部94がノズル部76の中心軸に対して斜めに開口せしめられた傾斜開口部とされており、側方視において、上側端縁部96が下側端縁部98よりも前方に突出せしめられた尖鋭形状とされている。これにより、先ず上側端縁部96が切開創に挿入されることによって、切開創への挿入を容易に行なうことが出来ると共に、先端開口部94を挿入するに際して必要とされる切開創のサイズをより小さくすることが出来て、患者の負担も軽減することが出来る。更に、特に本実施形態においては、先端開口部94の周縁部103の外周部分の全周に亘ってテーパ面104が形成されていることによって、周縁部103が全周に亘って尖鋭形状とされている。これにより、切開創への挿入がより容易に行なえるようにされている。
【0096】
更にまた、先端開口部94が側面視においてノズル部76の外方に向けて凸となる湾曲形状とされていることから、先端開口部94による保持状態を保ちつつ、眼内レンズ14を次第に外部に露出せしめて行くことが可能とされている。図32および図33(a)に示すように、例えば上下側端縁部96,98が本実施形態と同じ位置に形成されていたとしても、開口端面が直線:N1で示すように側面視において単純な直線形状を有する平坦な開口端面である場合には、眼内レンズ14は、下側端縁部98を越えた段階で既に下側部分が開口端面の外部に露出されてしまう。従って、眼内レンズ14自身の弾性による吐出効果が急激に発現せしめられて、眼内レンズ14が上側端縁部96に案内される前に勢い良く飛び出すおそれが大きい。また、図32において曲線:N2で示すように、本実施形態とは逆に、ノズル部76の軸直方向に広がる面に対する傾斜角度が下側端縁部98に行くに連れて次第に小さくなる、側面視において前方に凹状の湾曲形状である場合には、眼内レンズ14の更に広い範囲が外部に露出されてしまい、レンズの保持効果が更に損なわれることとなる。これに対して、図32および図33(b)に示すように、本実施形態における特定形状とされた先端開口部94によれば、眼内レンズ14が下側端縁部98を越えた段階でも、眼内レンズ14を左右から保持し続けることが出来る。
【0097】
加えて、本実施形態においては、先端部92における通孔78の内周面に上下平坦面105a,105bが形成されると共に、左右湾曲面107a,107bが形成されることによって略オーバル形状が形成されており、かかるオーバル形状が、先端開口部84に至る軸方向の略全体に亘って形成されている。これにより、先端部92に案内された眼内レンズ14を上平坦面105aに押し付けることが可能とされると共に、眼内レンズ14に対して上方向への押し付け力を及ぼす下面にも下平坦面105bが形成されていることによって、眼内レンズ14を周方向の回転を可及的に防止しつつ先端開口部84に案内することが出来る。
【0098】
これにより、本実施形態においては、眼内レンズ14を上側端縁部96に至るまで安定して保持しつつ少しずつ外部に露出せしめてゆくことが可能とされている。従って、眼内レンズ14が急に飛び出すことも抑えることが出来る。そして、眼内レンズ14を上側端縁部96にまで案内して、先端開口部94の下方に全体として充分に露出せしめた後に、下方に落とし込むようにして眼内レンズ14を眼内に挿入することが出来る。これにより、施術者の意図する位置に安定して眼内レンズ14を挿入することが可能とされるのである。そこにおいて、本実施形態においては、ノズル部76の外周面に形成されたテーパ面104によって周縁部103の尖鋭形状が形成されており、ノズル部76の内周面を形成する通孔76は、先端部92において軸方向の最先端縁部まで殆ど縮径することなく形成されている。これにより、眼内レンズ14に過渡の湾曲変形を与えて、その反力としての復元力が過渡に生ぜしめられるおそれも回避されている。
【0099】
それと共に、眼内レンズ14を上側端縁部96まで安定して保持出来ることから、図34に示すように、押出方向の前方に位置せしめられた保持部30を、先端開口部94から充分に突出せしめることが出来る。これにより、眼内レンズ14を下方に落とす際に、保持部30がノズル部76の先端部92に引っ掛かる等の問題も有利に回避され得るのである。
【0100】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0101】
例えば、前記実施形態におけるテーパ面104は、必ずしも先端開口部94の周縁部103の全周に亘って形成されている必要は無く、少なくとも上側端縁部96において形成されて、上側端縁部96が尖鋭エッジ形状とされていれば良い。このようにしても、切開創への挿入の始点となる上側端縁部96が尖鋭とされることから、切開創への挿入を容易にすることが出来る。
【0102】
また、担持部材56を器具本体12に固定するロック機構としては、必ずしも前述の第二支持部68に形成された係止爪72のように、第二支持部68に形成されている必要は無い。例えば、係止爪72に代えて、第一支持部64および第二支持部68を、脚板部62側へ行くに連れて上面視寸法が次第に大きくなる形状として、これら第一支持部64および第二支持部68が載置面32の貫通孔74に押し込まれることによって、貫通孔74の復元力および互いの部材間の摩擦力によって担持部材56を載置面32の裏側に固定するようにしても良いし、或いは、担持部材56の側壁部58を、器具本体12において載置面32の幅方向両端部から下方に突出する下方突出壁37(図7参照)で挟持せしめることによって固定するなどしても良い。
【0103】
また、本発明における眼内レンズの挿入器具は、前述の実施形態の如き、予め眼内レンズを内蔵した状態で提供されるものに限定されるものではなく、眼内レンズとは別個に提供されて、施術時に眼内レンズがセットされるものであっても良い。
【0104】
更にまた、前記実施形態において挿入器具10に収容される眼内レンズ14は、本体部26と保持部30が別体として形成されていたが、本体部26と保持部30が同一部材で一体成形されたものを採用することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態としての眼内レンズの挿入器具の上面図。
【図2】同挿入器具の側面図。
【図3】同挿入器具を構成する本体筒部の上面図。
【図4】同本体筒部の下面図。
【図5】同本体筒部の左側面図。
【図6】同本体筒部の右側面図。
【図7】同本体筒部の前面図。
【図8】同本体筒部の背面図。
【図9】同本体筒部の要部拡大上面図。
【図10】図1に示した挿入器具を構成する担持部材の上面図。
【図11】同担持部材の下面図。
【図12】同担持部材の側面図。
【図13】同担持部材の正面図。
【図14】図1に示した挿入器具の挿入筒部の上面図。
【図15】同挿入筒部の側面図。
【図16】同挿入筒部の先端部の側面図。
【図17】同挿入筒部の先端部の上面図。
【図18】同挿入筒部の先端部の下面図。
【図19】同挿入筒部の先端部の正面図。
【図20】同挿入筒部の先端部の背面図であって、図14におけるXX−XX断面図。
【図21】図17におけるXXI−XXI断面図。
【図22】図17におけるXXIII−XXIII断面図。
【図23】図16に示した挿入筒部の先端部の下方斜視図。
【図24】図1に示した挿入器具を構成する押出部材の上面図。
【図25】同押出部材の下面図。
【図26】同押出部材の左側面図。
【図27】同押出部材の右側面図。
【図28】同押出部材の正面図。
【図29】同押出部材の背面図。
【図30】図1に示した挿入器具の要部を拡大して示す上面説明図。
【図31】押出部材の突出位置を説明するための上面説明図。
【図32】先端開口部における眼内レンズの保持状態を説明するための断面説明図。
【図33】図32におけるXXXIII−XXXIII断面に相当する説明図。
【図34】先端開口部からの眼内レンズの保持部の突出状態を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0106】
10:挿入器具、12:器具本体、14:眼内レンズ、16:プランジャ、76:ノズル部、92:先端部、94:先端開口部、96:上側端縁部、98:下側端縁部、103:周縁部、104:テーパ面
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズを眼内に挿入するために用いられる眼内レンズの挿入器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、白内障等の手術においては、角膜(鞏膜)や水晶体前嚢部分などの眼組織に設けた切開創を通じて、嚢内の水晶体を摘出、除去せしめた後、その水晶体に代替する眼内レンズを、前記切開創より眼内に挿入して嚢内に配する手法が採用されている。
【0003】
特に近年においては、特許文献1(特許第3412103号公報)や特許文献2(特許第3420724号公報)に記載の如き眼内レンズの挿入器具を用いた手法が広く採用されている。一般的には、器具本体の先端部に設けられた挿入筒部の先端開口を切開創を通じて眼内に挿し入れると共に、眼内レンズを器具本体内で小さく変形せしめた状態で挿入筒部の先端開口から押し出すことによって、眼内レンズが眼内に挿入される。このような挿入器具を用いれば、水晶体の摘出除去のために形成した切開創を広げることなく眼内レンズを挿入出来ることから、施術に要する手間を軽減出来ると共に、術後乱視の発生や感染の危険を低減することも出来る。
【0004】
ところで、このような眼内レンズの挿入器具においては、その施術に際して細かな作業を安定して精度良く行なうために、施術者による優れた操作性が要求されると共に、施術に際する患者の負担を軽減することが要求される。かかる操作性とは、施術者の意図するようなレンズの眼内挿入の作動が実現されることであり、意図する位置、状態、および速さで眼内レンズが眼内に押し出されて挿入されることが要求される。また、患者の負担を軽減するためには、挿入器具を切開創に無理なく挿し入れて速やかに施術を終了することが要求される。
【0005】
ところが、前記特許文献1や特許文献2に記載の如き、挿入筒部の先端形状が単純な軸直角方向の端面を有する円形開口の挿入器具においては、何れの要求も達成することは困難であった。
【0006】
すなわち、眼内レンズは、挿入時の切開創を小さくするために弾性材料で形成されており、挿入器具の挿入筒部で湾曲状態や巻回状態等で小さくされて眼内に挿入される。それ故、眼内で挿入筒部の先端開口部から眼内レンズが押し出される際に、眼内レンズは、部分的に先端開口部から出されるに従ってそれ自体の弾性によって自ら広がろうと復元作用し、それが先端開口部に作用する結果、その反力によって自ら挿入筒部から吐出する方向に作用する。
【0007】
