説明

眼内レンズ挿入装置

【課題】ケースから取り出された眼内レンズ挿入器具の誤操作を防止することができる眼内レンズ挿入装置を提供する。
【解決手段】レンズ設置部28に設置された眼内レンズ40を初期段階まで移動させる第1の押出機構と、前記初期段階まで移動された前記眼内レンズ40を放出する第2の押出機構8Aとを有する眼内レンズ挿入器具2と、前記眼内レンズ挿入器具2を収容するケース3とを備える眼内レンズ挿入装置1において、前記眼内レンズ挿入器具2を前記ケース3から取り出し可能に保持するロック機構を有し、前記ロック機構は、前記第1の押出機構により前記眼内レンズ40を初期段階まで移動させることにより解除され、前記眼内レンズ挿入器具2を前記ケース3から取り出し可能とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズ挿入装置に関し、特にあらかじめ眼内レンズが設置されている眼内レンズ挿入器具がケースに収容された状態で出荷される眼内レンズ挿入装置、いわゆるプリロードタイプの眼内レンズ挿入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白内障手術においては、超音波乳化術による混濁した水晶体の除去、及び水晶体除去後の眼内への埋植が広く行われている。そして、現在では、シリコーンエストラマーや軟性アクリル等の軟質な材料からなる軟性の眼内レンズを用い、眼内レンズ挿入器具によって眼内レンズの光学部を折り畳み、この状態のままプランジャーで眼内レンズを押してノズル部の開口部から押し出し、光学部の径よりも小さな切開創から眼内に眼内レンズを挿入することが行われている。
【0003】
近年では、工場出荷段階であらかじめ眼内レンズが挿入器具内に設置されているタイプの眼内レンズ挿入器具、いわゆるプリロードタイプの眼内レンズ挿入器具に関する発明が多くなされている。プリロードタイプの眼内レンズ挿入器具を使用すると、ユーザーである術者や介護者が眼内レンズを挿入器具に設置する作業を省くことができるため、煩雑な設置作業に要する労力を無くし、それに伴う操作ミスや雑菌混入の可能性を低減することができる。
【0004】
プリロードタイプの眼内レンズ挿入器具をメーカーからユーザーに搬送する段階においては、眼内レンズの眼内放出後の復元性を確保するために、眼内レンズはできるだけ負荷のかからない状態で保持されていることが好ましい。
【0005】
また、ユーザーが使用する段階においては、手術後の角膜乱視や感染症低減の観点からできるだけ小さな切開創から眼内に眼内レンズを挿入することが好ましく、そのためには、できるだけ小さく眼内レンズを折り畳む必要がある。
【0006】
このようにプリロードタイプの眼内レンズ挿入器具では、眼内レンズ挿入器具の内部で、眼内レンズを負荷のかかっていない保持状態から、小さく折り畳まれた状態まで移動させなければならないので、所定の方向及び形状にしっかり変形しない場合には、挿入器具の先端にあるノズル付近で眼内レンズが詰ったり、破損してしまうことになる。
【0007】
眼内レンズをより確実に変形させるための一つの方法として、眼内レンズを負荷のかからない保持状態から、眼内への放出にいたるまでを一つのプランジャーのみで押出すのではなく、複数の移動手段により段階的に移動、変形させる技術がある(例えば、特許文献1、2)。
【0008】
これらの技術では、眼内レンズの状態に応じて複数の移動手段によって眼内レンズを移動、変形させるので、変形の確実性は向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2009/148091号
【特許文献2】特開2001−104347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献では、段階的に眼内レンズを移動させるので、誤操作の可能性が高くなってしまう。
【0011】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、確実に眼内レンズを変形させることができると共に、誤操作の可能性を低減できる眼内レンズ挿入器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、レンズ設置部に予め設置された眼内レンズを初期段階まで移動させる第1の押出機構と、前記初期段階まで移動された前記眼内レンズを放出する第2の押出機構とを有するプリロードタイプの眼内レンズ挿入器具と、前記眼内レンズ挿入器具を収容するケースとを備える眼内レンズ挿入装置において、前記眼内レンズ挿入器具を前記ケースから取り出し可能に保持するロック機構を有し、前記ロック機構は、前記第1の押出機構により前記眼内レンズを初期段階まで移動させることにより解除され、前記眼内レンズ挿入器具を前記ケースから取り出し可能とすることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記眼内レンズは、光学部と一対の支持部とを有し