説明

睡眠判定装置

【課題】在床/離床判定の誤判定を検出することである。
【解決手段】在床判定部(43)では、就寝者の心拍数が在床判定閾値を超えると在床していると判定され、在床判定閾値を下回ると離床していると判定される。この在床/離床判定はメモリ(45)に記憶される。誤判定検出部(46)では、在床判定部(43)によって在床と判定された区間において心拍数の度数分布の尖度Kwが所定値を超える場合、また在床判定部(43)によって離床と判定された区間において心拍数の度数分布の尖度Kwが所定値以下である場合、在床判定部(43)による判定は誤判定であるとみなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠判定装置に関し、特に、就寝者の離床/在床の誤判定に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、就寝者がベッド等の寝具に存在しているか否かを判定する離床判定装置が知られており、就寝者の睡眠状態をモニタリングする睡眠判定装置等に適用されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている離床判定装置は、就寝者の体動を検出して体動信号を出力する体動検知手段と、該圧電素子と電気配線を介して接続される回路ユニットとを備えている。上記回路ユニットでは、平滑回路や増幅回路等によって体動信号が所定レベルに変調される。その後、回路ユニットでは、変調された体動信号と、予め設定された離床判定閾値との比較が行われる。具体的に、回路ユニットでは、体動信号のレベルが離床判定閾値よりも所定時間以上継続して大きい場合には、就寝者が在床していると判定される。また、回路ユニットでは、体動信号のレベルが離床判定閾値以下となる場合には、就寝者が離床していると判定される。
【特許文献1】特開平5−15517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1の離床判定装置では、体動信号と離床判定閾値との大小比較により、就寝者の離床/在床判定を行うようにしている。ところが、例えば就寝者の寝室に振動源があり、寝具に振動が伝わってしまうような環境条件では、体動信号にノイズが重畳してしまうため、就寝者の離床/在床判定に誤りが生じてしまう虞がある。つまり、ノイズ等の外乱によって実際よりも高めの体動信号が検出され、実際は離床状態であるにも拘わらず在床していると誤判定してしまう。そして、この誤判定に基づいて判定した就寝者の睡眠状態について精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、就寝者の在床/離床判定が誤判定であるか否かを判別することができる睡眠判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、就寝者の生体情報に関する信号を検出する生体信号検出手段(20,33)と、該生体信号検出手段(20,33)の検出信号が判定閾値を超えると就寝者が在床していると判定する在床判定手段(43)とを備えている睡眠判定装置を前提としている。そして、本発明の睡眠判定装置は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の広がり度に関する指標値に基づいて、上記在床判定手段(43)の判定が誤判定であるか否かを検出する誤判定検出手段(46)を備えているものである。
【0007】
上記第1の発明では、心拍数などの生体信号が検出され、その生体信号と判定閾値との大小比較によって在床/離床判定が行われる。ここで、離床状態であるにもかかわらず、外部ノイズに起因する信号によって信号レベルが判定閾値を超え在床と誤判定する場合がある。そこで、本発明では、在床/離床判定された区間において生体信号検出手段(20,33)による検出信号の広がり度(広がり具合)を判断することで在床/離床判定が誤判定であるか否かが判定される。例えば、在床と判定された区間における検出信号の広がり度が小さい場合、その検出信号は生体によるものではなく外部ノイズによるものと推定され、その在床判定は誤判定であるとみなされる。また、離床と判定された区間における検出信号の広がり度が大きい場合、その検出信号は生体によるものと推定され、その離床判定は誤判定であるとみなされる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の度数分布の尖度である。そして、上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床と判定された区間における上記度数分布の尖度が所定値を超える場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなすものである。
【0009】
