説明

着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】小面積画面の液晶表示装置用の画素サイズが最小で20μm程度までのカラーフィルタにおいて、表面形状の湾曲により発生する明度低下に対して、これを抑制する着色感光性樹脂組成物からなる処方を提供すること。
【解決手段】少なくとも、着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤から構成された着色感光性樹脂組成物であって、前記バインダー樹脂に対する光重合性モノマーの固形分重量比が3〜8倍であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置等に用いられる明度低下現象が緩和された、高精細カラーフィルタの製造に供される、着色感光性樹脂組成物、これを用いて形成されるカラーフィルタ及び液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、携帯電話・デジタルカメラ等の小面積のものからパーソナルコンピュータの表示装置・テレビなどの大面積のものまで広く普及が進んでいる。これらの液晶表示装置については、輝度や色再現性、コントラストなどの性能をより高めることが要求されており、液晶表示装置を構成する部材であるカラーフィルタにおいても、さらなる高明度化や高色再現性、高コントラスト化などが望まれている。
【0003】
特に携帯電話等のモバイル端末では、小面積の画面であることから解像性を低くせざるを得ず、大面積画面品よりも視認性が劣るという構造上の欠点がある。しかし、これら小面積画面品でも視認性の良い高解像度品の要求が強くなっており、これに対応するにはカラーフィルタでは、ひとつひとつの画素を小さくする必要性がある。現状、画素の大きさとしては、最小で20μmのサイズまでの製品が要求され、生産されている。
【0004】
しかしながら、カラーフィルタを高精細化すると赤、緑、青の各画素の重なり部分の割合が大きくなることから、各着色感光性樹脂組成物の表面形状の湾曲する部分の割合が増えることによって、バックライトからの光の散乱が起き、明度が低下する現象が発生する。
【0005】
インキジェット方式によるカラーフィルタの製造において、粘度の非常に低く、表面張力により、球形となるインキジェット用インキに平坦化剤を使用して、明度低下を防ぐ方法が提案されている。しかしながら、塗液粘度が高いフォトリソ方式における明度低下に対しては効果が無く、他にその様な明度低下改善の提案はなされていない(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−308698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、小面積画面の液晶表示装置用の画素サイズが最小で20μm程度までのカラーフィルタにおいて、表面形状の湾曲により発生する明度低下に対して、これを抑制する着色感光性樹脂組成物からなる処方を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、着色感光性樹脂組成物を構成している成分のうち、モノマーの量を増加させることで、カラーフィルタの各画素間の乗り上げ部分を低減することが可能となり、着色感光性樹脂組成物表面形状の湾曲の程度が抑制されることよって、明度低下を緩和することができることを見出したことによる。
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、少なくとも、着色
剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤を含有する着色感光性樹脂組成物において、前記バインダー樹脂に対する光重合性モノマーの固形分重量比が3〜8倍であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、着色感光性樹脂組成物が、少なくとも、着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤から構成され、前記バインダー樹脂に対する前記光重合性モノマーの固形分重量比が3〜8倍である着色感光性樹脂組成物を用いて形成された、フィルタセグメントを備えていることを特徴とするカラーフィルタである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、着色感光性樹脂組成物が、少なくとも、着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤から構成され、前記バインダー樹脂に対する前記光重合性モノマーの固形分重量比が3〜8倍である着色感光性樹脂組成物を用いて形成された、フィルタセグメントからなるカラーフィルタを備えることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いることにより、小面積で画素サイズ20μm程度までの高精細カラーフィルタで発生している明度低下現象を緩和できるため、より明度の高く表示特性に優れたカラー液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例である下地ストライプパターン68μmのときの硬化塗膜表面形状である。
【図2】本発明の実施例である下地ストライプパターン68μmのときの硬化塗膜表面形状のストライプ間隔部分を拡大したものである。
【図3】本発明の実施例における分光測定データから算出した、明度低下度を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物は、少なくとも着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤を含んで組成され、また、本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物は、必要に応じて、非感光性樹脂、溶剤、その他成分を用いて構成することができる。
【0015】
