着脱式グリップ
【課題】容器内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者に苦痛を与えることなくかつ液体を零さずに搬送することが可能であり、また作業者がグリップから手を離したときでもグリップが取っ手から外れて容器内の液体中などに落下したり紛失したりするのを未然に防止し得る着脱式グリップを提供する。
【解決手段】着脱式グリップ10は、針金からなるアーチ状の取っ手3を有する容器に用いられる。このグリップ10は、正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、取っ手の水平な頂部3aが嵌り込み可能な握り部11と、握り部の両端から各々下方に張り出す半漏斗形状に形成され、取っ手の頂部近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行う一対の下がり部12と、握り部の長手方向の互いに異なる少なくとも2個所に各々形成され、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部と抜け止め状態に係合する係合部13,14とを備える。
【解決手段】着脱式グリップ10は、針金からなるアーチ状の取っ手3を有する容器に用いられる。このグリップ10は、正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、取っ手の水平な頂部3aが嵌り込み可能な握り部11と、握り部の両端から各々下方に張り出す半漏斗形状に形成され、取っ手の頂部近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行う一対の下がり部12と、握り部の長手方向の互いに異なる少なくとも2個所に各々形成され、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部と抜け止め状態に係合する係合部13,14とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針金からなるアーチ状の取っ手を有するペール缶などの容器に用いる着脱式グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペール缶と称される容器として、例えば特許文献1に開示されているように、有底円筒状の容器本体と、この容器本体の上縁部に両端が回動可能に取り付けられた針金からなるアーチ状の取っ手(つる又は提げ手などともいう)とからなるものは知られている。また、取っ手の頂部に樹脂製や木製などのグリップを設けたものも知られている(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、前者のものでは、容器本体内に液体を満たした状態で搬送するときなどに取っ手が作業者の手に食い込んで作業者に苦痛を与え易いという欠点がある。一方、後者のものでは、部品点数の増加によりコストが高くなるとともに、解体時に取っ手とグリップの分離が必要になるなどの欠点がある。
【0004】
そこで、前者のものに対し、特許文献3に記載の持運び用持手又は特許文献4に記載の補助取手具を用いることが考えられる。この場合、容器本体内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者に苦痛を与えることはない。また、容器毎に持運び用持手又は補助取手具を必要とするものではないので、容器の部品点数の増加ないしコストアップを招くことはなく、その上、容器の解体を容易に行うことができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−273363号公報
【特許文献2】登録実用新案第3112623号公報
【特許文献3】実開平5−42209号公報
【特許文献4】実用新案登録第2535660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の如き持運び用持手又は補助取手具を用いた場合、取っ手が容器本体に対し揺動するだけでなく、この取っ手に装着した持運び用持手又は補助取手具が取っ手に対し揺動するため、搬送時に容器本体が非常に不安定なものになり、液体を零さずに搬送することが難しいという問題がある。また、搬送途中又は搬送後に作業者が持運び用持手又は補助取手具から手を離すとこの持運び用持具又は補助取手具が取っ手から外れて容器本体の液体中などに落下したり、紛失したりするという問題もある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、容器の取っ手に装着して使用する着脱式グリップにおいて、取っ手への装着状態で揺動ないし回動が規制されかつ容易に外れない構造を採ることにより、容器内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者に苦痛を与えることがなく、また液体を零さずに搬送することが可能であり、その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップから手を離したときでもグリップが取っ手から外れて容器内の液体中などに落下したり紛失したりするのを未然に防止し得る着脱式グリップを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、針金からなるアーチ状の取っ手を有する容器に用いる着脱式グリップとして、正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、上記取っ手の水平な頂部が嵌り込み可能な握り部と、この握り部の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手の頂部近傍の湾曲部を挟んで回り止めを行う一対の下がり部と、上記握り部の長手方向の互いに異なる少なくとも2個所にそれぞれ形成され、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部と抜け止め状態に係合する係合部とを備える構成にする。
【0009】
この構成では、着脱式グリップが容器の取っ手に装着されるとき、着脱式グリップの握り部内に取っ手の頂部が嵌め込まれ、この握り部の2個所以上に形成した係合部がそれぞれ取っ手の頂部と抜け止め状態に係合するとともに、着脱式グリップの握り部両端の一対の下がり部がそれぞれ取っ手の頂部近傍の湾曲部を挟んで回り止めを行う。このため、容器内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が上記着脱式グリップの握り部を手で握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる。また、着脱式グリップが取っ手に装着された状態のまま揺動ないし回動することはなく、容器内の液体を零さずに搬送することができる。その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップから手を離したときでもグリップが取っ手から外れることはなく、グリップが容器内の液体中などに落下したり紛失したりすることもない。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の着脱式グリップにおいて、上記係合部の好ましい形態を提供するものである。すなわち、上記係合部は、握り部の内側を長手方向に仕切る仕切壁に対し上方に開放する係合溝を形成したものであり、この係合部の係合溝は、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部を有し、この絞り部での溝幅は、取っ手を構成する針金の直径よりも小さく設定されており、上記仕切壁の上縁には、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されている構成にする。
