説明

着用物品

【課題】 着用物品の吸収体を形成する吸液性芯材がこぼれることなく、芯材によって引き起こされる肌トラブルを防止する着用物品を提供する。
【解決手段】 パンティライナ1の表面シート11とクッションシート40との間には、これらを一体化する接合部60が形成される。接合部60は、ドット状に形成されるとともに、表面シート11からクッションシート40に向かって凹部を形成している。表面シート11から、クッションシート40を介して第1吸収体20および第2吸収体30に向かって、その厚さ方向にその断面がほぼV字の条溝70が形成される。条溝70は、接合部60によって形成される凹部よりも、その厚さ方向において深く形成されている。接合部60と条溝70とには、これらが重なり合う重なり部位80が形成される。第1吸収体20では、重なり部位80に対応する位置において、第1芯材21が実質的に存在しない実質的非存在領域26を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用物品に関し、さらに詳しくは、体液を吸収および保持することが可能であって、尿または女性性器から出る粘液・組織などのいわゆる下り物用パンティライナ、生理用ナプキンまたはパッド、使い捨ておむつ等の着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用物品である生理用ナプキンとして、例えば、特開2003−230593号公報(特許文献1)が公知である。特許文献1では、生理用ナプキンは、トップシートと、裏面シートと、これらシートの間に形成された吸収コアとを含む。トップシートと吸収コアとの間には、吸収促進シートが形成され、トップシートと吸収促進シートとが熱溶着によって間欠的に一体化されている。さらに、トップシートから吸収コアに向かって条溝が形成され、この条溝によって吸収コアに含まれる吸収体の変形を防止するとともに、体液が条溝の外側に流出するのを抑制している。
【特許文献1】特開2003−230593号公報(JP 2003−230593 A)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような着用物品において、熱溶着された部分に、条溝が位置し、これらが重なって形成されるトップシートの部分では、トップシートが破れやすく、破れたところから吸収体を形成する吸液性芯材がこぼれてしまうという可能性がある。こぼれた芯材が肌に付着すると、肌に刺激を与えて肌トラブルを引き起こしかねない。
【0004】
この発明では、着用物品の吸収体を形成する吸液性芯材がこぼれることなく、芯材によって引き起こされる肌トラブルを防止する着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、縦方向および横方向と、着用者の身体側に位置する表面シートと、前記身体側の反対側に位置する裏面シートと、前記表裏面シートの間に位置し吸液性芯材を含む吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に位置する中間シートと、前記表面シートと前記中間シートとを圧搾処理によって一体化する接合部と、前記表面シートから前記吸収体に向かって形成された条溝とを含む着用物品の改良に関わる。
【0006】
この発明は、前記着用物品において、前記接合部は、前記表面シートから前記中間シートに向かう凹部を形成し、前記条溝は、前記凹部よりも前記表面シートから前記吸収体に向かってその厚さ方向に深く形成され、前記接合部と前記条溝とは、少なくともその一部で重なって形成される重なり部位を含み、前記吸収体は、前記重なり部位に対応する部分で、前記吸液性芯材が実質的に存在しない実質的非存在領域が形成されることを特徴とする。
【0007】
好ましい実施態様のひとつとして、前記吸収体は、前記吸液性芯材を覆う被覆シートをさらに含む。
【0008】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記接合部は、前記表面シートの全域に亘って、ドット状に離間して形成される。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記接合部は、前記縦方向に延びるとともに、前記横方向に互いに離間して複数条形成される。
【0010】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記条溝は、複数形成されるとともに、前記横方向に互いに離間し、前記縦方向に延びて形成される。
【0011】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記接合部および条溝は、加熱圧搾処理によって形成される。
