説明

着色ゴムチップ及び着色ゴムチップの製造方法

【課題】ゴムチップ素材の地色が着色層に視認されないとともに、着色層が鮮明に発色される着色ゴムチップ及び着色ゴムチップの製造方法を提供する。
【解決手段】地色がL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材1の表面に特定の明度の顔料による下地色が着色された下地着色層6と、この下地着色層6の上層に上記下地色よりも上記L*値が小さい明度の顔料による仕上げ色が着色された仕上げ着色層7とにより着色されてなる着色ゴムチップ9である。また、地色が黒色のゴムチップ素材1の表面に特定の明度の下地色の顔料3により下地着色層6を着色する下地処理工程Aと、この下地処理工程Aにより着色された下地着色層6の上層に上記下地色よりもL*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料5により仕上げ着色層7を着色する仕上げ処理工程Bとを備えてなる着色ゴムチップ9の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性舗装材料等に用いられる着色ゴムチップ及び着色ゴムチップの製造方法に関し、特に、黒色等の暗色の地色のゴムチップ素材に対して該ゴムチップ素材の地色が視認されないとともに鮮明に発色される着色が可能な着色ゴムチップ及び着色ゴムチップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着色ゴムチップは、弾性舗装材料、人工芝充填材料、緩衝ゴムブロック材料、ゴムマット材料等に多く用いられているが、ゴムチップ自身を着色したもの(カラーゴム)、ゴムタイヤ、自動車の窓枠材等の廃棄ゴムを破砕したゴムチップ素材を原料として着色されたものとがある。これらのうち、前者のゴムチップ自身を着色したカラーゴム(着色ゴムチップ)は、板状又は棒状の着色ゴムを予め製造した後、チップ状に破砕するものであるが、この前者の方法は、着色ゴムの製造工程に様々な需要色に対応した設備が必要であることから、製造コストが高価であるという問題があった。そこで、近年では、リサイクルの観点及び製造コストの観点から、後者の廃棄ゴムを破砕したゴムチップ素材を様々な色に着色した着色ゴムチップが多用されているが、この着色ゴムチップは、廃棄ゴムを破砕したゴムチップ素材に対して樹脂バインダーを混合するとともに着色すべき色の顔料を混合することにより、単一の着色層を着色する(一層の着色層とする)ことにより製造されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の着色ゴムチップの製造方法により製造された着色ゴムチップにおいては、表面の着色層が一層の単一色であることから、着色層によりゴムチップ素材の地色が隠蔽されず、該ゴムチップ素材の地色が視認されやすいとともに、地色が着色層に係る色に影響して、該着色層が鮮明に発色されないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上述した従来の技術による着色ゴムチップ及び着色ゴムチップの製造方法が有する課題を解決するために提案されたものであって、原材料となるゴムチップ素材の地色が着色層に視認されないとともに、着色層が鮮明に発色される着色ゴムチップ及び着色ゴムチップの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため、第1の発明(請求項1記載の発明)に係る着色ゴムチップは、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の顔料による下地色が着色された下地着色層と、この下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料による仕上げ色が着色された仕上げ着色層と、により着色されてなることを特徴とするものである。
【0006】
この第1の発明では、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の顔料による下地色が着色された下地着色層と、この下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料による仕上げ色が着色された仕上げ着色層とにより着色されてなることから、下地着色層が着色された段階でゴムチップ素材の地色が隠蔽されず視認される状態(下地着色層の顔料の色そのものが発色されない状態)であっても、上記仕上げ着色層には、上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料(下地色よりも明度が暗色の顔料)による仕上げ色が着色されてなるので、ゴムチップ素材の地色は完全に隠蔽され、ゴムチップ素材の地色が上記仕上げ着色層に視認されないとともに、上記仕上げ色が鮮明に発色された着色ゴムチップを得ることができる(仕上げ色の顔料の色と同じ色に着色された着色ゴムチップを得ることができる)。
【0007】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記下地着色層の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系であることを特徴とするものである。
【0008】
この第2の発明では、前記下地着色層の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系である。なお、この下地色である前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系の色は、酸化チタンにより生成することができ、他方、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の薄灰色系の色は、前記酸化チタンの配合量よりも少ない配合量に係る黒色の顔料により生成することができる。この第2の発明では、下地着色層の下地色を前記白色系又は薄灰色系とし、仕上げ色は、この下地着色層の上層に前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料によることから、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを得ることができる。前記下地色の顔料として、前記酸化チタンを用いた場合には、ゴムチップ素材の前記地色をより隠蔽できるので、より一層鮮明に発色された着色ゴムチップを得ることができる。
【0009】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係る着色ゴムチップの製造方法は、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の下地色の顔料により下地着色層を着色する下地処理工程と、この下地処理工程により着色された下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料により仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0010】
この第3の発明では、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の下地色の顔料により下地着色層を着色する下地処理工程と、この下地処理工程により着色された下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料により仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程とを備えてなることから、前記下地処理工程により下地着色層が着色された段階でゴムチップ素材の地色が隠蔽されず視認される状態(下地着色層の顔料の色そのものが発色されない状態)であっても、さらにその後の仕上げ処理工程において、上記下地処理工程により着色された下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料(下地色よりも明度が暗色の顔料)により仕上げ着色層を着色するので、ゴムチップ素材の地色は完全に隠蔽され、ゴムチップ素材の地色が上記仕上げ着色層に視認されないとともに、上記仕上げ色が鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる(仕上げ色の顔料の色と同じ色に着色された着色ゴムチップを製造することができる)。
【0011】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第3の発明において、前記下地着色層を着色する下地処理工程は、前記ゴムチップ素材と水性プライマーとを攪拌して混合する下地処理のバインダー混合工程と、この下地処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップと前記明度の下地色の顔料とを攪拌して混合する下地処理の顔料混合工程と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
