眼用レンズを生成するための熱可塑性エラストマーを備えたモールド
本発明は、熱可塑性エラストマーと化合した熱可塑性樹脂から形作られた、改善されたモールド部品(101、102)を開示している。このモールド部品は、眼用レンズモールドの製造の施用で必要とされるものといった、高程度の精度および確度を得るための、例えば、連続的なプロセス、インラインプロセス、またはバッチプロセスといった、製造プロセスで使用されることができる。加えて、本発明は、改善されたモールド部品を用いて造られる眼用レンズを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔使用の分野〕
本発明は、コンタクトレンズの生成に有用な熱可塑性エラストマーを備えたモールド、およびそれらモールドの使用のための方法を記述している。
【0002】
〔背景〕
コンタクトレンズが視力を改善するために使用され得ることは、よく知られていることである。種々のコンタクトレンズが、何年もの間、商業的に生成されて来た。初期の設計のコンタクトレンズは、硬質材料から形作られていた。これらのレンズは、あるいくつかの適用では現在もまだ使用されているが、これらのレンズは、快適さに乏しく、酸素に対する透過率が比較的低いことから、全ての患者に好適であるというわけではない。本分野における後の開発により、ヒドロゲルに基づいたソフトコンタクトレンズが生じた。
【0003】
ヒドロゲルコンタクトレンズは、評判がよく、多くの場合、硬質材料から作製されたコンタクトレンズよりも着用するのにより快適である。ヒドロゲルから作製される展性(Malleable)のソフトコンタクトレンズは、複数部品モールド(組み合わされた部品が、所望の最終レンズに一致した微細形態(topography)を形成する)内でレンズを形成することにより製造されることができる。
【0004】
眼用レンズ(Ophthalmic lenses)は、多くの場合、流し込み成形により作製され、流し込み成形では、モノマー材料が、対向するモールド部品の光学表面の間に画定された空隙内に堆積される。眼用レンズといった有用な物品へとヒドロゲルを形作るのに使用される複数部品モールドは、例えば、眼用レンズの後側湾曲部に対応する凸状部分を備えた第1のモールド部品と、眼用レンズの前側湾曲部に対応する凹状部分を備えた第2のモールド部品とを含むことができる。そのようなモールド部品を使用してレンズを調製するには、未硬化のヒドロゲルレンズ組成物が、前側湾曲部モールド部品と後側湾曲部モールド部品との間に置かれる。レンズ組成物を所望のレンズパラメータに従う形状にするために、これらのモールド部品が組み合わされる。伝統的に、レンズ組成物を貫通してレンズ組成物をレンズ部分と余剰のリング部分とに切り分ける(incises)モールド部品へと形成された縁部を圧縮することにより、形成されたレンズの周囲の周りにレンズ縁部が形成された。レンズ組成物は引き続き、例えば熱および光への曝露によって硬化され、これによりレンズを形成する。
【0005】
硬化の後で、モールド部分は分離され、レンズが、モールド部分の一方に付着したまま残る。レンズおよび余剰のポリマーリングが分離されなければならず、余剰のポリマーリングは、廃棄されなければならない。モールド分離の間に、レンズの損傷が起きることがある。損傷としては、例えば、縁部の欠け、および裂け;穴;レンズの層間剥離、または引っ張り(pulls);レンズが誤ったモールド部品に付着すること、光学的歪み;ならびに、表面きず(surface marks)を含む場合がある。
【0006】
そのため、型外し(demold)の間にコンタクトレンズにかかる物理的応力を最小限にし、結局はそのような応力の結果として生じるレンズ欠陥を減らす、モールド材料を有することが望ましい。
【0007】
〔概要〕
したがって、本発明は、眼用レンズの創造に有用な、改善されたモールドおよびプロセスを含んでいる。本発明に従えば、レンズ形成用混合物が、2つまたはそれ以上のモールド部品により形成された所望の形状の空隙において硬化される。モールド部品の少なくとも1つは、熱可塑性エラストマーを含む材料からモールド成型される。この空隙は、眼用レンズの形状およびサイズにされることができ、第1のモールド部品および第2のモールド部品のうちの少なくとも一方は、レンズ形成用表面を含むことができる。
【0008】
ある実施形態は、重合可能なレンズ形成用混合物が空隙に堆積されることができ、そして、モールド部品および重合可能な配合物が重合開始用放射線(polymerization initiating radiation)に曝されることができるように、モールド部品の少なくとも1つが重合開始用放射線に対して透明であることを含むことができる。
【0009】
本発明は、眼用レンズ製造のためのモールド、および眼用レンズをモールド成型する方法を含んでおり、レンズ形成用混合物が、2つまたはそれ以上のモールド部品によって形成された所望の形状の空隙において硬化され、モールド部品のうちの少なくとも1つは、化合した熱的可塑性樹脂(thermal plastic resin compounded)および熱的可塑性エラストマーの化合物を含んでいる。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のモールド部品が、凹状表面を含み、第2のモールド部品が、凸状表面を含み、少なくとも第2のモールド部品が、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含んでいる。
【0011】
他の側面において、いくつかの実施形態では、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された少なくとも1つのモールド部品が、Owens-Wendt法およびZisman法のうちの1つまたはそれ以上で決定されたときに、30mN/m未満、またはさらには26mN/m未満の表面エネルギーを含んでいる。
【0012】
さらなる他の側面は、約99°を超える脱イオン水の接触角を備えた、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型されたモールド部品を含んでいる。
【0013】
熱的可塑性エラストマーは、スチレンエチレンブチレン;スチレンエチレンプロピレン;およびスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマーを含む群のうちの1つまたはそれ以上といった、スチレンブロックコポリマーを含むことができる。モールド材料は、約5重量%〜75重量%の熱的可塑性エラストマーを含むことができ、いくつかの好ましい実施形態では、約10重量%〜50重量%の熱的可塑性エラストマーを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂が、21g/10分未満のメルトフローレートを有するポリオレフィンを含むことができ、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂が、約21g/10分を超えるメルトフローレートを有する。
【0015】
また、ある実施形態は、未硬化のレンズ組成物を、熱可塑性エラストマーを含む樹脂から形成されたモールド部品の表面上に分配し、特定のレンズ組成物に好適な条件下で、かかるレンズ組成物を硬化させることにより、眼用レンズを生成する方法を含んでいる。レンズは、例えば、シリコーンヒドロゲル組成物、またはヒドロゲル組成物を含むことができる。特別な例は、acquafilcon A、balafilcon A、およびlotrafilcon A、etafilcon A、genfilcon A、lenefilcon A、polymaconおよびgalyfilcon A、ならびにsenofilcon Aから形成されたレンズを含むことができる。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、眼用レンズを作製するためのモールドおよび方法を含んでいる。本発明に従うと、眼用レンズの製造において使用されることができる複数部品モールドの少なくとも1つの部品が、熱的可塑性エラストマー(以下、「TPE」と称される)と化合された熱的可塑性樹脂(以下、「TPR」と称される)から、射出成形されるか、または形作られる。本明細書中で使用される、ある一つの例示的なTPEは、特には、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(以下、「SEBS」と称される)という特別な水素化されたスチレン系ブロックコポリマー(special hydrogenated styrenic block copolymer)を含む。さらなる他の実施形態は、特別なオレフィンおよびブロックコポリマーを含むことができる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、TPRおよびTPEの化合物を含む眼用レンズモールドは、結果として、約25mN/m以下のコーティングされていない眼用レンズモールドのモールド表面エネルギーを生じることができる。したがって、本発明の方法は、約25mN/m以下のコーティングされていない表面エネルギーを有する1つまたはそれ以上のモールド部品を備えたモールドから眼用レンズを形作ることを含んでいる。
【0018】
他の側面において、TPRおよびTPEの化合物を含む眼用レンズモールドは、結果として、約97.5°以上のコーティングされていない眼用レンズモールドの脱イオン水の接触角を生じることができ、本発明の方法は、約97.5°以上の脱イオン水のコーティングされていない接触角を有する1つまたはそれ以上のモールド部品を備えたモールドから眼用レンズを形作ることを含むことができる。
【0019】
さらなる実施形態は、熱線膨張係数(thermal linear expansion coefficient)を1%以上上昇させるのに有効なTPEの量を備えた、一方または両方の眼用レンズモールド部品を形作るのに使用される熱的可塑物(thermal plastic)の熱線膨張係数を増大させることを含む。
【0020】
眼用レンズを形成するためのモールド部品は、熱可塑性エラストマー樹脂から射出成形される。射出成形用装置は、典型的には、例えば、黄銅、ステンレス鋼、もしくはニッケル、またはそれらのいずれかの組み合わせといった金属から機械加工された精密工具を含むであろう。典型的には、工具は、所望の形状に形作られ、精密表面品質に到達するように機械加工されるか、または研磨加工される。精密表面が、次にこの表面から射出成形されるモールド部品の品質を向上させる。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、モールド部品は、眼用レンズの製造の助けとなる改善された特性を備えた、使い捨て注型(single use cast molds)を作成するために、熱可塑性ポリオレフィンとの熱可塑性エラストマーのブレンドから形作られる。熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性ポリオレフィン材料のブレンドを含むモールドを用いる利点は、型外しの結果として生じる、穴、欠け、および裂けといったレンズ欠陥の数が減ることを含むと共に、レンズが形成されるモールド部品からの取り外しが改善されることも含む。TPEを含んでいるモールド材料から形作られる一方または両方のモールド部品を使用することで、レンズ製造の間に、レンズが攻撃(aggression)に曝されるのがより少なくなる。
