説明

着塵剤

【課題】 引火の危険性が避けられ、清掃対象等における静電気を除去して塵埃の再付着を防ぐことができ、塵埃に対する吸着力に優れると共に、一般家庭でモップ等の清掃具や靴拭マット等に着塵剤を適用して保持させる場合にも均一性のある着塵効果を容易に実現し得る着塵剤の提供。
【解決手段】 グリセリン(日本薬局方準拠)25重量部、エチレングリコール25重量部、エタノール35重量部、脱イオン水15重量部、及び噴射剤100重量部を十分に攪拌混合することにより、エアロゾル形態の着塵剤を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モップ等の清掃具や靴拭マット等に適用する着塵剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モップ等の清掃具や靴拭マット等に保持させて用いる着塵剤としては、特許第2576937号公報(特許文献1)に記載された流動パラフィンやイソパラフィン等の親油性(疎水性)液体を主成分とするものが用いられている。このような従来の着塵剤を保有するモップ糸等を床面や家具などの拭き掃除に用いると、着塵剤における親油性液体の粘着力により塵埃を吸着することができ、また、その親油性液体の効果により、モップ糸等が若干の静電気を帯び、塵埃をモップ糸等に取り込み易くなっている。
【0003】
しかしながら、塵埃に対する親油性液体の吸着力は、必ずしも強いとは言えない。また、親油性液体による静電気の発生量は、使い方によるばらつきが大きい。而も、そのモップ糸等自体に静電気が発生するため、ブラウン管画面やその他の箇所における静電気を除去することができずに塵埃の再付着を引き起こすおそれがある。
【0004】
更に、従来の着塵剤の主成分である流動パラフィンやイソパラフィン等の親油性液体は、引火の危険性を伴うものであると共に、使用者の手等に付着した場合に洗い流すのが容易でない。
【0005】
特許第3411105号公報(特許文献2)には、「プロピレングリコール50〜70重量%と水50〜30重量%よりなる溶液を主要成分とするダストコントロール剤」の発明が記載されている。
【0006】
この発明は、有機溶剤または鉱物油を用いた着塵剤の場合における、「清掃後、床などの対象面に油膜が残り、水拭き程度では、除去しきれないため、床面は滑りやすく、汚れやすい。さらに、油膜は黄変や変色する傾向があり、清掃された床面の外観を損なうこともある。」という課題を解決し、モップの軽さ、仕上がり感、効果の持続性、洗浄性が何れも良好な着塵剤を提供しようとするものである。
【0007】
しかしながら、この着塵剤は、モップ等における着塵効果の持続性や、特に一般家庭で着塵剤をモップ等に適用した場合における着塵効果の均一性において更なる改善の余地があった。
【0008】
また特開2003−81842号(特許文献3)には、アレルゲン低減化成分を基材に含浸させてなる清拭シートが開示されており、アレルゲン低減化成分として芳香族ヒドロキシ化合物等が開示され、アレルゲン低減化物質を溶解あるいは分散させる溶媒として、水、アルコール類、炭化水素類、エーテル類、ケトン類、アミド類等が挙げられている。しかしながら、このような溶媒にアレルゲン低減化物質を溶解あるいは分散させたもののモップ等における着塵効果の持続性や、特に一般家庭で着塵剤をモップ等に適用した場合における着塵効果の均一性については、十分なものとは言い得なかった。
【特許文献1】特許第2576937号公報
【特許文献2】特許第3411105号公報
【特許文献3】特開2003−81842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、引火の危険性が避けられ、清掃対象等における静電気を除去して塵埃の再付着を防ぐことができ、塵埃に対する吸着力に優れると共に、一般家庭でモップ等の清掃具や靴拭マット等に着塵剤を適用して保持させる場合にも均一性のある着塵効果を容易に実現し得る着塵剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の着塵剤は、
