説明

矯正用接着剤

【課題】作用時間が長く、かつ/または硬化時間が短いため、作用/硬化(W/C)比が向上した矯正用接着剤を提供すること。
【解決手段】矯正用接着剤は、硬化性樹脂モノマー成分と、四元硬化開始剤系と、充填剤とを含む。少なくとも10、12、14または20のW/C比(作用時間対硬化時間比)を有する別の矯正用接着剤は、硬化性樹脂モノマー成分と、硬化開始剤系と、充填剤とを含む。接着剤は、光硬化に好適であり、着色剤を含むことができる。好適な着色剤は、可逆的熱変色性染料を含む。接着剤は、樹脂強靱化成分を含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矯正用接着剤に関し、特に、作用時間が延び、もしくは長く、かつ/または硬化時間が短縮し、もしくは短いため、作用/硬化(W/C)比が向上した矯正用接着剤に関する。本明細書に用いられる「矯正」という用語は、「歯科」用途ならびに矯正用途を含むことを意図する。
【背景技術】
【0002】
矯正装置(例えばブラケット)を患者の歯に接着するのに接着剤が必要である。光硬化性接着剤は、単一成分(すなわち非混合)の性質により、最も普及している。理解されるように、ブラケットまたは他の装置を高い結着性で結合することは、接着剤の耐久性および寿命につながるため、重要である。高い結着性を達成する2つの重要な要因は、長い作用時間および迅速な高強度硬化である。
【0003】
長い作用時間は、典型的な臨床的活力に対応するために不可欠である。例えば、矯正用ブラケットを直接接着するために、通常のオフィス照明下でブラケット基材に接着糊を塗布し、検査照明下でブラケットを患者の歯に配置し、ブラケットを取りつけ、余剰の接着剤を追い出し、余剰物を洗浄し、ブラケットを最終位置に移し、最終洗浄を行うのに十分な時間がなければならない。この手順全体に要する時間は、ブラケット1つ当たり通常1分間以内である。しかし、よくあるように、医師が他の仕事を行っている間に、臨床助手が最初のブラケット配置を行う可能性がある。その場合、いくつかのブラケットは、数分間にわたって高強度の照明下に維持されうる。医師が最終ブラケット配置を行うときに、いくつかのブラケットの接着剤は実行可能作用時間を長時間過ぎており、裂け、空隙形成、または接着強度の低下をもたらす分子量成長不良に至る他の重合不良の危険性を有する確率が高い。最悪の場合は、ブラケットは、最終移動が不可能な程に堅く固定され、その場合は、全手順を再着手しなければならない。接着強度の低下は、それ自体、しばしば患者がオフィスを出る前に初期接着破壊を生じうる。あるいは、接着は、初期の軽い力では保持されうるが、治療のさらなる過程で、患者が通常はブラケットを押しのけない何かを噛む時か、またはワイヤ交換時に、より大きい力が結合を破壊させうる。
【0004】
短い硬化時間は、接着手順を迅速に完了させるのに望ましい。接着剤を迅速に固化させると、全体的な作業時間が短縮されるため、患者および医師のためになる。医師が、すべてのブラケットまたは装置を要望に応じて配置すると、接着性材料が、許容可能な強度まで固化または硬化するはずである。これにより、その後接着剤の固化/硬化反応の中断による接着強度の低下をもたらしうる、ブラケットまたは他の装置の妨害または転置が防止される。歯科用硬化光源を使用する市販の接着剤の典型的な硬化時間は、約10から40秒である。
【0005】
現在利用可能な光硬化性矯正用接着剤は、達成可能な作用時間対硬化時間比(W/C比)を制限する。知られている矯正用接着剤のW/C比に影響する1つの要因は、接着開始剤系である。いくつかの現在利用可能な接着剤には、増感物質および電子供与体からなる二元型(二成分)開始剤系が利用されている。当該製品の1つの例は、Ormco Corporationから入手可能なEnlightである。Unitek/3M Corporationから入手可能なTransbond XTなどの他の製品には、増感物質、電子供与体、および第3の成分であるヨードニウム塩を含む三元(三成分)開始剤系が使用されている。米国特許第5,545,676号には、当該処方物が開示されている。Sybron Corporationは、その一連の製品において、増感物質、電子供与体および過酸化物触媒を含む三元開始剤系を利用した。この開始剤系は、米国特許第5,362,769号に開示されている。
【0006】
矯正用接着剤のW/C比は、接着剤の作用時間(W)の持続時間および接着剤の硬化時間(C)の持続時間の双方に影響される。基準点として、Enlight接着剤のW/C比を2とした。硬化速度および硬化接着剤の物理特性を改善することを目的とした試みは、典型的には、硬化光源に向けられてきた。従来のタングステン−石英ハロゲン電球濾過光の改善は限界に近づいており、キセノンプラズマパルスまたはアーク(PAC)光などのより強度の高い光を使用することで、限定的な成功が達成された。また、[アルゴン]レーザのようなより単色性の光源およびLED型硬化光源を光開始剤の吸収波長に対応させる試みがなされてきた。
【特許文献1】米国特許第5,545,676号
【特許文献2】米国特許第5,362,769号
【特許文献3】米国特許第4,792,632号
【特許文献4】米国特許第5,596,025号
【特許文献5】米国特許第6,528,555号
【特許文献6】米国特許第6,670,436号
【特許文献7】米国特許第4,554,336号
【特許文献8】米国特許第6,387,982号
【特許文献9】米国特許第6,126,922号
【非特許文献1】Reynolds IR. A review of direct orthodontic bonding. Br J Orthod 2:171−78、1975)
【非特許文献2】Proctor DL、Fracture properties of different orthodontic bonding materials、Loma Linda University gradiate school Masters Thesis、June 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在利用可能な製品よりW/C比の大きい矯正用接着剤を提供することが、本発明の目的の1つである。本発明の別の目的は、開始剤系の改善である。さらなる目的は、衝撃強さを含む硬化後の所望の物理特性を有する矯正用接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先述の目的を達成するために、本発明に従って、少なくとも10、12、14およびさらには20以上のW/C比を有する矯正用接着剤組成物を開発した。矯正用接着剤組成物は、硬化性樹脂モノマー成分、硬化開始剤系および充填剤を含む。硬化性樹脂モノマー成分、四元硬化開始剤系および充填剤を含む矯正用接着剤も本発明によるものである。矯正用接着剤は、着色剤および/または樹脂強化成分をさらに含むことができる。また、硬化性樹脂モノマー成分は、2つ以上の異なる硬化性樹脂モノマーを含むことができる。さらに、四元硬化開始剤系は、少なくとも2つの異なる増感物質を含むことができる。本発明による接着剤は、臨床環境において、ときには困難で、通常は長く、慣例的に遅れる接着手順の順調な完了を促す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の説明、添付の請求項および添付の図面を参照することで、より深く理解されるであろう。
【0010】
本発明の組成物は、現在利用可能な矯正用接着剤より優れたW/C比をもたらす、長い作用時間と速い硬化時間との独自の組合せを有する。
【0011】
