説明

眼底画像診断支援システム、及び眼底画像診断支援プログラム

【課題】 眼底写真を解析し、客観的に算出されたC/D比の値を医師に提供し、緑内障等の疾患の診断を支援することが可能な眼底画像診断支援システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 眼底画像診断支援システム1は、眼底画像診断支援コンピュータ2を利用して、被験者の眼底を撮影した眼底写真に係る眼底画像データ3から診断候補領域を抽出し、乳頭領域及び陥凹領域を検出し、さらに乳頭領域及び陥凹領域に近似する乳頭近似円または陥凹近似円をそれぞれ算出することができる。そして、算出された陥凹近似円に対する乳頭近似円の半径の比を計算することにより、緑内障等の眼科系疾患の診断に有益なC/D比の情報を医師等に提供し、当該診断の支援をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底画像診断支援システム、及び眼底画像診断支援プログラムに関するものであり、特に、被験者の眼底を撮影した眼底写真を利用し、主に緑内障等の眼科系疾患の診断に関する有益な情報を医師に対して提供し、当該診断を支援することが可能な眼底画像診断支援システム、及び眼底画像診断支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、眼球に対して外部から光を照射し、眼球を通して眼底の状態を観察することが行われている。また、その眼底の状態をカメラ等の光学機器によって撮像し、眼底写真として医療記録に残すことが行われている。この眼底写真を詳細に検討することによって、種々の疾患の診断を医師は下すことができる。この眼底の観察は、非侵襲的な診断手法であり、検査を受ける患者(被験者)は肉体的な負担を強いることがなく、また比較的簡易な装置によって得ることができるため、現在の医療機関では一般的に行われている検査手法の一つである。また、眼底写真によって撮影される血管は、眼球の奥に位置する脳の脳血管の一部が直接分岐したものであり、身体の外部から脳内の状態を直接観察することができる唯一の手法であり、非常に有益な情報を医師等に対して提供することができるものである。加えて、この眼底写真は、緑内障等の眼科系の疾患の診断の診断以外にも糖尿病等の生活習慣病の診断にも利用することができる。
【0003】
ここで、健康な被験者の眼底写真では、眼底全体が黄赤褐色を呈し、被験者の視線の約15度外方向(耳側方向)の位置に、1.2mm〜1.7mmの円形または卵円形で視神経乳頭(Optic nerve head)が観察される。この視神経乳頭は、解剖学的には、視神経円板(Optic disk)と呼ばれることもあり、眼底部分と視神経乳頭との境界は、鼻側よりも耳側が明瞭に観察されることが一般的である。そして、視神経乳頭の中央付近には、円形状を呈する視神経乳頭陥凹または生理的陥凹(Physiologic cup)と呼ばれる領域が観察される。
【0004】
そして、眼底写真を利用して緑内障の診断をする場合、診断のための判断基準の一つとして、前述した視神経乳頭及び視神経乳頭陥凹の直径または半径のそれぞれの比が求められる。すなわち、略円形状の視神経乳頭(D)に対する視神経乳頭陥凹(C)の径比(以下、「C/D比」と称す)の値が、0.6以上の場合、換言すれば、視神経乳頭陥凹の領域が正常時に比べて拡大している場合は視神経乳頭陥凹の所見となり、一般的に緑内障の症状が疑われる。一方、C/D比が0.6よりも小さい場合、乳頭陥凹の所見は見られず、健康な状態であると判定されている。さらに、左右のC/D比の差が0.2以上ある場合は、同様に緑内障が疑われる。なお、緑内障の診断は、該C/D比の値のみでなされるものではなく、その他の検査や医師の所見等によって複合的に行われるものであり、その他疑わしい症状、1)眼圧値が常に25mmHgを常に越えている、2)”眼が重い感じがする”など高眼圧による症状がある、3)経過とともに視神経乳頭所見が変化する、4)経過とともに網膜神経線維層欠損が拡大する、等の場合も治療の対象となっている。すなわち、C/D比の値はその診断のための有益な情報の一つであり、この値のみで緑内障が直裁されるわけではない。
【0005】
このとき、判定を行うために視神経乳頭及び視神経乳頭陥凹のそれぞれの径を測定する手法は、現像された眼底写真の上に定規等のスケールを直接当て、実際に医師等が定規の目盛りを読むことによって測定されている。なお、これらの測定及びC/D比の算出を容易とするための緑内障判定用の専用スケールが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、撮影された眼底写真をスキャナ等の画像入力機器を利用して電子データ化し、画像情報としてコンピュータに入力し、これを利用するものもある。すなわち、入力された眼底写真の画像情報をコンピュータディスプレイ上に表示し、医師等がマウス等のポインティングデバイスを使用し、眼底領域、視神経乳頭領域、及び視神経乳頭陥凹領域のそれぞれの境界を、医師の判断によって指定して各々の領域を決定するものがある。そして、決定された領域にしたがって、コンピュータによってC/D比の算出が行われている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−49259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した定規や緑内障判定用の専用スケールを利用する場合、医師等が各領域を肉眼でこれまでの経験に従って特定し、さらに手作業でスケールの目盛りを読取る作業が必要であった。そのため、医師等の測定者毎の主観によって各領域の判定にバラツキを生じることがあり、測定誤差が大きくなることがあった。その結果、緑内障の診断結果の客観性に疑問を生じることがあった。特に、前述した緑内障と診断されるか否かの基準となるC/D比が0.6の境界付近に該当する被験者の場合、この測定誤差によって緑内障と診断されるケースと、緑内障と診断されず治療不要となるケースがあった。
