説明

着雪防止フード

【課題】鉄道用信号機への信号現示の視認が不可能となる雪の付着を防止し、冬期間の列車運行の定時性向上を図る、着雪防止フードを実現する。
【解決手段】信号機200に取り付けられ、雪の付着を防止する着雪防止フード100であって、
信号機200に固定され、上方および側方を覆う筐体10と、
筐体10に揺動可能に支持され、信号機200の表示灯の前面を覆うとともに風力によって揺動する揺動板20と、
を備えることを特徴とする着雪防止フード100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機に取り付けられ、信号現示の視認が不可能となる雪の付着を防止する着雪防止フードに関する。
【背景技術】
【0002】
雪の多い地方の鉄道用信号機は、吹雪いている場合や湿性の雪が降っている場合など、表示灯に雪が付着してしまい信号現示(表示灯の点灯の状態あるいはその点灯状態の示す意味)が確認し難くなることがある。その場合、運転士が自ら雪を払って確認するか、保線作業員等が付着した雪の除去を行うこととなり、列車の運行に影響を及ぼすことがある。特に、地方都市を結ぶ鉄道においては遮蔽物のない原野や人里離れた山間部を通ることが多いため、それらの区間に設置される信号機は風雪にさらされ着雪する可能性が高いうえに、自動車が接近できない場所に設置されることも多く、数多くある信号機の全てを定期的に点検するのは不可能である。
【0003】
そこで、風を誘導可能なよう彎曲させた扇形の誘導板を表示灯の上方に設けることで、誘導板に吹く風を表示灯のレンズの前方に導き、これをレンズに向って吹く風と衝突させ、レンズに向って吹く風の方向を実質的に変更せしむる、風力を利用してレンズへの着雪を防止する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
また、風車とともに回転するように設けられたゴム板等の除雪片を、レンズに密接させつつ回転させることによって、風力を利用してレンズに付着した雪を除去する技術も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特公昭28−5725号公報
【特許文献2】実公昭35−20111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている誘導板では、誘導板表面に雪が付着してしまうと風をレンズの前方に効果的に導くことができず、レンズに向って吹く風の方向を変更できなくなり、確実に着雪を防止できない。また、誘導板表面に一度付着してしまった雪を除去することもできない。
一方、特許文献2に記載されている除雪装置は、風車の回転軸や除雪片が表示灯の前面に配置され表示灯の一部を遮るため、信号現示の視認を阻害することとなる。また、レンズに付着した雪の状態によっては除雪片に雪が堆積し、堆積した雪によって表示灯が隠れてしまい逆効果ともなる。
【0005】
本発明の目的は、鉄道用信号機への信号現示の視認が不可能となる雪の付着を防止し、冬期間の列車運行の定時性向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
信号機に取り付けられ、雪の付着を防止する着雪防止フードであって、
前記信号機に固定され、上方および側方を覆う筐体と、
前記筐体に揺動可能に支持され、前記信号機の表示灯の前面を覆うとともに風力によって揺動する揺動板と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
前記表示灯が縦に複数配置された信号機に取り付けられる、請求項1に記載の着雪防止フードであって、
前記揺動板は、複数備えられるとともに、各々が重心よりも上方に回転軸を有して前後に揺動するよう前記筐体に支持され、
前記筐体には、複数の前記揺動板の各々に対し、前記揺動板よりも前側であって前記回転軸よりも下方に、前記揺動板をそれぞれ前傾した状態に保持するストッパーが設けられ、
前記各揺動板は上方に設置されるものほど前側に配置されるとともに、前側の前記各揺動板の下部が揺動により隣接する後側の前記各揺動板の上部に届くよう隙間を持って配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載の着雪防止フードであって、
前記筐体は、側面部と、左右に向けて斜面を有する屋根部と、前記屋根部の上端部に設けられた雪切部とから構成され、
前記雪切部は、前記屋根部の稜線に沿って垂直上方に立てられた板状であるとともに、前記雪切部の前端部が前記屋根部の前端部よりも前側に突出していることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の着雪防止フードであって、