【0022】
<レンズ>
本明細書中で使用される「レンズ」は、眼の中、または眼の上に留まる、あらゆる眼用デバイスをさしている。これらのデバイスは、光学的矯正を提供することができるか、あるいは、美容のためのものであってもよい。例えば、レンズという用語は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼球インサート、光学インサート、またはその他の類似のデバイスをさすことができ、その他の類似のデバイスとは、このデバイスを通して、視力が矯正されるか、または改善されるもの、あるいは、このデバイスを通して、眼の生理機能(eye physiology)が、視力を妨害することなく、美容的に向上される(例えば、虹彩の色)ものである。
【0023】
本明細書中で使用される用語「レンズ形成用混合物」は、眼用レンズを形成するために、反応し得るか、または硬化されることができる材料の混合物をさしている。そのような混合物は、重合可能な成分(モノマー)、UV遮断剤および色味剤(tints)といった添加物、光重合開始剤(photoinitiators)もしくは触媒、または、コンタクトレンズもしくは眼内レンズといった眼用レンズに望ましいであろう、その他の添加物を含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、好ましいレンズタイプは、シリコーン/親水性マクロマー(silicone/hydrophilic macromers)、シリコーン系モノマー、開始剤、および添加物を含むものを含めた、例えば、シリコーンヒドロゲル、フルオロヒドロゲルといった、シリコーンエラストマーまたはヒドロゲルから作製されるレンズを含むことができる。非限定的な例として、いくつかの好ましいレンズタイプはまた、etafilcon A、genifilcon A、lenefilcon A、polymacon、acquafilcon A、balafilcon A、lotrafilcon A、galyfilcon A、senofilcon A、シリコーンヒドロゲルを含むことができる。
【0025】
<モールド>
ここで図1を参照すると、眼用レンズのための例示的なモールドの図が示されている。本明細書中で使用される用語「モールド」および「モールド組立体」は、空隙105を有する型100をさしており、空隙105には、レンズ形成用混合物が、レンズ形成用混合物(図示されていない)の反応または硬化により、所望の形状の眼用レンズが生成されるように、分配されることができる。本発明のモールドおよびモールド組立体100は、2つ以上の「モールド部品」または「モールド片(mold pieces)」101−102で作り上げられている。モールド部品101−102は、空隙105が、モールド部品101−102の間に形成されるように、組み合わされることができ、この空隙105において、レンズが形成されることができる。このモールド部品101−102の組み合わせは、好ましくは一時的なものである。レンズを形成すると、モールド部品101−102は、レンズの除去のために再び分離されることができる。
【0026】
少なくとも一方のモールド部品101−102は、少なくとも、レンズ形成用混合物に接触する表面103−104の部分を有しており、レンズ形成用混合物の反応または硬化により、その表面103−104は、その表面が接触しているレンズの部分に所望の形状および形態を提供するようになっている。同じことが、少なくとも他方のモールド部品101−102にも当てはまる。
【0027】
そのため、例えば、好ましい実施形態では、モールド組立体100は、2つの部品101−102、すなわち、これらの間に形成される空隙を備えた、凹状雌片(前側片)102および凸状雄片(後側片)101から形成されている。レンズ形成用混合物との接触をなす凹状表面104の部分は、モールド組立体100において生成されるべき眼用レンズの前側湾曲部の曲率を有しており、また、十分に滑らかで、凹状表面104と接触しているレンズ形成用混合物の重合により形成される眼用レンズの表面が光学的に許容可能になるように形成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、前側モールド片102はまた、輪状の周囲縁部108と一体であって、周囲縁部108を取り囲んでいる環状フランジも有することができ、軸に対して垂直で、フランジ(図示されていない)から延びる平面において、周囲縁部108から延びている。
【0029】
後側モールド片101は、凹状表面106、凸状表面103、および輪状の周囲縁部107を備えた中央湾曲セクションを有しており、レンズ形成用混合物に接触する凸状表面103の部分は、モールド組立体100において生成されるべき眼用レンズの後側湾曲部の曲率を有しており、十分に滑らかで、後側表面103に接触しているレンズ形成用混合物の反応または硬化により形成される眼用レンズの表面が光学的に許容可能になるように形成されている。したがって、前側モールド半部102の内側凹状表面104は、眼用レンズの外側表面を定め、一方、基部モールド半部(base mold half)101の外側凸状表面103は、眼用レンズの内側表面を定める。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、モールド100は、前述されたように2つのモールド部品101−102を含むことができ、モールド100の前側湾曲部部品102および後側湾曲部部品101の一方または両方は、TPEを含んでいる材料で作製されている。好ましい実施形態は、熱可塑性物(thermoplastic)と化合したTPEを含んでいるモールド材料を含んでいる。
【0031】
本発明に従う眼用レンズ材料として有用なTPEは、非限定的な例として、以下のように定義されることができる、SEBS、SEP、SEPS、SEEPS、SBS、SISといった、スチレンブロックコポリマーのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【化1】
【0032】
したがって、詳細な例は、Asahi KAESI(TUFTEC(商標))、SEPTON Company of America(SEPTON(商標))、およびKraton Polymers(Kraton(登録商標))からのスチレンブロックコポリマーを含んでもよい。
【0033】
追加の非限定的な例として、オレフィン系TPEは、ExxonMobilからのVistamaxx(商標)、およびMitsui Chemicals AmericaからのTAFMER(登録商標)Alpha-Olefin Copolymerを含むことができ、Dow Chemicalからの「INFUSE(商標)(オレフィンブロックコポリマー)は、オレフィン系エラストマーともみなされる。
【0034】
TPEと化合することができる熱可塑性物は、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、および脂環式ポリマーのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂は、少なくとも1つの飽和環状炭素を中に有する化合物をさす脂環式ポリマーを含むことができる。飽和環状炭素は、水素、C110アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、シリル、ならびに、置換基がハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーから選択される置換C110アルキルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーで置換されてもよい。脂環式ポリマーの例は、限定されるものではないが、重合可能な、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビスシクロブタン、ビスシクロペンタン、ビスシクロヘキサン、ビスシクロヘプタン、ビスシクロオクタン、およびノルボルナンを含む。少なくとも2つの脂環式ポリマーが、開環複分解後の水素化により重合することが、好ましい。コポリマーは高価なので、これらのコポリマーから作製されたモールドは、レンズを調製するために、典型的には1回であるところを代わりに複数回使用されてもよいことが好ましい。本発明の好ましいモールドについて、モールドは、レンズを生成するために2回以上使用されてもよい。
【0036】
より特別には、飽和環状炭素を含有する脂環式ポリマーの例は、限定されるものではないが、下記の構造を含む。
【化2】
ここで、R1_6は、独立して、水素、C110アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、シリル、ならびに、置換基がハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーから選択される置換C110アルキルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーから選択される。さらに、R1−6のうちの2つまたはそれ以上は、一緒になって、不飽和結合、環状炭素、1つまたはそれ以上の不飽和結合を含有する環状炭素、あるいは芳香環を形成してもよい。好ましいR16は、C110アルキル、ならびに、置換基がハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリルからなる群から選択される置換C110アルキルからなる群より選択される。
【0037】
脂環式コポリマーは、少なくとも2つの異なる脂環式ポリマーからなる。好ましい脂環式コポリマーは、下記からなる群より選択される2つまたは3つの異なる脂環式ポリマーを含有する。
【化3】
【0038】
特に好ましい脂環式コポリマーは、2つの異なる脂環式モノマーを含有し、脂環式ポリマーの飽和環状炭素の一般構造(generic structure)は、下記の式であり、
【化4】
R1R4は、C110アルキルである。
【0039】
典型的には、脂環式コポリマーの表面エネルギーは、25℃で28〜45ダイン/cm(28×10−5〜45×10−5N/cm)である。好ましい脂環式コポリマーは、2つの異なる脂環式ポリマーを含有し、ZEONORという商品名でZeon Chemicals L.P.より販売されている。いくつかの異なるグレードのZEONORがある。種々のグレードは、70℃〜160℃の範囲にわたるガラス転移温度を有し得る。特に好ましい材料は、ZEONOR 1060Rであり、これは、製造者ZEON Chemicals L.P.に従うと、11.0グラム/10分〜18.0グラム/10分(JISK 6719(230℃)でテストされたとき)のメルトフローレート(「MFR」)範囲と、1.01の比重(H2O=1)と、100℃のガラス転移温度とを有する。Zeonor 1060RといったTPRとTPEとを組み合わせることで、結果として、より大きいメルトフローレートを有するTPRとTPEとの化合物を生じることができる。したがって、例えば、TPEと組み合わされた約21g/10分のメルトフローレートを有するTPRは、約21g/10分よりも大きいメルトフローを有することができる。
