説明

短絡検出装置付電子機器

【課題】機器の突然の停止による被害を回避することが可能な短絡検出装置付電子機器を提供する。
【解決手段】第1基板上に配置され所定の間隔t1を隔てて形成された配線部を有する電子部品と、前記第1基板上若しくは前記1基板の近傍に配置された第2基板上に前記所定の間隔t1とは狭い間隔t2を隔てて配置された導電部材と、該導電部材の一方に一端が接続された抵抗と、該抵抗の他端と前記導電部材の他方を接続して配置された電圧印加手段と、前記導電部材の短絡を検出する検出器と、該検出器が検知した信号に基づいて前記検出器に接続された上位機種に警報を発するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡検出装置付電子機器に関し、屋外で使用されるフィールド機器において、内蔵されているたとえばプリント基板上の回路の防湿性、防食性の健全性をモニタする短絡検出装置付電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来フィールド機器に内蔵されたプリント基板は、防湿、防食のために、プリント基板上の電子部品にコーティングを施し保護を行っている。
図2(a)はPWB(Printed Wiring Board)12上に複数(図では4個)の電子部品11が所定の間隔を隔てて配置された状態を示す斜視図である。これらの電子部品11上にはコーティング13が施されて外部から侵入する水分やごみをプロテクトしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−119460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述の従来例におけるコーティングは完璧ではなく、長い年月使用していると、隙間やコーティング剤の微小な穴を通して、水分やガスなどが侵入し、パターンや電子部品端子部に腐食が発生する場合がある。
【0005】
従来は、腐食などの不具合を専用に監視する機能は付属しておらず、そのため、不具合の発生は、機器の動作不良として現れ、システムの突然の停止を余儀なくされることとなる。
【0006】
図2(b)はフィールド機器などに組み込まれたコーティングされたPWB12が正常に動作している状態を示すもので、湿気や腐食性ガスがある雰囲気でもコーティングによりシステム14との電気的接続が正常に機能している状態を示している。
【0007】
図2(c)はフィールド機器などに組み込まれたコーティングされたPWB12が異常状態に陥っている状態を示すもので、湿気や腐食性ガスによりコーティングが浸食されシステム14との電気的接続が断たれた状態を示している。
【0008】
従って本発明は、このような機器の突然の停止による被害を回避するため、PWB12上若しくは近傍に腐食検出回路を内蔵させ、有る一定の進行が確認できたところで、システム上位側にアラームを出し、機器のメンテナンスを促すようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の短絡検出装置付電子機器においては、
第1基板上に配置され所定の間隔t2を隔てて形成された配線部を有する電子部品と、前記第1基板上若しくは前記1基板の近傍に配置された第2基板上に前記所定の間隔t2とは狭い間隔t1を隔てて配置された導電部材と、該導電部材の一方に一端が接続された抵抗と、該抵抗の他端と前記導電部材の他方を接続して配置された電圧印加手段と、前記導電部材の短絡を検出する検出器と、該検出器が検知した信号に基づいて前記検出器に接続された上位機種に警報を発するように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2においては、請求項1に記載の短絡検出装置付電子機器において、
前記第1基板若しくは第2基板上に所定の間隔t1を隔てて配置された導電部材は櫛形パターンであることを特徴とする。
【0011】
請求項3においては、請求項1に記載の短絡検出装置付電子機器において、
前記検出器は電圧比較器で構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1乃至3によれば、パターンを用いた腐食試験の機能を機器内部に取り込み、かつ、実際の基板内のパターン間隔や、部品ピンの間隔t1より狭いパターン間隔t2を用いることで、必要な機器の機能が、腐食などで絶縁が破壊される前に警報を出すことが可能となり、突然の異常停止を未然に防ぐことが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の短絡検出装置付電子機器を示すブロック構成図である。
【図2】従来の短絡検出装置付電子機器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(a)は本発明の短絡検出装置付電子機器を示すブロック構成図である。図において、Aは例えば圧力伝送器や流量計などのフィールド機器であり、Bはフィールド機器に内蔵され短絡状態を検出してアラームを発するアラーム発信回路である。
【0015】
アラーム発信回路Bは櫛形パターン1と、この櫛形パターン1に配線2及び抵抗3を介して電圧を印加する電圧印加手段4及び櫛形パターン1の一方と抵抗3の一端に接続された検出器5を備えている。
