説明

着色硬化剤組成物、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法、及び硬化物

【課題】染料を混合して着色した場合での貯蔵時の退色が少ない上に、ケトンパーオキサイドの安定性の高い着色硬化剤組成物、これを用いるラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法、及び硬化物であって、さらに詳しくは不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂等のラジカル重合型熱硬化性樹脂と金属石鹸を併用して硬化させる際に、硬化時に即座に退色する常温で安定性の高い着色硬化剤組成物、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法、及び硬化物を提供する。
【解決手段】着色硬化剤組成物は、ケトンパーオキサイド、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート及び一般式(1)に示すチアゾールアゾ系染料からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料を混合して着色した場合での貯蔵時の退色が少ない上に、ケトンパーオキサイドの安定性の高い着色硬化剤組成物、これを用いるラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法、及び硬化物であって、さらに詳しくは不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂等のラジカル重合型熱硬化性樹脂と金属石鹸を併用して硬化させる際に、硬化時に即座に退色する常温で安定性の高い着色硬化剤組成物、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス繊維を補強材とし、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂等のラジカル重合型熱硬化性樹脂をマトリックスとする強化プラスチック(以下、FRPと略記する)は、浴槽、浄化槽などの住宅関連製品、漁船、ヨット、ボートなどの船舶関連製品、パイプ、タンクなどの工業関連製品、ヘッドランプリフレクター、スポイラーなどの自動車関連製品等に広く用いられている。さらに、ラジカル重合型熱硬化性樹脂は、非FRPとしても、塗料、ライニング、注型、化粧板などに広く実用化されている。
このラジカル重合型熱硬化性樹脂を常温硬化させる際には、メチルエチルケトンパーオキサイド(以下、MEKPOと略記する)やアセチルアセトンパーオキサイド(以下、AAPOと略記する)等のケトンパーオキサイド類と、ナフテン酸コバルト等の金属石鹸などを併用する硬化方法が一般に用いられている。
但し、ケトンパーオキサイドは純品での危険性が高いため、通常はジメチルフタレート等のフタル酸エステルで希釈された組成物として使用されている。
【0003】
ラジカル重合型熱硬化性樹脂に硬化剤を混合する場合、両者は無色又は淡黄色であるため、硬化剤が充分に混合されたことを目視で確認することは困難である。しかし、硬化剤が充分にラジカル重合型熱硬化性樹脂に混合されていない場合は、硬化状態が不均一となり、硬化剤が過剰に存在している部分では、硬化物にクラックが発生したり、白化するといった問題が発生することとなる。そのため、ケトンパーオキサイド類などの硬化剤に、硬化反応が終了すると退色する染料を溶解させて、ラジカル重合型熱硬化性樹脂への硬化剤の仕込み忘れを防止すると共に硬化剤のラジカル重合型熱硬化性樹脂に対する分散状態を確認できるような着色硬化剤が使用されている。
【0004】
ところが、硬化剤に染料を溶解させた着色硬化剤は、硬化剤の安定性が損なわれたり、着色硬化剤として貯蔵している際に経時的に退色することがあり、保管時の安定性を損なわずに硬化反応が終了すると即座に退色する着色硬化剤が求められている。
例えば近年、ジメチルフタレートで希釈したMEKPOとアントラキノン系染料からなる着色硬化剤組成物が開示されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この着色硬化剤組成物では、硬化後でも染料の色が残存するために、淡色の硬化物を得ることができなかった。
また、ジメチルフタレートで希釈したMEKPOとアゾ系染料からなる着色硬化剤組成物が開示されている(例えば特許文献2参照)。しかし、この着色硬化剤組成物では、貯蔵時に染料に起因する色が退色するといった問題があった。
更に、3−メトキシブチルアセテート等の希釈剤で希釈したMEKPOとアゾ系染料とからなる着色ケトンパーオキサイド組成物が開示されている(例えば特許文献3参照)。しかし、この着色硬化剤組成物では、保管時のMEKPOの安定性が低く、貯蔵時に活性酸素量が低下するといった問題があった。
【特許文献1】特開2002−179718号公報
【特許文献2】特開昭60−13843号公報
