説明

着衣

【課題】 ジャケットやスーツのように表地と裏地からなる着衣において、とくにその袖ぐり部の自由度を高めて、活動的な行動を可能とすることができる着衣を提供する。
【解決手段】 表前身頃1および表袖部2から形成される表地Aと、裏前身頃3及び裏袖部4からなる裏地Bとより構成され、裏地Aと表地Bの袖ぐり部を伸縮可能なループ止め7に縫合すると共にラグラン加工されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に着装したときの動き、とくに、身頃部と袖の袖ぐり部における自由度を高めたスーツ等の表地と裏地からなる着衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スーツのような表地と裏地からなる着衣は、身頃部と袖の袖ぐり部がセットインスリーブに縫合されて表地と裏地が一体的に縫製されていた。
【0003】
一方、表地のみから製せられるスポーツウエアのように激しい活動に着用される着衣では、袖ぐり部をラグラン加工とするものも見られた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】 特開2004−36013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セットインスリーブに仕立てられジャケットやスーツのような表地と裏地からなる着衣の袖ぐり部が一体的に縫製されているため、腕や身体の動きに対して裏地が表地に同時的に追随するために、行動の自由が奪われたり、制限されたり、また突っ張り感が見られ、場合によっては袖ぐり部付近が破損したり、ほころびが生じたりする一因となっていた。
【0006】
また、袖ぐり部をスポーツウエアのようにラグラン加工をジャケットやスーツに適用した場合においても表地と裏地がセットインスリーブとして一体的に縫製したときにはその自由度を十分に改善するまでには至らなかった。
【0007】
本発明の目的は、ジャケットやスーツのように表地と裏地からなる着衣において、とくにその袖ぐり部の自由度を高めて、活動的な行動を可能とすることができる着衣を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る着衣は、裏地と表地からなる着衣の前身頃の肩部付近と袖部との縫合部位において、裏地と表地の袖ぐり部を伸縮可能なループ止めに縫合して、結合された表地の表前身頃及び表袖部と裏地の裏前身頃および裏袖部との間に自由度を形成してなることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、前記表地及び裏地の袖ぐり部は、表地の表前身頃の内袖側に表身頃カット部をまた裏地の裏前身頃の内袖側に内袖カット部をそれぞれ穿設し、対応する表地の袖部に表袖ラグラン片をまた裏地の袖部の内袖側に内袖ラグラン片を形成して縫合されラグラン加工とすることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、前記裏地の袖ぐり部において、その裏前身頃の外袖側に肩部から襟元側にに伸びる肩側カット部を穿設し、対応する裏袖部の外袖側に、前記裏前身頃に穿設された肩側カット部に合致される略舌片状の肩側ラグラン片を形成してパッドと共に縫合されラグラン加工とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成を有する本発明に係る着衣によれば、表地の表前身頃と裏地の裏前身頃の袖ぐり部を伸縮可能なループ止めすることにより、袖ぐり部において表地と裏地とが着装状態における動作に対して充分余裕が得られ、腕を上げたり、前に伸ばしたり後ろに回したとき、身体の各種筋肉を圧迫することなく動きの自由度を高め活動しやすくすることができる。
【0012】
さらに、身体の動きに合わせて袖ぐり周りの表地の表前身頃及び表袖部に対して裏地の裏前身頃及び裏袖部とが追随して同時的に動くことがなく、表地と裏地の同時的に突っ張られることによる綻びや縫い目の損傷の要因を除去することができる。
【0013】
さらに、表地及び裏地とも前身頃と袖部の内袖側をラグランスリーブ加工とすることにより、ループ止めと併せてより一層の自由度が得られ、腕を真っ直ぐ上に伸ばしたときに生じる脇つれや引っ張り感を解消することができる。
【0014】
さらに、裏地の裏前身頃と裏袖部の外袖側において肩部から襟元側に向って略舌片状のラグランスリーブ加工とし、かつパッドをループ止めすることにより、人によって若干異なる肩の体型を吸収して違和感や押圧感を解消してフィットした状態に着装され楽に着装することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の最良の形態につき、添付図面を用いて説明する。
図1は本発明に係る着衣を示す一部を展開した略示図であり、図2は表身頃を示す側面側からの略示図であり、図3は表袖部を形成する布地の展開状態を示す正面略示図であり、図4は表袖部の縫製状態を示す斜視状態の略示図であり、図5は裏前身頃を示す正面側からの略示図であり、図6は裏袖部を形成する布地の展開状態を示す正面略示図であり、図7は裏袖部の縫製状態を示す斜視状態の略示図であり、図8は袖ぐり部における表地と裏地のループ止めを示す側面側からの略示図であり、図9は袖ぐり部におけるパッドのループ止めを示す側面側からの略示図である。
【0016】
本発明に係る着衣は、図1に示すように、表前身頃1および表袖部2から形成される表地Aと、裏前身頃3及び裏袖部4からなる裏地Bとより構成されて、表袖ぐり部5及び裏袖ぐり部6において伸縮可能にループ止め7されている。