【0009】
さらに、人間ドックや集団検診のように、一度に多数の被験者に対して眼底写真を撮影し、緑内障等の疾患を診断するような医療機関の場合、上述した手作業による診断手法では、個々の被験者の診断に要する一人当たりの作業時間が長くなり、診断全体に要する時間が長時間化する傾向が強かった。そのため、医師等の測定者に多大な労力の負担を強いることがあった。
【0010】
一方、撮影された眼底写真をスキャナ等を利用し、電子データ化した眼底写真の画像情報をディスプレイ上に表示し、C/D比を算出するものが既に知られている。これによると、画面上に表示された眼底写真の眼底画像に対し、医師等が各領域(視神経乳頭及び視神経乳頭陥凹の領域)の境界をマウスやタブレット等のポインティングデバイスによって個々に指示し、指示後にコンピュータによってC/D比を自動的に計算することができる。ところが、各領域指定後の作業は簡略化されるものの、視神経乳頭及び視神経乳頭陥凹の領域を指定するものは、医師等の手によるものであり、診断結果の客観性等の問題、及び各領域の指定に要する労力の負担の軽減効果はそれほど大きなものではなかった。
【0011】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、眼底写真を解析し、視神経乳頭及び視神経乳頭陥凹の各領域を簡易にかつ客観性を保って指定し、C/D比の算出を行うとともに、算出されたC/D比の値を医師等に提示することにより、医師による緑内障等の疾患の診断に有益な情報を提供し、診断を支援することが可能な眼底画像診断支援システム、及び眼底画像診断支援プログラムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明にかかる眼底画像診断支援システムは、「被験者の眼底を撮影した眼底写真を、眼底画像診断支援コンピュータを利用して解析し、医師の診断を支援する情報を提供可能な眼底画像診断支援システムであって、前記眼底画像診断支援コンピュータは、前記眼底写真から作成された眼底画像データの入力を受付ける眼底画像データ入力受付手段と、受付けた前記眼底画像データから視神経乳頭を含む診断候補領域を前記眼底画像データから抽出する候補領域抽出手段と、抽出された前記診断候補領域を示す候補画像データから前記視神経乳頭に相当する略円形状の乳頭領域を検出する乳頭領域検出手段と、検出された前記乳頭領域及び前記眼底領域の境界を示す乳頭輪郭の形状に近似する乳頭近似円を算出する乳頭近似円算出手段と、前記候補画像データから視神経乳頭陥凹に相当する略円形状の陥凹領域を検出する陥凹領域検出手段と、検出された前記陥凹領域及び前記乳頭領域の境界を示す陥凹輪郭の形状に近似する陥凹近似円を算出する陥凹近似円算出手段と、算出された前記陥凹近似円に対する前記乳頭近似円の半径または直径のいずれか一方の比を示すC/D比を求めるC/D比算出手段と」を具備して主に構成されている。
【0013】
ここで、眼底画像データとは、被験者の眼底を撮影した眼底写真を電子データ化し、作成したものであり、例えば、通常の銀塩カメラで撮影され、焼付けされた眼底写真或いはそのポジ(ネガ)フィルムをスキャナ等の画像入力機器を利用して電子情報に変換したものや、近年において普及の著しいデジタルカメラによって撮影したデータをそのまま眼底画像データとして直接利用するものであってもよい。そして、変換された眼底画像データが眼底画像診断支援コンピュータに眼底画像データ入力受付手段を通じて入力される。ここで、眼底画像データ入力受付手段は、上述した眼底画像データの入力が可能なものであればよく、例えば、スキャナやフィルムスキャナ等の画像入力機器を利用し、眼底画像診断支援コンピュータに取込むもの、眼底画像データをフレキシブルディスクやCD−R等の記憶媒体に記憶し、該記憶媒体の読取装置を通じて取込むものなどが挙げられる。また、デジタルカメラによって撮影されたデータの場合は、デジタルカメラと眼底画像診断支援コンピュータとをUSBケーブルなどで接続し、対象の眼底画像データを直接取り込むものであってもよい。
【0014】
また、候補領域抽出手段とは、後述するC/D比を算出するための視神経乳頭及び視神経乳頭陥凹を含む候補診断領域を特定するものであり、眼底写真の最も明るく撮影される最明部の座標位置を中心とし、例えば、眼底カメラの画角を45度に設定し、600ピクセル×600ピクセルで記録した場合、240ピクセル×240ピクセルの範囲が抽出される。ここで、視神経乳頭及び視神経乳頭陥凹に係る領域は、周囲の眼底領域及びその他の領域に対して明度が明るく撮影されることが一般的であり、眼底画像データに含まれる最明部は概ね視神経乳頭陥凹のほぼ中心に相当している。そのため、最明部を中心とした診断候補領域の抽出によってC/D比を算出するための測定対象となる視神経乳頭を含んだ候補画像データを得ることが可能となる。なお、一般成人の視神経乳頭陥凹の平均的な直径のサイズは、約80ピクセルであることが経験的に知られており、上述の候補画像データとして指定された範囲は、視神経乳頭全体を含むことができる。
【0015】
さらに、眼底画像データからの最明部の座標位置の特定は、カラー撮影された眼底写真をモノクロ化し、画像解析の一般的な手法として認知される輝度信号Yを下記の数式(数1参照)にしたがって求めることによって行われる。ここで、Gは緑成分、Bは青成分、Rは赤成分のそれぞれの色成分の値を示している。
【0016】
【数1】

【0017】
