説明

着色塗料組成物及び着色塗膜

【課題】見る位置によって色味が変わらないうえに、さらに、色分かれが発生しない着色塗料組成物を提供する。
【解決手段】黄色酸化鉄を含有する着色塗料組成物であって、上記黄色酸化鉄の少なくとも一部は、ステアリン酸吸着量が35〜100μmol/gであり、かつ、長辺長/短辺長の比が1〜3である特殊黄色酸化鉄であり、更に、黄色酸化鉄以外の着色顔料及びバインダー樹脂を含有する着色塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色塗料組成物及び着色塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塗料は、色相を調整するために複数の着色顔料が用いられている。この着色顔料は、酸塩基相互作用や疎水性相互作用によって樹脂に吸着して塗料中に安定に存在することができる(例えば、非特許文献1参照のこと)。
この塗料を1回塗布して得られた塗膜の乾燥前に、補修等の目的で部分的に再塗装して塗膜を形成した場合、色分かれとよばれる、1回塗布して得られた塗膜と部分的に再塗装して形成した塗膜との間に色違いが発生するという問題があった。このような色分かれは、一般に、顔料を塗料中へ分散する際の、顔料への樹脂の吸着が不充分であるために分散安定性が低下することによって発生し、複数の着色顔料が存在する場合には、顔料どうしの相互作用によってさらに顕著になると考えられている。
【0003】
ところで、多くの塗料には、着色顔料として黄色酸化鉄が用いられている。この黄色酸化鉄は、針状のものが一般的である。しかしながら、この針状の黄色酸化鉄を含んだ塗料を用いて得られた塗膜は、光の入射角と人の見る位置により、その他の部分と異なる方向で塗布した部分だけが、周囲と異なった塗色に見えることがあった。このような問題を解決するために、長辺長/短辺長の比が小さい黄色酸化鉄顔料を用いる着色塗料組成物が知られている(例えば、特許文献1参照のこと)。しかしながら、この文献には色分かれについて何ら示唆はない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−8935号公報
【非特許文献1】日本ペイント著「やさしい技術総説 塗料の性格と機能」日本塗料新聞社、1998年4月16日、p.462−463
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、見る位置によって色味が変わらないうえに、さらに、色分かれが発生しない着色塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、黄色酸化鉄を含有する着色塗料組成物であって、上記黄色酸化鉄の少なくとも一部は、ステアリン酸吸着量が35〜100μmol/gであり、かつ、長辺長/短辺長の比が1〜3である特殊黄色酸化鉄であり、更に、黄色酸化鉄以外の着色顔料及びバインダー樹脂を含有することを特徴とする着色塗料組成物である。
【0007】
上記特殊黄色酸化鉄の含有率は、着色塗料組成物に含まれる全黄色酸化鉄中50質量%以上であることが好ましい。
上記着色塗料組成物は、全着色顔料体積濃度が20%以下であることが好ましい。
上記着色塗料組成物は、有機溶剤型塗料であることが好ましい。
【0008】
本発明は、上記着色塗料組成物により得られることを特徴とする着色塗膜でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、着色顔料として黄色酸化鉄を含むものであって、黄色酸化鉄の少なくとも一部はステアリン酸吸着量が35〜100μmol/gであり、かつ、長辺長/短辺長の比が1〜3である特殊黄色酸化鉄である着色塗料組成物である。所定の長辺長/短辺長の比を有し、かつ、所定のステアリン酸吸着量を有する特殊黄色酸化鉄を含んでいるので、種々の樹脂が顔料へ充分に吸着し、これによって、顔料の分散安定性が向上し、結果として再塗装による色分かれの発生しない塗膜を得ることができるものである。すなわち、上記特殊黄色酸化鉄の形状及びステアリン酸吸着量を特定のものとすることにより、本発明の効果が得られるものである。
【0010】
上記特殊黄色酸化鉄は、ステアリン酸吸着量が35〜100μmol/gである。上記吸着量が35μmol/g未満であると色分かれが発生する。上限は、実質的には100μmol/gである。上記吸着量は、好ましくは40〜95μmol/gである。上記吸着量は、代表的には以下の方法で測定することができる。
なお、上記特殊黄色酸化鉄以外の黄色酸化鉄についても同様にして測定することができる。
【0011】
<ステアリン酸吸着量の測定方法>