そのために、施術者が一定の力で押出部材を操作していても、眼内レンズはその弾性によってそれ自体が吐出作用を発揮する結果、眼内レンズの挿入筒部に対する摺接抵抗の減少と弾性復元力が相加的に作用することで、押出部材の押圧に対する抵抗力が次第に小さくなってしまう。その結果、施術者が無意識のうちに眼内レンズを加速度的に押し出してしまい、最終的に眼内に飛び出させてしまうおそれがある。これでは、施術者の意図する挿入は実現され難く、優れた操作性を得ることは困難である。
【0008】
また、挿入筒部の先端形状が軸直方向に広がる単純な円形開口では、開口端面の全体を一度に切開創に挿し入れなければならないことから、切開創を大きく開かなければならず、患者の負担軽減の面においても有効な効果は得難かった。
【0009】
なお、切開創への挿入を容易にするためには、例えば特許文献3(特表2002−516709号公報)に記載の如き挿入器具のように、挿入筒部の先端形状を斜めの開口形状とすることも考えられる。しかし、単に斜めの開口形状とするのみでは、前述の操作性および患者の負担軽減の要求を充分に満たし得るものではなかった。
【0010】
すなわち、単純な斜めの開口形状では、押し出しに際して眼内レンズが挿入筒部の最先端部に到達するまでの間に、眼内レンズの殆どの部分が外部に露出せしめられる。これにより、前述のレンズ自体の弾性による吐出作用が同様に生ぜしめられて、レンズを飛び出させてしまうおそれがあった。また、斜めの開口形状とされていても、開口端面の厚みによって引っ掛かりが生じてしまい、切開創に円滑に挿入出来ないおそれや、押し出された眼内レンズの保持部が開口部に引っ掛かって、挿入器具の切開創からの引き抜きが阻害されるおそれもあった。
【0011】
【特許文献1】特許第3412103号公報
【特許文献2】特許第3420724号公報
【特許文献3】特表2002−516709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、眼内レンズの飛び出しを抑えて挿入筒部の先端縁部まで安定した押し出しを行なうことが出来ると共に、切開創への円滑な挿入を行なうことの出来る、新規な構造の眼内レンズの挿入器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0014】
すなわち、本発明の第一の態様は、眼内レンズを収容する略筒形状を有する器具本体を備えており、該器具本体内に軸方向の後方から挿入された押出部材で該眼内レンズを軸方向前方に移動させつつ小さく変形せしめて該器具本体の軸方向先端部に設けられた挿入筒部を通じて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部の先端部における先端開口端面を該挿入筒部の中心軸に直交する面に対して傾斜した傾斜面とすると共に、該先端開口端面の該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を先端部側よりも基端部側において大きく形成し、更に、該先端開口端面の先端部側の周縁部を、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状としたことを、特徴とする。
【0015】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、挿入筒部の先端開口部が斜めの開口形状とされている。これにより、押出部材の押し込み量の増大に伴って、眼内レンズが先端開口部から少しずつ外部に露出せしめられる。従って、眼内レンズの弾性による復元力が次第に発現せしめられるようにされており、挿入筒部の軸直方向に広がる単純な円形開口のように、復元力による吐出作用が急激に発揮されて、眼内レンズが先端開口部から飛び出してしまうおそれを有利に軽減することが出来る。
【0016】
特に本態様では、先端開口端面の傾斜角度を先端部側よりも基端部側において大きくすることによって、開口部を側面視において挿入筒部の外方に凸となる形状とすると共に、基端部側においては開口量が小さくされている。これにより、眼内レンズを両側で囲む領域を軸方向に長く確保することが出来て、斜めの開口形状であることによって軸方向に大きな開口寸法を有するにも関わらず、眼内レンズが基端部で飛び出してしまうことも有利に抑えることが可能とされており、眼内レンズを開口部の先端縁部まで保持することが可能とされている。従って、眼内レンズを先端開口端面の開口方向に向かって全体として充分に大きな領域で露出させてから、かかる開口方向に向けて落とし込むようにして眼内に挿入することが可能となり、施術者が意図する位置に安定して挿入することが可能とされる。また、眼内レンズを開口方向に向けて落とし込むように出来ることから、眼内レンズが表面張力等によって開口部の先端部分に張り付いたまま更に押し出されることによって、眼内レンズが上方に反り上がるようなことも防止され得る。
【0017】
さらに、眼内レンズを全体として開口部の先端縁部まで保持することが可能とされることによって、眼内レンズの保持部を充分に突出せしめた状態で挿入筒部から離脱せしめることが可能とされている。これにより、眼内レンズを押し出すに際して保持部が挿入筒部の先端部等に引っ掛かるおそれも軽減されている。このように、本態様によれば、眼内レンズの挿入作業をより確実に行なうことが出来る。
【0018】
また、本態様においては、先端開口端面の先端部側の周縁部が尖鋭エッジ形状とされている。これにより、先端部を切開創内へより容易に挿入することが出来て、施術者の操作性を向上せしめることが出来ると共に、先端部の挿入に際して必要とされる切開創の大きさをより小さくすることが出来て、患者の負担を軽減することも出来る。そして、かかる尖鋭エッジ形状が、外周面テーパ形状によって形成されていることから、先端部の内周面は平坦に形成することが出来る。これにより、眼内レンズを過渡に絞り込むことも回避されて、眼内レンズの復元力による吐出作用が過大に生ぜしめられるおそれも軽減されている。
【0019】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面の周縁部が全周に亘って、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状とされていることを、特徴とする。
【0020】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、先端開口端面の全周が尖鋭エッジ形状とされていることから、切開創内により容易に挿入することが出来る。
【0021】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部の前記先端開口端面の軸方向における最先端部と最基端部をつなぐ直線において、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が60°〜80°の範囲内に設定されていると共に、該先端開口端面の先端部分における該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が40°〜60°の範囲内に設定されていることを、特徴とする。
【0022】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、有効な操作性を得ることが出来る。即ち、先端開口端面の全体としての傾斜角度が60°よりも小さいと、実質的に挿入筒部の軸直角方向に広がる開口端面形状と等しくなって、眼内レンズを飛び出させてしまうことから有効な操作性が得られない一方、先端開口端面の全体としての傾斜角度が80°よりも大きいと、開口端面の軸方向長さ寸法が大きくなることから、眼内レンズを先端縁部まで保持することが困難となって、やはり有効な操作性を得ることが困難となる。また、先端開口端面の先端部分の傾斜角度が40°よりも小さいと、先端部分の尖鋭形状が平坦となって切開創への挿入が困難となったり、挿入に際して切開創を大きくしてしまうおそれがある一方、先端開口端面の先端部分の傾斜角度が60°よりも大きいと、眼内レンズを有効に保持出来なくなるおそれがある。
【0023】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面を、少なくとも前記挿入筒部の軸方向の先端部分において、該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状としたことを、特徴とする。
【0024】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、外周面テーパ形状と協働して、挿入筒部の先端部分に直線的な尖鋭形状が形成される。これにより、切開創への挿入をより容易に行なうことが出来る。
【0025】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面を、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が次第に変化する湾曲形状と該中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状との組み合わせ形状としたことを、特徴とする。
【0026】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、先端開口端面の形状をより高度に設定することが出来て、眼内への挿入の容易性や先端部のレンズ保持特性等をより高精度に調節することが出来る。例えば、先端開口端面の先端縁部のみを直線形状として、それより後方の部位は湾曲形状とすることによって、切開創への挿入の開始時点においては直線的な尖鋭形状によって挿入を容易にすると共に、その後の挿入の際には湾曲形状によって切開創などに滑らかに接触せしめることによって眼内を傷つけるおそれを軽減することが出来る。
【0027】
本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記先端開口端面の軸方向長さを2.5mm〜5.0mmの範囲内で設定したことを、特徴とする。
【0028】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズの復元力を少しずつ発揮せしめて安定した押し出しを行なうことが出来る。即ち、先端開口端面の軸方向長さが2.5mmよりも小さいと、挿入筒部の軸直方向に広がる単純な円形開口面と実質的に同じになって、眼内レンズの復元力が急激に発揮されて眼内レンズが勢い良く飛び出してしまうおそれがある一方、先端開口端面の軸方向長さが5.0mmよりも大きいと、開口寸法が大きくなって、眼内レンズを開口部の先端縁部まで保持し続けることが困難となり、基端部で飛び出してしまうおそれがある。特に好適には、先端開口端面の軸方向長さが、先端開口部分の内径寸法の大きさを考慮して設定されることとなり、先端開口部分の内径寸法の2〜4倍の長さに設定される。
