説明

着脱体付き情報端末及び着脱体

【課題】通常の情報端末に対して装着するだけで、ネットワーク接続可能な無線タグ通信装置を手軽に実現する。
【解決手段】ノートパソコン1と、このノートパソコン1に対し着脱可能に設けられたコネクタ無線装置3とを有し、コネクタ無線装置3は、無線LAN通信を介し他の機器とネットワーク接続するための無線LAN用内部アンテナ24と、無線タグ回路素子Toに対し、無線LAN通信とは排他的に制御されたRFID通信を介し情報の送受信を行うためのRFID用内部アンテナ25とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末本体に着脱体を着脱可能に取り付けた着脱体付き情報端末及びその着脱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグと、リーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。無線タグラベルに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えており、無線タグラベルが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても、質問器側よりIC回路部の無線タグ情報に対してアクセス(情報の読み取り/書き込み)が可能であり、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
このように種々の分野において活用されつつある無線タグを用いた無線通信システムの1つとして、無線タグ回路素子(ICタグ)に対し無線通信により情報の読み取りや書き込みを行う無線タグ通信装置がある(例えば、特許文献1参照)。この無線タグ通信装置においては、無線タグ回路素子に対して問いかけ信号を送信し、通信範囲内に存在する無線タグ回路素子から応答信号を受信することにより、それら無線タグ回路素子に対し情報読み取り又は書き込みが行われるようになっている。またこの無線タグ通信装置は、ネットワークを介してサーバへ接続されており、無線タグ回路素子から読み出した情報(コード情報)をキーとしてそのネットワークを介しサーバへアクセスすることで、その無線タグ回路素子が付された物品(対象物)の情報を取得するようになっている。
【特許文献1】特開2006−79217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、システムを構築する場合に、パソコン等の既存の情報端末とは別に、ネットワーク接続可能な無線タグ通信装置を新たに設置する必要があった。
【0005】
本発明の目的は、通常の情報端末に対して装着するだけで、ネットワーク接続可能な無線タグ通信装置を手軽に実現することができる着脱体付き情報端末及び着脱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、端末本体と、この端末本体に対し着脱可能に設けられた着脱体とを有する着脱体付き情報端末であって、前記着脱体は、第1無線通信を介し他の機器とネットワーク接続するための機器用通信手段と、情報を記憶するIC回路部及び情報の送受信を行うタグ側アンテナを有する無線タグ回路素子に対し、前記第1無線通信とは異なる第2無線通信を介し情報の送受信を行うためのタグ用通信手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本願第1発明の着脱体付き情報端末においては、他の機器へのネットワーク接続機能を備えた機器用通信手段と無線タグ回路素子への情報送受信機能を備えたタグ用通信手段とを着脱体に設けることにより、通常の情報端末に対し、当該着脱体を装着するだけで、ネットワーク機器及び無線タグ通信装置として機能させることができる。すなわち、ネットワーク接続可能な無線タグ通信装置を手軽に実現することができる。
【0008】
またこのとき、機器用通信手段を用いて行う第1無線通信とは異なる第2無線通信によって、タグ用通信手段が無線タグ回路素子と情報送受信を行う(例えば、少なくとも無線タグ回路素子コマンド送信について排他的に制御される通信を行う)ことにより、両無線通信による電波干渉の発生を防止できるので、無線タグ回路素子に対し円滑な通信を確保して情報送受信の信頼性を向上することができる。
【0009】
第2発明は、上記第1発明において、前記タグ用通信手段は、前記無線タグ回路素子に対し、前記第1無線通信とは排他的に制御された第2無線通信を介し情報の送受信を行うことを特徴とする。
【0010】
これにより、両方の無線通信が同じタイミングで並存することによる電波干渉の発生を防止できるので、無線タグ回路素子に対し円滑な通信を確保して情報送受信の信頼性を向上することができる。
【0011】
第3発明は、上記第2発明において、前記第2無線通信を前記第1無線通信よりも優先し、前記タグ用通信手段による前記第2無線通信が行われていないときに前記機器用通信手段による前記第1無線通信を許容する優先制御手段を有することを特徴とする。