従来の最新技術の光硬化矯正用接着剤(歯科用複合体)は、典型的には、約50秒の作用時間および約20秒の硬化時間を有する。本発明の組成物は、典型的な検査照明条件下で、作用時間を約70〜100秒まで延ばすことができ、硬化時間を約5秒まで短縮することができる。したがって、現行の市販材料のW/C比は、約2.5(場合によっては約8まで)であるのに対して、本発明の組成物のW/C比は、少なくとも10であり、約14〜20またはそれ以上の範囲でありうる。この大いに望ましい改善は、実務者が、接着剤の作用時間の増加により明るい周囲照明下で慎重にブラケット(または他の矯正用装置)の配置を調整し、次いで接着剤の硬化時間の短縮によりブラケットを所望の位置に迅速に固定して、高い接着強度および結着性を迅速に達成することが可能になるため、接着破壊を低減するのに重要である。短い硬化時間は、また、ブラケットが接着される歯の数に応じて、患者の不快感を数分間短縮できるため、有益である。それは、また、医師の作業時間を節約し、患者の着席時間当たりの費用が低減される。さらに、短時間で達成される初期接着強度が典型的な接着剤より大きいため、ブラケットの脱離を心配することなく、ワイヤ連結および他の高強制手順を素早く遂行できる。
【0012】
本発明の組成物は、有利には、四元硬化開始剤系を利用することができる。当該四元硬化開始剤系は、本発明の接着剤組成物における優れたW/C比の達成に寄与すると考えられる。本明細書に用いられているように、「四元」(quat)という用語は、4つ以上の成分を有する開始剤系を指すことを意図する。
【0013】
一実施形態において、開始剤系は、少なくとも2つの増感物質、電子供与体および触媒を含む。有利には、代表的な組成物は、異なる吸収極大を有する2つの増感物質を含むことができる。当該増感物質の2つの例は、それぞれ380nmおよび470nmに最大吸収を有し、その間の領域で重なるフェニルホスフィンオキシド(PPO)およびカンファーキノン(CQ)である。図1、3および4を参照されたい。350nmから520nm領域の青色光を発する硬化ランプを利用すると、PPOおよびCQの両方を含む開始剤系は、利用可能なすべてのエネルギーを利用することになるため、PPOまたはCQを単独で使用するより硬化時間が短く/速くなる。同時に、この増感物質の組合せは、臨床環境における周囲照明条件下で特に感応的でないため、作用時間を増大させる。
【0014】
例として、10,000ルクスの典型的な検査照明条件下で、本発明の代表的な組成物(図では組成物Aで示される)は、30を超えるW/C比を達成することが可能である。10,000ルクスの検査光の下で、W/C比を秒単位の作用時間/秒単位の硬化時間として計算する。本発明の組成物Aと、Reliance Orthodonitic Products Corporationから入手可能なQuick、Ormco CorporationのEnlight、RelianceのLight BondおよびUnitek/3M CorporationのTransbond XTとのW/C比を比較する図9を参照されたい。
【0015】
一般的なオフィス蛍光灯照明条件(400ルクス)下で、該比は、分単位の作用時間/秒単位の硬化時間で表され、発明の材料は、30のオーダのW/C比を達成し、知られている接着剤は、0.5から3の範囲のW/C比を達成する。図10を参照されたい。
【0016】
既に述べたように、W/C比が向上した本発明の接着剤は、有利には、複数増感物質[「四元硬化」]開始剤系を利用することができる。接着剤を含む歯科および矯正用材料などのアクリル樹脂の光開始重合に使用される多くの既知の増感物質が存在する。しかし、恐らく、商業的歯科および矯正用製品に最も広く採用されている増感物質は、カンファーキノン(CQ)である。電子供与体とともに、CQを含む二元開始剤系は、歯科/矯正用硬化光源により、アクリルモノマーを、全体的に架橋したポリマーマトリックスに良好に変換する。歯科/矯正用硬化光源(以降「歯科用硬化光源」または「硬化光源」と称する)は、一般には、300から550ナノメートル(nm)の範囲の波長出力を有する。得られた硬化複合樹脂は、多くの歯科および矯正用途に有用である。三元開始剤系は、二元型より向上している。CQおよび電子供与体に加えてヨードニウム塩を含む1つの当該系が、米国特許第5,545,676号に開示されている。ヨードニウム塩を添加すると、高強度光硬化時の遊離ラジカルの生成に役立つと思われる。この効率性の向上は、CQの濃度の低下を可能にするため、作用時間が適度に延ばされる可能性が非常に高い。
【0017】
別の三元系が、米国特許第5,362,769号に開示されている。ここでも、この系は、従来のCQ/電子供与体を使用し、熱的条件に対応する速度で遊離ラジカルに分解する過酸化物を含む。体温における分解/遊離ラジカル生成のために具体的な過酸化物が適宜選択される。したがって、この種の硬化系を使用する材料は、潜伏硬化効果により、重合が完了に向けて進むに従って経時的に強度を増すことになる。
【0018】
知られている二元系および三元系は、典型的には、ただ1つの増感物質を使用する。増感物質は、一般には、波長が特異的であり、例えば、CQは470nmに最大吸収を有し、いずれの側にも50nm以内で急激に降下する。図1を参照されたい。したがって、単一の増感物質系は、典型的な歯科用硬化光源の利用可能な光エネルギーを十分に利用していない。図2は、これを、Demetron Optilux 501ハロゲン硬化光源からの光出力をCQの波長吸収スペクトルに重ねた図として示す。
【0019】
多くの既知のUV光開始剤/増感物質が存在するが、歯構造がUV光を減衰させて、緩慢な固化反応をもたらすため、これらは、一般には、歯科または矯正用硬化組成物に採用されなかった。したがって、硬化の深さ(モノマーからポリマーへの変換の程度)および対応する複合体強度が制限される。上部のUV A領域における典型的な歯科用硬化光源のエネルギー出力が十分に高くて有用であるため、より高い(近UV)波長に吸収極大を有するいくつかのUV光開始剤/増感物質は興味深い。ホスフィンオキシドのファミリーは、歯科用アクリル樹脂重合のための非常に活性的かつ効率的な光開始剤または増感物質である。その開示内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,792,632号には、当該光開始剤の使用が記載されている。歯科用硬化光源とともに使用する特に有用な光開始剤/増感物質は、390nmに吸収極大を有するという理由で、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(PPO)である。図3を参照されたい。
【0020】
有利には、PPOと典型的な歯科用可視光樹脂開始剤/増感物質、すなわちCQを組み合わせることによって、歯科用硬化光源スペクトルにおける樹脂組成物の感応性が有意に向上すると判断された。図4および5を参照されたい。さらに、CQの濃度を低下させ、PPOの濃度を相対的に高く維持することによって、この二つの増感物質の組合せを含む接着剤組成物についての周囲光の作用時間を有意に長くすることができると判断された。
【0021】
歯科および矯正用接着剤の分野で知られている広範な着色剤または染料が存在する。適正な着色剤(または複数の着色剤)および関連する変色機構の選択は、本発明の別の態様である。本発明の組成物に使用される着色剤の1つの有用な特徴は、初期接着後の余剰の接着剤、およびブラケットが外されたときの処理の終了時の接着剤残留物を洗浄する際に医師を助ける視覚的補助を提供することである。より具体的には、歯の色と対照をなす色を接着剤に付与する1つまたは複数の着色剤を利用するのが有利である。さらに、着色剤の適正な選択は、W/Cをさらに向上させうる。例として、米国特許第5,596,025号および米国特許第6,528,555号には、本発明に有用でありうる染料および着色剤のリストが示されている。米国特許第6,670,436号には、いくつかの熱変色化合物が開示されている。不可逆または可逆型着色剤の種類に制限はなく、W/Cを向上させると思われる他のより従来的な種類、例えば、青色または緑色のアルミニウムレーキ化合物などのFD&C有機顔料および無機顔料が存在する。
【0022】
