説明

瞬時電流測定方法

【課題】 瞬時電流の平均電流値の測定を比較的安価な回路構成で測定可能な瞬時電流測定方法を提供する。
【解決手段】 電流検出部1で電路電流を検出し、CPU部3で検出した電流信号を488μs毎にサンプリングし、サンプリングした電流の絶対値を100msに亘り加算して平均電流値を演算して求めて記憶部に記憶すると共に表示部4に表示させた。CPU部3は、この平均電流値を演算するにあたり、サンプリング毎に最新サンプリング値を加算すると共に100ms前の最古のサンプリングデータを減算して常時更新した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬時電流測定方法に関し、詳しくは100ms程度の時間に流れる電流の平均値を測定可能な瞬時電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、定格電流に比べて非常に大きな電流に対しては、例えば100msと瞬時に遮断動作するが、定格を少し超える程度の電流に対しては鈍く、遮断動作するまでに数秒から数分の時間を要している。この電流値による遮断動作時間の変化は一般的に動作特性曲線として表される。
この動作特性曲線に合致するか確認するための回路遮断器の動作試験を行う場合、動作特性曲線に合わせたデマンド電流を測定する機器(ブレーカ余裕度測定器)を使用することになるが、この測定器は、100msという非常に短い時間での瞬時電流を測定できなければならないため、CPUを使用して実効値を測定する専用の集積回路(IC)を使用している。
【0003】
一方で、遮断器の遮断電流をカウントする回路として特許文献1に示す回路がある。特許文献1には、遮断器に流れる電流を変流器により検出し、アンプ、ピークホールド回路、A/D変換器を介してCPUに入力し、CPUにより入力電流を解析している。
【特許文献1】特開平11−67021号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記専用のICを使用する構成は、まだ応答性が不十分な面があったし、CPU以外に整流回路や平滑回路が必要であるためコストも高かった。また、特許文献1に記載されている技術は、整流回路、平滑回路を持たないため比較的安価に回路を構成でき、瞬時電流のピーク値を測定可能であるが、例えば電流の平均値のような流れた電流のエネルギーに対応する量を測定することができない。そのため、ブレーカ余裕度測定回路に用いるには不向きであった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、瞬時電流の平均値を比較的安価な構成で測定できる瞬時電流測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、CPUによる演算処理により瞬時電流を測定する瞬時電流測定方法であって、測定対象の交流電流の1周期に対して少なくとも20回のサンプリングを実施するサンプリングステップと、測定対象の交流電流の3周期以上となる所定期間の間のサンプリング値の絶対値を加算する加算ステップと、サンプリング毎に最新サンプリング値を加算すると共に所定期間の最古のデータを減算して最新の加算値に更新する更新ステップとを有し、前記更新ステップの演算結果を最新の測定電流の平均値として出力することを特徴とする。
この構成により、整流回路や平滑回路を設けることなく瞬時電流の平均値を安価な構成で而も短時間に測定でき、回路遮断器の余裕度を測定する方法等に好適である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、サンプリングステップにおけるサンプリング周波数が略488μs、サンプリング値を加算する所定期間が略100msであることを特徴とする。
この構成により、測定対象の電流周波数が、50Hzであっても60Hzであっても区切りよくサンプリングできるし、短時間でも誤差の少ない測定を実施できる。また、この程度のサンプリング周波数であれば汎用のCPUで容易に実施でき、汎用のCPUを使用して実現できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、整流回路や平滑回路を設けることなく瞬時電流の平均値を安価な構成で而も短時間に測定でき、回路遮断器の余裕度を測定する方法等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る瞬時電流測定方法を実現する回路構成を説明するためのブロック図であり、1は測定対象の電路電流を検出する電流検出部、2は検出した電流信号を増幅する増幅部、3はCPUから成る演算部及び記憶部を有するCPU部、4は測定結果(演算結果)を表示する表示部を示している。
【0010】
電流検出部1では、変流器(CT)で電流を検出し、検出した電流信号を電圧値に変換して出力する。この電流検出部1の出力は増幅部2で増幅され、交流のままCPU部3で所定の演算処理が実施される。平均電流が演算される。
CPU部3では、まず入力された電流情報を基に例えば488μs(2048Hz)毎に電流値がサンプリングされる。図2はこのサンプリングの説明図であり、50Hzの電流波形Aがサンプリングされている様子を示している。この場合、100ms間に205個の瞬時データが得られる。
【0011】
次に、こうして得た瞬時データの絶対値が100msの一定期間に亘り加算される。この加算値は、図3(a)に示す波形図の時間軸と波形曲線で囲まれた部分(図3のハッチング部B)の面積に比例するため、適当な定数を乗算することで検出した電路電流の平均値を表すことができ、CPU部3で演算された平均電流値がCPU部3内の記憶部に記憶されると共に表示部4に表示される。
そして、100msの期間の加算値は、488ms毎のサンプリングにより最新のデータに更新される。サンプリングする毎に瞬時データが加算され、同時に100ms前の最古のデータを減算する演算が成される。こうして、488μs毎に100ms間に流れる電流平均値が更新される。尚、図3(b)は60Hzの場合の電流波形を示している。
【0012】
このように、瞬間的な電流の増減を記録することを可能とし、整流回路や平滑回路を設けることなく瞬時電流の平均値を安価な構成で短時間に測定でき、回路遮断器の余裕度を測定する方法等に好適である。
また、サンプリング周波数を488μs、加算する所定期間を100msとすることで、測定対象の電流周波数が、50Hzの場合5周期、60Hzの場合は6周期と、区切りよくサンプリングでき、誤差の少ない測定が可能となる。また、この程度のサンプリング周波数は容易に実施できる周波数であり、汎用のCPUを使用して実現できる。
【0013】
尚、上記実施形態では、サンプリング周期を488μs、加算する所定期間を100msとしているが、この数値に限定するものではなく、サンプリング周期は短いほど、また加算時間は長い方が測定精度は向上する。但し、測定対象の電流波形1周期に対して20回以上サンプリングを実施し、3周期程度の範囲に亘りサンプリング値を加算することで平均電流の近似値を得ることは可能である。例えば、50Hzの電流の場合1ms程度のサンプリング周期、60ms程度の加算期間を設ければ、ある程度の平均電流を求めることができる。更に短い時間で瞬時電流を測定することが可能となる。
また、電流検出手段を一例をとして変流器としているが、抵抗体を電路に介在させて直接電圧値として検出して良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る瞬時電流測定方法の実施形態の一例を示すブロック図である。
【図2】電流波形のサンプリング説明図である。
【図3】平均電流演算値の説明図で、(a)は50Hzの場合、(b)は60Hzの場合の説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1・・電流検出部、2・・増幅部、3・・CPU部、4・・表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUによる演算処理により瞬時電流を測定する瞬時電流測定方法であって、
測定対象の交流電流の1周期に対して少なくとも20回のサンプリングを実施するサンプリングステップと、
測定対象の交流電流の3周期以上となる所定期間の間のサンプリング値の絶対値を加算する加算ステップと、
サンプリング毎に最新サンプリング値を加算すると共に所定期間の最古のデータを減算して最新の加算値に更新する更新ステップとを有し、
前記更新ステップの演算結果を最新の測定電流の平均値として出力することを特徴とする瞬時電流測定方法。
【請求項2】
サンプリングステップにおけるサンプリング周波数が略488μs、サンプリング値を加算する所定期間が略100msである請求項1記載の瞬時電流測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−155616(P2007−155616A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353953(P2005−353953)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】