【特許文献3】特開平7−228569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は前述のような従来技術に存在する課題を解決することを目的とするものであって、染料を混合して着色した場合での貯蔵時のケトンパーオキサイドの活性酸素量の低下が少なく、退色が少なく、異物の析出がないといった安定性が高い着色硬化剤組成物、及びラジカル重合型熱硬化性樹脂を硬化させる際には即座に退色するラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法、及び硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的に鑑み鋭意検討した結果、特定の希釈剤を含有するケトンパーオキサイド組成物に特定の染料を配合することによって、貯蔵時のケトンパーオキサイドの活性酸素量の低下が少なく、退色が少なく、異物の析出もなく、着色硬化剤組成物と金属石鹸をラジカル重合型熱硬化性樹脂に混合して硬化させる際の硬化特性の経時変化(ケトンパーオキサイドが経時変化することにより硬化速度が速くなり樹脂に混合してからゲル化するまでの可使時間が短くなったり、或いは硬化速度が遅くなり成形してから完全硬化に至るまでの時間が長くなったりする)が少なく、かつ即座に退色することによって、本発明の目的が達成されることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一の発明の着色硬化剤組成物は、ケトンパーオキサイド、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(以下、TXIBと略記する)、及び一般式(1)に示されるチアゾールアゾ系染料からなることを特徴とするものである。
【化2】

(式中、Xは−OCH3、−SO2CH3、−Cl、−NO2であり、R1は−H、−CH3、−C25、−C24OH、−CH2O(CO)OCH3、−CH2O(CO)OC25、−C24O(CO)OCH3、−C24O(CO)OC25であり、R2は−C24OH、−C24OCOCH3、−C24CNであり、R3は−H、−CH3、−NHCOCH3、−NHCOC65である。)
【0008】
本発明の第二の発明の着色硬化剤組成物は、前記第一の発明の着色硬化剤組成物に、更に安定剤を含有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第三の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法は、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を硬化させる際に、前記第一又は第二の発明の着色硬化剤組成物と金属石鹸とを組み合わせて用いることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第四の発明の硬化物は、前記第三の発明の製造方法により得られることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の第一の発明の着色硬化剤組成物では、ケトンパーオキサイド、希釈剤としてTXIB、及び前記一般式化1に示されるチアゾールアゾ系染料からなり、貯蔵時には、ケトンパーオキサイドの活性酸素量の低下が少なく、退色が少なく、異物の析出もないものである。
【0012】
本発明の第二の発明の着色硬化剤組成物では、前記第一の発明の着色硬化剤組成物に更に安定剤を含有させることにより、前記第一の発明の効果に加えて染料を混合して着色した場合での貯蔵時の退色が更に少ない。
【0013】
本発明の第三の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法では、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を硬化させる際に、前記第一又は第二の発明の着色硬化剤組成物と金属石鹸とを組み合わせて用いるものであり、硬化後には、即座に退色することにより淡色の硬化物が得られ、硬化させる際の硬化特性の経時変化が少ないものである。
【0014】
本発明の第四の発明の硬化物では、前記第三の発明の製造方法により得られるものであり、染料に起因する着色が少ないことから、淡色の硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明について詳細に説明する。
本発明の着色硬化剤組成物は、ケトンパーオキサイド組成物(ケトンパーオキサイドと特定の希釈剤)と特定の染料とからなる。
【0016】
ケトンパーオキサイドは、過酸化水素とケトン化合物を反応することにより得られる有機過酸化物で、前記ケトン化合物としては、アルキル基の炭素数が1から6の直鎖又は分岐アルキルケトン類、アルキル基の炭素数が3から9のシクロアルキルケトン類など、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化剤用の原料として用いることが可能であればいずれでも良い。
具体的にはケトンパーオキサイドとしては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルアミルケトンパーオキサイド、メチルヘキシルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。これらのうち、汎用性の観点から、MEKPO、メチルイソブチルケトンパーオキサイドが好ましい。
【0017】
前記ケトンパーオキサイドは、一般式(2)又は一般式(3)で示される化合物などの混合物である。
【化3】

(式中、R及びR’は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状アルキル基、及びRとR’で形成する炭素数3〜9のシクロアルキル基、nは1〜6を表す)
【化4】

(式中、R及びR’は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状アルキル基、及びRとR’で形成する炭素数3〜9のシクロアルキル基を表す)
【0018】