本発明の接着剤組成物は、その透明化温度より低い温度で組成物を濃く着色し、透明化温度より高い温度で可逆機構を介して歯を着色させる変色可逆熱変色性染料を組み込んでいてもよい。以上に簡単に述べたように、対照色は、以下の2つの主な理由により、現在利用可能な市販の接着剤材料と比較して重要かつ望ましい利点である。(1)着色剤は、初期の接着手順を通じて付着した接着剤を洗浄するのに役立つ視覚的補助として機能する。初期接着時および装置(ブラケット)の配置中において、適正な技術は、ブラケットを所定位置に軽く押し込み、パッド下の領域に空隙のない接着剤を充填し、余剰物を接着パッドの周囲に追い出すことである。これによって、最高の結着性が得られるようにパッドと歯の間の接着剤の質量が最大になり、特に辺縁における空隙の発生が最小になるが、そうでなければ食物の捕捉、エナメルの腐食が起こりうる。空隙をなくすことで、接着不良が始まる応力発生の確率も低くなる。洗浄時にこの「フラッシュ」残留物を完全に除去することが、高度に対照をなす色により簡単になる。それは、衛生にとって有害である付着物質、すなわち食物およびプラーク捕捉/付着部位が最小になるように、永久的固化(光硬化)の前が重要である。歯色または透明である従来の接着剤は、視覚的対照が劣るため、洗浄が非常に困難である。(2)着色剤は、処理終了手順における脱ブラケットに続く接着剤残留物の洗浄に役立つ視覚的補助として機能する。この脱ブラケット作業において、医師は、歯の徹底した洗浄、この場合は重合した(硬化した)接着剤残留物の除去という同一の課題に直面する。幸いにも、正しく選択された着色剤は、モノマーまたはポリマーマトリックスに影響されないため、ブラケット除去後に、発明の接着剤の残留物を例えば水およびエアスプレーによりそれらの透明化温度まで冷却することができれば、濃色が戻り、残留物の可視性が高くなる。これによって、手動掻取作業および/または高速ハンドピースによる洗浄が容易になる。したがって、患者の衛生および歯の外観が改善される。
【0023】
処理中、体温および着色剤透明化温度を超える温度では、接着剤は、一般に歯の色である。口が低温である場合(例えば、アイスクリームを食べている場合)は、着色剤機構が逆転され、特に透明なブラケットの下では接着剤の色が顕著になりうる。しかし、発明の接着剤材料が金属ブラケットに使用される用途については、変色は概して隠れ、いずれの場合も、温度が透明化温度を超える温度まで上昇するに従って、接着剤色は、短時間に透明/歯色に変化することになる。透明ブラケットの場合は、色相および濃度は、必要に応じてコントラストを最大にしながらも、ブラケットの接着による色変化の明瞭性を最小にするように注意深く選択される。本発明の組成物に特に有用である可逆的熱変色性着色剤の例は、Color Change Corp.から入手可能なロイコ染料である。ロイコ染料の透明化温度および特定の色を幅広い在庫または特注処方物から選択することができる。
【0024】
図6および7は、本発明の代表的な組成物(組成物A)対現在入手可能な矯正用接着剤製品(それらの商品名で識別される)の作用時間の改善を示す。比較の目的で、外被のような堅さまで十分に硬化された接着剤のペースト様特性が、ほぼ5秒差まで丸くなる時点で作用時間を表した。この試験は、歯科/矯正業界に特有であり、普遍的に認識されておらず、臨床環境で体験される実際の雰囲気を厳密に表す。確定的な照明条件を準備した。着席検査照明については、Belmont(登録商標)ブランド(型式HLW、Belmont Equipment Corporation、日本)ハロゲン使用検査ランプを、試験部位に10,000ルクス出力を供給する距離(約23”)に配置した。光子束または光密度の測度であるルクスをMinolta照度計(型式T−10、Minolta Company, Ltd、日本)によって直接読み取った。検査照明についての図6に示される作用時間を秒単位で測定した。オフィス照明(蛍光、400ルクス)では、通常のテーブル高さにおける輝度計の読取値を記録した。図7に示されるように、作用時間を分単位で測定した。
【0025】
幅×深さ×長さが約2mm×2mm×20mmの各接着剤の押出ペーストサンプルをシリンジパッケージから透明なガラスの顕微鏡スライドへ非光化学的照明条件で採取することによって、図6および7に示されるデータを収集した。標準白色紙を試験部位に配置して、背景を標準化した。スライド上のサンプルを輝度計読取位置で白色紙に配置し、同時にストップウォッチを始動させた。予測される作用時間の10から15秒前(オフィス蛍光灯の場合は1から2分前)に、サンプルがペースト状にならず、脆性破壊の結果を有するまで、約5秒間隔(オフィス蛍光灯の場合は1から5分間隔)で約2mmの断片に(パンの塊状に)切り出した。時間を作用時間としてほぼ5秒(オフィス蛍光灯の場合は1から5分)まで記録した。
【0026】
「振動レオメータ」(Sabri Dental Enterprises, Inc.、イリノイ州Downers Grove)を利用する代替的な作用時間試験法を採用することが可能である。その装置は、予め設定された周波数で振動する針と、調整可能な加熱チャンバとを有する。使用に際して、サンプルを非光化学的放射条件下に維持し、チャンバに配置し、所望の試験温度に対して平衡とする。次いで、針を所定の深さでペーストに挿入する。試験ボタンが作動すると、同時に針が振動を開始し、x−y記録装置(Linseis型式L200E、ニュージャージー州Princeton Junction)が始動し、10,000+/−50ルクス(Monolta照度計)の光エネルギーがサンプルに入射するようにサンプルから離れて配置された動作検査光源(Belmont Dental Light)がオンになる。得られる出力は、地震計のようなものに類似した矢印状グラフとして現れる。平地線の点を作用時間として捉える。この手順は、本発明の組成物を試験するのに具体的に使用されたが、作用時間を測定するためのより「計測的な」性質を有する別の方法であると想定される。
【0027】
硬化時間に関して、接着試験は、本発明の材料における重要な接着特性の直接的な評価法である。接着試験は、ブラケットの緩みに最も典型的に関与する臨床特性を定量化する。換言すれば、接着試験は、良く知られており、許容される最小閾値を有する十分な臨床接着強度を実現するのに必要な硬化時間の量の測度となる。それは、最も客観的かつ基本的な試験であるが、本発明の範囲を逸脱することなく、強度の関数として硬化時間を表すための多くの他の方法が存在する。例えば、照明時間の関数としての引張強度、圧縮強度、ショア高度および硬化深度を用いて、接着強度データを補足することができる。
【0028】
高速の直接的な高強度硬化は、矯正用接着剤の意味において重要である。高速、すなわち迅速なモノマーからポリマーへの変換は、強度の蓄積中に移動が生じないようにブラケットを固化する。実質的に、すべての先端技術の矯正用接着剤は、速く固化する(「タッキング」として知られる)が、多くは、強度を蓄積する(変換の程度を高める)のにさらに数秒間の光硬化を必要とする。この時間を通じて、例えば、硬化時に歯科用光誘導チップがブラケットに不注意に衝突する可能性が極めて高く、特に患者が動くと、ブラケットに接触して、接着強度が低下する可能性をもたらす。強度蓄積中における所定のモーメントの接着強度に応じて、物理的破壊が、高度な最大最終強度を維持する能力を遮断しうる。
【0029】
6〜8MPaの剪断接着強度(SBS)は、広く記載されているように、臨床的に許容可能な閾値であると考えられる(Reynolds IR. A review of direct orthodontic bonding. Br J Orthod 2:171−78、1975)。実質的に、市販の接着剤のすべてが、この条件を満たすのに十分に硬化する。しかし、特に、接着剤の一部を陰影化する蛍光がある金属物の下で使用される場合に、比較的短時間の光硬化の直後にこの強度を与える接着剤はほとんどない。最も売れている3つの材料、すなわち3M Transbond XT、Reliance Light BondおよびOrmco Enlightを含むたいていの材料は、光硬化後60秒以内に7MPaに達するのに15秒間を超える硬化時間を必要とすることがわかった。図8を参照されたい。