【0040】
眼用レンズモールドを形成するためにTPEがブレンドされることができるその他のモールド材料は、例えば、Zieglar-Nattaポリプロピレン樹脂(時にはznPPと称される)を含む。ある例示的なZieglar-Nattaポリプロピレン樹脂は、PP 9544 MEDという名称で入手可能である。PP 9544 MEDは、ExxonMobile Chemical Companyより入手可能になった、FDA規制(FDA regulation)21 CFR (c)3.2による清浄モールド成型(clean molding)のための清澄ランダムコポリマーである。PP 9544 MEDは、エチレン群とのランダムコポリマー(znPP)である(以下、9544 MED)。その他の例示的なZieglar-Nattaポリプロピレン樹脂は、Atofina Polypropylene 3761、およびAtofina Polypropylene 3620WZを含む。
【0041】
いくつかの好ましい、本発明に従うモールド100を作製する方法では、射出成形が、既知の技術に従って利用されるが、ある実施形態はまた、例えば、旋盤加工(lathing)、ダイアモンド旋削、またはレーザー切断を含めたその他の技術により形作られるモールドを含むこともできる。
【0042】
典型的には、レンズは、両方のモールド部品101−102の少なくとも1つの表面上で形成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、レンズの一方の表面は、モールド部品101−102から形成されてよく、他方のレンズ表面は、旋盤加工法またはその他の方法を用いて形成されることができる。
【0043】
本明細書中で使用される「レンズ形成用表面」は、レンズをモールド成型するために使用される表面103−104を意味している。いくつかの実施形態では、いずれのそのような表面103−104も、光学的品質表面仕上げを有することができ、光学的品質表面仕上げとは、十分に滑らかであり、モールド成型用表面に接触しているレンズ形成用材料の重合によって形作られるレンズ表面が光学的に許容可能になるように形成されていることを示す。さらに、いくつかの実施形態では、レンズ形成用表面103−104が、限定するものではないが、球面屈折力、非球面屈折力、および円柱屈折力(cylinder power)、波面収差の矯正、角膜微細形態の矯正などと共に、これらの任意の組み合わせを含めた、所望の光学的特性をレンズ表面に付与するのに必要である、幾何学構造(geometry)を有することができる。
【0044】
<方法>
ここで図2を参照すると、本発明のいくつかの実施形態は、以下に説明されるステップを含む、本質的に以下に説明されるステップからなる、または、以下に説明されるステップからなる眼用レンズを作製する方法を含んでいる。ステップ201では、例えばSEBSといった、TPEと化合したTPRを含む樹脂が、可塑化され、射出成形プロセスでの使用のために準備される。射出成形技術は、よく知られており、典型的には、融点を超えて樹脂ペレットを加熱することを包含する。
【0045】
ステップ202では、可塑化された樹脂が、眼用レンズモールド部品101−102を造るために好適な形状にされた射出成形モールド(injection mold)に注入される。ステップ203では、この射出成形モールドが典型的には、例えば、用いられる樹脂、ならびにモールド部品の形状およびサイズに依存し得る、適切な長さの時間、パックの中に保持状態(hold status)で置かれる。ステップ204では、形成されたモールド部品101−102が、冷却され、ステップ205では、モールド部品101−102が、射出成形モールドから駆出されるか、あるいは取り除かれることができる。
【0046】
ここで図3を参照すると、本発明のいくつかの実施形態は、以下のステップを含む、本質的に以下のステップからなる、または以下のステップからなる、眼用レンズを作製する方法を含んでいる。ステップ301では、TPEと化合したTPRを含めたものを含むか、本質的にそのようなものからなるか、またはそのようなものからなる、1つまたはそれ以上のモールド部品101−102が造られる。ステップ302では、未硬化のレンズ組成物が、1つまたはそれ以上のモールド部品101−102の上に分配され、ステップ303では、レンズ組成物が、好適な条件下で硬化される。追加のステップとしては、例えば、硬化したレンズが、モールド部品101−102から外れるまで、硬化したレンズを水和させること、およびレンズから急性眼球不快薬剤(acute ocular discomfort agents)を浸出させることを含むことができる。
【0047】
本明細書中で使用される用語「未硬化の」は、レンズを作製するためのレンズ組成物の最終的な硬化の前の、レンズ組成物の物理的な状態をさしている。いくつかの実施形態では、レンズ組成物は、1回だけ硬化したモノマーの混合物を含有することができる。その他の実施形態は、モノマー、部分的に硬化したモノマー、マクロマー、およびその他の成分を含有する、部分的に硬化したレンズ組成物を含むことができる。
【0048】
本明細書中で使用される句「好適な条件下での硬化」は、硬化したレンズを生成するために、光、熱、および適切な触媒を用いるといった、レンズ組成物を硬化する任意の好適な方法をさしている。いくつかの詳細な例では、光は、紫外光を含むことができる。硬化は、レンズ形成用混合物をケーシング(case)して重合させるのに十分な化学作用を有する放射線に対する、レンズ形成用混合物のあらゆる曝露を含むことができる。
【0049】
<添加物>
TPRおよびTPEの他に、本発明のモールドは、レンズ形成用表面の分離を促進するか、モールド成型用表面に対する硬化したレンズの付着を減らすか、またはその両方を行う添加物を含有してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、好ましい添加物が、ポリビニルピロリジノン(polyvinyl pyrrolidinone)、ステアリン酸亜鉛、およびグリセロールモノステアレート(glycerol mono stearate)を含むことができ、ポリマーの総重量に基づく添加物の重量割合は、約0.05〜約10.0重量%、好ましくは、約0.05〜約3.0重量%、最も好ましくは、約1.0〜2.0重量%である。
【0051】
<界面活性物質>
TPRおよびTPEのブレンドに加えて、一方または両方のレンズ形成用表面103−104からの形成されたレンズの取り外しは、レンズ形成用表面103−104のうちの1つまたはそれ以上に界面活性物質を適用することにより促進されてもよい。好適な界面活性物質の例は、Tween界面活性物質、特にはTween 80を含むことができる。
【0052】
<比較上のモールド品質>
ここで図4を参照すると、TPRおよびTPEを含んでいる化合物から形作られた、いくつかのモールドを含む、モールド材料の表面エネルギー特性を図示する、チャート400が提供されている。チャート400に関連したデータは、表1として本明細書中に含まれている。チャート400および表1に示されているように、これらの例で使用された例示的なTPEは、TUFTEC(商標)H1051、H1052および1062を含んでおり、これら両方共、全て水素化されたスチレン/ジエンブロックTPEであり、Asahi Kasei K.K.により製造されている。
【0053】
モールド部品を示している軸402は、Zeonor 1060Rから作製されたモールド部品403−404と、polypropylene 2から作製されたモールド部品410とを含んでおり、これらは各々TPE無しで試験されたものである。Zeonor 1060Rは加えて、種々の量のTPEで試験された。TPE無しのZeonor 1060Rサンプル403−404は、表面エネルギーを試験するためのZisman法、またはOwens-Wendt法のいずれを用いても、28mN/mを超える表面エネルギーを示した。TPE無しのpolypropylene 2サンプル410は、表面エネルギーを試験するためのZisman法、またはOwens-Wendt法のいずれを用いても、30mN/mを超える表面エネルギーを示した。
【0054】
TPEと化合されると、Zeonor 1060Rサンプルの表面エネルギーは、有意に減少した。約50%のZeonor 1060R、および約50%のTPE(H1051)のモールド材料は、結果として、25mN/mの範囲にある表面エネルギー特性を生じた。
【0055】
【表1】
【0056】
表面エネルギーに加えて、Zeonor 1060Rから形作られたモールド部品について、接触角の測定値を記録した。TPEを含んでいたこれらの部品は、より大きい接触角を示した。約50%のZeonor 1060R、および約50%のTuftec H1051から形作られたモールド部品は、結果として、約104.2の水の接触角を生じた。この結果は、TPE無しで形作られた部品と比較して、有意な増加である。
【0057】
【表2】
【0058】
減少したモールド表面エネルギーは、レンズの改善された型外しを促進し(型外しプロセスに間に裂けおよび引っ張りに起因する損傷を受けるレンズがより少ない)、加えて、型外し後にレンズが付着したまま残るモールド部品からの改善された取り外しを促進する。レンズは典型的には、水溶液に対するレンズおよびモールド部品の曝露を含むプロセスを通して、取り外される。ポリオレフィンモールド材料中にSEBSを含ませることにより、60%を超えるだけ、平均レンズ取り外し回数が減った。90%を上回るレンズ取り外し割合が、5%〜50%のTPEを含んでいる化合物で発生した。
【0059】
ここで図5を参照すると、ボックス・プロット・チャート500が、DI水接触角501と、環式オレフィンコポリマー(「COC」)のTPRと組み合わされた種々の量のTPEを備えたモールド材料502との間の関係性を図示している。このチャートに示されているように、本発明に従うと、直接的な関係性が、DI水の接触角501と、COCに対して約50%のTPEの比率までのモールド化合物に含まれるTPEの量との間で得られることができる。COCに対して50%TPEのボックス・プロット503は、約100のDI水の接触角を示し、最も高いボックス・プロット値503を含んでいる。0%TPEのCOCは、約96%のボックス・プロットを示し、最も低いボックス・プロット値504を含んでいる。示しているように、本発明に従うと、その他の比率値は、これら2つの間に集まっている。
【0060】
コンタクトレンズ製造に関連した側面において、型外しに関連したレンズ収率は、モールド部品101−102中にSEBSを含ませることにより増加した。レンズ収率は、レンズにおける欠けおよび裂けの発生率の減少、およびレンズ上の表面きず付け(surface markings)の削減に起因して、増えた。
【0061】