さらに、乳頭領域抽出手段または陥凹領域抽出手段は、いずれもその周囲との画素値の差異を利用してそれぞれの各領域を検出するものである。すなわち、乳頭領域とその周囲に存在する眼底領域とでは、眼底領域に対して乳頭領域の方が明度が高く、一方、陥凹領域とその周囲に存在する乳頭領域とでは、乳頭領域に対して陥凹領域の方が明度が高くなる。したがって、候補画像データの画素値をそれぞれ測定し、互いに隣り合う画素の画素値が大きく異なるような画素値の差が認識される箇所を境界とすることにより、それぞれの領域が抽出される。なお、抽出される乳頭領域及び陥凹領域は、その生理的特徴から略円形状を呈している。
【0018】
したがって、本発明の眼底画像診断支援システムによれば、入力を受付けた眼底画像データから輝度信号にしたがって候補診断領域に係る候補診断画像データが抽出される。これにより、後述のC/D比を算出する測定範囲が狭小に制限される。そして、乳頭領域及び陥凹領域がそれぞれの周囲の領域との画素値の違いによって認識される。その後、抽出された領域の輪郭(乳頭輪郭または陥凹輪郭)に略一致する近似円が算出される。さらに、算出された陥凹近似円に対する乳頭近似円の径比(例えば、直径の比)を求めることにより、緑内障等の疾患の判断に利用されるC/D比が計算される。これにより、乳頭領域及び陥凹領域の指定及びC/D比の算出が眼底画像診断支援コンピュータによって行うことが可能となり、従来の医師等が手作業で行っていた作業を大幅に簡略化することが可能となる。さらに、眼底画像診断支援コンピュータによって予め設定された基準にしたがって各領域の指定がなされるため、医師の主観や個人差による診断結果のバラツキを抑え、医師は客観的なデータにしたがって提供されたC/D比の値を参照し、被験者の診断を行うことができる。なお、各領域の画素値の違いをより明確に認識するために、カラー画像の候補画像データに対し、各色成分(R成分、G成分、B成分)毎に設定された所定の閾値で二値化処理を施し、その後、各領域の検出を行うことも可能である。
【0019】
さらに、本発明にかかる眼底画像診断支援システムは、上記構成に加え、「前記乳頭近似円算出手段及び前記陥凹近似円算出手段の少なくともいずれか一方は、前記乳頭輪郭または前記陥凹輪郭に近似する候補円を選定する候補円選定手段と、選定された前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する一致領域から、前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と非重畳の余剰領域及び前記候補円の外円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する欠損領域を減じた候補円一致度を算出する一致度算出手段と、前記候補円選定手段によって選定された複数の候補円から、前記候補円一致度が最大値を示す一致候補円を前記乳頭近似円または前記陥凹近似円に決定する近似円決定手段と」を具備するものであっても構わない。
【0020】
したがって、本発明の眼底画像診断支援システムによれば、乳頭領域に一致する乳頭近似円を算出する場合、まず、算出する対象のそれぞれの領域に近似する候補円を選定し、候補画像データ上で仮想的に重ね合わせる。このとき、候補円の内円側に位置し、かつ対象の領域に重畳する該当部分を一致領域Bとし、さらに該候補円の内円側に位置し、かつ対象領域に非重畳の部分を余剰領域A(換言すれば、候補円から一致領域Bを除いた領域)とし、候補円の外円側に位置し、かつ対象の領域に重畳する該当部分を欠損領域Cとする。そして、下記の式によって候補円一致度Eを算出し、その最大値を示す一致候補円を乳頭近似円または陥凹近似円に決定する(数2参照)。ここで、数2において、x,yは各々の円の中心座標を示し、rは円の半径を示している。このとき、候補円一致度Eが最大となるのは、余剰領域A及び欠損領域Cがほぼゼロに近く、かつ一致領域Bが最大となる場合である。なお、陥凹領域に一致する陥凹近似円を算出する場合も上述と同様の処理が行われる。
【0021】
【数2】

【0022】
さらに、本発明にかかる眼底画像診断支援システムは、上記構成に加え、「前記候補画像データに含まれ、前記乳頭領域及び前記陥凹領域の少なくともいずれか一方に重畳して撮影された血管に相当する血管領域を検出する血管領域検出手段と、検出された前記血管領域に基づいて、前記乳頭近似円及び前記陥凹近似円の少なくともいずれか一方を補正して算出する血管領域補正手段と」を具備するものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明の眼底画像診断支援システムによれば、乳頭領域及び陥凹領域に重畳し、正確なC/D比の算出を阻害する要因となる血管に係る血管領域を予め検出し、その血管領域を補正して乳頭近似円及び陥凹近似円が算出される。これにより、血管の重畳によってC/D比の算出が困難となる状況を解消し、正確なC/D比による客観的な診断を行うことが可能となる。
【0024】
なお、血管領域の補正は、下記の式にしたがって候補円一致度E’を算出し、血管領域によって阻害された乳頭領域または陥凹領域の形状を正確なものとして認識可能にするものである。ここで、一致領域B内に重畳する血管の占める領域を一致血管領域Vb、余剰領域Aに重畳する血管の占める領域を余剰血管領域Va、及び欠損領域Cに重畳する血管の占める領域を欠損血管領域Vcと定義する。
【0025】
【数3】

【0026】
