説明

着座式便器

【課題】着座した男性が小便を困難なくできるコンパクトな着座式便器の提供を目的とする。
【解決手段】 便座13は、分割ライン22よりも前方の便座前部23と後方の便座本体部21とに分割自在に構成されている。便座前部23は、小便受け27が設けられ且つ便座本体部21から連結部25を介して前方上方へ突出自在である。そのため、便座前部23を前方上方に突出させることで、小便受け27が着座した男性の小便排泄位置の前方に位置することとなる。結果、コンパクトな着座式便器10であっても着座した男性の小便を確実に受けることができ、便器およびその周辺を汚す心配がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座式便器に関し、特に着座式便器の便座の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トイレ空間を広々と過ごすために便器のコンパクト化に対するニーズが高まっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、便器をコンパクト化すればそれに伴って便座開口部も小さくなるため、男性が着座した状態で小便をする場合、例えば図10に示すように便器100および周辺を汚してしまう虞があった。
【0004】
なお、例えば特開平7−286353号には、着座した男性の小用が便器外に飛び出すのを防止するものが開示されてはいるものの、便器または便座が大型化されてしまう。
【0005】
本発明は、着座した男性が小便を困難なくできるコンパクトな着座式便器の提供を目的とする。また本発明は、着座した男性が小便を困難なくできるコンパクトな便座の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、排便用開口部を有する便器本体と、便器本体の排便用開口部の周縁に被せられる便座と、を備えた着座式便器であって、前記便座は、分割ラインよりも前方の便座前部と後方の便座本体部とに分割され、前記便座前部は、小便受けが設けられ且つ前記便座本体部から連結部を介して前方上方へ突出自在であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の着座式便器であって、前記連結部は、板バネで形成されるとともにその一端が前記便座本体部および前記便座前部の一方に固定され且つその他端が前記便座本体部および前記便座前部の他方にスライド自在に装着されてなり、前記便座前部を前方に突出させると前記便座前部を上方にリフトさせるように撓み変形することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、便座前部を前方上方に突出させることで、小便受けが着座した男性の小便排泄位置の前方に位置することとなる。そのため、コンパクトな着座式便器であっても着座した男性の小便を確実に受けることができ、便器およびその周辺を汚す心配がない。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、便座前部を前方に向けて引き出すだけで、小便受けを前方上方の使用位置に移動させることができる。これにより、便座前部を前方(または上方)に移動させた後にさらに上方(または前方)に移動させる場合つまり2段階に移動させる場合と異なり、一度の動作で小便受けの使用位置に移動できるため、操作の煩わしさがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【0011】
図1に示すように、この実施形態の着座式便器10は、図示せぬ排便用開口部を有する便器本体11と、便器本体11の上面に同軸上に回転自在に取り付けられた便座13および便蓋15と、便器本体11の後部上面に取り付けられた洗浄装置17と、を備える。便蓋15は、図1中矢示A1で示すように、便座13の上から便器本体11の排便用開口部12を開閉する。また、便座13も便蓋15と同様に図1中矢示A1で示すように、開閉できる。
【0012】
この実施形態の便座13は、便器本体11の排便用開口部12の周縁に沿って形成されてたもので、図3a、図3bに示す如く環状形になっている。また、便座13は、図3a、図3bに示す如く、分割ライン22よりも前方の便座前部23と、分割ライン22よりも後方の便座本体部21と、に分割されている。
【0013】
図4に示すように便座前部23には、その下部に小便受け27が設けられている。小便受け27は便座前部23とは別部材で形成されており(図5参照)、小便受け27の上端の鍔部27bが便座前部23の下面にネジなどの締結手段で取り付けられている。なお、小便受け27の本体部27aは、図5に示すように、両側端が便座開口部13aの中央側に向けて湾曲形成されているとともに下端部が同じく便座開口部13aの中央側に向けて湾曲形成された丸みを帯びた形状である。
【0014】
この実施形態の便座13は、便座本体部21と便座前部23とが「連結部」としての接続バー25により連結されており、便座前部23を便座本体部21手動で前方(図中示A2方向)に引き出すことができるようになっている。
【0015】
接続バー25は、板バネにより構成されており、その原形形状は図8に示す如く小湾曲部25d、25eを有するクランク形状(略Z字状もしくは略S字状)に形成されている。また、接続バー25は、一端部25aが便座前部に固定され且つ他端部25cが便座本体部21の下面に設けられたスライドレール29にスライド自在に装着されている。そして、接続バー25は、図6に示す如く便座前部23の通常位置(初期位置)では、スライドレール29内に撓み変形した状態で収容されており、図7に示す如く便座前部23を前方(矢示A2方向)に引き出すにしたがい撓み復元していき、最終的に終点で図8に示す如く原形に復帰する。これにより、便座前部23を前方に引き出すだけで、便座前部23が斜め上前方へリフトされる。つまり、便座前部23を前方に引き出すだけで、便座前部23に設けられた小便受け27が斜め上前方にリフトされる。
【0016】