例えばMEKPOは、メチルエチルケトンと過酸化水素から合成され、一般式(2)においてR=CH3、R’=C25、n=1で示されるモノマーパーオキサイド(2,2−ジハイドロパーオキシブタン)、一般式(2)においてR=CH3、R’=C25、n=2で示されるダイマーパーオキサイド(2,2’−ジハイドロパーオキシ−2,2’−ジブチルパーオキサイド)、一般式(3)においてR=CH3、R’=C25で示される環状トリマーパーオキサイド(3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,2,4,5,7,8−ヘキソキソナン)などからなる混合物である。
【0019】
ケトンパーオキサイドと特定の希釈剤からなるケトンパーオキサイド組成物中に占めるケトンパーオキサイドの割合は、5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%である。ケトンパーオキサイドの割合が5質量%未満では、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を硬化させる際に硬化が遅く、硬化物の硬化度が低くなるために好ましくない。一方、ケトンパーオキサイドの割合が60質量%を超えると、ケトンパーオキサイド組成物の安全性が低下するために好ましくない。
【0020】
特定の希釈剤とは、TXIBであって、安全性を確保するために必須のものであり、チアゾールアゾ系染料を配合した際の保管時のケトンパーオキサイドの安定性を高める役割を果たす。このTXIBは市販品をそのまま使用することができ、ケトンパーオキサイド組成物の安定性及び得られた硬化物の物性に悪影響を与えなければ、ジメチルフタレート等の他の希釈剤を併用することもできる。
【0021】
ケトンパーオキサイドと特定の希釈剤(TXIB)からなるケトンパーオキサイド組成物中に占める特定の希釈剤(TXIB)の割合は通常、20〜70質量%であり、ケトンパーオキサイド組成物としての活性酸素量が8〜13%、より好ましくは9〜11%となるような量が配合される。活性酸素量が8%未満では硬化物の硬化度が低くなり好ましくない。また13%を越えるとゲル化が速くなるために可使時間の確保が困難になり、またケトンパーオキサイド組成物の安全性が低くなるために好ましくない。
【0022】
本発明の着色硬化剤組成物には、ケトンパーオキサイドの経時安定性を向上させる安定剤として、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、γ−ブチロラクトン、トリメチルホスフェート、2−エトキシエチルアセテート、トリエチルホスフェート等のエステル類、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン(NM2P)、ジメチルホルムアミド等の含チッソ化合物、エタノール、アリルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、フルフリルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−メチル−1−プロパノール、シクロヘキサノール、1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、ジアセトンアルコール、1,3−ジメチル−1−ブタンジオール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、1−デカノール等のアルコール類、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、N,N−ジメチルホルムアミドやマロン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムが必要により添加される。特に硬化特性の変化が少ない点で、ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、ジアセトンアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキシレングリコールが好ましく、単独或いは2種類以上を併用して使用することができる。
ケトンパーオキサイド組成物中に占める前記安定剤の割合は、20質量%以下、より好ましくは3〜10質量%である。20質量%を超えると活性酸素量の安定性が低下する傾向にある。
【0023】
特定の染料とは、一般式(1)に示されるチアゾールアゾ系染料であって、TXIBで希釈したケトンパーオキサイド組成物に、一般式(1)に示されるチアゾールアゾ系染料を併用することで、ケトンパーオキサイドの活性酸素量を低下させず、貯蔵時は退色が少なく、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を硬化させる際には即座に退色する点で優れている。
【化5】

(式中、Xは−OCH3、−SO2CH3、−Cl、−NO2であり、R1は−H、−CH3、−C25、−C24OH、−CH2O(CO)OCH3、−CH2O(CO)OC25、−C24O(CO)OCH3、−C24O(CO)OC25であり、R2は−C24OH、−C24OCOCH3、−C24CNであり、R3は−H、−CH3、−NHCOCH3、−NHCOC65である。)
【0024】
このチアゾールアゾ系染料は、単独で使用することもできるし、2種類以上を併用することもできる。チアゾールアゾ系染料を併用する際の比率は特に制限されるものではなく、所望の色に応じて適宜選択することができる。
【0025】