【0012】
機器用通信手段を用いて行う第1無線通信は、優先制御手段により、タグ用通信手段を用いた第2無線通信が行われていないときにのみ許容(許可)されるので、第2無線通信時に第1無線通信が並存することによる電波干渉の発生を確実に防止することができる。
【0013】
第4発明は、上記第3発明において、第3無線通信を介し操作具からの操作信号を入力するための操作用通信手段を有し、前記優先制御手段は、前記第3無線通信を前記第2無線通信よりも優先し、前記操作用通信手段による前記第3無線通信が行われていないときに前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を許容することを特徴とする。
【0014】
操作具の操作に対応した操作信号が第3無線通信を介し操作用通信手段で入力されることで、当該操作に対応した種々の動作を情報端末側で行うことができる。このとき、タグ用通信手段を用いた第2無線通信は、優先制御手段により、操作用通信手段を用いて行う第3無線通信が行われていないときにのみ許容(許可)される。この結果、無線通信による操作具を用いる場合であっても、第2無線通信時における電波干渉の発生を確実に防止することができる。
【0015】
第5発明は、上記第2発明において、前記タグ用通信手段による前記第2無線通信と、前記機器用通信手段による前記第1無線通信とを、時間的に切り替えて実行するように制御する切替制御手段を有することを特徴とする。
【0016】
機器制御手段により第1無線通信は第2無線通信と異なる時間において実行されるので、第2無線通信時における電波干渉の発生を防止することができる。
【0017】
第6発明は、上記第2乃至第5のいずれかの発明において、前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を行うときに所定の報知を行う第1報知手段を有することを特徴とする。
【0018】
これにより、第2無線通信によって無線タグ回路素子と情報送受信を行っていることを操作者に確実に認知させることができる。
【0019】
第7発明は、上記第2乃至第6のいずれかの発明において、前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を介し、前記無線タグ回路素子の識別情報を取得する識別情報取得手段を有することを特徴とする。
【0020】
タグ用通信手段を用いた第2無線通信時において、識別情報取得手段によって無線タグ回路素子からその識別情報を読み取って取得することができ、これを用いてデータベース等にアクセスすることで対応する対象物情報等を取得することが可能となる。
【0021】
第8発明は、上記第7発明において、前記着脱体は、少なくとも、前記無線タグ回路素子の前記識別情報とこれに対応する対象物の識別情報との相関を格納可能な記憶手段を有することを特徴とする。
【0022】
これにより、識別情報取得手段で取得した無線タグ回路素子の識別情報を用いて記憶手段のデータベースにアクセスし、対応する対象物情報等を取得することができる。
【0023】
第9発明は、上記第7又は第8発明において、前記識別情報取得手段による前記識別情報の取得が成功したとき、これに対応した所定の報知を行う第2報知手段とを有する。
【0024】
これにより、第2無線通信による無線タグ回路素子との情報送受信の結果、識別情報の取得に成功したことを操作者に確実に認知させることができる。
【0025】
第10発明は、上記第2乃至第9のいずれかの発明において、前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を介し、前記無線タグ回路素子の前記IC回路部に所定の情報を書き込む書き込み制御手段を有することを特徴とする。
【0026】
これにより、第2無線通信時において、タグ用通信手段を介しIC回路部に所定の情報を書き込むことができる。
【0027】
上記目的を達成するために、第11発明は、情報端末に着脱可能な着脱体であって、無線通信を介し他の機器とネットワーク接続するための機器用通信手段と、情報を記憶するIC回路部及び情報の送受信を行うタグ側アンテナを有する無線タグ回路素子に対し、無線通信を介し情報の送受信を行うためのタグ用通信手段とを備えることを特徴とする。
【0028】
本願第11発明の着脱体においては、他の機器へのネットワーク接続機能を備えた機器用通信手段と無線タグ回路素子への情報送受信機能を備えたタグ用通信手段とを有していることにより、通常の情報端末に対し、当該着脱体を装着するだけで、ネットワーク機器及び無線タグ通信装置として機能させることができる。すなわち、ネットワーク接続可能な無線タグ通信装置を手軽に実現することができる。
【0029】
第12発明は、上記第11発明において、前記タグ用通信手段による無線通信を行うときに所定の報知を行う報知手段を有することを特徴とする。
【0030】