一方、本発明にかかる眼底画像診断支援プログラムは、「被験者の眼底を撮影した眼底写真から作成された眼底画像データの入力を受付ける眼底画像データ入力受付手段、受付けた前記眼底画像データから視神経乳頭を含む診断候補領域を前記眼底画像データから抽出する候補領域抽出手段、抽出された前記診断候補領域を示す候補画像データから前記視神経乳頭に相当する略円形状の乳頭領域を検出する乳頭領域検出手段、検出された前記乳頭領域及び前記眼底領域の境界を示す乳頭輪郭の形状に近似する乳頭近似円を算出する乳頭近似円算出手段、前記候補画像データから視神経乳頭陥凹に相当する略円形状の陥凹領域を検出する陥凹領域検出手段、検出された前記陥凹領域及び前記乳頭領域の境界を示す陥凹輪郭の形状に近似する陥凹近似円を算出する陥凹近似円算出手段、及び算出された前記陥凹近似円に対する前記乳頭近似円の半径または直径のいずれか一方の比を示すC/D比を求めるC/D比算出手段として、眼底画像診断支援コンピュータを」機能させるものから主に構成されている。
【0027】
さらに、本発明にかかる眼底画像診断支援プログラムは、上記構成に加え、「前記乳頭輪郭または前記陥凹輪郭に近似する候補円を選定する候補円選定手段、選定された前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する一致領域から、前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と非重畳の余剰領域及び前記候補円の外円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する欠損領域を減じた候補円一致度を算出する一致度算出手段、及び前記候補円選定手段によって選定された複数の候補円から、前記候補円一致度が最大値を示す一致候補円を前記乳頭近似円または前記陥凹近似円に決定する近似円決定手段として、前記眼底画像診断支援コンピュータを」機能させるものであっても構わない。
【0028】
さらに、本発明にかかる眼底画像診断支援プログラムは、上記構成に加え、「前記候補画像データに含まれ、前記乳頭領域及び前記陥凹領域の少なくともいずれか一方に重畳して撮影された血管に相当する血管領域を検出する血管領域検出手段、及び検出された前記血管領域に基づいて、前記乳頭近似円及び前記陥凹近似円の少なくともいずれか一方を補正して算出する血管領域補正手段として、前記眼底画像診断支援コンピュータを」機能させるものであっても構わない。
【0029】
したがって、本発明の眼底画像診断支援プログラムによれば、プログラムを実行することにより、眼底画像診断支援コンピュータは、緑内障等の疾患の診断に必要なC/D比を客観的なデータとして算出し、医師等に対して供与することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の効果として、眼底画像診断支援システム及び眼底画像診断支援プログラムは、入力された眼底画像データからC/D比の算出に必要な略円形状の乳頭領域及び陥凹領域を画素値の違いを利用して検出し、さらに乳頭領域及び陥凹領域の各々の領域の輪郭と略一致する近似円を求めることにより、C/D比を求めることができる。さらに、二値化処理、耳側領域及び鼻側領域の分割処理、及び血管領域の補正処理等を行うことにより、乳頭領域及び陥凹領域を正しく検出し、客観性を高めることができる。その結果、医師等の作業の労力負担を軽減化し、客観的な事実に基づいて医師が疾患の診断を行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態である眼底画像診断支援システム1(以下、単に「支援システム1」と称す)及び眼底画像診断支援プログラム(以下、単に「支援プログラム」と称す)について、図1乃至図8に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の支援システム1の概略構成及び眼底画像診断支援コンピュータ2(以下、単に「コンピュータ2」と称す)の機能的構成を示すブロック図であり、図2は(a)受付けた眼底画像データ3及び(b)候補画像データ16の抽出の一例を示す説明図であり、図3は検出された血管領域6の一例を示す説明図であり、図4は検出された乳頭領域4の一例を示す説明図であり、図5は(a)乳頭近似円5または陥凹近似円33の決定及び(b)血管領域6の検出の一例を模式的に示す説明図であり、図6は検出された陥凹領域26の一例を示す説明図であり、図7及び図8はコンピュータ2によるC/D比の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態の支援システム1は、図1に示されるように、撮影された眼底写真を電子データに変換した眼底画像データ3の入力を受付け、視神経乳頭に相当する部位及び視神経乳頭陥凹に相当する部位の半径の比を示すC/D比の値を算出し、医師に対して提供することにより、緑内障の診断を支援することが可能なコンピュータ2によって主に構成されている。さらに、具体的に説明すると、本実施形態の支援システム1は、コンピュータ2と、コンピュータ2に接続され、画像入力手段として眼底画像データ3を得るためのデジタルカメラ機能を有する眼底カメラ7と、取得した眼底画像データ3等の各種データの表示を行う液晶ディスプレイ8と、コンピュータ2に対する種々の命令及びデータ等の入力を受付けるキーボード9及びマウス10を含む操作入力機器11とによって主に構成されている。ここで、本実施形態の支援システム1に使用されるコンピュータ2は、市販の汎用コンピュータが利用されている。
【0033】