そして、このチアゾールアゾ系染料の添加量は、前記ケトンパーオキサイド組成物100質量%に対して0.0001〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%である。0.0001質量%未満では、着色度が低い一方、10質量%を越えると、増量することによる効果が見られず、経済的に好ましくない。
【0026】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化(方法)は、ラジカル重合型熱硬化性樹脂を硬化させる際に、前記各成分から構成される着色硬化剤組成物と金属石鹸とを組み合わせて行われる。
前記各成分から構成される着色硬化剤組成物のラジカル重合型熱硬化性樹脂に対する添加量は、所望する可使時間や硬化温度などによって異なるが、好ましくはラジカル重合型熱硬化性樹脂100質量%に対して0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。着色硬化剤組成物の添加量が0.1質量%未満の場合には、硬化が遅く、かつ硬化が不充分となる。一方、その添加量が10質量%を越える場合には、可使時間が短くなり、成形作業が困難となるため、好ましくない。
【0027】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法で使用する金属石鹸は、硬化促進剤として作用し、例えばナフテン酸コバルト、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸カリウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸銅、オクチル酸マンガン等が挙げられるが、これらの中でも促進効果が高いナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等のコバルト石鹸が好ましい。
【0028】
この金属石鹸のラジカル重合型熱硬化性樹脂に対する添加量は、使用する樹脂の種類及び所望する可使時間や硬化温度などによって異なるが、ラジカル重合型熱硬化性樹脂100質量%に対して金属分として好ましくは0.001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.005〜0.3質量%である。添加量が0.001質量%未満の場合には、硬化促進剤として作用する効果が低くなるため、常温での硬化速度が遅くなり、成形作業に長時間を要することになる一方、添加量が0.5質量%を越える場合には、硬化促進剤としての効果が高くなるため、可使時間が短くなり、常温での取り扱いが困難となり、かつ増量したことにより、硬化物が金属石鹸に由来する色が強くなり、外観が損なわれるために実用的でない。
尚、金属石鹸は、硬化させる直前にラジカル重合型熱硬化性樹脂に混合しても、予めラジカル重合型熱硬化性樹脂に混合されたものを使用してもよい。
【0029】
本発明で使用するラジカル重合型熱硬化性樹脂は、通常不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂と呼ばれる以下に示すものである。
【0030】
このラジカル重合型熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸及び多価アルコールを特定の割合で加熱脱水縮合させ、エステル化して得られる不飽和ポリエステルをラジカル重合性不飽和単量体(以下、不飽和単量体と略記する。)に溶解させた液状樹脂であり、公知のものがいずれも使用できる。
【0031】
前記不飽和二塩基酸としては、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられ、これらの群の一種又は二種以上より選択される。
【0032】
前記飽和二塩基酸としては、例えば無水フタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸等が挙げられ、これらの群の一種又は二種以上より選択される。
【0033】
前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの群の一種又は二種以上より選択される。
【0034】
前記不飽和単量体としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ジクロロスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体が挙げられる。また硬化物の残存スチレンを低減するために、モノメチルフマレート、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、ジエチルフマレート、モノプロピルフマレート、ジプロピルフマレート、モノブチルフマレート、ジブチルフマレート、モノオクチルフマレート、ジオクチルフマレート、モノメチルマレエート、ジメチルマレエート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、モノプロピルマレエート、ジプロピルマレエート、モノブチルマレエート、ジブチルマレエート等のα,β−不飽和多塩基酸アルキル、ジアリルフタレート、N−ビニルピロリドンの他、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート(ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの両方を含むことを意味する。以下同様である。)