前記揺動板は、前記表示灯の前面に該当する部分に開口部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、信号機の上方および側方を覆う筐体と、前面を覆う揺動板を備えることから、筐体内への雪の侵入を抑制するため、表示灯に直に雪が付着することを防ぐことができる。
また、前面を覆う揺動板が風力によって揺動することから、揺動板に雪が付着してしまったとしても、自然による風や列車通過に伴う走行風によって揺動板が揺り動かされ、付着した雪がその振動によって振り落とされるため、揺動板に雪が付着することを防ぐことができる。
また、風力(自然エネルギー)を利用し、シンプルな構造であることから、環境にやさしく、省エネ・省メンテ・低コストである。
なお、揺動板として透光性のあるものを使用し、例えば、透明なポリカーボネート等の樹脂板等を用い、信号現示の視認をより確実なものとすることが望ましい。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、図7に示すように、揺動板が重心よりも上方に回転軸を有してストッパーによって前傾した状態に保持され風力によって後に揺動するよう筐体に支持されている(図7(a)参照)ことから、重心よりも下方に回転軸を有して前側に配置された揺動板によって前傾した状態に保持され風力によって後に揺動するよう筐体に支持されている場合(図7(b)参照)と比較して、前者は後ろに揺動することによって重心が回転軸の下側から離れる方向に移動し、所定の保持位置に復元する復元力が増大(図7(a)のf1からf2へ増大)するのに対し、後者は後ろに揺動することによって重心が回転軸の真上に接近する方向に移動し、所定の保持位置に復元する復元力が減少(図7(b)のf3からf4へ減少)するため、前者の方が所定の保持位置に復元する復元力が大きく、雪等が介在して固着する可能性を低くすることができる。
また、揺動板を前傾した状態に保持するストッパーが設けられていることから、常に揺動板を前傾させ、揺動板の前面に雪が付着し難い状態とすることができ、雪が付着したとしてもはがれて落下し易い状態とすることができる。
また、揺動板は上方に設置されるものほど前側に配置されることから、揺動板の隙間から筐体内への雪の侵入をより確実に防ぐことができる。
また、揺動板が揺動した際、ストッパーまたは後側に配置される揺動板にぶつかるように隙間を持って配置されることから、ぶつかったときに衝撃が発生し、その衝撃によって雪を叩き落とすことができる。
また、揺動板が複数備えられていることから、上記の衝撃の発生箇所を複数得ることが可能で、着雪防止フードの全面で雪を叩き落とす効果を随所に得ることができる。
以上のような効果により、信号現示の視認をより確実なものとすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、筐体が、左右に向けて斜面を有する屋根部と、屋根部の上端部に雪切部を備えることから、屋根部に積もった雪を雪切部の左右に分断して落下し易くすることができる。
また、雪切部が屋根部の前端部よりも前側に突出していることから、屋根部に積もった雪が前面に張り出す危険性が高いと考えられる湿り気の多い雪や降雪量が多い場合などでも、左右の雪が雪切部の前側に回り込んで一体化して、落下し難くなり表示灯の前面にまで張り出すような事態になることを防ぐことができる。
以上のような効果により、信号現示の視認をより確実なものとすることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、表示灯の前面に該当する部分に開口部を有することから、信号現時の視認をより確実なものとすることができる。また、揺動板を透明とした場合にも、揺動板の表面が凍結したり、きずや汚れが付いたり、材質の劣化によって透明度が下がったとしても、信号現示の視認をより確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明における実施の形態について、図1から図5を参照しながら説明する。
【0015】
(着雪防止フードの構成等)
着雪防止フード100は、図1および図2に示すように、金属製の筐体10と、風力によって揺動するポリカーボネート樹脂製の揺動板20と、から構成され、図3(a)に示すような鉄道用信号機200に、図3(b)のように取り付けられる。ここで、鉄道用信号機200は表示灯を3灯備える信号機であり、各表示灯は上から、表示灯201、表示灯202、表示灯203とする。なお、筐体10は、金属製に限らず、木製・樹脂製等、充分な強度が得られれば、どのような素材を用いてもよい。なお、揺動板20は、ポリカーボネート樹脂製に限らず、透明な樹脂・不透明な樹脂・強化ガラス等、充分な強度が得られれば、どのような素材を用いてもよい。