着色組成物中における着色剤の質量濃度は、30%〜45%である。30%未満では、顔料濃度が薄いため、カラーフィルタとして十分な色の着色画素を形成するためには、着色画素の膜厚を非常に厚くしなくてはならないため、画素形成が困難であり、生産性も悪化するため実用上難点がある。50%を越えると、顔料を分散化するための樹脂の量が少なくなることで不安定になり、顔料の凝集による増粘やコントラスト低下の原因となり、また、感光性樹脂のフォトリソグラフィ適性を調節する透明成分(バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤など)も十分な量がなく、これら透明成分の調整だけでパターン形状や現像性の適正化を図るのは困難となる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物では、カルボン酸基と不飽和二重結合を有する単量体(以下、第1単量体と称する)を有してなる重合体が必要である。この第1単量体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水フタル酸などの酸無水物を付加させたもの等が挙げられる。
【0017】
このような、カルボン酸基と不飽和二重結合を有する単量体は、他の単量体(以下、第
2単量体と称する)と共に共重合体を作る。そのような共重合体を形成する第2単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基(メタ)アクリレート、スチレン及びスチレン誘導体、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のN置換マレイミド等が挙げられる。
【0018】
これらは1種類でもまた2種以上を組み合わせて用いることができる。共重合体中において、第1単量体は15〜80wt%、第2単量体は20〜85wt%であることが望ましい。カルボン酸基と不飽和二重結合を有する単量体である第1単量体の固形分重量比が15wt%未満では感度が上がらず、80wt%よりも多いと、後工程でのモノマー付加量を多くせねばならず、現像性が低下するからである。
【0019】
こうして調整されたアクリル系樹脂の分子量は、5000〜50000が好ましく、10000〜30000であればより好ましい。分子量が5000未満では、現像性が良すぎて、形状の制御が困難であるし、50000より大きいと、現像性が低下するからである。また、アクリル樹脂の酸価は、共重合組成と第3単量体の付加量で決定されるが、40〜150であることが好ましい。酸価40未満では現像性が低下し、150より多いと、着色感光性樹脂組成物の耐水性や電気特性の低下が見られるからである。
<着色剤>
本発明に係る感光性着色組成物を構成する各成分について説明する。着色剤としては、特に限定されるものではないが、耐熱性や耐候性など、カラーフィルタの要求特性を考慮すると有機顔料が好ましい。用いることのできる有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0020】
赤色画素には、例えば、色材として、C.I.Pigment Red 7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272、279等の赤色顔料を用いることができ、黄色顔料や橙色顔料を併用することもできる。
【0021】
黄色顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、735:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、187、188、193、194、199、198、213、214等が挙げられる。橙色顔料としては、C.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等が挙げられる。
【0022】
緑色画素には、例えば、C.I.Pigment Green 7、10、36、37、58等の緑色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用することもできる。黄色顔料としては、赤色画素に用いる顔料として挙げたものと同様のものが使用可能である。
【0023】
青色画素には、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:
2、15:3、15:4、15:6(P100‐781ブルー)、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができ、紫色顔料を併用することもできる。紫色顔料としては、C.I.PigmentViolet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等が挙げられる。
【0024】
樹脂に顔料を分散する際には、適宜、界面活性剤、樹脂型顔料分散剤、色素誘導体等の分散剤が使用できる。また、塗布性向上、感度の向上、密着性の向上などを目的として、連鎖移動剤、界面活性剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加しても良い。分散剤の添加量は特に限定されるものではないが、着色剤100重量%に対して、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは1〜10重量%の量で用いることができる。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコン系、フッ素系等が挙げられる。具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンn‐オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn‐ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類等のほか、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株) 製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子(株)製)、Disperbyk(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ソルスパース(ゼネカ(株)製)、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
<添加剤>
塗膜の平滑性や、泡の除去を目的として、レベリング剤や消泡剤を添加しても良い。シリコン系やアクリル系は知られており、表面のレベリング性・フロー性などを向上する目的で用いられる。レべリング剤の代表的なものは、有機変性ポリシロキサンがある。さらには界面活性剤構造の水系用シリコン系レベリング剤、ポリアクリレート系レベリング剤、膜に固定させるために反応基を持つレベリング剤、二重結合を持つシリコン系添加剤なども好適である。