【0011】
この構成では、着脱式グリップの係合部が握り部の内側を仕切る仕切壁に形成した係合溝からなり、この係合溝は、その上方の開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部を有し、この絞り部での溝幅は、取っ手を構成する針金の直径よりも小さく設定されているため、係合溝に取っ手を嵌め込んで取り付けられた着脱式グリップが自然に取っ手から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップを取っ手から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁の上縁に、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されているため、着脱式グリップの係合部である係合溝に取っ手を嵌め込んでグリップの装着を行うとき上記一対の傾斜縁がガイド機能を発揮して係合溝に対する取っ手の嵌め込みひいてはグリップの装着を円滑に行うことができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の着脱式グリップにおいて、上記握り部の内側で上記係合部と異なる位置に補強用の仕切壁を形成し、この仕切壁に、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉を避けるための溝を形成する構成にする。この構成では、握り部の内側に形成した補強用の仕切壁によって握り部の強度を高められることができる。しかも、この補強用仕切壁に形成した溝により握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉が回避されるため、補強用仕切壁が係合部での取っ手との係合などに悪影響を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の着脱式グリップによれば、譬え容器内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が着脱式グリップを容器の取っ手に装着し、その握り部を手で握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる上、着脱式グリップが取っ手に装着された状態のまま揺動ないし回動することはないので、容器内の液体を零さずに搬送することができる。また、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップから手を離したときでもグリップが取っ手から外れることがないので、グリップが容器内の液体中などに落下したり紛失したりすることがなく、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0014】
特に、請求項2に係る発明では、容器の取っ手に装着した着脱式グリップが自然に取っ手から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップを取っ手から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁の上縁に、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されているため、着脱式グリップの係合部である係合溝に取っ手を嵌め込んでグリップの装着を行うとき上記一対の傾斜縁がガイド機能を発揮して係合溝に対する取っ手の嵌め込みひいてはグリップの装着を円滑に行うことができるという効果をも奏する。
【0015】
また、請求項3に係る発明では、握り部の内側に形成した補強用の仕切壁によって握り部の強度を高められることができる上、この補強用仕切壁に形成した溝により握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉が回避されるため、補強用仕切壁が係合部での取っ手との係合などに悪影響を及ぼすことはなく、実施化を図る上で有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る着脱式グリップを装着したペール缶の正面図である。
【図2】図2は上記着脱式グリップをペール缶の取っ手に装着する状態を示す斜視図である。
【図3】図3は上記着脱式グリップの上面側の斜視図である。
【図4】図4は同じく着脱式グリップの底面側の斜視図である。
【図5】図5は同じく着脱式グリップを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図6】図6は同じく着脱式グリップの拡大側面図である。
【図7】図7は図5(a)のX−X線における拡大断面図である。
【図8】図8は本発明の第2の実施形態を示す図3相当図である。
【図9】図9は同じく図4相当図である。
【図10】図10は着脱式グリップの平面図である。
【図11】図11は図10のY−Y線における断面図である。
【図12】図12は図6相当図である。
【図13】図13は図11のZ−Z線における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1において、1は容器としてのペール缶であり、このペール缶1は、有底円筒状の缶本体2と、この缶本体2の上方開口を跨ぐように両端がそれぞれ缶本体2の上縁部に回動可能に取り付けられた針金からなるアーチ状の取っ手3とを有してなる。取っ手3の頂部3aは、図2に詳示するように水平に形成されており、この取っ手3の頂部3aには、本発明の第1の実施形態に係る着脱式グリップ10が着脱可能に装着されている。
【0019】
上記着脱式グリップ10は、全体が合成樹脂からなるものであって、図3ないし図7に詳示するように、正面視が水平に細長く延びた形状(詳しくは下縁が水平で上縁が中心線上で最も高い円弧状をした形状)でかつ縦断面がU字状に形成され、上記取っ手3の頂部3aが嵌り込み可能な握り部11と、この握り部11の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを各々左右の側壁12a,12a間に挟んで回り止めを行う一対の下がり部12,12と、上記握り部11の長手方向の互いに異なる2個所にそれぞれ2つずつ計4つ形成され、握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合する係合部13,14とを備えている。
