説明

睡眠サイクル測定装置

【目的】 乳幼児の睡眠サイクル測定装置は、被験者の乳幼児に身体的および精神的な負担をかけることなく睡眠サイクルを測定することができる睡眠サイクル測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の解決手段の睡眠サイクル測定装置は、乳幼児の生体振動を検出する生体振動検出手段と、生体振動検出手段の出力信号から生体信号を検出する生体信号検出手段と、生体信号検出手段により得られた生体信号の強度の所定時間の分散値を求める生体信号強度分散値算出手段と、生体信号強度分散値算出手段で得られた生体信号強度の分散値から睡眠サイクルを検出する睡眠サイクル検出手段とから成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児の生体振動を検出し、その振動から検出した心拍あるいは呼吸などの生体信号から乳幼児の睡眠サイクルを測定する睡眠サイクル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
子供の脳の正常な発達と睡眠サイクルを含む生体リズムとの間には密接な関係があることはよく知られている。乳幼児の成長過程においては、睡眠サイクルは、生後0〜8ケ月では50分周期、9か月から2歳以下では60分周期、2〜5歳では70分周期、5歳以上は成人と同様の90分周期になると研究者により報告されている。
【0003】
乳幼児の成長過程において異常がある場合には、睡眠サイクルに乱れが現れることが多く、乳幼児の睡眠サイクルを観測することにより乳幼児の成長状態を確認することが可能であり、乳幼児の成長に異常があることをできる限り早期に発見して対策することが必要である。
【0004】
正常な生体リズムが形成されている場合には、生後4か月程度で睡眠・覚醒リズムが昼夜のリズムに同期し、6か月程度で昼間の睡眠が減少し、10か月程度で体温の日周リズムができる。乳幼児の成長が健全であることを知るには、乳幼児の生後6ケ月間の生体リズムを観察することが特に重要であり、具体的には乳幼児の睡眠・覚醒リズムを測定する必要がある。
【0005】
乳幼児の生後6ケ月間の期間に段階を経て、睡眠・覚醒リズムが確立されて行くが、この期間に睡眠・覚醒リズム確立されないと、成長ホルモンの欠如が発生し神経組織の発達に障害をもたらすと考えられており、その結果、社会性の欠如、環境順応障害、運動機能障害、脳神経発達障害などの障害が齎される恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、乳幼児の生後6ケ月間の生体リズムを観察することは乳幼児の成長状態を知る上で重要であり、具体的には乳幼児の睡眠・覚醒リズムを測定することは、乳幼児の成長状態を知る上で重要であるが、乳幼児の睡眠サイクルを測定するのに適当な装置が存在しないために母親が手書きで睡眠記録を付けているが実情であり、正確性に欠けるとともに、記録する負担も大きいという問題がある。
【0007】
上記の問題に鑑み、本発明の乳幼児の睡眠サイクル測定装置は、被験者の乳幼児に身体的および精神的な負担をかけることなく睡眠サイクルを測定することができる睡眠サイクル測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の解決手段の睡眠サイクル測定装置は、乳幼児の生体振動を検出する生体振動検出手段と、前記生体振動検出手段の出力信号から生体信号を検出する生体信号検出手段と、前記生体信号検出手段により得られた生体信号の強度の所定時間の分散値を求める生体信号強度分散値算出手段と、前記生体信号強度分散値算出手段で得られた生体信号強度の分散値から睡眠サイクルを検出する睡眠サイクル検出手段とから成ることを特徴とする。
【0009】
上記の第1の解決手段によれば、生体振動検出手段により検出された生体振動から乳幼児の生体信号を検出し、その信号の強度の分散値から乳幼児の睡眠サイクルを判定し、そのサイクルの周期の値を測定する。脳波や筋電位の測定とは異なり、生体振動の検出は乳幼児に肉体的及び精神的な負担をかけることなく行うことが可能であり、この検出信号から乳幼児の睡眠サイクルを測定することを可能とする。
【0010】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記生体信号は心拍信号であることを特徴としており、睡眠の状態と密接な関係にある心拍信号を睡眠サイクルの指標信号として用いることにより、睡眠サイクルの測定を確実なものにする。