【0012】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記吸収体は、前記身体側に位置する第1吸収体と、前記第1吸収体に積層され前記反対側に位置する第2吸収体とを含み、前記第1吸収体に前記実質的非存在領域が形成され、前記条溝は、前記第2吸収体にまで到達する。
【発明の効果】
【0013】
この発明の着用物品では、接合部と条溝とが一致する重なり部位に対応する部分においては、吸収体の吸液性芯材が実質的に存在しない実質的非存在領域が形成されるので、たとえ表面シートが破れてしまったとしても、吸液性芯材がこぼれでて肌に接触するということがない。したがって、吸収体による肌トラブルを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明における着用物品の一例を説明する。
【0015】
この実施形態では、着用物品として尿用のパンティライナ1を例に挙げて説明する。図1はパンティライナ1の平面図であってその一部を破断した図、図2は図1のII−II線断面図、図3は図1のIII−III線断面図である。パンティライナ1は、縦方向Yとこれに直交する横方向Xとを含み、縦方向Yに縦長に形成されている。パンティライナ1は、身体側に位置する表面シート11と、身体側とは反対側であってパンティ等の着衣側に位置する裏面シート12と、これらシート11,12の間に形成された第1吸収体20および第2吸収体30と、表面シート11と第1吸収体20との間に形成されたクッションシート40とを含む。クッションシート40が、この発明でいう中間シートである。表面シート11と裏面シート12とは、その周囲において接着手段13を介して、好ましくは水密に接合されている。
【0016】
第1吸収体20と第2吸収体30とは、厚さ方向に積層され、第1吸収体20が表面シート11側に位置し、第2吸収体30が裏面シート12側に位置している。第1吸収体20は、高吸収ポリマーの粒子を含む第1芯材21と、第1芯材21を覆う第1被覆シート22とを含む。第2吸収体30は、高吸収ポリマー粒子およびパルプを含む第2芯材31と、第2芯材31を覆う第2被覆シート32とを含む。第1被覆シート22と第2被覆シート32とは、接合手段51によって間欠的に接合され、第2被覆シート32は、接着手段52を介して、裏面シート12に好ましくは間欠的に接合されている。
【0017】
第1吸収体20は、全体として略矩形に形成され、縦方向Yに延びる第1両側縁23,23と、横方向Xに延びる第1前後端縁24,25とを含む。第2吸収体30は、表裏面シート11,12とほぼ相似形を有し、これら表裏面シート11,12の接合部13の内側に沿って形成されるとともに、第2芯材31は、その全体に亘って配置されている。第1吸収体20は、第2吸収体30のほぼ中央に位置し、第1吸収体20が着用者の排泄位置に一致するようにしている。第2吸収体30は、第1吸収体20の少なくとも第1前後端縁24,25から縦方向Yの外側に延出する前後端延出部33,34を含み、第2吸収体30の面積を、第1吸収体20の面積よりも広くしている。ただし、第1および第2吸収体20,30の面積は、これらに限られることなく、たとえば同じ面積であってもよい。
【0018】
クッションシート40は、表裏面シート11,12の接合部13の内側に沿って形成される。クッションシート40は、パンティライナ1において着用者の肌に対するクッション性を向上させ、またこれら性質に加えて、体液を妄りに拡散させることなくスポット吸収することを可能とする、通気性かつ液透過性の繊維不織布等を用いることができる。
【0019】
表面シート11とクッションシート40との間には、これらを一体化する接合部60が形成される。これら接合部60は、表面シート11とクッションシート40とを加熱圧搾処理することによって形成される。すなわち、表面シート11とクッションシート40とは、熱可塑性を有し、これらを熱溶融させて一体化させている。接合部60は、ドット状に形成されるとともに、シート11,40の横方向Xの中央近傍において縦方向Yに延びて形成されている。このような接合部60は、表面シート11からクッションシート40に向かって凹部を形成している。
【0020】
表面シート11から、クッションシート40を介して第1吸収体20および第2吸収体30に向かって、その厚さ方向にその断面がほぼV字の条溝70が形成される。条溝70の断面は、ほぼU字であってもよい。この条溝70は、横方向Xに離間して2条形成され、少なくとも、第1吸収体20の第1前端縁24から第1後端縁25に到達するように縦方向Yに延びている。条溝70は、加熱圧搾処理によって形成されるが、各シート等が熱溶融されない程度に処理している。条溝70は、接合部60によって形成される凹部よりも、その厚さ方向において深く形成されている。
厚さ方向に比較的深い条溝70を形成する場合には、条溝70の側方において表面シート11が吸収体側から浮き上がりやすく、これを防止するために接合部60が形成され、表面シート11が浮き上がってクッションシート40から離間しないようにしている。