【0020】
上記各係合部13,14は、握り部11の内側を長手方向に仕切る仕切壁13a,14aに対し上方に開放する係合溝13b,14bを形成したものであり、この各係合部13,14の係合溝13b,14bは、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部13c,14cを有している。この絞り部13c,14cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく(B<D)設定されている。各係合部13,14の仕切壁13a,14aの上縁には、それぞれ係合溝13b,14bの絞り部13c,14cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁13d,13d又は14d,14dが形成されている。ここで、握り部11の1個所に互いに隣接して形成された2つの係合部13,14は、それぞれ仕切壁13a,14aの上縁が握り部11の上縁と同一の高さにまで形成されているが、握り部11の上縁が中心線上で最も高い円弧状に形成されていることから、図6に示す如く握り部11の中心線に近い側の係合部14の仕切壁14aの上縁が遠い側の係合部13の仕切壁13aの上縁よりも高くなっている。
【0021】
上記握り部11の内側には、上記2個所の係合部同士(詳しくは握り部11の中心線に近い側の係合部14,14同士)の間に略等間隔に3つの補強用の仕切壁15,16,15が形成され、この各仕切壁15,16には、それぞれ握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aとの干渉を避けるためのU字状溝17が形成されているとともに、各仕切壁15,16の上縁には、それぞれU字状溝17に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁18,18が形成されている。ここで、各仕切壁15,16の上縁は握り部11の上縁と同一の高さにまで形成されているが、握り部11の上縁が中心線上で最も高い円弧状に形成されていることから、図6に示す如く握り部11の中心線上に位置する仕切壁16の上縁がその両側に位置する仕切壁15の上縁よりも高くなっている。尚、図3、図5(a)及び図7中、21は握り部11の底面内側にその長手方向に延びて形成された一条の補強用凸部である。
【0022】
次に、上記着脱式グリップ10の作用効果を説明するに、着脱式グリップ10がペール缶1の取っ手3に装着されるときには、着脱式グリップ10の握り部11内に取っ手3の頂部3aが嵌め込まれ、この握り部11の2個所に2つずつ計4つ形成した係合部13,13,14,14がそれぞれ取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合するとともに、着脱式グリップ10の握り部11両端の一対の下がり部12,12がそれぞれ左右の側壁12a,12a間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行う。このため、ペール缶1の缶本体2内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が上記着脱式グリップ10の握り部11を手mで握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる。また、着脱式グリップ10が取っ手3に装着された状態のまま揺動ないし回動することはないので、缶本体2内の液体を零さずに搬送することができる。その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップ10から手mを離したときでもグリップ10が取っ手3から外れることはないので、グリップ10が缶本体2内の液体中などに落下したり、地面などに落下して紛失したりすることもない。
【0023】
特に、上記第1の実施形態の場合、着脱式グリップ10の各係合部13,14が握り部11の内側を仕切る仕切壁13a,14aに形成した係合溝13b,14bからなり、この係合溝13b,14bは、その上方の開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部13c,14cを有し、この絞り部13c,14cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく設定されているため、係合溝13b,14bに取っ手3を嵌め込んで取り付けられた着脱式グリップ10が自然に取っ手3から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップ10を取っ手3から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁13a,14aの上縁に、係合溝13b,14bの絞り部13c,14cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁13d,13d又は14d,14dが形成されているため、着脱式グリップ10の各係合部13,14の係合溝13b,14bに取っ手3を嵌め込んでグリップ10の装着を行うとき上記一対の傾斜縁13d,13d又は14d,14dがガイド機能を発揮して係合溝13b,14bに対する取っ手3の嵌め込みひいてはグリップ10の装着を円滑に行うことができる。
【0024】
また、上記握り部11の内側に、上記2個所の係合部14,14同士の間で略等間隔に3つの補強用の仕切壁15,16,15が形成され、この各仕切壁15,16に、それぞれ握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aとの干渉を避けるためのU字状溝17が形成されているため、握り部11内への取っ手の嵌め込みに支障を来すことなく、握り部11の強度を実施上有効に高めることができる。
【0025】
図8ないし図11は本発明の第2の実施形態に係る着脱式グリップ30を示す。この着脱式グリップ30は、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合と同じく全体が合成樹脂からなるものであって、正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、取っ手3の頂部3a(図2参照)が嵌り込み可能な握り部31と、この握り部31の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3b(図2参照)を挟んで回り止めを行う一対の下がり部32,32と、上記握り部11の長手方向の互いに異なる2個所にそれぞれ3つずつ計6つ形成され、握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合する係合部33,33,…とを備えている。