<バインダー樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物に用いることのできるバインダー樹脂として、その他、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの非感光性樹脂を含むことができる。さらには必要に応じて、その前駆体である、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマー若しくはオリゴマーを単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0025】
非感光性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有しない樹脂であり、熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン‐マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。中でも透明性の観点からアクリル系樹脂が好適に用いられる

【0026】
バインダー樹脂を生成するモノマー及びオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、n‐ブチルメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2,2アゾビスイソブチロニトリル、エチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β‐カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、などの各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N‐ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルホルムアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
<光重合性モノマー>
光重合性モノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリレートを用いることができる。水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロカラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
【0027】
本発明では、この光重合性モノマーの量をバインダー樹脂に対して、3倍から8倍の量にすることで感光性着色組成物中の平均分子量が小さくなることにより、画素間の乗り上げ量を少なくすることができる。
<光重合開始剤>
本発明における光重合開始剤としては、オキシムエステル系化合物、アルキルフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン系化合物、トリアジン系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。
【0028】
オキシムエステル系重合開始剤、例えば、1,2‐オクタンジオン,1‐〔4‐(フェニルチオ)‐,2‐(O‐ベンゾイルオキシム)〕、O‐(アセチル)‐N‐(1‐フェニル‐2‐オキソ‐2‐(4'‐メトキシ‐ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン、エタノン,1‐〔9‐エチル‐6‐(2‐メチルベンゾイル)‐9H‐カルバゾール‐3‐イル〕‐,1‐(O‐アセチルオキシム)である。
【0029】
アセトフェノン系重合開始剤としては、4‐フェノキシジクロロアセトフェノン、4‐t‐ブチル‐ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1‐(4‐イソプロピルフェニル)‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オン等が例示できる。
【0030】
アルキルフェノン系重合開始剤としては、2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン、2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタノン‐1、2‐(ジメチルアミノ)‐2‐[(4‐メチルフェニル)メチル]‐1‐[4‐(4‐モルホリニル)フェニル]‐1‐ブタノン(イルガキュア379 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が例示できる。
【0031】
また、ベンゾイン系重合開始剤としては、4,4′‐ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB‐F 保土谷化学社製)、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が例示できる。ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4‐フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4'‐メチルジフェニルサルファイド等が例示できる。チオキサンソン系化合物としては、チオキサンソン、2‐クロルチオキサンソン、2‐メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4‐ジイソプロピルチオキサンソン等が例示できる。
【0032】
トリアジン系重合開始剤としては、2,4,6‐トリクロロ‐s‐トリアジン、2‐フェニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐メトキシフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐トリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐ピペニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2,4‐ビス(トリクロロメチル)‐6‐スチリルs‐トリアジン、2‐(ナフト‐1‐イル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(4‐メトキシ‐ナフト‐1‐イル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2,4‐トリクロロメチル‐(ピペロニル)‐6‐トリアジン、2,4‐トリクロロメチル(4'‐メトキシスチリル)‐6‐トリアジン等が例示できる。