、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヘベニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−エチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の水酸基末端(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール−ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール−ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド−テトラメチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキエチルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレエート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、オレイン酸変性グリシジル(メタ)アクリレート、大豆油脂肪酸変性グリシジル(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド等の(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル類等の一種又は二種以上を単独で、或いはスチレン誘導体と併用して使用することもできる。
【0035】
そして、不飽和ポリエステル樹脂の構成成分である不飽和ポリエステルと不飽和単量体の好ましい構成比率は、不飽和ポリエステルが30〜80質量%であり、不飽和単量体が70〜20質量%である。不飽和ポリエステルが30質量%未満で、不飽和単量体が70質量%を越える場合には、これらより得られる不飽和ポリエステル樹脂の硬化物の機械的特性が低下する傾向にある。一方、不飽和ポリエステルが80質量%を越え、不飽和単量体が20質量%未満の場合には、これらより得られる不飽和ポリエステル樹脂の粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0036】
一方、前記ラジカル重合型熱硬化性樹脂としてのビニルエステル樹脂は、不飽和エポキシ樹脂又はエポキシアクリレート樹脂とも言われるもので、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和一塩基酸又はマレイン酸やフマル酸等の不飽和二塩基酸のモノエステルを開環付加させた反応生成物(以下、エポキシアクリレートと略記する。)を不飽和単量体に溶解させた液状樹脂であり、公知のものがいずれも使用できる。
【0037】
前記エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂がいずれも使用できるが、具体的には、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールSとエピクロルヒドリンとから合成されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールとホルムアルデヒドを酸性触媒存在下反応させて得られるいわゆるフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとから合成されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールとホルムアルデヒドとを酸性触媒存在下で反応させて得られるいわゆるクレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとから合成されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
前記不飽和単量体としては、前述の不飽和ポリエステル樹脂における不飽和単量体(段落0033に記載)と同様の単量体がいずれも使用でき、これらの群の一種又は二種以上より選択される。
【0039】
そして、ビニルエステル樹脂の構成成分であるエポキシアクリレートと不飽和単量体の好ましい構成比率は、エポキシアクリレートが30〜90質量%であり、不飽和単量体が70〜10質量%である。エポキシアクリレートが30質量%未満で、不飽和単量体が70質量%を越える場合には、これより得られるビニルエステル樹脂の硬化物の耐蝕性や耐熱性が悪化する傾向にある。一方、エポキシアクリレートが90質量%を越え、不飽和単量体が10質量%未満の場合には、これより得られるビニルエステル樹脂の粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0040】
さらに、必要に応じて、公知の有機過酸化物を併用することができる。例えば硬化速度を調整するアセチルアセトンパーオキサイド類、硬化発熱を低下させるハイドロパーオキサイド類、また硬化度を向上させたり中温での硬化性を改良するためのパーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシモノカーボネート、ジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の硬化方法においては、硬化速度、最高発熱温度あるいは硬化物の物性を調節する目的で通常使用される重合禁止剤や重合調節剤を使用することができる。この重合禁止剤としては、ハイドロキノン、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノンなどのキノン類、ピロガロール、4,6−ジフェニルピロガロールなどのピロガロール類、カテコール、4−t−ブチルカテコールなどのカテコール類等が挙げられる。また、重合調節剤としては、最高発熱温度を高くさせるアスコルビン酸、最高発熱を低くさせるα−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。これら重合禁止剤及び重合調節剤の使用量は、必要に応じて適宜選択されるが、通常ラジカル重合型熱硬化性樹脂100重量%に対して10重量%以下が好ましい。10重量%を越えると経済的に好ましくない。