さらなる他の側面において、モールド部品101−102の高い品質、および射出成形プロセスの速いサイクル時間を維持するために、Zeonor 1060RといったポリオレフィンとのTUFTEC(商標)H1051(SEBS)の好ましいブレンド比率は、約50重量%以下であり、いくつかの実施形態では、Zeonor 1060RとのTUFTEC(商標)H1051(SEBS)の含む比率は、約25重量%以下であり、さらにその他では、TUFTEC(商標)H1051(SEBS)およびZeonor1060Rのブレンド比率は、約12.5重量%以下である。
【0062】
TUFTEC(商標)H1051は、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)に対する、Asahi Kaesi K.K.の商品名である。SEBS、すなわち特別なオレフィンおよびブロックコポリマーは、エラストマーの一種であり、いくつかの実施形態では、SEBSは、非晶質ポリマーを含んでいる。全般的に、本明細書中、例示的なデータを生み出しているサンプルで利用されたTUFTEC(商標)H1051のサンプルは、〜42%のスチレンユニットと、〜58%のエチレン−ブタジエン(EB)ユニットとを含有している。TUFTEC(商標)H1051の二つの(2)ガラス転移温度(Tg)がある。スチレンユニット(硬質セグメント)のTgは、96℃であり、EBユニット(軟質セグメント)のTgは、−43℃である。SEBSブロックコポリマーは、現在、商業的に入手可能なTPEである。
【0063】
その他の実施形態において、熱可塑性エラストマーはスチレンブロックを含むことができ、スチレンブロックは、非限定的な例として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SIBS)、またはそれぞれのコポリマーの水素化されたコポリマーを含む。言い換えると、スチレンブロックを含有する熱可塑性エラストマーは、SBS、水素化されたSBS、SIS、水素化されたSIS、SIBS、または水素化されたSIBSとすることができる。水素化されたSBSとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)が使用され得る。水素化されたSISとしては、例えば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)が使用され得る。水素化されたSIBSとしては、例えば、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)が使用され得る。水素化されたSEPとしては、例えば、スチレン−エチレン−プロピレンブロックコポリマーが使用されてよい。
【0064】
スチレンブロック(成分C)を含有する熱可塑性エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、水素化されたSBS、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、水素化されたSIS、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SIBS)、水素化されたSIBS、またはポリオレフィンで形成されたポリマーアロイとすることができる。ここで、ポリマーアロイは、上述されたSBSなどといったブロックコポリマーとポリオレフィンとのブレンドであるか、または、上述されたブロックコポリマーと、ポリマー鎖の構成物としてのポリオレフィンとを含んでいるポリマーであるか、のいずれかである。
【0065】
好ましくは、スチレンブロックを含有する熱可塑性エラストマーは、約95以下、いくつかの実施形態では60以下のショアーA硬度(shore A hardness)を有することができる。ショアーA硬度を決定するための好ましい試験法としては、JIS K6253およびISO 48の試験法を含む。
【0066】
<結論>
本発明は、前述されたように、また、以下の請求項によりさらに定められるように、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂から形作られたモールド部品101−102を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明のある実施形態に従うモールド組立体を図示している。
【図2】図2は、モールド部品を造るために本発明のある実施形態を実行する際に行われることができる例示的なステップのフローチャートを図示している。
【図3】図3は、眼用レンズを造るために本発明のある実施形態を実行する際に行われることができる例示的なステップのフローチャートを図示している。
【図4】図4は、熱可塑性エラストマーから形作られたモールドの表面エネルギー品質を示している例示的なデータを図示している。
【図5】図5は、熱可塑性エラストマーから形作られたモールドの接触角品質を示している例示的なデータを図示している。
【開示の内容】
【0001】
〔使用の分野〕
本発明は、コンタクトレンズの生成に有用な熱可塑性エラストマーを備えたモールド、およびそれらモールドの使用のための方法を記述している。
【0002】
〔背景〕
コンタクトレンズが視力を改善するために使用され得ることは、よく知られていることである。種々のコンタクトレンズが、何年もの間、商業的に生成されて来た。初期の設計のコンタクトレンズは、硬質材料から形作られていた。これらのレンズは、あるいくつかの適用では現在もまだ使用されているが、これらのレンズは、快適さに乏しく、酸素に対する透過率が比較的低いことから、全ての患者に好適であるというわけではない。本分野における後の開発により、ヒドロゲルに基づいたソフトコンタクトレンズが生じた。
【0003】
ヒドロゲルコンタクトレンズは、評判がよく、多くの場合、硬質材料から作製されたコンタクトレンズよりも着用するのにより快適である。ヒドロゲルから作製される展性(Malleable)のソフトコンタクトレンズは、複数部品モールド(組み合わされた部品が、所望の最終レンズに一致した微細形態(topography)を形成する)内でレンズを形成することにより製造されることができる。
【0004】
眼用レンズ(Ophthalmic lenses)は、多くの場合、流し込み成形により作製され、流し込み成形では、モノマー材料が、対向するモールド部品の光学表面の間に画定された空隙内に堆積される。眼用レンズといった有用な物品へとヒドロゲルを形作るのに使用される複数部品モールドは、例えば、眼用レンズの後側湾曲部に対応する凸状部分を備えた第1のモールド部品と、眼用レンズの前側湾曲部に対応する凹状部分を備えた第2のモールド部品とを含むことができる。そのようなモールド部品を使用してレンズを調製するには、未硬化のヒドロゲルレンズ組成物が、前側湾曲部モールド部品と後側湾曲部モールド部品との間に置かれる。レンズ組成物を所望のレンズパラメータに従う形状にするために、これらのモールド部品が組み合わされる。伝統的に、レンズ組成物を貫通してレンズ組成物をレンズ部分と余剰のリング部分とに切り分ける(incises)モールド部品へと形成された縁部を圧縮することにより、形成されたレンズの周囲の周りにレンズ縁部が形成された。レンズ組成物は引き続き、例えば熱および光への曝露によって硬化され、これによりレンズを形成する。
【0005】
硬化の後で、モールド部分は分離され、レンズが、モールド部分の一方に付着したまま残る。レンズおよび余剰のポリマーリングが分離されなければならず、余剰のポリマーリングは、廃棄されなければならない。モールド分離の間に、レンズの損傷が起きることがある。損傷としては、例えば、縁部の欠け、および裂け;穴;レンズの層間剥離、または引っ張り(pulls);レンズが誤ったモールド部品に付着すること、光学的歪み;ならびに、表面きず(surface marks)を含む場合がある。
【0006】
そのため、型外し(demold)の間にコンタクトレンズにかかる物理的応力を最小限にし、結局はそのような応力の結果として生じるレンズ欠陥を減らす、モールド材料を有することが望ましい。
【0007】
〔概要〕
したがって、本発明は、眼用レンズの創造に有用な、改善されたモールドおよびプロセスを含んでいる。本発明に従えば、レンズ形成用混合物が、2つまたはそれ以上のモールド部品により形成された所望の形状の空隙において硬化される。モールド部品の少なくとも1つは、熱可塑性エラストマーを含む材料からモールド成型される。この空隙は、眼用レンズの形状およびサイズにされることができ、第1のモールド部品および第2のモールド部品のうちの少なくとも一方は、レンズ形成用表面を含むことができる。
【0008】
ある実施形態は、重合可能なレンズ形成用混合物が空隙に堆積されることができ、そして、モールド部品および重合可能な配合物が重合開始用放射線(polymerization initiating radiation)に曝されることができるように、モールド部品の少なくとも1つが重合開始用放射線に対して透明であることを含むことができる。
【0009】
本発明は、眼用レンズ製造のためのモールド、および眼用レンズをモールド成型する方法を含んでおり、レンズ形成用混合物が、2つまたはそれ以上のモールド部品によって形成された所望の形状の空隙において硬化され、モールド部品のうちの少なくとも1つは、化合した熱的可塑性樹脂(thermal plastic resin compounded)および熱的可塑性エラストマーの化合物を含んでいる。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のモールド部品が、凹状表面を含み、第2のモールド部品が、凸状表面を含み、少なくとも第2のモールド部品が、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含んでいる。
【0011】
他の側面において、いくつかの実施形態では、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された少なくとも1つのモールド部品が、Owens-Wendt法およびZisman法のうちの1つまたはそれ以上で決定されたときに、30mN/m未満、またはさらには26mN/m未満の表面エネルギーを含んでいる。
【0012】
さらなる他の側面は、約99°を超える脱イオン水の接触角を備えた、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型されたモールド部品を含んでいる。
【0013】
熱的可塑性エラストマーは、スチレンエチレンブチレン;スチレンエチレンプロピレン;およびスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマーを含む群のうちの1つまたはそれ以上といった、スチレンブロックコポリマーを含むことができる。モールド材料は、約5重量%〜75重量%の熱的可塑性エラストマーを含むことができ、いくつかの好ましい実施形態では、約10重量%〜50重量%の熱的可塑性エラストマーを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂が、21g/10分未満のメルトフローレートを有するポリオレフィンを含むことができ、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂が、約21g/10分を超えるメルトフローレートを有する。
【0015】