この第4の発明では、前記下地着色層を着色する下地処理工程は、前記ゴムチップ素材と水性プライマーとを攪拌して混合する下地処理のバインダー混合工程と、この下地処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップと前記明度の下地色の顔料とを攪拌して混合する下地処理の顔料混合工程とを備えてなり、水性プライマーの色が白色系であることから、この下地処理工程において、ゴムチップ素材の地色を隠蔽する作用が助長され第3の発明との相乗作用により、前記仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。特に、前記水性プライマーと同色系である白色系の顔料を混合して下地着色層を着色する場合に効果的である。また、この第4の発明では、前記工程を採用したことから、ゴムチップ素材に対する下地着色層の接着性が良好となり、該下地着色層の剥離を防止することができる。例えば、下地着色層を形成してから仕上げ着色層を形成するまでの間に、長期間が経過したり、顔料混合工程その他の工程を経たりすることにより、該下地着色層が剥離した場合には、やはり該仕上げ着色層の色にゴムチップ素材の色が悪影響して、仕上げ着色層で使用した顔料の色が鮮明に現れない。本発明は、こうした事態を有効に防止できる。また、こうした下地処理工程から仕上げ処理工程までの間において下地着色層が剥離しない場合であっても、着色ゴムチップが長期間使用された結果、前記下地着色層がゴムチップ素材の表面から剥離することを防止できる。
【0013】
また、この第4の発明では、水性プライマーを所謂バインダーとして使用しており、この水性プライマーは、低粘性で顔料との親和性が高くかつ流動性に優れていることから、ゴムチップ素材の裂け目、小孔等に顔料が容易に浸入するとともに、顔料がゴムチップ素材の表面全域に満遍なく均等に分布して下地色をむらなく着色することができる。したがって、従来の製造方法では鮮明で色むらのない着色が困難とされていた例えば、12ないし30mm程度の大粒径のゴムチップ素材にも容易に着色することができ、例えば、緩衝ゴムブロック材料、ゴムマット材料等の分野における着色ゴムチップの用途に対応することができる(長期間に亘って剥離することがなく、安定した着色状態で使用を継続することができる)。また、水性プライマーは、従来から多用されている油性バインダーのように溶剤が使用されていないことから、膨潤することがなく顔料が確実に定着されるとともに、均等に分布される。
【0014】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第3又は4の発明において、前記下地処理の顔料混合工程により混合する前記明度の顔料の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系であることを特徴とするものである。
【0015】
この第5の発明では、前記下地処理の顔料混合工程により混合する前記明度の顔料の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系である。なお、この下地色である前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系の色は、酸化チタンにより生成することができ、他方、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の薄灰色系の色は、前記酸化チタンの配合量よりも少ない配合量に係る黒色の顔料により生成することができる。この第5の発明では、下地着色層の下地色を前記白色系又は薄灰色系とし、仕上げ色は、この下地着色層の上層に前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料によることから、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。前記下地色の顔料として、前記酸化チタンを用いた場合には、ゴムチップ素材の前記地色をより隠蔽できるので、より一層鮮明に発色された着色ゴムチップを得ることができる。
【0016】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第3ないし5記載の発明において、前記下地処理のバインダー混合工程に用いるゴムチップ素材は、少なくとも常温よりも高温とされてなることを特徴とするものである。
【0017】
この第6の発明では、前記下地処理のバインダー混合工程に用いるゴムチップ素材は、少なくとも常温よりも高温とされてなることから、ゴムチップ素材と顔料とのバインダーである水性プライマーの流動性を高め、顔料がゴムチップ素材の表面全域に満遍なく均等に分布されて、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽され、この下地着色層の上層に前記仕上げ色により仕上げ着色層が着色されてなるので、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。また、ゴムチップ素材の温度が常温よりも高温とされてなることにより、前記下地処理のバインダー混合工程及び下地処理の顔料混合工程を経た後の着色ゴムチップの乾燥時間を短縮することができ、製造時間の短縮を図ることができる。なお、前記下地処理のバインダー混合工程に用いられるゴムチップ素材の温度は、乾燥時間を短縮するために、少なくとも40℃以上であることが好ましく、一方、前記水性プライマーが急速に硬化し顔料との接着性が著しく低下することを避けるために、70℃以下とすることが好ましい。
【0018】
また、前記下地処理のバインダー混合工程に用いられるゴムチップ素材の温度については、必ずしも人為的に加熱する必要性はない。すなわち、ゴムチップ製造時において廃タイヤ等が破砕されると、その際に発生する摩擦熱によりゴムチップ素材が加熱されるとともに、該ゴムチップ素材は破砕後の貯蔵中にも蓄熱から発熱する性質を有することから、これらの温度が前記所定温度である場合には、ゴムチップ素材を加熱することなく前記下地処理工程を行えばよく、こうしたゴムチップ素材の製造過程や破砕された後のゴムチップの性質を利用した場合には、加熱するための工程を省略して製造時間の短縮を図ることができる。また、ゴムチップ素材の温度が所定温度未満の場合には所定温度まで加熱をした後に、又は所定温度以上の場合には所定温度まで冷却をした後に前記下地処理のバインダー混合工程に入ればよく、これらの場合にも、加熱等の時間が短縮され製造時間の短縮を図ることができる。
【0019】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、上記第3ないし6記載の発明において、前記下地処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記下地色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
この第7の発明では、前記下地処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記下地色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことから、顔料が前記下地処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布されて、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽され、この下地着色層の上層に前記仕上げ色により仕上げ着色層が着色されてなるので、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。なお、複数回の前記下地処理の顔料混合工程は、バインダー混合工程、顔料混合工程、顔料混合工程、バインダー混合工程等、又はバインダー混合工程、顔料混合工程、バインダー混合工程、顔料混合工程等の何れの工順による複数回を構成しても良い。
【0021】
また、第8の発明(請求項8記載の発明)は、上記第3ないし7記載の発明において、前記仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程は、前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップと樹脂バインダーとを攪拌して混合する仕上げ処理のバインダー混合工程と、この仕上げ処理のバインダー混合工程により樹脂バインダーと混合されたゴムチップと前記明度の仕上げ色の顔料とを攪拌して混合する仕上げ処理の顔料混合工程と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0022】
