説明

眼内レンズ

【課題】 インジェクターを用いて眼内レンズを小さく折り畳むことができ、眼内で安定して保持できる眼内レンズを提供する。
【解決手段】 折り曲げ可能な眼内レンズの支持部は、眼内レンズの折り曲げ時に支持部全体を内側に向けて撓ませる際の基点となる括れ部を有する基端部と、人眼の水晶体嚢に沿う湾曲形状を有し眼内レンズの折り曲げ時に光学部上に載せられる先端部と、基端部と先端部とを繋げる移行部を備える。また、移行部は基端部に繋げられる部分の幅に対して先端部に繋げられる部分の幅が狭く形成されると共に、基端部から先端部に向けて厚さが薄く形成され、移行部によって先端部の厚さは基端部の厚さよりも薄く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者眼の眼内に設置される眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術で水晶体を摘出した後の眼内(嚢内)に、眼内レンズを挿入する手法が一般的に知られている。眼内レンズは、所定の屈折力を有し水晶体の代替となる光学部と、光学部を眼内で支える一対の支持部から構成される。例えば、光学部と支持部とが一体的に形成された折り曲げ可能な1ピース型の眼内レンズが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような、眼内レンズは眼内レンズ挿入器具(以下、インジェクターと記す)によって小さく折り曲げられた状態で眼内に挿入される。特に、1ピース型の眼内レンズでは、インジェクター内で折り曲げられる際に生じ易い支持部のねじれを抑え、眼内での解放動作を安定させるために、インジェクターでの押し出し時に後ろ側の支持部の一部を光学部上に載せながら折り畳むこともある。
【0004】
また、眼球に形成する切開創をできるだけ小さくして患者の負担を減らすためには、インジェクターの先端形状が小さいことが好ましい。その為、眼内レンズはインジェクター内で出来るだけ小さく折り曲げられることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−507286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、1ピース型の眼内レンズの光学部に支持部の一部が載せられた状態で折り畳まれると、眼内レンズの押出軸方向に垂直な断面積の最大値が大きくなってしまい、インジェクターの先端形状を小さくする際に不利になってしまう。これを避けるために、光学部の中央領域を避けた周縁部(コバ)のみに支持部を載せるために支持部の長さを短くするような構成も考えられるが、支持部の長さが短い場合眼内レンズを眼内に設置したときに支持部によって光学部を安定して保持することが困難になるおそれが有る。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みインジェクターを用いて眼内レンズを小さく折り畳むことができるとともに、眼内で安定して保持することのできる眼内レンズを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
(1) 光学部と該光学部に一体的に形成された支持部とを有する折り曲げ可能な眼内レンズにおいて、前記支持部は、前記光学部に接続され,前記眼内レンズの折り曲げ時に前記支持部全体を内側に向けて撓ませる際の基点となる括れ部を有する基端部と、人眼の水晶体嚢に沿う所定の湾曲形状を有し前記眼内レンズの折り曲げ時に前記光学部上に載せられる先端部と、前記基端部と前記先端部とを繋げるための移行部であって,前記基端部に繋がる部分の幅に対して前記先端部に繋がる部分の幅が狭くされるとともに前記基端部から先端部に向けて厚さが薄くなるように形成された移行部と、を備え、該移行部によって前記先端部の厚さは前記基端部の厚さよりも薄くなるように形成されることを特徴とする。
(2) (1)の眼内レンズにおいて、前記光学部の中心を基準中心として人眼における標準的な水晶体嚢の外周径を設定した場合、前記移行部は前記水晶体嚢の外周上に位置するとともに前記先端部の最先端は前記水晶体嚢の外周の外側に位置するように形成されていることを特徴とする。
(3) (2)の眼内レンズにおいて、前記支持部は、前記括れ部を介して前記支持部全体が前記光学部上へと折り曲げられたときに前記先端部が前記光学部の中心部まで達するように前記先端部から前記移行部までの長さを有していることを特徴とする。
(4) (3)の眼内レンズにおいて、前記先端部の厚さは0.10mm以上0.35mm以下であることを特徴とする。