さらに、コンピュータ2の機能的構成について、説明すると、眼底カメラ7によって取得されたカラー画像の眼底画像データ3の入力を受付ける眼底画像データ入力受付手段12と、受付けた眼底画像データ3を含む種々の画像データ及び解析されたC/D比の値等の解析データを記憶するハードディスク及び半導体メモリ等の記憶媒体から構成される記憶手段13と、受付けた眼底画像データ3に示される輝度信号に基づいて診断候補領域15を抽出し、候補画像データ16を得る候補領域抽出手段17と、候補画像データ16に基づいて周囲の眼底領域18との画素値の差を利用して乳頭領域4を検出する乳頭領域検出手段19と、検出された乳頭領域4及び眼底領域18の境界を示す乳頭輪郭20の形状に近似する乳頭候補円21を選定する乳頭候補円選定手段22と、選定された乳頭候補円21と乳頭領域4との乳頭一致度E1を算出する乳頭一致度算出手段23と、選定された複数の乳頭候補円21から乳頭一致度E1が最大値を示す乳頭一致候補円24を乳頭近似円5として決定する乳頭近似円決定手段25とを具備している。ここで、乳頭候補円選定手段22が本発明における候補円選定手段に相当し、乳頭一致度算出手段23が本発明における一致度算出手段に相当し、乳頭近似円決定手段25が本発明における近似円決定手段に相当する。また、これらの乳頭候補円選定手段22、乳頭一致度算出手段23、及び乳頭近似円決定手段25が本発明における乳頭近似円算出手段に相当し、乳頭一致度E1が本発明における候補円一致度に相当する。さらに、検出された乳頭領域4に係る乳頭領域情報4aが記憶手段13に記憶される。
【0034】
さらに、コンピュータ2は、候補画像データ16に基づいて周囲の乳頭領域4の画素値の差を利用して陥凹領域26を検出する陥凹領域検出手段27と、検出された陥凹領域26及び乳頭領域4の境界を示す陥凹輪郭28の形状に近似する陥凹候補円29を選定する陥凹候補円選定手段30と、選定された陥凹候補円29と陥凹領域26との陥凹一致度E2を算出する陥凹一致度算出手段31と、選定された複数の陥凹候補円29から陥凹一致度E2が最大値を示す陥凹一致候補円32を陥凹近似円33として決定する陥凹近似円決定手段34とを具備している。ここで、陥凹候補円選定手段30が本発明における候補円選定手段に相当し、陥凹一致度算出手段31が本発明における一致度算出手段に相当し、陥凹近似円決定手段34が本発明における近似円決定手段に相当する。また、これらの陥凹候補円選定手段30、陥凹一致度算出手段31、及び陥凹近似円決定手段34が本発明における陥凹近似円算出手段に相当し、陥凹一致度E2が本発明における候補円一致度に相当する。さらに、検出された陥凹領域26に係る陥凹領域情報26aが記憶手段13に記憶される。
【0035】
加えて、コンピュータ2は、候補画像データ16に重畳して撮影された血管領域6を画素値の差を利用して検出する血管領域検出手段35と、検出された血管領域6に基づいて乳頭近似円5及び陥凹近似円33の形状を補正する血管領域補正手段36と、算出された陥凹近似円33に対する乳頭近似円5の半径の比を示すC/D比の値(C/D比データ37a)を求めるC/D比算出手段37と、算出されたC/D比の値を液晶ディスプレイ8上に出力表示し、医師等に対して視覚的認識可能に提示する算出結果出力制御手段38と、操作入力機器11と接続し、種々の命令等の操作信号を受付け、C/D比の算出処理等を行う操作信号入力制御手段39とを具備している。
【0036】
次に、本実施形態の支援システム1におけるコンピュータ2の処理の流れについて、主として図7及び図8のフローチャートに基づいて説明する。ここで、図7及び図8におけるステップS1からステップS22が本発明の眼底画像診断支援プログラムに相当する。
【0037】
まず、被験者の眼底をデジタルカメラ機能を有する眼底カメラ7を利用して撮影し、撮影された眼底画像データ3の入力をコンピュータ2は受付ける(ステップS1:図2(a)参照)。そして、受付けた眼底画像データ3を記憶手段13に記憶する(ステップS2)。ここで、眼底画像データ3は、上述した眼底カメラ7を利用するもの以外に、印画紙上に焼付けられた眼底写真をスキャナによってスキャニングしたもの、眼底写真のポジフィルムをフィルムスキャナによって眼底をスキャニングしたものを眼底画像データ3としてコンピュータ2に取込むものであってもよい。
【0038】
それから、眼底画像データ3の各座標位置の輝度信号を輝度信号の算出式(数1参照)に基づいて計算し、眼底画像データ3中で最も輝度信号Yが高い値を示す最明部14の座標位置を中心として240ピクセル×240ピクセルの範囲を眼底画像データ3から切取り、候補画像データ16として抽出及び記憶する(ステップS3,ステップS4)。ここで視神経乳頭陥凹に相当する陥凹領域26は、その周囲の眼底領域18と比較して明度が高い、換言すれば高い画素値で表示されることが示される。そのため、眼底画像データ3中の最明部14の座標位置は、陥凹領域26に該当することが経験的に知られている。そのため、この座標位置を中心とした所定範囲を眼底画像データ3から切取ることにより、抽出された候補画像データ16には、必然的に乳頭領域4及びその内側に存在する陥凹領域26が含まれることとなる(図2(b)参照)。なお、一般成人の乳頭領域4の平均的なサイズは直径が約80ピクセルである。これにより、後述する乳頭領域4及び陥凹領域26等の検出及び各候補円の決定の処理を、限られた範囲に絞って行うことができ、コンピュータ2による処理負担を軽減することができるとともに、処理の際のエラーを軽減することができる。ここで、上記例において候補画像データ16を抽出する際に240ピクセル×240ピクセルの範囲を切取り、乳頭領域4の平均的なサイズを約80ピクセルとして設定するものについて示したが、眼底写真の撮影条件に応じて抽出範囲を適宜変更するものであっても勿論構わない。
【0039】