【0029】
本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記挿入筒部における前記先端部の内径寸法を1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定したことを、特徴とする。
【0030】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズの開口部からの飛び出しを有利に防ぐことが出来ると共に、眼内レンズを先端開口端面の先端縁部まで安定して保持することが出来る。即ち、先端部の内径寸法が1.0mmよりも小さいと、眼内レンズを過度に湾曲変形せしめてしまい、その反力としての復元力がより大きく発揮される結果、眼内レンズが開口部から勢い良く飛び出してしまうおそれがある一方、先端部の内径寸法が1.5mmよりも大きいと、逆に眼内レンズの湾曲変形が充分に加えられないことから、眼内レンズの復元力による開口部の内周面に対する当接力が小さくなって、眼内レンズを先端縁部まで安定して保持出来なくなるおそれがある。
【0031】
本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、前記外周面テーパ形状の前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を5°〜15°の範囲内で設定したことを、特徴とする。
【0032】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、挿入筒部の先端部の切開創への挿入を容易に行なうことが出来る。即ち、外周面テーパ形状の傾斜角度が5°よりも小さいと、実質的に外周面テーパ形状が形成されていないことと同じになって、切開創への挿入を容易に行なえなくなるおそれがある一方、傾斜角度が15°よりも大きいと、外周面テーパ形状と先端開口端面によって形成されるエッジ形状が平坦になってしまい、同じく切開創への挿入が容易に行なえなくなるおそれがある。なお、外周面テーパ形状とされた傾斜面は、挿入筒部の軸方向断面において必ずしも直線的に延びる傾斜面である必要はない。例えば、かかる外周面テーパ形状の傾斜面としては、外方に凸となる湾曲形状をもって軸方向に延びる傾斜面などが好適に採用され得る。
【0033】
本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の何れか一つの態様に係る眼内レンズの挿入器具において、該挿入筒部の先端部において該挿入筒部の中心軸に直交する断面および前記先端開口端面の軸方向視が幅方向で略平行に延びる幅方向直線部を有すると共にそれら幅方向直線部を滑らかに接続する縦方向湾曲部を有する略オーバル形状とされていることを、特徴とする。
【0034】
本態様に従う構造とされた眼内レンズの挿入器具においては、眼内レンズを挿入筒部の周方向での回転を防ぎつつ押し出すことが出来る。即ち、本態様の如き特定形状を備えた挿入筒部においては、眼内レンズの中央部分を上面の幅方向直線部によって構成される平坦部の広い領域に押し付けて位置決め安定化を図る。そして、左右面の湾曲形状によって眼内レンズを下方から上面に対して安定して押し付けると共に、下面にも平坦面が形成されていることによって、眼内レンズへの押し付け力が周方向の回転力を可及的に伴わないように作用せしめられる。これにより、眼内レンズを周方向の回転を抑えつつ先端開口部から少しずつ外部に露出せしめることが可能となり、より安定した押し出しを行なうことが可能とされる。更に、本態様においては、縦方向湾曲部で幅方向直線部が滑らかに接続されており、挿入筒部内の上下両面に対して左右両面が共通接線をもって折れ点を有することなく接続されていることから、眼内レンズの引っ掛かりも抑えられて、引っ掛かりに起因する眼内レンズの損傷を可及的に回避することも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0036】
先ず、図1および図2に、本発明の一実施形態としての眼内レンズの挿入器具10を示す。挿入器具10は、全長に亘ってその内部が貫通せしめられて前後端縁部が開口せしめられた略筒形状を有する器具本体12の内部に眼内レンズ14を収容せしめると共に、押出部材としてのプランジャ16が挿入されて構成されている。なお、以下の説明において、前方とは、プランジャ16の押出方向(図1中、左方向)を言うものとし、上方とは、図2中、上方向を言うものとする。また、左右方向とは、挿入器具10の背面視における左右方向(図1中、上方が右、下方が左)を言うものとする。
【0037】
より詳細には、器具本体12は、図3乃至図8に示すように、略筒形状とされた本体筒部18を有している。本体筒部18の内部には、略矩形断面形状をもって軸方向に貫通する貫通孔20が形成されている。また、本体筒部18の後端部からやや前方の部位には、本体筒部18の延出方向と直交する向きに広がる板状部22が一体的に形成されている。
【0038】
さらに、器具本体12における本体筒部18の前方には、載置部としてのステージ24が形成されている。図9に、ステージ24を示す。ステージ24には、眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きな幅寸法をもって軸方向に延びる凹状溝28が形成されている。凹状溝28は、眼内レンズ14の両側に延びる保持部30、30を含む最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりもやや大きな軸方向長さ寸法をもって形成されている。
【0039】
ここにおいて、凹状溝28は上方に開口せしめらた開口部29を有する一方、その底面には載置面32が形成されている。載置面32は、眼内レンズ14の最小幅寸法(図1における上下方向寸法)よりも僅かに大きな幅寸法を有すると共に、眼内レンズ14の最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりも大きな軸方向長さ寸法を有する平坦面とされている。なお、載置面32の高さ位置は、本体筒部18における貫通孔20の底面の高さ位置よりも上方に位置せしめられており、本体筒部18における貫通孔20の前端縁部には、貫通孔20の底面から上方に延び出して載置面32の後端縁部に接続する下壁部34(図5参照)が形成されている。このようにして、凹状溝28は貫通孔20と連通せしめられており、凹状溝28の幅寸法が貫通孔20の幅寸法と略等しくされている。また、貫通孔20の前端縁部の上方には、貫通孔20の上面から前方に向けて下方に傾斜して延び出す当接部としての上壁部35が形成されている。更に、載置面32の幅方向両端縁部には、下方に突出する下方突出壁37,37が形成されている。
【0040】
そして、凹状溝28の側方(本実施形態においては、右側)には、蓋体としてのカバー部36が器具本体12と一体形成されている。カバー部36は、凹状溝28の軸方向寸法と略等しい軸方向寸法を有すると共に、凹状溝28の幅寸法よりもやや大きな幅寸法をもって形成されている。更に、カバー部36は、ステージ24の上端縁部が側方(本実施形態においては、右側)に延び出して形成された略薄板形状の連結部38によって器具本体12と連結されている。連結部38は、幅方向略中央部分を器具本体12の軸方向に延びる屈曲部40において最も薄肉とされており、屈曲部40で折り曲げ可能とされている。これにより、カバー部36は、連結部38を折り曲げて凹状溝28に重ね合わせ、開口部29を覆蓋することが出来るようにされている。
【0041】
ここにおいて、カバー部36において載置面32と対向せしめられる対向面42には、器具本体12の軸方向に延びる一対の案内突部としての左右案内板部44a,44bが突出して一体形成されている。これら左右案内板部44a,44bは凹状溝28の幅寸法よりもやや小さな対向面間距離をもって、カバー部36の軸方向の全体に亘って形成されている。なお、対向面42の外周縁部は、全周に亘ってやや肉厚に形成されており、左右案内板部44a,44bは、かかる対向面42の外周縁部よりも更に突出せしめられている。
【0042】
また、対向面42における左右案内板部44a,44bの対向面間の略中央位置には、左右案内板部44a,44bと平行に器具本体12の軸方向に延びる案内突部としての中央案内板部46が一体形成されている。中央案内板部46は、肉厚に形成された対向面42の外周縁部から僅かに突出する高さ寸法とされており、対向面42の軸方向の全長に亘って外周縁部から延びるように一体形成されている。更に、対向面42の外周縁部と中央案内板部46の軸方向後端縁部との接続部位には、中央案内板部46を挟んで一対の案内突起48,48が形成されている。案内突起48は、略三角の断面形状をもって対向面42の外周縁部から突出せしめられて一体形成されており、その突出寸法は、左右案内板部44a,44bの突出寸法と等しくされている。
【0043】
さらに、カバー部36における連結部38と反対側の縁部には、係合片50が突出形成されている一方、ステージ24におけるカバー部36と反対側の端部には、外側に突出する突出縁部52が形成されており、かかる突出縁部52における係合片50と対応する位置には、係合切欠54が形成されている。
【0044】
このような構造とされたステージ24の載置面32の下側には、担持部材56が取外し可能に設けられている。図10乃至図13に、担持部材56を示す。なお、担持部材56は、正面視と背面視が等しい形状とされていると共に、側面視が両側で等しい形状とされている。担持部材56は器具本体12と別体として構成されており、一対の側壁部58,58が対向面間に一体形成された連結板部60で連結された構造とされている。ここにおいて、側壁部58における外側面の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法と略等しくされている。また、それぞれの側壁部58の下端縁部には、外側に向けて突出して広がる脚板部62が一体形成されている。なお、脚板部62は、上面視において軸方向の中央部分が僅かに凹んだ形状とされている。
【0045】
そして、それぞれの側壁部58、58の上端部には、上面視において略円弧形状をもって上方に突出する支持部としての第一支持部64が一体形成されている。更に、第一支持部64の上端面における外側部分で、担持部材56の内方側には、周壁66が一体的に突出形成されている。ここにおいて、周壁66の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。