【0011】
本発明の第3の解決手段は、第1の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記生体信号は呼吸信号であることを特徴としており、睡眠の状態と密接な関係にある心拍信号を睡眠サイクルの指標信号として用いることにより、睡眠サイクルの測定を確実なものにする。
【0012】
本発明の第4の解決手段は、第1の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記睡眠サイクル検出手段は、所定時間内の生体信号強度の分散値を移動平均する移動平均手段を備えることを特徴としており、睡眠に対応して変動する生体信号強度の分散値が平滑化され、睡眠サイクルを可視化することができる。
【0013】
本発明の第5の解決手段は、第1の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記生体振動検出手段は、微差圧センサと生体振動検出部とから成り、生体振動検出部の内部に収容されている空気の圧力変化を微差圧センサでもって検出することにより生体振動を検出することを特徴としており、乳幼児の生体振動の検出において乳幼児の身体に負担をかけることがない。
【0014】
本発明の第6の解決手段は、第5の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記生体振動検出手段の生体振動検出部は、弾性を有する中空のチューブであることを特徴としており、乳幼児の生体振動、即ち呼吸、心拍あるいは体動の振動などが中空のチューブ内の空気に伝わり、その振動を微差圧センサで検出する。
【0015】
本発明の第7の解決手段は、第5の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記生体振動検出手段の生体振動検出部は、内部に空気を充填したマットであることを特徴としており、乳幼児の生体振動、即ち呼吸、心拍あるいは体動の振動などがマット内部に充填した空気に伝わり、その振動を微差圧センサで検出する。
【0016】
本発明の第8の解決手段は、第6又は第7の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記生体振動検出部をシート内に収容するように形成し、前記シートを乳幼児の身体に装着して用いることを特徴としており、乳幼児の生体振動を正確に検出することができる。
【0017】
本発明の第9の解決手段は、第5の解決手段の睡眠サイクル測定装置であって、前記生体振動検出部は無線通信手段を備えることを特徴としており、睡眠時に乳幼児の身体に絡まる通信用の配線を有しないので安全に睡眠時の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
上述したように本発明の睡眠サイクル測定装置は、生体振動検出手段で検出した生体振動から乳幼児の生体信号、即ち呼吸信号あるいは心拍信号を抽出し、その信号強度の分散値から睡眠サイクルを測定する睡眠サイクル測定装置であり、装置の構成がシンプルであり、かつ容易に乳幼児の睡眠サイクルの測定を行うことができる。
【0019】
また、乳幼児の身体に過大な負担をかけることのない生体振動検出手段を用いるために、乳幼児に日常的に使用可能であり、測定した睡眠サイクルのデータから乳幼児の成長の管理及び健康管理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0020】
図をもって本発明の睡眠サイクル測定装置について詳細に説明する。なお、本発明は本実施例によって限定されるものではない。
【0021】
図1は本発明の睡眠サイクル測定装置を説明する説明図であり、図2は図1に示す生体振動検出手段とは別の生体振動検出手段を示す説明図である。また、図3は生体振動信号から検出した心拍信号から睡眠サイクルを測定する工程を示すフロー図であり、図4は生体振動信号から検出した呼吸信号から睡眠サイクルを検出する工程を示すフロー図である。
【0022】
図1は、本発明の睡眠サイクル測定装置の構成を示すブロック図であり、図1(b)は、矢視方向から見た一部断面図である。図1に示す生体振動検出手段1は、乳幼児の微細な生体振動を検出する検出手段であり、信号増幅整形手段2により、信号を次の処理工程以降で処理できるように生体振動検出手段1で検出された信号を増幅し、不要な信号をバンドパスフィルターなどにより除去して生体信号検出手段3に送る。