(5) (2)乃至(4)の眼内レンズにおいて、前記標準的な水晶体嚢の外周径は9mmであることを特徴とする。
(6) (2)乃至(5)の眼内レンズにおいて、前記移行部は、前記眼内レンズを水晶体嚢に載置した際に前記水晶体嚢からの圧縮による応力が加えられることで、前記先端部を嚢に沿わせる反発力を奏する断面積を有することを特徴とする。
(7) (6)の眼内レンズにおいて、前記基端部に形成される前記括れ部は、前記眼内レンズの折り曲げ時に前記先端部に加えられる応力に基づいて前記先端部及び前記移行部を一体として撓ませるのに必要な厚さ及び幅を有しており、前記移行部は前記先端部に加えられる応力に基づいて先端部が前記水晶体嚢の外周径に相当する位置までの撓みを許容するとともに,前記先端部にかかる応力に基づいて前記水晶体嚢の外周径に相当する位置から内側の位置に前記先端部が位置するときは前記括れ部による前記先端部及び前記移行部の一体的な撓みとなる幅、及び厚みにて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によればインジェクターを用いて眼内レンズを小さく折り畳むことができるとともに、眼内で安定して保持することのできる眼内レンズを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は1ピース型の眼内レンズ100の構成図であり、図1(a)に正面図、図1(b)に側面図が示されている。眼内レンズ100は、所定の屈折力を有する光学部110と、光学部110に接続されるループ形状の一対の支持部120とから構成される。
【0012】
1ピース型の眼内レンズ100は、後述する眼内レンズ挿入器具(以下、インジェクターと記す)を用いた折り曲げ可能な柔軟性と、折り畳まれた状態から元の状態に戻る復元性と、支持部120によって光学部110を眼内で保持できる反発力と、を有するように周知の軟性眼内レンズ材料で形成される。例えば、眼内レンズ材料としては、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)等の単体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの複合材料等が用いられる。これらの材料を用いてモールディング加工、切削加工等を行うことで、光学部110と支持部120とが一体形成される。
【0013】
光学部110は、術眼に所定の屈折力を与える円盤形状の部材であり、眼内で角膜側に位置される前面111と、眼内で網膜側に位置される後面112と、前面111と後面112とを接続すると共に所定の幅(厚さ)を有する外周部(以下、コバと記す)115から構成される。前面111と後面112は所定の曲率の曲面に形成される。外周部115の少なくとも後面112との接続位置には、眼内レンズ100の眼内への取り付け時に、後嚢に接触する(食い込む)形状(角度)のエッジ(図番号を省略する)が形成されている。外周部115のエッジが後嚢に密着されることで角膜上皮細胞の増殖が抑制され、後発白内障による白濁が発生し難くなる。
【0014】
一対の支持部120は、光学部110の中心(光軸L)を基準としてコバ115上の点対称の位置に形成されており、一端が光学部110(コバ115)に接続され、他端(先端P)が開放端とされる。そして、支持部120は、光学部110との接続位置付近で光軸L周りに所定角度だけ折り曲げられた状態で、先端に向けて内側(光学部110側)に湾曲しながら所定の長さ延びる放射状に形成されている。このような形状により、支持部120の外側が水晶体嚢(以下、嚢と記す)に沿って(接触して)位置するようになる。また、眼内レンズ100が眼内で開放されるときの支持部120の回転が抑えられる。
【0015】
本実施形態の支持部120は、光学部110に接続される基端部122と、眼内レンズ100の折り曲げ時に少なくともその一部が光学部110上に載せられる先端部123と、基端部122と先端部123とを繋ぐ移行部125から構成される。このような支持部120の構成の詳細な説明は後述する。
【0016】
眼内レンズ100の最外形(最大全長)は、嚢内に眼内レンズ100を設置した際に、支持部120に加えられる応力で光学部110が保持されるように、人眼の嚢の直径よりも大きく、好ましくは9mm以上15mm以下とされる。一方、光学部110の直径は、術眼の瞳孔の大きさに基づいて決定され、例えば、4mm以上8mm以下とされる。例えば、術眼の嚢の径が直径10mmの場合、眼内レンズ100の最外径はこれよりも長い径(例えば11mm〜15mm程度)に決定されれば良い。