【0046】
また、連結板部60の軸方向両端部には、上面視において矩形状をもって上方に突出する支持部としての一対の第二支持部68,68が一体形成されている。ここにおいて、第二支持部68の上端面の高さ位置は、第一支持部64の上端面の高さ位置と等しくされている。更に、第二支持部68の上端面における担持部材56の外方側には、第二支持部68の幅方向の全体に亘って上方に突出する周壁70が一体形成されており、かかる周壁70の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。それと共に、第二支持部68の上端部には幅方向の全体に亘って外側に僅かに突出せしめられた係止爪72が一体形成されている。
【0047】
このような構造とされた担持部材56が、器具本体12の載置面32の下側から組み付けられるようになっている。具体的には、器具本体12の載置面32には、厚さ方向に貫通する貫通孔74が形成されている。かかる貫通孔74は、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68の上面視よりも僅かに大きな略相似形状をもって形成されている。そして、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68が、載置面32の下側から貫通孔74に挿通せしめられて、載置面32上に突出せしめられる。これにより、第二支持部68に設けられた係止爪72が載置面32上に突出せしめられて、載置面32の上面に係止せしめられることによって、第一支持部64および第二支持部68の抜けを防止して、担持部材56が器具本体12の外側から組み付けられ、第一支持部64および第二支持部68が載置面32から突出せしめられた状態が保持されることとなる。このように、本実施形態においては、係止爪72を含んで担持部材56を器具本体12に組み付けるロック機構が構成されている。
【0048】
さらに、ステージ24の前方で、器具本体12の軸方向先端部には、挿入筒部としてのノズル部76が一体形成されている。図14および図15に、ノズル部76を示す。ノズル部76は、全体としてステージ24側の基端部から延出方向の先端部に行くに連れて次第に先細となる外形形状をもって形成されていると共に、延出方向の全長に亘って貫通する通孔78が形成されている。
【0049】
通孔78は、ステージ24側に開口せしめられた基端開口部80が載置面32と接続されることによってステージ24と連通せしめられている。基端開口部80は、全体として、底面82が平坦面とされて、上面が略円弧形状とされた扁平な略楕円形状断面とされている。ここにおいて、通孔78には、底面82が載置面32と段差無く接続された導入部84が形成されている。導入部84は、扁平な略楕円形状断面とされて、基端開口部80から略一定の幅寸法および高さ寸法をもって器具本体12の軸方向に延び出されている。
【0050】
さらに、通孔78には、導入部84の前方において導入部84と連通せしめられて断面積が次第に小さくされた縮径部86が形成されている。縮径部86は、先端に行くに連れて底面82および上面の幅寸法が小さくされることによって断面積が小さくされている。ここにおいて、縮径部86の後端部分の底面82には、軸方向前方に行くに連れて次第に上方に傾斜せしめられた傾斜面88が形成されており、通孔78の底面82には、かかる傾斜面88によって段差が設けられている。なお、通孔78の上面は軸方向の全長に亘って段差の無い平坦面とされており、通孔78の上面の高さ位置は、軸方向の全長に亘って略一定とされている。
【0051】
さらに、導入部84および縮径部86の底面82には、底面82の幅方向中央部分を挟んで器具本体12の軸方向に延びる一対の導入突部90が形成されている。導入突部90は、軸方向の前端縁部が傾斜面88の前側端縁部と等しい位置とされると共に、軸方向の後端縁部が基端開口部80から僅かに軸方向後方に突出する軸方向長さ寸法をもって、底面82から僅かに上方に突出して互いに平行に延びる線形状とされている。ここにおいて、傾斜面88上に形成された導入突部90の軸方向前端部分は、傾斜面88が軸方向前方に行くに連れて次第に高くされていることによって、傾斜面88の軸方向前端縁部において傾斜面88と等しい高さ位置となるようにされている。
【0052】
更にまた、導入突部90は、底面82の幅方向の中央を挟んで器具本体12の軸直角方向で互いに所定距離を隔てて略平行に配設されている。かかる導入突部90の離隔距離は、押出部材の先端部の幅寸法よりも僅かに大きい寸法とされることが好ましく、特に本態様においては、後述するプランジャ16の棒状部112の幅寸法よりも僅かに大きくされている。
【0053】
そして、ノズル部76における縮径部86の軸方向前方には、略一定の断面積をもってストレートに延びる先端部92が形成されていると共に、かかる先端部92の先端縁部に、先端部92の先端開口端面を構成する先端開口部94が形成されている。図16乃至図23に、先端部92を示す。図23に示すように、本実施形態における先端開口部94の形状は、ノズル部76の軸方向の先端縁部となる上側先端縁部96が下側先端縁部98よりも前方に延び出されて、側面視においてノズル部76の中心軸:Lに直交する面:Mに対して傾斜した傾斜面とされている。
【0054】
具体的には、先端開口部94には、上側先端縁部96から下側先端縁部98に向けて中心軸:Lに直交する面:Mに対する傾斜角度が一定の直線形状とされた直線部100が所定寸法に亘って形成されていると共に、かかる直線部100から連続して、面:Mに対する傾斜角度が次第に変化せしめられた湾曲部102が形成されており、かかる湾曲部102の軸方向後端縁部が下側端縁部98に接続されている。ここにおいて、ノズル部76の基端部側に位置する湾曲部102の面:Mに対する傾斜角度は、ノズル部76の先端部側に位置する直線部100の面:Mに対する傾斜角度よりも大きくされている。これにより、本実施形態における先端開口部94は、側面視においてノズル部76の外方に凸となる略湾曲形状とされている。そこにおいて、上側先端縁部96と下側先端縁部98をつなぐ直線:Nの面:Mに対する傾斜角度:αは、特に限定されるものでないが、60°〜80°の範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、傾斜角度:αが60°よりも小さいと、実質的にノズル部76の軸直角方向に広がる単純な円形開口部に近くなって、後述する眼内レンズ14の飛び出しを抑え難くなると共に、眼内への挿入抵抗が大きくなったり、切開創が広がって患者の負担を増加してしまうおそれがある。一方、傾斜角度:αが80°よりも大きいと、先端開口部84の軸方向開口寸法が大きくなり過ぎて、後述する眼内レンズ14の保持効果が有効に発揮され難くなるおそれがある。加えて、直線部100の面:Mに対する傾斜角度:βは、特に限定されるものでないが、40°〜60°の範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、傾斜角度:βが40°よりも小さいと、上側先端縁部96が平坦となって切開創への挿入が困難となったり、切開創が広がって患者の負担を増加してしまうおそれがある。また、傾斜角度:βが60°よりも大きいと、眼内レンズを有効に保持出来なくなるおそれがある。そして、特に本実施形態においては、一般の条件下で最も好適と考えられる形状として、直線部100の面:Mに対する傾斜角度:α,βが、α=略70°,β=略50°に設定されている。
【0055】
また、湾曲部102は、ノズル部76の上方に曲率中心を有する湾曲形状とされている。ここにおいて、湾曲部102は、直線部100側の部位と下側端縁部98側の部位においてその曲率半径が異ならされており、特に本実施形態においては、直線部100側の部位は曲率半径:R1 =4.5mm、下側端縁部98側の部位は曲率半径:R2 =20mmの湾曲形状とされている。要するに、先端開口部94の開口端面は、図2に示されている側方視において、上部先端から下部先端に向かって次第に曲率半径が小さくなる複数の直線部分と曲線部分から形成されているのである。なお、かかる先端開口部94の開口端面は、その側方視において、全体に亘って曲線部分だけから構成されていても良いし、また、連続して次第に曲率が変化する曲線部分からなる形状等も採用可能である。
【0056】
これにより、先端開口部94は、全体として斜め下方に開口せしめられた開口端面形状を有している。なお、先端開口部94の軸方向長さは、2.5mm〜5.0mmの範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、先端開口部94の軸方向長さが2.5mmより小さいと、実質的にノズル部76の軸直角方向に広がる単純な円形開口部と同じとなって、後述する眼内レンズ14の飛び出しを抑え難くなる一方、軸方向長さが5.0mmよりも大きいと、眼内レンズ14を上側端縁部96に案内されるまで保持し続けることが困難となるおそれがある。特に本実施形態においては、先端開口部94の軸方向長さは3.70mmとされている。
【0057】
また、先端開口部94による眼内レンズ14の保持効果を有効に得るために、先端部92における通孔78の内径寸法は、1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、通孔78の内径寸法が1.0mmよりも小さいと、眼内レンズ14の圧縮変形が過渡に生ぜしめられて、眼内レンズ14自身の復元力によって眼内レンズ14が先端開口部94から勢い良く飛び出し易くなる一方、通孔78の内径寸法が1.5mmよりも大きいと、眼内レンズ14に加えられる湾曲変形が少なく、かかる変形の反力としての通孔78への当接力が充分に得られず、眼内レンズ14を上側端縁部96に案内されるまで保持し続けることが困難となるおそれがある。特に本実施形態においては、先端開口部94における通孔78の開口寸法である内径寸法は、1.20mmとされている。また、特に本実施形態では、一般の眼内レンズにおいて好適なように、先端開口部94において、その通孔78の内径寸法に対して、軸方向長さ寸法が略3倍の大きさに設定されている。
【0058】