上記第2の発明では、検出信号の度数分布の広がり度が尖度によって判断される。そして、在床と判定された区間において尖度が大きいと、検出信号の度数分布の広がり度が小さいと判断され、その検出信号は外部ノイズによるものと推定される。したがって、その在床判定は誤判定とみなされる。
【0010】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の度数分布の尖度である。そして、上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床でないと判定された区間における上記度数分布の尖度が所定値を下回る場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなすものである。
【0011】
上記第3の発明では、検出信号の度数分布の広がり度が尖度によって判断される。そして、離床(在床でない)と判定された区間において尖度が小さいと、検出信号の度数分布の広がり度が大きいと判断され、その検出信号は生体によるものと推定される。したがって、その離床判定は誤判定とみなされる。
【0012】
第4の発明は、上記第1の発明において、上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の変動係数である。そして、上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床と判定された区間における上記変動係数が所定値を下回る場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなすものである。
【0013】
上記第4の発明では、検出信号の広がり度が変動係数によって判断される。そして、在床と判定された区間において変動係数が小さいと、検出信号の広がり度が小さいと判断され、その検出信号は外部ノイズによるものと推定される。したがって、その在床判定は誤判定とみなされる。
【0014】
第5の発明は、上記第1の発明において、上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の変動係数である。そして、上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床でないと判定された区間における上記変動係数が所定値を超える場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなすものである。
【0015】
上記第5の発明では、検出信号の広がり度が変動係数によって判断される。そして、在床と判定された区間において変動係数が大きいとと、検出信号の広がり度が大きいと判断され、その検出信号は生体によるものと推定される。したがって、その離床判定は誤判定とみなされる。
【0016】
第6の発明は、上記第1乃至第5の何れか1の発明において、上記生体信号検出手段(20,33)は、就寝者の生体情報として体動、呼吸および心拍の少なくとも1つを検出するように構成されているものである。
【0017】
上記第6の発明では、生体信号として、体動、呼吸および心拍に関する信号が検出される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、在床または離床と判定された区間において就寝者の生体信号(生体信号検出手段(20,33)の検出信号)の広がり度(広がり具合)に関する指標値に基づいて在床/離床判定が誤判定であるか否かを判定することができる。つまり、その指標値に基づいて、判定区間における検出信号の生体によるものか外部ノイズによるものかを判定(推定)することができる。そのため、在床と判定された区間において検出信号が外部ノイズによるものである場合は、その在床の判定が誤判定であるとみなすことができる。また、離床と判定された区間において検出信号が生体によるものである場合は、その離床の判定が誤判定であるとみなすことができる。これにより、在床/離床の誤判定を確実に検出することができ、引いては誤った在床/離床判定に基づいて検出された就寝者の睡眠状態を確実に排除する(見直す)ことができる。その結果、就寝者の睡眠状態を高精度に把握できる睡眠判定装置(10)を提供することができる。
【0019】
また、第2〜第5の発明によれば、生体信号検出手段(20,33)による検出信号の広がり度に関する指標値として、「尖度」または「変動係数」を用いるようにした。したがって、検出信号の広がり度を容易に且つ簡易に把握することができる。その結果、より確実に誤判定を検出することができる。
【0020】
また、第6の発明のように、就寝者の生体情報(生体信号)として、体動、呼吸および心拍の少なくとも1つを用いることで、簡易に且つ容易に生体情報を入手することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