その後、候補画像データ16に含まれる血管に相当する血管領域6を検出する(ステップS5)。ここで、血管領域6は、その周囲に存する乳頭領域4及び陥凹領域26に対して一般に暗く撮影される。そのため、血管領域6とその周囲とでは候補画像データ16内で画素値が大きく異なっている。そこで、画素値の変化が著しく大きい箇所を血管領域6及び乳頭領域4または陥凹領域26との境界と認識することにより、候補画像データ16内の血管領域6の位置が特定される(図3参照)。なお、画素値の差を認識する機能は、一般的に使用される画像解析ソフトウェア等に標準的に搭載されているものを応用することが可能であり、係る機能を利用することにより、本システム1の構築を簡易にかつ低コストで行うことができる。なお、画素値の差異をより明確に認識するために、候補画像データ16に対して、予め設定された閾値に従って二値化処理を行い、血管領域6のみを抽出することを本実施形態では行っている(図3参照)。
【0040】
この場合、血管領域6の周囲に存在する乳頭領域4及び陥凹領域26よりも低い画素値に閾値を設定することにより、当該閾値よりも低い画素値を示す部位が血管領域6として認識され、一方、高い画素値を示す部位が乳頭領域4または陥凹領域26として認識されることになる。なお、この二値化処理は後述する乳頭領域4及び陥凹領域26を検出する場合も、個々に設定された閾値に従って行っている。
【0041】
そして、検出された血管領域6に係る血管領域情報6aを記憶手段13に記憶する(ステップS6)。このとき、記憶される血管領域情報6aは、血管領域6に相当する部位の座標位置及び二値化された画像データを含んでいる。
【0042】
次に、視神経乳頭の部位に相当する略円形状の乳頭領域4を検出する(ステップS7:図4参照)。ここで、乳頭領域4の検出は、上述した血管領域6の検出の手法と同様に、乳頭領域4のその周囲に存在し、かつ乳頭領域4よりも暗い画素値によって表示される眼底領域18との画素値の違いを利用して行われる。その後、検出された乳頭領域4及び眼底領域18の間の境界に相当する略円形状の乳頭輪郭20と近似する乳頭候補円21が選定される(ステップS8)。このとき、乳頭候補円21の中心座標(x,y)には乳頭領域4内の任意の座標を規定し、乳頭候補円21の半径rには、予め定められた範囲内で任意の値を規定する。その後、乳頭一致度E1を算出する(ステップS9)。ここで、乳頭一致度E1は、既に検出された血管領域6に係る血管領域情報6aを利用し、記述した算出式(数3参照)に従って計算される。
【0043】
さらに具体的に説明すると、乳頭一致度E1は、乳頭候補円21の内円側に位置し、かつ乳頭領域4に重畳する該当部分を一致領域B、乳頭候補円21の内円側に位置し、かつ乳頭領域4に非重畳の部分を余剰領域A、乳頭候補円21の外円側に位置し、かつ乳頭領域4に重畳する該当部分を欠損領域Cとして定義される各領域と、一致領域Bに重畳する血管領域6の占める部分を一致血管領域Vb、余剰領域Aに重畳する血管領域6の占める部分を余剰血管領域Va、及び欠損領域Cに重畳する血管領域6の占める部分を欠損血管領域Vcとして定義される各領域によって求められる(図5(b)参照)。ここで、それぞれの領域A,B,C,Va,Vb,Vcの値は、候補画像データ16に占める画素数(換言すれば候補画像データ16中の占有面積に相当)に基づいている。
【0044】
なお、ステップS5によって検出される血管領域6がゼロ若しくはゼロに近似する場合、すなわち、候補画像データ16中に血管に相当する部位が撮影されていない場合は、上述の血管領域6の補正のための算出式(数3)の各血管領域Va,Vb,Vcの値をゼロとみなして計算が行われる。つまり、既述した血管領域6の存在を考慮しない候補円一致度の算出式(数2)に基づいて計算が行われる。
【0045】
ここで、乳頭一致度E1が最大を示すのは、選定された乳頭候補円21と乳頭領域4とがほぼ一致し、余剰領域A及び欠損領域Cがゼロに近くなる状態、すなわち、乳頭候補円21の領域=乳頭領域4に最も近い状態である。
【0046】
そして、予め定義された一定範囲の乳頭候補円21のそれぞれの乳頭一致度E1を総当たり的に算出することが完了した場合(ステップS10においてYES)、算出された乳頭一致度E1が最大値を示す乳頭候補円21を乳頭一致候補円24とし、乳頭近似円5を決定する(ステップS11)。一方、未だ乳頭一致度E1を算出する乳頭候補円21が残存している場合、新たな乳頭候補円21の選定が行われ(ステップS12)、ステップS9の処理に移行し、乳頭一致度E1の再計算が行われる。ここで、乳頭候補円21の再選定は、乳頭候補円21の中心座標の変位、或いは半径または直径の値を変更するなどによって行われる。
【0047】
その後、乳頭領域4の内部に存在する陥凹領域26の陥凹輪郭28に近似する陥凹近似円33を決定する(ステップS13乃至ステップS18:図6参照)。ここで、陥凹近似円33の選定及び決定に係る処理は、上述した乳頭近似円5の決定に係る処理と略同一であるため、ここでは詳細な説明は省略するものとする。
【0048】
そして、計算された乳頭近似円5及び陥凹近似円33のそれぞれの半径の値に基づいて、視神経乳頭(D)に相当する乳頭近似円5に対する視神経乳頭陥凹(C)に相当する陥凹近似円33の比を示すC/D比の値を計算する(ステップS19)。そして、計算したC/D比の値を液晶ディスプレイ8を通じて、医師等が視認可能なようにその結果を出力表示する(ステップS20)。これにより、医師等が緑内障の診断を下すための有益な情報となるC/D比の値を、眼底画像データ3をコンピュータ2に取り込む簡易な操作によって獲得することができ、係る診断を効率的かつ的確に行う支援をすることができる。このとき、C/D比の値が0.6以上の場合、緑内障の疑いが強いと判断され、それよりも小さい値の場合は健常であるとの診断が下される。
【0049】