これにより、タグ用通信手段を用いた無線通信によって無線タグ回路素子と情報送受信を行っていることを操作者に確実に認知させることができる。
【0031】
第13発明は、上記第11又は第12発明において、少なくとも、前記無線タグ回路素子の前記識別情報とこれに対応する対象物の識別情報との相関を格納可能な記憶手段を有することを特徴とする。
【0032】
これにより、タグ用通信手段を介した情報送受信によって無線タグ回路素子から識別情報を取得したときに、その識別情報を用いて記憶手段のデータベースにアクセスし、対応する対象物情報等を取得することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、通常の情報端末に対して装着するだけで、ネットワーク接続可能な無線タグ通信装置を手軽に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1は、本実施形態の着脱体及びそれを装着させる情報端末の外観を表す斜視図である。
【0036】
この図1において、この例では情報端末の端末本体としてのノートパソコン1(以下、PC1という)に対し、そのPC1が備えるUSB接続部2に着脱体であるコネクタ無線装置3が装着できるようになっている。
【0037】
コネクタ無線装置3は、この例では、単体の独立した直方体形状の本体部4を有し、この本体部4に設けたUSBコネクタ部5で上記USB接続部2に任意に着脱できるようになっている。そして装着時には、被装着側(この例ではPC1)のメモリなどに記憶されているアプリケーションソフトウェアなどにより例えば無線LANアクセスポイント6などを介してLANやインターネットなどのネットワークに接続するための無線LAN通信(第1無線通信;例えばIEEE802.11など)と、無線タグ7に対して情報の読み取り/書き込みを行うためのRFID通信(第2無線通信;例えばEPC Class1 Generation2やISO15693など)と、ワイヤレス機器(図示する例では操作具としてのワイヤレスマウス8)と情報通信を行うためのワイヤレス機器通信(第3無線通信;Bluetoothなど)との各規格に従った3種類の無線通信を行うことができるようになっている。
【0038】
図2は、本実施形態のコネクタ無線装置3のシステム構成図である。この図2において、このコネクタ無線装置3は、本体部4を構成する筐体11の内部に、CPU12と、LED(第1報知手段;報知手段)13と、チャイム(第2報知手段。スピーカ等他の発声手段でもよい)14と、記憶部(記憶手段)15と、信号処理回路16と、スイッチ回路17と、無線LAN高周波回路18と、RFID高周波回路19と、ワイヤレス機器高周波回路20と、USB通信制御部21とを備えており、そのうちのCPU12と記憶部15と信号処理回路16とUSB通信制御部21はバス22を介して制御信号やデータを送受可能に接続されている。
【0039】
CPU12は、RAMやROMなどのメモリを内蔵したいわゆるマイクロコンピュータであり、そのRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってスイッチ回路17を制御して無線LAN通信、RFID通信、及びワイヤレス機器通信のそれぞれの禁止と許可を任意に切り替えて通信を行うとともに、記憶部15内のデータなどの管理とUSB通信制御部21を介したPC1との通信制御を行うようになっている。
【0040】
LED13はCPU12から制御信号が出力されている間だけ点灯するものであり、チャイム14はCPU12から出力される制御信号により所定の報知音を出力するものである。
【0041】
記憶部15は、例えばフラッシュメモリなどからなる読み取りと書き込みが可能な記憶装置であり、無線LANやワイヤレス機器との通信に必要な各種設定やデータを記憶するとともに無線タグTに関する各種情報を記憶する内部データベース23を備えている。なお、この内部データベース23は、例えば、後述の無線タグ回路素子ToのタグIDとこれに対応する対象物の属性情報(品名、大きさ、管理場所、管理者名など)との相関という形態で情報を格納している。
【0042】
無線LAN高周波回路18、RFID高周波回路19、及びワイヤレス機器高周波回路20は、それぞれ無線LAN用内部アンテナ(機器用通信手段)24、RFID用内部アンテナ(タグ用通信手段)25、及びワイヤレス機器用内部アンテナ(操作用通信手段)26を介して無線LANアクセスポイント6、無線タグ7またはワイヤレス機器8へアクセスする(送受信を行う)ための回路である。なお、ここでは各高周波回路18,19,20の構成について特に詳しく説明しないが、例えば、無線LAN高周波回路18は2.4GHz(あるいは5GHz)の周波数帯で、RFID高周波回路19は13.56MHzの周波数帯で、ワイヤレス機器高周波回路20は27MHz(あるいは2.4GHz)の周波数帯で公知の各無線通信の方式に従って変調・復調を行う。
【0043】