測定する黄色酸化鉄顔料6gを、ステアリン酸を2質量%含有する2−ブタノン−トルエン−シクロヘキサノン混合溶液(2−ブタノン:トルエン:シクロヘキサノン=2:2:1、質量比)14gが入った50mLスクリュー管瓶(内径30mmφ、高さ77mm)中に加え、該スクリュー管瓶を密栓して振とう器により20℃で24時間振とうする。次いで遠心分離機(株式会社久保田製作所製「テーブルトップ遠心機 5420」(商品名))により固液分離し、上澄み液中のステアリン酸濃度をGPC(ゲル・パーミエション・クロマトグラフィ)分析装置を用いて測定する。得られたRI(Refractive index)曲線からピークの高さを求め、試料単位質量当たりのステアリン酸吸着量を次式より算出する。
ステアリン酸吸着量 (μmol/g)
=10×{(A×B/MW)/100}×(1−SR/SR)/C
ただし、A:ステアリン酸溶液量 (g)
B:ステアリン酸溶液濃度 (質量%)
MW:ステアリン酸分子量(284)
C:黄色酸化鉄顔料採取量 (g)
SR:ステアリン酸2質量%溶液のRI曲線が示すピークの高さ(cm)
SR:上澄み液中のステアリン酸のRI曲線が示すピークの高さ(cm)
【0012】
本発明において、特殊黄色酸化鉄は、上記範囲のステアリン酸吸着量を有するものである。このような特殊黄色酸化鉄のステアリン酸吸着量は、例えば、黄色酸化鉄を製造する際の温度又はpHを制御することによって調整することができる。
【0013】
上記特殊黄色酸化鉄は、長辺長/短辺長の比が1〜3である。上記比が3を超えると色分かれが発生する。上記比は、好ましくは1〜2である。本発明において、上記特殊黄色酸化鉄の長辺長/短辺長の比は、実際に着色塗料組成物に存在する形態で測定した値である。上記形態としては特に限定されず、例えば、一次粒子、二次粒子、これらの凝集体等を挙げることができる。したがって、個々の一次粒子の長辺長及び短辺長を直接測定するものではないため、本発明における特殊黄色酸化鉄の長辺長/短辺長の比が、カタログ等に記載されている一次粒子状態の値と異なっても構わない。
【0014】
黄色酸化鉄の長辺長及び短辺長は、代表的には以下の所定の方法で測定することができる。
<長辺長/短辺長の比の測定方法>
着色顔料として黄色酸化鉄を1種類のみ有する測定用塗料組成物を調製し、得られた測定用塗料組成物中に存在するこの黄色酸化鉄をxy平面に投影し、長方形化処理した際の黄色酸化鉄凝集体の中心点を通る線で最も長い線の長さを長辺長とし、この長辺と直角に交わる直線で中心点を通る線の長さを短辺長とする方法により決定する。具体的には、透過型電子顕微鏡(JEOL製「JEM−200CX」(商品名))を用い、倍率5万倍または10万倍の電顕写真に於いて、個々の凝集体について投影像の中心点を通る線で最も長いものを長辺としてその長さを長辺長とし、この長辺と直角に交わる直線で中心点を通る線を短辺としてその長さを短辺長として測定し、平均長辺長並びに平均短辺長を算出した。また、平均(長辺長/短辺長)は個々の凝集体について長辺長/短辺長を算出し、その平均値を算出して求めた。
【0015】
また、本発明における特殊黄色酸化鉄の比表面積は、鮮明な色調を有するという理由で5〜30m/gが好ましい。本発明で使用される特殊黄色酸化鉄として市販されているものとしては、例えば、YM1100(ステアリン酸吸着量63μmol/g、長辺長/短辺長の比2、比表面積17m/g、チタン工業社製)等を挙げることができる。
【0016】
また、上記のステアリン酸吸着量、及び、長辺長/短辺長の比を有する特殊黄色酸化鉄を原料として用いる場合ばかりでなく、上記吸着量や上記比から外れる黄色酸化鉄を原料として用いても、塗料製造工程で粉砕されたり、変形させられることによって、結果として得られた着色塗料組成物中で、上記特殊黄色酸化鉄となる場合もあり、このような黄色酸化鉄も本発明における特殊黄色酸化鉄に含まれるものである。
【0017】
本発明の着色塗料組成物は、黄色酸化鉄を含むものであって、少なくとも一部が上記特殊黄色酸化鉄である。本発明の着色塗料組成物に含まれる全黄色酸化鉄中、特殊黄色酸化鉄の含有率は、50質量%以上であることが好ましい。上記含有率が50質量%を下回ると、本発明の効果が発揮できなくなるおそれがある。上記含有率は、70質量%以上であることがより好ましい。
【0018】
上記特殊黄色酸化鉄以外のその他の黄色酸化鉄としては特に限定されず、具体的には、Bayferrox915(ステアリン酸吸着量26μmol/g、長辺長/短辺長の比2、ランクセス社製)、TSY−1(ステアリン酸吸着量67μmol/g、長辺長/短辺長の比7、戸田ピグメント社製)等を挙げることができる。
【0019】