この第8の発明では、前記仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程は、前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップと樹脂バインダーとを攪拌して混合する仕上げ処理のバインダー混合工程と、この仕上げ処理のバインダー混合工程により樹脂バインダーと混合されたゴムチップと前記明度の仕上げ色の顔料とを攪拌して混合する仕上げ処理の顔料混合工程とを備えてなることから、ゴムチップ素材に対する下地着色層の接着性が良好となり、該下地着色層の剥離を防止することができる。また、前記仕上げ処理工程により着色される仕上げ色は、前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色でなり、この仕上げ色の顔料により仕上げ着色層を着色することから、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽されるとともに、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。
【0023】
また、第9の発明(請求項9記載の発明)は、上記第3ないし8記載の発明において、前記仕上げ処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記仕上げ色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
この第9の発明では、前記仕上げ処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記仕上げ色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことから、顔料が前記仕上げ処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布されて、仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。なお、複数回の前記仕上げ処理の顔料混合工程は、バインダー混合工程、顔料混合工程、顔料混合工程、バインダー混合工程等、又はバインダー混合工程、顔料混合工程、バインダー混合工程、顔料混合工程等の何れの工順による複数回を構成しても良い。
【0025】
また、第10の発明(請求項10記載の発明)は、上記第3ないし9記載の発明において、前記仕上げ処理のバインダー混合工程の前に仕上げ処理のゴムチップ加熱工程を設け、この仕上げ処理のゴムチップ加熱工程は、前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップを加熱するようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
この第10の発明では、前記仕上げ処理のバインダー混合工程の前に仕上げ処理のゴムチップ加熱工程を設け、この仕上げ処理のゴムチップ加熱工程は、前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップを加熱するようにしたことから、下地色が着色されたゴムチップと顔料とのバインダーである樹脂バインダーの流動性を高め、顔料が前記下地処理工程を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布されて、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽され、前記下地着色層の上層に前記仕上げ色により仕上げ着色層が着色されてなるので、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。また、この仕上げ処理のゴムチップ加熱工程により前記ゴムチップを加熱するようにしたことにより、樹脂バインダーの流動性が高められシンナー等の溶剤により希釈する必要がないことから、刺激臭や目に対する刺激を防止できるとともに、引火の危険性を防止することができる。また、このゴムチップ加熱工程により前記ゴムチップを加熱するようにしたことにより、前記仕上げ処理のバインダー混合工程及び仕上げ処理の顔料混合工程を経た後の着色ゴムチップの乾燥時間を短縮することができ、製造時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る着色ゴムチップでは、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の顔料による下地色が着色された下地着色層と、この下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料による仕上げ色が着色された仕上げ着色層とにより着色されてなることから、下地着色層が着色された段階でゴムチップ素材の地色が隠蔽されず視認される状態(下地着色層の顔料の色そのものが発色されない状態)であっても、上記仕上げ着色層には、上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料(下地色よりも明度が暗色の顔料)による仕上げ色が着色されてなるので、ゴムチップ素材の地色は完全に隠蔽され、ゴムチップ素材の地色が上記仕上げ着色層に視認されないとともに、上記仕上げ色が鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを得ることができる(仕上げ色の顔料の色と同じ色に着色された着色ゴムチップを得ることができる)。
【0028】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、前記下地着色層の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系である。なお、この下地色である前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系の色は、酸化チタンにより生成することができ、他方、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の薄灰色系の色は、前記酸化チタンの配合量よりも少ない配合量に係る黒色の顔料により生成することができる。この第2の発明では、下地着色層の下地色を前記白色系又は薄灰色系とし、仕上げ色は、この下地着色層の上層に前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料によることから、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを得ることができる。
【0029】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係る着色ゴムチップの製造方法では、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の下地色の顔料により下地着色層を着色する下地処理工程と、この下地処理工程により着色された下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料により仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程とを備えてなることから、前記下地処理工程により下地着色層が着色された段階でゴムチップ素材の地色が隠蔽されず視認される状態(下地着色層の顔料の色そのものが発色されない状態)であっても、さらにその後の仕上げ処理工程において、上記下地処理工程により着色された下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料(下地色よりも明度が暗色の顔料)により仕上げ着色層を着色するので、ゴムチップ素材の地色は完全に隠蔽され、ゴムチップ素材の地色が上記仕上げ着色層に視認されないとともに、上記仕上げ色が鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる(仕上げ色の顔料の色と同じ色に着色された着色ゴムチップを製造することができる)。
【0030】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)では、前記下地着色層を着色する下地処理工程は、前記ゴムチップ素材と水性プライマーとを攪拌して混合する下地処理のバインダー混合工程と、この下地処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップと前記明度の下地色の顔料とを攪拌して混合する下地処理の顔料混合工程とを備えてなり、水性プライマーの色が白色系であることから、この下地処理工程において、ゴムチップ素材の地色を隠蔽する作用が助長され第3の発明との相乗作用により、前記仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる。また、この第4の発明では、前記工程を採用したことから、ゴムチップ素材に対する下地着色層の接着性が良好となり、該下地着色層の剥離を防止することができる。また、この第4の発明では、水性プライマーを所謂バインダーとして使用しており、この水性プライマーは、低粘性で顔料との親和性が高くかつ流動性に優れていることから、ゴムチップ素材の裂け目、小孔等に顔料が容易に浸入するとともに、顔料がゴムチップ素材の表面全域に満遍なく均等に分布して下地色をむらなく着色することができる。したがって、従来の製造方法では鮮明で色むらのない着色が困難とされていた例えば、12ないし30mm程度の大粒径のゴムチップ素材にも容易に着色することができ、例えば、緩衝ゴムブロック材料ゴムマット材料等の多岐の分野における着色ゴムチップの用途に対応することができる。