【0021】
上記のように、表面シート11およびクッションシート40には、接合部60と条溝70とが形成され、接合部60の一部と条溝70とが重なり合う重なり部位80が形成される。少なくとも重なり部位80に対応する位置において、第1吸収体20では、第1芯材21が実質的に存在しない実質的非存在領域26を形成している。ここで実質的非存在領域26とは、吸液性の芯材が全く存在しない場合や、吸収体として十分な吸液容量を有しない程度の僅かに存在するような場合を意味する。
具体的に、実質的非存在領域26は条溝70に沿って形成され、条溝70と同様に、縦方向Yに延びるとともに、横方向Xに離間して形成される。このように、条溝70に沿って実質的非存在領域26を形成することによって、接合部60と条溝70との重なり部位80において、確実に第1芯材21が実質的に存在しないようにすることができる。
【0022】
図2に示したように、第1吸収体20の実質的非存在領域26では、条溝70が形成されることによって、厚さ方向の上下に位置する第1被覆シート22が互いに直接接触するとともに、この第1被覆シート22と表面シート11とが接触し、第2吸収体30ではその第2芯材31が圧搾されている。第2芯材31の圧搾によって、この部分の芯材の密度が他の部分に比べて高くなっている。また、実質的非存在領域26の横方向Xの長さ寸法が、対応する条溝70および接合部60の横方向Xの長さ寸法よりも大きくなるようにして、重なり部位80が実質的非存在領域26からはみ出ることなく、その範囲に収まるようにしている。
【0023】
上記のような構成によれば、条溝70であって少なくとも重なり部位80に対応する部分では、実質的非存在領域26が形成される。接合部60と条溝70との重なり部位80では、接合部60と条溝70とが加熱圧搾処理によって形成されることから、表面シート11およびクッションシート40が部分的に薄くなり、破れやすくなっている。しかし、重なり部位80に対応する部分において、実質的非存在領域26を形成しているので、たとえシート11,40が破れたとしても、第1芯材21が存在しないのであるから、これがこぼれでるということがない。また、実質的非存在領域26では、第1芯材21を覆う第1被覆シート22がその厚さ方向上下において互いに接合されるので、第1芯材21が第1被覆シート22からこぼれでるのをさらに抑制することもできる。
【0024】
条溝70が形成されることによって、第2吸収体30には圧搾による高密度領域が形成されるので、尿等の体液が条溝70を介して、第2吸収体30に速やかに吸収される。したがって、表面シート11に体液が長時間にわたって残存することがなく、体液が着用者に長時間付着することによる肌トラブルを防止することができる。また、第1吸収体20の実質的非存在領域26に重なって第2吸収体30の第2芯材31が形成されるので、この領域における体液の吸収を担保することができる。
【0025】
第1吸収体20および第2吸収体30に条溝70を形成することによって、第1芯材21および第2芯材31のよれを抑制し、第1および第2吸収体20,30を保形することができる。また、2条の条溝70を離間させて形成することによって、これらの間に体液の排泄があった場合に、条溝70の外側への体液の流動を物理的に妨げる障壁として機能させることができる
【0026】
表面シート11としては、透液性の繊維不織布等を用いることができ、裏面シート12としては、不透液性のフィルム等を使用することができる。第1および第2被覆シート22,32としては液拡散性のティッシュペーパー等を使用することができる。第1芯材21としては、高吸収性ポリマー粒子を用いているが、吸液性を有するものであれば、パルプなどの他の芯材を用いることができ、これらを組み合わせて使用することもできる。同様に、第2芯材31として、パルプや高吸収性ポリマー粒子、これらの組み合わせを使用することができる。また、第1および第2芯材21,31として同じ構成の芯材を用いることもできる。
【0027】
この実施形態において、接合部60は、ドット状にしているが、必ずしもドット状である必要はなく、表面シート11とクッションシート40とが、条溝70の形成時に離間しないようにできるものであれば、その形状や位置等は適宜選択することができる。例えば、縦方向Yに延びるとともに、横方向Xに互いに離間する複数条の接合部60とすることもできる。また、条溝70は、縦方向Yに2条形成されているが、これに限ったものではない。ただし、第1および第2吸収体20,30の保形の機能を発揮するためには、少なくとも第1および第2吸収体20,30に形成される必要がある。また、条溝70は、縦方向Yに延びるものの他、横方向に延びるものであってもよく、さらに一方向に延びるものだけでなく、波形を画いたり環状に形成されたりするものでもよい。
【0028】