【0023】
生体振動検出手段1は圧力センサ1aと生体振動検出部である圧力検出チューブ1bとからなり、被験者である乳幼児に過大な負担をかけることのない生体振動検出手段を構成している。圧力センサ1aは、微小な圧力の変動を検出するセンサであり、本実施例では、低周波用のコンデンサマイクロホンタイプを使用するが、これに限るものではなく、適切な分解能とダイナミックレンジを有するものであればよい。
【0024】
本実施例で使用した低周波用のコンデンサマイクロフォンは、一般の音響用マイクロフォンが低周波領域に対して配慮されていないのに引き替え、受圧面の後方にチャンバーを設けることによって低周波領域の特性を大幅に向上させたものであり、圧力検出チューブ1b内の微小圧力変動を検出するのに好適なものである。また、微小な差圧を計測するのに優れており、0.2Paの分解能と約50Paのダイナミックレンジを有し、通常使用されるセラミックを利用した微差圧センサと比較して数倍の性能を持つものであり、生体振動が体表面に通して圧力検出チューブ1bに加えた微小な圧力を検出するのに好適なものである。また周波数特性は0.7Hz〜20Hzの間でほぼ平坦な出力値を示し、呼吸信号あるいは心拍信号等の微少な生体振動を検出するのに適している。
【0025】
圧力検出チューブ1bは、生体振動の圧力変動範囲に対応して内部の圧力が変動するように適度の弾力を有するものを使用する。また圧力変化を適切な応答速度で微差圧センサ1aに伝達するために圧力検出チューブ1bの中空部の容積を適切に選ぶ必要がある。圧力検出チューブ1bが適度な弾性と中空部容積を同時に満足できない場合には、圧力検出チューブ1bの中空部に適切な太さの芯線をチューブ長さ全体にわたって装填し、中空部の容積を適切にとることができる。
【0026】
圧力検出チューブ1bは寝台11上に敷かれた硬質シート12の上に配置され、その上に弾性を有するクッションシート13が敷かれており、その上には乳幼児を寝かせる。なお、圧力検出チューブ1bは、クッションシート13などに組み込んだ構成にすることにより、圧力検出チューブ1bの位置を安定させる構造とするのが望ましい。なおここでは、布団などの寝具については図示しない。
【0027】
本実施例では、図1に示すように2組の生体振動検出手段が設けられており、一方が乳幼児の胸部の部位の生体振動を検出し、他方が乳幼児の臀部の部位を検出することで、乳幼児の就寝の姿勢に関わらず生体振動を安定して検出するように構成されている。なお、チューブの配置などを適当に選択することにより、圧力検出チューブ1aを1組のみ配置する構成とすることも可能である。
【0028】
生体振動検出手段1によって検出された生体振動は、乳幼児の身体から発する様々な振動が混ざりあった信号であり,その中に呼吸信号、心拍信号及び寝返り等の信号が含まれている。生体振動検出手段1によって検出された生体振動を信号増幅整形手段2により増幅し、さらに明らかに異常なレベルの信号を除去するなどして適切な信号整形処理を行う。
【0029】
信号増幅整形手段2の出力信号には、呼吸、心拍、体動などの生体の発する様々な信号が含まれており、生体信号検出手段3において、バンドパスフィルター等を用いて睡眠サイクルの測定に用いる生体信号を抽出する。本実施例では呼吸信号あるいは心拍信号を睡眠サイクルの測定に用いる生体信号とした実施例を示している。
【0030】
自動利得制御手段4は、生体信号検出手段3の出力を所定の信号レベルの範囲に入るように自動的にゲイン制御を行ういわゆるAGC回路であり、この際のゲインの値(係数)を信号強度演算手段5に出力する。ゲイン制御は、例えば信号のピーク値が上限閾値を超えた場合に出力信号の振幅が小さくなるようにゲインを設定し、ピーク値が下限閾値を下回った場合に振幅が大きくなるようにゲインを設定している。
【0031】
信号強度演算手段5は、自動利得制御手段4において生体信号に対して施したゲイン制御の係数から信号の強度を演算する。上述のAGC回路から得られるゲインの値は信号の大きさが大なるときには小さく、また信号の大きさが小なるときは大きく設定されるように信号強度を示す関数を設定するのがよい。
【0032】