【0016】
筐体10は、左側面部11lと右側面部11rを有する側面部11と、左右に向けて斜面12l,12rを有する屋根部12と、屋根部12の上端部の稜線に沿って垂直上方に立てられ、突出部13aを有する板状の雪切部13と、から構成されており、また、筐体10は4枚の揺動板20がそれぞれ揺動する際の回転軸となる軸41,42,43,44を備え、4枚の揺動板20を前傾した状態に保持するためのストッパー31l,31r,32l,32r,33l,33r,34l,34rを備えている。さらに、側面部11には、鉄道用信号機200の背板210に接する部分に取付部11aが4箇所設けられ、背板210に対してボルト等で固定することが可能となっている。なお、取付部11aは4箇所に限らず、背板210に固定可能であればいくつ備えていてもよいし、フック等を設けて掛ける等、ボルト以外の方法で固定してもよい。
【0017】
揺動板20は、4枚の揺動板21,22,23,24から構成されており、揺動板21,22,23の下端部が表示灯201,202,203の前面にそれぞれ位置するよう配置される。
揺動板21は、4枚の揺動板のうち一番上方前側に配置される揺動板であり、筐体10の屋根部12の斜面に合わせて斜めに切断された形状となっている。また、表示灯201の前面に該当する部分に“開口部”としての孔を有する構造とするため、揺動板21の下方には切欠部21aを有している。また、揺動板21は重心より上方に軸受21cを備えており、軸受21cに通された軸41を介して揺動可能に筐体10に取り付けられている。そして、揺動板21は、筐体10の左側面部11lに取り付けられたストッパー31lと右側面部11rの同様の位置に取り付けられたストッパー31rの二つのストッパーによって、前傾した状態に保持されている。
【0018】
揺動板22は、揺動板21よりも下方後側に配置される揺動板であり、表示灯201の前面に該当する部分に孔を有する構造とするため、揺動板22の上方には切欠部22bを有し、表示灯202の前面に該当する部分に孔を有する構造とするため、揺動板22の下方には切欠部22aを有している。また、揺動板22は重心より上方に軸受22cを備えており、軸受22cに通された軸42を介して揺動可能に筐体10に取り付けられている。そして、揺動板22は、揺動板21と同様に、ストッパー32l,32rによって、前傾した状態に保持されている。この時、揺動板22が配置される位置は、揺動板21が揺動してストッパー31l,31rを所定の距離だけ離れたときに揺動板22とぶつかるような位置に設定されている。
【0019】
揺動板23は、揺動板22よりもさらに下方後側に配置される揺動板であり、表示灯202の前面に該当する部分に孔を有する構造とするため、揺動板23の上方には切欠部23bを有し、表示灯203の前面に該当する部分に孔を有する構造とするため、揺動板23の下方には切欠部23aを有している。また、揺動板23は重心より上方に軸受23cを備えており、軸受23cに通された軸43を介して揺動可能に筐体10に取り付けられている。そして、揺動板23は、ストッパー33l,33rによって、前傾した状態に保持されている。この時、揺動板23が配置される位置も、揺動板22に合わせて設定されている。
【0020】
揺動板24は、4枚の揺動板のうち一番下方後側に配置される揺動板であり、表示灯203の前面に該当する部分に孔を有する構造とするため、揺動板24の上方には切欠部24bを有している。また、揺動板24は重心より上方に軸受24cを備えており、軸受24cに通された軸44を介して揺動可能に筐体10に取り付けられている。そして、揺動板24は、ストッパー34l,34rによって、前傾した状態に保持されている。この時、揺動板24が配置される位置も、揺動板23に合わせて設定されている。
【0021】
ここで、揺動板21の切欠部21aと揺動板22の切欠部22bによって表示灯201の前面に該当する部分に構成される孔は、表示灯201のレンズとほぼ同じ大きさでほぼ円形の形状となるように設定され、切欠部21a,22bの形状はそれに合わせて設定される。なお、孔の大きさは、筐体10の内部への雪の侵入をより制限したい場合は小さく、揺動板21,22の表面が凍結したり、きずや汚れが付いたり、材質の劣化によって透明度が下がったとしても、信号現示を視認し易くしたい場合は大きく、設置される場所の気候や風力・風向等の条件に応じて調整される。また、孔の形状は、加工の容易さなどを考慮して、切欠部21a,22bの形状が直線で構成されるよう、菱形等に設定してもよい。