、付加のかからない状態で前記レンズ設置部に設置されており、前記第1の押出機構は、前記支持部が前記光学部内に折り曲げられた状態に変形する位置まで、前記レンズ設置部に設置された前記眼内レンズを移動させることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記第2の押出機構が、前記眼内レンズに当接するロッドが設けられたプランジャーを有し、前記第1の押出機構が、前記ロッドよりも大きいレンズ当接面を有するスライダーであることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記第1の押出機構の移動を制限するカバー部が着脱自在に前記ケースに設けられており、前記レンズ設置部に粘弾性物質を注入してから、前記カバー部を外して、前記第1の押出機構を移動させるまでの操作順序を示す目印が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る眼内レンズ挿入装置によれば、眼内レンズを初期段階まで移動させることによりロック機構が解除され、眼内レンズ挿入器具をケースから取り出すことができるので、誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る眼内レンズ挿入装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る眼内レンズ挿入器具の全体構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る挿入筒部の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る挿入器具本体の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレンズ設置部の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレンズ設置部の構成を示す縦端面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るプランジャーの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係るロッドの先端の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係るケースの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る眼内レンズ挿入装置の構成を示す部分斜視図である。
【図11】本発明の実施形態に係るカバー部の構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態に係る眼内レンズ挿入装置の使用状態(1)を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施形態に係る眼内レンズ挿入装置の使用状態(2)を示す斜視図である。
【図14】上記使用状態(2)における眼内レンズの状態を示す平面断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る眼内レンズ挿入装置の使用状態(3)を示す斜視図である。
【図16】本発明の実施形態に係る眼内レンズ挿入装置の使用状態(4)を示す斜視図である。
【図17】本発明の変形例に係る眼内レンズ挿入器具の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.全体構成
図1に示すように、眼内レンズ挿入装置1は、眼内レンズ40をあらかじめ設置したプリロードタイプの眼内レンズ挿入器具2Aと、当該眼内レンズ挿入器具2Aを収容するケース3とを備え、前記眼内レンズ挿入器具2Aを前記ケース3から取り出し可能に保持するロック機構4が設けられている。
【0019】
尚、以下の説明において、レンズ進行方向としてのレンズ進行軸Aの前方を単に「前方」といい、レンズ進行軸Aの後方を単に「後方」ということとする。
【0020】
眼内レンズ挿入器具2Aは、第1の押出機構としてのスライダー6と、第2の押出機構8Aとを有する。ケース3には、前記スライダー6の移動を制限するカバー部10が着脱自在に設けられている。ケース3およびカバー部10には、眼内レンズ挿入装置1の操作順序を示す目印12A,12B,12Cが適所に設けられている。前記ロック機構4は、前記スライダー6を前方へ移動することにより解除される。
【0021】
眼内レンズ挿入装置1は、前記スライダー6を操作した後にのみ、前記眼内レンズ挿入器具2Aを前記ケース3から取り出すことができる。また、眼内レンズ挿入装置1は、眼内レンズ挿入器具2Aをケース3に収容することにより、製造工場からの出荷後、搬送や、手術の準備などの手術前において、眼内レンズ挿入器具2Aに予め設置された眼内レンズ40の不意な飛び出しや、損傷を防止し得るように構成されている。また、眼内レンズ挿入装置1は、主に合成樹脂で全体を構成することにより、容易に大量生産をすることができるように構成され、ディスポーザブル(使い捨て)としての用途に好適に用いられる。