【0026】
上記握り部31は、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合のそれと異なり、下縁のみならず、上縁も両端を除く部分で水平に延びた形状に形成されている。また、上記各下がり部32は、図12に拡大詳示するように、下端に底部32aを有し、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合の如く左右の側壁32b,32b間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟むことができない代わりに、内側に形成した左右一対のL字形の挟持部32c,32c間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行うようになっている。
【0027】
さらに、上記各係合部33は、図12及び図13に拡大詳示するように、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合のそれと同じく握り部31の内側を長手方向に仕切る仕切壁33aに対し上方に開放する係合溝33bを形成したものであり、この各係合部33の係合溝33bは、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部33cを有している。この絞り部33cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく(B<D)設定されている。各係合部33の仕切壁33aの上縁には、それぞれ係合溝33bの絞り部33cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁33d,33dが形成されている。尚、各係合部33の高さ寸法は、握り部31の上縁が水平に形成されていることに伴い、全て同一に設定されている。
【0028】
そして、上記着脱式グリップ30においても、着脱式グリップ30がペール缶1の取っ手3に装着されるときには、着脱式グリップ30の握り部31内に取っ手3の頂部3aが嵌め込まれ、この握り部31の2個所に3つずつ計6つ形成した係合部33,33,…がそれぞれ取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合するとともに、着脱式グリップ30の握り部31両端の一対の下がり部32,32がそれぞれ左右の挟持部32c,32c間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行う。このため、ペール缶1の缶本体2内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が上記着脱式グリップ30の握り部31を手で握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる。また、着脱式グリップ30が取っ手3に装着された状態のまま揺動ないし回動することはないので、缶本体2内の液体を零さずに搬送することができる。その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップ30から手を離したときでもグリップ30が取っ手3から外れることはないので、グリップ30が缶本体2内の液体中などに落下したり、地面などに落下して紛失したりすることもない。
【0029】
また、上記着脱式グリップ30の各係合部33が握り部31の内側を仕切る仕切壁33aに形成した係合溝33bからなり、この係合溝33bは、その上方の開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部33cを有し、この絞り部33cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく設定されているため、係合溝33bに取っ手3を嵌め込んで取り付けられた着脱式グリップ30が自然に取っ手3から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップ30を取っ手3から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁33aの上縁に、係合溝33bの絞り部33cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁33d,33dが形成されているため、着脱式グリップ30の各係合部33の係合溝33bに取っ手3を嵌め込んでグリップ30の装着を行うとき上記一対の傾斜縁33d,33dがガイド機能を発揮して係合溝33bに対する取っ手3の嵌め込みひいてはグリップ30の装着を円滑に行うことができる。
【0030】
尚、本発明は上記第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記第1の実施形態では、着脱式グリップ10の握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合する係合部13,14を、握り部11の長手方向の互いに異なる2個所に2つずつ計4つ形成し、第2の実施形態では、係合部33を、握り部11の長手方向の互いに異なる2個所に3つずつ計6つ形成したが、本発明は、握り部11の長手方向の2個所に1つずつ形成したり、あるいは握り部11の長手方向の互いに異なる3個所以上に1つずつ、又は2つ若しくは3つずつ形成したりしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、本発明をペール缶1に適用した場合について述べたが、本発明は、このペール缶1に限らず、例えば容器本体が合成樹脂からなり、取っ手が針金からなる容器にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
3 取っ手
3a 頂部
3b 湾曲部
10,30 着脱式グリップ
11,31 握り部
12,32 下がり部
13,14,33 係合部
13a,14a,33a 仕切壁
13b,14b,33b 係合溝
13c,14c,33c 絞り部
13d,14d,33d 傾斜縁
15,16 補強用の仕切壁
17 U字状溝
B 絞り部での溝幅
D 針金の直径
【技術分野】
【0001】
本発明は、針金からなるアーチ状の取っ手を有するペール缶などの容器に用いる着脱式グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペール缶と称される容器として、例えば特許文献1に開示されているように、有底円筒状の容器本体と、この容器本体の上縁部に両端が回動可能に取り付けられた針金からなるアーチ状の取っ手(つる又は提げ手などともいう)とからなるものは知られている。また、取っ手の頂部に樹脂製や木製などのグリップを設けたものも知られている(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、前者のものでは、容器本体内に液体を満たした状態で搬送するときなどに取っ手が作業者の手に食い込んで作業者に苦痛を与え易いという欠点がある。一方、後者のものでは、部品点数の増加によりコストが高くなるとともに、解体時に取っ手とグリップの分離が必要になるなどの欠点がある。