【0030】
直接的なSBSを測定するために、表面を露出させてウシの歯をアクリルブロックに封入した。歯を軽石で洗浄し、次いで37%リン酸で30秒間エッチングし、すすぎ、クリーンな圧縮空気で乾燥させた。エッチングされた乾燥エナメルにOrmco Ortho Soloシーラントを少量塗布した。9.7mmの接着基部面積を有するOrmco Ortho Mini Diamondブラケット、部品番号454−0211を使用して、接着剤の試験を行った。接着剤をブラケット基部に分配し、直ちにシールした歯に軽い力で配置し、余剰「流出物」を除去し、わずかに位置を変えてブラケットをしっかりとシールし、最終的な流出物の洗浄を行い、850mw/cmの出力を有する11mmmの導光器を装着したDemetron Optilux 501(120V ACコード付ハロゲン歯科用硬化光源、Kerr Corporation)を使用して直ちに光硬化した。ブラケット接着面を、加える力に対して平行方向に配向させる保持固定具に各試験サンプルを直ちに配置した。適切な圧縮固定具を装着したInstron型式4467物理試験機(Instron Corporation、マサチューセッツ州Canton)に固定具を配置し、1mm/分の速度でブラケットタイウィングを介して剪断力を加えた。ブラケットが移動したら、最大SBSを記録した。光硬化後60秒以内に各試験を完了させた。図8は、これらの試験の結果を示す。示されるように、本発明の組成物Aは、3秒間の非常に短い硬化時間しか必要とせずに、最小閾値接着力を達成した。Reliance Quick Cureは迅速に硬化して高度な力を確保するが、作用時間が不都合に短いため(既に図6および7に示されている)、W/C特性が劣ること(図9および10)により、普及が極めて限定されてきた。Quick Cureの挙動は、まさに、「高温」(過負荷CQ)のバランスの劣った二元組成物に対して想定されるものである。
【0031】
「即時接着強度」の重要性を誇張することはできない。接着剤が一切損なわれないように装置を適正かつ作用時間枠内で配置したと仮定すれば、数ヶ月または数年間持続しうる処理期間全体を通じて最大の保持可能性を確保するために、許容可能な接着強度(>6MPa)までの迅速な硬化が重要である。アーチ付近でのブラケットの配置および硬化時における先述の不注意な接触の可能性に加えて、実務者が、光硬化直後に軽度または中程度の負荷を接着部に加えることは日常的な手順である。典型的には、医師は、光硬化後数秒以内に接着部にプローブを配置し、軽い力で揺すって、接着剤が固化していることを確認する。すぐに剥がれなければ、より強い力の手順に移っても安全である。この揺すり試験は、ワイヤで結着するのに費やされる数分間が、「最後のブラケット破壊」により浪費される可能性を低減することになる。例えば、矯正用ブラケットを接着した後に、弓形ワイヤをブラケット溝に挿入し、結紮する。不正咬合の重度、弓形ワイヤの大きさおよび噛み合わせの程度、ならびに使用する結紮の種類に応じて、力が指向的に高くなりうる(すなわち、力のベクトルが、ブラケットを移動させる最大確率に一致する)。ワイヤを15個程度のブラケット(1つのブラケットは1つの完全なアーチではない)に結着させた後に、最後のブラケットが外れ、ワイヤを完全に取り除いて、再度接着させることは極めて苛立たしく、費用がかかることである。図8に見られるように、多くの利用可能な接着剤は、満足できる7MPa値に達するが、本発明の組成物およびReliance Quick Cureのみが、非常に迅速にその値に達する。迅速な硬化は、高度な結着の可能性を最大にするばかりでなく、歯科オフィスにとっての経済的節約および患者の不快感の双方の観点で着席時間を節約する。1回の着席で32個程度のブラケットを接着できるため、数分間の節約が可能になる。
【0032】
主な接着剤のすべてが比較的迅速に固化して硬化された塊になるが、長い作用時間を維持するとともに、即時的な高強度をもたらす非常に高度なモノマーからポリマーへの変換を伴う非常に迅速な硬化時間を与える、開始剤系における増感物質と触媒の正しいバランスを有するのは本発明のみである。作用時間および硬化時間の主要特性を比(W/C)として表すことによって、本発明の処方物は、上記の既存の材料より良好に機能する。図9および10を参照されたい。
【0033】
さらに、本発明の開始剤系に関して、より新しい世代の発電電池、コードレス発光ダイオード(LED)硬化光源が使用される場合は、狭波長光の効果が明らかになる。例えば、LEDemetron(コードレス電池で動作するLED歯科用硬化光源、Kerr Corporation)が普及しており、歯科用材料に対して最も一般的な光開始剤であるCQを活性化するように設計された市販のLED歯科用硬化光源の典型的な波長出力(452nm)を示す。図11は、LEDemetronからの光出力をCQの吸収スペクトルに重ねた図を示す。残念なことに、この出力は、ホスフィン開始剤の活性に対する有用性は極めて低い。図12の重なったグラフを参照されたい。これから、PPO開始剤をより良好に活性させるために、より低い波長のLEDのさらなるアレイが重要であることが明らかになる。SpotCure C(UV Process Supply, Inc)は、395nmに出力極大を有するLED UV硬化光源である。図13の重なったグラフに示されるように、SpotCure光源の出力は、PPO吸収曲線と良く一致している。異なる光源を用いた組成物AのSBS試験は、PPOおよびCQ増感物質の個々の貢献を実証する。比較的短い硬化時間では、LEDemetronは、主にCQの活性化を通じて、組成物Aを低強度まで固化する能力を有し、SpotCureは、専らPPO活性化を通じて、わずかにより良好な結果をもたらす。しかし、DemetronおよびSpotCure光源の両方を同時に使用すると、結果は、Optilux 501ハロゲン光源の広波長にほぼ匹敵する迅速な高強度硬化であった。
【0034】
改造型LEDemetronは、本発明の組成物に対して優れた硬化を提供しながら、他の従来の(CQ二元/三元)光硬化材料の硬化に対する効果を低下させないことがわかった。この光源は、標準的なLEDの代わりにRoyal Blue LEDを利用しており、図21のスペクトルにおいてOrmco Royal Blue LEDとして特定されている。図22は、Royal Blue LEDをCQおよびPPO吸収スペクトルに重ねた近似的な図を示す。図示されるように、Royal Blue LEDは、442nmに出力極大を有する。即時強度、すなわち上述の60秒試験プロトコルを利用したSBS試験結果(lbf)を以下に記載する。同じ454−0211ブラケットを使用した。
【0035】
表の第2から第4欄は、本発明の組成物Aに対応する。
・RBは、上記のOrmco Royal Blue光源である。
・501は、Demetron Optilux 501ハロゲン歯科用硬化光源を指し、典型的な出力が300〜550nmの領域にある現在利用可能なコード付ハロゲン硬化光源の大多数を代表する。
・LEDemetronデータは、いずれも一般には効率的なCQ二元/三元硬化に向けられる同一の452nm波長LEDを使用するため現在利用可能な市販のLED歯科用硬化光源の大多数を代表する。
【0036】
第5欄および第6欄は、従来の市販の接着剤のEnlight(Enl)およびTransbond XT(XT)に対するRoyal Blue光源の効果を示す。EnlightおよびTransbond XTについてのデータは、501の使用に相当するため、Royal Blue硬化光源は、理想的な「汎用的」コードレス光源である。矯正実務において椅子から椅子への移動が容易なため、コードレスの可搬性が普及している。医師は、本発明の優れたコードレス高速硬化にグレードアップすることができると同時に、依然として彼らのオフィス在庫に存在しうるより古い世代の従来の接着剤、バンドセメント、複合材および一般的にCQのみをベースとした他の材料の効果的な硬化を確保することができる。