さらに、先端開口部94の周縁部103の外周面には、全周に亘って軸方向後方に行くに連れてノズル部76の外方に広がるテーパ面104が形成されている。これにより、先端開口部94の周縁部103は、全周に亘って尖鋭エッジ形状とされている。ここにおいて、テーパ面104のノズル部76の中心軸:Lに対する傾斜角度:γは、特に限定されるものでないが、5°〜15°の範囲内で設定されていることが好ましい。即ち、傾斜角度:γが5°よりも小さいと、実質的にテーパ面104が形成されていないのと同じとなって、後述する切開創への挿入を容易に行えなくなるおそれがある一方、傾斜角度:γが15°よりも大きいと、先端開口部94の周縁部103が尖鋭形状とされなくなって、やはり切開創への挿入を容易に行えなくなるおそれがある。なお、特に本実施形態においては、テーパ面104は、ノズル部76の中心軸:Lに対する傾斜角度が次第に変化せしめられた湾曲形状とされており、上側端縁部96に形成されたテーパ面104は、ノズル部76の下方に曲率中心を有する曲率半径:R3 =5.0mmの湾曲面とされている一方、下側端縁部98に形成されたテーパ面104は、湾曲部102における下側端縁部98側と同様に、ノズル部76の上方に曲率中心を有する曲率半径:R4 =20mmの湾曲面とされている。要するに、本実施形態では、先端開口部94の周縁部103の外周面には、その全周囲において、外方に凸状に湾曲した縦断面形状をもって軸方向に延びるテーパ面104が形成されている。これにより、湾曲部102は、テーパ面104に滑らかに接続されている。なお、かかるテーパ面104の傾斜角度は、先端開口部94の周方向で一定である必要はない。
【0059】
また、図19乃至図21に示すように、先端部92における下側端縁部98から軸方向後方の通孔78は、略一定の軸直方向断面をもって形成されている。より詳細には、図20に示すように、先端部92の後端縁部における通孔78の上下両面には、幅方向で略平行に延びる平坦な幅方向直線部としての上下平坦面105a,105bが形成されている。なお、本実施形態においては、通孔78の底面82は、ノズル部76の軸方向の全体に亘って平坦面とされていることから、下平坦面105aの平坦形状は、かかる底面82によって形成されている。そして、これら上下平坦面105a,105bの幅寸法が略等しくされていると共に、上下平坦面105a,bの両端部には、左右両面に上下方向で延びると共に内方に凹となる向きで湾曲せしめられた縦方向湾曲部としての左右湾曲面107a,107bが接続されている。ここにおいて、左右湾曲面107a,107bは、上下平坦面105a,105bに対して、共通接線をもって折れ点を有することなく滑らかに接続されている。これにより、先端部92の後端縁部における通孔78の軸直方向断面は略オーバル形状とされている。
【0060】
さらに、通孔78は、先端部92の後端縁部から先端開口部94に行くに連れて上下平坦面105a,105bの幅方向の延び出し寸法が次第に小さくされている。これにより、通孔78は、略オーバル形状を保ってその断面積が次第に小さくされている。なお、図16及び図22から明らかなように、上下平坦面105a,105bの上下方向の離隔距離は略一定とされており、先端部92における通孔78の高さ寸法は、軸方向の全体に亘って略一定とされている。
【0061】
そして、先端部92は、先端開口部94において通孔78の断面形状を保ちつつ側面視において斜め方向に開口せしめられている。これにより、先端開口部94の内周面は、軸方向視において略オーバル形状とされている。
【0062】
また、先端部92の内周面における先端開口部94から軸方向後方の所定位置には、凹状線106が形成されている。凹状線106は、先端部92の内周面の全周に亘って連続して延びると共に、先端部92の内方に向けて開口する凹溝とされている。また、凹状線106は、上部分が下部分よりも前方に形成された側面視において斜め形状とされていると共に、上面視において上部分と下部分がそれぞれ先端部92の軸直角方向に延びる形状とされている。そして、特に本実施形態においては、凹状線106は、上部分が先端開口部94の上側端縁部96から軸方向後方に6mmの位置に形成されている。なお、本実施形態における器具本体12は光透過性を有する部材で形成されており、先端部92の内周面に形成された凹状線106は、外部から視認可能とされている。特に、本実施形態では、前述のとおり、ノズル部76と本体部26を含む器具本体12が一体形成品で構成されているのであり、その成形材料として可視光線の透過率の大きい合成樹脂材料が採用されていることに加えて、ノズル部76の周壁と本体部26のステージ24が、充分に薄肉とされることによって、器具本体12の外部から、器具本体12の内部に収容された眼内レンズ14を、少なくとも外形線において目視にて視認することが出来るようになっている。そこにおいて、特にノズル部76の周壁と本体部26のステージ24においては、外部からの眼内レンズ14の視認性を向上させるために、それらの部分を形成する成形面を鏡面に近い精度に設定した樹脂成形金型を採用することが望ましい。
【0063】
なお、上記の凹状線106は、外部から視認可能であれば具体的構造は限定されるものでない。例えば、かかる凹状線106に代えて、目印線として、先端部92の内周面に僅かに突出する突条からなる凸状線を採用しても良いし、かかる位置よりも先端側の肉厚を薄肉とすることで段差を形成して凹状線106の代わりとしても良い。また、それら凹状線106や凸状線,段差等を、先端部92の外周面に形成しても良い。更に、先端部92の外周面に形成する場合には、凸状線に代えて、印刷等で着色した線等を設けても良い。更にまた、このような凹状線106や凸状線,段差,着色線等は、ノズル部76の全周に亘って連続して環状に形成されている必要はなく、周上で部分的に形成されていても良い。勿論、本実施形態の如く、ノズル部76の中心軸に対して傾斜していることは、必須でない。
【0064】
また、本実施形態では、先端部92が可視光線透過性の合成樹脂材料で形成されていることから、ノズル部76の内部を押し出される眼内レンズ14を外部から視認することが出来るのであり、その際、前述の如く、凹状線106が側面視でノズル中心軸に対して傾斜していることから、ノズル部76の内部を丸められた状態で押し出される眼内レンズ14の先端部の外形線に略沿うこととなる。それ故、ノズル部76の内部を押し出される眼内レンズ14の位置に関して、凹状線106に対する符合状態に至ったことを一層容易に視認することが可能である。
【0065】
以上のように、本実施形態における器具本体12は、本体筒部18、ステージ24、カバー部36、およびノズル部76が一体成形されて、単一の部材として構成されており、かかる器具本体12とは別体として構成された担持部材56が載置面32の下方から組み付けられるようになっている。なお、前述のように器具本体12は光透過性を有する部材で形成されており、ステージ24の開口部29がカバー部36で覆蓋せしめられた状態においても、カバー部36を通して、器具本体12に収容された眼内レンズ14が視認可能とされている。
【0066】
そして、このような構造とされた器具本体12の後方から、押出部材としてのプランジャ16が貫通孔20に挿し入れられている。図24および図29に、プランジャ16を示す。プランジャ16は、器具本体12の軸方向長さ寸法よりもやや大きな軸方向長さ寸法を有する略ロッド形状とされており、略円柱形状とされた作用部108と、略矩形ロッド形状とされた挿通部110が一体形成されている。
【0067】
作用部108は、プランジャ16の中心軸上を延びる略円柱形状とされた棒状部112と、棒状部112の幅方向両側に広がる薄板状の扁平部114とを含んで構成されている。扁平部114は、棒状部112の後端部から挿通部110と等しい幅寸法をもって先端方向に向けて延び出すと共に、棒状部112の長さ方向略中間部分から、棒状部112の先端部からやや後方の部位に行くに連れて次第に幅寸法が小さくされた先鋭部116が形成されている。ここにおいて、先鋭部116の上面視形状は、器具本体12のノズル部76における縮径部86の水平方向断面形状に沿う形状とされている。
【0068】
さらに、作用部108の軸方向先端部分には、切欠118が形成されている。本実施形態においては、切欠118は、上方および幅方向両側に開口せしめられると共に、軸方向後端側の内周面は上面視において作用部108の軸方向に対して斜めに延びると共に作用部108の軸直方向に広がって形成されている一方、軸方向先端側の内周面は上面視において作用部108の軸直方向に延びると共に作用部108の先端に行くに連れて上方に向かう傾斜面とされている。
【0069】
更にまた、作用部108の軸方向中間部分からやや後方には、上方に突出する上方突出部120が形成されている。上方突出部120は、棒状部112の幅寸法と等しい幅寸法とされており、棒状部112の軸方向中間部分からやや後方において、後方に行くに連れて上方に傾斜せしめられた傾斜面122が所定寸法に亘って形成されると共に、かかる傾斜面122の後端縁部から作用部108の後端縁部に亘って一定の高さ寸法をもって軸方向後方に延び出されている。
【0070】
一方、挿通部110は、貫通孔20の軸方向寸法よりも僅かに大きな軸方向寸法をもって形成されている。かかる挿通部110は略全体が略H字状の横断面形状とされており、その幅寸法および高さ寸法が、貫通孔20の幅寸法および高さ寸法よりも僅かに小さくされている。また、挿通部98の後端縁部には、軸直角方向に広がる円板状の押圧板部124が一体形成されている。
【0071】
さらに、挿通部110の軸方向中間部分からやや前方には、保持手段としての係止部126が形成されている。係止部126には、挿通部110の軸直方向に貫通する貫通孔128内に突出すると共に、挿通部110の上方に向けて突出する爪部130が形成されている。そして、プランジャ16が器具本体12の本体筒部18に挿通された状態で、本体筒部18の上面において厚さ方向に貫設された係止孔132とプランジャ16の爪部130が係合せしめられることによって、プランジャ16の器具本体12に対する相対位置が位置決めされた挿通状態で保持されるようになっている。なお、爪部130と係止孔132の形成位置は、係合状態において、作用部108の先端部が器具本体12の貫通孔20から突出せしめられて、切欠118が後述するステージ24内に収容せしめられた眼内レンズ14の軸方向後方に位置する保持部30を下方から支持せしめる位置となるように設定されている。なお、係止部126や係止孔132は、例えば、挿入器具10の下面や側面に形成しても良い。
【0072】
このような構造とされた眼内レンズの挿入器具10においては、先ず、プランジャ16の先端部分が器具本体12の本体筒部18に後方から挿入されて、爪部130が係止孔132に係止せしめれらた初期位置に位置せしめられる。それと共に、担持部材56が、前述のように、載置面32の下方から器具本体12に取り付けられる。これにより、担持部材56の第一支持部64および第二支持部68が載置面32上に突出せしめらた状態に保持される。
【0073】