信号強度分散演算手段6は、信号強度演算手段5で検出された所定時間内の生体信号のデータの分散値(標準偏差)を算出する。各時刻の生体信号の分散値を求めることにより、分散値の時系列データが得られる。ここで、分散値とは、所謂統計学上の分散を示すものであり、分散の替わりに標準偏差を用いてもよい。
【0033】
睡眠サイクル測定手段7は、信号強度分散演算手段6で得られた生体信号強度の分散値の推移状態から睡眠サイクルの値を測定する。睡眠サイクル測定手段7には、生体信号強度の分散値の時系列データの各時点において遡ること1000点の移動平均をとる手段を備えており、時系列データが平滑化されることにより生体信号強度の分散値の時系列データの推移を明らかにし、睡眠サイクルの周期を算出する。
【0034】
睡眠サイクル測定手段7によって得られた睡眠サイクルの測定結果をデータ記憶・出力手段8に出力することにより図示しないモニター装置に表示することや、印刷装置に印刷することが可能となる。
【0035】
上述の実施例では、生体振動検出手段として中空のチューブを用いた例で説明したが、図2に示すエアマットを検出手段として用いることも可能である。ここでは、生体振動検出手段10は内部に空気を封入したエアマット10aの一端にエアチューブ10bが接続され、微差圧センサ10cに接続されて構成されている。微差圧センサ10cは、図1に示す中空のチューブを用いた生体振動検出手段の場合で説明したものと同じセンサ、即ち微差圧センサ1aを用いることができる。
【0036】
図1及び図2に示す生体振動検出手段は、乳幼児のみが寝かせられるベビーベッドなどの場合には適用できるが、母親などの大人が添い寝する場合には、測定対象でない生体振動を検出する結果、乳幼児の生体振動を正しく検出することができない。
【0037】
そのような場合には、生体振動検出部をシート内に収容するように形成し、前記シートを乳幼児の身体に巻きつけるなどの方法により装着して用いることにより、添い寝する大人の生体振動の影響を少なくし、乳幼児の生体振動を検出することができる。その際には装着するシートが乳幼児の日常の生活及び睡眠を妨げないように適度に小型でかつ軽量であることが必要である。
【0038】
次に乳幼児の睡眠サイクルを測定する手順について図1及び図3もしくは図4を用いて説明する。睡眠サイクルを測定する指標信号として心拍信号あるいは呼吸信号を用いることが可能である。図3のフロー図は生体振動信号から検出した心拍信号を指標信号として睡眠サイクルを測定する工程を示すものであり、図4のフロー図は生体振動信号から検出した呼吸信号から睡眠サイクルを測定する工程を示すものである。
【0039】
最初に図1及び図3に基づき、心拍信号を指標信号として睡眠サイクルを測定する実施例について説明する。生体振動検出手段1の生体振動検出部で検出された生体信号は、呼吸信号、心拍信号及び寝返り等の体動信号を含む複雑な振動の信号であり、加えて呼吸信号および心拍信号は微細な信号であるので、信号増幅整形手段2において信号の増幅および整形を行い、次いで生体信号検出手段3において心拍信号や呼吸信号などの生体信号以外の不要な信号をバンドパスフィルターなどにより除去することにより生体信号が検出される。心拍信号を指標信号として睡眠サイクルを測定するには図3における呼吸信号取り込みのステップは上記生体信号のうち心拍信号について信号処理を行う。
【0040】
生体信号検出手段3により検出された心拍信号に対して、自動利得制御手段4でもって信号のゲインを制御することによりピーク値が制御される。自動利得制御手段(AGC)4を用いることにより心拍強度信号の異常値が排除されることにより、データ処理の信頼性が向上する効果がある。
【0041】
信号強度演算手段5において、自動利得制御手段4で適用した心拍信号のゲインを用いて信号強度演算手段5により信号強度を算出する。自動利得制御手段4において生体信号の振幅を一定値に制御するためにゲイン調整を行うが、信号強度演算手段5はこのゲイン値の逆数を生体信号強度として演算する。心拍強度のデータは1秒ごとにサンプリングされ、心拍強度の時系列データが得られる。
【0042】
信号強度分散演算手段6は、信号強度演算手段5で得られた心拍強度の時系列データのうち基準時点から60秒間のデータを取得し、そのデータの分散値を算出する。信号強度分散値を求めることによりデータが平均化されて、寝姿等などの睡眠状態に関係しないデータを得ることができる。信号強度をそのまま使用した場合、寝姿等などの睡眠状態に影響されるために睡眠サイクルの測定を安定して行うことが困難である。