【0042】
さらに必要に応じて、硬化促進助剤、充填剤、着色剤、低収縮剤、離型剤、増粘剤等を配合することができる。
硬化促進助剤としては例えばアセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等のケトエステル類、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等の芳香族第三級アミン、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのメルカプタン類、四級アンモニウム塩が挙げられる。
充填材としては例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、シリカ、タルク、珪砂、水酸化アルミニウム、ガラスフリット等が挙げられる。
着色剤としては各種有機染料又は無機顔料が挙げられる。
低収縮剤としては例えば、熱可塑性の単独重合体、その共重合体、あるいはブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。
離型剤としては例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤やパラフィンワックス等の外部離型剤が挙げられる。
増粘剤としては例えば、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の酸化物あるいは水酸化物が挙げられる。
【0043】
さらに、本発明におけるラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法においては、成形品の機械的強度の向上の目的で、例えばロービングクロス、チョップドストランド、チョップドストランドマット、サーフェイスマット及び不織布等のガラス繊維、ホウ素繊維等の無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維を強化材として用いることができる。そのため、この硬化方法により得られる本発明の硬化物は、ラジカル重合型熱硬化性樹脂をガラス繊維に積層して充分に脱泡する作業時間を確保することができ、脱泡されない空気が硬化物に残存する事による空洞の発生を抑制することができ、機械強度の低下が見られずに外観も優れた硬化物を得ることができる。
【0044】
また、本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法は、本発明の硬化剤組成物を用いる限り公知の方法がいずれも適用可能であり、例えばゲルコート法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、RTM法、注型法、フィルム法、フローコーター法やライニング法が挙げられる。その成形時の雰囲気温度は特に限定されないが、具体的には0℃以上の常温であれば本発明の目的を達成することができる。
尚、雰囲気温度が低いほど残存する不飽和単量体量が多くなる傾向にあり、残存する不飽和単量体量の所望するレベルに達するまでの時間が長くなるので、ジェットヒーター等の加温装置を用いて雰囲気温度を5℃以上にすることが好ましい。また、常温硬化後に温水、熱水、遠赤外ヒーター、ジェットヒーター等を用いて硬化物を加熱処理することもできる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
参考例、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明するが、それに先立って、各実施例及び比較例における評価方法を示す。尚、染料は、(社)有機合成化学協会編、染料便覧、丸善株式会社、に記載されているカラーインデックス名(C.I.と略記する)に従い示した。
【0047】
〔外観〕
着色硬化剤組成物100gを100mlガラス瓶に入れ、50℃で8日間放置した後の外観を観察し、異物の析出が見られなかったものを○、異物が析出したものを×と示した。
【0048】
〔活性酸素量と保持率〕
調製した着色硬化剤組成物の活性酸素量をヨードメトリーにより測定した。同様に50℃で8日間放置した後の着色硬化剤組成物の活性酸素量を測定し、さらに調製直後の活性酸素量で除して活性酸素量の保持率(%)を求めた。
【0049】
〔色残存率〕
調製した着色硬化剤組成物0.2mlを10mlメスフラスコに入れ、メタノールで10mlになるように希釈した。そして、島津製作所製可視紫外光光度計UV2200を用い、525nmにおける試料の吸光度を測定し、同様に50℃で8日間放置した後の試料の吸光度を測定し、調製直後の吸光度で除して色残存率(%)を求めた。
【0050】
〔硬化特性と硬化物の退色性〕
JIS K 6901(1995年改正)の常温硬化特性の試験方法に準じて25℃で試験し、試料に着色硬化剤組成物を混合してから試料の温度が30℃になるまでの時間をゲル化時間(GT)、最高を示す温度になるまでの時間を硬化時間(CT)、最高を示したときの温度を最高発熱温度(PET)とした。同様に50℃で8日放置した後のケトンパーオキサイド組成物でのGT、CT、PETを測定した。また退色性として、着色硬化剤組成物に含有する染料に起因する色が硬化物から完全に消失したものを○、色が残存するものを×として示した。