【0004】
そこで、前者のものに対し、特許文献3に記載の持運び用持手又は特許文献4に記載の補助取手具を用いることが考えられる。この場合、容器本体内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者に苦痛を与えることはない。また、容器毎に持運び用持手又は補助取手具を必要とするものではないので、容器の部品点数の増加ないしコストアップを招くことはなく、その上、容器の解体を容易に行うことができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−273363号公報
【特許文献2】登録実用新案第3112623号公報
【特許文献3】実開平5−42209号公報
【特許文献4】実用新案登録第2535660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の如き持運び用持手又は補助取手具を用いた場合、取っ手が容器本体に対し揺動するだけでなく、この取っ手に装着した持運び用持手又は補助取手具が取っ手に対し揺動するため、搬送時に容器本体が非常に不安定なものになり、液体を零さずに搬送することが難しいという問題がある。また、搬送途中又は搬送後に作業者が持運び用持手又は補助取手具から手を離すとこの持運び用持具又は補助取手具が取っ手から外れて容器本体の液体中などに落下したり、紛失したりするという問題もある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、容器の取っ手に装着して使用する着脱式グリップにおいて、取っ手への装着状態で揺動ないし回動が規制されかつ容易に外れない構造を採ることにより、容器内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者に苦痛を与えることがなく、また液体を零さずに搬送することが可能であり、その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップから手を離したときでもグリップが取っ手から外れて容器内の液体中などに落下したり紛失したりするのを未然に防止し得る着脱式グリップを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、針金からなるアーチ状の取っ手を有する容器に用いる着脱式グリップとして、正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、上記取っ手の水平な頂部が嵌り込み可能な握り部と、この握り部の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手の頂部近傍の湾曲部を挟んで回り止めを行う一対の下がり部と、上記握り部の長手方向の互いに異なる少なくとも2個所にそれぞれ形成され、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部と抜け止め状態に係合する係合部とを備える構成にする。
【0009】
この構成では、着脱式グリップが容器の取っ手に装着されるとき、着脱式グリップの握り部内に取っ手の頂部が嵌め込まれ、この握り部の2個所以上に形成した係合部がそれぞれ取っ手の頂部と抜け止め状態に係合するとともに、着脱式グリップの握り部両端の一対の下がり部がそれぞれ取っ手の頂部近傍の湾曲部を挟んで回り止めを行う。このため、容器内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が上記着脱式グリップの握り部を手で握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる。また、着脱式グリップが取っ手に装着された状態のまま揺動ないし回動することはなく、容器内の液体を零さずに搬送することができる。その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップから手を離したときでもグリップが取っ手から外れることはなく、グリップが容器内の液体中などに落下したり紛失したりすることもない。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の着脱式グリップにおいて、上記係合部の好ましい形態を提供するものである。すなわち、上記係合部は、握り部の内側を長手方向に仕切る仕切壁に対し上方に開放する係合溝を形成したものであり、この係合部の係合溝は、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部を有し、この絞り部での溝幅は、取っ手を構成する針金の直径よりも小さく設定されており、上記仕切壁の上縁には、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されている構成にする。
【0011】
この構成では、着脱式グリップの係合部が握り部の内側を仕切る仕切壁に形成した係合溝からなり、この係合溝は、その上方の開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部を有し、この絞り部での溝幅は、取っ手を構成する針金の直径よりも小さく設定されているため、係合溝に取っ手を嵌め込んで取り付けられた着脱式グリップが自然に取っ手から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップを取っ手から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁の上縁に、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されているため、着脱式グリップの係合部である係合溝に取っ手を嵌め込んでグリップの装着を行うとき上記一対の傾斜縁がガイド機能を発揮して係合溝に対する取っ手の嵌め込みひいてはグリップの装着を円滑に行うことができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の着脱式グリップにおいて、上記握り部の内側で上記係合部と異なる位置に補強用の仕切壁を形成し、この仕切壁に、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉を避けるための溝を形成する構成にする。この構成では、握り部の内側に形成した補強用の仕切壁によって握り部の強度を高められることができる。しかも、この補強用仕切壁に形成した溝により握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉が回避されるため、補強用仕切壁が係合部での取っ手との係合などに悪影響を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の着脱式グリップによれば、譬え容器内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が着脱式グリップを容器の取っ手に装着し、その握り部を手で握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる上、着脱式グリップが取っ手に装着された状態のまま揺動ないし回動することはないので、容器内の液体を零さずに搬送することができる。また、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップから手を離したときでもグリップが取っ手から外れることがないので、グリップが容器内の液体中などに落下したり紛失したりすることがなく、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0014】