特に、従来はほとんど手作業で行っていた乳頭領域4及び陥凹領域26の認識及び半径若しくは直径の値の計測等の作業が、眼底画像データ3の入力の受付後は自動化されているため、健康診断等の医療機関において多くの患者の診断を行う場合等に要する時間を大幅に短縮することができる。また、各領域4,26の計測等に医師の主観や測定誤差を生じる可能性が低くなり、C/D比の値の算出が予め定められた一定の基準に従って行われる。これにより、算出されるC/D比の値の客観性が保持され、診断結果にバラツキが生じることがなく、正確な診断を医師等が下すことができるようになる。加えて、乳頭領域4及び陥凹領域26に重畳して眼底写真に撮影される血管の領域をコンピュータ2が認識し、これを考慮した補正が乳頭近似円5若しくは陥凹近似円33が決定されるため、よりC/D比の算出が正確に行われるようになる。
【0050】
その後、システム終了の指示の有無を検出し(ステップS21)、係る指示が有る場合(ステップS21においてYES)、システムを終了する(ステップS22)。一方、指示がない場合(ステップS21においてNO)、ステップS1の処理に復帰し、新たな眼底画像データ3の入力を受付ける。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
すなわち、本実施形態の支援システム1において、算出されたC/D比を利用して緑内障の診断を支援するものを示したが、これに限定されるものではなく、その他の所見を検出して提示することによって診断の支援を行うことも可能である。例えば、視神経乳頭陥凹に相当する部位の一所見である「局所性拡大」を検出することも可能となる。緑内障の疾患では、乳頭領域4に対して陥凹領域26が全体に均一に拡大する症状に対し、一方向に限定して拡大する局所性拡大の症状が見られることがある。そのため、陥凹領域26の中心を示す座標位置から陥凹輪郭28までの半径に相当する距離が一方向のみ大きくなるような異常時には、仮に算出されたC/D比が0.6より小さい値を示した場合でも緑内障としての診断を下すことができる。また、一般に左右の眼球のC/D比の差が0.2以上の場合も緑内障の疑いが持たれている。そのため、算出された左右のC/D比の差を求める左右C/D比差算出手段を設け、医師等に緑内障の診断を支援するための情報を提供するものであっても構わない。
【0053】
さらに、本実施形態の支援システム1において、乳頭近似円5及び陥凹近似円33の半径に基づいてC/D比の値を算出するものを示したが、勿論直径に基づいて算出するものであっても構わない。加えて、また、乳頭領域4、陥凹領域26、及び血管領域6を、候補画像データについて二値化処理した後に画素値の差を利用して検出するものを示したが、閾値を設定する色成分をR(赤)成分、緑(G)成分、または青(B)成分のいずれか一つを対象とするものであってもよい。しかしながら、赤(R)成分及び緑(G)成分については、上記領域4,26の検出は比較的容易に可能となるが、青(B)成分は、周囲の眼底領域18よりも低い画素値で表示されることがあり、各領域4,26の検出が困難な場合もある。
【0054】
さらに、本実施形態において、各領域4,26に近似する近似円5,33の決定を一つの領域4,26に対して行うものを示したがこれに限定されるものではなく、例えば、一つの乳頭領域4(または陥凹領域26)を中央から左右に二分割し、耳側領域及び鼻側領域に分けて、個々の近似円を決定するものであっても構わない。すなわち、一般に鼻側に対して耳側の領域が明瞭に撮影されることが経験的に知られているため、それぞれの領域に対して異なる閾値を適用することにより、各領域の検出及び近似円の決定がより正確になされる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態の支援システムの概略構成及び眼底画像診断支援コンピュータの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】(a)受付けた眼底画像データ及び(b)候補画像データの抽出の一例を示す説明図である。
【図3】検出された血管領域の一例を示す説明図である。
【図4】検出された乳頭領域の一例を示す説明図である。
【図5】(a)乳頭近似円または陥凹近似円の決定及び(b)血管領域の検出の一例を模式的に示す説明図である。
【図6】検出された陥凹領域の一例を示す説明図である。
【図7】コンピュータによるC/D比の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】コンピュータによるC/D比の算出処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 支援システム(眼底画像診断支援システム)
2 コンピュータ(眼底画像診断支援コンピュータ)
3 眼底画像データ
4 乳頭領域
4a 乳頭領域情報
5 乳頭近似円
6 血管領域
6a 血管領域情報
7 眼底カメラ
8 液晶ディスプレイ
9 キーボード
10 マウス
11 操作入力機器
12 眼底画像データ入力受付手段
13 記憶手段
14 最明部
15 診断候補領域
16 候補画像データ
17 候補領域抽出手段
18 眼底領域
19 乳頭領域検出手段
20 乳頭輪郭
21 乳頭候補円
22 乳頭候補円選定手段
23 乳頭一致度算出手段
24 乳頭一致候補円
25 乳頭近似円決定手段
26 陥凹領域
26a 陥凹領域情報
27 陥凹領域検出手段
28 陥凹輪郭
29 陥凹候補円
30 陥凹候補円選定手段
31 陥凹一致度算出手段
32 陥凹一致候補円
33 陥凹近似円
34 陥凹近似円決定手段
35 血管領域検出手段
36 血管領域補正手段
37 C/D比算出手段
37a C/D比データ
38 算出結果出力制御手段
39 操作信号入力制御手段
E1 乳頭一致度(候補円一致度)
E2 陥凹一致度(候補円一致度)
A 余剰領域
B 一致領域
C 欠損領域
Va 余剰血管領域
Vb 一致血管領域