【0016】
図1(b)は検出器5の構成を示すもので、検出器5は電圧比較器6で構成され、一方の入力端子に抵抗3の一端が接続され、他方の入力端子に比較基準電圧7が接続されている。
【0017】
図1(c)は櫛形パターン1と電子部品11の間隔の関係を示すもので、櫛形パターンの間隔t1は電子部品の配線間隔t2と比較した場合t1<t2の関係にあることを示している。
【0018】
上述の構成において、アラーム発信回路Bの内部で使用されている電圧印加手段4からの電圧を、櫛形パターン1と抵抗3を介して印加する。
その結果、櫛形パターン1で腐食などの絶縁劣化が発生していなければ、点線iで示すような電流は発生せず、抵抗3にも電圧は発生しない。この状態では検出器5(電圧比較器)は反応しない。よって、Kで示すアラームも発生せず、機器としては正常な状態を維持していて、CPU8や上位ホスト9は何もしない。
【0019】
次に、コーティング絶縁が劣化すると腐食などが発生し、電流iが印加電圧÷(櫛形パターン1の抵抗値+抵抗3の抵抗値)により流れる。このことにより抵抗3に電圧が発生する。この電圧を検出器5で検出すると動作を行い、CPU8にアラーム信号Kを伝達する。CPU8はこの信号を受けて、上位ホスト9に対して、機器内部で異常の発生兆候が見られることを通知する。通知を受けると、保守員が機器に異常が迫ってきていることを事前に検知し、機器の保守を行い、突然の不具合発生を未然に防止することが可能となる。
【0020】
ここで、櫛形パターン1の間隔t1は、使用している部品や基板に形成されたパターンの最小間隔より狭い幅とする。
検出器5を構成するパターンは、腐食の影響を抑えるために、電子部品11の最小幅よりピン間幅が広い部品および配線間隔を確保する。
【0021】
基板を含む電子部品にコーティングを施していない場合、櫛形パターン1は部品ピンと同じレベルに保つために、レジストは塗布せず、クリーム半田などを塗布し、部品が半田実装されているのと相当になるようにする。
【0022】
基板を含む電子部品に対して、コーティング剤を塗布している場合には、櫛形パターン部にも同様にコーティングを塗布するなどして、実際の使用条件に合わせる。
実施例では櫛形パターンを示したが、間隔を保持できれば、櫛形に限る必要はなく、円でも三角でも何でも良い。
【0023】
印加電圧は、基板内部で使用している電圧と同じであることが望ましいが、加速させて早期にアラームを発信したい場合などは、印加電圧を上げるような構成にすることもできる。
検出器としては、電圧比較器やAD変換器など発生した電圧を検出できる方式であれば何でも良い。
【0024】
異常を検出する抵抗値の決定は、基板上でどれだけリーク電流が許されるかで決定される。使用環境によって、その値が変わるような場合には、検出器として電圧比較器を用いた場合には、比較用基準電圧値を任意に変更できるように、DAコンバータなどを具備しても良い。
【0025】
電圧比較器を用いる場合には、ヒステリシス機能を持たせて、誤動作を防止させる機能を持たせても良い。また、AD変換器を用いる場合でも、ディジタル演算処理でヒステリシスを持たせるような処理を行っても良い。
【0026】
検出器で異常を検出した信号はCPUに接続して処理されているが、CPUを介さずに直接LED、リレー、トランジスタなどを駆動し、光信号や接点出力信号として外部機器に伝達することもできる。
【0027】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0028】
1 櫛形パターン
2 配線
3 抵抗
4 電圧印加手段
5 検出器
6 電圧比較器
7 比較基準電圧
8 CPU
9 上位ホスト
11 電子部品
12 PWB(Printed Wiring Board)
13 コーティング
14 システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上に配置され所定の間隔t2を隔てて形成された配線部を有する電子部品と、前記第1基板上若しくは前記1基板の近傍に配置された第2基板上に前記所定の間隔t2とは狭い間隔t1を隔てて配置された導電部材と、該導電部材の一方に一端が接続された抵抗と、該抵抗の他端と前記導電部材の他方を接続して配置された電圧印加手段と、前記導電部材の短絡を検出する検出器と、該検出器が検知した信号に基づいて前記検出器に接続された上位機種に警報を発するように構成したことを特徴とする短絡検出装置付電子機器。
【請求項2】
前記第1基板若しくは第2基板上に所定の間隔t1を隔てて配置された導電部材は櫛形パターンであることを特徴とする請求項1に記載の短絡検出装置付電子機器。
【請求項3】
前記検出器は電圧比較器で構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の短絡検出装置付電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−220242(P2012−220242A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83606(P2011−83606)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】