【0017】
支持部120は上述の眼内レンズ100の全長と光学部110の直径の条件が満たされるように、嚢に沿う湾曲形状とされる。例えば、支持部120の長さは、光学部110のコバとの接続位置付近の基端部122の幅waの中間点w1と光学部110の中心(光軸L)とを結ぶ線分と、支持部120の先端Pと光学部110の中心(光軸L)とを結ぶ線分とのなす角度θが50°以上90°以下に形成される。角度θが50°未満であると、嚢と支持部120(先端部123)との接触領域が確保されにくくなり、眼内レンズ110が眼内で安定して支持され難くなる。一方、角度θが90°よりも大きいと、インジェクター10での折り曲げ時に支持部120が後述するプランジャーに絡み易くなるおそれがある。
【0018】
光学部110に接続される基端部122は、インジェクター10を用いた眼内レンズ100の折り曲げ時に支持部120に加えられる応力では折り曲げられない強度を有し、眼内レンズ100の眼内への取り付け時に、嚢から加えられる応力で生じる反発力によって光学部110を保持することができる断面積(幅及び厚さ)に形成される。例えば、基端部122の幅wc及び厚さd2は、好ましくは0.6mm以上1.5mm以下で形成される。より好ましくは0.7mm以上1.1mm以下に形成される。また、基端部122と光学部110の接続位置であって、眼内で嚢に接触されない側には、基端部122の幅(断面積)の一部を細く(小さく)するように内側(内周)の一部を湾曲させることで、括れ部124が形成されている。括れ部124は眼内レンズ100の折り曲げ時に、先端部123に加えられる応力に基づいて支持部120(先端部123及び移行部125)を一体的に撓ませるために必要な厚さ及び幅を有している。
【0019】
移行部125は、断面積の異なる基端部122と先端部123とを繋げる役割を有する。つまり移行部125は、基端部122に繋げられる部分の幅に対して先端部123に繋げられる部分の幅が狭く形成されていると共に、移行部125の厚さが基端部122(厚さd2)から先端部123(厚さd1)に向けて薄くなるように形成されている。つまり、移行部125の断面積の最大値は基端部122から先端部123へと徐々に小さく形成されており、移行部125によって基端部122と先端部133とが滑らかに接続されている。
【0020】
具体的には、移行部125の断面積(幅、厚さ)は、眼内レンズ100の折り曲げ時に先端部123に加えられる力によって、開放状態で水晶体嚢の外側に位置する長さを有する先端部123が、水晶体嚢の外周径(円R)に相当する位置まで撓むことを許容すると共に、更に先端部123に力が加えられることで、先端部123が水晶体嚢の外周径に相当する位置(円Rの位置)の内側に位置されるときに、括れ部124によって支持部120全体(先端部123、移行部125)が一体的に撓むような幅、厚さに形成される。
【0021】
以上のような構成にすることで、先端部123に加えられた応力によって支持部120は根元の括れ部124を基点として撓むことで、支持部120全体が根元の括れ部124を介して内側(光学部110側)へと折り曲げられるようになり、折り曲げられた眼内レンズの全長がより小さく(コンパクトに)され易くなる。
【0022】
また、移行部125は眼内レンズ100を眼内に取り付けたときに、嚢から加えられる応力(圧縮力)で、先端部123を嚢に沿わせるために必要な反発力を生じさせる断面積(強度)に形成されている。これにより、先端部123の断面積が反発力を生じないほどに細く形成されていたとしても、移行部125で生じる反発力に伴って先端部123が嚢に沿って好適に位置されるようになる。
【0023】
なお、移行部125は、光学部110の光軸Lを基準中心として人眼における標準的な嚢の外周径(図1の円R)を設定したときに、少なくとも移行部125が嚢の外周上(円R上)に位置されるようにしている。例えば、人眼の嚢の直径を9mmとしたときに、括れ部125は、光学部110の光軸Lを中心とした直径9mmの円R上よりも外側に位置するように形成されている。また、上述したように先端部123の先端Pは嚢の外周(円R)の外側に位置するように形成される。
【0024】
眼内レンズ100の開放状態で移行部125が嚢の直径よりも外側に位置されることで、眼内レンズ100の眼内への取り付け時に、嚢から応力が加えられた移行部125が嚢の内側に向けて圧縮されるようになり、これにより生じる反発力によって先端部123と共に嚢に沿って位置されるようになる。
【0025】