【0022】
(1)眼内レンズ挿入器具
眼内レンズ挿入器具2Aは、図2に示すように、挿入器具本体14A、スライダー6、第2の押出機構8Aを備える。スライダー6は、挿入器具本体14A内で前方及び後方へ移動可能に設けられている。挿入器具本体14Aの先端には、挿入筒部16が設けられている。
【0023】
挿入筒部16は、図3に示すように、先端から順に、ノズル18、移行部20、保護部22が配置され、それぞれ連通されており、基端において挿入器具本体14Aの先端に連結される。移行部20は、基端から先端に向かって内径がテーパ状に小さくなるように形成されている。保護部22には、粘弾性物質を内部に注入するための注入口24と、第1挿入孔26が設けられている。
【0024】
挿入器具本体14Aは、図4に示すように、筒状の部材で形成され、レンズ設置部28、スライダー案内部30、係合突起32が設けられている。レンズ設置部28は、挿入器具本体14Aの先端から前方へ突設された板状の部材で形成される。
【0025】
スライダー案内部30は、筒状の側壁に形成されたレンズ進行軸Aに平行な一対のスリットで構成されている。このスライダー案内部30は、挿入器具本体14Aの前方となる一端から略中央まで形成されている。係合突起32は、挿入器具本体14Aの側壁の外面を谷とする雄ねじを構成するねじ山の一部で構成され、レンズ進行軸Aに直行する方向の側壁の外面に設けられている。スライダー6は、把持部7を操作することにより、スライダー案内部30に沿って前後方向へ移動することができる。
【0026】
レンズ設置部28は、図5に示すように、レンズ進行軸Aを中心として水平に形成された設置部底面34と、レンズ進行軸Aを挟んで前記設置部底面34の両側にレンズ進行軸Aと平行に形成された枠体36および設置された眼内レンズが前傾姿勢となるように形成されたレール38とを備える。また、本図に示すように、スライダー6の先端6Aは、後述するロッドより大きいレンズ当接面を有する。なお、眼内レンズ40は、光学部42と、一対の支持部44,46とからなる。
【0027】
枠体36は、レンズ進行軸Aを挟んで設置部底面34の両側を囲むように壁状に立設されている。前記枠体36の内面は、上端へ行くにしたがって外側へ傾斜する傾斜面36Aを有する。また、枠体36の後方には、眼内レンズ40が後方へ移動することを制限する後方制限部48が設けられている。当該後方制限部48は、枠体36の後方を内側に膨出形成して構成されている。レール38は、設置部底面34より上方へ突出して形成されており、光学部42を設置部底面34に接触させずに眼内レンズ40を設置し得る高さに形成されている。尚、本明細書においては、レンズ設置部28に設置された眼内レンズ40に対し設置部底面34側を「下」又は「下方」といい、レンズ設置部28に設置された眼内レンズ40に対し設置部底面34側と逆側を「上」又は「上方」という。
【0028】
図6に示すように、挿入筒部16の保護部22には、レンズ設置部28の枠体36の上端をガイドする傾斜突部50が形成されている。当該傾斜突部50は、保護部22の両側面からそれぞれ枠体36の傾斜面に沿って内側下方へ突出しており、先端がレンズ設置部28の枠体36の傾斜面36Aより下方となる大きさに形成されている。これにより、レンズ設置部28に設置された眼内レンズ40の外縁が、傾斜突部50と枠体36との間に入り込むことを防止する。
【0029】
第2の押出機構8Aは、図7に示すように、ロッド52、プランジャー53、操作部としてのスクリュー体54とが一体的に設けられている。ロッド52は、ノズル18内に挿通し得る大きさに形成され、基端においてプランジャー53先端に連結されている。ロッド52と、プランジャー53は、挿入器具本体14A内で前方及び後方へ移動可能に設けられている。
【0030】
プランジャー53は、基端がスクリュー体54の基端に軸支されている。スクリュー体54は有底筒状の部材で構成される。スクリュー体54は、挿入器具本体14Aに後方側から外挿し得る大きさに形成され、内面に挿入器具本体14Aの外面に設けられた係合突起32に螺合する雌ねじ(図示しない)が形成されている。
【0031】
ロッド52の先端は、図8に示すように、レンズ接触部56と、レンズ設置部28に設置された眼内レンズ40の後方に配置された支持部46を収容する収容凹部58とを有する。レンズ接触部56は、レンズ進行軸Aに垂直な平面であり、ロッド52の先端の下側部分に配置される。収容凹部58は、レンズ接触部56の上側に配置され、ロッド52の先端から一側面までを切欠いた形状を有する。また、収容凹部58が形成されていないロッド52の他側面の先端部分には、上下方向に延びる軸状の規制部60が形成される。当該規制部60をレンズ接触部56と同一平面上に設けることで、眼内レンズ40の外縁部が収用凹部58に進入することを防止し、支持部46が収用凹部58から飛び出すことを防いでいる。実施例では規制部60とレンズ接触部56を同一平面上に設けたが、これに限定されるものではなく、規制部60の位置はレンズ接触部56より前方であれば良い。