特に、請求項2に係る発明では、容器の取っ手に装着した着脱式グリップが自然に取っ手から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップを取っ手から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁の上縁に、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されているため、着脱式グリップの係合部である係合溝に取っ手を嵌め込んでグリップの装着を行うとき上記一対の傾斜縁がガイド機能を発揮して係合溝に対する取っ手の嵌め込みひいてはグリップの装着を円滑に行うことができるという効果をも奏する。
【0015】
また、請求項3に係る発明では、握り部の内側に形成した補強用の仕切壁によって握り部の強度を高められることができる上、この補強用仕切壁に形成した溝により握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉が回避されるため、補強用仕切壁が係合部での取っ手との係合などに悪影響を及ぼすことはなく、実施化を図る上で有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る着脱式グリップを装着したペール缶の正面図である。
【図2】図2は上記着脱式グリップをペール缶の取っ手に装着する状態を示す斜視図である。
【図3】図3は上記着脱式グリップの上面側の斜視図である。
【図4】図4は同じく着脱式グリップの底面側の斜視図である。
【図5】図5は同じく着脱式グリップを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図6】図6は同じく着脱式グリップの拡大側面図である。
【図7】図7は図5(a)のX−X線における拡大断面図である。
【図8】図8は本発明の第2の実施形態を示す図3相当図である。
【図9】図9は同じく図4相当図である。
【図10】図10は着脱式グリップの平面図である。
【図11】図11は図10のY−Y線における断面図である。
【図12】図12は図6相当図である。
【図13】図13は図11のZ−Z線における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1において、1は容器としてのペール缶であり、このペール缶1は、有底円筒状の缶本体2と、この缶本体2の上方開口を跨ぐように両端がそれぞれ缶本体2の上縁部に回動可能に取り付けられた針金からなるアーチ状の取っ手3とを有してなる。取っ手3の頂部3aは、図2に詳示するように水平に形成されており、この取っ手3の頂部3aには、本発明の第1の実施形態に係る着脱式グリップ10が着脱可能に装着されている。
【0019】
上記着脱式グリップ10は、全体が合成樹脂からなるものであって、図3ないし図7に詳示するように、正面視が水平に細長く延びた形状(詳しくは下縁が水平で上縁が中心線上で最も高い円弧状をした形状)でかつ縦断面がU字状に形成され、上記取っ手3の頂部3aが嵌り込み可能な握り部11と、この握り部11の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを各々左右の側壁12a,12a間に挟んで回り止めを行う一対の下がり部12,12と、上記握り部11の長手方向の互いに異なる2個所にそれぞれ2つずつ計4つ形成され、握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合する係合部13,14とを備えている。
【0020】
上記各係合部13,14は、握り部11の内側を長手方向に仕切る仕切壁13a,14aに対し上方に開放する係合溝13b,14bを形成したものであり、この各係合部13,14の係合溝13b,14bは、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部13c,14cを有している。この絞り部13c,14cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく(B<D)設定されている。各係合部13,14の仕切壁13a,14aの上縁には、それぞれ係合溝13b,14bの絞り部13c,14cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁13d,13d又は14d,14dが形成されている。ここで、握り部11の1個所に互いに隣接して形成された2つの係合部13,14は、それぞれ仕切壁13a,14aの上縁が握り部11の上縁と同一の高さにまで形成されているが、握り部11の上縁が中心線上で最も高い円弧状に形成されていることから、図6に示す如く握り部11の中心線に近い側の係合部14の仕切壁14aの上縁が遠い側の係合部13の仕切壁13aの上縁よりも高くなっている。
【0021】
上記握り部11の内側には、上記2個所の係合部同士(詳しくは握り部11の中心線に近い側の係合部14,14同士)の間に略等間隔に3つの補強用の仕切壁15,16,15が形成され、この各仕切壁15,16には、それぞれ握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aとの干渉を避けるためのU字状溝17が形成されているとともに、各仕切壁15,16の上縁には、それぞれU字状溝17に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁18,18が形成されている。ここで、各仕切壁15,16の上縁は握り部11の上縁と同一の高さにまで形成されているが、握り部11の上縁が中心線上で最も高い円弧状に形成されていることから、図6に示す如く握り部11の中心線上に位置する仕切壁16の上縁がその両側に位置する仕切壁15の上縁よりも高くなっている。尚、図3、図5(a)及び図7中、21は握り部11の底面内側にその長手方向に延びて形成された一条の補強用凸部である。
【0022】