スイッチ回路17は、例えば、周知のFETやダイオードあるいはリレーを用いた回路であり、CPU12からの制御信号により無線LAN高周波回路18、RFID高周波回路19、及びワイヤレス機器高周波回路20のそれぞれの信号処理回路16との接続・切断を切り替えるものである。信号処理回路16はそれら高周波回路18,19,20との間で送受した信号を処理してバス22を介しCPU12との間で授受する、またはその逆を行う回路である。
【0044】
USB通信制御部21は、この例のPC1のUSB接続部2に接続可能なUSBコネクタ部5を備えており、バス22を介してCPU12との間で送受した信号をUSB(Universal Serial Bus)規格に従ってPC1と送受するものである。
【0045】
また無線タグ7は、無線タグ回路素子Toを例えばカード状又はラベル状のタグ本体33に備えたものである。無線タグ回路素子Toは、タグID(無線タグ回路素子Toの識別情報)を少なくとも含む無線タグ情報を記憶するIC回路部31と、その無線タグ情報の送受信を行うタグ側アンテナ32とが備えられている。
【0046】
以上において、本実施形態では、その大きな特徴として、PC1に装着したコネクタ無線装置3においてRFID通信に対し他の規格の無線通信を排他的に制御する。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0047】
図3は、上記コネクタ無線装置3のCPU12によって実行される制御手順を表すフローチャートである。なお、この制御手順はPC1のアプリケーションソフトによって行われる手順であり、コネクタ無線装置3のCPU12はPC1からの指示に従って下記のフローの手順を補助するようコネクタ無線装置3の内部を制御する。
【0048】
この図3において、PC1で対応するアプリケーションソフトが起動されたことがUSB通信制御部21を介し検知されたら、このフローが開始される。
【0049】
まず、ステップS5において、無線LAN高周波回路18を介し無線LAN通信を用いて外部データベースサーバ(特に図示せず)にアクセス(後述する図4のステップS120参照)するためのIPアドレス(Internet Protocol Address)の設定を行い、次のステップS10へ移る。
【0050】
ステップS10では、スイッチ回路17に制御信号を出力して無線LAN高周波回路18とワイヤレス機器高周波回路20をそれぞれ信号処理回路16に接続して、無線LANアクセスポイント6との間の無線信号の送受信とワイヤレスマウス8(この例のワイヤレス機器)からの無線信号の受信を許可する。さらに、RFID高周波回路17を信号処理回路16から切断し、RFIDコマンドの送受信を禁止する。
【0051】
次にステップS15へ移り、ワイヤレス機器用内部アンテナ26及びワイヤレス機器高周波回路20を介してワイヤレスマウス8からの信号の受信があるか否かを判定する。ワイヤレスマウス8から無線信号が受信されている場合、判定は満たされ、すなわちワイヤレスマウス8が操作者によって操作されているものとみなされ、次のステップS20で受信した操作信号をPC1へ送信し、ステップS15へ戻って操作信号を受信している間このループを繰り返してワイヤレスマウス8の操作に対する処理を行う。このようにステップS15とステップS20のループを行っている間は、他の無線LAN及びRFIDの通信に優先してワイヤレスマウス8の操作処理だけ行われることになる。
【0052】
一方、ワイヤレスマウス8から何も信号が受信されていない場合、判定は満たされず、すなわちワイヤレスマウス8が操作されていないものとみなされ、次のステップS25へ移る。
【0053】
ステップS25では、スイッチ回路17に制御信号を出力して無線LAN高周波回路18とワイヤレス機器高周波回路20をそれぞれ信号処理回路16から切断して、無線LANアクセスポイント6との間の無線信号の送受信とワイヤレスマウス8からの無線信号の受信を禁止する。そして、信号処理回路16をRFID高周波回路19に接続し、RFIDコマンドの送受信を許可する。
【0054】
次にステップS30へ移り、無線タグ7に対してRFIDコマンドの送信を開始する。具体的には、無線タグ回路素子Toが受信した場合に応答信号を返信するよう要求する「Scroll All ID」コマンドなどの応答要求信号を信号処理回路16に生成させ、RFID高周波回路19及びRFID用内部アンテナ25から無線タグ7の無線タグ回路素子Toに向け、送信を終了する手順(後述のステップS55又はステップS75参照)まで(たとえば所定の間隔で繰り返して)送信し続ける。
【0055】
次にステップS35で、操作者にRFID通信を行っていることを示すためにLED13に制御信号を出力して点灯させ、ステップS40へ移る。
【0056】
ステップS40では、読み取り可能な無線タグ7があるか否かを判定する。具体的には、上記ステップS30で送信した応答要求コマンドに対する無線タグ回路素子Toからの応答信号が、RFID用内部アンテナ25及びRFID高周波回路19を介し受信されたか否かを判定する。読み取り可能な無線タグ7がある場合、すなわち応答信号が受信された場合、判定が満たされ、次のステップS45へ移る。