【0032】
眼内レンズ挿入器具2Aは、まずスライダー6で眼内レンズ40を押し出して初期段階まで移動させる。これにより、眼内レンズ40は、所定形状に折り畳まれる。次いで、前記眼内レンズ40を第2の押出機構8Aで押し出して移行部20を通過させ、ノズル18から放出する。これにより、眼内レンズ40は、より小さく折り畳まれ、眼内へ挿入される。このように眼内レンズ挿入器具2Aは、挿入器具本体14A内に設置された眼内レンズ40を、スライダー6、第2の押出機構8Aの順で2段階に分けて前方へ移動させながら変形させ、所定形状に小さく折り畳んだ状態で放出するように構成されている。
【0033】
なお、本実施形態の場合、眼内レンズ40が折り畳まれた状態の所定形状とは、光学部42が上面を谷としてレンズ進行軸Aを中心に丸められ、支持部44,46の先端が丸められた前記光学部42の上面に挟み込まれた形状をいう。
【0034】
(2)ケース
ケース3は、図9に示すように、上面が開口した長尺状の箱体で構成される。このケース3は、ケース前部62と、ケース後部64とを一体化して構成され、眼内レンズ挿入器具2Aを保護すると共に、ロック機構4としての係合凹部66を備える。
【0035】
ケース3の一対の側壁には、取出し凹部68がそれぞれ設けられている。取出し凹部68は、側壁の上端から下方へ切り欠いて形成される。取出し凹部68の下端面には、係合部70が設けられている。当該係合部70には、前記カバー部10が着脱自在に係合する。また、取出し凹部68の後方端面には、前記係合凹部66が連設されている。係合凹部66には、前記スライダー6の把持部7が係合する。また、ケース3の後端には、滅菌バッグから眼内レンズ挿入装置1を取り出す際に把持する取手72が設けられている。ケース3の側壁表面には、係合部70の近傍に操作順序を示す目印12Cとして「3」が、把持部7の操作方向を示す矢印と共に表示されている。
【0036】
ケース前部62には、図10に示すように、突起部74が設けられている。当該突起部74は、レンズ進行軸A方向を長円とする楕円形状を有し、後方側の表面が上方へ行くにしたがって前方へ傾斜している。挿入筒部16の下面には、前記突起部74が貫通する第2挿入孔75が形成されている。
【0037】
カバー部10は、図11に示すように、板状のカバー本体76と、当該カバー本体76の両側の外縁から下方に向かって立設された挟持部78とを有する。カバー本体76の下面には前方支持突起80が突設されている。また、挿入筒部16の注入口24に対応する位置に注入口用開口82が設けられている。挟持部78は、カバー本体76に接続された基端を回転中心として弾性的に揺動可能に設けられている。カバー本体76の表面には、注入用開口82の近傍に、操作順序を示す目印12Aとして「1」が表示されている。また、カバー本体76の表面には、挟持部78の近傍に、操作順序を示す目印12Bとして「2」が、挟持部78の操作方向を示す矢印と共に表示されている。
【0038】
このように構成されたカバー部10は、挟持部78の先端を取出し凹部68に挿入し、係合部70を外側から挟み込むようにして、ケース3に一体的に取り付けられる(図10)。このとき、挟持部78は、スライダー6の把持部7の前方に配置される。これにより、スライダー6はケース3に固定される。同時に、カバー部10に設けられた前方支持突起80は、挿入筒部16の第1挿入孔26に挿入され、レンズ設置部28に設置された眼内レンズ40の前方に配置された支持部44と光学部42の間に配置される。
【0039】
(3)組立方法
以下、眼内レンズ挿入装置1の組立方法について説明する。まず、挿入器具本体14Aにスライダー6とプランジャー8とを装着する。このときスライダー6は前方に移動させておく。次いで、ケース後部64に前記挿入器具本体14Aを取り付け、スライダー6を後方に移動させる。この状態でレンズ設置部28に眼内レンズ40を設置する。眼内レンズ40は、光学部42の外縁をレール38に載置し、一対の支持部44,46を前後方向に配置した状態で設置される。ここで、眼内レンズ40は、枠体36に設けられた後方制限部48によって位置決めされる。(図5)。
【0040】
次いで、挿入筒部16を挿入器具本体14Aの先端に取り付ける。これにより、レンズ設置部28は保護部22で覆われる。さらに、カバー部10を取出し凹部68に挿入し、挟持部78で係合部70を挟むようにしてケース3に固定する。ここで、カバー部10の前方支持突起80が眼内レンズ40の前方に配置された支持部44と光学部42の間に配置される。これにより、眼内レンズ40は、付加のかからない状態で、後方制限部48と前方支持突起80との間に保持される(図10)。そして、ケース前部62の基端をケース後部64の先端に下方から装着して一体化する。以上のように組み立てることにより、眼内レンズ挿入装置1を得ることができる(図1)。