【0031】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)では、前記下地処理の顔料混合工程により混合する前記明度の顔料の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系である。なお、この下地色である前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系の色は、酸化チタンにより生成することができ、他方、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の薄灰色系の色は、前記酸化チタンの配合量よりも少ない配合量に係る黒色の顔料により生成することができる。この第5の発明では、下地着色層の下地色を前記白色系又は薄灰色系とし、仕上げ色は、この下地着色層の上層に前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料によることから、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる。前記下地色の顔料として、前記酸化チタンを用いた場合には、ゴムチップ素材の前記地色をより隠蔽できるので、より一層鮮明に発色された着色ゴムチップを得ることができる。
【0032】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)では、前記下地処理のバインダー混合工程に用いるゴムチップ素材は、少なくとも常温よりも高温とされてなることから、ゴムチップ素材と顔料とのバインダーである水性プライマーの流動性を高め、顔料がゴムチップ素材の表面全域に満遍なく均等に分布されて、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽され、この下地着色層の上層に前記仕上げ色により仕上げ着色層が着色されてなるので、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる。また、ゴムチップ素材の温度が常温よりも高温とされてなることにより、前記下地処理のバインダー混合工程及び下地処理の顔料混合工程を経た後の着色ゴムチップの乾燥時間を短縮することができ、製造時間の短縮により製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)では、前記下地処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記下地色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことから、顔料が前記下地処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布されて、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽され、この下地着色層の上層に前記仕上げ色により仕上げ着色層が着色されてなるので、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる。
【0034】
また、第8の発明(請求項8記載の発明)では、前記仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程は、前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップと樹脂バインダーとを攪拌して混合する仕上げ処理のバインダー混合工程と、この仕上げ処理のバインダー混合工程により樹脂バインダーと混合されたゴムチップと前記明度の仕上げ色の顔料とを攪拌して混合する仕上げ処理の顔料混合工程とを備えてなることから、ゴムチップ素材に対する下地着色層の接着性が良好となり、該下地着色層の剥離を防止することができる。また、前記仕上げ処理工程により着色される仕上げ色は、前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色でなり、この仕上げ色の顔料により仕上げ着色層を着色することから、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽され、前記下地着色層の上層に前記仕上げ色により仕上げ着色層が着色されてなるので、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる。
【0035】
また、第9の発明(請求項9記載の発明)では、前記仕上げ処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記仕上げ色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことから、顔料が前記仕上げ処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布されて、仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる。
【0036】
また、第10の発明(請求項10記載の発明)では、前記仕上げ処理のバインダー混合工程の前に仕上げ処理のゴムチップ加熱工程を設け、この仕上げ処理のゴムチップ加熱工程は、前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップを加熱するようにしたことから、下地色が着色されたゴムチップと顔料とのバインダーである樹脂バインダーの流動性を高め、顔料が前記下地処理工程を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布されて、ゴムチップ素材の地色がさらに隠蔽され、前記下地着色層の上層に前記仕上げ色により仕上げ着色層が着色されてなるので、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された美麗な外観の着色ゴムチップを製造することができる。また、この仕上げ処理のゴムチップ加熱工程により前記ゴムチップを加熱するようにしたことにより、前記仕上げ処理のバインダー混合工程及び仕上げ処理の顔料混合工程を経た後の着色ゴムチップの乾燥時間を短縮することができ、製造時間の短縮により製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための着色ゴムチップ及び着色ゴムチップの製造方法に係る最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
先ず、着色ゴムチップ9について説明する。この着色ゴムチップ9は、図1に示すように、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満である黒色のゴムチップ素材1の表面に、水性バインダー(接着剤)である水性プライマー2の接着力により特定の明度の下地色の顔料3による下地色が着色された下地着色層6と、この下地着色層6の上層に、湿気硬化型の樹脂バインダー(接着剤)であるウレタンバインダー4の接着力により、前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料5による仕上げ色が着色された仕上げ着色層7とにより着色されてなるものである。そして、前記下地着色層6の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系により着色されてなり、前記仕上げ着色層7の仕上げ色は、前記下地色よりも前記L*値が小さい明度の灰色、薄茶色(ベージュ)、茶色、赤色、青色、緑色等により着色されている。
【0039】
次に、この着色ゴムチップ9を製造するための着色ゴムチップの製造方法について説明する。この着色ゴムチップの製造方法は、地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満である黒色のゴムチップ素材1の表面に特定の明度の下地色の顔料3により下地着色層6を着色する下地処理工程A(図2参照)と、この下地処理工程Aにより着色された下地着色層6の上層に前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料5により仕上げ着色層7を着色する仕上げ処理工程B(図3参照)とを備えて構成されている。
【0040】