【0057】
ステップS45では、上記ステップS40で応答信号の返信を確認でき信号処理回路16へ取り込まれた無線タグ回路素子Toの応答信号から、そのタグID及び対応する物品(対象物)情報等のデータ(IC回路部31が記憶しているものとする)を抽出し取得する。
【0058】
次にステップS50へ移り、操作者へ無線タグ7の情報読み取りが完了したことを報知するためにチャイム14に制御信号を出力して報知音を鳴らして、次のステップS55で信号処理回路16に制御信号を出力して上記ステップS30から継続しているRFIDコマンドの送信を終了する。なお、上記ステップS50での操作者への報知については、チャイム14からの報知音に加え、さらにLED13を上記ステップS35と異なる態様で点灯させる(異色で点灯あるいは点滅させる等)ことも有効である。
【0059】
次にステップS60へ移り、上記ステップS10と同様の制御により、RFIDコマンドの送受信を禁止し、無線LANアクセスポイント6との間の無線信号の送受信とワイヤレスマウス8からの無線信号の受信を許可し、次のステップS65で操作者にRFID通信が終了したことを示すためにLED13に制御信号を出力して消灯させ、次のステップS100へ移る。
【0060】
ステップS100では、上記ステップS45で読み取ったタグIDに基づいてそれに対応する各種タグ情報(対象物情報)をデータベースから取得するタグ情報取得処理を行う(後述の図4のフロー参照)。
【0061】
その後、ステップS70へ移り、USB通信制御部21を介しPC1より各種無線通信を終了するための操作信号が入力されたか否かを判定し、終了操作が行われていない場合、判定が満たされず、ステップS15へ戻って同様の手順を繰り返す。一方、終了操作が行われた場合、判定が満たされ、このフローを終了する。なお、この終了操作は、例えば図5に示す画面で「停止」と書かれたボタンを押下することにより行われる。
【0062】
また一方、上記ステップS40の判定において、読み取り可能な無線タグ7が見つからなかった場合、すなわち無線タグ回路素子Toからの応答信号をなにも受信できなかった場合、判定が満たされず、ステップS75へ移る。
【0063】
ステップS75では、信号処理回路16に制御信号を出力して上記ステップS30から継続しているRFIDコマンドの送信を終了する。その後、ステップS80で上記ステップS10と同様の制御により、無線LANアクセスポイント6との間の無線信号の送受信とワイヤレスマウス8からの無線信号の受信を許可した後、次のステップS85で操作者にRFID通信が終了したことを示すためにLED13に制御信号を出力して消灯させてからステップS15へ戻って同様の手順を繰り返す。
【0064】
以上のフローを行うことにより、ワイヤレスマウス8を操作している間はステップS15とステップS20のループにおいてワイヤレスマウス8の操作処理を優先的に行い、ステップS25からステップS60またはステップS80までの間の手順では無線LAN通信及びワイヤレス機器通信が禁止されてRFID通信だけを行い、無線LAN通信はそれ以外において行うことができる。つまり、ワイヤレス機器通信が最優先で行われ、RFID通信は、無線LAN通信とは排他的に無線LAN通信よりも優先して行われる。
【0065】
図4は、CPU12が図3中のステップS100において実行するタグ情報取得処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0066】
図4において、まずステップS105において、記憶部15へアクセスし、前述のステップS45で取得したタグIDをキーに内部データベース23を検索する。
【0067】
次にステップS110へ移り、上記ステップS105の検索においてタグIDが内部データベース23にすでに登録されているか否かを判定する。タグIDが登録されている場合、判定は満たされ、ステップS115に移って当該タグIDに対応するタグ情報を検索して取得し、ステップS140へ移る。
【0068】
また一方、上記ステップS110の判定において、タグIDが登録されていない場合、判定は満たされず、次のステップS120へ移る。
【0069】
ステップS120では、無線LAN高周波回路18を介し、無線LAN通信及びインターネットを用いて上記ステップS5で設定したIPアドレスに基づき外部のデータベースサーバ(特に図示せず)にアクセスし、より大きな容量で最新のタグ情報が蓄積されている当該外部データベースサーバにおいて、上記タグIDをキーとして検索を実行する。
【0070】
次にステップS125へ移り、上記ステップS120の検索においてタグIDが外部データベースサーバにすでに登録されているか否かを判定する。タグIDが登録されている場合、判定は満たされ、ステップS130でタグIDに対応するタグ情報を検索して取得し、ステップS140へ移る。
【0071】