また、ある実施形態は、未硬化のレンズ組成物を、熱可塑性エラストマーを含む樹脂から形成されたモールド部品の表面上に分配し、特定のレンズ組成物に好適な条件下で、かかるレンズ組成物を硬化させることにより、眼用レンズを生成する方法を含んでいる。レンズは、例えば、シリコーンヒドロゲル組成物、またはヒドロゲル組成物を含むことができる。特別な例は、acquafilcon A、balafilcon A、およびlotrafilcon A、etafilcon A、genfilcon A、lenefilcon A、polymaconおよびgalyfilcon A、ならびにsenofilcon Aから形成されたレンズを含むことができる。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、眼用レンズを作製するためのモールドおよび方法を含んでいる。本発明に従うと、眼用レンズの製造において使用されることができる複数部品モールドの少なくとも1つの部品が、熱的可塑性エラストマー(以下、「TPE」と称される)と化合された熱的可塑性樹脂(以下、「TPR」と称される)から、射出成形されるか、または形作られる。本明細書中で使用される、ある一つの例示的なTPEは、特には、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(以下、「SEBS」と称される)という特別な水素化されたスチレン系ブロックコポリマー(special hydrogenated styrenic block copolymer)を含む。さらなる他の実施形態は、特別なオレフィンおよびブロックコポリマーを含むことができる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、TPRおよびTPEの化合物を含む眼用レンズモールドは、結果として、約25mN/m以下のコーティングされていない眼用レンズモールドのモールド表面エネルギーを生じることができる。したがって、本発明の方法は、約25mN/m以下のコーティングされていない表面エネルギーを有する1つまたはそれ以上のモールド部品を備えたモールドから眼用レンズを形作ることを含んでいる。
【0018】
他の側面において、TPRおよびTPEの化合物を含む眼用レンズモールドは、結果として、約97.5°以上のコーティングされていない眼用レンズモールドの脱イオン水の接触角を生じることができ、本発明の方法は、約97.5°以上の脱イオン水のコーティングされていない接触角を有する1つまたはそれ以上のモールド部品を備えたモールドから眼用レンズを形作ることを含むことができる。
【0019】
さらなる実施形態は、熱線膨張係数(thermal linear expansion coefficient)を1%以上上昇させるのに有効なTPEの量を備えた、一方または両方の眼用レンズモールド部品を形作るのに使用される熱的可塑物(thermal plastic)の熱線膨張係数を増大させることを含む。
【0020】
眼用レンズを形成するためのモールド部品は、熱可塑性エラストマー樹脂から射出成形される。射出成形用装置は、典型的には、例えば、黄銅、ステンレス鋼、もしくはニッケル、またはそれらのいずれかの組み合わせといった金属から機械加工された精密工具を含むであろう。典型的には、工具は、所望の形状に形作られ、精密表面品質に到達するように機械加工されるか、または研磨加工される。精密表面が、次にこの表面から射出成形されるモールド部品の品質を向上させる。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、モールド部品は、眼用レンズの製造の助けとなる改善された特性を備えた、使い捨て注型(single use cast molds)を作成するために、熱可塑性ポリオレフィンとの熱可塑性エラストマーのブレンドから形作られる。熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性ポリオレフィン材料のブレンドを含むモールドを用いる利点は、型外しの結果として生じる、穴、欠け、および裂けといったレンズ欠陥の数が減ることを含むと共に、レンズが形成されるモールド部品からの取り外しが改善されることも含む。TPEを含んでいるモールド材料から形作られる一方または両方のモールド部品を使用することで、レンズ製造の間に、レンズが攻撃(aggression)に曝されるのがより少なくなる。
【0022】
<レンズ>
本明細書中で使用される「レンズ」は、眼の中、または眼の上に留まる、あらゆる眼用デバイスをさしている。これらのデバイスは、光学的矯正を提供することができるか、あるいは、美容のためのものであってもよい。例えば、レンズという用語は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼球インサート、光学インサート、またはその他の類似のデバイスをさすことができ、その他の類似のデバイスとは、このデバイスを通して、視力が矯正されるか、または改善されるもの、あるいは、このデバイスを通して、眼の生理機能(eye physiology)が、視力を妨害することなく、美容的に向上される(例えば、虹彩の色)ものである。
【0023】
本明細書中で使用される用語「レンズ形成用混合物」は、眼用レンズを形成するために、反応し得るか、または硬化されることができる材料の混合物をさしている。そのような混合物は、重合可能な成分(モノマー)、UV遮断剤および色味剤(tints)といった添加物、光重合開始剤(photoinitiators)もしくは触媒、または、コンタクトレンズもしくは眼内レンズといった眼用レンズに望ましいであろう、その他の添加物を含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、好ましいレンズタイプは、シリコーン/親水性マクロマー(silicone/hydrophilic macromers)、シリコーン系モノマー、開始剤、および添加物を含むものを含めた、例えば、シリコーンヒドロゲル、フルオロヒドロゲルといった、シリコーンエラストマーまたはヒドロゲルから作製されるレンズを含むことができる。非限定的な例として、いくつかの好ましいレンズタイプはまた、etafilcon A、genifilcon A、lenefilcon A、polymacon、acquafilcon A、balafilcon A、lotrafilcon A、galyfilcon A、senofilcon A、シリコーンヒドロゲルを含むことができる。
【0025】
<モールド>
ここで図1を参照すると、眼用レンズのための例示的なモールドの図が示されている。本明細書中で使用される用語「モールド」および「モールド組立体」は、空隙105を有する型100をさしており、空隙105には、レンズ形成用混合物が、レンズ形成用混合物(図示されていない)の反応または硬化により、所望の形状の眼用レンズが生成されるように、分配されることができる。本発明のモールドおよびモールド組立体100は、2つ以上の「モールド部品」または「モールド片(mold pieces)」101−102で作り上げられている。モールド部品101−102は、空隙105が、モールド部品101−102の間に形成されるように、組み合わされることができ、この空隙105において、レンズが形成されることができる。このモールド部品101−102の組み合わせは、好ましくは一時的なものである。レンズを形成すると、モールド部品101−102は、レンズの除去のために再び分離されることができる。
【0026】
少なくとも一方のモールド部品101−102は、少なくとも、レンズ形成用混合物に接触する表面103−104の部分を有しており、レンズ形成用混合物の反応または硬化により、その表面103−104は、その表面が接触しているレンズの部分に所望の形状および形態を提供するようになっている。同じことが、少なくとも他方のモールド部品101−102にも当てはまる。
【0027】
そのため、例えば、好ましい実施形態では、モールド組立体100は、2つの部品101−102、すなわち、これらの間に形成される空隙を備えた、凹状雌片(前側片)102および凸状雄片(後側片)101から形成されている。レンズ形成用混合物との接触をなす凹状表面104の部分は、モールド組立体100において生成されるべき眼用レンズの前側湾曲部の曲率を有しており、また、十分に滑らかで、凹状表面104と接触しているレンズ形成用混合物の重合により形成される眼用レンズの表面が光学的に許容可能になるように形成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、前側モールド片102はまた、輪状の周囲縁部108と一体であって、周囲縁部108を取り囲んでいる環状フランジも有することができ、軸に対して垂直で、フランジ(図示されていない)から延びる平面において、周囲縁部108から延びている。
【0029】
後側モールド片101は、凹状表面106、凸状表面103、および輪状の周囲縁部107を備えた中央湾曲セクションを有しており、レンズ形成用混合物に接触する凸状表面103の部分は、モールド組立体100において生成されるべき眼用レンズの後側湾曲部の曲率を有しており、十分に滑らかで、後側表面103に接触しているレンズ形成用混合物の反応または硬化により形成される眼用レンズの表面が光学的に許容可能になるように形成されている。したがって、前側モールド半部102の内側凹状表面104は、眼用レンズの外側表面を定め、一方、基部モールド半部(base mold half)101の外側凸状表面103は、眼用レンズの内側表面を定める。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、モールド100は、前述されたように2つのモールド部品101−102を含むことができ、モールド100の前側湾曲部部品102および後側湾曲部部品101の一方または両方は、TPEを含んでいる材料で作製されている。好ましい実施形態は、熱可塑性物(thermoplastic)と化合したTPEを含んでいるモールド材料を含んでいる。
【0031】
本発明に従う眼用レンズ材料として有用なTPEは、非限定的な例として、以下のように定義されることができる、SEBS、SEP、SEPS、SEEPS、SBS、SISといった、スチレンブロックコポリマーのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【化1】
【0032】
したがって、詳細な例は、Asahi KAESI(TUFTEC(商標))、SEPTON Company of America(SEPTON(商標))、およびKraton Polymers(Kraton(登録商標))からのスチレンブロックコポリマーを含んでもよい。
【0033】
追加の非限定的な例として、オレフィン系TPEは、ExxonMobilからのVistamaxx(商標)、およびMitsui Chemicals AmericaからのTAFMER(登録商標)Alpha-Olefin Copolymerを含むことができ、Dow Chemicalからの「INFUSE(商標)(オレフィンブロックコポリマー)は、オレフィン系エラストマーともみなされる。
【0034】