【0033】
ホスフィン系重合開始剤としては、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(ルシリンTPO BASF社製)等が例示できる。
【0034】
また、キノン系重合開始剤としては、9,10‐フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等を例示できる。光重合開始剤の使用量は、光重合性モノマーの5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%とすることが望ましい。
【0035】
さらに、着色組成物には、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有させることができる。多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4‐ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4‐ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2‐ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4‐ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6‐トリメルカプト‐s‐トリアジン等が挙げられる。
<溶剤>
本発明に係る感光性着色組成物には、必要に応じて有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1‐メトキシ‐2‐プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル‐nアミルケトン、酢酸イソアミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独で若しくは混合して用いる。
【0036】
次に、本発明になる感光性着色組成物の調製方法について説明する。本発明になる緑色感光性着色組成物は、例えば、光重合性モノマー、透明樹脂(感光性透明樹脂、非感光性透明樹脂)、顔料、分散剤及び溶剤とから下記(1)〜(4)のいずれかの方法により調製することができる。
【0037】
(1):光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を予め混合して調製した顔料組成物を添加して分散させ、残りの成分を添加する。
【0038】
(2):光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を別々に添加して分散させた後、残りの成分を添加する。
【0039】
(3):光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料を分散させた後、顔料分散剤を添加した後、残りの成分を添加する。
【0040】
(4):光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液を2種類調製し、顔料と分散剤を予め別々に分散させてから、これらを混合し、残りの成分を添加する。なお、顔料と分散剤のうち一方は溶剤にのみ分散させても良い。
【0041】
ここで、顔料や分散剤の分散は、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、アトライター、ペイントコンディショナー等の各種分散装置を用いて行うことができる。
【0042】
また、顔料と分散剤を予め混合して顔料組成物を調製する場合、粉末の顔料と粉末の分散剤を単に混合するだけでも良いが、(a)ニーダー、ロール、アトライター、スーパーミル等の各種粉砕機により機械的に混合するか、(b)顔料を溶剤に分散させた後、分散剤を含む溶液を添加し、顔料表面に分散剤を吸着させるか、(c)硫酸等の強い溶解力を持つ溶媒に顔料と分散剤を共溶解した後、水等の貧溶媒を用いて共沈させるなどの混合方法を採用することが好ましい。
【0043】
以下に、本発明のカラーフィルタを得るための方法を記述する。本発明のカラーフィルタは少なくとも透明基板上に複数色の画素を備えており、当該複数色の画素は少なくとも着色層から構成されている。複数色には赤、緑、青(加法混色型)の組合せやイエロー、マゼンダ、シアン(減法混色型)の組合せが挙げられるが、本発明のカラーフィルタは緑色画素を有するカラーフィルタに対して特に好ましく適用できる。
【0044】
本発明の方法に用いられる透明基板は可視光に対してある程度の透過率を有するものが好ましく、より好ましくは80%以上の透過率を有するものを用いることができる。一般に液晶表示装置に用いられているものでよく、PETなどのプラスチック基板やガラスが
挙げられるが、通常はガラス基板を用いるとよい。遮光パターンを用いる場合は予め該透明基板上にクロム等の金属薄膜や遮光性樹脂によるパターンを公知の方法で付けたものを用いればよい。
【0045】
本発明における透明基板上への着色層の形成は、フォトリソグラフィ法により下記の方法で行う。すなわち、透明樹脂中に顔料を光開始剤、重合性モノマーと共に適当な溶剤に分散させた感光性着色組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンマスクを介して、高圧水銀灯などを光源として紫外線露光を行う。その後、溶剤又はアルカリ現像液に浸漬するか、若しくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去し所望のパターンを形成したのち、着色感光性樹脂組成物材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。
【0046】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0047】
以上の一連の工程を、感光性着色組成物及びパターンを替え、必要な数だけ繰り返すことで複数色の画素を備えるカラーフィルタを得ることができる。
【実施例】
【0048】
次に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における「部」は、「質量部」を表す。また、樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0049】