そして、図30に示すように、眼内レンズ14の本体部26が保持部30,30を器具本体12の軸方向に向けた状態で第一支持部64および第二支持部68の上端面に載置せしめられる。なお、図30においては、理解を容易とするために、器具本体12の必要部分と眼内レンズ14、載置面32から突出せしめられた第一および第二支持部64,68、およびステージ24内に臨むプランジャ16の先端部分のみを示す。かかる載置状態において、眼内レンズ14は、本体部26の外周部分が第一及び第二支持部64,68に接触状態とされており、中央部分はこれら第一及び第二支持部材64,68に対して非接触状態で支持されている。このように、本実施形態においては、第一及び第二支持部64,68を含んで外周支持部が構成されている。また、かかる載置状態において、眼内レンズ14において器具本体12の軸方向後方に位置せしめられた保持部30が、プランジャ16の切欠118の底面によって支持せしめられる。更にまた、プランジャ16の初期位置において、プランジャ16の軸方向前方(図30中、左方向)には、載置面32から突出せしめられた第二支持部68が位置せしめられている。これにより、プランジャ16側(図30中、右側)に位置せしめられた第二支持部68によって、プランジャ16の前進を阻止するストッパが構成されており、プランジャ16は、後述するように第二支持部68が載置面32上から後退せしめられない限り、前進が不可能とされている。
【0074】
さらに、第一支持部64および第二支持部68に形成された周壁66、70が、眼内レンズ14における本体部26の外側に位置せしめられるようになっており、特に本実施形態においては、第一支持部64に形成された周壁66が眼内レンズ14を器具本体12の軸方向に対する斜め方向の両側を挟んで位置せしめられると共に、第二支持部68に形成された周壁70が、眼内レンズ14を器具本体12の軸方向の両側を挟んで位置せしめられるようになっている。これにより、眼内レンズ14の器具本体12に対する軸方向および軸直方向の変位量を制限せしめて、眼内レンズ14を安定して保持出来るようになっている。加えて、第一及び第二支持部64,68への載置状態において、眼内レンズ14の本体部26は、載置面32から所定距離を隔てて位置せしめられており、載置面32に対して非接触状態で支持せしめられるようになっている。
【0075】
そして、屈曲部40が屈曲せしめれられて、カバー部36によってステージ24の開口部29が覆蓋せしめられることによって、眼内レンズ14が器具本体12内に収容状態でセットされる。なお、カバー部36は、係合片50が係合切欠54に係合せしめられることによって、閉状態に維持される。
【0076】
以上のようにして、眼内レンズ14が挿入器具10内に収容される。そして、本実施形態における挿入器具10は、眼内レンズ14を収容した状態で殺菌処理等がなされた後に、梱包されて配送される。
【0077】
そして、本実施形態における挿入器具10を用いて眼内レンズ14を眼内に挿入する場合には、先ず、担持部材56を器具本体12の下方に引き抜いて、器具本体12から取り外す。これにより、眼内レンズ14を支持せしめていた第一及び第二支持部64,68が載置面32から下方に引き抜かれて載置面32上から後退せしめられ、眼内レンズ14が載置面32上に載置せしめられる。ここにおいて、本実施形態における載置面32は平坦面とされていることから、眼内レンズ14を安定して載置せしめることが出来ると共に、凹状溝28の幅寸法が眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きい程度とされていることから、載置面32上での眼内レンズ14の周方向の回転も阻止されるようになっている。
【0078】
続いて、眼組織に設けた切開創にノズル部76の先端開口部94を挿入する。ここにおいて、本実施形態においては、先端開口部94が斜めの開口形状とされていることによって、切開創への挿入を容易に行なうことが可能とされている。それに加えて、先端開口部94の周縁部103が、先端開口部94の外周部分に形成されたテーパ面104によって尖鋭エッジ形状とされていることから、切開創への挿入を更に容易に行なうことが可能とされている。
【0079】
そして、切開創に先端開口部94を挿し入れた後に、ノズル部76を切開創内に押し込んで行くことによって、先端開口部94を眼内の内方に挿し入れる。ここにおいて、ノズル部76には、凹状線106が形成されていることから、かかる凹状線106を挿入位置を確認する際の指標として用いることが出来て、凹状線106が切開創に重なる位置まで先端開口部94を挿し込むことによって、先端開口部94を眼内の好適な挿入位置に位置決めすることが出来るようにされている。
【0080】
次に、ノズル部76を切開創に挿入した状態で、プランジャ16の押圧板部124を器具本体12側に押し込む。これにより、載置面32に載置せしめられた眼内レンズ14における本体部26の外周縁部にプランジャ16の先端が当接せしめられて、プランジャ16によって眼内レンズ14が基端開口部80に向けて案内される。ここにおいて、眼内レンズ14におけるプランジャ16側の保持部30は、プランジャ16の切欠118内に載置されていることから、プランジャ16の先端が眼内レンズ14の本体部26の外周面とレンズ径方向一方向で直接に対向せしめられており、プランジャ16を本体部26に当接せしめるに際して、保持部30を巻き込むようなことも回避されている。
【0081】
しかも、保持部30がプランジャ16の切欠118に入り込んでいることで、プランジャ16の先端面で眼内レンズ14の本体部26を押し出す際に、保持部30の変形態様が或る程度制限されることとなる。これにより、眼内レンズ14をプランジャ16で押し出すに際して、保持部26の予期しない変形や、特に保持部26の本体部26への被着、保持部26のノズル部76内への引っ掛かり、更には眼内レンズ14の変形や回転などのトラブルの防止が図られ得るのである。
【0082】
なお、特に本実施形態では、かかる切欠118が、プランジャ16の上面を略軸直角方向に延びる一つの凹溝形状とされていると共に、そのプランジャ16の押出方向前方側の溝壁面が、凹溝の開口側に向かって拡開する傾斜面とされていることにより、眼内レンズ14の保持部30を凹溝である切欠118に対して容易に且つ確実に入れることが出来るようになっている。また、かかる凹溝である切欠118におけるプランジャ16の押出方向後方側の溝壁面は、溝の開口側に向かって溝底面から略垂直に立ち上がる垂直面とされており、切欠118に入り込んだ保持部30が、プランジャ16の押し出し操作に際しても、凹溝(切欠118)の前方側の傾斜面で切欠118内に確実に導き入れられた後、凹溝(切欠118)からの外れ出しが効果的に防止されて、凹溝(切欠118)内に入り込んだ状態に安定して保持され得るようになっている。
【0083】
なお、眼内レンズ14の押し出しの前に、必要に応じて、適当な潤滑剤をステージ24やノズル部76の内部に注入することが望ましい。特に本実施形態においては、カバー部36に厚さ方向に貫通する注入孔134(図9参照)が形成されており、かかる注入孔134を通じて、カバー部36を閉じた状態で潤滑剤が注入出来るようになっているが、潤滑剤の注入は、例えば、ノズル部76の先端開口部94から注入したり、一旦カバー部36を開いて、ステージ24の開口部29から注入したり、或いは、一旦プランジャ16を器具本体12から引き抜いて、貫通孔20の後端の開口部から注入するなどしても良い。
【0084】
そして、プランジャ16の押し込みに際して、プランジャ16の棒状部112は、カバー部36に形成された案内突起48、48で挟まれることによって、左右方向の変位量が制限される。これにより、プランジャ16を軸方向に安定して押し出すことが可能とされている。また、中央案内板部46および左右案内板部44a,44bが載置面32に向けて突出せしめられていることによって、眼内レンズ14の上方への過大な変位量も制限されており、眼内レンズ14を基端開口部80内に滑らかに案内することが可能とされている。
【0085】
それと共に、プランジャ16の上面には、カバー部36に形成された中央案内突部46が当接せしめられる。これにより、プランジャ16が載置面32に向けて押圧せしめられて上方への変位や変形が阻止されており、プランジャ16を載置面32から大きく離隔することなく案内して、基端開口部80に円滑に押し込まれるようにすることが可能とされている。
【0086】
そして、プランジャ16によって基端開口部80から導入部84内に案内された眼内レンズ14は、導入部84の底面82に形成された導入突部90、90によって、本体部26の中央部分を下方へ突出せしめた凹形状に初期変形が加えられつつ、縮径部86内に押し込まれる。更に、プランジャ16の棒状部112が導入突部90、90で挟まれることによって、軸直方向の変形や変位が抑えられて、軸方向に安定した押し出しを行なうことが可能とされている。
【0087】
更にまた、プランジャ16の先端部が縮径部86に差し掛かると、縮径部86の軸方向後端部に形成された傾斜面88に当接せしめられることによって、プランジャ16を通じて施術者に節度感が与えられる。これにより、プランジャ16の先端部が縮径部86に差し掛かったこと、換言すれば、眼内レンズ14が縮径部86内に押し込まれて、眼内レンズ14の湾曲変形が開始されたことを施術者に知らせることが可能とされている。
【0088】
続いて、プランジャ16が更に押し込まれることによって、眼内レンズ14は、縮径部86内を先端方向に向けて案内されて、更に小さく湾曲変形せしめられた後に、ノズル部76の先端部92に案内される。そこにおいて、本実施形態においては、先端部92の内周面に溝状の凹状線106が形成されていることによって、凹状線106が空気抜き孔として作用することから、眼内レンズ14の押し出しをより円滑に行なうことが出来る。要するに、かかる凹状線106を目印として、眼内レンズ14の先端縁部がノズル部76内で凹状線106に達する位置までプランジャ16で押し出すことによって、ノズル部76内の残留空気を速やかに排出操作することが可能となる。
【0089】