値は、ポンドの力、ibf(MPa)で示される。
【0037】
【表1】

【0038】
本発明の四元系における各開始剤成分の効果を実証することが可能である。図15は、本発明において考えられる硬化開始剤成分の様々な組合せを含む組成物に対する初期SBS(ここでも、上記の60秒間の即時強度試験プロトコルおよびハロゲン501硬化光源を用いる)を示す。図15において、Cは、カンファーキノンであり、Pは、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであり、Oは、オクチルジメチルアミノベンゾエートであり、Vは、1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)である。C成分およびP成分は、増感物質であり、Oは、相乗的アミン促進剤であり、Vは、触媒/促進剤である。各成分の重要性に留意されたい。左から始めて、C/O棒は、典型的な二元系であり、短い硬化時間(5秒間)で期待される低強度結果(3lbf)をもたらす。次の2つの棒(C/P/OおよびC/P/V)に移ると、PPO増感物質は、硬化強度を大きく向上させ、さらには発明のW/C要件を満たすことができることがわかった。しかし、すべての4つの成分(C/P/O/V)が存在する場合は、W/Cを最大にするために、非常に短い硬化時間(2秒間)で強度が7MPaに上昇する。したがって、長い作用時間を維持すると同時に、ほぼ瞬間的な高強度硬化を最大にするために、四元系の濃度のバランスをとることが極めて重要である。
【0039】
矯正用ブラケットの場合は、ブラケットが患者の歯に所望の位置で接着され、弓形ワイヤが結紮されるように接着手順が良好に完了したと仮定すれば、接着層が(現行の市場先導的な材料、すなわちTransbond XT、Enlightに典型的である脆弱さに対して)強靱である場合に、損傷状況下でもブラケットの接着が維持される確率が高くなる。樹脂マトリックス手法、および当該技術分野で良く知られている補強態様の両方により複合材を強靱化するいくつかの方法が存在する。組成物Aを含む本発明の組成物において、樹脂マトリックスは、衝撃エネルギーを吸収するように設計されており、ガラス充填剤は、強度を付与する。これは、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,554,336号に記載されている目的で設計されたメタクリル化ウレタン樹脂モノマーを使用することによって達成される。振子型衝撃負荷(Ormco特注設計計測「アイゾッド」型エネルギー測定装置)の下で、本発明は、現行の市場先導製品を明らかに凌ぐ。図16は、組成物A対EnlightおよびTransbond XTについての衝撃靭性の比較を示す。
【0040】
強靱化添加剤は、先導競合材料に対して有意に異なる他の機械特性を与える。高強度材料を維持するが、塊がある程度屈曲できるようにわずかに低い弾性率およびより大きい変位を有することが強調される。靭性を有しかつ柔軟な特性は、高速度(高歪み速度)により、ガラス材料が比較的軽い負荷の下で砕けることを避けるために特に重要である(窓ガラスに落下するBBと銃から打ち込まれるBBとを比較されたい)。例えば、氷を噛んでいる間に、歯が滑って、硬い氷をブラケットに対して高速で押しつけた場合に突発的な衝撃が発生する状況を想像されたい。撓むことができない脆弱な材料は、悲惨にも破壊する傾向があるのに対して、エネルギーを吸収・消散しながら伸長する能力をも有する許容可能な強さの材料は、接着破壊の可能性を低減する(ここで、弾力性のウレタン防弾シートを窓ガラスに置き換える)。相対的な比較を図17〜19に示す。
【0041】
弾力性(引張応力−歪み曲線下面積)は、崩壊前にエネルギーを吸収する材料の能力の別の測度である。組成物Aを、参照により本明細書に含まれている、大学生によってなされた同一の実験手順に従って既に完成された研究(Proctor DL、Fracture properties of different orthodontic bonding materials、Loma Linda University graduate school Masters Thesis、June 2001)と比較した。組成物Aの弾力性は、どの製品よりも高く、最良の全体性能を有することがわかった。以下の表は、組成物Aがもたらす顕著な向上を示す。平均値は、n=5について報告されている。
【0042】
【表2】

【0043】
組成物Aは、すべてのブラケット材料、すなわち金属、セラミックおよびプラスチックに有用であることを意図しているが、金属ブラケットセグメントを特に対象とする。したがって、別の主要設計特性は、金属接着性である。衝撃特性を向上させるための既に述べたウレタン樹脂も、金属への接着性を向上させて、本発明に特に有用になるように設計された。米国特許第4,554,336号には、ウレタンのシアノ成分を介する金属表面への選択的結合が記載されている。この特性を十分に利用するために、合理的な手法は、シアノ成分が接着面に密着するように、濡れ特性を向上させることである。いくつかの製造者および/またはいくつかの歯科オフィスは、ブラケット基材の形態を改変して、表面積を拡大していることに留意することが重要である。接着面を粗面化し、穴開けするように、サンドブラスト処理する場合もある。Ormcoは、メッシュワイヤおよびバッキングパッドに焼結された金属微粒子を提供する。接着剤が、接着基材のこれらの物理的特徴付近で均一に流動することができる場合は、これらの微小保持手段の性能が最も向上する。本発明の組成物、特に組成物Aは、ピーナツバターの軟度と類似した、大量に充填された高粘度ペーストであるため、ペーストを微孔に流入させて、機械的保持の向上をもたらすのに様々な内部湿潤剤/界面活性剤が有用でありうる。湿潤剤/界面活性剤という用語は、本明細書に用いられているように、接着面に対する樹脂マトリックスの接触角を小さくする役割を果たす化合物を指す。TweensおよびSpansなどの一般的な界面活性剤は、有用でありうるが、固化反応に関与しない物質であり、傍観物質として、例えば、強度低下を招く可塑剤として作用する等、いくつかの特性を不利に低下させうる。米国特許第6,387,982号には、他の主要な物理特性が低下しないように固化反応に関与しうる重合性界面活性剤が記載されている。同様に、いくつかの市販の樹脂は、マトリックス接触を向上させるのに有用である。考えられる組成物について接触角を具体的に測定しなかったが、本発明の主要な界面活性成分は、様々な従来技術と比較すると、結果が示した全体的な結合強度の向上を支えることになる。米国特許第5,362,769号には、矯正用接着剤組成物における表面の濡れの程度を高める目的で親水性成分を使用することが記載されている。いくつかの代表的な好ましい反応性重合性湿潤剤としては、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸およびジメタクリル酸グリセロールが挙げられる。分子レベルでは、適度な濡れは、例えば上記のウレタンのシアノ成分のように、結合距離において好ましい化学親和力を得ることができるように、樹脂が金属接着面の大部分に密着することを可能にする。さらに、これは、接着強度を徐々に高めるために含めることができる反応性多官能接着向上コモノマー、例えば、無水トリメリット酸4−メタクリルオキシエチル、ジメタクリル酸ピロメリット酸グリコール、メタクリル酸グリシジル、リン酸水素2−(メタクリルオキシ)エチルフェニルおよびジメタクリル酸グリセロホスフェートにとっても等しく重要である。また、一定の状況において、例えば、接着基材が自然にシリカリッチである場合、または蒸着または埋込み法によってシリカが増強されている場合に、様々なシリカ表面活性接着樹脂が有用でありうる。組成物Aを含む本発明の組成物を使用して、チタンおよびステンレス鋼ブラケットを接着する場合は、ウレタン樹脂は、界面活性剤および/または湿潤剤および接着強化成分とともに、最終的な最大強度を含む接着強度の向上に有意かつ一貫的に寄与する可能性が高い。図20は、Optilux 501による光硬化の30秒後の最大SBS(lbf)を示す。