感光性樹脂組成物は、透明樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、界面活性剤、有機溶剤を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過し調整される。表1に、樹脂に対する光重合成モノマーの含有率を変えて作製した感光性着色組成物の組成を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
TEST 1における樹脂としては、顔料であるC.I.Pigment Blue
15:6(P100−781ブルー)、アクリル樹脂(大阪有機化学工業製 TNJ−1164、TLZ5100)、樹脂比率は6%、19%、30%であり、モノマーはポリオールポリアクリレート(東亞合成社製「アロニックスM402」)であり、M/P比は下記の式で表され
M/P比=8.88/(27.14*0.06+1.86*0.19+10.97*0.3)であり、1.68となる。同様にしてTEST 2は3.10、TEST 3は7.70であった。
【0052】
透明樹脂はアクリル樹脂溶液からなっており、調整は、反応容器にシクロヘキサノン370部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に過熱して、同温度で下記モノマー及び熱重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。組成はメタクリル酸を20.0部、メチルメタクリレート10.0部、n‐ブチルメタクリレートを55.0部、2‐ヒドロキシエチルメタクリレートを15.0部、2,2‘アゾビスイソブチロニトリルを4.0部である。
【0053】
滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続
行して、アクリル樹脂の溶液を得た。このアクリル樹脂の質量平均分子量Mwは、約40000であった。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃で20分間過熱乾燥し、不揮発分を測定し、測定結果に基づき、先に合成したアクリル樹脂溶液に不揮発分が30%になるようにシクロヘキサノンを添加して、アクリル樹脂溶液を調整した。
【0054】
また光重合成モノマーは、ポリオールポリアクリレート(東亞合成社製「アロニックスM402」)を、開始剤はチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「イルガキュア379」/保土ヶ谷化学製「EAB‐F」を、界面活性剤は東レ・ダウコーニング社製「FZ‐2122」を、有機溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/酢酸イソペンチル/シクロヘキサノンを用いて感光性樹脂組成物を得た。
【0055】
感光性樹脂組成物を、スピンコーターにてガラス基板(100mm×100mm、0.7mm厚)に、乾燥膜厚が2.2μmとなるように塗布し、塗布基板を得た。次に、減圧乾燥後、ストライプサイズが68、170、260μmにおける3種類の画素形成用のストライプ状フォトマスクを介して、高圧水銀ランプを用いて、積算光量100mJ/cmで紫外線露光を行った。25℃の0.2重量%の炭酸ナトリウム水溶液にて60秒間スプレー現像後、クリーンオーブンにて230℃で1時間加熱焼成することで、それぞれの感光性着色組成物の硬化塗膜を得た。
【0056】
なお、アルカリ現像液は炭酸ナトリウムを1.5重量%、炭酸水素ナトリウムを0.5質量%、陰イオン系界面活性剤(花王社製「ぺリレックスNBL」)を8.0重量%、水を90.0質量%で調整した。
【0057】
次に、モノマーの樹脂に対する固形分重量比を変更した感光性樹脂組成物を、ストライプサイズの異なる上記硬化塗膜基板上にそれぞれ塗布し、減圧乾燥後、高圧水銀ランプを用いて、積算光量100mJ/cmで紫外線露光を行った。25℃の0.2重量%の炭酸ナトリウム水溶液にて60秒間スプレー現像後、クリーンオーブンにて230℃で20分加熱焼成することで、ストライプサイズの異なる下地硬化塗膜上の感光性着色組成物の硬化塗膜を得た。
【0058】
得られたそれぞれの基板に対し、硬化塗膜の表面形状及び、ストライプパターン間の分光特性を顕微分光光度計で測定することにより、形状と明度の関係を調査した。図1は下地ストライプパターン68μmのときの硬化塗膜表面形状であるが、樹脂に対するモノマー量が多くなるほど、下地ストライプパターンへの乗り上げ量が減少していることが観察できる。また、図2は図1のストライプ間隔部分を拡大したものであるが、上記に伴い、特に樹脂に対するモノマーの固形分重量比(MP比)が3.10から7.70になったときにストライプ間の湾曲形状が緩和されていることが分かる。
【0059】
図3は、分光測定データからの算出した、明度低下度をプロットしたデータであるが、樹脂に対するモノマーの固形分重量比(MP比)がより多い塗膜の方が、明度低下量は小さいことが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤から構成された着色感光性樹脂組成物であって、前記バインダー樹脂に対する光重合性モノマーの固形分重量比が3〜8倍であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
着色感光性樹脂組成物が、少なくとも、着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤から構成され、前記バインダー樹脂に対する前記光重合性モノマーの固形分重量比が3〜8倍である着色感光性樹脂組成物を用いて形成された、フィルタセグメントを備えていることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項3】
着色感光性樹脂組成物が、少なくとも、着色剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤から構成され、前記バインダー樹脂に対する前記光重合性モノマーの固形分重量比が3〜8倍である着色感光性樹脂組成物を用いて形成された、フィルタセグメントからなるカラーフィルタを備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50524(P2013−50524A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187292(P2011−187292)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】