【0017】
表地Aを形成する表前身頃1には、図1及び図2に示すように、表後身頃8との間に略円形状の袖ぐり部5が穿設され、その表内袖側には略三角形状の表身頃カット部9が連続的に形成されている。
【0018】
前記表地Aの表袖ぐり部5において、表前身頃1と縫合して一体的に結合される表袖部2は、図3及び図4に示すように、表内袖片10及び表外袖片11の2枚の袖布を円筒状に縫合して、その上端に表前身頃1に穿設された略三角形状の表身頃カット部9と合致する略三角形状の表袖ラグラン片12が突出状に形成されている。
【0019】
裏地Bを形成する裏前身頃5には、図5に示すように、略円形状の袖ぐり部6が穿設され、その上側の裏外袖側には舌片状の肩側カット部13が、また下側の裏内袖側には略三角形状の内袖カット部14がそれぞれ連通状に穿設されている。
【0020】
裏地Bの裏袖ぐり部6において、裏前身頃3と縫合し一体的に結合される裏袖部5は、図6に示すように、裏内袖片15、裏前袖片16及び裏外袖片17の3枚の袖布を、図7に示すように、円筒状に縫合して、その上端に舌片状の肩側カット部13に合致する略舌片状の肩側ラグラン片18が、また、その内袖側には略三角形状の内袖カット部14に合致される略三角形状の内袖ラグラン片19が形成されている。
【0021】
このように形成された表前身頃1と表袖部2からなる表地Aと裏前身頃3と裏袖部4からなる裏地Bを縫合し、その袖ぐり部5、6において弾力性をもって伸縮可能にループ止め7するとともにラグランスリーブ加工して仕上げられる。
【0022】
すなわち、表前身頃1に裏前身頃3を縫合して綴じ、また表袖部2に裏袖部4を同様縫合して綴じ、裏前身頃3の肩部側に形成されている舌片状の肩側ラグラン片18には、図9に示すように、肩パッド20が取り付けられる。
【0023】
次に表前身頃1の袖ぐり部5と裏前身頃3の袖ぐり部6を合致させてパッド20と共に、図1及び図8に示すように、フラシにして伸縮糸によりループ止め7されて袖ぐり部5、6に弾力性をもった伸縮可能として余裕が付与されるように縫合される。
【0024】
この際、表前身頃1の袖ぐり部5の内袖側に穿設された略三角形状の表身頃カット部9に表袖部2の内袖側に形成された略三角形状の表袖ラグラン片12を、また、裏前身頃3の袖ぐり部6に穿設した略三角形状の裏身頃カット部14に略三角形状の内袖側ラグラン片19をそれぞれ合致させて一体的に縫合されて袖ぐり部5、6の内袖側をラグランスリーブ加工してなるものである。
【0025】
また、裏袖部4の袖ぐり部6の外袖側に形成された肩部から襟元21に向って伸び、肩パッド20が取り付けられた略舌片状の肩側ラグラン片18を裏前身頃3の対応位置の穿設された略舌片状の肩側カット部13に合致されて縫合されて袖ぐり部6の肩側をラグランスリーブ加工してなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【0027】
【図1】 本発明に係る着衣を示す一部を展開した略示図である。
【図2】 表身頃を示す側面側からの略示図である。
【図3】 表袖部を形成する布地の展開状態を示す正面略示図である。
【図4】 表袖部の縫製状態を示す斜視状態の略示図である。
【図5】 裏前身頃を示す正面側からの略示図である。
【図6】 裏袖部を形成する布地の展開状態を示す正面略示図である。
【図7】 裏袖部の縫製状態を示す斜視状態の略示図である。
【図8】 袖ぐり部の表地と裏地のループ止めを示す側面側からの略示図である。
【図9】 袖ぐり部におけるパッドのループ止めを示す側面側からの略示図である。
【符号の説明】
【0028】
A 表地
B 裏地
1 表前身頃
2 表袖部
3 裏前身頃
4 裏袖部
5 表袖ぐり部
6 裏袖ぐり部
7 ループ止め
8 表後身頃
9 表前身頃カット部
10 表内袖片
11 表外袖片
12 表袖ラグラン片
13 裏前身頃3の肩側カット部
14 裏前身頃3の内袖カット部
15 裏内袖片
16 裏前袖片
17 裏外袖片
18 裏袖部4の肩側ラグラン片
19 裏袖部4の内袖ラグラン片
20 肩パッド
21 襟元

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地からなる着衣の前身頃の肩部付近と袖部との縫合部位において、裏地と表地の袖ぐり部を伸縮可能なループ止めに縫合して、結合された表地の表前身頃及び表袖部と裏地の裏前身頃および裏袖部との間に自由度を形成してなることを特徴とすることを特徴とする着衣。
【請求項2】
前記表地及び裏地の袖ぐり部は、表地の表前身頃の内袖側に表身頃カット部をまた裏地の裏前身頃の内袖側に内袖カット部をそれぞれ穿設し、対応する表地の袖部に表袖ラグラン片をまた裏地の袖部の内袖側に内袖ラグラン片を形成して縫合されラグラン加工とすることを特徴とする請求項1記載の着衣。
【請求項3】
前記裏地の袖ぐり部において、その裏前身頃の外袖側に肩部から襟元側に伸びる肩側カット部を穿設し、対応する裏袖部の外袖側に、前記裏前身頃に穿設された肩側カット部に合致される略舌片状の肩側ラグラン片を形成してパッドと共に縫合されラグラン加工とすることを特徴とする請求項1記載の着衣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−127176(P2009−127176A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326522(P2007−326522)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(505238452)
【Fターム(参考)】