本発明の着色塗料組成物は、上記特殊黄色酸化鉄と上記その他の黄色酸化鉄以外のその他の着色顔料を含むものである。上記その他の着色顔料としては、例えば、塗料に用いられる通常の着色顔料、具体的には、カーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラ等の無機着色顔料、銅フタロシアニン系の有機着色顔料等を挙げることができる。
【0020】
本発明の着色塗料組成物は、全着色顔料体積濃度が20%以下であることが好ましい。上記濃度が20%を超えると、耐水性や耐候性などの塗膜性能が低下するおそれがある。
【0021】
本発明の着色塗料組成物は、更に樹脂を含有するものである。上記樹脂としてはバインダー成分として作用するものが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の塗料に使用される公知の塗料を挙げることができる。上記樹脂は、硬化性官能基を有していてもよい。
【0022】
さらに、上記着色塗料組成物は、硬化剤を含んでいてもよい。上記硬化剤としては特に限定されず、上記樹脂の有する反応性官能基と硬化可能な官能基を有する硬化剤を挙げることができ、具体的には、上記樹脂が水酸基を有している場合はアミノ樹脂や(ブロック化)ポリイソシアネート化合物等を、また、上記樹脂がカルボン酸基を有している場合はエポキシ基を有する樹脂やカルボジイミド基を有する化合物等を、また上記樹脂がカルボニル基を有している場合はヒドラジド化合物等を挙げることができる。
【0023】
本発明の着色塗料組成物は、更に、顔料分散剤を含有することが好ましい。上記着色顔料は、顔料分散剤によって分散され、安定化されて塗料中に存在する。上記顔料分散剤としては特に限定されず、適用する着色塗料組成物の形態に合致した顔料分散剤を適宜選択することが好ましい。上記顔料分散剤としては通常用いられる顔料分散樹脂を挙げることができ、これらは、例えば、市販されているものを使用してもよい。
【0024】
本発明の着色塗料組成物は、上記成分の他、消泡剤、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤および光安定剤等、当業者によってよく知られた各種添加剤等を含むことができる。また、本発明の塗料組成物が水性型である場合、さらに、凍結防止剤や造膜助剤等を含むことができる。
【0025】
本発明の着色塗料組成物の形態としては特に限定されず、例えば、有機溶剤型、水性型等を挙げることができるが、有機溶剤型のほうが本発明で述べられている色分かれ現象の発生が多いという理由から、有機溶剤型の場合に本発明の効果が最も大きい。
【0026】
本発明の着色塗料組成物は、例えば、上記着色顔料と上記顔料分散剤とからなる顔料分散体組成物を調製した後、必要に応じて上記各種添加剤等とを混合、撹拌した後、さらにバインダー成分となる樹脂を混合、撹拌することによって得ることができる。上記撹拌、混合する機器としては特に限定されず、例えば、ディスパー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ホモミキサー等の各々単独または組み合わせを挙げることができる。
【0027】
本発明の着色塗料組成物により得られる着色塗膜も本発明の一つである。上記着色塗膜は、例えば、上記着色塗料組成物を基材に塗布する方法により得ることができる。上記基材としては特に限定されず、鉄、ステンレス、アルミニウム等およびその表面処理物の金属基材、セメント類、石灰類、石膏類等のセメント系基材、ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等を挙げることができる。これらにはシーラー等の下塗りが形成されていてもよい。
【0028】
また、上記塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ハケ塗りおよびローラー塗布等を挙げることができる。また、先に塗布して得られた塗膜の乾燥前に、補修等の目的で部分的に再度塗布する場合の塗布する方法としては特に限定されず、ハケ塗りおよびローラー塗布等を挙げることができる。
【0029】
塗布後、常温にて放置または強制的に加熱を行い乾燥させて本発明の着色塗膜を得ることができる。なお、塗布量、塗布膜厚および乾燥時間は、塗料の種類や適用する基材に応じて任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、色分かれが発生しない着色塗料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
製造例1 アクリル樹脂の調製