本発明の実施形態に係る睡眠判定装置(10)は、就寝者の睡眠状態をモニタリングすることで、就寝者の健康管理を行うものである。この睡眠判定装置(10)は、感圧ユニット(20)と本体ユニット(30)を備えている。
【0023】
上記感圧ユニット(20)は、就寝者から生起する体動を本体ユニット(30)へ伝達するためのものである。この感圧ユニット(20)は、感圧部(21)と圧力伝達部(22)とを備えている。感圧部(21)は、一端が閉塞して他端が開口する細長の中空状のチューブにより構成されている。感圧部(21)は、寝室(5)のベッド等の寝具(6)内に敷設されている。圧力伝達部(22)は、両端が開口する細長の中空状のチューブにより構成されている。圧力伝達部(22)は、感圧部(21)よりも小径となっている。圧力伝達部(22)は、一端が感圧部(21)の開口部(23)に接続され他端が本体ユニット(30)に接続されている。
【0024】
上記本体ユニット(30)は、ケーシング(31)と取付部(32)と受圧部(33)とを有している。
【0025】
上記ケーシング(31)は、扁平な箱状に形成されており、例えば寝室(5)内の床面に設置されている。ケーシング(31)の内部には、回路ユニット(40)が内蔵されている。上記取付部(32)は、ケーシング(31)の側面に形成されている。取付部(32)は、内方に向かって凹んだ略円環状の凹部(32a)と、該凹部(32a)内から外方へ突出する凸部(32b)とを有している。凸部(32b)には、ケーシング(31)の外部と内部とを連通するように軸方向に貫通穴(32c)が形成されている。そして、凸部(32b)には、圧力伝達部(22)の他端部が外嵌する。これにより、感圧部(21)の内部と圧力伝達部(22)の内部と貫通穴(32c)とが連通している。
【0026】
上記受圧部(33)は、貫通穴(32c)の背面側に位置するようにケーシング(31)に内蔵されている。受圧部(33)は、マイクロフォンや圧力センサ等によって構成されている。寝具(6)上の就寝者から体動が生起すると、この体動が感圧部(21)に作用する。これにより、感圧部(21)の内圧は、圧力伝達部(22)および貫通穴(32c)を介して受圧部(33)に作用する。受圧部(33)は、この内圧を電気的な信号に変換し、本体ユニット(30)内の回路ユニット(40)へ出力する。
【0027】
以上のように、上記感圧ユニット(20)および受圧部(33)は、就寝者の生体信号(生体情報に関する信号)として体動信号を検出するための生体信号検出手段を構成している。
【0028】
図3に示すように、上記回路ユニット(40)は、信号処理部(41)と、判定部(42)と、メモリ(45)と、誤判定検出部(46)とを備えている。
【0029】
上記信号処理部(41)は、就寝者の体動が作用する受圧部(33)から出力された体動信号を所定の周波数帯域の体動信号に変調する。そして、信号処理部(41)は、変調した体動信号の周波数帯域から心拍の周波数帯域の信号を抽出し、1分間毎の心拍数を導出するように構成されている。
【0030】
上記判定部(42)は、信号処理部(41)で導出された心拍数に基づいて、就寝者が在床しているか等の各種判定を行う。具体的に、判定部(42)は、在床判定部(43)と睡眠判定部(44)とを備えている。
【0031】
上記在床判定部(43)は、就寝者が寝具(6)に在床しているか、寝具(6)から離床しているかを判定するものである。この在床判定部(43)による判定は、信号処理部(41)で導出した心拍数と、予め設定された判定閾値(在床判定閾値)との大小比較によって行われる。具体的に、在床判定部(43)では、心拍数が在床判定閾値を下回る場合、就寝者から体動が生起していないとみなされるので、この場合には「離床」と判定される。一方、在床判定部(43)では、心拍数が所定時間以上継続して在床判定閾値を上回る場合、就寝者から体動が生起しているとみなされるので、この場合には「在床」と判定される。
【0032】
上記睡眠判定部(44)は、在床判定部(43)により「在床」と判定された後、就寝者が入眠したか否かを判定するものである。この睡眠判定部(44)による判定は、信号処理部(41)で導出した心拍数と、予め設定された判定閾値(睡眠判定閾値)との大小比較によって行われる。具体的に、睡眠判定部(44)では、初めて心拍数が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を下回る場合、在床中の就寝者から体動がさほど生起していないとみなされるので、この場合には「入眠」と判定される。また、睡眠判定部(44)では、「入眠」と判定された後において、心拍数が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を上回る場合、就寝者から体動が生起しているとみなされるので、「覚醒」と判定される。
【0033】
上記メモリ(45)には、信号処理部(41)で導出された1分間毎の心拍数が記憶されていく。また、メモリ(45)には、判定部(42)による判定結果、即ち離床状態、睡眠状態、覚醒状態が記憶される。