上記以外の切欠部22a,23b,23a,24bについても同様に設定される。
【0022】
また、各揺動板の前傾の傾斜角および各切欠部の位置については、傾斜角が大きいほど各揺動板の前面に雪の付着が少ないのは言うまでもないが、列車の運転席から、各切欠部によって構成される孔を通して表示灯201,202,203が視認し易い傾斜角および位置となるよう調整される。そして、各揺動板の配置および傾斜角に合わせて、側面部11の形状は、上方よりも下方の幅が狭くなるように前側が斜めに切断された形状となっている。
【0023】
(揺動板の動作等)
以下、各揺動板の動作について、図4に示す揺動板21,22を例に説明する。
揺動板21は、無風の状態あるいは通過する列車のない状態ではストッパー31l,31rに接触して静止している。また、静止した状態で、揺動板21の下端と下方後側に配置される揺動板22との間には、距離dの隙間がある。
そして、自然による風や列車通過に伴う走行風が発生すると、揺動板21は軸41を中心に揺り動かされ、その揺動によって付着した雪が振り落とされる。併せて、揺動板21は距離dだけ後側へ揺れて揺動板22にぶつかって跳ね返り、また戻ってストッパー31l,31rにぶつかって跳ね返りを繰返し、その衝撃によっても揺動板21に付着した雪は振り落とされる。それに加え、揺動板21がぶつかった衝撃によって、揺動板22に付着した雪も同時に落とされる。
【0024】
揺動板22,23,24についても上記と同様に風によってそれぞれ独立に揺り動かされ、衝撃等によって付着した雪が落とされる。
ただし、一番下方後側に配置される揺動板24は、後側へ揺れたときにぶつかる揺動板がないため、表示灯203や背板210にぶつからないよう軸44の位置や揺動板24の長さを調整する。
【0025】
ここで、各揺動板の間の隙間の距離dは、揺動板が風力によって揺り動かされて付着した雪を振り落とすために、ある程度加速して充分な衝撃を発生させる距離になるよう、設置される場所の気候や風力・風向等の条件に応じて調整される。
【0026】
(雪切部の機能等)
以下、雪切部13の機能について、図5を参照して説明する。
雪切部13は、屋根部12の上端部の稜線に沿って垂直上方に立てられた板状をしている。図5(a)に示すように、仮に屋根部12の上部に雪切部13を設置しない場合、屋根部12に積もった雪は、斜面12lと斜面12rに跨って安定し、落雪し難い状態となってしまう。これに対して、図5(b)に示すように、雪切部13を設置した場合、斜面12l上に積もった雪と斜面12r上に積もった雪は分断され、落雪し易い状態となる。
【0027】
また、雪切部13は、図1および図2に示すように、突出部13aを有する形状となっている。仮に突出部13aを有しない場合には、雪に湿り気が多い時や降雪量が多い時に、屋根部12に積もった雪が前面に張り出し、雪切部13の前側に回り込んで一体化して落下し難くなり、表示灯の前面にまで張り出すことにもつながる。これに対して、突出部13aを有する場合には、雪が雪切部13の前側に回り込む前に落下し、表示灯の前面にまで張り出すような事態を防ぐことができる。
【0028】
これに加えて、雪切部13を含む筐体10を黒色に塗色することによって、陽の光をよく吸収して暖まり、雪切部13に接する雪を効率よく分断し、屋根部12に積もった雪をより落下し易い状態にすることも考えられる。
【0029】
(着雪防止フードの効果)
以上説明した実施の形態にかかる着雪防止フード100においては、筐体10と、揺動板20を備えることから、筐体10内への雪の侵入を抑制するため、表示灯201,202,203に直に雪が付着することを防ぐことができる。
また、揺動板20が風力によって揺動することから、揺動板20に雪が付着してしまったとしても、自然による風や列車通過に伴う走行風によって揺動板20が揺り動かされ、付着した雪がその振動によって振り落とされるため、揺動板20に雪が付着することを防ぐことができる。
また、風力(自然エネルギー)を利用し、シンプルな構造であることから、環境にやさしく、省エネ・省メンテ・低コストである。
【0030】
また、揺動板20が重心よりも上方に回転軸を有してストッパーによって前傾した状態に保持され風力によって後に揺動するよう筐体10に支持されていることから、重心よりも下方に回転軸を有して同じくストッパーによって前傾した状態に保持され風力によって後に揺動するよう筐体に支持されている場合と比較して、前者は後ろに揺動することによって重心が回転軸の下側から離れる方向に移動し、所定の保持位置に復元する復元力が増大するのに対し、後者は後ろに揺動することによって重心が回転軸の真上に接近する方向に移動し、所定の保持位置に復元する復元力が減少するため、前者の方が所定の保持位置に復元する復元力が大きく、雪等が介在して固着する可能性を低くすることができる。