先端部123は嚢に沿って接触されることで光学部110の位置を安定させる役割を有する。また、本実施形態の先端部123は、眼内レンズ100が眼内に取り付けられた状態で、支持部120(移行部123)に生じる反発力によって嚢に沿って位置される程度に細く形成される。例えば、本実施形態の先端部123の幅wb(及び厚さd1)の最大値は0.05mm以上0.45mm以下であるとする。より好ましくは、0.1mm以上0.35mm以下であるとする。先端部123の幅wb(及び厚さd1)の最大値が0.1mmよりも小さいと、眼内レンズ100の折り曲げ時に支持部120が破損する可能性が高くなる。一方、幅及び厚さの最大値が0.35mmよりも大きいと、先端部123に生じる反発力によって支持部120全体が嚢に沿って好適に位置され難くなる可能性が高くなる。なお、このような先端部123の幅及び厚さ(断面積)は、上記の条件を満たすことができるように、眼内レンズ材料の種類に応じて適宜選択されれば良い。
【0026】
また、先端部123の幅(断面積)が細く形成されることで、インジェクターで眼内レンズ100を折り曲げる際に、タッキングによって光学部上(中央部を含む領域)に支持部が載せられたときに、押出軸に垂直な方向から見たときの眼内レンズの断面積の最大値の増加量が抑えられる。その為、本実施形態では先端部123を光学部110の中心(光軸L)付近に乗せたときの断面積の増加量が抑えられる。つまり、括れ部124を介して支持部120全体が光学部110上へと折り曲げられたときに、先端部123が光学部110の中心(光軸L)まで達するように、先端部123から移行部125までの長さを長く形成できる。そして、先端部123が長く形成されることで、眼内レンズ100が嚢に取り付けられたときに、支持部120を構成する先端部123の広い領域が嚢に接触されるようになり、眼内レンズ100が嚢内でより安定して位置されるようになる。
【0027】
また、先端部123が細く形成されることで、眼内レンズ100が嚢内で開放される際に、光学部110上から支持部120が離れ易くなる。折り曲げ可能な眼内レンズ100は所定の粘性を有する為、光学部110上に支持部120が載せられた状態で折り曲げられると、眼内で眼内レンズ100が開放されるときに、支持部120が光学部110に接着されて離れない場合がある。そこで、本実施形態のように支持部120の先端部123を細くして、光学部110との接触面積をできるだけ少なくすることで、眼内レンズ100の復元力によって、光学部110上から支持部120が容易に離れるようになる。また、先端部123の先端Pから所定範囲(例えば、光学部110に接触される範囲)に微細な凹凸(粗面)を設けて、先端部123が光学部110からより離れ易くしても良い。
【0028】
以上のような構成の眼内レンズ100が用いられることで、インジェクター1を用いた眼内レンズ100の折り曲げ時に、支持部120に加えられた応力が括れ部124に集中されるようになり、括れ部124を基点として支持部120全体が光学部110上へと折り曲げられ(撓み)る。そして、折り曲げられた状態の眼内レンズ100の全長を小さく(コンパクトに)できる。また、眼内レンズ100の押出時に光学部110から離れた位置にある支持部120を押し込む操作などが不要となり、より簡単に眼内レンズ100を眼内に押し込むことができるようになる。また、光学部110の載せられる先端部123の断面積が細いため、先端部123が光学部110の中心部に載せられたとしても、先端11の径を大きくすることなく、出来るだけ小さい切開創から眼内レンズ100を押し出せるようになる。
【0029】
また、眼内へと押出された眼内レンズ100が嚢内で開放されると、嚢から加えられる応力で支持部120に加えられる応力で反発力が生じて、眼内レンズ100全体が保持されるようになる。また、嚢によって支持部120(移行部125)が圧縮されることで、先端部123が嚢に沿うために必要となる反発力が生じ、先端部123(支持部120全体)の外周領域が嚢に沿って好適に接触されるようになる。特に、本実施形態では先端部123が長く形成できるので、嚢内での支持部120の接触面積がより広くなり、眼内レンズ100が嚢内でより安定して位置されるようになる。
【0030】
次に、インジェクターの構成を説明する。図2はインジェクター1の外観概略図である。図3はプランジャー40の構成の説明図である。インジェクター1は、筒部本体(以下、本体と記す)30、押出部材(以下、プランジャーと記す)40、蓋部60から構成されており、本体30は挿入部10と載置部20を備える。このようなインジェクター1は樹脂材料等を用いたモールド成型や、樹脂の削り出しによる切削加工で形成される。