これらのうち、下地着色層6を着色する下地処理工程Aは、図2に示すように、ゴムチップ素材1を加熱する下地処理のゴムチップ加熱工程A1と、このゴムチップ加熱工程A1を経たゴムチップ素材1を攪拌する下地処理のゴムチップ攪拌工程A2と、このゴムチップ攪拌工程A2を経た後のゴムチップ素材1と水性プライマー2とを混合する下地処理の第1のバインダー混合工程A3と、この第1のバインダー混合工程A3を経た後のゴムチップ(符号は省略する:以下、工程途中の符号は全て省略する)と下地色の顔料3とを混合する下地処理の第1,第2の顔料混合工程A4,A5と、この第2の顔料混合工程A5を経た後のゴムチップと水性プライマー2とを混合する下地処理の第2のバインダー混合工程A6と、この第2のバインダー混合工程A6を経た後のゴムチップを乾燥する下地処理のゴムチップ乾燥工程A7と、このゴムチップ乾燥工程A7を経た後の凝集状態のゴムチップを離隔する下地処理のゴムチップ離隔工程A8とにより構成されている。
【0041】
まず、下地処理のゴムチップ加熱工程A1において、図示しないオーブン(電気式加熱装置)によりゴムチップ素材1を40〜70℃に加熱する。この加熱により、ゴムチップ素材1と後述する下地色の顔料3とのバインダーである水性プライマー2の流動性を高めて、この水性プライマー2がゴムチップ素材1の表面全域に満遍なく均等に分布されることにより、下地色の顔料3がゴムチップ素材1の表面全域に満遍なく均等に定着され、ゴムチップ素材1の地色が隠蔽され易くすることができる。また、ゴムチップ素材1の温度が加熱されてなることにより、後述する下地処理の第2のバインダー混合工程A6を経た後のゴムチップの乾燥時間を短縮することができる。
【0042】
なお、このゴムチップ加熱工程A1により加熱される温度については、廃タイヤ等を破砕する際にその摩擦熱によりゴムチップ素材1が加熱されるとともに、該ゴムチップ素材1は破砕後の貯蔵中にも発熱することから、これらの温度が所定の40〜70℃である場合には、ゴムチップ素材1を加熱することなく次のゴムチップ攪拌工程A2に入ることができるので、該ゴムチップ加熱工程A1を省略して製造時間の短縮を図ることができる。また、ゴムチップ素材1の温度が所定温度未満の場合には所定温度まで加熱をした後に、又は所定温度以上の場合には所定温度まで冷却をした後に次のゴムチップ攪拌工程A2に入ればよく、これらの場合にも、加熱又は冷却時間が短縮され製造時間の短縮を図ることができる。
【0043】
次に、下地処理のゴムチップ攪拌工程A2において、図示しないミキサー(攪拌装置)内に前記ゴムチップ加熱工程A1を経たゴムチップ素材1を投入し、このゴムチップ素材1を30〜60秒間に亘り攪拌することにより混合する。このゴムチップ素材1の攪拌により、次の第1のバインダー混合工程A3に用いられるゴムチップ素材1の表面の温度分布を均一にすることができるとともに、ゴムチップ素材1の粒度(粒径)が一定ではない場合には、粒度分布を均一にすることができる。なお、前記ミキサーは、図示しないバンドヒータ等により予め40〜70℃程度に加熱されていることが好ましい。また、前記ミキサーの上部には、開閉可能な図示しない上蓋が配置されて密閉され、保温可能であることが好ましい。また、このゴムチップ攪拌工程A2において使用されるミキサーに加熱手段が備えられている場合には、ゴムチップ素材1を加熱しながら攪拌することにより、このゴムチップ素材1の表面の温度分布を均一にすることができるので、前のゴムチップ加熱工程A1と、このゴムチップ攪拌工程A2とを1の工程に短縮することができる。
【0044】
次に、下地処理の第1のバインダー混合工程A3において、前記ミキサー内に水性バインダー(接着剤)である第1回目の水性プライマー2(設定配合量の1/2)を投入し、前記ゴムチップ攪拌工程A2を経た後のゴムチップ素材1と第1回目の水性プライマー2とを約2分間に亘り攪拌することにより混合する。この第1回目の水性プライマー2の混合により、図1(b)に示すゴムチップ素材1の表面に水性プライマー2が定着される。この水性プライマー2は、水溶性バインダーであり、低粘性で後述する下地色の顔料3との親和性が高くかつ流動性に優れていることから、下地色の顔料3がゴムチップ素材1の表面全域に満遍なく均等に分布して下地色をむらなく着色することができる。したがって、従来の製造方法では鮮明で色むらのない着色が困難とされていた例えば、12ないし30mm程度の大粒径のゴムチップ素材1にも、容易に着色することができる。また、水性プライマー2は、従来から多用されている油性バインダーのように溶剤が使用されていないことから、膨潤することがなく下地色の顔料3が確実に定着されるとともに、均等に分布される作用をする。
【0045】
また、ゴムチップ素材1は、廃タイヤ等を破砕して形成されるため、図1(a)に示すチップ主体部1aと裂片1bとの間に鋭角で狭小な裂け目1cが形成されたり、小孔1c等が形成されるが、これらに対しても、水性プライマー2が低粘性であるため、容易に浸入して均等に分布される。なお、この第1のバインダー混合工程A3において混合される水性プライマー2の投入量は、下地処理工程Aにおけるバインダー混合工程が、この第1のバインダー混合工程A3と、後述する第2のバインダー混合工程A6との2工程でなることから、設定配合量の1/2ずつを2回に分けて投入する。
【0046】
次に、下地処理の第1の顔料混合工程A4において、予め約50℃に加熱された第1回目の下地色の顔料3(設定配合量の1/2)を前記ミキサー内に投入し、前記第1のバインダー混合工程A3を経た後のゴムチップと、該第1回目の下地色の顔料3とを約2分間に亘り攪拌することにより混合する。この混合により、図1(b)に示すゴムチップ素材1の表面に定着された水性プライマー2の接着力により第1回目の下地色の顔料3が定着されて着色される。次に、下地処理の第2の顔料混合工程A4において、予め約50℃に加熱された第2回目の下地色の顔料3(残りの1/2)を前記ミキサー内に投入し、前記第1の顔料混合工程A4を経た後のゴムチップと、該第2回目の下地色の顔料3とを約2分間に亘り攪拌することにより混合する。この混合により、図1(b)に示すゴムチップ素材1の表面に定着された水性プライマー2の接着力により第2回目の下地色の顔料3が前記第1回目の下地色の顔料3とともに定着されて下地色が着色される。
【0047】
これら第1,第2の顔料混合工程A4,A5の各工程において混合される下地色の顔料3の色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系でなり、この下地色の白色は酸化チタンにより生成されるとともに、薄灰色は配合量の少ない黒色と、酸化チタンにより生成され配合量の多い白色との配合により酸化チタンを主成分として生成されていることから、該酸化チタンの屈折率が大きく光をよく散乱させる作用によりゴムチップ素材1の地色が隠蔽されやすくなる。また、これら第1,第2の顔料混合工程A4,A5の各工程において混合される下地色の顔料3の投入量は、設定配合量の1/2ずつを2回に分けて投入されることから、下地色の顔料3が前記第1のバインダー混合工程A3を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布して定着され、下地色をむらなく着色することができる。なお、この下地色の顔料3を投入する際には、ゴムチップが互いに粘着して凝集状態になることを抑止すべく、タルク(滑石)と澱粉とを主原料として吸水性の高い図示しないベビーパウダーを予め顔料に混合させることが好ましい。このベビーパウダーは、水性プライマー2との親和性を高めるべく、約50℃に加熱されていることが好ましい。
【0048】
次に、下地処理の第2のバインダー混合工程A6において、前記ミキサー内に第2回目の水性プライマー2(残りの1/2)を投入し、前記第2の顔料混合工程A5を経た後のゴムチップと、該第2回目の水性プライマー2とを約20分間に亘り攪拌することにより混合する。この第2回目の水性プライマー2の混合により、前記第2の顔料混合工程A5を経て前記下地色の顔料3が定着されたゴムチップの表面に水性プライマー2が定着され、図1(b)に示す下地着色ゴムチップ8が形成される。また、前記第2回目の水性プライマー2は前記下地色の顔料3をコーティングすることから、下地処理工程Aを終えた後述する下地着色ゴムチップ8の状態で在庫等のために保存する際の耐候性を向上させるとともに、後述する仕上げ処理工程Bにおける顔料の定着を向上させることができる。また、前記水性プライマー2は前記第1のバインダー混合工程で述べたとおり水溶性バインダーであることから、下地色の顔料3が前記ゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布されるとともに、狭小な裂け目1cや小孔1c等にも容易に浸入して均等に分布される。なお、この第2のバインダー混合工程A6と次のゴムチップ乾燥工程A7との間には、図示しない塗料混合工程を設け、例えば、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系の水性塗料、水性アクリル絵具を混合しても良い。
【0049】