1Lのガラス製ベッセルにカクタスソルベントP−20を382.5g仕込み、窒素バブリングを行ない、撹拌しながら110℃に昇温した。滴下ロートAには、シクロヘキシルメタクリレート175g、エチルヘキシルメタクリレート125g、イソブチルメタクリレート148.5g、ジメチルアミノエチルメタクリレート4g、メタクリル酸2.5gおよび4−ヒドロキシブチルアクリレート45gを仕込み、滴下ロートBには、カクタスソルベントP−20を105gおよびカヤエステルOを10g仕込み、滴下ロートA、滴下ロートBから同時に3時間かけて一定の速度で滴下した。
3時間後、30分間110℃で撹拌をしたのち、滴下ロートCに、カクタスソルベントP−20を25gおよびカヤエステルOを2.5g仕込み、30分かけて、一定の速度で滴下する。その後、さらに1.5時間110℃で撹拌した後、室温まで下げてアクリル樹脂溶液を得た。
得られたアクリル樹脂溶液は、加熱残分50質量%であった。
【0033】
実施例1
(測定用塗料組成物1の製造・評価)
380mlのベッセルに、製造例1で得られたアクリル樹脂溶液68g、着色顔料としてYM1100(チタン工業社製黄色酸化鉄、ステアリン酸吸着量63μmol/g)のみ15.4g、カクタスソルベントP−20(ジャパンエナジー社製有機溶媒、脂肪族炭化水素の含有割合が70%程度)10.0g、DISPERBYK−112(ビックケミー社製顔料分散剤)2.0g、および、ダッポーSN359(サンノプコ社製消泡剤)1.0gを仕込み、ガラスビーズを入れて卓上型バッチ式サンドミルを用いて、120分間分散した後、ガラスビーズを除去して塗料液を得た後、この塗料液100質量部に対して、硬化剤であるタケネートD−178N(三井武田ケミカル社製ポリイソシアネート)5質量部とカクタスソルベントP−20、5質量部とを混合し撹拌して、測定用塗料組成物1を得た。
得られた測定用塗料組成物1をシートメッシュ上にサンプリングし、検鏡サンプルを作成し、JEM−200CX(JEOL社製透過型電子顕微鏡)を用いて5万倍の顕微鏡写真を撮影し、YM1100の長辺長及び短辺長を測定することにより、長辺長/短辺長の比が2であることがわかった。
(着色塗料組成物1)
着色顔料としてYM1100のみに代えて、YM1100を6.6g、シャニンブルー5159Y(大日精化社製銅フタロシアニンブルー)3.0g及びCR−95(石原産業社製二酸化チタン)5.8gとしたこと以外は、上記測定用塗料組成物の製造と同様にして、塗料液を得た後、同様にしてタケネートD−178N及びカクタスソルベントP−20を混合し撹拌して、着色塗料組成物1を得た。
【0034】
実施例2
YM1100を、上水を用いてスラリー化し、顔料として30g/Lに調整した。該スラリーを40℃、pH3.5で120分間の撹拌保持を行った後、ろ過、洗浄、乾燥並びに粉砕を行い、ステアリン酸吸着量42μmol/gのYM1100処理品1を得た。
YM1100の代わりにYM1100処理品1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、測定用塗料組成物2を得た。更に、測定用塗料組成物1の代わりに測定用塗料組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、YM1100処理品1の長辺長及び短辺長を測定し、長辺長/短辺長の比が2であることがわかった。
また、YM1100の代わりにYM1100処理品1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、着色塗料組成物2を得た。
【0035】
実施例3
YM1100を、上水を用いてスラリー化し、顔料として30g/Lに調整した。該スラリーを80℃、pH11.0で120分間の撹拌保持を行った後、ろ過、洗浄、乾燥並びに粉砕を行い、ステアリン酸吸着量87μmol/gのYM1100処理品2を得た。
YM1100の代わりにYM1100処理品2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、測定用塗料組成物3を得た。更に、測定用塗料組成物1の代わりに測定用塗料組成物3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、YM1100処理品2の長辺長及び短辺長を測定し、長辺長/短辺長の比が2であることがわかった。
また、YM1100の代わりにYM1100処理品2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、着色塗料組成物3を得た。
【0036】
比較例1