また、揺動板20を前傾した状態に保持するストッパー31l,31r,32l,32r,33l,33r,34l,34rが設けられていることから、常に揺動板20を前傾させ、揺動板20の前面に雪が付着し難い状態とすることができ、雪が付着したとしてもはがれて落下し易い状態とすることができる。
また、揺動板20は上方に設置されるものほど前側に配置されることから、揺動板20の隙間から筐体10内への雪の侵入をより確実に防ぐことができる。
また、揺動板20が揺動した際、ストッパー31l,31r,32l,32r,33l,33r,34l,34rまたは後側に配置される揺動板にぶつかるように隙間を持って配置されることから、ぶつかったときに衝撃が発生し、その衝撃によって雪を叩き落とすことができる。
また、揺動板20が複数備えられていることから、上記の衝撃の発生箇所を複数得ることが可能で、着雪防止フード100の全面で雪を叩き落とす効果を随所に得ることができる。
【0031】
また、筐体10が、左右に向けて斜面12l,12rを有する屋根部12と、屋根部12の上端部に雪切部13を備えることから、屋根部12に積もった雪を雪切部13の左右に分断して落下し易くすることができる。
また、雪切部13が屋根部12の前端部よりも前側に突出していることから、屋根部12に積もった雪が前面に張り出す危険性が高いと考えられる湿り気の多い雪や降雪量が多い場合などでも、左右の雪が雪切部13の前側に回り込んで一体化して、落下し難くなり表示灯の前面にまで張り出すような事態になることを防ぐことができる。
以上のような効果により、信号現示の視認をより確実なものとすることができる。
また、冬期間の列車運行の定時性向上を図ることができる。
【0032】
また、揺動板20として透明なポリカーボネート樹脂板を用い、表示灯201,202,203前面に該当する部分に孔を有する構造にしたことから、揺動板20の表面が凍結したり、きずや汚れが付いたり、材質の劣化によって透明度が下がったとしても表示灯201,202,203が完全に隠れることが無く、信号現示の視認をより確実なものとすることができる。
加えて、揺動板20として透明なポリカーボネート樹脂板を用いたことから、筐体10内に小動物が棲みついてしまった場合などに、内部を確認することも容易で、それによる被害の拡大を防止できる。
【0033】
また、表示灯201,202,203の前面に揺動板21,22,23の下端部がそれぞれ位置するよう配置したことから、揺動による衝撃が最も大きい部分が各表示灯の前面に配置され、雪を効果的に叩き落として信号現示の視認をより確実なものとすることができる。さらに、その部分に孔を有する構造としたことから、万が一にも孔の部分が付着した雪で埋まってしまう等の事象が発生しないよう、その危険性を低減することができる。
【0034】
以上のように、それぞれの孔は2枚の揺動板から構成され、重なり合う揺動板の間に隙間を有する構造としたことから、一体ものの孔と比べて、雪が付着しづらい。
【0035】
(その他)
なお、以上説明した実施の形態にかかる揺動板20においては、例えば、二つの切欠部21a,22bによって表示灯201の前面に該当する部分に一つの孔を構成したが、揺動板21等がそれぞれ単独で一つの孔を有する構造としてもよいし、また、二つ以上の小さな孔の集合体によって表示灯201等の前面に該当する部分に孔を構成してもよい。
【0036】
なお、以上説明した実施の形態にかかる揺動板20においては、表示灯の前面に該当する部分に孔を有する構造としたが、揺動板20に透明な素材を用いる場合は、必ずしも孔を有する構造としなくてもよい。その場合、筐体10の内部への雪の侵入をより確実に遮断できる。
【0037】
なお、以上説明した実施の形態においては、表示灯を3灯備えた鉄道用信号機200に取り付けるための揺動板を4枚備えた着雪防止フード100について説明したが、信号機の表示灯の増減に応じて揺動板を増減させ、例えば、図6に示すように、表示灯を4灯備えた鉄道用信号機200Aに取り付けるために揺動板を5枚備えた着雪防止フード100Aとして構成してもよいし、表示灯の数とは無関係に揺動板を増減させてもよい。
また、鉄道用信号機200,200A等のかわりに縦型の歩行者用信号機・自動車用信号機に対しても、同様の構成を有する着雪防止フードを適用してもよい。
【0038】