【0043】
睡眠サイクル測定手段7は、信号強度分散演算手段6で得られた強度の分散値の時系列データに対して1000点移動平均する手段を備えており、信号強度の分散値データを平滑化する。図5(a)に心拍強度の分散値のグラフを、図5(b)に心拍強度の分散値のデータを1000点移動平均した結果のグラフを示す。
【0044】
心拍強度は睡眠深度と密接な関係があることが知られており、睡眠深度が深ければ、心拍強度のばらつきは小さい。一方覚醒状態に近い程心拍強度のばらつきは大きくなる。図5(a)に示す心拍強度の分散値のグラフは短時間での変動値が大きく、睡眠深度の変動が捉えにくい。一方図5(b)の心拍強度の分散値のデータを1000点移動平均した結果のグラフでは、睡眠サイクルの基準時点(グラフの谷底部)を明確に把握することが可能である。
【0045】
図5(b)の心拍強度の分散値のデータを1000点移動平均のグラフにおいて、在床か離床かの判定を行う。データ最高値の20%以下であれば離床と判断し、データ最高値の20%以上であれば在床と判断する。在床時間が3時間以上であれば睡眠サイクルの測定作業を次のようにして行う。在床時間が3時間より少ない場合には、睡眠サイクルは測定しない。
【0046】
図5(b)のグラフの谷底部の個所に1から6までの番号を付けて示す。谷底部の個所から次の谷底部までの時間が睡眠のサイクルである。睡眠サイクル測定手段7は、1回の睡眠に数回の睡眠サイクルが現れるのでその平均値も求める。その結果はデータ記憶・出力手段8に出力されて表示あるいはデータが出力される。
【0047】
図4は、呼吸信号を指標信号として睡眠サイクルを測定するフロー図である。ここでは、生体信号検出手段3において呼吸信号が検出される。呼吸信号を指標信号として睡眠サイクルを測定するには図4における呼吸信号取り込みのステップは上記生体信号のうち呼吸信号について信号処理を行う。
【0048】
生体信号検出手段3により検出された呼吸信号は、自動利得制御手段4でもって呼吸信号のゲインを制御することによりピーク値が制御され、このピーク値のゲインを用いて信号強度演算手段5により信号強度を算出する。自動利得制御手段4において生体信号の振幅を一定値に制御するためにゲイン調整を行うが、信号強度演算手段5はこのゲイン値の逆数を生体信号強度として演算する。呼吸信号強度のデータは1秒ごとにサンプリングされ、心拍信号強度の時系列データが得られる。
【0049】
信号強度分散演算手段6は、信号強度演算手段5で得られた呼吸強度の時系列データのうち基準時点から60秒間のデータを取得し、そのデータの分散値を算出する。信号強度分散値を求めることによりデータが平均化されて、寝姿等などの睡眠状態に関係しないデータを得ることができる。信号強度をそのまま使用した場合、寝姿等などの睡眠状態に影響されるために睡眠サイクルの測定を安定して行うことが出来ない。
【0050】
呼吸信号強度は心拍信号強度と同様に睡眠深度と密接な関係があることが知られており、睡眠深度が深ければ、呼吸信号強度のばらつきは小さい。一方覚醒状態に近い程呼吸信号強度のばらつきは大きくなる。上述した心拍信号を指標とした場合と同様にして呼吸信号強度の時系列データを1000点移動平均したグラフから睡眠サイクルを検出する。
【0051】
本実施例の睡眠サイクル測定装置では、生体振動を検出する方法として、乳幼児の身体の下に敷いた生体振動検出手段で得られた生体振動から生体信号を抽出する方法を示した。本実施例を構成する上記の生体振動検出手段は、乳幼児の身体を拘束する装着物およびこれらの装着物に接続される信号用コードなどが不要であり、乳幼児の睡眠を妨げることがない。
【0052】
乳幼児の身体に生体振動検出部を巻きつける形態の場合には、生体振動検出部に無線通信手段を備えているので乳幼児に危険をもたらす恐れのある通信ケーブルが不要であり、安全な睡眠サイクルの測定が可能である。
【0053】