【0034】
上記誤判定検出部(46)は、判定部(42)による判定結果が妥当であるか否か、即ち誤判定を検出するものである。誤判定検出部(46)は、所定の判定区間における心拍数(受圧部(33)の検出信号)の広がり具合に基づいて誤判定を検出する。つまり、誤判定検出部(46)は心拍数の広がり度に基づいて誤判定する。なお、この検出動作の詳細については後述する。
【0035】
−睡眠判定動作−
次に、本実施形態の睡眠判定装置(10)の睡眠判定動作について、図4〜図6を参照しながら説明する。睡眠判定装置(10)は図4のフローチャートに基づいて判定動作を行う。
【0036】
先ず、ステップST1では、感圧ユニット(20)によって就寝者の体動が測定され、その体動信号が回路ユニット(40)の信号処理部(41)に出力される。信号処理部(41)は、体動信号を所定の周波数帯域に変調し、その変調後の体動信号から心拍の周波数帯域の信号を抽出し1分間毎の心拍数を導出する(図5参照。)。この1分間毎の心拍数は、判定部(42)へ出力されると同時に、メモリ(45)に記憶される。
【0037】
ステップST2では、在床判定部(43)によって就寝者の在床/離床判定が行われる。在床判定部(43)では、信号処理部(41)から出力された心拍数が在床判定閾値を下回る場合、「離床」と判定される。また、在床判定部(43)では、信号処理部(41)から出力された心拍数が所定時間以上継続して在床判定閾値を上回る場合、「在床」と判定される。
【0038】
ステップST3では、睡眠判定部(44)によって就寝者の入眠判定および睡眠/覚醒判定が行われる。睡眠判定部(44)では、初めて心拍数が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を下回る場合、「入眠」と判定される。また、睡眠判定部(44)では、「入眠」と判定された後において、心拍数が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を上回る場合、「覚醒」と判定される。
【0039】
ステップST4では、判定部(42)による判定結果(図6参照)がメモリ(45)に記憶される。
【0040】
続くステップST5以降では、誤判定検出部(46)によって判定部(42)の判定結果が妥当であるか否かが判定される。つまり、誤判定検出部(46)によって誤判定が検出される。
【0041】
具体的に、ステップST5では、メモリ(45)に記憶されている判定部(42)による心拍数の判定区間が所定要件を満たしているかを判定し、満たしている場合はステップST6へ移行する。所定要件としては、例えば、在床区間の場合はその総睡眠時間が90分以上であるもの、また離床区間の場合はその離床時間が3時間以上のものである。在床区間および離床区間とは、それぞれ在床判定部(43)によって在床および離床と判定された区間である。総睡眠時間とは、入眠してから最終的に目覚めるまでの時間のうち覚醒した時間を差し引いた時間である。つまり、ステップST5では、仮眠等、比較的時間が短い判定区間については誤判定検出部(46)の判定対象から除外しようとしている。したがって、上記所定要件を満たさない判定区間は無視され、その判定区間における判定部(42)の判定結果は「問題なし」とされる。
【0042】
ステップST6では、誤判定検出部(46)が、メモリ(45)から上記所定要件を満たす判定区間を呼び出し、その区間における心拍数の広がり具合(心拍数の広がり度)に関する指標値を算出する。つまり、心拍数の分布のばらつき具合を評価するための指標値が算出される。この心拍数の分布はメモリ(45)に記憶されているものが用いられる。ここで、判定区間は、上述したように、在床と判定された区間である「在床区間」と、離床と判定された区間である「離床区間」とがある。そして、本実施形態では、上記指標値として、心拍数の度数分布における「尖度Kw」および心拍数の「変動係数Cv」が算出可能となっている。
【0043】
具体的に、「尖度Kw」および「変動係数Cv」はそれぞれ以下の数1および数2により表される。
【数1】

【数2】

ここに、Xiは判定区間における1分間毎の心拍数データを示し、は判定区間における心拍数データの平均値を示し、nは心拍数のデータ数を示し、Vは分散を示し、Uは不偏分散を示す。
【0044】
続くステップST7では、誤判定検出部(46)によって、上記ステップST6で算出した指標値(尖度Kw、変動係数Cv)が所定値以下または所定値以上であるか否かが判定される。これにより、在床判定部(43)による在床/離床判定に問題あるか否かが判定される。つまり、ステップST7では、指標値の大小によって判定区間における心拍数の広がり具合(心拍数の広がり度)が判定され、それによって誤判定かどうかがみられる。
【0045】