そして、更にプランジャ16が押し込まれることによって、眼内レンズ14が、ノズル部76の先端開口部94に案内される。ここにおいて、特に本実施形態においては、プランジャ16の棒状部112に上方突出部120が形成されると共に、上方突出部120の軸方向前端部には、傾斜面122が形成されている。そして、傾斜面122は、プランジャ16の先端部が先端開口部94の下側端縁部98からやや後方、要するに、先端開口部94の手前に到達した時点で上壁部35に当接せしめられる軸方向位置に形成されている。これにより、プランジャ16が先端開口部94の手前に到達すると、傾斜面122が上壁部35に当接せしめられ、プランジャ16を更に押し込むに連れて、上壁部35の弾性変形量の増大に伴って、傾斜面122と上壁部35との当接力が増大せしめられる。これにより、プランジャ16の操作抵抗力を増大せしめることが出来て、施術者に対してプランジャ16の先端部が先端開口部94の手前に到達した時点で節度感を与え、眼内レンズ14が先端開口部94に差し掛かったことを認識させることが可能とされている。それと共に、上壁部35に傾斜面122が当接せしめられた後は、上方突出部120と上壁部35が当接状態とされることによって、プランジャ16の操作抵抗が大きくなるようにされている。
【0090】
このようにして、眼内レンズ14が、ノズル部76の先端開口部94にまで案内される。そこにおいて、特に本実施形態においては、先端開口部94の開口端面形状が、側面視においてノズル部76の外方に向けて凸となる斜めの開口形状とされていることから、プランジャ16の押し込み量の増大に伴って、眼内レンズ14を少しずつ挿入器具10の外部に露出せしめてゆくことが可能とされている。これにより、眼内レンズ14自体の弾性による復元力が少しずつ発揮せしめられるようになっており、復元力が急激に開放されて眼内レンズ14が飛び出すおそれも軽減することが出来て、眼内レンズ14を施術者が要求する位置に安定して挿入することが可能とされている。このようにして、眼内レンズ14が先端開口部94から挿入器具10の外部に押し出されて、眼内に挿入されることとなる。
【0091】
なお、特に本実施形態においては、眼内レンズ14においてプランジャ16の押込方向の後方側に位置せしめられた保持部30が、プランジャ16の先端部に形成された切欠118内に通された状態で押し出しが行なわれるようになっている。それ故、切欠118内に通された保持部30を完全に離脱させるために、プランジャ16は、図31に示すように、切欠118が先端開口部94から完全に突出せしめられる位置が器具本体12への最大押し込み位置とされており、かかる最大押し込み位置は、プランジャ16の挿通部110の先端面が貫通孔20の上下壁部35、34で係止されることで制限されるようになっており、本実施形態においては、これら上下壁部35,34を含んで、プランジャ16のストッパ機構が構成されている。そして、かかるストッパ機構によって、プランジャ16の先端開口部94からの過渡の突出が抑えられており、挿入に際する安全性も向上せしめられている。
【0092】
このような構造とされた挿入器具10においては、眼内レンズ14の本体部26の外周部分のみが第一及び第二支持部64,68によって支持されると共に、載置面32の上方に離隔した非接触状態で支持されていることから、本体部26の中央部分を傷つけるおそれを軽減することが出来る。そして、第一及び第二支持部64、68に設けられた周壁66、70によって眼内レンズ14の変位量が制限されることによって、眼内レンズ14を安定して支持せしめると共に、載置面32上に優れた位置決め精度をもって載置することが出来る。
【0093】
さらに、本実施形態においては、担持部材56の器具本体12への組み付け状態を保持して、第一及び第二支持部64,68の載置面32からの突出状態を保持する係止爪72が、第二支持部68に一体的に形成されている。これにより、第二支持部68を載置面32に対して直接的に係合せしめることが可能とされており、第一および第二支持部64、68を載置面32から所期の位置に精度良く突出せしめることが出来ると共に、かかる突出状態を有利に保持することが出来る。また、担持部材56を器具本体12へ組み付けるロック機構を、優れたスペース効率をもって形成することが出来ると共に、担持部材56を器具本体12に組み付ける際に、係止爪72が載置面32上に突出せしめられた際の節度感を与えることが出来て、担持部材56の組み付けが正しく行われたことを知らせることも出来る。
【0094】
そして、本実施形態における挿入器具10を使用する際には、担持部材56を器具本体12から取り外すという非常に簡易な操作によって眼内レンズ14を載置面32上に載置することが可能とされている。そこにおいて、本実施形態における挿入器具10においては、前述の如き第一及び第二支持部64,68によって安定した位置決め精度を得られることから、このような簡易な操作にも関わらず、眼内レンズ14を載置面32上に優れた位置決め精度をもって載置することが可能とされている。更にまた、カバー部36によってステージ24の開口部29を覆蓋せしめた状態を維持して眼内レンズ14の載置を行えることから、眼内レンズ14の挿入器具10からの脱落を抑えることが出来ると共に、眼内レンズ14の外界との接触の機会も軽減されて、衛生面上も優れた効果を得ることが出来る。
【0095】
加えて、本実施形態における挿入器具10においては、先端開口部94がノズル部76の中心軸に対して斜めに開口せしめられた傾斜開口部とされており、側方視において、上側端縁部96が下側端縁部98よりも前方に突出せしめられた尖鋭形状とされている。これにより、先ず上側端縁部96が切開創に挿入されることによって、切開創への挿入を容易に行なうことが出来ると共に、先端開口部94を挿入するに際して必要とされる切開創のサイズをより小さくすることが出来て、患者の負担も軽減することが出来る。更に、特に本実施形態においては、先端開口部94の周縁部103の外周部分の全周に亘ってテーパ面104が形成されていることによって、周縁部103が全周に亘って尖鋭形状とされている。これにより、切開創への挿入がより容易に行なえるようにされている。
【0096】
更にまた、先端開口部94が側面視においてノズル部76の外方に向けて凸となる湾曲形状とされていることから、先端開口部94による保持状態を保ちつつ、眼内レンズ14を次第に外部に露出せしめて行くことが可能とされている。図32および図33(a)に示すように、例えば上下側端縁部96,98が本実施形態と同じ位置に形成されていたとしても、開口端面が直線:N1で示すように側面視において単純な直線形状を有する平坦な開口端面である場合には、眼内レンズ14は、下側端縁部98を越えた段階で既に下側部分が開口端面の外部に露出されてしまう。従って、眼内レンズ14自身の弾性による吐出効果が急激に発現せしめられて、眼内レンズ14が上側端縁部96に案内される前に勢い良く飛び出すおそれが大きい。また、図32において曲線:N2で示すように、本実施形態とは逆に、ノズル部76の軸直方向に広がる面に対する傾斜角度が下側端縁部98に行くに連れて次第に小さくなる、側面視において前方に凹状の湾曲形状である場合には、眼内レンズ14の更に広い範囲が外部に露出されてしまい、レンズの保持効果が更に損なわれることとなる。これに対して、図32および図33(b)に示すように、本実施形態における特定形状とされた先端開口部94によれば、眼内レンズ14が下側端縁部98を越えた段階でも、眼内レンズ14を左右から保持し続けることが出来る。
【0097】
加えて、本実施形態においては、先端部92における通孔78の内周面に上下平坦面105a,105bが形成されると共に、左右湾曲面107a,107bが形成されることによって略オーバル形状が形成されており、かかるオーバル形状が、先端開口部84に至る軸方向の略全体に亘って形成されている。これにより、先端部92に案内された眼内レンズ14を上平坦面105aに押し付けることが可能とされると共に、眼内レンズ14に対して上方向への押し付け力を及ぼす下面にも下平坦面105bが形成されていることによって、眼内レンズ14を周方向の回転を可及的に防止しつつ先端開口部84に案内することが出来る。
【0098】
これにより、本実施形態においては、眼内レンズ14を上側端縁部96に至るまで安定して保持しつつ少しずつ外部に露出せしめてゆくことが可能とされている。従って、眼内レンズ14が急に飛び出すことも抑えることが出来る。そして、眼内レンズ14を上側端縁部96にまで案内して、先端開口部94の下方に全体として充分に露出せしめた後に、下方に落とし込むようにして眼内レンズ14を眼内に挿入することが出来る。これにより、施術者の意図する位置に安定して眼内レンズ14を挿入することが可能とされるのである。そこにおいて、本実施形態においては、ノズル部76の外周面に形成されたテーパ面104によって周縁部103の尖鋭形状が形成されており、ノズル部76の内周面を形成する通孔76は、先端部92において軸方向の最先端縁部まで殆ど縮径することなく形成されている。これにより、眼内レンズ14に過渡の湾曲変形を与えて、その反力としての復元力が過渡に生ぜしめられるおそれも回避されている。
【0099】
それと共に、眼内レンズ14を上側端縁部96まで安定して保持出来ることから、図34に示すように、押出方向の前方に位置せしめられた保持部30を、先端開口部94から充分に突出せしめることが出来る。これにより、眼内レンズ14を下方に落とす際に、保持部30がノズル部76の先端部92に引っ掛かる等の問題も有利に回避され得るのである。
【0100】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0101】
例えば、前記実施形態におけるテーパ面104は、必ずしも先端開口部94の周縁部103の全周に亘って形成されている必要は無く、少なくとも上側端縁部96において形成されて、上側端縁部96が尖鋭エッジ形状とされていれば良い。このようにしても、切開創への挿入の始点となる上側端縁部96が尖鋭とされることから、切開創への挿入を容易にすることが出来る。
【0102】
また、担持部材56を器具本体12に固定するロック機構としては、必ずしも前述の第二支持部68に形成された係止爪72のように、第二支持部68に形成されている必要は無い。例えば、係止爪72に代えて、第一支持部64および第二支持部68を、脚板部62側へ行くに連れて上面視寸法が次第に大きくなる形状として、これら第一支持部64および第二支持部68が載置面32の貫通孔74に押し込まれることによって、貫通孔74の復元力および互いの部材間の摩擦力によって担持部材56を載置面32の裏側に固定するようにしても良いし、或いは、担持部材56の側壁部58を、器具本体12において載置面32の幅方向両端部から下方に突出する下方突出壁37(図7参照)で挟持せしめることによって固定するなどしても良い。
【0103】
また、本発明における眼内レンズの挿入器具は、前述の実施形態の如き、予め眼内レンズを内蔵した状態で提供されるものに限定されるものではなく、眼内レンズとは別個に提供されて、施術時に眼内レンズがセットされるものであっても良い。
【0104】