また一方、上記ステップS125の判定において、タグIDが登録されていない場合、判定は満たされず、次のステップS135でタグIDがどのデータベースにも未登録であることをUSB通信制御部21を介して通知し(通知信号を出力し)、このフローを終了する。
【0072】
そしてステップS115またはステップS130でタグIDに対応する無線タグ情報(対応する物品情報すなわち対象物情報等)を取得した後に移行するステップS140では、取得した無線タグ情報をUSB通信制御部21を介し検索結果としてPC1に出力し、PC1では前述の図5に例示したような画面出力によりユーザに情報を提供してこのフローを終了する。
【0073】
以上において、上記図3のフローにおけるステップS10、ステップS15、ステップS25、ステップS60、及びステップS80の手順が、RFID通信を無線LAN通信よりも優先し、RFID用内部アンテナ25によるRFID通信が行われていないときに無線LAN用内部アンテナ24による無線LAN通信を許容するとともに、ワイヤレス機器通信をRFID通信よりも優先し、ワイヤレス機器用内部アンテナ26によるワイヤレス機器通信が行われていないときにRFID用内部アンテナ25によるRFID通信を許容する優先制御手段として機能する。
【0074】
また、図3のフローにおけるステップS45の手順が、RFID用内部アンテナ25によるRFID通信を介し、無線タグ回路素子ToのタグIDを取得する識別情報取得手段として機能する。
【0075】
以上のように構成した本実施形態においては、他の機器へのネットワーク接続機能を備えた無線LAN用内部アンテナ24と無線タグ回路素子Toへの情報送受信機能を備えたRFID用内部アンテナ25とをコネクタ無線装置3に設けることにより、通常の情報端末であるPC1に対し、当該コネクタ無線装置3を装着するだけで、ネットワーク機器及び無線タグ通信装置として機能させることができる。すなわち、ネットワーク接続可能な無線タグ通信装置を手軽に実現することができる。
【0076】
またこのとき、RFID用内部アンテナ25を用いて行うRFID通信と無線LAN用内部アンテナ24を用いて行う無線LAN通信とが排他的に制御されていることにより、両方の無線通信が同じタイミングで並存することによる電波干渉の発生を防止できるので、無線タグ回路素子Toに対し円滑な通信を確保して情報送受信の信頼性を向上することができる。
【0077】
また、この実施形態では特に、無線LAN用内部アンテナ24を用いて行う無線LAN通信は、上記図3のフローにおけるステップS10、ステップS25、ステップS60、及びステップS80の手順により、RFID用内部アンテナ25を用いたRFID通信が行われていないときにのみ許容(許可)されるので、RFID通信時に無線LAN通信が並存することによる電波干渉の発生を確実に防止することができる。
【0078】
また、この実施形態では特に、ワイヤレスマウス8の操作に対応した操作信号がワイヤレス機器通信を介しワイヤレス機器用内部アンテナ26で入力されることで、当該操作に対応した種々の動作をPC1側で行うことができる。このとき、RFID用内部アンテナ25を用いたRFID通信は、上記図3のフローにおけるステップS15の手順により、ワイヤレス機器用内部アンテナ24を用いて行うワイヤレス機器通信が行われていないときにのみ許容(許可)される。この結果、無線通信によるワイヤレスマウス8を用いる場合であっても、RFID通信時における電波干渉の発生を確実に防止することができる。
【0079】
また、この実施形態では特に、RFID用内部アンテナ25によるRFID通信を行うときに点灯報知させるLED13を有していることにより、RFID通信によって無線タグ回路素子Toと情報送受信を行っていることを操作者に確実に認知させることができる。なお、この情報送受信中であることを認知させる第1報知手段は、LED13に限られずに、例えばPC1の表示画面で報知するよう表示するなど他の態様で行うことも可能である。
【0080】
また、この実施形態では特に、コネクタ無線装置3は、少なくとも、無線タグ回路素子ToのタグIDとこれに対応する対象物の情報との相関を格納可能な内部データベース23を有していることにより、上記図3におけるステップS45の手順で取得した無線タグ回路素子ToのタグIDを用いて内部データベース23にアクセスし、対応する対象物情報等を取得することができる。
【0081】
また、この実施形態では特に、上記図3におけるステップS45の手順によるタグIDの取得が成功したとき、これに対応した所定の報知音を発するチャイム14を有していることにより、RFID通信による無線タグ回路素子Toとの情報送受信の結果、タグIDの取得に成功したことを操作者に確実に認知させることができる。なお、この情報送受信が成功したことを認知させる第2報知手段は、チャイム14からの報知音に限られずに、例えばPC1の表示画面で報知するよう表示するなど他の態様で行うことも可能である。
【0082】