TPEと化合することができる熱可塑性物は、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、および脂環式ポリマーのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、熱可塑性樹脂は、少なくとも1つの飽和環状炭素を中に有する化合物をさす脂環式ポリマーを含むことができる。飽和環状炭素は、水素、C110アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、シリル、ならびに、置換基がハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーから選択される置換C110アルキルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーで置換されてもよい。脂環式ポリマーの例は、限定されるものではないが、重合可能な、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビスシクロブタン、ビスシクロペンタン、ビスシクロヘキサン、ビスシクロヘプタン、ビスシクロオクタン、およびノルボルナンを含む。少なくとも2つの脂環式ポリマーが、開環複分解後の水素化により重合することが、好ましい。コポリマーは高価なので、これらのコポリマーから作製されたモールドは、レンズを調製するために、典型的には1回であるところを代わりに複数回使用されてもよいことが好ましい。本発明の好ましいモールドについて、モールドは、レンズを生成するために2回以上使用されてもよい。
【0036】
より特別には、飽和環状炭素を含有する脂環式ポリマーの例は、限定されるものではないが、下記の構造を含む。
【化2】
ここで、R1_6は、独立して、水素、C110アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、シリル、ならびに、置換基がハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーから選択される置換C110アルキルからなる群の1つまたはそれ以上のメンバーから選択される。さらに、R1−6のうちの2つまたはそれ以上は、一緒になって、不飽和結合、環状炭素、1つまたはそれ以上の不飽和結合を含有する環状炭素、あるいは芳香環を形成してもよい。好ましいR16は、C110アルキル、ならびに、置換基がハロゲン、ヒドロキシル、C110アルコキシカルボニル、C110アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリルからなる群から選択される置換C110アルキルからなる群より選択される。
【0037】
脂環式コポリマーは、少なくとも2つの異なる脂環式ポリマーからなる。好ましい脂環式コポリマーは、下記からなる群より選択される2つまたは3つの異なる脂環式ポリマーを含有する。
【化3】
【0038】
特に好ましい脂環式コポリマーは、2つの異なる脂環式モノマーを含有し、脂環式ポリマーの飽和環状炭素の一般構造(generic structure)は、下記の式であり、
【化4】
R1R4は、C110アルキルである。
【0039】
典型的には、脂環式コポリマーの表面エネルギーは、25℃で28〜45ダイン/cm(28×10−5〜45×10−5N/cm)である。好ましい脂環式コポリマーは、2つの異なる脂環式ポリマーを含有し、ZEONORという商品名でZeon Chemicals L.P.より販売されている。いくつかの異なるグレードのZEONORがある。種々のグレードは、70℃〜160℃の範囲にわたるガラス転移温度を有し得る。特に好ましい材料は、ZEONOR 1060Rであり、これは、製造者ZEON Chemicals L.P.に従うと、11.0グラム/10分〜18.0グラム/10分(JISK 6719(230℃)でテストされたとき)のメルトフローレート(「MFR」)範囲と、1.01の比重(H2O=1)と、100℃のガラス転移温度とを有する。Zeonor 1060RといったTPRとTPEとを組み合わせることで、結果として、より大きいメルトフローレートを有するTPRとTPEとの化合物を生じることができる。したがって、例えば、TPEと組み合わされた約21g/10分のメルトフローレートを有するTPRは、約21g/10分よりも大きいメルトフローを有することができる。
【0040】
眼用レンズモールドを形成するためにTPEがブレンドされることができるその他のモールド材料は、例えば、Zieglar-Nattaポリプロピレン樹脂(時にはznPPと称される)を含む。ある例示的なZieglar-Nattaポリプロピレン樹脂は、PP 9544 MEDという名称で入手可能である。PP 9544 MEDは、ExxonMobile Chemical Companyより入手可能になった、FDA規制(FDA regulation)21 CFR (c)3.2による清浄モールド成型(clean molding)のための清澄ランダムコポリマーである。PP 9544 MEDは、エチレン群とのランダムコポリマー(znPP)である(以下、9544 MED)。その他の例示的なZieglar-Nattaポリプロピレン樹脂は、Atofina Polypropylene 3761、およびAtofina Polypropylene 3620WZを含む。
【0041】
いくつかの好ましい、本発明に従うモールド100を作製する方法では、射出成形が、既知の技術に従って利用されるが、ある実施形態はまた、例えば、旋盤加工(lathing)、ダイアモンド旋削、またはレーザー切断を含めたその他の技術により形作られるモールドを含むこともできる。
【0042】
典型的には、レンズは、両方のモールド部品101−102の少なくとも1つの表面上で形成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、レンズの一方の表面は、モールド部品101−102から形成されてよく、他方のレンズ表面は、旋盤加工法またはその他の方法を用いて形成されることができる。
【0043】
本明細書中で使用される「レンズ形成用表面」は、レンズをモールド成型するために使用される表面103−104を意味している。いくつかの実施形態では、いずれのそのような表面103−104も、光学的品質表面仕上げを有することができ、光学的品質表面仕上げとは、十分に滑らかであり、モールド成型用表面に接触しているレンズ形成用材料の重合によって形作られるレンズ表面が光学的に許容可能になるように形成されていることを示す。さらに、いくつかの実施形態では、レンズ形成用表面103−104が、限定するものではないが、球面屈折力、非球面屈折力、および円柱屈折力(cylinder power)、波面収差の矯正、角膜微細形態の矯正などと共に、これらの任意の組み合わせを含めた、所望の光学的特性をレンズ表面に付与するのに必要である、幾何学構造(geometry)を有することができる。
【0044】
<方法>
ここで図2を参照すると、本発明のいくつかの実施形態は、以下に説明されるステップを含む、本質的に以下に説明されるステップからなる、または、以下に説明されるステップからなる眼用レンズを作製する方法を含んでいる。ステップ201では、例えばSEBSといった、TPEと化合したTPRを含む樹脂が、可塑化され、射出成形プロセスでの使用のために準備される。射出成形技術は、よく知られており、典型的には、融点を超えて樹脂ペレットを加熱することを包含する。
【0045】
ステップ202では、可塑化された樹脂が、眼用レンズモールド部品101−102を造るために好適な形状にされた射出成形モールド(injection mold)に注入される。ステップ203では、この射出成形モールドが典型的には、例えば、用いられる樹脂、ならびにモールド部品の形状およびサイズに依存し得る、適切な長さの時間、パックの中に保持状態(hold status)で置かれる。ステップ204では、形成されたモールド部品101−102が、冷却され、ステップ205では、モールド部品101−102が、射出成形モールドから駆出されるか、あるいは取り除かれることができる。
【0046】
ここで図3を参照すると、本発明のいくつかの実施形態は、以下のステップを含む、本質的に以下のステップからなる、または以下のステップからなる、眼用レンズを作製する方法を含んでいる。ステップ301では、TPEと化合したTPRを含めたものを含むか、本質的にそのようなものからなるか、またはそのようなものからなる、1つまたはそれ以上のモールド部品101−102が造られる。ステップ302では、未硬化のレンズ組成物が、1つまたはそれ以上のモールド部品101−102の上に分配され、ステップ303では、レンズ組成物が、好適な条件下で硬化される。追加のステップとしては、例えば、硬化したレンズが、モールド部品101−102から外れるまで、硬化したレンズを水和させること、およびレンズから急性眼球不快薬剤(acute ocular discomfort agents)を浸出させることを含むことができる。
【0047】
本明細書中で使用される用語「未硬化の」は、レンズを作製するためのレンズ組成物の最終的な硬化の前の、レンズ組成物の物理的な状態をさしている。いくつかの実施形態では、レンズ組成物は、1回だけ硬化したモノマーの混合物を含有することができる。その他の実施形態は、モノマー、部分的に硬化したモノマー、マクロマー、およびその他の成分を含有する、部分的に硬化したレンズ組成物を含むことができる。
【0048】
本明細書中で使用される句「好適な条件下での硬化」は、硬化したレンズを生成するために、光、熱、および適切な触媒を用いるといった、レンズ組成物を硬化する任意の好適な方法をさしている。いくつかの詳細な例では、光は、紫外光を含むことができる。硬化は、レンズ形成用混合物をケーシング(case)して重合させるのに十分な化学作用を有する放射線に対する、レンズ形成用混合物のあらゆる曝露を含むことができる。
【0049】
<添加物>
TPRおよびTPEの他に、本発明のモールドは、レンズ形成用表面の分離を促進するか、モールド成型用表面に対する硬化したレンズの付着を減らすか、またはその両方を行う添加物を含有してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、好ましい添加物が、ポリビニルピロリジノン(polyvinyl pyrrolidinone)、ステアリン酸亜鉛、およびグリセロールモノステアレート(glycerol mono stearate)を含むことができ、ポリマーの総重量に基づく添加物の重量割合は、約0.05〜約10.0重量%、好ましくは、約0.05〜約3.0重量%、最も好ましくは、約1.0〜2.0重量%である。
【0051】
<界面活性物質>
TPRおよびTPEのブレンドに加えて、一方または両方のレンズ形成用表面103−104からの形成されたレンズの取り外しは、レンズ形成用表面103−104のうちの1つまたはそれ以上に界面活性物質を適用することにより促進されてもよい。好適な界面活性物質の例は、Tween界面活性物質、特にはTween 80を含むことができる。
【0052】
<比較上のモールド品質>