更にまた、前記実施形態において挿入器具10に収容される眼内レンズ14は、本体部26と保持部30が別体として形成されていたが、本体部26と保持部30が同一部材で一体成形されたものを採用することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態としての眼内レンズの挿入器具の上面図。
【図2】同挿入器具の側面図。
【図3】同挿入器具を構成する本体筒部の上面図。
【図4】同本体筒部の下面図。
【図5】同本体筒部の左側面図。
【図6】同本体筒部の右側面図。
【図7】同本体筒部の前面図。
【図8】同本体筒部の背面図。
【図9】同本体筒部の要部拡大上面図。
【図10】図1に示した挿入器具を構成する担持部材の上面図。
【図11】同担持部材の下面図。
【図12】同担持部材の側面図。
【図13】同担持部材の正面図。
【図14】図1に示した挿入器具の挿入筒部の上面図。
【図15】同挿入筒部の側面図。
【図16】同挿入筒部の先端部の側面図。
【図17】同挿入筒部の先端部の上面図。
【図18】同挿入筒部の先端部の下面図。
【図19】同挿入筒部の先端部の正面図。
【図20】同挿入筒部の先端部の背面図であって、図14におけるXX−XX断面図。
【図21】図17におけるXXI−XXI断面図。
【図22】図17におけるXXIII−XXIII断面図。
【図23】図16に示した挿入筒部の先端部の下方斜視図。
【図24】図1に示した挿入器具を構成する押出部材の上面図。
【図25】同押出部材の下面図。
【図26】同押出部材の左側面図。
【図27】同押出部材の右側面図。
【図28】同押出部材の正面図。
【図29】同押出部材の背面図。
【図30】図1に示した挿入器具の要部を拡大して示す上面説明図。
【図31】押出部材の突出位置を説明するための上面説明図。
【図32】先端開口部における眼内レンズの保持状態を説明するための断面説明図。
【図33】図32におけるXXXIII−XXXIII断面に相当する説明図。
【図34】先端開口部からの眼内レンズの保持部の突出状態を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0106】
10:挿入器具、12:器具本体、14:眼内レンズ、16:プランジャ、76:ノズル部、92:先端部、94:先端開口部、96:上側端縁部、98:下側端縁部、103:周縁部、104:テーパ面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを収容する略筒形状を有する器具本体を備えており、該器具本体内に軸方向の後方から挿入された押出部材で該眼内レンズを軸方向前方に移動させつつ小さく変形せしめて該器具本体の軸方向先端部に設けられた挿入筒部を通じて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズの挿入器具において、
前記挿入筒部の先端部における先端開口端面を該挿入筒部の中心軸に直交する面に対して傾斜した傾斜面とすると共に、該先端開口端面の該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を先端部側よりも基端部側において大きく形成し、更に、該先端開口端面の先端部側の周縁部を、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状としたことを特徴とする眼内レンズの挿入器具。
【請求項2】
前記先端開口端面の周縁部が全周に亘って、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状とされている請求項1に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項3】
前記挿入筒部の前記先端開口端面の軸方向における最先端部と最基端部をつなぐ直線において、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が60°〜80°の範囲内に設定されていると共に、該先端開口端面の先端部分における該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が40°〜60°の範囲内に設定されている請求項1又は2に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項4】
前記先端開口端面を、少なくとも前記挿入筒部の軸方向の先端部分において、該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状とした請求項1乃至3の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項5】
前記先端開口端面を、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が次第に変化する湾曲形状と該中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状との組み合わせ形状とした請求項4に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項6】
前記先端開口端面の軸方向長さを2.5mm〜5.0mmの範囲内で設定した請求項1乃至5の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項7】
前記挿入筒部における前記先端部の内径寸法を1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定した請求項1乃至6の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項8】
前記外周面テーパ形状の前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を5°〜15°の範囲内で設定した請求項1乃至7の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項9】
該挿入筒部の先端部において該挿入筒部の中心軸に直交する断面および前記先端開口端面の内周面の軸方向視が幅方向で略平行に延びる幅方向直線部を有すると共にそれら幅方向直線部を滑らかに接続する縦方向湾曲部を有する略オーバル形状とされている請求項1乃至8の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項1】
眼内レンズを収容する略筒形状を有する器具本体を備えており、該器具本体内に軸方向の後方から挿入された押出部材で該眼内レンズを軸方向前方に移動させつつ小さく変形せしめて該器具本体の軸方向先端部に設けられた挿入筒部を通じて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズの挿入器具において、
前記挿入筒部の先端部における先端開口端面を該挿入筒部の中心軸に直交する面に対して傾斜した傾斜面とすると共に、該先端開口端面の該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を先端部側よりも基端部側において大きく形成し、更に、該先端開口端面の先端部側の周縁部を、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状としたことを特徴とする眼内レンズの挿入器具。
【請求項2】
前記先端開口端面の周縁部が全周に亘って、外周面テーパ形状による尖鋭エッジ形状とされている請求項1に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項3】
前記挿入筒部の前記先端開口端面の軸方向における最先端部と最基端部をつなぐ直線において、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が60°〜80°の範囲内に設定されていると共に、該先端開口端面の先端部分における該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が40°〜60°の範囲内に設定されている請求項1又は2に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項4】
前記先端開口端面を、少なくとも前記挿入筒部の軸方向の先端部分において、該挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状とした請求項1乃至3の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項5】
前記先端開口端面を、前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度が次第に変化する湾曲形状と該中心軸に直交する面に対する傾斜角度が一定の直線形状との組み合わせ形状とした請求項4に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項6】
前記先端開口端面の軸方向長さを2.5mm〜5.0mmの範囲内で設定した請求項1乃至5の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項7】
前記挿入筒部における前記先端部の内径寸法を1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定した請求項1乃至6の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項8】
前記外周面テーパ形状の前記挿入筒部の中心軸に直交する面に対する傾斜角度を5°〜15°の範囲内で設定した請求項1乃至7の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【請求項9】
該挿入筒部の先端部において該挿入筒部の中心軸に直交する断面および前記先端開口端面の内周面の軸方向視が幅方向で略平行に延びる幅方向直線部を有すると共にそれら幅方向直線部を滑らかに接続する縦方向湾曲部を有する略オーバル形状とされている請求項1乃至8の何れか一項に記載の眼内レンズの挿入器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2009−160153(P2009−160153A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341166(P2007−341166)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】
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