【0041】
2.作用および効果
以下、本実施形態に係る眼内レンズ挿入装置1の作用および効果について説明する。眼内レンズ挿入装置1は、図示しない滅菌バッグに収容された状態でユーザの手元へ供給される。本実施形態の場合、ユーザである介助者が無菌的に滅菌バッグを開封し、取手72を持ちながら眼内レンズ挿入装置1を取出す(図1)。
【0042】
次いで、注入口24から挿入筒部16内に粘弾性物質を注入し、当該粘弾性物質を眼内レンズ40の光学部42に十分行き渡らせる。次いで、カバー部10の挟持部78の基端を目印12Bの矢印方向につまむことにより、挟持部78の先端を広げ、係合部70との係合を解除して、カバー部10をケース3から取り外す(図12)。カバー部10を取り外すことにより、スライダー6は前方へ移動可能となる。また、カバー部10を取り外すことにより、前方支持突起80が取り除かれるので、眼内レンズ40が移動可能となる。
【0043】
次いで、スライダー6を取出し凹部68の前端に当接するまで前方へ移動する。これにより、眼内レンズ40は、レンズ設置部28から初期段階、すなわち移行部20まで移動する。移動に伴い、眼内レンズ40は、図14に示すように、前方に配置された支持部44が突起部74に当接することにより、前記支持部44の先端が光学部42の上面側へ曲がる。また、後方に配置された支持部46は、スライダー6の当接面によってすくい上げられ光学部42の上面に曲げられる。このように、眼内レンズ40は、レンズ設置部28から初期段階まで移動することにより、支持部44,46が光学部の上面側に折り曲げられた状態に変形する。このとき光学部42の前方側の外縁も上方に折り曲げられた状態となっている。
【0044】
ここで、突起部74の先端は、後方側の表面が上方へ行くにしたがって前方へ傾斜していることにより、支持部44をすくい上げるようにして曲げることができるので、支持部44をより確実に光学部42の上面側へ配置させることができる。
【0045】
スライダー6が取出し凹部68の前端に当接するまで移動することにより、当該スライダー6は、係合凹部66との係合が解除される。すなわち、ロック機構4が解除され、眼内レンズ挿入器具2Aは、ケース3から取り出し可能となる。
【0046】
次いで、眼内レンズ挿入器具2Aをケース3から取り出して、介助者は術者に当該眼内レンズ挿入器具2Aを手渡す。眼内レンズ挿入器具2Aをケース3から取り出すことにより、突起部74が眼内レンズ40の移動経路から取り除かれる。
【0047】
術者は、スクリュー体54を前方へ押出し、スクリュー体54を挿入器具本体14Aの係合突起32に螺合させる(図15)。最後にスクリュー体54を回動させてプランジャー53およびロッド52を前方へ押出ことにより、眼内レンズ40を小さく折り畳んだ状態でノズル18の先端から放出する(図16)。ここで、眼内レンズ40は、所定形状、すなわち支持部44,46が光学部42の上面側に折り曲げられた状態に変形しているので、プランジャー53およびロッド52で押出されることにより、より確実に光学部42で支持部44,46を挟んだ形状に小さく折り畳むことができる。
【0048】
上記したように、眼内レンズ挿入器具2Aは、スライダー6を前方へ移動するまでは、眼内レンズ挿入器具2Aがロック機構4によりケース3に保持されており、スライダー6を前方へ移動させることにより前記ロック機構4が解除される。すなわち、スライダー6を前方へ移動させることにより、はじめて眼内レンズ挿入器具2Aをケース3から取り出すことができる。したがって、ケース3から取り出された眼内レンズ挿入器具2Aは、確実にスライダー6が前方へ移動した状態である。そうすると、眼内レンズ挿入器具2Aを手渡された術者は、直ちにスクリュー体54を操作して、眼内レンズ40を放出することができる。このように、本実施形態に係る眼内レンズ挿入装置1は、眼内レンズ40を初期段階まで移動させた状態ではじめて眼内レンズ挿入器具2Aをケース3から取り出すことができるので、誤操作を防止することができる。
【0049】
本実施形態に係る眼内レンズ挿入装置1は、突起部74をケース3に設けたことにより、眼内レンズ40の前方に配置された支持部44をより確実に所定形状に折り曲げることができると共に、眼内レンズ挿入器具2Aをケース3から取り出すことにより、前記突起部74を眼内レンズ40の移動経路から取り除くことができる。
【0050】
本実施形態に係る眼内レンズ挿入装置1は、操作順序を示す目印12A,12B,12Cが、注入口24近傍、カバー部10の挟持部78近傍、スライダー6の把持部7近傍にそれぞれ設けられ、さらにカバー部10の挟持部78近傍、スライダー6の把持部7近傍には上記目印に加え、操作方向を示す矢印が併記されていることにより、動作順序、方法が明確であるから、誤操作をより確実に防止することができる。
【0051】