【0031】
本体30の挿入部10は、その先端に向かい通路の内径が徐々に小さく(細く)なる領域(内壁形状)を有する中空の筒形状をしており、先端11には眼内レンズ100を外部に送出するための切欠き(ベベル)が形成されている。挿入部10を通過した眼内レンズ100は、挿入部10の内壁に沿って小さく折り畳まれ先端11から外部に送出される。本体30の載置部20は挿入部10の基端に形成され、眼内レンズ100が位置する空間(隙間)を形成する。また、使用状態で眼内レンズ100が置かれる載置面が位置される。
【0032】
プランジャー40は、眼内レンズ100を挿入部10内で押して小さく折り畳み、先端から眼内へと押出す部材である。プランジャー40は術者に押圧される押圧部41と、押圧部41に接続される軸基部42と、軸基部42に接続される押出棒43と、押出棒43の先端に接続され,眼内レンズ100の押出時に光学部110に当接される先端44と、から構成される。
【0033】
また、先端44の裏面側には軸方向に伸び所定の傾斜を有する斜面(図示を省略する)が形成されている。プランジャー40の押込み時に、斜面によって先端44が一旦持ち上げられることで、後方側の支持部120(先端部123)の一部を光学部110上に載せるタッキングの操作が好適に行われる。以上のような構成により、プランジャー40は、本体30から挿入部20の先端まで繋がる通路を軸方向に進退可能に挿通される。
【0034】
次に、以上のような構成のインジェクター10を用いて眼内レンズ100を眼内に取り付ける際の動作を説明する。図4はインジェクター10内での眼内レンズ100の押出動作の説明図である。
【0035】
まず術者は、載置部20の押出軸上(載置面上)に眼内レンズ100を載せて蓋部60を閉じた状態から、図示を略す開口又は先端11から周知の粘弾性物質を挿入部10内に注入する。眼内レンズの設置が完了し、術者によって押込部41が押されると、プランジャー40の先端44が先端11に向けて移動される。そして、図4(a)に示すように、先端44によって後側の支持部120の一部が押されるようになる。
【0036】
なお、ここではプランジャー40によって最初に先端部123が押されるとする。このとき、本実施形態では基端部122から先端部123に向けて断面積(幅,厚さ)が薄く形成された移行部125によって、断面積(幅、厚さ)の異なる先端部123と基端部122とが滑らかに接続されている。その為、プランジャー40によって加えられた応力は先端部123と移行部125、移行部125と基端部122との切り換え位置には集中されず、根元に形成された括れ部124に集中される。これにより、図4(b)に示すように、支持部120全体が括れ部124を介して折り曲げられるようになり、根元から折り曲げられた支持部120の先端部123が光学部110上に載せられるタッキングが行われるようになる。なお、前側の支持部120も同様に、インジェクター1の内壁から加えられる応力によって支持部120全体が折り曲げられて、光学部110上に載せられるようになる。
【0037】
なお、本実施形態では先端部123が光学部110の中心部(軸L上)まで達する位置まで載せられるが、先端部123の断面積は嚢に沿うことが可能な程度に細く形成されており、先端部123が光学部110の中央部に載せられたとしても、押出軸に垂直方向から見たときの眼内レンズ100の断面積の増加量が抑えられている。
【0038】
先端44がコバ115に当接された状態から更に押込部41が押されると、図4(c)に示すように、光学部110に加えられる押圧によって、光学部110と支持部120が一体で挿入部10の内壁に沿って次第に折り曲げられるようになる。この時、支持部120全体が折り曲げられて光学部110上に載せられた状態となるので、眼内レンズ100の全長が短くなり、光学部110を押し込むだけで眼内レンズが好適に眼内へと押し出されるようになる。
【0039】
更に押込部41が押されることで、折り曲げられた眼内レンズ100が先端11から眼内へと送出される。そして、復元力で嚢内で次第に開放されるようになる。このとき、支持部120の先端部123が細く形成され、光学部110との接触面積が小さくされているので、支持部120の先端123が光学部110から容易に離れる。これにより、支持部120が光学部110に貼り付くことで生じる術者の操作、それに伴う患者の負担が低減される。
【0040】