なお、以上説明した実施の形態においては、軸41,42,43,44と軸受21c,22c,23c,24cによって各揺動板21,22,23,24が揺動するよう構成した例を説明したが、筐体10に対して各揺動板21,22,23,24が揺動可能に取り付けられれば、例えばヒンジを用いるなど、別な方法で取り付けてもよい。
【0039】
なお、以上説明した実施の形態において、左側面部11lと右側面部11rとの間に梁を渡し、筐体10が変形しないよう補強してもよい。これにより、揺動板20の揺動が確保される。
【0040】
なお、揺動板20には、雪の付着をさらに防止するよう、撥水性の素材を用いたり撥水加工やフッ素加工等を施したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明における実施の形態に係る着雪防止フードの全体像を示す斜視図である。
【図2】本発明における実施の形態に係る着雪防止フードの(a)側面図、(b)正面図である。
【図3】本発明における実施の形態に係る着雪防止フードを(a)適用する鉄道用信号機、(b)適用した際の側面図である。
【図4】本発明における実施の形態に係る着雪防止フードの揺動板の動作を示す説明図である。
【図5】本発明における実施の形態に係る着雪防止フードに(a)雪切板を設けない場合と、(b)雪切板を設けた場合と、を比較する説明図である。
【図6】本発明における実施の形態に係る着雪防止フードを、他の鉄道用信号機に適用した際の側面図である。
【図7】(a)重心よりも上方に回転軸を有する場合と、(b)重心よりも下方に回転軸を有する場合の、揺動板が揺動する際の復元力の違いを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10 筐体
11 側面部
11a 取付部
11l 左側面部
11r 右側面部
12 屋根部
12l,12r 斜面
13 雪切部
13a 突出部
20 揺動板
21,22,23,24 揺動板
21a,22b,22a,23b,23a,24b 切欠部
21c,22c,23c,24c 軸受
31l,31r,32l,32r,33l,33r,34l,34r ストッパー
41,42,43,44 軸
100,100A 着雪防止フード
200,200A 鉄道用信号機
201,202,203 表示灯
210 背板
d 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号機に取り付けられ、雪の付着を防止する着雪防止フードであって、
前記信号機に固定され、上方および側方を覆う筐体と、
前記筐体に揺動可能に支持され、前記信号機の表示灯の前面を覆うとともに風力によって揺動する揺動板と、
を備えることを特徴とする着雪防止フード。
【請求項2】
前記表示灯が縦に複数配置された信号機に取り付けられる着雪防止フードであって、
前記揺動板は、複数備えられるとともに、各々が重心よりも上方に回転軸を有して前後に揺動するよう前記筐体に支持され、
前記筐体には、複数の前記揺動板の各々に対し、前記揺動板よりも前側であって前記回転軸よりも下方に、前記揺動板をそれぞれ前傾した状態に保持するストッパーが設けられ、
前記各揺動板は上方に設置されるものほど前側に配置されるとともに、前側の前記各揺動板の下部が揺動により隣接する後側の前記各揺動板の上部に届くよう隙間を持って配置されることを特徴とする請求項1に記載の着雪防止フード。
【請求項3】
前記筐体は、側面部と、左右に向けて斜面を有する屋根部と、前記屋根部の上端部に設けられた雪切部とから構成され、
前記雪切部は、前記屋根部の稜線に沿って垂直上方に立てられた板状であるとともに、前記雪切部の前端部が前記屋根部の前端部よりも前側に突出していることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の着雪防止フード。
【請求項4】
前記揺動板は、前記表示灯の前面に該当する部分に開口部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の着雪防止フード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190554(P2009−190554A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33185(P2008−33185)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(599142590)北海道ジェイ・アール・サイバネット株式会社 (14)
【出願人】(508047255)合資会社電工社 (1)
【Fターム(参考)】