グリセリン類、グリコール類、アルコール類、及び水からなる混合液を主成分とする。
【0011】
この着塵剤は、引火の危険性が避けられ、モップ等の清掃具や靴拭マット等の繊維部分に保持させて清掃等に用いた場合、水を含む混合液を主成分としているため清掃対象等における静電気を除去することができるので塵埃の再付着が防がれ、而も塵埃に対する吸着力に優れる。また、一般家庭でモップ等の清掃具や靴拭マット等に着塵剤を保持させる場合、適用後に比較的容易に蒸発するアルコール類を含有することにより、アルコール以外の成分をモップ糸等に均一状に適用することが比較的容易であり、適用後にアルコール類が比較的容易に蒸発することにより、グリセリン類、グリコール類、及び水の成分が、モップ等に比較的均一状に且つ長期にわたり保持される状態となり、均一性のある着塵効果が容易に実現される。
【0012】
上記着塵剤は、アレルゲン低減化剤を含有するものとすることが好ましい。
【0013】
また上記着塵剤は、噴射剤を含有し、エアロゾル形態をなすものとすることが好ましい。
【0014】
この場合、着塵剤がエアロゾル形態をなすため、一般家庭でモップ等の清掃具や靴拭マット等に適用して着塵剤を保持させた場合に、アルコール以外の成分をモップ糸等に均一状に適用することがより容易であり、適用後にアルコール類が比較的容易に蒸発することにより、グリセリン類、グリコール類、及び水の成分(或いは、それら並びにアレルゲン低減化剤)が、モップ等に比較的均一状に且つ長期にわたり保持される状態となり、均一的な着塵効果がより容易に実現される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の着塵剤は、引火の危険性が避けられ、モップ等の清掃具や靴拭マット等の繊維部分に保持させて清掃等に用いた場合、清掃対象等における静電気を除去することができるので塵埃の再付着が防がれ、而も塵埃に対する吸着力に優れる。また、一般家庭でモップ等の清掃具や靴拭マット等に着塵剤を保持させる場合、適用後にアルコール類が比較的容易に蒸発することにより、グリセリン類、グリコール類、及び水の成分が、モップ等に比較的均一状に且つ長期にわたり保持される状態となり、均一的な着塵効果が容易に実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の着塵剤は、グリセリン類、グリコール類、アルコール類、及び水からなる混合液を主成分とするものであり、主成分のみからなるものでもよく、主成分以外の成分を含有するものでもよい。
【0017】
本発明の着塵剤の主成分においては、モップ等の清掃具や靴拭マット等の繊維部分(例えば、モップ糸、清掃具の不織布、マットのパイル等)に適用して適用後にアルコール類を比較的容易に(例えば1週間程度で)蒸発させ、アルコール以外の成分であるグリセリン類、グリコール類、及び水を比較的均一状に且つ長期にわたり(例えば20℃、相対湿度20%で、1年以上)前記繊維部分に保持させる上で、グリセリン類がグリセリンであり、グリコール類がエチレングリコール、プロピレングリコール又はブチレングリコールであり、アルコール類がエチルアルコール、プロピルアルコール又はメチルアルコールであるものが好ましい。また、前記のように保持させる上で、本発明の着塵剤の主成分であるグリセリン類、グリコール類、アルコール類、及び水からなる混合液は、20−30重量%のグリセリン類、20−30重量%のグリコール類、20−55重量%のアルコール類、及び5−40重量%の水からなるものであることが望ましい。より好ましくは、20−30重量%のグリセリン類、20−30重量%のグリコール類、40−55重量%のアルコール類、及び5−20重量%の水からなる混合液である。
【0018】