Vc 欠損血管領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の眼底を撮影した眼底写真を、眼底画像診断支援コンピュータを利用して解析し、医師の診断を支援する情報を提供可能な眼底画像診断支援システムであって、
前記眼底画像診断支援コンピュータは、
前記眼底写真から作成された眼底画像データの入力を受付ける眼底画像データ入力受付手段と、
受付けた前記眼底画像データから視神経乳頭を含む診断候補領域を前記眼底画像データから抽出する候補領域抽出手段と、
抽出された前記診断候補領域を示す候補画像データから前記視神経乳頭に相当する略円形状の乳頭領域を検出する乳頭領域検出手段と、
検出された前記乳頭領域及び前記眼底領域の境界を示す乳頭輪郭の形状に近似する乳頭近似円を算出する乳頭近似円算出手段と、
前記候補画像データから視神経乳頭陥凹に相当する略円形状の陥凹領域を検出する陥凹領域検出手段と、
検出された前記陥凹領域及び前記乳頭領域の境界を示す陥凹輪郭の形状に近似する陥凹近似円を算出する陥凹近似円算出手段と、
算出された前記陥凹近似円に対する前記乳頭近似円の半径または直径のいずれか一方の比を示すC/D比を求めるC/D比算出手段と
を具備することを特徴とする眼底画像診断支援システム。
【請求項2】
前記乳頭近似円算出手段及び前記陥凹近似円算出手段の少なくともいずれか一方は、
前記乳頭輪郭または前記陥凹輪郭に近似する候補円を選定する候補円選定手段と、
選定された前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する一致領域から、前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と非重畳の余剰領域及び前記候補円の外円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する欠損領域を減じた候補円一致度を算出する一致度算出手段と、
前記候補円選定手段によって選定された複数の候補円から、前記候補円一致度が最大値を示す一致候補円を前記乳頭近似円または前記陥凹近似円に決定する近似円決定手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の眼底画像診断支援システム。
【請求項3】
前記候補画像データに含まれ、前記乳頭領域及び前記陥凹領域の少なくともいずれか一方に重畳して撮影された血管に相当する血管領域を検出する血管領域検出手段と、
検出された前記血管領域に基づいて、前記乳頭近似円及び前記陥凹近似円の少なくともいずれか一方を補正して算出する血管領域補正手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の眼底画像診断支援システム。
【請求項4】
被験者の眼底を撮影した眼底写真から作成された眼底画像データの入力を受付ける眼底画像データ入力受付手段、受付けた前記眼底画像データから視神経乳頭を含む診断候補領域を前記眼底画像データから抽出する候補領域抽出手段、抽出された前記診断候補領域を示す候補画像データから前記視神経乳頭に相当する略円形状の乳頭領域を検出する乳頭領域検出手段、検出された前記乳頭領域及び前記眼底領域の境界を示す乳頭輪郭の形状に近似する乳頭近似円を算出する乳頭近似円算出手段、前記候補画像データから視神経乳頭陥凹に相当する略円形状の陥凹領域を検出する陥凹領域検出手段、検出された前記陥凹領域及び前記乳頭領域の境界を示す陥凹輪郭の形状に近似する陥凹近似円を算出する陥凹近似円算出手段、及び算出された前記陥凹近似円に対する前記乳頭近似円の半径または直径のいずれか一方の比を示すC/D比を求めるC/D比算出手段として、眼底画像診断支援コンピュータを機能させることを特徴とする眼底画像診断支援プログラム。
【請求項5】
前記乳頭輪郭または前記陥凹輪郭に近似する候補円を選定する候補円選定手段、選定された前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する一致領域から、前記候補円の内円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と非重畳の余剰領域及び前記候補円の外円側に位置し、前記乳頭領域または前記陥凹領域と重畳する欠損領域を減じた候補円一致度を算出する一致度算出手段、及び前記候補円選定手段によって選定された複数の候補円から、前記候補円一致度が最大値を示す一致候補円を前記乳頭近似円または前記陥凹近似円に決定する近似円決定手段として、前記眼底画像診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項4に記載の眼底画像診断支援プログラム。
【請求項6】
前記候補画像データに含まれ、前記乳頭領域及び前記陥凹領域の少なくともいずれか一方に重畳して撮影された血管に相当する血管領域を検出する血管領域検出手段、及び検出された前記血管領域に基づいて、前記乳頭近似円及び前記陥凹近似円の少なくともいずれか一方を補正して算出する血管領域補正手段として、前記眼底画像診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の眼底画像診断支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−263127(P2006−263127A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85301(P2005−85301)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(599144712)タック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】