次に、下地処理のゴムチップ乾燥工程A7において、図示しないオーブン(電気式加熱装置)により、前記第2のバインダー混合工程A6を経て形成された下地着色ゴムチップ8を80〜130℃に加熱して乾燥させる。この乾燥時間は、加熱温度により相違し、約80℃の場合が約30分間であり、約130℃の場合が約20分間でそれぞれ乾燥する。なお、このゴムチップ乾燥工程A7による下地着色ゴムチップ8の乾燥は、前記オーブンによることに限定されず、例えば、前の第2のバインダー混合工程A6を経た後も下地着色ゴムチップ8を前記ミキサー内に収容したまま常温になるまで放置して乾燥させるか、又は、前記ミキサー内を火炎等により加熱しながら攪拌して乾燥させることができる。
【0050】
次に、下地処理のゴムチップ離隔工程A8において、前記ミキサーにより、前のゴムチップ乾燥工程A7により乾燥された下地着色ゴムチップ8を攪拌して、互いに粘着して凝集状態にある下地着色ゴムチップ8を個別に離隔させる。この凝集状態にある下地着色ゴムチップ8を離隔させるための時間は、前記下地色の顔料3に前記ベビーパウダーが混在されているか否か、乾燥状態等により相違するが約5分間で離隔される。なお、前記ゴムチップ乾燥工程A7において、前の第2のバインダー混合工程A6を経た後も下地着色ゴムチップ8をミキサー内に収容したまま、前記ミキサー内を火炎等により加熱しながら攪拌して乾燥させる場合には、その乾燥過程で凝集状態から離隔されるので、このゴムチップ離隔工程A8を省略することができる。このゴムチップ離隔工程A8によりゴムチップ素材1の下地処理工程Aは終了し、この下地処理工程Aを終えた下地着色ゴムチップ8は、引き続き仕上げ処理をする場合には、後述する仕上げ処理のゴムチップ加熱工程B1に移行し、在庫する場合には所定の場所に保管される。
【0051】
次に、仕上げ着色層7を着色する仕上げ処理工程Bは、図3に示すように、下地着色ゴムチップ8を加熱する仕上げ処理のゴムチップ加熱工程B1と、このゴムチップ加熱工程B1を経た下地着色ゴムチップ8を攪拌する仕上げ処理のゴムチップ攪拌工程B2と、このゴムチップ攪拌工程B2を経た後の下地着色ゴムチップ8とウレタンバインダー4とを混合する仕上げ処理の第1のバインダー混合工程B3と、この第1のバインダー混合工程B3を経た後のゴムチップと仕上げ色の顔料5とを混合する仕上げ処理の第1,第2の顔料混合工程B4,B5と、この第2の顔料混合工程B5を経た後のゴムチップとウレタンバインダー4とを混合する仕上げ処理の第2のバインダー混合工程B6と、この第2のバインダー混合工程B6を経た後のゴムチップを乾燥する仕上げ処理のゴムチップ乾燥工程B7と、このゴムチップ乾燥工程B7を経た後の凝集状態のゴムチップを離隔する仕上げ処理のゴムチップ離隔工程B8とにより構成されている。
【0052】
まず、仕上げ処理のゴムチップ加熱工程B1において、図示しないオーブン(電気式加熱装置)により上記下地処理工程Aを終えた下地着色ゴムチップ8を100〜150℃に加熱する。この加熱により、下地着色ゴムチップ8と後述する仕上げ色の顔料5とのバインダーであるウレタンバインダー4の流動性を高めて、このウレタンバインダー4が下地着色ゴムチップ8の表面全域に満遍なく均等に分布されることにより、仕上げ色の顔料5が下地着色ゴムチップ8の表面全域に満遍なく均等に定着され、ゴムチップ素材1の地色が隠蔽され易くすることができる。また、下地着色ゴムチップ8の温度が加熱されてなることにより、後述する仕上げ処理の第2のバインダー混合工程B6を経た後のゴムチップの乾燥時間を短縮することができる。
【0053】
次に、仕上げ処理のゴムチップ攪拌工程B2において、図示しないミキサー(攪拌装置)内に前記ゴムチップ加熱工程B1を経た前記下地着色ゴムチップ8を投入し、この下地着色ゴムチップ8を30〜60秒間に亘り攪拌することにより混合する。この下地着色ゴムチップ8の攪拌により、次の第1のバインダー混合工程B3に用いられる下地着色ゴムチップ8の表面の温度分布を均一にすることができるとともに、下地着色ゴムチップ8の粒度(粒径)が一定ではない場合には、粒度分布を均一にすることができる。なお、前記ミキサーは、図示しないバンドヒータ等により予め100〜150℃程度に加熱されていることが好ましい。また、前記ミキサーの上部には、開閉可能な図示しない上蓋が配置されて密閉され、保温可能であることが好ましい。また、このゴムチップ攪拌工程B2において使用されるミキサーに加熱手段が備えられている場合には、下地着色ゴムチップ8を加熱しながら攪拌することにより、この下地着色ゴムチップ8の表面の温度分布を均一にすることができるので、前のゴムチップ加熱工程B1と、このゴムチップ攪拌工程B2とを1の工程に短縮することができる。
【0054】
次に、仕上げ処理の第1のバインダー混合工程B3において、予め約70℃に加熱された第1回目のウレタンバインダー4(設定配合量の1/2)を前記ミキサー内に投入し、前記ゴムチップ攪拌工程B2を経た後の下地着色ゴムチップ8と第1回目のウレタンバインダー4とを約2分間に亘り攪拌することにより混合する。この第1回目のウレタンバインダー4の混合により、図1(b)に示す下地着色ゴムチップ8の表面にウレタンバインダー4が定着される。また、前記下地着色ゴムチップ8を構成するゴムチップ素材1は、廃タイヤ等を破砕して形成されるため、図1(a)に示すチップ主体部1aと裂片1bとの間に鋭角で狭小な裂け目1cが形成されたり、小孔1c等が形成されるが、これらに対しては、下地処理の第1のバインダー混合工程A3において水性プライマー2が確実に定着されているので、この工程におけるウレタンバインダー4は他の表面と同様に均等に分布される。なお、この第1のバインダー混合工程B3において混合されるウレタンバインダー4の投入量は、仕上げ処理工程Bにおけるバインダー混合工程が、この第1のバインダー混合工程B3と、後述する第2のバインダー混合工程B6との2工程でなることから、設定配合量の1/2ずつを2回に分けて投入する。
【0055】
次に、仕上げ処理の第1の顔料混合工程B4において、予め約120℃に加熱された第1回目の仕上げ色の顔料5(設定配合量の1/2)を前記ミキサー内に投入し、前記第1のバインダー混合工程B3を経た後のゴムチップと、該第1回目の仕上げ色の顔料5とを約2分間に亘り攪拌することにより混合する。この混合により、図1(b)に示すゴムチップの表面に定着されたウレタンバインダー4の接着力により第1回目の仕上げ色の顔料5が定着されて着色される。次に、仕上げ処理の第2の顔料混合工程B5において、予め約120℃に加熱された第2回目の仕上げ色の顔料5(残りの1/2)を前記ミキサー内に投入し、前記第1の顔料混合工程B4を経た後のゴムチップと、該第2回目の仕上げ色の顔料5とを約2分間に亘り攪拌することにより混合する。この混合により、図1(b)に示すゴムチップの表面に定着されたウレタンバインダー4の接着力により第2回目の仕上げ色の顔料5が前記第1回目の仕上げ色の顔料5とともに定着されて仕上げ色が着色される。
【0056】
これら第1,第2の顔料混合工程B4,B5の各工程において混合される仕上げ色の顔料5の色は、前記下地処理工程Aにおいて下地着色層6(図1(b)参照)に着色された前記下地色よりも前記L*値が小さい明度の仕上げ色の顔料5により着色されてなり、仮に、下地着色層6が着色された段階でゴムチップ素材1の地色が視認できたとしても、前記下地色よりも前記L*値が小さい明度の灰色、薄茶色(ベージュ)、茶色、赤色、青色、緑色等による着色によりゴムチップ素材1の地色が隠蔽されやすくなる。また、これら第1,第2の顔料混合工程B4,B5の各工程において混合される仕上げ色の顔料5の投入量は、設定配合量の1/2ずつを2回に分けて投入されることから、仕上げ色の顔料5が前記第1のバインダー混合工程B3を経た後のゴムチップの表面全域に満遍なく均等に分布して定着され、仕上げ色をむらなく着色することができる。なお、この仕上げ色の顔料5を投入する際には、ゴムチップが互いに粘着して凝集状態になることを抑止すべく、タルク(滑石)と澱粉とを主原料として吸水性の高い図示しないベビーパウダーを予め顔料5に混合させることが好ましい。このベビーパウダーは、ウレタンバインダー4との親和性を高めるべく、約120℃に加熱されていることが好ましい。
【0057】
次に、仕上げ処理の第2のバインダー混合工程B6において、予め約70℃に加熱された第2回目のウレタンバインダー4(残りの1/2)を前記ミキサー内に投入し、前記第2の顔料混合工程B5を経た後のゴムチップと、該第2回目のウレタンバインダー4とを約60分間に亘り攪拌することにより混合する。この第2回目のウレタンバインダー4の混合により、前記第2の顔料混合工程B5を経て前記仕上げ色の顔料5が定着されたゴムチップの表面にウレタンバインダー4が定着され、図1(b)に示す着色ゴムチップ9が形成される。この第2回目のウレタンバインダー4は前記仕上げ色の顔料5をコーティングして耐候性を向上させるとともに、顔料5の定着性を向上させる。
【0058】
次に、仕上げ処理のゴムチップ乾燥工程B7において、図示しないオーブン(電気式加熱装置)により、前記第2のバインダー混合工程B6を経て形成された着色ゴムチップ9を100〜150℃に加熱して乾燥させる。この乾燥時間は、加熱温度により相違し、約120℃の場合が約30分間であり、約150℃の場合が約20分間でそれぞれ乾燥する。なお、このゴムチップ乾燥工程B7による着色ゴムチップ9の乾燥は、前記オーブンによることに限定されず、例えば、前の第2のバインダー混合工程B6を経た後も着色ゴムチップ9を前記ミキサー内に収容したまま常温になるまで放置して乾燥させるか、又は、前記ミキサー内を火炎等により加熱しながら攪拌して乾燥させることができる。