【0044】
高強度、高反応性、および矯正実務者が望む特定の処理特性に合わせて調整する能力を達成するためには、樹脂および充填剤成分を慎重に検討することが必要である。当該技術分野で良く知られている多くの市販樹脂は、遊離ラジカル重合性基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーである好適な好ましくは重合性の成分である。反応性アクリル酸およびメタクリル酸官能基を有する代表的な例が米国特許第6,126,922号に開示されている。発明の四元系と組み合わせると、たいていの適度に反応性を有するモノまたはポリアクリル酸またはメタクリル酸組成物は、望ましいW/C特性を示す。例として、好ましい「基材」樹脂組成物は、以下の化合物からなるものであってもよい。
【0045】
【表3】

【0046】
充填剤の選択は、望ましい処理特性、強度および他の主要な物理特性を達成するのに重要な役割を果たす。充填剤または充填剤の組合せは、すりガラス、ヒュームドシリカまたは沈降シリカ、ナノ粒子および前重合複合材種を含むが、それらに限定されない、当該技術分野で良く知られている種類またはサイズのいずれかの中から選択されうる。たいていの他の競合材料のように、これらの組成物は、適切な処理特性、シリンジ/ユニット送達特性および長い保存寿命を有する。組成物Aを以下に整理する。
【0047】
【表4】

【0048】
言及したように、本発明の組成物は、すべての種類のブラケット構成および材料、すなわち金属、セラミックおよびプラスチック/複合材を接着するのに有用である。組成物Aは、金属品、特にステンレス鋼およびチタンブラケットの接着に向けられる。組成物Aは、美観的(透明)ブラケットに使用できるが、主に金属ブラケットに使用することが推奨される。これは、一部には、口内の低温(30℃未満)条件下で高度に飽和した色相でありうるその色ばかりでなく、セラミックブラケットに必要とされる強度を超えるその非常に高い強度に起因する。
【0049】
本発明の組成物の向上したW/C比も美観的/透明プラスチックおよびセラミックブラケットに適する。この場合、設計基準は、ポリカーボネート複合ブラケット材料に対する高度な接着強度と同時に、セラミックブラケットに対する限定された(最高限度)接着強度に焦点がおかれる。
【0050】
典型的には、複合(プラスチック)ブラケットの接着において、擬似的な溶媒溶着/化学親和性を確保すると同時に、接着剤に結合するためのペンダントアクリル酸化学構造を提供するために、ブラケットのプラスチック接着面にプライマーを塗布する必要がある。本発明の組成物Bを利用する場合は、それらのいくつかは既に記載されているが、好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルを含むことができる接着強化添加剤の独自の組合せが含まれるため、このプライマー工程を必要としない。プラスチックブラケットに対する接着強化効果により、本質的に、個別的な専用カップリング剤を基材に塗布する必要がなくなるため、非常に多くの時間を要し、技術的感受性が強く、コストの高い工程が除かれる。プラスチックブラケットを接着するのに組成物Bを使用する場合は、接着剤をプラスチックブラケット基材に直接塗布し、Optilux 501硬化光源で硬化するだけでよい。
【0051】
セラミックブラケットを接着するのは、セラミックブラケットに典型的な過度の接着強度に対応する必要がある。セラミックブラケット(例えばOrmco Ice)に対する理想的な剪断接着強度は、15〜20MPaであると考えられる。ときには、30MPa以上のオーダのSBS値が達成される。医師は、エナメルを破壊しうる力に気を遣い、計画された脱ブラケット中にこれらの高強度接着に遭遇すると、何らかの他の時間を要する困難かつ/または不快な手段、例えば、ダイアモンドバーによる擦り取りによって物品を取り除かなければならない。本発明の組成物、特に組成物Bにおける一定の樹脂成分の割合を変化させることによって、剥離力を受けるブラケットに所定の閾値を超える負荷がかからないように、換言すれば、過度に強い力に達する前に接着剤が凝集破壊するように、接着樹脂の固有の限界接着強度を制御することができる。同様の効果を達成するための代替的または相乗的方法は、低強度充填剤成分、例えば前重合複合充填剤の部分的または100%までの使用によるものであり、その場合は、設計された樹脂マトリックスの使用、ならびに充填剤の種類および充填量により充填剤の強度を厳密に制御することができる。いずれの場合も、本発明の組成物、特に組成物Bは、ポリカーボネートブラケットに対しては高強度接着を与えるが、セラミックブラケットに対しては限定された最大接着強度を与える。これらの組成物は、適切な処理特性、および先述の極めて望ましいW/C比をさらに有する。
【0052】
組成物Bの処方を以下の表に示す。示されるように、組成物Bは、組成物Aと同じ四元開始剤系を利用しており、基材樹脂も類似しているため、望ましいW/C比が達成される。しかし、組成物Bは、強度緩和樹脂、例えば、オレフィン、スチレン、アミド、アクリル、ウレタンおよび様々な共重合体などの固有の低強度のオリゴマーを含むことができる。一般に、強度低減効果は、これらのオリゴマーが反応性を有する、すなわちアクリル酸またはメタクリル酸官能性である場合に最も良好に達成される。特に興味深いのは、ポリウレタンオリゴマーであり、例えば、米国特許第4,554,336号のポリウレタンオリゴマーを適宜調整して、適切な濃度で使用されるとより低強度の複合材を与える骨格構造を与えることができる。他の市販の材料も好適でありうる。例えば、Polymer Systems Corp.(フロリダ州Orlando)は、広範なウレタンオリゴマーを製造している。好ましいPolymer SystemsのオリゴマーM143Vは、脂肪族(色安定性)で、長鎖軟質セグメント(低強度、高靭性)で、多官能のメタクリル官能ウレタン樹脂である。組成物Bでは、組成物Aのより高強度のメタクリル化ウレタン樹脂の一部がM143Vで置換されている。比を調整することによって、接着剤の限界強度を十分に制御することができる。最大SBSを約8から20+/−2Mpaの任意の値に設定する一連の処方を達成することができる。組成物Bの具体的な処方において、SBSは、OrmcoのInspire ICEセラミックブラケットによる使用に望ましい約15Mpaに調整される。これは、また、OrmcoのDamon 3ポリカーボネートブラケットに対して高い引張接着強度(TBS、プラスチックブラケットの接着性を測定するのに用いられる好ましいモード)を達成する。約12MPa未満のICEに対するSBSは、Damon3 TBSについては許容できなくなる。約10Mpaを超えるTBSが望ましい。
【0053】
【表5】

【0054】
本発明の接着剤組成物を直接接着手順に使用することができ、その手法は、当該技術分野で知られている。例として、概略的な手順を以下に示す。各歯について約30秒間エッチングを行い、強制空気/水スプレーで各歯について最低5秒間にわたって十分に洗浄を行い、高速吸引器を使用して吸引を行い、エッチングしたエナメルを曇った霜状の外観になるまでクリーンな乾燥空気で乾燥させることによって歯の処理を行う。次に、処理された歯に接着シール材を塗布する。次いで、少量の組成物A(または本発明の他の好適な組成物)ペーストをブラケットパッド上に押し出す。次に、(A)直ちにブラケットを配置し、(B)位置決めし、(C)軽く押し、(E)余剰の接着剤を除去する。すべてのブラケット種に対して5秒間、大臼歯管に対して10秒間、ハロゲン光源を利用して光硬化させる。これらの時間は、Ormco Royal Blue LEDを使用する場合も適用可能である。