【0051】
〈参考例1〉
500ml四つ口フラスコに60%過酸化水素水94gを入れ、98%硫酸19gを冷却しながら混合した。次いで、メチルエチルケトン72gと2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIBと略記する)117gを5℃で30分かけて滴下した。15分熟成した後に分離し、得られた有機層を炭酸カルシウムで中和した後に濾過して活性酸素量10.24%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(TXIB希釈MEKPO組成物と略記する)225gを得た。
【0052】
〈参考例2〉
参考例1で得られたTXIB希釈MEKPO組成物100質量部に対し、安定剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NM2P)を5質量部添加し、安定剤を含有するTXIB希釈MEKPO組成物を調整した。
【0053】
〈参考例3〉
TXIBの替わりにジメチルフタレート(DMPと略記する)を希釈剤として用いた以外は参考例1と同様に操作し、活性酸素量10.26%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(DMP希釈MEKPO組成物と略記する)227gを得た。
【0054】
〈参考例4〉
TXIBの替わりにジメチルアジペート(DMAと略記する)を希釈剤として用いた以外は参考例1と同様に操作し、活性酸素量10.45%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(DMA希釈MEKPO組成物と略記する)230gを得た。
【0055】
〈参考例5〉
TXIBの替わりにジオクチルアジペート(DOAと略記する)を希釈剤として用いた以外は参考例1と同様に操作し、活性酸素量10.23%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(DOA希釈MEKPO組成物と略記する)219gを得た。
【0056】
〈参考例6〉
TXIBの替わりに3−メトキシブチルアセテート(3MBAと略記する)を希釈剤として用いた以外は参考例1と同様に操作し、活性酸素量10.20%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(3MBA希釈MEKPO組成物と略記する)228gを得た。
【0057】
〈実施例1〉
参考例1で得られたメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(TXIB希釈MEKPO組成物)100質量部に対し、チアゾールアゾ系染料として一般式(4)で示されるC.I.Disperse Red 111(表中、111と略記する)を0.04質量部溶解させて着色硬化剤組成物を調製し、活性酸素量と保持率、色残存率を前記方法に準じて求めて表1に示した。また外観を観察し、異物の有無を表1に示した。
また、不飽和ポリエステル樹脂(ジャパンコンポジット(株)製ポリホープG−110AL、スチレン含有量30%)100質量部に対して6%ナフテン酸コバルト0.3質量部と、調整後及び50℃で8日放置した後の着色硬化剤組成物1質量部を夫々混合し、硬化特性と硬化物の退色性を前記方法に準じて評価した結果を表2に示した。
更に、ビニルエステル樹脂(昭和高分子(株)製リポキシR−802、スチレン含有量50%)の100質量部に対して6%ナフテン酸コバルト0.5質量部と、調整後及び50℃で8日放置した後の着色硬化剤組成物1質量部を夫々混合し、硬化特性と硬化物の退色性を前記方法に準じて評価した結果を表3に示した。
【化6】

【0058】
〈実施例2〉
チアゾールアゾ系染料としてC.I.Disperse Red 111の替わりに一般式(5)で示されるC.I.Disperse Red 58(表中、58と略記する)を用いた以外は実施例1と同様にTXIB希釈MEKPO組成物を含む着色硬化剤組成物を調整し、実施例1と同様に活性酸素量と保持率、色残存率、外観を前記方法に準じて評価した結果を表1に示した。
また実施例1と同様に、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の硬化特性と硬化物の退色性を前記方法に準じて評価した結果を表2及び3に示した。
【化7】

【0059】
〈比較例1〉
C.I.Disperse Red 111の替わりに本発明のチアゾールアゾ系染料以外のアゾ系染料として一般式(6)で示されるC.I.Disperse Red 1(表中、1と略記する)を用いた以外は実施例1と同様にTXIB希釈MEKPO組成物を含む着色硬化剤組成物を調整し、実施例1と同様に活性酸素量と保持率、色残存率、外観を前記方法に準じて評価した結果を表1に示した。
また実施例1と同様に、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の硬化特性と硬化物の退色性を評価した結果を表2及び3に示した。
【化8】

【0060】
〈比較例2〉
本発明のチアゾールアゾ系染料のC.I.Disperse Red 111の替わりに一般式(7)で示されるアントラキノン系染料C.I.Disperse Red 22(表中、22と略記する)を用いた以外は実施例1と同様にTXIB希釈MEKPO組成物を含む着色硬化剤組成物を調整し、実施例1と同様に活性酸素量と保持率、色残存率、外観を前記方法に準じて評価した結果を表1に示した。