乳幼児の睡眠サイクルを測定するのに必要な生体振動を検出する装置は本実施例で説明した構成に限るものではなく、生体振動を検出することにより呼吸信号あるいは心拍信号などの生体信号が継続的に検出手段であれば使用可能である。例えば身体に装着するタイプの呼吸計や脈波計などの生体振動から呼吸信号や心拍信号を検出する手段であってデータを連続的に記録することが可能であれば本発明の生体振動検出手段として使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の睡眠サイクル測定装置は、乳幼児の生体信号強度を求め、その強度のばらつき(分散)を乳幼児の睡眠サイクルを測定するに用いる指標値とすることにより、乳幼児の睡眠サイクルを測定するものであり、生体振動を検出する生体振動検出手段は乳幼児に過度な拘束をかけることなく生体信号を検出することができるように構成されているために、乳幼児に身体的および精神的な負担をかけることがない。
【0055】
本発明の睡眠サイクル測定装置は、乳幼児の睡眠サイクルを測定することにより乳幼児の成長状態に対応した睡眠サイクルの周期となっているか確認することにより、乳幼児の健康状態及び成長状態を管理することが可能となり、乳幼児の発達異常や突然死の防止などに寄与すること大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】 本発明の睡眠サイクル測定装置の構成と睡眠サイクルを測定する工程を示すブロック図である。
【図2】 別の生体振動検出手段を示す平面図である。
【図3】 心拍信号を用いて睡眠サイクルを測定する手順を示すフロー図である。
【図4】 呼吸信号を用いて睡眠サイクルを測定する手順を示すフロー図である。
【図5】 心拍信号強度の推移を示すグラフと、心拍信号強度の1000点移動平均値を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 生体振動検出手段
2 信号増幅整形手段
3 生体信号検出手段
4 自動利得制御手段
5 信号強度演算手段
6 信号強度分散演算手段
7 睡眠サイクル測定手段
8 データ記憶・出力手段
10 生体振動検出手段
11 寝台
12 硬質シート
13 クッションシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児の生体振動を検出する生体振動検出手段と、
前記生体振動検出手段の出力信号から生体信号を検出する生体信号検出手段と、
前記生体信号検出手段により得られた生体信号の強度の所定時間の分散値を求める生体信号強度分散値算出手段と、
前記生体信号強度分散値算出手段で得られた生体信号強度の分散値から睡眠サイクルを検出する睡眠サイクル検出手段と
から成ることを特徴とする睡眠サイクル測定装置。
【請求項2】
前記生体信号は心拍信号であることを特徴とする請求項1に記載の睡眠サイクル測定装置。
【請求項3】
前記生体信号は呼吸信号であることを特徴とする請求項1に記載の睡眠サイクル測定装置。
【請求項4】
前記睡眠サイクル検出手段は、所定時間の生体信号強度の分散値を移動平均する移動平均手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の睡眠サイクル測定装置。
【請求項5】
前記生体振動検出手段は、微差圧センサと生体振動検出部とから成り、生体振動検出部の内部に収容されている空気の圧力変化を微差圧センサでもって検出することにより生体振動を検出することを特徴とする請求項1に記載の睡眠サイクル測定装置。
【請求項6】
前記生体振動検出手段の生体振動検出部は、弾性を有する中空のチューブであることを特徴とする請求項5に記載の睡眠サイクル測定装置。
【請求項7】
前記生体振動検出手段の生体振動検出部は、内部に空気を充填したマットであることを特徴とする請求項5に記載の睡眠サイクル測定装置。
【請求項8】
前記生体振動検出部をシート内に収容するように形成し、前記シートを乳幼児の身体に装着して用いることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の睡眠サイクル測定装置。
【請求項9】
前記生体振動検出部は無線通信手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の睡眠サイクル測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−19878(P2011−19878A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182828(P2009−182828)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(508131381)株式会社スリープシステム研究所 (9)
【Fターム(参考)】