【0055】
直接的接着の代替として、間接的接着は、初期接着の約15%に用いられる技術である。高精度の配置は、間接的接着の1つの長所であり、他の長所としては、患者の快適さおよび着席時間節約が挙げられる。初期作業が短く、不正咬合の圧痕が取られ、患者が解放される。患者の歯のストーン模型が、圧痕から生成される。ブラケットは、医師および/またはスタッフ、あるいはしばしば専門的な外部の研究所によって模型の上に配列される。いずれの場合も、その配列は、限定された時間条件下で入念に完遂され、最も効果的な最終結果をもたらすために、コンピュータ支援ツールによってしばしば支援される。ブラケットが正確な位置に良好に設定されると、ブラケットが取りつけられたアーチ上に透明なプラスチックトレーを形成する。次いで、ブラケットを埋め込んだトレーを模型から分離する。接着作業について患者のスケジュールを立てる。適切にエッチング・処理された歯に設置されると、本発明の接着剤をトレー内のブラケット基材に塗布し、次いで、接着剤が塗布されたブラケットを含むトレーを患者の歯に嵌める。接着剤を硬化させ、トレーを取り除く。この手順では、トレーの設置により、いくつかのブラケットが、直接的接着と比較して短時間で、かつ不快感を最小限にとどめながら接着されるため、患者の快適さが向上する。より重要なことは、ブラケットが完璧に位置決めされるため、より低い難度で、より望ましい結果に向けて、通常は必要な作業がより少なく、より短い全体時間で処理が進行する。迅速に固化して高強度になる本発明の接着剤は、間接的接着技術にとって大いに有利である。
【0056】
矯正用接着剤は、典型的には、自己/化学的硬化A/B型、または光硬化接着剤である。自己硬化接着剤を使用する間接的接着では、一方の成分をブラケット側に塗布し、他方の成分を歯側に塗布する。ブラケットのトレー設置する動作は、化学(酸化−還元)反応を開始させる混合を開始させる。固化反応を物理的に妨害しないように注意しなければならないが、それと同時に、ブラケット基材が適切に設置され、化学作用が最大の効率性を有するように密着が必要である。実際、いくつかの指をトレー上の主要箇所に入れて、ブラケットを適切な位置に設定する。数分間の時間にわたって硬化させ、約10分後に、トレーを取り除く。光硬化接着剤を使用する間接的接着では、少量の接着剤を各ブラケット基材に置き、トレーを設置する。医師は、透明なトレーを通じて、各ブラケットを1つずつ注意深く照明する。ブラケット毎の硬化時間は、最良の材料について約60秒である。トレーは、一般には、四分円に配置されるため、ブラケットが5つのトレー(中歯、側歯、犬歯、小臼歯、第2小臼歯)では、経過時間は約5分である。自己硬化と同様であるが、恐らくはそれより少々速い。
【0057】
これらの間接的接着技術は、単調で費用のかかる着席時間手順のように思われるが、直接的接着は、それほど正確でなく、より長い着席時間を要し、ワイヤ曲げを必要とし、さらに悪いことには、望ましく仕上げるためにブラケットの再配置を必要としうるため、長期的にみて効果的でない。しかし、本発明の組成物は、硬化時間を接着毎に5から10秒のオーダで有意に短縮するという利点を有する。したがって、四分円トレーにおける複数のブラケットの接着を1分未満で完了することができるため、上方および下方アーチ全体は、従来の接着剤を使用すると20分間の光硬化を必要とするのに対して、4分間の光硬化で済む。既に述べたように、矯正用ブラケットを接着する場合は、約7Mpaが十分な初期接着強度であると考えられる。トレーを取り除くための力は、ときには比較的高く、かつ/または多様であり、次のワイヤ挿入が直後に続くため、これは間接的接着にも当てはまる。トレーは、典型的には軟質の柔軟な内層および非常に硬質の外層から構成される2層であり、特に光硬化手順では、可能な限り透明であることが必要である。トレーの内層は、高精度の配置に不可欠である、位置変化できないように、それ自体がブラケットの細部に良好に成形する透明な熱成形プラスチックである酢酸エチレンビニルであってもよい。あるいは、トレー内部は、ブラケット細部に手動成形され、硬化される透明なポリシロキサンまたはシリコーン系材料でありうる。外層は、トレーを移動させることなく、いくつかの歯を同時に接着できるようにアーチの形状を保持するより硬質で、透明な熱成形プラスチック、例えばアクリルまたはポリエステルである。残念なことに、硬化光導体先端から出る光(レーザを除く)は、非平行で、多方向性を有するため、距離が大きくなり、かつ/または透過度が低下するに従ってエネルギーが指数関数的に減少する。材料が最小厚さに維持される場合でも、積層トレーおよびさらには単層トレーでは、硬化光導体が、接着剤からかなりずれた位置、しばしば5mm以上離れたところに配置されうる。また、得られるトレー組立品は、全体的に透明でなく、半透明であるため、接着界面における利用可能な光エネルギーがさらに減少する。その結果、それを補償するために、現行の接着剤の硬化時間を長くしなければならない。直接的接着に通常15秒要する既知の接着剤では、7Mpaの即時剪断接着強度を達成するために、時間を60秒以上まで増加しなければならない。しかし、本発明の組成物は、短い硬化時間が依然達成されるように、利用可能な硬化光に対する高感度を維持する。以下の表は、本発明の組成物の利点をさらに例示するものである。表のデータは、組成物Aと普及している従来の光硬化接着剤とについての間接接着ステンレス鋼ブラケットの剪断接着強度を比較するとともに、このデータを直接的接着技術と比較する。間接的接着トレーは、ブラケットを保持する酢酸エチレンビニル内層および硬質のアクリル外層から構成された。エッチングされ、乾燥したウシの歯にOrmco Ortho Solo(登録商標)シール材を塗布した。トレーを設置すると、指定の時間(秒)にわたって、Optilux 501硬化光源を使用して硬化を遂行した。2mm/分の歪み速度で、Instron型式4467で光硬化してから2分以内に即時SBS(MPa)を測定した。
【0058】
【表6】

【0059】
上述の説明では、本発明の好ましい実施形態を特に詳細に記載したが、添付の請求項に定義されている本発明の本質的な趣旨および範囲を逸脱することなく、多くの修正、代替および変更を加えることができることを理解すべきである。したがって、本発明は、記載されている具体的な実施形態に限定されず、添付の請求項の定義によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】カンファーキノン(CQ)の波長吸収スペクトルのグラフ図である。
【図2】Optilux 501光源からの光出力を図1の吸収スペクトルに重ねたグラフ図である。
【図3】フェニルオキシンオキシド(PPO)の波長吸収スペクトルのグラフ図である。
【図4】PPOおよびCQの吸収スペクトルを重ねたグラフである。
【図5】Optilix 501光源からの光出力を図4のPPOおよびCQの吸収スペクトルに重ねたグラフである。
【図6】10,000ルクス光源の存在下における、本発明の組成物Aを含む様々な矯正用接着剤組成物についての作用時間(秒)の棒グラフ比較である。
【図7】400ルクス光源の存在下における様々な矯正用接着剤組成物についての作用時間(分)の棒グラフ比較である。
【図8】様々な矯正用接着剤組成物についての硬化時間の関数としての剪断接着強度(SBS)のグラフである。
【図9】23”の典型的な検査光の存在下における様々な矯正用接着剤組成物についてのW/C比を比較した棒グラフである。
【図10】7”の標準的なオフィス蛍光灯照明下における様々な矯正用接着剤組成物についてのW/C比を比較した棒グラフである。
【図11】LED光源からの光出力をCQの吸収スペクトルに重ねたグラフである。
【図12】LED光源からの光出力をPPOおよびCQの吸収スペクトルに重ねたグラフである。
【図13】2つの異なる光源からの光出力をPPOおよびCQの吸収スペクトルに重ねたグラフである。