【0059】
次に、仕上げ処理のゴムチップ離隔工程B8において、前記ミキサーにより、前のゴムチップ乾燥工程B7により乾燥された着色ゴムチップ9を攪拌して、互いに粘着して凝集状態にある着色ゴムチップ9を個別に離隔させる。この凝集状態にある着色ゴムチップ9を離隔させるための時間は、前記仕上げ色の顔料5に前記ベビーパウダーが混合されているか否か、乾燥状態等により相違するが約5分間で離隔される。なお、前記ゴムチップ乾燥工程B7において、前の第2のバインダー混合工程B6を経た後も着色ゴムチップ9をミキサー内に収容したまま、前記ミキサー内を火炎等により加熱しながら攪拌して乾燥させる場合には、その乾燥過程で凝集状態から離隔されるので、このゴムチップ離隔工程B8を省略することができる。このゴムチップ離隔工程B8により下地着色ゴムチップ8に対する仕上げ処理工程Bは終了し、下地着色層6と仕上げ着色層7とに着色された着色ゴムチップ9を得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下、上記実施の形態の図2及び図3に示す工順により試験した実施例1ないし3、及び比較例1について、表1を参照して説明する。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示す試験に使用した原材料は以下のとおりである。
〔下地処理工程A用の原材料〕
・ゴムチップ:(株)新生ゴム製 廃タイヤ破砕の加硫ゴムチップ(黒色)、粒径5〜12mm
・水性プライマー:大日精化工業(株)製 ダイスコート100(ダイスコートは、大日精化工業(株)の登録商標)
・遮熱プライマー: 関西ペイント(株)製 ヒルムA一層目用(ヒルムは、関西ペイント(株)の登録商標)
・顔料(白色):森下弁柄工業(株)製 白色(酸化チタン)
・ベビーパウダー:ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)製
・水性塗料(白色):(株)アサヒペン製 水性建物用
・水性アクリル絵具(白色):ロイヤルターレンス社製 「アムステルダム」色NO.105(チタニウムホワイト)
〔仕上げ処理工程B用の原材料〕
・ウレタンバインダー:BSF INOAC ポリウレタン(株)製 湿気硬化型EC−1213
・遮熱塗料:関西ペイント(株)製 ヒルムA二層目用(ヒルムは、関西ペイント(株)の登録商標)
・顔料(右記の色種):森下弁柄工業(株)製 緑色、灰色、赤色、薄茶色(ベージュ)
【0063】
なお、前記下地処理工程A用の下地色の顔料(白色)と水性塗料(白色)、水性アクリル絵具(白色)との明度は、JISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色であるとともに、仕上げ処理工程B用の仕上げ色の顔料(緑色、灰色、赤色、薄茶色)の明度は、前記L*a*b*表色系においてL*値が前記仕上げ色の顔料よりも小さい明度の顔料を使用した。
【0064】
まず、実施例1は、下地処理工程Aにおいて(図2参照)、ゴムチップ素材1の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程A3が水性プライマー2を3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程A4,A5が下地色の顔料3(白色)を各々2.0重両部及びベビーパウダーを各々0.1重量部、第2のバインダー混合工程A6が水性プライマー2を3.0重両部ずつ混合して着色したものであって、色斑が若干あり、色調は白灰色であった。すなわち、この下地処理工程Aの段階ではゴムチップ素材1の地色は完全には隠蔽されていない。
【0065】
また、仕上げ処理工程Bにおいて(図3参照)、下地着色ゴムチップ8の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程B3がウレタンバインダー4を3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程B4,B5が仕上げ色の顔料5(緑色)を各々1.0重両部、第2のバインダー混合工程B6がウレタンバインダー4を3.0重両部ずつ混合して着色したものであって、前記下地処理工程Aにおいて認められた色斑はなくなり、色調は鮮明な緑色であった。すなわち、前記下地処理工程Aにおいて認められたゴムチップ素材1の地色は完全に隠蔽され視認することはできなかった。したがって、前記下地処理工程Aの段階において若干の色斑があっても、又はゴムチップ素材1の地色が多少視認できたとしても、前記仕上げ処理工程Bを経ることにより前記色斑や地色の視認を確実に回避することができる。
【0066】
次に、実施例2は、下地処理工程Aにおいて、ゴムチップ素材1の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程A3が水性プライマー2を3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程A4,A5が下地色の顔料3(白色)を各々1.5重両部及びベビーパウダーを各々0.1重量部、第2のバインダー混合工程A6が水性プライマー2を3.0重両部ずつ混合して着色した後、図示しない塗料混合工程を設けて水性塗料(白色)を混合したものであって、色斑はなく、色調は前記実施例1よりも白い白灰色であった。すなわち、前記水性塗料(白色)の混合により実施例1で認められた色斑は回避できたものの、ゴムチップ素材1の地色は完全には隠蔽されていない。
【0067】
また、仕上げ処理工程Bにおいて、下地着色ゴムチップ8の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程B3がウレタンバインダー4を3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程B4,B5が仕上げ色の顔料5(灰色)を各々1.0重両部、第2のバインダー混合工程B6がウレタンバインダー4を3.0重両部ずつ混合して着色したものであって、色斑はなく、色調は鮮明な灰色であった。すなわち、前記下地処理工程Aにおいて認められたゴムチップ素材1の地色は完全に隠蔽され視認することはできなかった。したがって、前記下地処理工程Aの段階においてゴムチップ素材1の地色が多少視認できたとしても、前記仕上げ処理工程Bを経ることにより地色の視認を確実に回避することができる。
【0068】
次に、実施例3は、下地処理工程Aにおいて、ゴムチップ素材1の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程A3が水性プライマー2を3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程A4,A5が下地色の顔料3(白色)を各々1.5重両部及びベビーパウダーを各々0.1重量部、第2のバインダー混合工程A6が水性プライマー2を3.0重両部ずつ混合して着色した後、図示しない塗料混合工程を設けて水性アクリル絵具(白色)を混合したものであって、色斑はなく、色調は前記実施例1よりも白い白灰色であった。すなわち、前記水性アクリル絵具(白色)の混合により実施例1で認められた色斑は回避できたものの、ゴムチップ素材1の地色は完全には隠蔽されていない。
【0069】
また、仕上げ処理工程Bにおいて、下地着色ゴムチップ8の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程B3がウレタンバインダー4を3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程B4,B5が仕上げ色の顔料5(赤色)を各々1.0重両部、第2のバインダー混合工程B6がウレタンバインダー4を3.0重両部ずつ混合して着色したものであって、色斑はなく、色調は鮮明な赤色であった。すなわち、前記下地処理工程Aにおいて認められたゴムチップ素材1の地色は完全に隠蔽され視認することはできなかった。したがって、前記下地処理工程Aの段階においてゴムチップ素材1の地色が多少視認できたとしても、前記仕上げ処理工程Bを経ることにより地色の視認を確実に回避することができる。
【0070】
また、比較例1は、下地処理工程Aにおいて、バインダーを水性プライマー2に替え遮熱プライマー(符号は省略する)を混合したものであって、ゴムチップ素材1の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程A3が遮熱プライマーを3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程A4,A5が下地色の顔料3(白色)を各々2.0重両部及びベビーパウダーを各々0.1重量部、第2のバインダー混合工程A6が遮熱プライマーを3.0重両部ずつ混合して着色したものであって、色斑が若干あり、色調は実施例1ないし3よりも白い白灰色であった。すなわち、この下地処理工程Aの段階ではゴムチップ素材1の地色は完全には隠蔽されていない。また、接着されなかった下地色の顔料3(粉体)がミキサー低部に極少量だけ残っていたことから、前記遮熱プライマーは、水性プライマー2に比べて接着力がやや劣ると推量される。