そして、嚢内で眼内レンズ100が次第に開放されると、嚢から加えられる応力によって支持部120が撓むことで生じる反発力で、基端部122によって眼内レンズ100全体が保持される。また、先端部123の全体が嚢に沿って(接触して)好適に位置されるようになり、眼内レンズ100の取り付け位置が安定して保持される。
【0041】
なお、本発明の構成は上記に限られるものではない。例えば、先端部123の断面積を開放端Pに近づくにつれて徐々に小さく形成しても良い。また、光学部110に載せられる先端部123(開放端P付近の所定範囲)の断面積を特に小さく形成しても良い。このようにすると、インジェクター1内での眼内レンズ100のタッキングが行われる際に、眼内レンズ100の断面積の増加をより抑えることができる。
【0042】
また、基端部122、先端部123、移行部125を区分けせずに、基端部122から先端部123へと向けて徐々に断面積が減少されるように支持部120が形成されても良い。この場合にも、上述の要件を満たすように、支持部120の形状(各部位での断面積)が決定されれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】1ピース型の眼内レンズの構成図である。
【図2】インジェクターの外観概略図である。
【図3】プランジャーの構成の説明図である。
【図4】インジェクター内での眼内レンズの押出動作の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
100 眼内レンズ
110 光学部
120 支持部
122 基端部
123 先端部
124 括れ部
125 移行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部と該光学部に一体的に形成された支持部とを有する折り曲げ可能な眼内レンズにおいて、
前記支持部は、
前記光学部に接続され,前記眼内レンズの折り曲げ時に前記支持部全体を内側に向けて撓ませる際の基点となる括れ部を有する基端部と、
人眼の水晶体嚢に沿う所定の湾曲形状を有し前記眼内レンズの折り曲げ時に前記光学部上に載せられる先端部と、
前記基端部と前記先端部とを繋げるための移行部であって,前記基端部に繋がる部分の幅に対して前記先端部に繋がる部分の幅が狭くされるとともに前記基端部から先端部に向けて厚さが薄くなるように形成された移行部と、を備え、
該移行部によって前記先端部の厚さは前記基端部の厚さよりも薄くなるように形成されることを特徴とする眼内レンズ。
【請求項2】
請求項1の眼内レンズにおいて、前記光学部の中心を基準中心として人眼における標準的な水晶体嚢の外周径を設定した場合、前記移行部は前記水晶体嚢の外周上に位置するとともに前記先端部の最先端は前記水晶体嚢の外周の外側に位置するように形成されていることを特徴とする眼内レンズ。
【請求項3】
請求項2の眼内レンズにおいて、前記支持部は、前記括れ部を介して前記支持部全体が前記光学部上へと折り曲げられたときに前記先端部が前記光学部の中心部まで達するように前記先端部から前記移行部までの長さを有していることを特徴とする眼内レンズ。
【請求項4】
請求項3の眼内レンズにおいて、前記先端部の厚さは0.10mm以上0.35mm以下であることを特徴とする眼内レンズ。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の眼内レンズにおいて、前記標準的な水晶体嚢の外周径は9mmであることを特徴とする眼内レンズ。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5の眼内レンズにおいて、
前記移行部は、前記眼内レンズを水晶体嚢に載置した際に前記水晶体嚢からの圧縮による応力が加えられることで、前記先端部を嚢に沿わせる反発力を奏する断面積を有することを特徴とする眼内レンズ。
【請求項7】
請求項6の眼内レンズにおいて、
前記基端部に形成される前記括れ部は、前記眼内レンズの折り曲げ時に前記先端部に加えられる応力に基づいて前記先端部及び前記移行部を一体として撓ませるのに必要な厚さ及び幅を有しており、前記移行部は前記先端部に加えられる応力に基づいて先端部が前記水晶体嚢の外周径に相当する位置までの撓みを許容するとともに,前記先端部にかかる応力に基づいて前記水晶体嚢の外周径に相当する位置から内側の位置に前記先端部が位置するときは前記括れ部による前記先端部及び前記移行部の一体的な撓みとなる幅、及び厚みにて形成されていることを特徴とする眼内レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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