【図14】様々な光源の存在下における本発明の処方物(組成物A)についての時間の関数としての初期剪断接着強度を比較した棒グラフである。
【図15】異なる増感物質組合せについての時間の関数としての初期接着強度を比較した棒グラフである。
【図16】矯正用接着剤組成物のいくつかのサンプルの衝撃強度を比較した棒グラフである。
【図17】いくつかの矯正用接着剤組成物についての曲げ弾性率を比較した棒グラフである。
【図18】いくつかの矯正用接着剤組成物についてのミリメートル単位の破断変位を比較した棒グラフである。
【図19】いくつかの矯正用接着剤組成物についての曲げ強度を比較した棒グラフである。
【図20】いくつかの矯正用接着剤組成物についての光硬化の30秒後の最大剪断接着強度を比較した棒グラフである。
【図21】LED I歯科用硬化光源およびロイヤルブルーLED歯科用硬化光源の波長スペクトルを示す図である。
【図22】ロイヤルブルーLEDからの光出力をPPOおよびCQの吸収スペクトルに重ねたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂モノマー成分と、
四元硬化開始剤系と、
充填剤と
を含む矯正用接着剤。
【請求項2】
着色剤をさらに含む、請求項1に記載の矯正用接着剤。
【請求項3】
樹脂強靱化成分をさらに含む、請求項1に記載の矯正用接着剤。
【請求項4】
前記硬化性樹脂モノマー成分が、2つ以上の異なる硬化性樹脂モノマーを含む、請求項1に記載の矯正用接着剤。
【請求項5】
前記四元硬化開始剤系が、少なくとも2つの増感物質を含む、請求項1に記載の矯正用接着剤。
【請求項6】
前記増感物質の1つがカンファーキノンである、請求項5に記載の矯正用接着剤。
【請求項7】
前記増感物質の1つがフェニルホスフィンオキシドである、請求項5に記載の矯正用接着剤。
【請求項8】
前記樹脂強靱化成分がメタクリル化ウレタン樹脂である、請求項3に記載の矯正用接着剤。
【請求項9】
前記樹脂強靱化成分がアクリル末端ポリウレタンである、請求項8に記載の矯正用接着剤。
【請求項10】
前記硬化性樹脂モノマー成分が、ジメタクリル酸ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジメタクリル酸エトキシ化ビスフェノールA、トリアクリル酸エトキシ化トリメチロプロパン、ジメタクリル酸ピロメリット酸グリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、メタクリル酸グリシジルおよびジメタクリル酸グリセロールのうちの少なくとも2種を含む、請求項4に記載の矯正用接着剤。
【請求項11】
前記着色剤が、少なくとも1つの可逆的染料を含む、請求項2に記載の矯正用接着剤。
【請求項12】
前記可逆的染料が熱変色性である、請求項11に記載の矯正用接着剤。
【請求項13】
前記可逆的熱変色性染料が、その透明化温度未満では容易に認識できる歯と異なる色であり、体温では全体的に歯の色である、請求項12に記載の矯正用接着剤。
【請求項14】
前記矯正用接着剤が光硬化性である、請求項1に記載の矯正用接着剤。
【請求項15】
ジメタクリル酸ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジメタクリル酸エトキシ化ビスフェノールA、トリアクリル酸エトキシ化トリメチロプロパン、ジメタクリル酸ピロメリット酸グリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、メタクリル酸グリシジルおよびジメタクリル酸グリセロールのうちの少なくとも2種を含む硬化性樹脂モノマー成分と、
2つの増感物質を含む四元硬化開始剤系と、
可逆的熱変色性染料と、
充填剤と
を含む光硬化性矯正用接着剤。
【請求項16】
W/C比が少なくとも10の矯正用接着剤であって、
硬化性樹脂モノマー成分と、
硬化開始剤系と、
充填剤と
を含む矯正用接着剤。
【請求項17】
W/C比が少なくとも12である、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項18】
W/C比が少なくとも14である、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項19】
W/C比が少なくとも20である、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項20】
前記硬化性樹脂モノマー成分が、ジメタクリル酸ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジメタクリル酸エトキシ化ビスフェノールA、トリアクリル酸エトキシ化トリメチロプロパン、ジメタクリル酸ピロメリット酸グリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、メタクリル酸グリシジルおよびジメタクリル酸グリセロールのうちの少なくとも2種を含む、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項21】
前記硬化開始剤系が四元系である、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項22】
前記四元硬化開始剤系が少なくとも2つの増感物質を含む、請求項21に記載の矯正用接着剤。
【請求項23】
前記増感物質の1つがカンファーキノンである、請求項22に記載の矯正用接着剤。
【請求項24】
前記増感物質の1つがフェニルホスフィンオキシドである、請求項22に記載の矯正用接着剤。
【請求項25】
樹脂強靱化成分をさらに含む、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項26】
前記樹脂強靱化成分がメタクリル化ウレタン樹脂である、請求項25に記載の矯正用接着剤。
【請求項27】
前記樹脂強靱化成分がアクリル末端ポリウレタンである、請求項26に記載の矯正用接着剤。
【請求項28】
着色剤をさらに含む、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項29】
前記着色剤が少なくとも1つの可逆的染料を含む、請求項28に記載の矯正用接着剤。
【請求項30】
前記可逆的染料が熱変色性である、請求項29に記載の矯正用接着剤。
【請求項31】
前記可逆的熱変色性染料は、その透明化温度未満では容易に認識できる歯と異なる色であり、体温では全体的に歯の色である、請求項30に記載の矯正用接着剤。
【請求項32】
前記矯正用接着剤が光硬化性である、請求項16に記載の矯正用接着剤。
【請求項33】
W/C比が少なくとも10の光硬化性矯正用接着剤であって、
ジメタクリル酸ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジメタクリル酸エトキシ化ビスフェノールA、トリアクリル酸エトキシ化トリメチロプロパン、ジメタクリル酸ピロメリット酸グリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、メタクリル酸グリシジルおよびジメタクリル酸グリセロールのうちの少なくとも2種を含む硬化性樹脂モノマー成分と、
2つの増感物質を含む硬化開始剤系と、
可逆的熱変色性染料と、
充填剤と
を含む光硬化性矯正用接着剤。
【請求項34】
硬化開始剤系が四元系である、請求項33に記載の矯正用接着剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−285489(P2008−285489A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−130166(P2008−130166)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(599025972)オルムコ コーポレイション (35)
【Fターム(参考)】