なお、この実施形態では、RFID用内部アンテナ25によるRFID通信と、無線LAN用内部アンテナ24による無線LAN通信とを各制御手順中の手順範囲(つまりフロー中の手順範囲)で切り替えて実行するようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば各無線通信の処理を所定の短時間だけ行って強制的に切り替えるいわゆる時分割処理で実行(時間的に切り替えて実行)するようにしてもよい。このときの時分割で切り替える制御手順が、切替制御手段として機能する。これにより、時分割で切り替える制御手順により無線LAN通信はRFID通信と異なる時間において実行されるので、RFID通信時における電波干渉の発生を防止することができる。
【0083】
また、無線タグ7が備える無線タグ回路素子ToのIC回路部31が書き換え可能(Rewritable)なメモリ部を有している場合には、例えば上記図3のフローにおけるステップS45でタグIDの読み取りを行った後、ステップS45とステップS50の間に新たに書き込み制御手順を設け、ステップS45で取得したタグIDを用いて書き込み対象の無線タグ回路素子Toを特定し「Program」信号などを用いて当該特定した無線タグ回路素子ToのIC回路部31に所定の情報を書き込むようにしてもよい。このときの情報を書き込む制御手順が書き込み制御手段として機能する。
【0084】
また、この実施形態ではコネクタ無線装置3を装着する情報端末の端末本体としてノートパソコン1を用いたが、本発明はこれに限られずに、例えばUSB接続部2を有する他のプリンタやプロジェクターなどの他の情報機器を用いることもできる。またワイヤレス機器についても、上記ワイヤレスマウス8以外の他の無線通信機器に適用することが可能である。
【0085】
さらに、着脱体であるコネクタ無線装置3と端末本体であるノートパソコン1との間において情報信号や指示信号を送受するハードウェアインターフェースについても、上記実施形態で用いたUSB以外の他のハードウェアインターフェース(例えばIEEE1394やIrDAなど)を用いても同様の効果が得られる。
【0086】
なお、以上においては、無線タグ7に対して情報の読み取り/書き込みを行うためのRFID通信(第2無線通信)は、LANやインターネットなどのネットワークに接続するための無線LAN通信(第1無線通信)とは排他的に制御されていたが、これに限られない。すなわち、例えばコネクタ無線装置3側において受信時に混信を防止できるフィルタ手段を備えている場合には、無線タグ7からの情報を受け取る(キャリアのみ連続送信時)場合には、周波数(あるいはチャネル)が異なれば、上記RFID通信と無線LAN通信とを同時期に通信してもよい。すなわちこの場合には、無線タグ7にコマンドを送る通信(RFIDコマンド送信)においてのみ排他的な制御を行えば足りる。この場合も、両無線通信による電波干渉の発生を防止することができる。
【0087】
なお、以上で用いた「Scroll ID」信号、「Program」信号等は、EPC globalが策定した仕様に準拠しているものとする。EPC globalは、流通コードの国際機関である国際EAN協会と、米国の流通コード機関であるUniformed Code Council(UCC)が共同で設立した非営利法人である。なお、他の規格に準拠した信号でも、同様の機能を果たすものであればよい。
【0088】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0089】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の着脱体及び情報端末の実施形態であるコネクタ無線装置及びノートパソコンの外観を表す斜視図である。
【図2】実施形態のコネクタ無線装置のシステム構成図である。
【図3】コネクタ無線装置のCPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図4】図3中のステップS100の詳細手順を表すフローチャートである。
【図5】ノートパソコンの表示画面の例を表す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 ノートパソコン(端末本体)
2 USB接続部
3 コネクタ無線装置(着脱体)
5 USBコネクタ部
6 無線LANアクセスポイント
7 無線タグ
8 ワイヤレスマウス
12 CPU
13 LED(第1報知手段)
14 チャイム(第2報知回路)
15 記憶部(記憶手段)
16 信号処理回路
17 スイッチ回路
18 無線LAN高周波回路
19 RFID高周波回路
20 ワイヤレス機器高周波回路
21 USB通信制御部
23 内部データベース
24 無線LAN用内部アンテナ(機器用通信手段)
25 RFID用内部アンテナ(タグ用通信手段)
26 ワイヤレス機器用内部アンテナ(操作用通信手段)
31 IC回路部
32 タグ側アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末本体と、この端末本体に対し着脱可能に設けられた着脱体とを有する着脱体付き情報端末であって、