上記のような構成において、表面シート11とクッションシート40とに接合部60を形成し、これを間欠的に一体化させてシート体とした後、このシート体を第1吸収体20と第2吸収体30との積層体に重ね合わせてから条溝70を形成するために加熱圧搾処理することができる。
【0029】
上記の実施形態では、表面シート11とクッションシート40との間に接合部60を形成し、これらを部分的に一体化させているが、クッションシート40を含まないものであってもよい。この場合には、表面シート11と第1吸収体20の第1被覆シート22との間に接合部60が形成され、第1被覆シート22によってこの発明の中間シートを形成することができる。表面シート11と第1被覆シート22との間に接合部60を形成する場合には、第1吸収体20の第1芯材21を第1被覆シート22で被覆してから、表面シート11を第1被覆シート22に積層して接合部60を形成することができる。
【0030】
吸収体は、第1吸収体20と第2吸収体30とを含むこととしているが、いずれか一方のみを含む場合であってもよい。また、条溝70が第2吸収体30にまで到達するようにしているが、必ずしも、この構成に限ったものではない。ただし、条溝70が第2吸収体30にまで到達することによって、第2吸収体30への体液の吸収速度を促進し、第2吸収体30の保形を図ることができる。これら機能を発揮させるために、条溝70は、第2吸収体30の厚さの30%以上、特に50%以上の深さを有することが望ましい。
【0031】
この発明において、接合部60および条溝70を加熱圧搾処理によって形成することとしているが、その他の公知の技術を用いることができる。接着手段13,51,52として、接着剤、サーマルまたはウルトラソニックボンド等の慣用技術を利用することができる。また、裏面シート12として、不透液性のプラスチックフィルム等を用いることができるが、裏面シート12の着衣側に、肌触りを考慮した繊維不織布をさらに形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】パンティライナの正面図。
【図2】図1のII−II線断面概要図。
【図3】図1のIII−III線断面概要図。
【符号の説明】
【0033】
1 パンティライナ
11 表面シート
12 裏面シート
20 第1吸収体
21 第1芯材
22 第1被覆シート
26 実質的非存在領域
30 第2吸収体
31 第2芯材
40 クッションシート(中間シート)
60 接合部
70 条溝
80 重なり部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、着用者の身体側に位置する表面シートと、前記身体側の反対側に位置する裏面シートと、前記表裏面シートの間に位置し吸液性芯材を含む吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に位置する中間シートと、前記表面シートと前記中間シートとを圧搾処理によって一体化する接合部と、前記表面シートから前記吸収体に向かって形成された条溝とを含む着用物品において、
前記接合部は、前記表面シートから前記中間シートに向かう凹部を形成し、前記条溝は、前記凹部よりも前記表面シートから前記吸収体に向かってその厚さ方向に深く形成され、
前記接合部と前記条溝とは、少なくともその一部で重なって形成される重なり部位を含み、前記吸収体は、前記重なり部位に対応する部分で、前記吸液性芯材が実質的に存在しない実質的非存在領域が形成されることを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記吸液性芯材を覆う被覆シートをさらに含む請求項1記載の着用物品。
【請求項3】
前記接合部は、ドット状に互いに離間して形成される請求項1または2記載の着用物品。
【請求項4】
前記接合部は、前記縦方向に延びるとともに、前記横方向に互いに離間して複数条形成される請求項1または2記載の着用物品。
【請求項5】
前記条溝は、複数形成されるとともに、前記横方向に互いに離間し、前記縦方向に延びる請求項1〜4のいずれかに記載の着用物品。
【請求項6】
前記接合部および条溝は、加熱圧搾処理によって形成される請求項1〜5のいずれかに記載の着用物品。
【請求項7】
前記吸収体は、前記身体側に位置する第1吸収体と、前記第1吸収体に積層され前記反対側に位置する第2吸収体とを含み、前記第1吸収体に前記実質的非存在領域が形成され、前記条溝は、前記第2吸収体にまで到達する請求項1〜6のいずれかに記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−119605(P2010−119605A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296101(P2008−296101)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】