次に、上記着脱式グリップ10の作用効果を説明するに、着脱式グリップ10がペール缶1の取っ手3に装着されるときには、着脱式グリップ10の握り部11内に取っ手3の頂部3aが嵌め込まれ、この握り部11の2個所に2つずつ計4つ形成した係合部13,13,14,14がそれぞれ取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合するとともに、着脱式グリップ10の握り部11両端の一対の下がり部12,12がそれぞれ左右の側壁12a,12a間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行う。このため、ペール缶1の缶本体2内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が上記着脱式グリップ10の握り部11を手mで握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる。また、着脱式グリップ10が取っ手3に装着された状態のまま揺動ないし回動することはないので、缶本体2内の液体を零さずに搬送することができる。その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップ10から手mを離したときでもグリップ10が取っ手3から外れることはないので、グリップ10が缶本体2内の液体中などに落下したり、地面などに落下して紛失したりすることもない。
【0023】
特に、上記第1の実施形態の場合、着脱式グリップ10の各係合部13,14が握り部11の内側を仕切る仕切壁13a,14aに形成した係合溝13b,14bからなり、この係合溝13b,14bは、その上方の開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部13c,14cを有し、この絞り部13c,14cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく設定されているため、係合溝13b,14bに取っ手3を嵌め込んで取り付けられた着脱式グリップ10が自然に取っ手3から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップ10を取っ手3から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁13a,14aの上縁に、係合溝13b,14bの絞り部13c,14cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁13d,13d又は14d,14dが形成されているため、着脱式グリップ10の各係合部13,14の係合溝13b,14bに取っ手3を嵌め込んでグリップ10の装着を行うとき上記一対の傾斜縁13d,13d又は14d,14dがガイド機能を発揮して係合溝13b,14bに対する取っ手3の嵌め込みひいてはグリップ10の装着を円滑に行うことができる。
【0024】
また、上記握り部11の内側に、上記2個所の係合部14,14同士の間で略等間隔に3つの補強用の仕切壁15,16,15が形成され、この各仕切壁15,16に、それぞれ握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aとの干渉を避けるためのU字状溝17が形成されているため、握り部11内への取っ手の嵌め込みに支障を来すことなく、握り部11の強度を実施上有効に高めることができる。
【0025】
図8ないし図11は本発明の第2の実施形態に係る着脱式グリップ30を示す。この着脱式グリップ30は、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合と同じく全体が合成樹脂からなるものであって、正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、取っ手3の頂部3a(図2参照)が嵌り込み可能な握り部31と、この握り部31の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3b(図2参照)を挟んで回り止めを行う一対の下がり部32,32と、上記握り部11の長手方向の互いに異なる2個所にそれぞれ3つずつ計6つ形成され、握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合する係合部33,33,…とを備えている。
【0026】
上記握り部31は、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合のそれと異なり、下縁のみならず、上縁も両端を除く部分で水平に延びた形状に形成されている。また、上記各下がり部32は、図12に拡大詳示するように、下端に底部32aを有し、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合の如く左右の側壁32b,32b間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟むことができない代わりに、内側に形成した左右一対のL字形の挟持部32c,32c間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行うようになっている。
【0027】
さらに、上記各係合部33は、図12及び図13に拡大詳示するように、第1の実施形態に係る着脱式グリップ10の場合のそれと同じく握り部31の内側を長手方向に仕切る仕切壁33aに対し上方に開放する係合溝33bを形成したものであり、この各係合部33の係合溝33bは、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部33cを有している。この絞り部33cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく(B<D)設定されている。各係合部33の仕切壁33aの上縁には、それぞれ係合溝33bの絞り部33cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁33d,33dが形成されている。尚、各係合部33の高さ寸法は、握り部31の上縁が水平に形成されていることに伴い、全て同一に設定されている。
【0028】
そして、上記着脱式グリップ30においても、着脱式グリップ30がペール缶1の取っ手3に装着されるときには、着脱式グリップ30の握り部31内に取っ手3の頂部3aが嵌め込まれ、この握り部31の2個所に3つずつ計6つ形成した係合部33,33,…がそれぞれ取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合するとともに、着脱式グリップ30の握り部31両端の一対の下がり部32,32がそれぞれ左右の挟持部32c,32c間に取っ手3の頂部3a近傍の湾曲部3bを挟んで回り止めを行う。このため、ペール缶1の缶本体2内に液体を満たした状態で搬送するときでも作業者が上記着脱式グリップ30の握り部31を手で握って搬送すれば苦痛を感じることなく容易に搬送することができる。また、着脱式グリップ30が取っ手3に装着された状態のまま揺動ないし回動することはないので、缶本体2内の液体を零さずに搬送することができる。その上、搬送途中又は搬送後に作業者がグリップ30から手を離したときでもグリップ30が取っ手3から外れることはないので、グリップ30が缶本体2内の液体中などに落下したり、地面などに落下して紛失したりすることもない。