3.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することができる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、第2の押出機構8Aがプランジャー53に操作部としてのスクリュー体54を軸支して、当該スクリュー体54を挿入器具本体14Aに螺合させて眼内レンズ40を放出する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。図17に示すように、変形例に係る眼内レンズ挿入器具2Bにおける第2の押出機構8Bは、プランジャー53の基端に操作部としての円盤状の押出体84が設けられており、当該押出体84を前方へ移動させることにより、眼内レンズ40を直接的に移動させる。この場合、挿入器具本体14Bの外面には、指をかけるフランジ86が設けられている。このように構成されることにより、本変形例に係る眼内レンズ挿入器具2Bは、初期段階まで移動された眼内レンズ40を、注射器を扱うようにしてノズル18から放出することができる。なお、本変形例に係る眼内レンズ挿入器具2Bは、上記実施形態と同様のケース3に収容し、かつ、上記実施形態と同様のカバー部10により保持され得る。したがって、本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、第2の押出機構は、プランジャー53とロッド52が別体として構成されている場合について説明したが、本発明はこれに限られず、プランジャー53とロッド52を一体に形成してもよい。
【0054】
上記実施形態では、介助者が滅菌バッグから眼内レンズ挿入装置1を取出し、スライダー6により眼内レンズ40を初期段階まで移動させた状態でケース3から眼内レンズ挿入器具2Aを取り出し、当該眼内レンズ挿入器具2Aを術者に手渡す場合について説明したが、本発明はこれに限らず、一連の動作を術者自ら行うこととしてもよい。術者がすべての動作を自ら行う場合でも、上記実施形態と同様に誤操作を防止することができる。
【0055】
上記実施形態では、眼内レンズ40が折り畳まれた状態の所定形状とは、光学部42が上面を谷としてレンズ進行軸Aを中心に丸められ、支持部44,46の先端が丸められた前記光学部42の上面に挟み込まれた形状である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば光学部が上面を谷としてレンズ進行軸Aを中心に二つ折りにされ、支持部の先端が二つ折りにされた光学部の上面に挟み込まれた形状としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 眼内レンズ挿入装置
2 眼内レンズ挿入器具
3 ケース
4 ロック機構
6 スライダー(第1の押出機構)
8A,8B 第2の押出機構
10 カバー部
12A,12B,12C 目印
28 レンズ設置部
40 眼内レンズ
42 光学部
44,46 支持部
52 ロッド
53 プランジャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ設置部に予め設置された眼内レンズを初期段階まで移動させる第1の押出機構と、
前記初期段階まで移動された前記眼内レンズを放出する第2の押出機構と
を有するプリロードタイプの眼内レンズ挿入器具と、
前記眼内レンズ挿入器具を収容するケースと
を備える眼内レンズ挿入装置において、
前記眼内レンズ挿入器具を前記ケースから取り出し可能に保持するロック機構を有し、
前記ロック機構は、前記第1の押出機構により前記眼内レンズを初期段階まで移動させることにより解除され、前記眼内レンズ挿入器具を前記ケースから取り出し可能とする
ことを特徴とする眼内レンズ挿入装置。
【請求項2】
前記眼内レンズは、光学部と一対の支持部とを有し、付加のかからない状態で前記レンズ設置部に設置されており、
前記第1の押出機構は、前記支持部が前記光学部内に折り曲げられた状態に変形する位置まで、前記レンズ設置部に設置された前記眼内レンズを移動させる
ことを特徴とする請求項1の眼内レンズ挿入装置。
【請求項3】
前記第2の押出機構が、前記眼内レンズに当接するロッドが設けられたプランジャーを有し、
前記第1の押出機構が、前記ロッドよりも大きいレンズ当接面を有するスライダーである
ことを特徴とする請求項1または2記載の眼内レンズ挿入装置。
【請求項4】
前記第1の押出機構の移動を制限するカバー部が着脱自在に前記ケースに設けられており、
前記レンズ設置部に粘弾性物質を注入してから、前記カバー部を外して、前記第1の押出機構を移動させるまでの操作順序を示す目印が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−255029(P2011−255029A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132952(P2010−132952)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】