具体的に、ある判定区間における心拍数の度数分布の「尖度Kw」が所定値以下であるときは、その判定区間における心拍数の広がり具合が比較的大きい状態とみなされ、逆に「尖度Kw」が上記所定値を超えるときは、心拍数の広がり具合が比較的小さい状態とみなされる。また、ある判定区間における心拍数の「変動係数Cv」が所定値以上であるときは、その判定区間における心拍数の広がり具合が比較的大きい状態とみなされ、逆に「変動係数Cv」が上記所定値を下回るときは、心拍数の広がり具合が比較的小さい状態とみなされる。
【0046】
ここで、心拍数の広がり具合が小さい状態では、その心拍数の分布は就寝者の体動(生体)ではなく外部ノイズに起因するものと推定される。逆に、心拍数の広がり具合が大きい状態では、その心拍数の分布は外部ノイズに起因するものではなく就寝者の体動(生体)によるものと推定される。これは、就寝者の体動信号(生体信号)は寝相の変化によって信号レベルが大きく変動するが、外部ノイズによる信号レベルはそれほど変動せずほぼ一定レベルで発生するという考えによるものである。つまり、就寝者の体動信号は外部ノイズよりも信号レベルのばらつき具合が比較的大きいということである。したがって、ある判定区間における心拍数の分布が就寝者の体動によるものである場合は、その心拍数の広がり具合が大きくなると推定され、心拍数の分布が外部ノイズによるものである場合は、その心拍数の広がり具合が小さくなると推定される。
【0047】
このように、ステップST7では、例えば、在床判定部(43)によって在床と判定された区間(即ち、在床区間)において心拍数の度数分布の「尖度Kw」が所定値以下または心拍数の「変動係数Cv」が所定値以上であるときは、その在床区間における心拍数の分布は体動によるものとみなされる。この場合、その在床の判定は「問題なし」となる。逆に、その在床区間において心拍数の度数分布の「尖度Kw」が所定値を超えるときまたは心拍数の「変動係数Cv」が所定値を下回るときは、その在床区間における心拍数の分布は体動ではなく外部ノイズによるものとみなされる。この場合、その在床の判定は「問題あり」となる。つまり、その在床区間は、実際は離床状態であるにもかかわらず在床と誤判定された区間とみなされる(例えば、図6における4/18の在床区間を参照。)。
【0048】
また、ステップST7では、在床判定部(43)によって離床(在床でない)と判定された区間(即ち、離床区間)において心拍数の度数分布の「尖度Kw」が所定値を超えるときまたは心拍数の「変動係数Cv」が所定値を下回るときは、その離床区間における心拍数の分布は体動ではなく外部ノイズによるものとみなされる。この場合、その離床の判定は「問題なし」となる。逆に、その離床区間において心拍数の度数分布の「尖度Kw」が所定値以下または心拍数の「変動係数Cv」が所定値以上であるときは、その離床区間における心拍数の分布は体動によるものとみなされる。この場合、その離床の判定は「問題あり」となる。つまり、その離床区間は、実際は在床状態であるにもかかわらず離床と誤判定された区間とみなされる(例えば、図6における4/21の離床区間を参照。)。
【0049】
以上のように、「問題あり」とされた判定区間についてはメモリ(45)に記憶される(図4のステップST8)。つまり、判定部(42)によって判定された在床区間または離床区間は誤判定である旨がメモリ(45)に記憶される。
【0050】
−実施形態の効果−
以上説明したように、本実施形態によれば、在床または離床と判定された区間において就寝者の心拍数の分布の広がり具合に関する指標値、即ち心拍数の広がり度に関する指標値に基づいて在床/離床判定が誤判定であるか否かを判定することができる。つまり、その指標値に基づいて、判定区間における心拍数の分布が体動(生体)によるものか外部ノイズによるものかを判定(推定)することができる。そのため、在床と判定された区間において心拍数の分布が外部ノイズによるものである場合は、その在床の判定が誤判定であるとみなすことができる。また、離床と判定された区間において心拍数の分布が体動(生体)によるものである場合は、その離床の判定が誤判定であるとみなすことができる。これにより、誤った在床/離床判定に基づいて検出された就寝者の睡眠状態を確実に排除することができる。その結果、就寝者の睡眠状態を高精度に把握できる睡眠判定装置(10)を提供することができる。
【0051】
また、本実施形態では、心拍数の広がり具合に関する指標値として心拍数の度数分布の「尖度Kw」または心拍数の「変動係数Cv」を用いるようにした。したがって、心拍数の広がり度を容易に且つ簡易に把握することができる。その結果、より確実に誤判定を検出することができる。
【0052】