【0071】
また、仕上げ処理工程Bにおいて、バインダーをウレタンバインダー4に替え遮熱塗料(符号は省略する)を混合したものであって、下地着色ゴムチップ8の100重量部に対して、第1のバインダー混合工程B3が遮熱塗料を3.0重両部、第1,第2の顔料混合工程B4,B5が仕上げ色の顔料5(薄茶色)を各々1.0重両部、第2のバインダー混合工程B6が遮熱塗料を3.0重両部ずつ混合して着色したものであって、前記下地処理工程Aにおいて認められた色斑はまだ認められるとともに、色調はほぼ鮮明な薄茶色であったが、前記下地処理工程Aにおいて認められたゴムチップ素材1の地色は完全に隠蔽され視認することはできなかった。そして、この仕上げ処理工程Bにおいても、接着されなかった極少量の仕上げ色の顔料5(粉体)が視認されたことから、前記遮熱塗料は、ウレタンバインダー4に比べて接着力がやや劣ると推量される。したがって、バインダーをウレタンバインダー4に替え遮熱塗料を使用する際には、この遮熱塗料の配合量を増量することにより改善され、実用可能であると推量される。
【0072】
上述した本発明によれば、上記下地処理工程Aにおいて着色される下地着色層6の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系でなり、この下地色4の白色は酸化チタンにより生成されるとともに、薄灰色は配合量の少ない黒色と、酸化チタンにより生成され配合量の多い白色との配合により酸化チタンを主成分として生成されていることから、該酸化チタンの屈折率が大きく光をよく散乱させる作用によりゴムチップ素材1の地色が隠蔽されやすくなる。仮に、この下地処理工程Aにおいてゴムチップ素材1の地色が多少視認できたとしても、その後の仕上げ処理工程Bの着色により確実に隠蔽される。すなわち、上記仕上げ処理工程Bにより着色される仕上げ着色層7の仕上げ色は、前記下地色よりも前記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の灰色、薄茶色(ベージュ)、茶色、赤色、青色、緑色等の仕上げ色でなり、この仕上げ色の顔料5により仕上げ着色層7を着色することから、ゴムチップ素材1の地色は確実に隠蔽されるとともに、該仕上げ色がさらに鮮明に発色された着色ゴムチップを製造することができる。また、下地色の色種が多種ではなく白色系又は薄灰色系の少種でなることから、下地処理の状態で在庫する場合には、その在庫管理が煩雑にならず在庫管理費(製造コスト)を低減することができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態又は実施例に限定されるものではなく、例えば、上記下地処理工程Aの工順について、上記第1のバインダー混合工程A3、第1,第2の顔料混合工程A4,A5、第2のバインダー混合工程A6のほかに、例えば、第1のバインダー混合工程A3、第1の顔料混合工程A4、第2のバインダー混合工程A6、第2の顔料混合工程A5のように入れ替えた構成にしても良い。また、上記仕上げ処理工程Bについて、第1のバインダー混合工程B3、第1,第2の顔料混合工程B4,B5、第2のバインダー混合工程B6のほかに、第1のバインダー混合工程B3、第1の顔料混合工程B4、第2のバインダー混合工程B6、第2の顔料混合工程B5のように入れ替えた構成にしても良い。また、上述した仕上げ処理工程Bが終了した後の着色ゴムチップ9は、そのままの温度で図示しない金型に予め成型用バインダーを混合した上記着色ゴムチップを充填し、仕上げ処理工程Bに連続して板状又はブロック状に成型してもよいし、或いは、上記第2のバインダー混合工程B6が終了した後に、更にバインダー(成型用バインダー)を添加して混合し、これを図示しない金型に充填し、圧縮することにより板状,ブロック状又は棒状に成型して、例えば緩衝ゴムブロックやゴムマット(着色ゴムチップを用いた成型品)としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施の形態の着色ゴムチップの一例を示し、(a)は断面図、(b)は(a)に示す着色ゴムチップの表層部を拡大した部分断面図である。
【図2】本実施の形態の着色ゴムチップの製造方法に係る下地処理工程を示すフローチャートである。
【図3】本実施の形態の着色ゴムチップの製造方法に係る仕上げ処理工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 ゴムチップ素材
2 水性プライマー
3 下地色の顔料
4 ウレタンバインダー
5 仕上げ色の顔料
6 下地着色層
7 仕上げ着色層
8 下地着色ゴムチップ
9 着色ゴムチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の顔料による下地色が着色された下地着色層と、
この下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の顔料による仕上げ色が着色された仕上げ着色層と、
により着色されてなることを特徴とする着色ゴムチップ。
【請求項2】
前記下地着色層の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系であることを特徴とする請求項1記載の着色ゴムチップ。
【請求項3】
地色がJISZ8729で規定されているL*a*b*表色系においてL*値が50未満のゴムチップ素材の表面に特定の明度の下地色の顔料により下地着色層を着色する下地処理工程と、
この下地処理工程により着色された下地着色層の上層に上記下地色よりも上記L*a*b*表色系においてL*値が小さい明度の仕上げ色の顔料により仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程と、
を備えてなることを特徴とする着色ゴムチップの製造方法。
【請求項4】
前記下地着色層を着色する下地処理工程は、
前記ゴムチップ素材と水性プライマーとを攪拌して混合する下地処理のバインダー混合工程と、
この下地処理のバインダー混合工程を経た後のゴムチップと前記明度の下地色の顔料とを攪拌して混合する下地処理の顔料混合工程と、
を備えてなることを特徴とする請求項3記載の着色ゴムチップの製造方法。
【請求項5】
前記下地処理の顔料混合工程により混合する前記明度の顔料の下地色は、前記L*a*b*表色系においてL*値が100ないし80の白色系又は80ないし60の薄灰色系であることを特徴とする請求項3又は4記載の何れかの着色ゴムチップの製造方法。
【請求項6】
前記下地処理のバインダー混合工程に用いるゴムチップ素材は、少なくとも常温よりも高温とされてなることを特徴とする請求項3ないし5記載の何れかの着色ゴムチップの製造方法。
【請求項7】
前記下地処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記下地色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことを特徴とする請求項3ないし6記載の何れかの着色ゴムチップの製造方法。
【請求項8】
前記仕上げ着色層を着色する仕上げ処理工程は、
前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップと樹脂バインダーとを攪拌して混合する仕上げ処理のバインダー混合工程と、
この仕上げ処理のバインダー混合工程により樹脂バインダーと混合されたゴムチップと前記明度の仕上げ色の顔料とを攪拌して混合する仕上げ処理の顔料混合工程と、
を備えてなることを特徴とする請求項3ないし7記載の何れかの着色ゴムチップの製造方法。
【請求項9】
前記仕上げ処理の顔料混合工程は複数工程により構成され、該複数の顔料混合工程により前記仕上げ色の顔料の設定配合量を複数回に分けて混合するようにしたことを特徴とする請求項3ないし8記載の何れかの着色ゴムチップの製造方法。
【請求項10】
前記仕上げ処理のバインダー混合工程の前に仕上げ処理のゴムチップ加熱工程を設け、
この仕上げ処理のゴムチップ加熱工程は、前記下地処理工程により下地色が着色されたゴムチップを加熱するようにしたことを特徴とする請求項3ないし9記載の何れかの着色ゴムチップの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−47691(P2010−47691A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213298(P2008−213298)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(306022395)有限会社アミカル (5)
【出願人】(506342615)
【Fターム(参考)】