YM1100に代えて、Bayferrox915(ランクセス社製黄色酸化鉄、ステアリン酸吸着量26μmol/g)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、測定用塗料組成物4を得た。更に、測定用塗料組成物1の代わりに測定用塗料組成物4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、Bayferrox915の長辺長及び短辺長を測定し、長辺長/短辺長の比が2であることがわかった。
また、YM1100に代えて、Bayferrox915を用いたこと以外は実施例1と同様にして、着色塗料組成物4を得た。
【0037】
比較例2
YM1100に代えて、TSY−1(戸田ピグメント社製黄色酸化鉄、ステアリン酸吸着量67μmol/g)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、測定用塗料組成物5を得た。更に、測定用塗料組成物1の代わりに測定用塗料組成物5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、TSY−1の長辺長及び短辺長を測定し、長辺長/短辺長の比が7であることがわかった。
また、YM1100に代えて、TSY−1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、着色塗料組成物5を得た。
【0038】
(色分かれの評価)
20cm×30cmのブリキ板を水平に置き、実施例1で得られた着色塗料組成物1を3g量り取り、ハケを用いて均一となるように塗布して塗板を作製した。
上記塗板を作製したあと4時間後に、着色塗料組成物1を2g量り取り、その塗板の半分の面積に対して均一となるように再度ハケで塗布した。塗布した塗板を23℃で1日乾燥させたのち、1回塗装された部分と、2回塗装された部分との、正面から見たときの塗色の違い(色分かれの有無)を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
◎:塗色の違いがない
○:塗色の違いがほとんどない
△:塗色の違いがややある
×:塗色の違いが著しい
得られた評価結果は表1に示した。なお、得られた塗板の光の入射角と見る位置による色味の違いは観察されなかった。
【0039】
この後、実施例2及び3、並びに、比較例1及び2で得られた着色塗料組成物2〜5に対しても、同様にして色分かれによる塗色の違いについて評価した。
得られた評価結果は表1に示した。なお、実施例2及び3、並びに、比較例1から得られた塗板の光の入射角と見る位置による色味の違いはいずれも観察されなかったが、比較例2から得られた塗板では、色味の違いが観察された。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から明らかなように、本発明の着色塗料組成物に含まれる着色塗料組成物1〜3を使用した実施例1、実施例2および実施例3は、特定のステアリン酸吸着量と長辺長/短辺長の比とを有する特殊黄色酸化鉄を含有しているので、得られた塗板は色分かれによる塗色の違いが見られなかった。しかしながら、本発明の着色塗料組成物に含まれない着色塗料組成物4及び5を使用した比較例1および2で得られた塗板は、色分かれによる塗色の違いが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の着色塗料組成物は、建築物の内外装の塗装に対して好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色酸化鉄を含有する着色塗料組成物であって、
前記黄色酸化鉄の少なくとも一部は、ステアリン酸吸着量が35〜100μmol/gであり、かつ、長辺長/短辺長の比が1〜3である特殊黄色酸化鉄であり、
更に、黄色酸化鉄以外の着色顔料及びバインダー樹脂を含有することを特徴とする着色塗料組成物。
【請求項2】
特殊黄色酸化鉄の含有率は、着色塗料組成物に含まれる全黄色酸化鉄中50質量%以上である請求項1記載の着色塗料組成物。
【請求項3】
全着色顔料体積濃度が、20%以下である請求項1又は2記載の着色塗料組成物。
【請求項4】
有機溶剤型塗料である請求項1、2又は3記載の着色塗料組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の着色塗料組成物により得られることを特徴とする着色塗膜。

【公開番号】特開2008−169278(P2008−169278A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2586(P2007−2586)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000109255)チタン工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】