本発明の着塵剤が含有することが好ましいアレルゲン低減化剤であるフェノール性水酸基を有する化合物の例としては、オリーブ抽出物、柿抽出物、及びその他のポリフェノール、一価のフェノール基を有する単量体を重合又は共重合してなる化合物、その他のフェノール系ポリマーを挙げることができ、多孔質無機微粒子の例としては、ヘクトライト等を挙げることができる。また、本発明に使用し得るアレルゲン低減化剤の他の例として、特開2003−81842号公報に開示されているその他の各種アレルゲン低減化成分を挙げることができる。
【0019】
本発明の着塵剤の主成分を構成する各液体としては、日本薬局方及び食品添加物に使用可能なもの、工業用であるもの等、種々ものを用いることが可能である。
【0020】
本発明の着塵剤は、上記主成分以外に、本発明の効果を実質上阻害することのない範囲で、各種添加剤等(例えば、防腐剤、除菌剤、抗菌剤等)を配合することができる。
【0021】
本発明の着塵剤が噴射剤を含有し、エアロゾル形態をなすものである場合、噴射剤は、全重量の20乃至60重量%、好ましくは30乃至50重量%であるものとすることができる。
【0022】
本発明の着塵剤がエアロゾル形態をなす場合における噴射剤としては、本発明の効果を実質上阻害することのないものを用いることができる。噴射剤の例としては、窒素、ジメチルエーテル(DME)、二酸化炭素、一酸化二窒素、プロパン、ブタン類(イソブタン)、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、これらのうち2以上のものの混合物、並びに、1,1−ジフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、モノクロロジフルオロエタン、これらのうち2以上のものの混合物を挙げることができる。
【0023】
本発明の着塵剤は、例えば塗布やスプレー等によってモップ等の清掃具や靴拭マット等に適用してそれらの繊維部分に保持させ、床や家具の清掃及び靴に付着した土粒子や塵埃の捕捉に用いることができる。
【実施例】
【0024】
次に本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらによって限定されるものでないことは言うまでもない。
【0025】
1.着塵試験
【0026】
着塵剤の製造
【0027】
グリセリン(日本薬局方準拠)25重量部、エチレングリコール25重量部、エタノール35重量部、脱イオン水15重量部、及び噴射剤100重量部を十分に攪拌混合することにより、エアロゾル形態の着塵剤例1を得た。
【0028】
一方、流動パラフィン(日本薬局方準拠)100部及び噴射剤100重量部を十分に攪拌混合して得たエアロゾル形態の着塵剤を比較着塵剤例1とした。
【0029】
着塵試験
【0030】
(1)清掃布
【0031】
不織布(縦横:20cm×30cm、目付重量:50g/m2、組成:レーヨン60重量%,ポリエチレンテレフタレート[PET]40重量%)の表裏に、着塵剤例1を 0.2gずつスプレー塗布し、室温で1週間放置したものを清掃布例1とした。
【0032】
一方、前記と同じ不織布の表裏に比較着塵剤例1を 0.2gずつスプレー塗布し、室温で1週間放置したものを比較清掃布例1とした。
【0033】
(2)試験方法
【0034】
ファスナー付のポリエチレン製袋(13.3cm×20.3cm)中に、擬似花粉(石松子)0.1g と 7cm×7cmに裁断した清掃布例1及び比較清掃布例1をそれぞれ1枚入れ、100回(1回/秒)振った。その後、清掃布例1及び比較清掃布例1を取り出し、一端を摘んで軽く振った後、顕微鏡を用い、各清掃布における縦横1mmの面積内に付着している擬似花粉数を計数した。
【0035】
(3)結果
【0036】
縦横1mmの面積内に付着している擬似花粉数は、清掃布例1において120個、比較清掃布例1において50個であった。
【0037】
2.アレルゲン低減化着塵試験
【0038】
アレルゲン低減化着塵剤の製造
【0039】