ここで図4を参照すると、TPRおよびTPEを含んでいる化合物から形作られた、いくつかのモールドを含む、モールド材料の表面エネルギー特性を図示する、チャート400が提供されている。チャート400に関連したデータは、表1として本明細書中に含まれている。チャート400および表1に示されているように、これらの例で使用された例示的なTPEは、TUFTEC(商標)H1051、H1052および1062を含んでおり、これら両方共、全て水素化されたスチレン/ジエンブロックTPEであり、Asahi Kasei K.K.により製造されている。
【0053】
モールド部品を示している軸402は、Zeonor 1060Rから作製されたモールド部品403−404と、polypropylene 2から作製されたモールド部品410とを含んでおり、これらは各々TPE無しで試験されたものである。Zeonor 1060Rは加えて、種々の量のTPEで試験された。TPE無しのZeonor 1060Rサンプル403−404は、表面エネルギーを試験するためのZisman法、またはOwens-Wendt法のいずれを用いても、28mN/mを超える表面エネルギーを示した。TPE無しのpolypropylene 2サンプル410は、表面エネルギーを試験するためのZisman法、またはOwens-Wendt法のいずれを用いても、30mN/mを超える表面エネルギーを示した。
【0054】
TPEと化合されると、Zeonor 1060Rサンプルの表面エネルギーは、有意に減少した。約50%のZeonor 1060R、および約50%のTPE(H1051)のモールド材料は、結果として、25mN/mの範囲にある表面エネルギー特性を生じた。
【0055】
【表1】
【0056】
表面エネルギーに加えて、Zeonor 1060Rから形作られたモールド部品について、接触角の測定値を記録した。TPEを含んでいたこれらの部品は、より大きい接触角を示した。約50%のZeonor 1060R、および約50%のTuftec H1051から形作られたモールド部品は、結果として、約104.2の水の接触角を生じた。この結果は、TPE無しで形作られた部品と比較して、有意な増加である。
【0057】
【表2】
【0058】
減少したモールド表面エネルギーは、レンズの改善された型外しを促進し(型外しプロセスに間に裂けおよび引っ張りに起因する損傷を受けるレンズがより少ない)、加えて、型外し後にレンズが付着したまま残るモールド部品からの改善された取り外しを促進する。レンズは典型的には、水溶液に対するレンズおよびモールド部品の曝露を含むプロセスを通して、取り外される。ポリオレフィンモールド材料中にSEBSを含ませることにより、60%を超えるだけ、平均レンズ取り外し回数が減った。90%を上回るレンズ取り外し割合が、5%〜50%のTPEを含んでいる化合物で発生した。
【0059】
ここで図5を参照すると、ボックス・プロット・チャート500が、DI水接触角501と、環式オレフィンコポリマー(「COC」)のTPRと組み合わされた種々の量のTPEを備えたモールド材料502との間の関係性を図示している。このチャートに示されているように、本発明に従うと、直接的な関係性が、DI水の接触角501と、COCに対して約50%のTPEの比率までのモールド化合物に含まれるTPEの量との間で得られることができる。COCに対して50%TPEのボックス・プロット503は、約100のDI水の接触角を示し、最も高いボックス・プロット値503を含んでいる。0%TPEのCOCは、約96%のボックス・プロットを示し、最も低いボックス・プロット値504を含んでいる。示しているように、本発明に従うと、その他の比率値は、これら2つの間に集まっている。
【0060】
コンタクトレンズ製造に関連した側面において、型外しに関連したレンズ収率は、モールド部品101−102中にSEBSを含ませることにより増加した。レンズ収率は、レンズにおける欠けおよび裂けの発生率の減少、およびレンズ上の表面きず付け(surface markings)の削減に起因して、増えた。
【0061】
さらなる他の側面において、モールド部品101−102の高い品質、および射出成形プロセスの速いサイクル時間を維持するために、Zeonor 1060RといったポリオレフィンとのTUFTEC(商標)H1051(SEBS)の好ましいブレンド比率は、約50重量%以下であり、いくつかの実施形態では、Zeonor 1060RとのTUFTEC(商標)H1051(SEBS)の含む比率は、約25重量%以下であり、さらにその他では、TUFTEC(商標)H1051(SEBS)およびZeonor1060Rのブレンド比率は、約12.5重量%以下である。
【0062】
TUFTEC(商標)H1051は、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)に対する、Asahi Kaesi K.K.の商品名である。SEBS、すなわち特別なオレフィンおよびブロックコポリマーは、エラストマーの一種であり、いくつかの実施形態では、SEBSは、非晶質ポリマーを含んでいる。全般的に、本明細書中、例示的なデータを生み出しているサンプルで利用されたTUFTEC(商標)H1051のサンプルは、〜42%のスチレンユニットと、〜58%のエチレン−ブタジエン(EB)ユニットとを含有している。TUFTEC(商標)H1051の二つの(2)ガラス転移温度(Tg)がある。スチレンユニット(硬質セグメント)のTgは、96℃であり、EBユニット(軟質セグメント)のTgは、−43℃である。SEBSブロックコポリマーは、現在、商業的に入手可能なTPEである。
【0063】
その他の実施形態において、熱可塑性エラストマーはスチレンブロックを含むことができ、スチレンブロックは、非限定的な例として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SIBS)、またはそれぞれのコポリマーの水素化されたコポリマーを含む。言い換えると、スチレンブロックを含有する熱可塑性エラストマーは、SBS、水素化されたSBS、SIS、水素化されたSIS、SIBS、または水素化されたSIBSとすることができる。水素化されたSBSとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)が使用され得る。水素化されたSISとしては、例えば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)が使用され得る。水素化されたSIBSとしては、例えば、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)が使用され得る。水素化されたSEPとしては、例えば、スチレン−エチレン−プロピレンブロックコポリマーが使用されてよい。
【0064】
スチレンブロック(成分C)を含有する熱可塑性エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、水素化されたSBS、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、水素化されたSIS、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SIBS)、水素化されたSIBS、またはポリオレフィンで形成されたポリマーアロイとすることができる。ここで、ポリマーアロイは、上述されたSBSなどといったブロックコポリマーとポリオレフィンとのブレンドであるか、または、上述されたブロックコポリマーと、ポリマー鎖の構成物としてのポリオレフィンとを含んでいるポリマーであるか、のいずれかである。
【0065】
好ましくは、スチレンブロックを含有する熱可塑性エラストマーは、約95以下、いくつかの実施形態では60以下のショアーA硬度(shore A hardness)を有することができる。ショアーA硬度を決定するための好ましい試験法としては、JIS K6253およびISO 48の試験法を含む。
【0066】
<結論>
本発明は、前述されたように、また、以下の請求項によりさらに定められるように、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂から形作られたモールド部品101−102を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明のある実施形態に従うモールド組立体を図示している。
【図2】図2は、モールド部品を造るために本発明のある実施形態を実行する際に行われることができる例示的なステップのフローチャートを図示している。
【図3】図3は、眼用レンズを造るために本発明のある実施形態を実行する際に行われることができる例示的なステップのフローチャートを図示している。
【図4】図4は、熱可塑性エラストマーから形作られたモールドの表面エネルギー品質を示している例示的なデータを図示している。
【図5】図5は、熱可塑性エラストマーから形作られたモールドの接触角品質を示している例示的なデータを図示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズをモールド成型する改善された方法において、
レンズ形成用混合物が、2つまたはそれ以上のモールド部品によって形成された、所望の形状の空隙内で硬化され、
前記改善点として、前記モールド部品のうちの少なくとも1つが、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含むことを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
第1のモールド部品が、凹状表面を含み、
第2のモールド部品が、凸状表面を含み、
少なくとも前記第2のモールド部品が、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
第1のモールド部品が、凹状表面を含み、
第2のモールド部品が、凸状表面を含み、
前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の両方が、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記モールド部品の少なくとも1つが、重合開始用放射線に対して透明であり、
前記空隙が、眼用レンズの形状およびサイズを備えており、
前記方法は、
重合可能な配合物を含むレンズ形成用混合物を前記空隙内に堆積することと、
前記モールド部品および前記重合可能な配合物を重合開始用放射線に曝すことと、
をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された、少なくとも1つのモールド部品が、Owens-Wendt法およびZisman法のうちの1つまたはそれ以上で決定されたときに、30mN/m未満の表面エネルギーを備えている、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された、少なくとも1つのモールド部品が、Owens-Wendt法およびZisman法のうちの1つまたはそれ以上で決定されたときに、26mN/m未満の表面エネルギーを備えている、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法において、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された、少なくとも1つのモールド部品が、約99°を超える脱イオン水の接触角を備えている、方法。