なお、スライドレール内にはストッパ溝31が設けられる一方で、接続バーの他端にストッパ突起部25fが設けられており、便座前部23を前方に引き出した際には図8に示すようにストッパ突起部31とストッパ溝25fとの係合により、便座前部23が便座本体部21から脱落しないようになっている。
【0017】
次に、この実施形態の作用効果を説明する。
【0018】
(1)この実施形態によれば、小便受け27を有する便座前部23が斜め上前方に突出自在であるため、便座前部23を斜め上前方に突出させると、図9に示すように小便受け27が着座した男性の小便排泄部Xの前方に位置することになる。そのため、図10に示す比較例の着座式便器100とは異なりコンパクトな着座式便器10であっても着座した男性の小便を確実に受けることができ、便器10およびその周辺を汚す心配がなくなる。
【0019】
(2)また、便座前部23が斜め上前方に突出されることで、小便受け27が便器本体11に干渉することなく使用位置(突出位置)に移動される。そのため、便器本体11を大型化したり改造する必要がなく、製造コストを低く抑えることができる。
【0020】
(3)またこの実施形態によれば、小便受け27は便座前部23の下部に設けられていため、便座前部23の初期位置(通常位置)では小便受け27は使用者の視覚に入らない。そのため、デザイン的にすっきりした商品価値の高い便器10となる。
【0021】
(4)またこの実施形態によれば、便座13は環状に形成され且つ分割ライン22よりも前方の便座前部23と後方の便座本体部21とに分割自在に構成されている。そのため、小便受け27の未使用時、つまり、便座前部23を前方上方に突出する前の初期位置では、便座13は切欠部などがない従来と同様の完全な環状形となるため、着座違和感がない。
【0022】
(5)またこの実施形態によれば、小便受け27が便座前部23と別部材であるため、必要に応じて小便受け27を取り外しておくこともできる。
【0023】
(6)またこの実施形態によれば、連結部25は、板バネで形成されるとともに一端部25aが便座前部23(または便座本体部21)に固定され且つ他端部25cが便座本体部21(または便座前部23)にスライド自在に装着されてなり、便座前部23を前方に引き出されると便座前部23を上方にリフトさせるように撓み復元する構造である。そのため、便座前部23を前方に向けて引き出すだけで、小便受け27を斜め前方上方の使用位置(便座前部の突出位置)に移動させることができる。これにより、便座前部23を前方(または上方)に移動させた後にさらに上方(または前方)に移動させる場合つまり2段階に移動させる場合に比べ、一度の動作で小便受け27を使用位置に移動でき、操作の煩わしさがない。またこの構造は、ヒンジや回転軸などを使わない簡素な構造であるため、製造コストが安くすむ利点もある。
【0024】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば下記の様な変更変更が可能である。
【0025】
(イ)上述の実施形態では、便座前部を手動で前方に引き出す構造であったが、本発明では便座前部がスイッチのON・OFF操作のみで自動で前方に引き出される構造であってもよい。
【0026】
(ロ)また上述の実施形態では、連結部は板バネで構成されているが、連結部は例えばヒンジや回転軸などを使った構造などその他の構造としてもよい。
【0027】
(ハ)また上述の実施形態では、小便受けは便座前部と別部材であるが、小便受けと便座とが一体成形されたものであってもよい。
【0028】
また、本発明はその他の変更も可能であり上述の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の着座式便器の側面図である。
【図2】同着座式便器の側面図であって、便座前部を前方に突出させた状態を示す図。
【図3】同着座式便器の便座の斜視図であって、図3aは通常状態を示す図であり、図3bは便座前部を前方に突出させた図である。
【図4】同着座式便器の便座を裏面からみた斜視図。(接続バーおよびスライドレールを除く)
【図5】同着座式便器の便座前部に取り付けられる小便受けの斜視図。
【図6】同着座式便器の拡大断面図であって、便座前部が初期位置にある状態を示す図。
【図7】同着座式便器の拡大断面図であって、便座前部が初期位置から突出位置に引き出される途中の状態を示す図。
【図8】同着座式便器の拡大断面図であって、便座前部が突出位置にある状態を示す図。
【図9】同着座式便器の使用状態を示す概略図。
【図10】比較例として単にコンパクト化した着座式便器の使用状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0030】
10…着座式便器
11…便器本体
13…便座
13a…便座開口部
21…便座本体部
22…分割ライン
23…便座前部
25…接続バー(連結部)
25a…一端部
25b…中央部
25c…他端部
27…小便受け
X…小便排泄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排便用開口部を有する便器本体と、便器本体の排便用開口部の周縁に被せられる便座と、を備えた着座式便器であって、
前記便座は、分割ラインよりも前方の便座前部と後方の便座本体部とに分割され、
前記便座前部は、小便受けが設けられ且つ前記便座本体部から連結部を介して前方上方へ突出自在であることを特徴とする着座式便器。
【請求項2】
請求項1に記載の着座式便器であって、
前記連結部は、板バネで形成されるとともにその一端が前記便座本体部および前記便座前部の一方に固定され且つその他端が前記便座本体部および前記便座前部の他方にスライド自在に装着されてなり、前記便座前部を前方に突出させると前記便座前部を上方にリフトさせるように撓み変形することを特徴とする着座式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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