前記着脱体は、
第1無線通信を介し他の機器とネットワーク接続するための機器用通信手段と、
情報を記憶するIC回路部及び情報の送受信を行うタグ側アンテナを有する無線タグ回路素子に対し、前記第1無線通信とは異なる第2無線通信を介し情報の送受信を行うためのタグ用通信手段と
を備えることを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項2】
請求項1記載の着脱体付き情報端末において、
前記タグ用通信手段は、
前記無線タグ回路素子に対し、前記第1無線通信とは排他的に制御された第2無線通信を介し情報の送受信を行う
ことを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項3】
請求項2記載の着脱体付き情報端末において、
前記第2無線通信を前記第1無線通信よりも優先し、前記タグ用通信手段による前記第2無線通信が行われていないときに前記機器用通信手段による前記第1無線通信を許容する優先制御手段を有することを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項4】
請求項3記載の着脱体付き情報端末において、
第3無線通信を介し操作具からの操作信号を入力するための操作用通信手段を有し、
前記優先制御手段は、
前記第3無線通信を前記第2無線通信よりも優先し、前記操作用通信手段による前記第3無線通信が行われていないときに前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を許容することを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項5】
請求項2記載の着脱体付き情報端末において、
前記タグ用通信手段による前記第2無線通信と、前記機器用通信手段による前記第1無線通信とを、時間的に切り替えて実行するように制御する切替制御手段を有することを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項記載の着脱体付き情報端末において、
前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を行うときに所定の報知を行う第1報知手段を有することを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項記載の着脱体付き情報端末において、
前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を介し、前記無線タグ回路素子の識別情報を取得する識別情報取得手段を有する
ことを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項8】
請求項7記載の着脱体付き情報端末において、
前記着脱体は、
少なくとも、前記無線タグ回路素子の前記識別情報とこれに対応する対象物の識別情報との相関を格納可能な記憶手段を有する
ことを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項9】
請求項7又は8記載の着脱体付き情報端末において、
前記識別情報取得手段による前記識別情報の取得が成功したとき、これに対応した所定の報知を行う第2報知手段を有する
ことを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれか1項記載の着脱体付き情報端末において、
前記タグ用通信手段による前記第2無線通信を介し、前記無線タグ回路素子の前記IC回路部に所定の情報を書き込む書き込み制御手段を有する
ことを特徴とする着脱体付き情報端末。
【請求項11】
情報端末に着脱可能な着脱体であって、
無線通信を介し他の機器とネットワーク接続するための機器用通信手段と、
情報を記憶するIC回路部及び情報の送受信を行うタグ側アンテナを有する無線タグ回路素子に対し、無線通信を介し情報の送受信を行うためのタグ用通信手段と
を備えることを特徴とする着脱体。
【請求項12】
請求項11記載の着脱体において、
前記タグ用通信手段による無線通信を行うときに所定の報知を行う報知手段を有することを特徴とする着脱体。
【請求項13】
請求項11又は12記載の着脱体において、
少なくとも、前記無線タグ回路素子の前記識別情報とこれに対応する対象物の識別情報との相関を格納可能な記憶手段を有することを特徴とする着脱体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−83919(P2008−83919A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262241(P2006−262241)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】