また、本実施形態では、就寝者の生体情報(生体信号)として心拍を検出するようにしたため、簡易に且つ容易に生体情報を入手することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、検出した体動信号から心拍を抽出するようにしたが、検出した体動信号そのものの度数分布の「尖度Kw」や体動信号そのものの「変動係数Cv」を算出して誤判定を検出するようにしてもよい。また、検出した体動信号から呼吸の周波数帯域を抽出し、その呼吸数の度数分布の「尖度Kw」や呼吸数の「変動係数Cv」を算出して誤判定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、就寝者の生体信号に基づいて在床/離床判定を行う睡眠判定装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る睡眠判定装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、睡眠判定装置の本体ユニットを拡大して示す斜視図である。
【図3】図3は、本体ユニットの回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、回路ユニットの制御動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は、回路ユニットの信号処理部によって処理された心拍数の波形図である。
【図6】図6は、回路ユニットの判定部による判定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 睡眠判定装置
20 感圧ユニット(生体信号検出手段)
33 受圧部(生体信号検出手段)
43 在床判定部(在床判定手段)
46 誤判定検出部(誤判定検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝者の生体情報に関する信号を検出する生体信号検出手段(20,33)と、該生体信号検出手段(20,33)の検出信号が判定閾値を超えると就寝者が在床していると判定する在床判定手段(43)とを備えている睡眠判定装置であって、
上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の広がり度に関する指標値に基づいて、上記在床判定手段(43)の判定が誤判定であるか否かを検出する誤判定検出手段(46)を備えている
ことを特徴とする睡眠判定装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の度数分布の尖度であり、
上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床と判定された区間における上記度数分布の尖度が所定値を超える場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなす
ことを特徴とする睡眠判定装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の度数分布の尖度であり、
上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床でないと判定された区間における上記度数分布の尖度が所定値を下回る場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなす
ことを特徴とする睡眠判定装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の変動係数であり、
上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床と判定された区間における上記変動係数が所定値を下回る場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなす
ことを特徴とする睡眠判定装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記指標値は、上記生体信号検出手段(20,33)の検出信号の変動係数であり、
上記誤判定検出手段(46)は、上記在床判定手段(43)によって在床でないと判定された区間における上記変動係数が所定値を超える場合、上記在床判定手段(43)による判定が誤判定であるとみなす
ことを特徴とする睡眠判定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項において、
上記生体信号検出手段(20,33)は、就寝者の生体情報として体動、呼吸および心拍の少なくとも1つを検出するように構成されている
ことを特徴とする睡眠判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−88725(P2010−88725A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262858(P2008−262858)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】