【0029】
また、上記着脱式グリップ30の各係合部33が握り部31の内側を仕切る仕切壁33aに形成した係合溝33bからなり、この係合溝33bは、その上方の開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部33cを有し、この絞り部33cでの溝幅Bは、取っ手3を構成する針金の直径Dよりも若干小さく設定されているため、係合溝33bに取っ手3を嵌め込んで取り付けられた着脱式グリップ30が自然に取っ手3から外れることはない反面、作業者が着脱式グリップ30を取っ手3から外すときにはそれ程大きな力でなくても容易に取り外すことができる。その上、仕切壁33aの上縁に、係合溝33bの絞り部33cに近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁33d,33dが形成されているため、着脱式グリップ30の各係合部33の係合溝33bに取っ手3を嵌め込んでグリップ30の装着を行うとき上記一対の傾斜縁33d,33dがガイド機能を発揮して係合溝33bに対する取っ手3の嵌め込みひいてはグリップ30の装着を円滑に行うことができる。
【0030】
尚、本発明は上記第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記第1の実施形態では、着脱式グリップ10の握り部11内に嵌め込まれた取っ手3の頂部3aと抜け止め状態に係合する係合部13,14を、握り部11の長手方向の互いに異なる2個所に2つずつ計4つ形成し、第2の実施形態では、係合部33を、握り部11の長手方向の互いに異なる2個所に3つずつ計6つ形成したが、本発明は、握り部11の長手方向の2個所に1つずつ形成したり、あるいは握り部11の長手方向の互いに異なる3個所以上に1つずつ、又は2つ若しくは3つずつ形成したりしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、本発明をペール缶1に適用した場合について述べたが、本発明は、このペール缶1に限らず、例えば容器本体が合成樹脂からなり、取っ手が針金からなる容器にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
3 取っ手
3a 頂部
3b 湾曲部
10,30 着脱式グリップ
11,31 握り部
12,32 下がり部
13,14,33 係合部
13a,14a,33a 仕切壁
13b,14b,33b 係合溝
13c,14c,33c 絞り部
13d,14d,33d 傾斜縁
15,16 補強用の仕切壁
17 U字状溝
B 絞り部での溝幅
D 針金の直径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針金からなるアーチ状の取っ手を有する容器に用いる着脱式グリップであって、
正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、上記取っ手の水平な頂部が嵌り込み可能な握り部と、
この握り部の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手の頂部近傍の湾曲部を挟んで回り止めを行う一対の下がり部と、
上記握り部の長手方向の互いに異なる少なくとも2個所にそれぞれ形成され、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部と抜け止め状態に係合する係合部とを備えたことを特徴とする着脱式グリップ。
【請求項2】
上記係合部は、握り部の内側を長手方向に仕切る仕切壁に対し上方に開放する係合溝を形成したものであり、この係合部の係合溝は、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部を有し、この絞り部での溝幅は、取っ手を構成する針金の直径よりも小さく設定されており、上記仕切壁の上縁には、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されている請求項1記載の着脱式グリップ。
【請求項3】
上記握り部の内側には、上記係合部と異なる位置に補強用の仕切壁が形成され、この仕切壁には、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉を避けるための溝が形成されている請求項1又は2記載の着脱式グリップ。
【請求項1】
針金からなるアーチ状の取っ手を有する容器に用いる着脱式グリップであって、
正面視が水平に細長く延びた形状でかつ縦断面がU字状に形成され、上記取っ手の水平な頂部が嵌り込み可能な握り部と、
この握り部の両端からそれぞれ下方に張り出す半漏斗形状に形成され、上記取っ手の頂部近傍の湾曲部を挟んで回り止めを行う一対の下がり部と、
上記握り部の長手方向の互いに異なる少なくとも2個所にそれぞれ形成され、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部と抜け止め状態に係合する係合部とを備えたことを特徴とする着脱式グリップ。
【請求項2】
上記係合部は、握り部の内側を長手方向に仕切る仕切壁に対し上方に開放する係合溝を形成したものであり、この係合部の係合溝は、開放側に溝幅が他の部位より小さい絞り部を有し、この絞り部での溝幅は、取っ手を構成する針金の直径よりも小さく設定されており、上記仕切壁の上縁には、係合溝の絞り部に近付くに従って下向きに傾斜する一対の傾斜縁が形成されている請求項1記載の着脱式グリップ。
【請求項3】
上記握り部の内側には、上記係合部と異なる位置に補強用の仕切壁が形成され、この仕切壁には、握り部内に嵌め込まれた取っ手の頂部との干渉を避けるための溝が形成されている請求項1又は2記載の着脱式グリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−218770(P2012−218770A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85878(P2011−85878)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(598068024)生野金属株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(598068024)生野金属株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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