【請求項8】
眼用レンズを形成するためのモールド組立体において、
眼用レンズを形成するのに好適な形状およびサイズの空隙を形成するように互いに対して位置付けられた第1のモールド部品および第2のモールド部品、
を含み、
前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の少なくとも一方は、レンズ形成用表面を含み、
前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の少なくとも一方は、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、モールド組立体。
【請求項9】
請求項8に記載のモールドにおいて、
前記熱的可塑性エラストマーは、スチレンブロックコポリマーを含む、モールド。
【請求項10】
請求項9に記載のモールドにおいて、
前記熱的可塑性エラストマーは、スチレンエチレンブチレン、スチレンエチレンプロピレン、およびスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマーを含む群のうちの1つまたはそれ以上を含む、モールド。
【請求項11】
請求項8に記載のモールドにおいて、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の前記少なくとも一方は、約5重量%〜75重量%の熱的可塑性エラストマーを含む、モールド。
【請求項12】
請求項8に記載のモールドにおいて、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の前記少なくとも一方は、約10重量%〜50重量%の熱的可塑性エラストマーを含む、モールド。
【請求項13】
請求項8に記載のモールドにおいて、
前記熱可塑性樹脂は、脂環式ポリマーを含む、モールド。
【請求項14】
請求項8に記載のモールドにおいて、
前記熱可塑性樹脂は、21g/10分未満のメルトフローレートを有するポリオレフィンを含み、
熱的可塑性エラストマーと化合した前記熱的可塑性樹脂は、約21g/10分を超えるメルトフローレートを有する、モールド。
【請求項15】
眼用レンズにおいて、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む樹脂から形成されたモールド部品の表面上に未硬化のレンズ組成物を分配するステップと、
前記未硬化のレンズ組成物に好適な化学作用条件下で、前記レンズ組成物を硬化するステップと、
を含む方法により生成された、眼用レンズ。
【請求項16】
請求項15に記載の眼用レンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、シリコーンヒドロゲル組成物を含む、眼用レンズ。
【請求項17】
請求項15に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、ヒドロゲル組成物を含む、レンズ。
【請求項18】
請求項15に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、acquafilcon A、balafilcon A、およびlotrafilcon Aのうちの少なくとも1つを含む、レンズ。
【請求項19】
請求項11に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、etafilcon A、genfilcon A、lenefilcon A、polymaconおよびgalyfilcon A、ならびにsenofilcon Aのうちの少なくとも1つを含む、レンズ。
【請求項20】
請求項11に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、senofilcon Aを含む、レンズ。
【請求項1】
眼用レンズをモールド成型する改善された方法において、
レンズ形成用混合物が、2つまたはそれ以上のモールド部品によって形成された、所望の形状の空隙内で硬化され、
前記改善点として、前記モールド部品のうちの少なくとも1つが、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含むことを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
第1のモールド部品が、凹状表面を含み、
第2のモールド部品が、凸状表面を含み、
少なくとも前記第2のモールド部品が、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
第1のモールド部品が、凹状表面を含み、
第2のモールド部品が、凸状表面を含み、
前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の両方が、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記モールド部品の少なくとも1つが、重合開始用放射線に対して透明であり、
前記空隙が、眼用レンズの形状およびサイズを備えており、
前記方法は、
重合可能な配合物を含むレンズ形成用混合物を前記空隙内に堆積することと、
前記モールド部品および前記重合可能な配合物を重合開始用放射線に曝すことと、
をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された、少なくとも1つのモールド部品が、Owens-Wendt法およびZisman法のうちの1つまたはそれ以上で決定されたときに、30mN/m未満の表面エネルギーを備えている、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された、少なくとも1つのモールド部品が、Owens-Wendt法およびZisman法のうちの1つまたはそれ以上で決定されたときに、26mN/m未満の表面エネルギーを備えている、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法において、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂からモールド成型された、少なくとも1つのモールド部品が、約99°を超える脱イオン水の接触角を備えている、方法。
【請求項8】
眼用レンズを形成するためのモールド組立体において、
眼用レンズを形成するのに好適な形状およびサイズの空隙を形成するように互いに対して位置付けられた第1のモールド部品および第2のモールド部品、
を含み、
前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の少なくとも一方は、レンズ形成用表面を含み、
前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の少なくとも一方は、熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、モールド組立体。
【請求項9】
請求項8に記載のモールドにおいて、
前記熱的可塑性エラストマーは、スチレンブロックコポリマーを含む、モールド。
【請求項10】
請求項9に記載のモールドにおいて、
前記熱的可塑性エラストマーは、スチレンエチレンブチレン、スチレンエチレンプロピレン、およびスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマーを含む群のうちの1つまたはそれ以上を含む、モールド。
【請求項11】
請求項8に記載のモールドにおいて、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の前記少なくとも一方は、約5重量%〜75重量%の熱的可塑性エラストマーを含む、モールド。
【請求項12】
請求項8に記載のモールドにおいて、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む、前記第1のモールド部品および前記第2のモールド部品の前記少なくとも一方は、約10重量%〜50重量%の熱的可塑性エラストマーを含む、モールド。
【請求項13】
請求項8に記載のモールドにおいて、
前記熱可塑性樹脂は、脂環式ポリマーを含む、モールド。
【請求項14】
請求項8に記載のモールドにおいて、
前記熱可塑性樹脂は、21g/10分未満のメルトフローレートを有するポリオレフィンを含み、
熱的可塑性エラストマーと化合した前記熱的可塑性樹脂は、約21g/10分を超えるメルトフローレートを有する、モールド。
【請求項15】
眼用レンズにおいて、
熱的可塑性エラストマーと化合した熱的可塑性樹脂を含む樹脂から形成されたモールド部品の表面上に未硬化のレンズ組成物を分配するステップと、
前記未硬化のレンズ組成物に好適な化学作用条件下で、前記レンズ組成物を硬化するステップと、
を含む方法により生成された、眼用レンズ。
【請求項16】
請求項15に記載の眼用レンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、シリコーンヒドロゲル組成物を含む、眼用レンズ。
【請求項17】
請求項15に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、ヒドロゲル組成物を含む、レンズ。
【請求項18】
請求項15に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、acquafilcon A、balafilcon A、およびlotrafilcon Aのうちの少なくとも1つを含む、レンズ。
【請求項19】
請求項11に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、etafilcon A、genfilcon A、lenefilcon A、polymaconおよびgalyfilcon A、ならびにsenofilcon Aのうちの少なくとも1つを含む、レンズ。
【請求項20】
請求項11に記載のレンズにおいて、
前記未硬化のレンズ組成物は、senofilcon Aを含む、レンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2010−524018(P2010−524018A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501250(P2010−501250)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058608
【国際公開番号】WO2008/121791
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058608
【国際公開番号】WO2008/121791
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】
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