グリセリン(日本薬局方準拠)25重量部、エチレングリコール25重量部、エタノール35重量部、脱イオン水15重量部、アレルゲン低減化剤(フェノール系ポリマーとアニオン系界面活性剤を主成分とする液剤、商品名:SPA−S、積水化学工業社製)10部及び噴射剤110重量部を十分に攪拌混合することにより、エアロゾル形態のアレルゲン低減化着塵剤例1を得た。
【0040】
一方、流動パラフィン(日本薬局方準拠)10部、アレルゲン低減化剤(商品名:SPA−S、積水化学工業社製)10部及び噴射剤110重量部を十分に攪拌混合して得たエアロゾル形態の着塵剤をアレルゲン低減化比較着塵剤例1とした。
【0041】
アレルゲン低減化試験
【0042】
(1)清掃布
【0043】
不織布(縦横:20cm×30cm、目付重量:50g/m2、組成:レーヨン60重量%,ポリエチレンテレフタレート[PET]40重量%)の表裏に、アレルゲン低減化着塵剤例1を 0.1gずつスプレー塗布し、室温で1週間放置したものをアレルゲン低減化清掃布例1とした。
【0044】
前記と同じ不織布の表裏にアレルゲン低減化比較着塵剤例1を 0.1gずつスプレー塗布し、室温で1週間放置したものをアレルゲン低減化比較清掃布例1とした。
【0045】
前記と同じ不織布をそのまま室温で1週間放置したものをアレルゲン低減化比較清掃布例2とした。
【0046】
(2)試験方法
【0047】
ヤケヒョウヒダニ抽出物Mite Extract Dp 10mg(LSL社製)にイオン交換水5mLを加えたものをPBS緩衝液で100倍希釈して20μg/mLのアレルゲン溶液を調製した。
【0048】
上記アレルゲン低減化清掃布例1、アレルゲン低減化比較着塵剤例1、及びアレルゲン低減化比較清掃布例2の各5cm角を、それぞれアレルゲン溶液3.5mLと共に試験管に入れて各清掃布がアレルゲン溶液に浸漬した状態とした。これらの試験管を、振とう培養器(37℃, 100rpm)中で一晩振とうした。
【0049】
翌日、ダニ検査用マイティチェッカー(ダニ簡易検査キットの商品名、シントーファイン社製)を用いて、各清掃布が浸漬した溶液についてアレルゲン性を判定した。
なお、一般的な家庭の通常の床面に存在するアレルゲンの総量の目安は、50畳×1.62(m/畳)×100ng/m×2(Der1とDer2量がほぼ等しくあるとする)= 16.2μgとされている。
【0050】
(3)結果
各清掃布が浸漬した溶液についてのアレルゲン性判定結果は次のとおりであった。
アレルゲン低減化清掃布例1:1μg/m以下
アレルゲン低減化比較着塵剤例1:35μg/m以上
アレルゲン低減化比較清掃布例2:35μg/m以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン類、グリコール類、アルコール類、及び水からなる混合液を主成分とする着塵剤。
【請求項2】
グリセリン類がグリセリンであり、
グリコール類がエチレングリコール、プロピレングリコール又はブチレングリコールであり、
アルコール類がエチルアルコール、プロピルアルコール又はメチルアルコールである請求項1記載の着塵剤。
【請求項3】
上記混合液が、20−30重量%のグリセリン類、20−30重量%のグリコール類、20−55重量%のアルコール類、及び5−40重量%の水からなるものである請求項1又は2記載の着塵剤。
【請求項4】
アレルゲン低減化剤を含有する請求項1、2又は3記載の着塵剤。
【請求項5】
上記アレルゲン低減化剤が、フェノール性水酸基を有する化合物又は多孔質無機微粒子である請求項4記載の着塵剤。
【請求項6】
上記アレルゲン低減化剤を、上記混合液100重量部に対し0.1乃至50重量部含有する請求項4又は5記載の着塵剤。
【請求項7】
噴射剤を含有し、エアロゾル形態をなす請求項1乃至6の何れかに記載の着塵剤。

【公開番号】特開2007−291207(P2007−291207A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119353(P2006−119353)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】