また実施例1と同様に、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の硬化特性と硬化物の退色性を前記方法に準じて評価した結果を表2及び3に示した。
【化9】

【0061】
〈実施例3〉
参考例2で得られた安定剤を含有するメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(安定剤含有TXIB希釈MEKPO組成物)を用いた以外は実施例1と同様に着色硬化剤組成物を調整し、実施例1と同様に活性酸素量と保持率、色残存率、外観を前記方法に準じて評価した結果を表1に示した。
また実施例1と同様に、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の硬化特性と硬化物の退色性を前記方法に準じて評価した結果を表2及び3に示した。
【0062】
〈比較例3〜6〉
参考例3〜6で得られたメチルエチルケトンパーオキサイド組成物(DMP希釈MEKPO組成物、DMA希釈MEKPO組成物、DOA希釈MEKPO組成物及び3MBA希釈MEKPO組成物)を用いた以外は実施例1と同様に着色硬化剤組成物を調整し、実施例1と同様に活性酸素量と保持率、色残存率、外観を前記方法に準じて評価した結果を表1に示した。
また実施例1と同様に、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂の硬化特性と硬化物の退色性を前記方法に準じて評価した結果を表2及び3に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1より明らかなように、メチルエチルケトンパーオキサイド組成物(TXIB希釈MEKPO組成物)と特定構造のチアゾールアゾ系染料からなる着色硬化剤組成物である本発明の実施例1及び2は、活性酸素量の保持率、色残存率が高く、50℃で8日貯蔵した後の異物の発生も見られなかった。更に安定剤としてNM2Pを含有する着色硬化剤組成物である実施例3は、色残存率がより高くなった。
これに対し、比較例3〜6で示されたDMP、DMA、DOA及び3MBA等のTXIB以外の希釈剤で希釈したMEKPO組成物とチアゾールアゾ系染料からなる着色硬化剤組成物は、色残存率が低く、特に比較例4及び5では劣化後に異物が発生し、更に比較例6では活性酸素量の低下が見られた。
【0065】
【表2】

【表3】

【0066】
表2,3より明らかなように、本発明の着色硬化剤組成物である実施例1〜3を用いて不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂を硬化させた場合では、硬化後の退色性が良好であり、チアゾールアゾ系染料に起因する着色が見られない硬化物が得られ、また着色硬化剤組成物を調整した直後と50℃で8日間放置した後での硬化特性の変化は見られなかった。
これに対し、比較例1で示されたチアゾールアゾ系染料以外のアゾ系染料を使用した着色硬化剤組成物を用いた場合や、比較例2で示されたアントラキノン系染料を使用した着色硬化剤組成物を用いた場合では、染料に起因する色が硬化物に残存し、硬化後の退色性が低い事が明らかとなった。
また比較例4で示されたDMA希釈着色硬化剤組成物や比較例6で示された3MBA希釈着色硬化剤組成物を用いた場合は、硬化特性の変化が顕著であった。
【0067】
以上の結果から、本発明の着色硬化剤組成物は、活性酸素量の保持率が高く、貯蔵時の色残存率が高く、かつ外観の変化、特に異物の析出が見られないことから貯蔵安定性が高く、さらにそれを用いたラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化に際し、硬化時の退色(チアゾールアゾ系染料に起因する色が消失)も良好であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトンパーオキサイド、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、及び一般式(1)に示されるチアゾールアゾ系染料からなることを特徴とする着色硬化剤組成物。
【化1】

(式中、Xは−OCH3、−SO2CH3、−Cl、−NO2であり、R1は−H、−CH3、−C25、−C24OH、−CH2O(CO)OCH3、−CH2O(CO)OC25、−C24O(CO)OCH3、−C24O(CO)OC25であり、R2は−C24OH、−C24OCOCH3、−C24CNであり、R3は−H、−CH3、−NHCOCH3、−NHCOC65である。)
【請求項2】
更に安定剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の着色硬化剤組成物。
【請求項3】
ラジカル重合型熱硬化性樹脂を硬化させる際に、請求項1又は2に記載の着色硬化剤組成物と金属石鹸とを組み合わせて用いることを特徴とするラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法により得られることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2007−197516(P2007−197516A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15229(P2006−15229)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】